説明

高分子分散剤,分散質の分散方法及び分散組成物

【課題】 超臨界流体を利用した分散で超臨界流体に対する親和性に優れており,分散質に超臨界流体を十分に染み込ませることが可能な,新規かつ改良された高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物を提供する。
【解決手段】 ブロック共重合体の末端に超臨界流体に親和性の置換基であるハロカーボン化合物またはシリコン化合物が付着されたことを特徴とする分散剤である。これにより,分散質と超臨界流体との間の表面張力を下げることにより,超臨界流体が分散質内へ広がることを促進させて,微粒径に分散質を分散させうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,超臨界流体と親和性を有する高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物に係り,さらに詳細には,高分子分散剤に超臨界流体に親和性を有する化合物を導入して,超臨界流体を分散質にさらによく染み込ませて,分散質のナノ粒径への分散が可能であり,分散状態を安定的に維持させうる高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノサイズの物質は,大きいサイズの同じ物質とは大きく異なる性質を示すため,多くの技術分野でその重要性が増大しつつある。
【0003】
ナノサイズの粒子のうち有機顔料は,熱及び化学薬品に対する安定性に優れており,インク,コーティング材,トナー,プラスチック,ゴム,フィルム,ディスプレイのような多様な用途に使用されている。
【0004】
有機顔料ナノ粒子は,粒子や結晶の形状,分子配置,サイズ,分布及び表面性質等により,その化学的,物理的な性質が左右される。有機顔料ナノ粒子は,直径が通常10〜50nmであり,高い表面エネルギーによって容易に大きい粒子に凝集しうる。
【0005】
一方,塗料,インク,セラミック,化粧品,食料品などの原料として使用される固体系の分散質を分散させるために,従来は,ロールミル,媒体分散器などを使用してきたが,このような装置は,一般的に分散質粒子に機械的な剪断力を付与することにより微粒子化するため,処理時間が長く,処理後の装置の洗浄などが面倒であり,また,ミーリングによる粒子は,広い粒子分布を有するという問題点があった。
【0006】
また,流体エネルギーを利用した分散は,高圧の圧縮空気を必要とし,堅くて割れやすい物質には効果的であるが,柔らかい粒子には効率が低下するという問題があった。
【0007】
上記問題点を解消するために,例えば特許文献1には,溶媒と分散質とを混合し,これに超臨界溶媒を混合した後,加熱及び加圧により超臨界溶媒を超臨界状態にした後,圧力を大気圧に減圧させて,分散質を微細に分散させる方法が提案されている。
【0008】
上記方法は,圧力及び温度を変化させることにより,気体状態から液体状態に密度が連続的に早く変化しうる超臨界流体の性質を利用して固体粒子を効率的に分散させる方法である。
【0009】
純粋な物質は,圧力及び温度によって気体,液体及び固体状態で存在する。液体−気体間の相転移線は,液体及び気体状態が平衡条件で共存する最大温度,圧力の臨界値を有する。臨界値以上では,気体及び液体が同じ密度を有し,単一相として表れる。したがって,流体の温度及び圧力が臨界値以上であるため,気相及び液相が共存する時,これを超臨界流体という。
【0010】
超臨界流体は,液体と同じ密度及び溶解度を有し,拡散や粘度では,気体と同じ性質を有する。また,低い表面張力を有し,液体より早く染み込み,気体状態では無い溶解度を有する。
【0011】
超臨界流体を利用した分散方法をさらに詳細に説明すれば,まず,分散質と溶媒との混合物を超臨界容器に供給し,これに超臨界溶媒を供給する。この超臨界溶媒を加熱及び加圧して気体状態から超臨界流体に転換し,上記超臨界容器内で上記混合物と上記超臨界流体とを混合する。超臨界流体は,分散質が多孔性粒子である場合には,粒子の微細な隙間内に,そうではない場合には,分散質粒子間の隙間に浸入する。超臨界流体を含む容器の高い圧力を急激に減圧すると,粒子の内部と容器の内部との間に大きな圧力差が生じる。粒子中に吸収された超臨界流体は,粒子の中で高い内部圧力を誘発して,外部圧力が急激に減少する時に早く外へ膨脹する。その結果,分散質は破裂して数μmまたはそれ以下のサイズで分散される。
【0012】
超臨界流体は,水やアルコールなどの液体溶媒に比べて拡散係数が大きく,表面張力が小さいため,微粒子に濡れやすく,微粒子の集合体内へ早く広がる。さらに,微粒子と超臨界流体との相互作用力が微粒子の集合体を形成するそれぞれの微粒子間の相互作用力より大きいため,微粒子の集合体はそれぞれの粒子に分離されて,一次粒子化が進むことにより微粒子の分散が促進される。
【0013】
上記のような超臨界流体は,室温で気化される気体であって,二酸化炭素,亜酸化窒素,アンモニア,キセノン,エタン,エチレン,プロパン,プロピレン,ブタン,イソブタン,クロロトリフルオロメタン,モノフルオロメタン,六フッ化硫黄又はこれらの混合物がある。これらの中で二酸化炭素は,反応性が低く,無毒性であり,比較的に適当な温度で液化するため,特に好ましい。
【0014】
超臨界流体を利用した分散において重要な制約の一つは,超臨界流体の溶解度である。すなわち,二酸化炭素のような非極性流体は,極性物質に対して低い溶解度を有する。したがって,分散質が極性を有する場合,超臨界流体を利用した分散が十分に進まない。言い換えれば,分散質粒子の表面が溶媒で濡れているため,超臨界流体が粒子の微細な隙間に浸入し難くなる。その結果,超臨界流体の含浸は,主に溶媒での分子拡散によってのみ行われ,超臨界状態に到達しても分散質粒子の集合体の隙間へは超臨界流体の影響が及び難い状態となる。
【0015】
また,超臨界流体を利用して分散された分散質微粒子は再凝集が発生して,分散状態が悪化する恐れがある。
【0016】
このような問題点を解消するために,分散質,溶媒及び超臨界流体を含むシステムに分散剤をさらに添加する方法がある。しかし,一般的な高分子分散剤は,超臨界流体に対して低い親和度を表し,分散剤としての役割を十分に行えない。
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,921,478号明細書
【特許文献2】米国特許第5,780,565号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003−121447号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,超臨界流体を利用した分散で超臨界流体に対する親和性に優れており,分散質に超臨界流体を十分に染み込ませることが可能な,新規かつ改良された高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために,本発明の第1の観点によれば,ハロカーボン化合物またはシリコン化合物が,ブロック高分子鎖の一方の末端に結合された高分子分散剤が提供される。
【0020】
ここで,上記高分子分散剤においては,上記ハロカーボン化合物またはシリコン化合物は,分散剤100質量部に対して1〜50質量部の量で結合されることが好ましい。
【0021】
また,上記ハロカーボン化合物は,臭化ペンタフルオロベンジル,臭化2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル,臭化3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル,臭化デカフルオロベンズヒドリル,イソシアン酸2−(パーフルオロオクチル)エチル,イソシアン酸ペンタフルオロフェニル等でありうる。
【0022】
また,上記シリコン化合物は,塩素末端ポリ(ジメチルシロキサン)またはグリシジルエーテル末端ポリ(ジメチルシロキサン)等でありうる。
【0023】
上記課題を解決するために,本発明の第2の観点によれば,顔料粒子及び上記高分子分散剤を含む分散組成物が提供される。
【0024】
上記課題を解決するために,本発明の第3の観点によれば,分散質,溶媒及びハロカーボン化合物またはシリコン化合物がブロック高分子鎖の一方の末端に結合された高分子分散剤の混合物を容器に供給する工程と,上記容器に超臨界溶媒を添加する工程と,上記超臨界溶媒を加熱及び加圧して超臨界流体に転換する工程と,上記混合物と上記超臨界流体とを混合して超臨界混合物を得る工程と,上記超臨界混合物を大気圧に放出させる工程と,を含む分散質の分散方法が提供される。
【0025】
本発明に係る高分子分散剤は,分散質と超臨界流体との間の表面張力を下げることにより,超臨界流体が分散質内へ広がることを促進させて,分散質をナノ粒径で分散させ,安定した分散液を形成できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば,超臨界流体に対する親和性に優れており,超臨界流体を分散質内へよく染み込ませて,分散質を効果的に分散させ,分散後の分散液の安定性にも優れる高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
本発明に係る高分子分散剤は,ハロカーボン化合物またはシリコン化合物が高分子鎖の一方の末端に結合されたことを特徴とする。
【0029】
上記のようなハロカーボン化合物またはシリコン化合物が結合されたブロック高分子分散剤は,顔料の表面に吸着される部分と立体的安定化を提供する部分とからなっている。水性媒質内で電解質の安定化部分を構成する親水性モノマーとしては,アクリル酸,アクリル酸塩,メタクリル酸,メタクリル酸塩,無水マレイン酸及びスチレンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択された1種以上であることが好ましく,このうち,特に,メタクリル酸塩が好ましいが,上記の例に限定されるものではない。
【0030】
また,水性媒質に使用される分散剤の疎水性部分と,有機溶媒に使用される分散剤の極性,非極性部分を構成するモノマーの例として次のようなものがあるが,必ずしもこれらに限定されるものではない。メタクリル酸メチル,アクリル酸ブチル,メタクリル酸ラウリル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリロニトリル,メタクリロニトリル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸3,3−ジメトキシプロピル,アクリル酸3−メタクリルオキシプロピル,メタクリル酸2−アセトキシエチル,メタクリル酸p−トリル,アクリル酸2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル,2−シアノアクリル酸エチル,N,N−ジメチルアクリルアミド,アクリル酸4−フルオロフェニル,アクリル酸2−メタクリルオキシエチル,プロピルビニルケトン,2−クロロアクリル酸エチル,メタクリル酸グリシジル,メタクリル酸3−メトキシプロピル,アクリル酸フェニル,メタクリル酸2−(トリメチルシロキシ)エチル,メタクリル酸2−(メチルシロキシ)エチル,アクリル酸アリル,メタクリル酸アリル,ジアクリル酸エチレングリコールグリコール,ジアクリル酸ジエチレングリコール,ジアクリル酸グリセロール,トリアクリル酸グリセリル,ジメタクリル酸エチレングリコール及びジアクリル酸ヘキサメチレンジオールからなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
本発明に係る高分子分散剤でブロック高分子鎖の一方の末端に結合されたハロカーボン化合物は,臭化ペンタフルオロベンジル,臭化2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル,臭化3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル,臭化デカフルオロベンズヒドリル,イソシアン酸2−(パーフルオロオクチル)エチル,イソシアン酸ペンタフルオロフェニル等であり,ブロック高分子鎖の一方の末端に結合されたシリコン化合物は,塩素末端ポリ(ジメチルシロキサン),グルシジルエーテル末端ポリ(ジメチルシロキサン)等でありうる。
【0032】
上記高分子分散剤でハロカーボン化合物またはシリコン化合物の量は,分散剤100質量部に対して1〜50質量部の量で結合されることが好ましい。1質量部より少なければ,置換基による超臨界流体に対する親和性効果が得難く,50質量部より多ければ,分散溶媒に対する溶解度及び分散安定性が減少するため,好ましくない。
【0033】
本発明に係る高分子分散剤は,特に,非極性超臨界流体に対して効果的であるが,その例としては,二酸化炭素,亜酸化窒素,キセノン,エタン,エチレン,プロパン,プロピレン,ブタン,イソブタン,クロロトリフルオロメタン及び六フッ化硫黄からなる群から選択された1種以上でありうる。
【0034】
本発明の高分子分散剤は,ハロカーボン化合物またはシリコン化合物が高分子鎖の末端に結合されて,溶媒/超臨界流体分散系で効果的に作用する。上記分散剤は,超臨界流体に対する高い親和性,すなわち,界面活性を表して多様な超臨界流体と親和性のない分散質に対して超臨界流体を利用した分散で分散剤としての有効性を有する。すなわち,超臨界流体が,溶媒及び分散剤に予備分散されている分散質内へ広がることを促進させて,狭い粒径分布を有するさらに小さな粒子への分散を可能にする。
【0035】
この時,超臨界流体は,分散剤が吸着された分散質粒子の周りを取り囲みつつ,粒子内へ浸入して,超臨界流体が分散溶媒の中でエマルジョンの状態で存在し,その中に粒子が位置する。
【0036】
超臨界流体親和性の置換基は,分散液の組成,最も重要には,分散質の物性に合せて考案されうる。また,分散の効率性及び長期保存安定性の極大化のためには,超臨界流体親和性の置換基を2種以上結合させるか,または2種以上の分散剤を同時に使用できる。
【0037】
本発明に係る分散剤の分子量は,300,000以下,好ましくは,200,000以下,より好ましくは,150,000以下であり,300〜120,000の範囲に属することが最も好ましい。分散剤のデザイン及び合成は,窮極的に直径が500nm未満,好ましくは,300nm未満,最も好ましくは,100〜250nmである分散質/分散剤複合物の安定したコロイド性の分散物を形成することが好ましい。
【0038】
本発明では,分散質,溶媒及びハロカーボン化合物またはシリコン化合物が高分子鎖の末端に結合された高分子分散剤の混合物を容器に供給する工程と,上記容器に超臨界溶媒を添加する工程と,上記超臨界溶媒を加熱及び加圧して超臨界流体に転換する工程と,上記混合物と上記超臨界流体とを混合して超臨界混合物を得る工程と,上記超臨界混合物を大気圧に放出させる工程と,を含む方法で分散質を溶媒に分散させる。
【0039】
分散質は,固体系の微粒子であり,これを液体系の溶媒に分散させる。固体系の微粒子とは,例えば,顔料,セラミック材料粉末,磁性粒子などの超微粒子を含む。
【0040】
液体系の溶媒とは,分散液で連続的な相を形成する水,有機溶媒などを含む。
【0041】
本発明に係る分散剤を,上記分散質100質量部に対して0.1〜70質量部含めることが好ましい。0.1質量部より少なければ,所望の分散効果が十分に得られず,70質量部より多ければ,粘度の上昇によって所望の用途への適用が難しい。
【0042】
本発明に係る方法で,まず,溶媒,分散質及び本発明に係る高分子分散剤の混合物を超臨界容器に供給する。この時,分散質は,複数の粒子が集合体を形成している,いわゆる粒子が凝集した状態になっている。分散質疑性質によって上記懸濁状態の混合物を予備分散するか,または予備分散せずに直ちに超臨界容器に供給されうる。
【0043】
その後,上記超臨界容器を超臨界溶媒で満たす。上記超臨界溶媒は,加熱及び加圧手段,例えば,ヒーター及びポンプで加熱及び加圧されて,容器内の臨界温度及び臨界圧力を超えさせて超臨界流体を製造する。このように得た超臨界流体は,水またはアルコールのような液体溶媒より拡散係数が大きく,表面張力が小さいため,よく染み込んで,分散質微粒子の凝集物内へ透過する。また,分散質微粒子と超臨界流体との相互作用が分散質微粒子間の相互作用より大きいため,上記微粒子の凝集物は粉砕されて,一次粒子を形成して微粒子の分散が促進される。
【0044】
その後,一次粒子の生成と,粒子間,または粒子の孔隙間への含浸を促進するために,上記混合物と超臨界流体とを混合して超臨界混合物を得る。上記超臨界混合物を超臨界容器から大気圧に放出させて,粒子内の超臨界流体を膨脹させることにより,分散質がナノサイズで分散された分散液を得る。
【0045】
また,本発明では,顔料粒子,及び前記のような分散剤を含む分散組成物が提供される。本発明に係る分散組成物は,インクジェットプリンタ及びその他のプリンタ用インクの製造に使用されうる。
【0046】
本発明に係る分散組成物は,顔料粒子,及び前記分散剤の他に添加剤などを含み得る。
【0047】
上記分散組成物に使用されうる顔料は,有機顔料と無機顔料とも可能であり,黒色,青緑色,黄色,紫紅色,赤色,青色,緑色及び白色顔料が使用されうるが,必ずしもこれらに限定されるものではない。黒色顔料としては,カーボンブラックが代表的である。本発明での使用に適したカーボンブラックの選択は,表面酸化の考慮,顔料の黒い程度に主に左右される。酸性であるか,または表面処理された顔料は,強力な分散剤の吸着のための適切な相互作用位置を提供する。黒い程度が高い顔料は,高画質の印刷画像を提供する。
【0048】
顔料粒子分散物の安定性は,分散剤−顔料粒子の引力が顔料粒子−顔料粒子の引力より強ければ,特に高温でも強化されうる。
【0049】
顔料粒子の含量は,分散組成物100質量部を基準に0.1〜20質量部,特に,0.5〜15質量部であることが好ましい。0.1質量部未満であれば,インク,コーティングなどの用途に適しておらず,20質量部を超えれば,所望の分散効果が得難い。
【0050】
本発明の分散組成物は,場合によっては粘度調節剤,界面活性剤,金属酸化物などの添加剤をさらに含み得る。
【0051】
上記界面活性剤は,分散組成物の表面張力を調節して,ノズルでのジェッティング性能を安定化させる役割を行う。このような機能を行う界面活性剤としては,イオン性の界面活性剤や非イオン性の界面活性剤を使用できる。
【0052】
界面活性剤の含量は,通常的なレベルとして分散組成物100質量部を基準に0.1〜5.0質量部を使用する。0.1質量部より少なければ,界面活性効果が得難く,5.0質量部より多ければ,表面張力の過度な低下により多様な用途への使用に適していない。
【0053】
上記粘度調節剤は,円滑なジェッティングが維持されるように粘度を調節する物質であって,ポリビニルアルコール,カゼイン,カルボキシメチルセルロースのうち選択された一つを使用する。ここで,粘度調節剤の含量は,分散組成物100質量部を基準として0.1〜5.0質量部であることが好ましい。0.1質量部より少なければ,粘度調節効果が得難く,5.0質量部より多ければ,過度な粘度の上昇によって多様な用途への使用に適していない。
【実施例】
【0054】
以下,実施例により本発明をさらに詳細に説明する。下記実施例は,本発明を説明するためのものであり,本発明がこれらに限定されるものではない。
【0055】
下記実施例で使用されるあらゆる材料は,他の言及がなければ,米国ウィスコンシン州のミルウォーキーに所在するアルドリッチケミカル・カンパニーで購入したものである。
【0056】
一方,本発明の分散物は,その用途が特別に制限されず,インク組成物の他にもトナー組成物,各種塗料,コーティング液などに使用可能である。
【0057】
<製造例:分散剤の合成>
(製造例1:MAA/BMA//BMA−ペンタフルオロベンジルブロック共重合体(分散剤A))
THF 10mlと開始剤ジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタル 7.8mlをアルゴンガス雰囲気下で混合して30分間攪拌した。触媒としてテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゼン 1.1gをアセトニトリル 2mlに溶解させて添加して,2時間攪拌した。THF 20mlに溶解させたトリメチルシリルメタクリル酸46.4ml及びアクリル酸ブチル 5.1mlを滴加した。2時間反応させた後,THF 6mlに溶解させたメタクリル酸ブチル 11.2mlをゆっくり添加した。3時間反応させた後,疏水性部分の末端を置換させるために,臭化ペンタフルオロベンジル 9.1gを添加した。10時間攪拌させた後,メタノール 120mlを加えて4時間加熱還流させた後,減圧下で溶媒を除去した。得られた固体を3N NaOH水溶液200mlに完全に溶解させた後,ろ過紙で前記溶液をろ過した後,HCl水溶液 100mlを添加した。生成された沈殿物をろ過及び洗浄させた後,真空オーブンで24時間乾燥させて,MAA/BMA//BMA−ペンタフルオロベンジルブロック共重合体粉末を得た。
【0058】
GC分析により単量体が何れも消尽されて重合したかを確認し,GPCにより分子量及び分子量の分布を測定し,NMR構造分析によりペンタフルオロベンジルが結合された分散剤の合成を確認した。
【0059】
(製造例2:MAA/BMA//BMA−(パーフルオロオクチル)エチルブロック共重合体(分散剤B))
臭化ペンタフルオロベンジルの代わりに,イソシアン酸2−(パーフルオロオクチル)エチル 18.6gを使用したことを除いては,前記製造例1と同じ方法で分散剤Bを製造して結果を確認した。
【0060】
(製造例3:MAA/BMA//BMA−ビス(トリフルオロメチル)ベンジルブロック共重合体(分散剤C))
臭化ペンタフルオロベンジルの代わりに臭化3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル17.3gを使用したことを除いては,前記製造例1と同じ方法で分散剤Cを製造して結果を確認した。
【0061】
(製造例4:BMA/MMA//t−BAEMA−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロック共重合体(分散剤D))
THF 7mlと開始剤であるジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタル 12.6mlとをアルゴンガス雰囲気下で混合して30分間攪拌した。触媒としてテトラブチルアンモニウムm−クロロベンゼン 0.51gをアセトニトリル 1mlに溶解させて添加して2時間攪拌した。THF 15mlに溶解させたブチルメタクリル酸23.4ml及びメタクリル酸メチル 15.7mlを滴加した。2時間反応させた後,THF 6mlに溶解させたt−メタクリル酸ブチルアミノエチル(t−BAEMA) 18.7mlをゆっくり添加した。3時間反応させた後,極性部分の末端を置換させるためにポリ(ジメチルシロキサン),グリシジルエーテルターミネーテッド(Mn〜980) 12.6gを添加した。10時間攪拌させた後,メタノール 120mlを加えて4時間加熱還流させた後,減圧下で溶媒を除去させた後,真空オーブンで24時間乾燥させて,BMA/MMA//t−BAEMA−ポリ(ジメチルシロキサン)ブロック共重合体粉末を得た。
【0062】
GC分析により単量体が何れも消尽されて重合したかを確認し,GPCにより分子量及び分子量の分布を測定し,NMR構造分析によりポリ(ジメチルシロキサン)が結合された分散剤の合成を確認した。
【0063】
(製造例5:BMA/MMA//t−BAEMA−ペンタフルオロフェニルブロック共重合体(分散剤E))
ポリ(ジメチルシロキサン),グリシジルターミネーテッドの代わりにイソシアン酸ペンタフルオロフェニル 12.6gを使用したことを除いては,前記製造例4と同じ方法で分散剤Eを製造し,結果を確認した。
【0064】
前記製造例1〜製造例5で得たブロック共重合体の粉末の分子量及び多分酸指数を下記表1に表した。
【0065】
【表1】

【0066】
前記表1で,Mnは,数平均分子量であり,Mwは,質量平均分子量であり,PDIは,多分酸指数である。
【0067】
(実施例1)
Red A3B(Pigment Red 177,Ciba−Geigy Co.)顔料 10gを分散剤Aの3質量%の水溶液100gに入れて攪拌した後,超臨界容器に入れた。液体COを入れて,25℃の1気圧で55℃の100気圧に条件を調節して,20分間超臨界状態を維持した後,分散水溶液をCOと共に大気圧の収集槽に放出して顔料の分散液を得た。
【0068】
(実施例2)
B6700(Pigment Blue 15:6,BASF)顔料 11gを分散剤Bの3質量%水溶液 100gに入れて攪拌した後,超臨界容器に入れた。液体 COを入れて,25℃の1気圧から55℃の100気圧に条件を調節して20分間超臨界状態を維持した後,分散水溶液をCOと共に大気圧の収集槽へ放出して顔料の分散液を得た。
【0069】
(実施例3)
カーボンブラック5000ii(Columbian Chemicals)顔料 7.5gを分散剤Cの3質量%の水溶液100gに入れて攪拌した後,超臨界容器に入れた。液体COを入れて,25℃の1気圧から55℃の100気圧に条件を調節して20分間超臨界状態を維持した後,分散水溶液をCOと共に大気圧の収集槽へ放出して顔料の分散液を得た。
【0070】
(実施例4)
キナクリドンマゼンタ(rt−143−d,Ciba−Geigy Co.)顔料 14gを分散剤Dの2.5質量%のn−パラフィン溶液 100gに入れて攪拌した後,超臨界容器に入れた。液体COを入れて,25℃の1気圧から60℃の120気圧に条件を調節して20分間超臨界状態を維持した後,分散水溶液をCOと共に大気圧の収集槽へ放出して顔料の分散液を得た。
【0071】
(実施例5)
フタロシアニンブルー(bt−617−d,Clariant)顔料 15gを分散剤Eの2.5質量%のn−酢酸ブチル溶液 100gに入れて攪拌した後,超臨界容器に入れた。液体COを入れて,25℃の1気圧から60℃の120気圧に条件を調節して20分間超臨界状態を維持した後,分散水溶液をCOと共に大気圧の収集槽へ放出して顔料の分散液を得た。
【0072】
(比較例1)
分散剤Aの代りにMAA/BMA//BMAブロック共重合体を使用したことを除いては,前記実施例1と同じ方法で顔料分散液を製造した。
【0073】
(比較例2)
分散剤Dの代りにBMA/MMA//t−BAEMAブロック共重合体を使用したことを除いては,前記実施例4と同じ方法で顔料分散液を製造した。
【0074】
(比較例3)
Red A3B(Pigment Red 177,Ciba−Geigy Co.)顔料 10gをMAA/BMA//BMAブロック共重合体の3質量%の水溶液 100gに入れて攪拌した後,ジルコニウムビーズ(直径0.5mm) 200gと共にドイツライヒスホフ(Reichshof)に所在するVMA−GETZMANN GmbHで市販するディスパーマット(モデルCV)内で粉砕し,粉砕には約10,000rpmの速度を利用した。100分間粉砕して顔料の分散液を得た。
【0075】
(比較例4)
キナクリドンマゼンタ(rt−143−d,Ciba−Geigy Co.)顔料 14gをBMA/MMA//t−BAEMAブロック共重合体の2.5質量%n−パラフィン溶液 100gに入れて攪拌した後,ジルコニウムビーズ(直径0.5mm) 200gと共にドイツライヒスホフに所在するVMA−GETZMANN GmbHで市販するディスパーマット(モデルCV)内で粉砕し,粉砕には約10,000rpmの速度を利用した。100分間粉砕して顔料の分散液を得た。
【0076】
前記で製造した分散組成物の性能を評価するために,次のような試験を行った。
【0077】
顔料分散物を含む分散組成物を5質量%の固体濃度に作った。前記固体は,顔料,界面活性剤及び補助分散剤のような任意のその他の不揮発性添加剤を含む。分散及びろ過を行った後,得た前記組成物をガラスバイアルに保存した後,入口を密封して60℃のオーブンで2ヶ月間撹乱させずに放置した。
【0078】
放置後,前記組成物中の顔料分散物の直径を超微粒子分析器(堀場製作所製,商標名LA−910)で測定して,下記基準によって評価した:
○:250nm未満
△:250〜500nm
X:500nm超過
【0079】
また,肉眼で分散組成物の分散状態に変化があるか否かを下記基準によって評価した:
○:変化なし
△:凝集塊りの発生
X:層分離の発生
【0080】
前記試験結果を下記表2に表した。
【0081】
【表2】

【0082】
前記表2から分かるように,本発明に係る高分子分散剤を含む分散組成物は,分散された顔料の粒径分布が狭く,ナノサイズを有し,分散安定性に優れていることが分かる。
【0083】
以上説明したように,本発明に係る高分子分散剤を使用すれば,超臨界流体を利用した分散を効果的に行って安全性に優れた分散液を製造できる。
【0084】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は,超臨界流体と親和性を有する高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物に適用可能であり,特に,高分子分散剤に超臨界流体に親和性を有する化合物を導入して,超臨界流体を分散質にさらによく染み込ませて,分散質のナノ粒径への分散が可能であり,分散状態を安定的に維持させうる高分子分散剤,それを利用した分散質の分散方法及びそれを含む分散組成物に適用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロカーボン化合物またはシリコン化合物が,ブロック高分子鎖の一方の末端に結合されたことを特徴とする,高分子分散剤。
【請求項2】
前記ハロカーボン化合物は,臭化ペンタフルオロベンジル,臭化2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンジル,臭化3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル,臭化デカフルオロベンズヒドリル,イソシアン酸2−(パーフルオロオクチル)エチル及びイソシアン酸ペンタフルオロフェニルからなる群から選択された何れか一つであることを特徴とする,請求項1に記載の高分子分散剤。
【請求項3】
前記シリコン化合物は,塩素末端ポリ(ジメチルシロキサン)またはグリシジルエーテル末端ポリ(ジメチルシロキサン)であることを特徴とする,請求項1に記載の高分子分散剤。
【請求項4】
前記ハロカーボンまたはシリコン化合物は,分散剤100質量部に対して1〜50質量部の量で結合されていることを特徴とする,請求項1に記載の高分子分散剤。
【請求項5】
分散質,溶媒及び請求項1〜4のいずれかに記載の高分子分散剤の混合物を容器に供給する工程と,
前記容器に超臨界溶媒を添加する工程と,
前記超臨界溶媒を加熱及び加圧して超臨界流体に転換する工程と,
前記混合物と前記超臨界流体とを混合して超臨界混合物を得る工程と,
前記超臨界混合物を大気圧に放出させる工程と,
を含むことを特徴とする,分散質の分散方法。
【請求項6】
顔料粒子と,請求項1〜4に記載の高分子分散剤と,を含むことを特徴とする,分散組成物。



【公開番号】特開2006−199964(P2006−199964A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10457(P2006−10457)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】