説明

高分子抗酸化剤

ポリマーのあるグループは構造式(I)および/または(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、環Aおよび環Bが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および任意のさらなる官能基により置換され、環Bが少なくとも一つの-Hでさらに置換され、nが2以上であり、pが0以上である、
の繰り返し単位を含む。ポリマーは典型的にベンゼン環の間をC-CまたはC-O-C結合により直接連結される置換されたベンゼン繰り返し単位を少なくとも二つ含む。あるいは、ポリマーの各繰り返し単位は抗酸化剤である。本発明はまた、これらのポリマーおよび関連のあるポリマーの、特に抗酸化剤としての製造方法および使用方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2002年4月5日に出願された米国仮出願第60/370,468号の利益を主張する2003年4月4日に出願された米国出願第10/408,679号の一部継続である、2004年1月21日に出願された米国出願第10/761,933号に対する優先権を主張し、その継続である。本出願はまた、米国を指定し、2003年4月4日に出願され、英語で公開され、2002年4月5日に出願された米国仮出願第60/370,468号の利益を主張する国際出願番号PCT/US03/10782の一部継続である。前記出願の全教示は、本明細書中に参照によって援用される。
【0002】
(政府支援)
本発明は、国立科学財団(National Science Foundation)からの助成DMR-9986644によって、全体または一部において支援された。政府は本発明においてある一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
合成抗酸化保存料は、加工および貯蔵の間に、さまざまな製品に添加される。製品の種類としては、食品、プラスチック、および包装材料が挙げられる。製品において酸化の事象が起こる場合、抗酸化分子が迅速に反応し、抗酸化ラジカルを形成する。この反応は、酸化の事象に起因する損害から製品を保護し、その結果、製品の保存期間を増大させる。一般的な合成抗酸化保存料としては、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ジ-tert-ブチルヒドロキノン(DTBHQ)、および没食子酸プロピルが挙げられる。天然に存在する抗酸化物質もあり、これはセサモール、セサミン、ビタミンAおよびβカロテン、ビタミンEおよびトコフェロール、ならびにビタミンCを含む。
【0004】
抗酸化保存料の使用は、かなりの不飽和脂質含有量を有する食品において特に一般的である。かかる食品はまた、多量の不飽和脂肪酸を含有する。脂肪酸における不飽和化は、脂質を酸化を受けやすくし、これは次には脂質における複雑な化学変化をもたらす。かかる化学変化は、結局は、食品の臭気(敗油臭)の進展となって現れる。不飽和脂肪酸の酸化は、典型的には、熱、光、電離放射線、微量金属、およびいくつかのタンパク質により生じ得る遊離基により媒介される。脂質含有食品における抗酸化保存料の使用は、敗油臭を最小限にし、毒性酸化生成物の形成を妨げ、栄養上の品質の維持を可能にし、保存期間を増大させる。抗酸化保存料が作用すると考えられる機構は、ペルオキシルラジカルを捕捉すること、および酸化過程の伝播を妨げることを含む。かかる化合物の抗酸化活性は、遊離基を補足すると同時に失われ、その結果食品または他の製品は、一度すべての抗酸化保存料が遊離基と反応すると、もはや酸化から保護されない。換言すれば、酸化から保護される程度は、存在する抗酸化保存料の量による。
【0005】
残念ながら、製品、特にヒトまたは動物が飲食することを意図した製品に加え得る合成抗酸化保存料の量には制限がある。かかる化合物は発癌性であることが疑われているため、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)は食品中のBHA、TBHQ、およびBHTの量を総脂肪の0.02%に制限している。
【0006】
それゆえに、ヒトおよび動物に対してより毒性の低い、新しい種類の合成抗酸化保存料の必要性が存在する。その上、増大した効能、および容易に種々の材料と共に加工される能力を有する抗酸化保存料を開発することは、有利であろう。かかる改良された性質を有する抗酸化保存料は、脂質含有食料品、ならびに遊離基によって損なわれ得る部分(例えば不飽和炭素−炭素結合)を含有する他の製品の保存期間およびおいしさを増大させるであろう。
【0007】
(発明の概要)
一態様において、本発明は、物質を置換ベンゼン抗酸化ポリマーと接触させる工程を含む、物質の酸化を阻害する方法を含む。好ましくは、置換ベンゼン抗酸化ポリマーは、ベンゼン1つにつき一つ以上のヒドロキシル部分、アシル部分、またはエーテル部分、特にヒドロキシル部分またはエステル部分を含む。一例において、抗酸化ポリマーのあらゆる繰り返し単位は、抗酸化剤である(例えば置換ベンゼン抗酸化剤)。本発明の目的のために、抗酸化部分を有する繰り返し単位は、抗酸化剤であるとみなされる。別の例において、抗酸化ポリマーは、2つ以上の重合した置換ベンゼン単量体を含み、ここで重合した置換ベンゼン単量体は、C-C結合またはC-O-C結合によって直接連結される。
【0008】
好ましい態様において、抗酸化ポリマーは、構造式(I)および(II):

【0009】
(式中:
Rは、-Hまたは、置換もしくは非置換アルキル基、アシル基、もしくはアリール基である;
環Aは、少なくとも一つのtert-ブチル基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに任意に-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、および置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基からなる群より選択される一つ以上の基で置換されている;
環Bは、少なくとも一つの-H、および少なくとも一つのtert-ブチル基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに任意に-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、および置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基からなる群より選択される一つ以上の基で置換されている;
nは2に等しいか、または2より大きい整数である;ならびに
pは0に等しいか、または0より大きい整数である)
の一方または双方を含む繰り返し単位を含有する。
【0010】
別の好ましい態様において、抗酸化ポリマーは、構造式(I)および(II):

【0011】
(式中:
Rは、-Hまたは、置換もしくは非置換アルキル基、アシル基、もしくはアリール基である;
環Aは、少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに0個、1つ以上のさらなる官能基で置換されている;
環Bは、少なくとも一つの-H、および少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに0個、1つ以上のさらなる官能基で置換されている;
nは2に等しいか、または2より大きい整数である;ならびに
pは0に等しいか、または0より大きい整数である)
の一方または双方により表される繰り返し単位を含有し、ここでポリマーは、ベンゼン環の間でC-C結合またはC-O-C結合によって直接連結された、構造式(I)および(II)の一方または双方により表される2つ以上の繰り返し単位を含有する。
【0012】
別の態様において、本発明は、構造式(I)および(II):

【0013】
(式中:
Rは、-Hまたは、置換もしくは非置換アルキル基、アシル基、もしくはアリール基である;
環Aは、少なくとも一つのtert-ブチル基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに任意に-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、および置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基からなる群より選択される一つ以上の基で置換されている;
環Bは、少なくとも一つの-H、および少なくとも一つのtert-ブチル基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに任意に-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、および置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基からなる群より選択される一つ以上の基で置換されている;
nは2に等しいか、または2より大きい整数である;ならびに
pは0に等しいか、または0より大きい整数である)
の一方または双方を含む繰り返し単位を含有する抗酸化ポリマーを含む。
【0014】
さらに別の態様において、本発明は、構造式(I)および(II):

【0015】
(式中:
Rは、-Hまたは、置換もしくは非置換アルキル基、アシル基、もしくはアリール基である;
環Aは、少なくとも一つのtert-ブチル基(ヒドロキシル基またはアシルオキシ基に対してオルトである)、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに0個、1つ以上のさらなる官能基で置換されている;
環Bは、少なくとも一つの-H、および少なくとも一つのtert-ブチル基(ヒドロキシル基またはアシルオキシ基に対してオルトである)、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに0個、1つ以上のさらなる官能基で置換されている;
nは2に等しいか、または2より大きい整数である;ならびに
pは0に等しいか、または0より大きい整数である)
の一方または双方を含む繰り返し単位を有する抗酸化ポリマーを含み、ここでポリマーは、C-C結合またはC-O-C結合によって直接連結された、構造式(I)および(II)の一方または双方により表される少なくとも2つの繰り返し単位を含有するか、またはポリマーの各繰り返し単位は抗酸化剤である。
【0016】
構造式(I)により表されるいかなる繰り返し単位も含有しないポリマーは、好ましくは環Bにおいて一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基で置換される。
【0017】
本明細書中に記載される抗酸化ポリマーは、他の構成要素を含有する組成物の一部であり得る。例えば、ある組成物は、食べられる製品、および本明細書中に記載される一つ以上の抗酸化ポリマーを含有する。
【0018】
別の組成物は、包装することに用いられ、包装材料、および本明細書中に記載される一つ以上の抗酸化ポリマーを含有する。その用途は、包装材料に限定されないが、かかる組成物の例としては、ポリエチレンおよびポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)が挙げられる。
【0019】
本発明のさらに別の組成物は、一つ以上の合成および天然の、単量体およびオリゴマーの、抗酸化剤及び/または保存料と組み合わせた、本明細書中に記載される一つ以上の抗酸化ポリマーを含有する。
【0020】
本発明のさらなる組成物は、化粧剤、および本明細書中に記載される一つ以上の抗酸化ポリマーを含有する。
【0021】
本発明はまた、薬理学的に活性のある薬剤および本明細書中に記載される一つ以上の抗酸化ポリマーを有する組成物に向けられる。
【0022】
本発明はまた、抗酸化ポリマーを調製する方法に関し、これは構造式(XIX):

【0023】
(式中:
Rは、-H、または置換もしくは非置換アルキル基、アシル基、もしくはアリール基である;ならびに
R4、R5、R6、R7およびR8は、独立して、-H、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換アルコキシ基、または飽和もしくは不飽和カルボン酸基である;または
R1、R2、R3、R4またはR5は、隣接するR1、R2、R3、R4またはR5と共に置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基を形成する;
ただし:
(1)R4、R5、R7およびR8の少なくとも一つは、tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびにR4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも2つは-Hである;または
(2)R4、R5、R7およびR8の少なくとも一つは、tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、-Hである)
により表される単量体を重合させる工程を含む。
【0024】
特定の態様では、抗酸化ポリマーを調製する方法は、構造式(XIX):

【0025】
(式中:
Rは、-H、または置換もしくは非置換アルキル基、アシル基、もしくはアリール基である;ならびに
R4、R5、R6、R7およびR8は、独立して、-H、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、または置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基である、
ただし:
(1)R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも一つは、tert-ブチル基、または置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも2つは-Hである;または
(2)R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも一つは、tert-ブチル基、または置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、-Hである)
により表される単量体を重合させる工程を含む。
【0026】
重合は、過酸化水素の存在下で、置換ベンゼン化合物を重合させ得る酵素または酵素模倣剤により触媒され得る。あるいは、重合は、酵素によらない化学的方法により触媒される。
【0027】
本発明はまた、
a)置換または非置換フェノールの少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基で保護し、それにより1つ以上の保護されたヒドロキシル基を得る工程;および
b)置換または非置換フェノールを重合させる工程
を含み、それによりフェノール性ポリマーを得る、フェノール性ポリマーを調製する方法に向けられる。
【0028】
一つの態様では、フェノール性ポリマーを調製する方法は、
a)置換または非置換ヒドロキノンの2つのヒドロキシル基を保護基で保護し、それにより保護されたヒドロキシル基を形成する工程;および
b)置換または非置換ヒドロキノンを重合させる工程
を含み、それによりフェノール性ポリマーを得る。
【0029】
別の態様では、フェノール性ポリマーを調製する方法は、構造式(XXIX):

【0030】
(式中:
R11、R12、R13、R14およびR15は、独立して、-H、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基もしくはアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換アルコキシ基、または飽和もしくは不飽和カルボン酸基である;または
R11、R12、R13、R14またはR15は、隣接するR11、R12、R13、R14またはR15と共に置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基を形成する;
ただし、R11、R12、R13、R14およびR15の少なくとも一つは、tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基であり、R11、R12、R13、R14およびR15の少なくとも一つはヒドロキシル基であり、R11、R12、R13、R14およびR15の少なくとも一つは-Hである)
により表される単量体の少なくとも一つのヒドロキシル基を保護基で保護すること;ならびに単量体を重合させ、それによりフェノール性ポリマーを形成させることを含む。
【0031】
さらに別の態様では、フェノール性ポリマーを調製する方法は、構造式(XXX):

【0032】
(式中:
R16は保護基である;および
R11、R12、R13、R14およびR15は、独立して、-H、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基もしくはアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換アルコキシ基、または飽和もしくは不飽和カルボン酸基である;または
R11、R12、R13、R14またはR15は、隣接するR11、R12、R13、R14またはR15と共に置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基を形成する)
により表される単量体を重合させ、それによりフェノール性ポリマーを形成させ、保護基を除去することを含む。
【0033】
別の側面において、本発明は、フェノール性ポリマーに関し、ここで該ポリマーはC-C結合またはC-O-C結合によって直接連結された置換または非置換フェノール繰り返し単位を含有する。ただし、ポリマー中の少なくとも90%の繰り返し単位はC-C結合により直接連結される。
【0034】
本発明の抗酸化ポリマーの一つの利点は、これらは大部分が吸収されないことにより、動物に対し、より毒性が少ないか、またはむしろ非毒性であることが期待されることである。さらに、かかるポリマーは、一般に、小分子の抗酸化剤に比べ、より効力があり、より大きな熱安定性を示し、そのため、典型的には、同じ保護効果を達成するために、より少量の抗酸化剤しか必要とされない。また、抗酸化ポリマーは、別の高分子材料中に混合され得るか、または該材料に薄いフィルムのコーティングを形成し得、小分子の抗酸化剤とは異なり、高分子材料からの拡散がゆっくりと起こることが最も多いであろう。本発明はまた、主として、かかる抗酸化ポリマーを調製する環境上安全な方法を提供する。
【0035】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般に、物質を置換ベンゼン抗酸化ポリマーと接触させることを含む、物質の酸化を阻害する方法に向けられる。本発明はまた、置換ベンゼン抗酸化ポリマー、かかる抗酸化ポリマーを含有する種々の組成物、およびかかる抗酸化ポリマーを調製する方法に向けられる。
【0036】
本発明の目的のために、「酸化を阻害する方法」は、本明細書中で遊離基に媒介される過程の伝播を阻害する方法と定義される。遊離基は、熱、光、電離放射線、金属イオン、ならびにいくつかのタンパク質および酵素により生じ得る。酸化を阻害することはまた、酸素、オゾン、またはかかる気体を発生させ得る別の化合物もしくはかかる気体の反応上の同等物の存在により引き起こされる反応を阻害することを含む。
【0037】
本発明の抗酸化ポリマーの繰り返し単位は、置換ベンゼン分子を含む。かかるベンゼン分子は典型的には、フェノール、またはフェノール誘導体に基づき、したがって、これは少なくとも一つのヒドロキシル、エステル、またはエーテル官能基を有する。好ましくは、ベンゼン分子はヒドロキシル基を有する。ヒドロキシル基は、遊離のヒドロキシル基であることに限定されず、ヒドロキシル基は保護され得るか、またはそれに結合した分裂し得る基(例えばエステル基)を有し得る。かかる分裂し得る基は、所望の寿命を有して、または時間制御がなされた放出で(例えば半減期により測定される)、ある条件(例えばpHにおける変化)の下で放たれ得、これは人が、どこでおよび/またはいつ抗酸化ポリマーがその抗酸化効果を発揮し得るかを制御することを可能にする。
【0038】
本発明の抗酸化ポリマーの置換ベンゼン繰り返し単位はまた、典型的にはかさ高いアルキル基、1-エテニル-2-カルボン酸基、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、またはn-アルコキシカルボニル基で置換される。好ましくは、ベンゼン単量体はかさ高いアルキル基で置換される。より好ましくは、かさ高いアルキル基は、ベンゼン環のヒドロキシル基に対してオルトまたはメタに位置する。「かさ高いアルキル基」は、本明細書中で、ベンゼン環に対してα-またはβ-で枝分かれしているアルキル基と定義される。好ましくは、アルキル基はベンゼン環に対してαで枝分かれしている。より好ましくは、tert-ブチル基のように、アルキル基はベンゼン環に対して2回αで枝分かれしている(すなわちα-第三級炭素を形成する)。かさ高いアルキル基の他の例としては、イソプロピル、2-ブチル、3-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、および1,1-ジエチルプロピルが挙げられる。かさ高いアルキル基は、好ましくは非置換であるが、これは分子またはポリマーの抗酸化活性を妨げない官能基で置換され得る。
【0039】
置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基で置換された置換ベンゼン繰り返し単位は、典型的には非置換アルキレンジオキシ基を有する。置換基が分子またはポリマーの抗酸化活性を妨げるべきではないが、置換アルキレンジオキシ基もまた好適である。典型的には、アルキレンジオキシ基は、メチレンジオキシ基またはエチレンジオキシ基などの低級アルキレンジオキシ基である。メチレンジオキシ基は好ましい(セサモールにおけるように)。
【0040】
直鎖アルコキシカルボニル基は、典型的には炭素原子数1〜16のアルキル鎖を有し、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n-プロポキシカルボニル、n-ブトキシカルボニル、およびn-ペントキシカルボニルを含む。n-プロポキシカルボニルは好ましい基である。かさ高いアルキル基と同様に、n-アルコキシカルボニル基は、分子またはポリマーの抗酸化活性を妨げない官能基で任意に置換される。アルコキシカルボニル基はまた、その加水分解された形で、すなわちカルボキシ基またはカルボン酸基として、存在し得る。
【0041】
1-エテニル-2-カルボン酸基またはそのエステルを有する置換ベンゼン繰り返し単位において、1-炭素(すなわちカルボン酸部分から遠位である炭素)はベンゼン環に結合している。
【0042】
上に名前を挙げた置換基に加え、置換ベンゼン繰り返し単位は、置換基としてさらなる官能基を有し得る。例えば、さらなる官能基は、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、置換または非置換アルコキシカルボニル基、置換または非置換アルコキシ基、および飽和または不飽和カルボン酸基からなる群より選択され得る。典型的には、さらなる官能基は、-OH、置換または非置換アルコキシ基、および飽和または不飽和カルボン酸基からなる群より選択される。
【0043】
本発明の好ましいポリマーは、構造式(III)および(IV):

【0044】
(式中、環Aおよび環Bは上に記載のように置換されており、nおよびpは上に定義した通りである)
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む。
【0045】
好ましくは、構造式(I)〜(IV)における環Aおよび環Bは、各々少なくとも一つのtert-ブチル基で置換される。
【0046】
ポリマーは、好都合に、構造式(Va)、(Vb)、(Vc)、(VIa)、(VIb)、および(VIc):


【0047】
(式中、R1、R2、およびR3は、独立して、-H、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、および置換または非置換アルコキシカルボニル基からなる群より選択され、ただしR1、R2、およびR3の少なくとも一つは、tert-ブチル基であり;jおよびkは、独立して0であるかまたは0より大きい整数であり、したがってjおよびkの和は、2に等しいかまたは2より大きい)
の一つ以上により表される繰り返し単位を含む。
【0048】
好ましい態様では、Rが-H、もしくは-CH3である;R2が-H、-OH、もしくは置換もしくは非置換アルキル基である;または両方である。
【0049】
本発明のポリマーに含まれる繰り返し単位の特定の例は、以下の構造式:





【0050】
の一つにより表される。
【0051】
好都合には、本発明のポリマーは、構造式(VII)〜(XVIIIc)の一つ以上により表される繰り返し単位からなる。
【0052】
構造式(XI)、(XVI)、(XVII)、および(XVIII)は、プロポキシカルボニル置換基を有するように表されているが、この基は一般に、種々のC1〜C16n-アルコキシカルボニル基で置換され得るか、またはカルボキシラート基であり得る。
【0053】
好ましいポリマーは、ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)である。
【0054】
本発明の抗酸化ポリマーは、構造式(XIX)で表される分子を重合することによって調製され得る:

好ましくは、構造式(XIX)で表される分子は、以下の特徴の1つ、2つ、3つ、4つまたは5つを有する。第一の特徴において、R5、R7およびR8の少なくとも1つがtert-ブチル基である。第二の特徴において、R4は-Hである。第三の特徴において、R7およびR8の一方または両方が-Hである。第四の特徴において、Rは-Hまたは-CH3である。第五の特徴において、R6は-H、-OHまたは置換もしくは非置換アルキル基である。より好ましくは、構造式(XIX)で表される分子は、第一および第二の特徴;第一、第二および第三の特徴;第一、第二、第三および第四の特徴;または第一、第二、第三、第四および第五の特徴を有する。
【0055】
重合して抗酸化ポリマーを形成し得るモノマーの具体例を、以下の構造式の1つで表す:

構造式(XXV)のプロポキシカルボニル基は、代替的に、アルコキシ部分が1〜16個の炭素原子を有するようなアルコキシカルボニル基であり得る。
【0056】
本発明の抗酸化ポリマーは、2つ以上の反復単位、好ましくは約5つより多い反復単位を有する。本明細書中に開示されるポリマーの分子量は、一般に、所望の適用に適切に選択される。典型的には、分子量は、約500原子質量単位(amu)より大きく約2,000,000 amu未満であるか、約1000 amuより大きく約100,000未満であるか、約2,000 amuより大きく約10,000 amu未満であるか、または約2,000 amuより大きく約5,000 amu未満である。食品または食用の製品(例えば、ヒトの食用に適した製品)については、分子量は、抗酸化ポリマーが胃腸管に吸収され得ない程十分大きく、例えば1000 amuより大きくなるよう、有利に選択される。ポリマー材料と混合される抗酸化ポリマーについては、分子量は抗酸化ポリマーがポリマー材料中に拡散する速度がポリマー材料の予想寿命と比較して遅くなるように、有利に選択される。
【0057】
本発明の抗酸化ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれかであり得る。コポリマーは、好ましくは2つ以上または3つ以上の異なる反復モノマー単位を含み、そのそれぞれは、異なる、または同一の抗酸化特性を有する(抗酸化活性を有さないモノマーを含む)。コポリマー中の反復単位の同一性を選択して、ポリマー全体の抗酸化特性を調節し得、それによって、調節可能な特性を有するポリマーを生じ得る。コポリマー中の第二、第三および/またはさらなる反復単位は、合成または天然いずれかの抗酸化物質であり得る。一例では、本発明の組成物は1つ以上のホモポリマーおよび1つ以上のコポリマー(例えば混合物中で)を含む。好ましくは、ホモポリマーおよびコポリマーの両方が、C-CまたはC-O-C結合によって直接連結された2つ以上の置換ベンゼン反復単位を含む。好ましくは、コポリマー中の、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、好ましくは約100%といった、少なくとも50%の反復単位は、C-CまたはC-O-C結合によって直接連結された置換ベンゼン反復単位である。
【0058】
コポリマーの例としては、ポリ(TBHQ-co-没食子酸プロピル)、ポリ(TBHQ-co-BHA)、ポリ(TBHQ-co-セサモール)、ポリ(BHA-co-セサモール)、ポリ(没食子酸プロピル-co-セサモール)およびポリ(BHA-co-没食子酸プロピル)が挙げられる。あるモノマーの、別のものに対する比は、モル基準で、典型的には、約10:1〜約1:10、例えば、約2:1〜約1:2のように、約100:1〜約1:100である。一例では、モノマーの比は約1:1である。
【0059】
没食子酸およびそのエステルのある種のポリマーは水溶性であるものの、本発明の抗酸化ポリマーは、典型的には、水性の媒体に不溶性である。非水性媒体(例えば油)中の抗酸化ポリマーの溶解度はポリマーの分子量に依存し、高分子量のポリマーは、典型的には非水性媒体に緩やかに溶解する。本発明の抗酸化ポリマーが特定の媒体または基質に不溶性である場合、その媒体または基質とよく混合されるのが好ましい。
【0060】
本発明の抗酸化ポリマーは、分枝または直鎖状であり得るが、好ましくは直鎖状である。分枝抗酸化ポリマーは、構造式(XX)、(XXI)および(XXIV)のように、3つ以下の置換基(例えば3つ以上の水素原子)を有するベンゼン分子からのみ形成され得る。
【0061】
モノマーの重合は、天然または合成の、過酸化水素存在下で置換ベンゼン化合物を重合できる酵素または酵素模倣物(enzyme mimetic)によって触媒され得、ここで酵素または酵素模倣物は、典型的にはヘムまたは関連する基を活性部位に有する。この反応を触媒できる、ある一般的な酵素の種類は、一般にペルオキシダーゼと呼ばれる。ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ダイズペルオキシダーゼ、コプリヌス・シネリウス(Coprinus cinereus)ペルオキシダーゼおよびアルスロマイセス・ラモスス(Arthromyces ramosus)ペルオキシダーゼは、容易に入手可能なペルオキシダーゼである。該反応を触媒できる他の酵素としては、ラッカーゼ、チロシナーゼおよびリパーゼが挙げられる。適切な酵素は、過酸化物(例えば過酸化水素または有機性過酸化物)が存在する場合に、2つのアリール(例えばフェノール)基の間の炭素−炭素結合および/または炭素−酸素−炭素結合の形成を触媒できる。酵素の活性部位が依然機能的であれば、ペルオキシダーゼのサブユニットまたは他の部分が許容可能(acceptable)である。酵素模倣物は、典型的には酵素の一部分に相当し、親酵素と同じ反応を行い得るが、一般に親酵素よりも小さい。また、酵素模倣物は、より広範な条件下(例えば、異なるpH範囲および/または水性、部分的に水性および非水性の溶媒)で機能的であるように、親酵素よりも強固に設計され得、一般に分解または不活性化に供されることが少ない。適切な酵素模倣物としては、ヘマチン、チロシナーゼモデル錯体および金属サレン(例えば、鉄サレン)錯体が挙げられる。特にヘマチンは、機能化されて、より広範な条件下で可溶性になり得、これは、2001年11月27日に出願された米国出願第09/994,998号に開示されており、その全教示は、参照によって本明細書中に援用される。
【0062】
上述の酵素および酵素模倣物は、固体に固定され得る。また、酵素および酵素模倣物は、溶液または懸濁液中に分散され得る。
【0063】
本明細書中に記載されるモノマーはまた、非酵素的な化学的方法によっても重合され得る。例えば、重合は、塩化鉄またはメタロセン等の金属化合物によって触媒され得る。また、重合は、N,N-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アセチルアセトンおよび過酸化物(例えばtert-ブチルヒドロキシド、ベンジルペルオキシド)等の、陽イオン、陰イオンまたは遊離基開始剤によって触媒され得る。
【0064】
本発明の重合は、広範な条件下で行われ得る。pHは、しばしば約pH 1.0〜約pH 12.0の間であり、典型的には約pH 6.0〜約pH 11.0の間である。温度は、一般に、約0℃〜約45℃の間または約15℃〜約30℃の間(例えば室温)のように、約0℃より高い。溶媒は水性(好ましくは緩衝化された)、有機性またはそれらの組み合わせであり得る。有機溶媒は、典型的にはエタノール、メタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびテトラヒドロフラン(THF)等の極性溶媒である。モノマーまたはコモノマーの濃度は、典型的には0.001 M以上である。また、バッファーの濃度は、典型的には0.001 M以上である。
【0065】
触媒的な量の上述の酵素または酵素模倣物の1つを用いる本発明の重合は、典型的には、約1単位/mL〜5単位/mLの間を使用し、ここで1単位は、pH 6.0、20℃で20秒の間にピロガロールから1.0 mgのプルプロガリンを形成する。好ましくは、酵素または酵素模倣物は、抗酸化モノマーまたはコモノマーを加えた後で溶液に加えられる。次いで、抗酸化モノマーまたはコモノマーとおよそ化学量論的な量が加えられるまで、過酸化物が、酵素または酵素模倣物を非活性化しないように、少しずつ増やしながら反応混合物に加えられる。
【0066】
酵素もしくは酵素模倣剤または化学的開始剤は、連鎖成長反応に必要なフェノールベースのフリーラジカルの形成の原因となるが、ラジカルをカップリングしてポリマー鎖を形成することは、フェノキシラジカルおよび溶媒の化学的性質によって制御される。フェノキシラジカルのカップリングに関するさらなる詳細は、「Enzymatic catalysis in monophasic organic solvents」、Dordick, J.S., Enzyme Microb. Technol. 11: 194-211 (1989)に見ることができ、その全教示は、参照によって本明細書中に援用される。置換ベンゼンモノマーの間のカップリングは、典型的にはヒドロキシル基に対してオルトおよび/またはパラで起こる。カップリングがヒドロキシル基に対してメタで起こることは稀である。
【0067】
重合によって、好ましくは、置換ベンゼン反復単位の間のC-C結合の形成がもたらされる(すなわち、ベンゼン環同士が連鎖して直接結合する)。好ましいポリマーは、少なくとも約99%のC-C結合、少なくとも約98%のC-C結合、少なくとも約95%のC-C結合、少なくとも約90%のC-C結合、少なくとも約80%のC-C結合、少なくとも約70%のC-C結合、少なくとも約60%のC-C結合または少なくとも約50%のC-C結合を含む。特に好ましいポリマーは、約100%のC-C結合を含む。
【0068】
より一般的には、本発明はまた、重合の間に形成されるC-C結合の数を増加させ、C-O-C結合の程度を低下させ、それによって直前に記載したC-Cカップリングの量をもたらす、フェノール系化合物の重合方法を含む。この調製方法は、フェノール系抗酸化物質に限定されない。
【0069】
ある態様において、該方法は、置換または非置換フェノールの少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基で保護して、保護されたヒドロキシル基を得、次いでフェノールを重合してフェノール系ポリマーを得る工程を含む。フェノールは、環に結合したヒドロキシル基が2つ以上あり、その少なくとも1つが重合のための遊離ヒドロキシル基であるように、少なくとも1つのさらなるヒドロキシル置換基を有するべきである。フェノールは抗酸化物質であり得る。適切な型の保護されるヒドロキシル基としては、エーテル、エステル、シリルエーテル、炭酸塩、ホスフィン酸塩、カルバミン酸塩、スルホン酸塩、硝酸塩、ホスホルアミデート、ホウ酸エステル、ホスフィノチオールエステルおよびスルフェン酸官能基が挙げられる。保護基は独立して選択され、各ヒドロキシル基について同じである必要はない。典型的には、ヒドロキシル基はエーテルまたはエステル官能基として、より典型的にはエステルとして(すなわち、保護基がアシル基である場合)保護される。ヒドロキシル基がエステルとして保護される場合、一般的な保護基はアセチル基である。ヒドロキシル基がエーテルとして保護される場合、一般的な保護基は長鎖アルキル基(例えば、12〜24個の炭素原子のように、12個より多い炭素原子を有する)である。
【0070】
合計2つ以上のヒドロキシル基を有する置換および非置換フェノール(例えば、ヒドロキノン)は、2つ以上のヒドロキシル基が保護されている場合、有利には、重合の前に部分的な脱保護工程を経る。この脱保護工程は、少なくとも1つのヒドロキシル基を保護されたままにし、少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基を生じることを意図する。ヒドロキノンにおいて、例えば、1つのヒドロキシル基が保護され、もう一方の基は脱保護される。かさ高い(bulky)アルキル基(例えばtert-ブチル基)で置換されたヒドロキノンに関して、1つのヒドロキシル基はアルキル基の近位であると考えられ、もう一方のヒドロキシル基は、アルキル基の遠位であると考えられる。好ましくは、かさ高いアルキル基の遠位のヒドロキシル基は、重合の前に脱保護される。
【0071】
脱保護は、一般には、フェノール中の少なくとも1つのヒドロキシル基が保護されたままであるように、選択的脱保護方法を用いて行われる。リパーゼ等の酵素による脱保護は、選択的脱保護に効果的な手段である。
【0072】
1つ以上のヒドロキシル基が一旦保護されていると、フェノールが重合される。重合方法は、一般に重大ではない。適切な重合触媒は上述したとおりであり、酵素および酵素模倣物(例えばペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、チロシナーゼ、リパーゼ、ヘマチン、チロシナーゼモデル錯体および鉄サレン錯体等の金属サレン錯体)を含む。上述のような化学的試薬、および光もまた、適切な触媒である。
【0073】
重合後、フェノール系ポリマーの保護基の全てまたは一部が除去され得る。
【0074】
この方法で生じたフェノール系ポリマーは、様々な適用に用いることができる。これらのフェノール系ポリマーは、抗酸化特性および/または電気伝導性を有し得る。該ポリマーはまた、光電子工学への適用にも有用であり得る。
【0075】
構造式(XXIX)で表されるモノマーがこの方法で重合された場合、R12、R14およびR15の1つ以上は、好ましくはtert-ブチル基である。また、R11は好ましくは-Hである。さらにより好ましくは、R12はtert-ブチル基であり、R11、R14およびR15はそれぞれ-Hである。構造式(XXIX)に包含される他の代表的なモノマーは、以下のものを含む:

【0076】
別の側面において、R11、R12、R13、R14およびR15の1つは-OHであり、両方のヒドロキシル基は保護基によって保護される。一方の保護されたヒドロキシル基は、tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸またはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基の遠位であると考えられ、もう一方の保護されたヒドロキシル基はtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸またはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基または(groupr)非置換n-アルコキシカルボニル基の近位と考えられる。好ましくは、遠位の保護されたヒドロキシル基は、具体的にはリパーゼ等の酵素によって、重合の前に脱保護される。ヒドロキシル基の化学的脱保護もまた、適切である。保護基は上述のものと同じである。また、構造式(XXIX)で表されるモノマーの重合方法は、上述のものと同じである。
【0077】
ヒドロキシル基の保護を含むこの方法で調製されたポリマーは、典型的には、約1,000 amu〜約5,000 amuのような、約500 amu〜約1,000,000 amuの分子量を有する。
【0078】
本発明の抗酸化ポリマーは、油、食品(例えば肉製品、乳製品、穀類、飲料、クラッカー、ポテトフレーク、製パン製品およびミックス、デザートミックス、ナッツ、キャンディー等)等の食用の製品および他の酸化に曝露される脂質または他の化合物を含む製品(例えばチューインガム、調味料、イースト等)を含む、遊離基を介した酸化によって組成物の品質が低下する、広範な組成物中に存在し得る。
【0079】
抗酸化ポリマーはまた、プラスチックおよび他のポリマー、エラストマー(例えば、天然または合成ゴム)、石油製品(例えばミネラルオイル、ガソリン、灯油、ディーゼル油、暖房用油、プロパン、ジェット燃料等の化石燃料)、接着剤、潤滑剤、塗料、色素または他の着色剤、石鹸および化粧品(例えばクリーム、ローション、毛髪用製品)中に存在し得る。石鹸および化粧品は、特に、1つ以上の本発明の抗酸化ポリマーの大部分を加えることによって利益がある。石鹸および化粧品は、例えば重量で約1%〜約20%(例えば約5%〜約15%)の抗酸化ポリマーを含有し得る。
【0080】
抗酸化ポリマーを用いて、さび色塗料および腐食阻害剤として、金属を被覆し得る。
【0081】
抗酸化ポリマーはさらに、抗酸化ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE)および医薬品(すなわち、薬学的に活性のある因子を含むもの)を分解から保護し得る。抗酸化ポリマーは固体組成物にも利益を有すると予想されるが、抗酸化ポリマーの添加は、ビタミンまたは薬学的に活性のある因子が液体組成物中に存在する場合に、特に有利である。
【0082】
食品において、抗酸化ポリマーは酸敗を予防する。プラスチックにおいて、抗酸化ポリマーは、プラスチックが脆くなったりひび割れたりするのを予防する。
【0083】
本発明の抗酸化ポリマーは、油に添加されてその貯蔵寿命および特性を延長し得る。これらの油は植物性ショートニングまたはマーガリンとして調製され得る。油は、一般に、植物の供給源に由来し、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、コーン油、落花生油、ダイズ油、ひまし油、やし油、ベニバナ油、ひまわり油、カノーラ(菜種)油およびゴマ油が含まれる。これらの油は、カプロン酸、パルミトイル酸、オレイン酸、バクセン酸、エライジン酸、ブラシジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エレオステアリン酸(eleosteric acid)、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸およびアラキドン酸等の1つ以上の不飽和脂肪酸、またはそれらの部分的に硬化された、もしくはtarns-硬化変形物を含む。本発明の抗酸化ポリマーはまた、これらの脂肪酸の1つ以上を含有する食品または他の食用品に有利に添加される。
【0084】
包装材料等の多くの材料および該材料に含まれる物質の貯蔵寿命は、本発明の抗酸化ポリマーの存在によって増大する。包装材料への抗酸化ポリマーの添加は、包装の内部に含まれる製品に、さらなる保護を提供すると考えられている。また、多くの包装材料自体、特にポリマーの特性は、適用にかかわらず(すなわち、包装での使用に限定されず)、抗酸化物質の存在によって増強される。包装材料の一般的な例としては、紙、段ボールならびに種々のプラスチックおよびポリマーが挙げられる。包装材料は、抗酸化ポリマーで被覆され得る(例えば、抗酸化ポリマーの噴霧によって、または薄膜コーティングとして適用することによって)か、抗酸化ポリマーと混合または混合(blended with or mixed with)され得る(特にポリマーについて)か、そうでなければ、その中に存在する抗酸化ポリマーを有し得る。一例では、ポリマー処理中の分解を最小限にするために、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリスチレン等の熱可塑性ポリマーが、抗酸化ポリマー存在下で融解する。抗酸化ポリマーはまた、ポリマー材料とともに押し出し成形され得る。
【0085】
本発明に含まれる包装材料の一例は、一般に「スマートパッケージング(smart packaging)」と呼ばれる。スマートパッケージングは、例えば、包装を通した空気交換を制御するように設計される。スマートパッケージングの例は、米国特許第5,911,937号、第5,320,889号および第4,977,004号に記載されており、その全教示は、参照によって本明細書中に援用される。ある従来の型のスマートパッケージングは、典型的にはポリエチレンテレフタレート、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン)またはポリ(プロピレン)等の1つ以上の防湿性(moisture-resistant)ポリマーまたはポリマー混合物の層の間に挟まれた、ナイロンまたはポリ(エチレン-co−ビニルアルコール)等の酸素障壁の層を含む。防湿性ポリマーの層は、同じまたは異なるものであり得る。本発明において、本明細書中に記載される1つ以上の抗酸化ポリマーが、さらなる層として加えられるか、包装材料の層と混合され得る。
【0086】
包装材料として特に適切な組成物の一例としては、ポリエチレンおよびポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)が挙げられ、典型的には、この2種のポリマーが混合される。組成物中のポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)の割合は、典型的には、約10 ppm〜約100 ppmのように、約1 ppm〜約1,000 ppmである。組成物は、例えば、フィルムまたはペレットの形態であり得る。組成物はまた、2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール等のモノマー性抗酸化物質を含み得る。モノマー性抗酸化物質が存在する場合、濃度は、典型的には約1 ppm〜約1,000 ppmである。
【0087】
抗酸化ポリマーと別の抗酸化物質またはポリマーとの混合物を有するという概念は、一般に、本明細書中に記載される1つ以上の抗酸化ポリマー、および1つ以上の合成および/または天然のモノマー性および/またはオリゴマー性抗酸化物質および/または防腐剤の組み合わせに適用され得る。かかる組成物は、短期および長期両方の抗酸化活性を有すると予想される。組成物中のモノマーおよび/またはオリゴマーに対するポリマーの割合は、組成物が所望の指定の特性を有するように選択され得る。例えば、モノマーおよび/またはオリゴマーに対するポリマーの割合は、約1:10〜約10:1のように、約1:100〜約100:1であり得る。典型的には、かかる組成物中の抗酸化ポリマーの絶対濃度は、約0.1 ppm〜約10,000 ppmの範囲である。
【0088】
アルキル基は、その炭素原子の1つからの単共有結合を介して分子中のある他の基に結合した、分子中の飽和炭化水素である。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルが挙げられる。アシル基は、末端のカルボニル部分を含む、置換または非置換アルキル基である。
【0089】
アリール基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントラシルおよび2-アントラシル等の炭素環式アリール基、ならびにN-イミダゾリル、2-イミダゾール、2-チエニル、3-チエニル、2-フラニル、3-フラニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、2-ピラニル、3-ピラニル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-ピラジニル、2-チアゾール、4-チアゾール、5-チアゾール、2-オキサゾリル、4-オキサゾリルおよび5-オキサゾリル等の複素環式アリール基が挙げられる。
【0090】
アリール基としては、炭素環式芳香環またはヘテロアリール環が1つ以上の他のヘテロアリール環に融合した、融合(fused)多環式芳香環系も挙げられる。例としては、2-ベンゾチエニル、3-ベンゾチエニル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、2-インドリル、3-インドリル、2-キノリニル、3-キノリニル、2-ベンゾチアゾール、2-ベンゾオキサゾール、2-ベンズイミダゾール、2-キノリニル、3-キノリニル、1-イソキノリニル、3-キノリニル、1-イソインドリルおよび3-イソインドリルが挙げられる。
【0091】
アルキル、アルコキシ、アリールまたはアシル基の適切な置換基の例としては、例えばハロゲン(-Br、-Cl、-Iおよび-F)、-ORa、-CN、-NO2、-N(Ra)2、-COORa、-CON(Ra)2、-SOkRa(kは0、1または2)および-NH-C(=NH)-NH2が挙げられ得る。アルキル基はまた、=Oまたは=Sを置換基として有し得る。各Raは、独立して、-H、アルキル基、置換アルキル基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリール基または置換アリール基であり得る。置換ベンジル基またはアリール基はまた、アルキルまたは置換アルキル基を置換基として有し得る。置換アルキル基はまた、ベンジル、置換ベンジル、アリールまたは置換アリール基を置換基として有し得る。置換アルキル、置換アルコキシ、置換アリールまたは置換アシル基は、1つより多い置換基を有し得る。
【0092】
以下の実施例は、いかなる限定も意図しない。
【0093】
(実施例)
【実施例1】
【0094】
ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)の調製
ホースラディッシュペルオキシダーゼに触媒された2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(2-BHA)の重合を、Organic Synthesis with Oxidative Enzymes, VCH Publishers, Inc., 1992中、Holland, H.L. (その全教示は、参照によって本明細書中に援用される)の手順に従って行った。簡潔に述べると、2-BHA(100 mg、0.56 mmol)を、メタノールおよび0.01 Mリン酸ナトリウムバッファー(pH 7)の1:1(v/v、6 mL)溶液に、ホースラディッシュペルオキシダーゼとともに室温で加えた。化学量論的な量の過酸化水素(5%水溶液、35μl、0.56 mmol)を徐々に増やしながら3時間にわたって添加することによって重合を開始した。過酸化水素の添加が完了した後、反応をさらに24時間継続させた。溶媒を凍結乾燥によって蒸発させた。ポリマーをメタノール水溶液(1:1 v/v)で入念に洗浄し、酵素およびリン酸塩を除去し、続いて減圧下で乾燥した。
【0095】
モノマー性およびポリマー性2-BHAの500 MHz 1H NMRスペクトルをそれぞれ図1および2に示す。ポリマーのNMRスペクトルは、3.7 ppmでの単一のピークから3.4〜3.8 ppmの間の共鳴の分布へ変化するメトキシプロトンのような、モノマーからの明らかな変化を示し、これはポリマー生成物の分子量に相当する。MALDI-TOF-MSスペクトルで見られる分子量の分布(図3)もまた、ポリマーの形成を確認する。ポリ(2-BHA)の13Cスペクトルは、115.5、116.2、138.2および148.2 ppmで新しいピークを示し、このことから、ポリマー中のC-CおよびC-O-Cカップリングの存在が示唆される(データ示さず)。2-BHAの熱重量測定解析(TGA)プロフィール(図4)から、約125℃までで約15%の質量の喪失があることが示され、ポリ(2-BHA)のTGAから、約275℃までで約15%の質量の喪失があることが示され、このことから、ポリマーの熱安定性にかなりの向上があったことが示唆される。
【実施例2】
【0096】
ポリ(tert-ブチル-ヒドロキノン)の調製
実施例1に記載される方法の変形によって、ポリ(tert-ブチル-ヒドロキノン)を調製した。MALDI-TOF-MSスペクトルで見られた分子量の分布(図5)は、ポリマーの形成を確認する。
【実施例3】
【0097】
モノマー対ポリマーの抗酸化活性の比較
モノマーおよび酵素的に調製されたポリマー性抗酸化物質の抗酸化活性を、ベータカロチン系の漂白の測定によって比較した。該モデル系において、ベータカロチンは、抗酸化剤なしでは急速な変色を経る。アッセイおよび測定は、Jayaprakasha, G.K.ら、Food Chemistry 73: 285-290 (2001)およびHidalgo, M.E.ら、Phytochemistry 37: 1585-1587 (1994)(その全教示は、参照によって本明細書中に援用される)に記載される手順に従って行った。簡潔に述べると、ベータカロチン(0.2 mg)、リノール酸(20 mg)および200 mgのTween-40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)を0.5 mLのクロロホルムに溶解した。クロロホルムを減圧下で除去し、得られた混合物を直ちに10 mLの蒸留水で希釈し、1〜2分よく混合した。得られた乳状液を、過酸化水素水でさらに50 mLにした。乳状液の一部分(4 mL)を、該一部分中に100 ppmのモノマーまたはポリマーが存在するように、ジメチルホルムアミド(DMF)中で0.2 mLの試験試料(モノマーまたはポリマー)と混合した。0.2 mLのDMFを4 mLの上記の乳状液と混合することによって、対照を調製した。試料を50℃でインキュベートした。470 nmでの全ての試料の吸光度を始めに(t=0)測定し、180分まで15分間隔で継続した。2-BHAおよびそのポリマーのアッセイのデータを図6に示す。抗酸化活性を、式:
抗酸化活性=100(1-(A0-At)/(A10-A1t))、
A0=時間0での試験試料の吸光度、
A10=時間0での対照の吸光度、
At=時間t(180分)での試験試料の吸光度、および
A1t=時間t(180分)での対照の吸光度
に基づいて計算する。
【0098】
いくつかのモノマー−ポリマー対の結果を以下の表に示す:
【0099】
【表1】

【実施例4】
【0100】
モノマー対ポリマーの抗酸化活性
いくつかの他の抗酸化モノマー/ポリマー対の抗酸化活性を、実施例3記載の手順によって測定した。
【0101】
【表2】

【実施例5】
【0102】
料理用油の安定性
コーンおよびカノーラ油を、フェノール部分の濃度が均等になるような量で、tert-ブチル-ヒドロキノン(TBHQ)およびポリ(TBHQ)と混合した。油をフライング温度(190℃)まで加熱し、その油安定性指数(oil stability index)を測定した。油安定性指数(American Oil Chemists’ Society Cd 126-92)は、油が急速に酸化し始めるまでの時間の長さを測定する。時間がより長ければ、油がより高い抗酸化能力を有することを示し、これはより長い貯蔵寿命に相当するようである。
【0103】
【表3】

【0104】
上の表は、重合したTBHQが、モノマー性TBHQと比較して、油の酸化の予防により効果的であることを示す。TBHQおよびポリ(TBHQ)の両方は、抗酸化物質を加えていない油よりも、有意により安定している。
【実施例6】
【0105】
抗酸化ポリマーの安全性
化学物質の試験のためのOECDガイドライン基準であるOECD423に基づいて、研究を行った。胃管栄養法を介して、10匹のSDアルビノラットに単回投薬として体重1kgにつき2000mgのポリ(TBHQ)を投与した。投与後、動物を檻に戻し、毒性の徴候を14日間まで観察した。体重を投薬前、および死亡した日、または最後の屠殺前に測定した。第二の研究を、3匹の雌ラットに体重1kgにつき500mgのポリ(TBHQ)を使用して行った。
【0106】
2000mg/kgのポリ(TBHQ)を投与された5匹の雌ラットのうち、3匹が研究の完了前に死亡した。全ての動物が、立毛、鼻水、紅涙、および嗜眠を含む毒性の臨床的徴候を表した。14日生存しなかった動物においては、腸が炎症を起こしていた。どの生存する動物も、肉眼での検死にて異常な徴候を示さなかった。500mg/kgのポリ(TBHQ)を投与された3匹のラットは、研究の期間生存し、毒性のいかなる臨床的徴候を示さなかった。
【0107】
該研究に基づいて、ポリ(TBHQ)の経口LD50を、500mg/kg〜2000mg/kgの間となるように決定した。比較するために、塩化ナトリウムの経口LD50を約3000mg/kgとし、シアン化ナトリウムの経口LD50を約4mg/kgとした。かくして、ポリ(TBHQ)はラットに対して比較的低い毒性を有する。
【実施例7】
【0108】
ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)混合物
押し出し成形法およびフィルム吹き込み形成法を使用して、ポリマー抗酸化剤を含有するポリマーフィルムを調製した。ポリエチレンまたはポリプロピレンの粉末またはペレットを、公知の割合の2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(50ppm)、ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)(50ppm)、または2つの組み合わせ(各々25ppm)で混合した。これらの混合物を溶解し、ペレットへ押し出し成形した。次いで、押し出し成形されたペレットを使用して、吹き込み形成したフィルムを作製した。
【実施例8】
【0109】
ポリ(tert-ブチルヒドロキノン)の調製
tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)のヒドロキシル基を、ピリジン中の無水酢酸と反応させて保護した。次いで、tert-ブチル基に対して遠位のヒドロキシル基を、38℃にてトルエン中のCandida antarcticaリパーゼで選択的に脱保護し、それにより4-アセチルオキシ-3-tert-ブチルフェノールを形成した。該4-アセチルオキシ-3-tert-ブチルフェノールを過酸化水素の存在下、pH4.3にてホースラディッシュ・ペルオキシダーゼで重合した。次いで保護基を、メタノール中1%のHClで処理して除去した。反応スキームを以下に示す:

【0110】
図7で示されるNMRスペクトルは、所望の生成物が合成の各工程で形成されたことを実証する。
【0111】
上で示されたスキームの各工程で形成された化合物の抗酸化活性を、Food Chemistry 73: 285-290 (2001)で公表された手順に従って測定した。データを以下に示す;表中の文字は、上記のスキームにて標識した化合物を言う:
【0112】
【表4】

【0113】
ポリ(TBHQ)が、モノマーTBHQよりも約3倍大きい抗酸化活性を有することが分かった。さらに該方法で調製されたポリ(TBHQ)の抗酸化活性は、ヒドロキシル基を保護および脱保護せずに調製されたポリ(TBHQ)の抗酸化活性よりも、約77%大きい(18.86%対10.68%)ものであった。
【実施例9】
【0114】
ポリ(TBHQ)の調製
リン酸ナトリウムバッファ(0.01M、pH=11、6リットル)およびジメチルホルムアミド(DMF、6リットル)を、機械で動く攪拌器に合った大きな容器中で一緒に混合した。200gのtert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)を該混合物に添加し、その溶液を10分間攪拌した。この溶液に3.9gのヘマチンを添加し、該溶液をさらに30分間攪拌してヘマチンが完全に溶解するのを確かめた。
【0115】
過酸化水素(1.2モル、25%水溶液)を、69mLの過酸化水素(水中の50%溶液)および207mLの脱イオン水を溶解することで調製した。
【0116】
勢いよく攪拌する条件の下で、反応混合物に69mLの25%過酸化水素溶液を添加して重合を開始し、3つのさらなる69mLの25%過酸化水素溶液を15分おきに添加した。4つのさらなる過酸化水素の添加完了後、該反応をさらに24時間攪拌した。
【0117】
反応完了後、溶媒(水およびDMF)を除去し、茶色がかった粉末を得た。粉末を乾燥させ、重炭酸ナトリウムの飽和溶液で何度も洗浄し、ヘマチンの除去を確かめた。粉末をまた石油エーテルで洗浄した。粉末をさらに水で洗浄した。洗浄した生成物を乾燥させ計量したところ、50〜55%の収率であった。
【0118】
この手順はまた、イソプロピルアルコールおよび水の混合溶媒をpH11で使用して行った。
【0119】
(均等論)
本発明はその好ましい態様に関して詳しく示されおよび記載されてきたが、形態および詳細における種々の変更が、添付された特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書中で為され得ることを、当業者によって理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(2-BHA)の高分解能500 MHz 1H NMRスペクトルを示す。
【図2】図2は酵素により重合させたポリ(2-BHA)の高分解能500 MHz 1H NMRスペクトルを示す。
【図3】図3はポリ(2-BHA)のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間マススペクトル (MALDI-TOF-MS) を示し、これはポリマー化学種の分布が形成されたことを示す。
【図4】図4は2-BHAおよびポリ(2-BHA)の比較による熱重量分析を示す。
【図5】図5はポリ(tert-ブチル-ヒドロキノン)(ポリ(TBHQ))のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間マススペクトル (MALDI-TOF-MS) を示し、これはポリマー化学種の分布が形成されたことを示す。
【図6】図6は実施例2に記載されるβカロテン/リノール酸塩(linoleate)モデル系における100 ppmの2-BHAおよびポリ(2-BHA)の抗酸化活性プロフィールを示す。
【図7】図7は(a)2-tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、(b)TBHQジアセタート、(c)TBHQモノアセタート、(d)ポリ(TBHQモノアセタート)、および(e)ポリ(TBHQ)の高分解能500 NMR 1H NMRスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の酸化を阻害する方法であって、前記物質と置換ベンゼン抗酸化ポリマーとを接触させる工程を含み、ここでポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤である、方法。
【請求項2】
置換ベンゼン抗酸化ポリマーがベンゼン一環につき1以上のヒドロキシル部分、またはエステル部分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリエチレンおよびポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)を含む組成物。
【請求項4】
ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)の割合が、約1ppm〜約1,000ppmである、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)の割合が、約10ppm〜約100ppmである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
組成物がフィルムである、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
組成物がペレットである、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
さらに2-tert-ブチル-4-ヒドロキシルアニソールを含む、請求項3記載の組成物。
【請求項9】
2-tert-ブチル-4-ヒドロキシルアニソールの割合が、約1ppm〜約1,000ppmである、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
構造式(I)および(II):


(式中、
Rは、−Hまたは置換もしくは非置換アルキル基、アシル基またはアリール基である;
環Aは、少なくとも1つのtert-ブチル基オルト、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、および0、1以上のさらなる官能基で置換される;
環Bは、少なくとも1つの−Hおよび少なくとも1つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに0、1以上のさらなる官能基で置換される;
nは、2以上の整数である;および
pは、0以上の整数である)
の一方または双方で表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマー、
((1)ここで該ポリマーは、構造式(I)および(II)の一方もしくは双方で表される少なくとも2つの繰り返し単位を含み、構造式(I)および(II)の一方もしくは双方で表される該繰り返し単位は、ベンゼン環の間のC−CもしくはC−O−C結合により直接結合するか、または該ポリマーの各繰り返し単位は抗酸化剤である、ならびに
(2)構造式(I)で表されるいかなる繰り返し単位も含まないポリマーが、環B上で、1以上のヒドロキシル基、またはアシルオキシ基で置換される)
ならびに合成または天然モノマー、およびオリゴマー抗酸化剤、保存剤、およびその組み合わせからなる群のメンバー
を含む、組成物。
【請求項11】
抗酸化ポリマー対合成または天然モノマーおよびオリゴマー抗酸化剤、保存剤、ならびにその組み合わせの比が、約100:1〜約1:100である、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、約0.1ppm〜約10,000ppmの抗酸化ポリマーを含む、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
c)置換または非置換フェノールの少なくとも1つのヒドロキシル基を保護基で保護し、該置換または非置換フェノールは少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有し、それにより1以上の保護化ヒドロキシル基が得られること;および
d)該置換または非置換フェノールを重合すること、
を含み、それにより、フェノール性ポリマーが得られる、フェノール性ポリマーの調製方法。
【請求項14】
置換または非置換フェノールが抗酸化剤である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
1以上の保護化ヒドロキシル基が独立して、エーテル、エステル、シリルエーテル、カーボネート、ホスフィネート、カルバメート、スルホネート、ニトレート、ホスホルアミデート、ホウ酸エステル、ホスフィノチオイルエステル、およびスルフェネートからなる群より選択される官能基の少なくとも1つである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
官能基がエーテルまたはエステルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
官能基がエステルである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
保護基がアセチル基である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
置換または非置換フェノールが、酵素または酵素模倣剤を使用して重合される、請求項13記載の方法。
【請求項20】
酵素または酵素模倣剤が、過酸化水素の存在下で置換または非置換フェノールを重合させる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
酵素または酵素模倣剤がペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、チロシナーゼ、リパーゼ、ヘマチン、チロシナーゼモデル錯体、または金属サレン錯体である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
酵素がペルオキシダーゼである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
置換または非置換フェノールが、化学試薬または光を使用して重合される、請求項13記載の方法。
【請求項24】
置換または非置換フェノールの重合後、少なくとも一部の保護基を取り除く工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項25】
フェノール性ポリマーが抗酸化剤である、請求項13記載の方法。
【請求項26】
フェノール性ポリマーが電気的に伝導性である、請求項13記載の方法。
【請求項27】
a)置換または非置換ヒドロキノンの2つのヒドロキシル基を保護基で保護し、それにより保護化ヒドロキシル基を形成すること;および
b)該置換または非置換ヒドロキノンを重合すること
を含み、それにより、フェノール性ポリマーが得られる、フェノール性ポリマーの調製方法。
【請求項28】
任意に置換されたヒドロキノンを重合する前に、2つのヒドロキシル基のうち1つを脱保護する工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
ヒドロキノンがかさ高いアルキル基で置換され、それによりヒドロキノンの1つのヒドロキシル基が、ヒドロキシル基のかさ高い基に隣接しており、1つのヒドロキシル基がかさ高いアルキル基に対して遠位である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
かさ高いアルキル基に対して遠位であるヒドロキシル基が、重合前に脱保護される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
かさ高いアルキル基に対して遠位であるヒドロキシル基が、酵素によって脱保護される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
リパーゼがヒドロキシル基を脱保護する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
保護化ヒドロキシル基が、エーテル、エステル、シリルエーテル、カルボネート、ホスフィネート、カルバメート、スルホネート、ニトレート、ホスホロアミデート、ホウ酸エステル、ホスフィノチオイルエステル、およびスルフェネートからなる群より独立的に選択される官能基である、請求項27記載の方法。
【請求項34】
官能基が、独立してエーテルまたはエステルである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
官能基が両方ともエステルである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
保護基が両方ともアセチル基である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
置換または非置換ヒドロキノンが、酵素または酵素模倣剤を使用して重合される、請求項27記載の方法。
【請求項38】
任意に置換されたヒドロキノンが、化学試薬または光を使用して重合される、請求項27記載の方法。
【請求項39】
任意に置換されたヒドロキノンの重合後、少なくとも一部の保護基を取り除く工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項40】
フェノール性ポリマーが抗酸化剤である、請求項27記載の方法。
【請求項41】
フェノール性ポリマーが電気的に伝導性である、請求項27記載の方法。
【請求項42】
構造式(XXIX):


(式中、
11、R12、R13、R14、およびR15は独立して−H、−OH、−NH、−SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基もしくはアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換アルコキシ基か、または置換もしくは非置換カルボン酸基である;または、
11、R12、R13、R14、もしくはR15は、隣接したR11、R12、R13、R14、もしくはR15と共に、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基を形成する;
ただし、R11、R12、R13、R14、およびR15の少なくとも1つは、tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基か、または置換もしくは非置換のn-アルコキシカルボニル基であり、R11、R12、R13、R14、およびR15の少なくとも1つは、ヒドロキシル基であり、ならびにR11、R12、R13、R14、およびR15の少なくとも1つは、−Hである)
によって表されるモノマーの少なくとも1つのヒドロキシル基が、保護基で保護されること、
および該モノマーを重合させること、
それによりフェノール性ポリマーを形成することを含む、フェノール性ポリマーの調製方法。
【請求項43】
12、R14、およびR15の1つ以上がtert-ブチル基である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
11が−Hである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
14、およびR15の1つまたは両方が−Hである、請求項44記載の方法。
【請求項46】
13が−H、−OH、または置換もしくは非置換アルキル基である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
モノマーが、




からなる群より選択される少なくとも1員を含む、請求項42記載の方法。
【請求項48】
11、R12、R13、R14、およびR15の1つが−OHであり、ここで両ヒドロキシル基が保護基によって保護され、1つのヒドロキシル基がtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基か、または置換もしくは非置換のn-アルコキシカルボニル基に対して遠位であり、かつ、1つのヒドロキシル基がtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基か、または非置換のn-アルコキシカルボニル基に隣接している、請求項42記載の方法。
【請求項49】
tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基か、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基に対して遠位であるヒドロキシル基が、重合前に脱保護される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基に対して遠位であるヒドロキシル基が、酵素により脱保護される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
リパーゼがヒドロキシル基を脱保護する、請求項50記載の方法。
【請求項52】
tert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基に対して遠位であるヒドロキシル基が、化学的に脱保護される、請求項49記載の方法。
【請求項53】
保護基がアシル基である、請求項42記載の方法。
【請求項54】
保護基がアセチル基である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
モノマーが、酵素または酵素模倣剤を使用して重合される、請求項42記載の方法。
【請求項56】
モノマーが、ペルオキシダーゼを使用して重合される、請求項42記載の方法。
【請求項57】
モノマーが、化学試薬または光を使用して重合される、請求項42記載の方法。
【請求項58】
モノマーの重合後、少なくとも一部の保護基を取り除く工程をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項59】
構造式(XXX):


(式中、
16は保護基である;および
11、R12、R13、R14、およびR15は独立して−H、−OH、−NH、−SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基もしくはアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換アルコキシ基か、または飽和もしくは不飽和カルボン酸基である;または
11、R12、R13、R14、もしくはR15は、隣接したR11、R12、R13、R14、もしくはR15と共に、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基を形成する)
によって表されるモノマーを重合させ、それによりフェノール性ポリマーを形成すること;および
保護基を取り除くことを含む、フェノール性ポリマーの調製方法。
【請求項60】
構造式(I)および(II):


(式中、
Rは−H、または置換もしくは非置換アルキル基、アシル基もしくはアリール基である;
環Aは、少なくとも1つのtert-ブチル基(ヒドロキシル基またはアシルオキシ基に対してオルトである)、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、および0、1以上のさらなる官能基で置換される;
環Bは、少なくとも1つの−H、および少なくとも1つのtert-ブチル基(ヒドロキシル基またはアシルオキシ基に対してオルトである)、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基、ならびに0、1以上のさらなる官能基で置換される;
nは、2以上の整数である;および
pは、0以上の整数である)
の一方または双方を含む繰り返し単位を含み、
(1)ポリマーの各々の繰り返し単位は、抗酸化剤である、および
(2)構造式(I)で表されるいかなる繰り返し単位も含まないポリマーが、環B上で、1以上のヒドロキシル基、またはアシルオキシ基で置換される、
抗酸化ポリマー。
【請求項61】
環Aおよび環Bが、それぞれ少なくとも1つのtert-ブチル基で置換される、請求項60記載の抗酸化ポリマー。
【請求項62】
環Aおよび環Bが、それぞれ少なくとも1つの置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基で置換される、請求項60記載の抗酸化ポリマー。
【請求項63】
アルキレンジオキシ基がメチレンジオキシ基である、請求項62記載の抗酸化ポリマー。
【請求項64】
構造式(III)および(IV):


の一方または双方で表される繰り返し単位を含む、請求項60記載の抗酸化ポリマー。
【請求項65】
さらなる官能基が、−OH、−NH、−SH、置換もしくは非置換アルキル基もしくはアリール基、置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換アルコキシ基、および飽和もしくは不飽和カルボン酸基からなる群より選択される、請求項60記載の抗酸化ポリマー。
【請求項66】
さらなる官能基が、−OH、置換もしくは非置換アルコキシ基、および飽和もしくは不飽和カルボン酸基からなる群より選択される、請求項60記載の抗酸化ポリマー。
【請求項67】





からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を含む、請求項60記載の抗酸化ポリマー。
【請求項68】
抗酸化ポリマーが、





からなる群より選択された繰り返し単位からなる、請求項65記載の抗酸化ポリマー。
【請求項69】
ポリマーが、ポリ(2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール)である、請求項68記載のポリマー。
【請求項70】
構造式(XIX)


式中、Rは-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、R4、R5、R6、R7およびR8は独立して-H、-OH、-NH、-SH、置換もしくは非置換アルキルもしくはアリール基、または置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基であり、重合が化学的方法により触媒される;ならびに
ただし:
(1)R4、R5、R7およびR8の少なくとも一つがtert-ブチル基、または置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも二つが-Hである;または
(2)R4、R5、R7およびR8の少なくとも一つがtert-ブチル基、または置換もしくは非置換アルコキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも一つがヒドロキシル、アルコキシ、アルコキシカルボニルもしくはアリールオキシカルボニル基であり、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも一つが-Hである、
で表されたモノマーを重合させる工程を含む、抗酸化ポリマーの調製方法。
【請求項71】
重合が塩化鉄またはメタロセンにより触媒される、請求項70記載の方法。
【請求項72】
重合が陰イオン試薬により触媒される、請求項70記載の方法。
【請求項73】
食用品、ならびに構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される組成物。
【請求項74】
食用品が油であるかまたは油を含有し、油が綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、コーン油、落花生油、ダイズ油、ひまし油、やし油、ベニバナ油、ひまわり油、カノーラ油およびゴマ油からなる群より選択される、請求項73記載の組成物。
【請求項75】
食用品が穀物、飲料、チューインガム、クラッカー、ポテトフレーク、パン製品およびパンミックス(mixes)、デザートミックス(dessert mixes)、肉製品、調味料、ナッツ、イースト(yeast)ならびにキャンディーからなる群より選択される、請求項73記載の組成物。
【請求項76】
包装試料、ならびに構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される、包装のための組成物。
【請求項77】
包装材料がポリマー、紙、段ボールおよびその組み合わせからなる群より選択される物質を含む、請求項76記載の組成物。
【請求項78】
抗酸化ポリマーが包装材料と混和されるかまたは混合される、請求項76記載の組成物。
【請求項79】
包装材料が抗酸化ポリマーと共に押出し成形される一つ以上のポリマーを含む、請求項76記載の組成物。
【請求項80】
包装材料が、防湿性(moisture-resistant)ポリマーまたは防湿性ポリマーの混合物の層の間に、酸素を通さない(oxygen-resistant)ポリマーまたは酸素を通さないポリマーの混合物の層を含み、防湿性ポリマーの層が同一であるかまたは異なる、請求項79記載の組成物。
【請求項81】
酸素を通さないポリマーまたは酸素を通さないポリマーの混合物が、エチレンビニルアルコールコポリマーを含む、請求項80記載の組成物。
【請求項82】
防湿性ポリマーまたは防湿性ポリマーの混合物が、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含む、請求項81記載の組成物。
【請求項83】
構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む一つ以上の異なる抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される、組成物。
【請求項84】
少なくとも一つの抗酸化ポリマーがホモポリマーである、請求項83記載の組成物。
【請求項85】
少なくとも一つの抗酸化ポリマーがコポリマーである、請求項83記載の組成物。
【請求項86】
少なくとも一つの抗酸化ポリマーがホモポリマーであり少なくとも一つの抗酸化ポリマーがコポリマーである、請求項83記載の組成物。
【請求項87】
石鹸または化粧剤、ならびに構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方もしくは双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される、組成物。
【請求項88】
該組成物が約1〜約20重量%の抗酸化ポリマーを含む、請求項87記載の組成物。
【請求項89】
薬学的に活性のある薬剤、ならびに構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される、医薬組成物。
【請求項90】
医薬組成物が液体である、請求項89記載の医薬組成物。
【請求項91】
構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基(オルト)、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換され、ならびに一つ以上の石油製品、一つ以上の潤滑剤、一つ以上の塗料、または一つ以上のエラストマーをさらに含む、組成物。
【請求項92】
ビタミン、ならびに構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される、ビタミン組成物。
【請求項93】
a) 構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含み、
(1)ポリマーが構造式(I)および(II)の一方または双方により表される繰り返し単位を少なくとも二つ含み、構造式(I)および(II)の一方または双方により表される繰り返し単位がベンゼン環の間をC-CまたはC-O-C結合により直接連結されるか、またはポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される抗酸化ポリマー、ならびに
b) 防湿性ポリマーの層が同一であるかまたは異なる、防湿性ポリマーまたは防湿性ポリマーの混合物の層の間の、酸素を通さないポリマーまたは酸素を通さないポリマーの混合物の層、
を含むスマートパッケージング(smart packaging)材料。
【請求項94】
構造式(I)および(II)


式中、Rが-Hまたは置換もしくは非置換アルキル、アシルもしくはアリール基であり、
環Aが少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基および0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され、
環Bが少なくとも一つの-Hおよび少なくとも一つのtert-ブチル基、1-エテニル-2-カルボン酸基もしくはそのエステル、置換もしくは非置換アルキレンジオキシ基、または置換もしくは非置換n-アルコキシカルボニル基ならびに0個、1個もしくはそれ以上のさらなる官能基により置換され;
nが2以上の整数であり、
pが0以上の整数である、
の一方または双方により表される繰り返し単位を含む抗酸化ポリマーによる腐食の危険性のある金属のコーティングを含み、
(1)ポリマーの各繰り返し単位が抗酸化剤であり、
(2)構造式(I)で表される任意の繰り返し単位を含まないポリマーが、環Bで一つ以上のヒドロキシル基またはアシルオキシ基に置換される、腐食の防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【公表番号】特表2007−523234(P2007−523234A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551301(P2006−551301)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/001946
【国際公開番号】WO2005/071005
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506248317)ユニバーシティ オブ マサチューセッツ ローウェル (2)
【出願人】(506248351)アメリカ合衆国 (1)
【Fターム(参考)】