説明

高周波モジュールの製造方法および高周波モジュール

【課題】シールド導電層が接続されるビア導体が脱落することを防止しつつ、シールド導電層とグランド電位のビア導体を確実に接続することが可能で、信頼性の高い高周波モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】周縁部にグランド電位と導通するビア導体1を備えた複数の個基板10がマトリックス状に連設された集合基板20に電子部品11,12を実装し、集合基板の部品実装面と電子部品を封止層30により封止した後、封止層が形成された面側から切削することにより、封止層を貫通して分断し、さらに、集合基板の厚み方向の途中にまで達するハーフカット溝40を形成してその底面のみにビア導体1を露出させた後、封止層を覆うとともに、ハーフカット溝の底面に露出したビア導体と導通するようにシールド導電層50を形成し、その後、集合基板をカットして、それぞれが、ビア導体を介してシールド導電層がグランド電位と導通する個々の個基板に分割する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波モジュールの製造方法および高周波モジュールに関し、詳しくは、電子部品を実装した個基板の部品実装面が絶縁性材料からなる封止層により封止され、かつ、封止層を覆うように、グランド電位と導通するシールド導電層が配設された構造を有する高周波モジュールの製造方法および該製造方法で製造することが可能な高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波モジュールの一つに、基板の部品実装面上に電子部品を搭載するとともに、該部品実装面および電子部品を絶縁性の樹脂などの封止層により封止し、封止層の表面(モジュールの表面)をグランド電位に導通する、導電性材料からなるシールド導電層で覆うことにより、外部からの電磁波の侵入や、外部への電磁波の漏洩を低減することができるようにした高周波モジュールがある。
【0003】
そして、このような構造を有するモジュールの製造方法として、以下に説明するような電子モジュールの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1の方法においては、まず、図16に示すように、グランド電位(グランド電極G)と導通する電極(ビア導体)101を備えた複数の個基板110の集合体である集合基板110aに電子部品102,103を実装するとともに、部品実装面および電子部品102,103を封止層(封止樹脂)104で封止する。
【0005】
それから、図17に示すように、封止樹脂104により封止された集合基板110aを、基準ラインSに沿って、封止層(封止樹脂)104側から切削し、封止層(封止樹脂)104を貫通して、集合基板110aの厚み方向の途中にまで達するハーフカット溝105を形成し、該ハーフカット溝105の側面105a、および底面105bに、ビア導体101を露出させ、下記のシールド導電層106との接触面積を十分に確保できるようにする。
【0006】
それから、図18に示すように、封止層(封止樹脂)104を覆うとともに、ハーフカット溝105の側面105aおよび底面105bに露出したビア導体101と導通するようにシールド導電層106を形成する。
【0007】
そして、その後、さらに必要な工程を経て、個々の個基板(電子モジュール)110に分割する。
【0008】
特許文献1の電子モジュールの製造方法では、このようにして、基板(個基板)110上に電子部品102,103が搭載され、かつ、電子部品102,103およびその搭載面が封止層(封止樹脂)104により封止されているとともに、封止層(樹脂樹脂)104の表面が、グランド電位に導通するシールド層により覆われた電子モジュールを得るようにしている。
【0009】
そして、この特許文献1の方法によれば、集合基板110aをハーフカットする際に、ビア導体101の側部をカットして、ハーフカット溝105の側面105aに、切削により形成されたビア導体101の側面101aを露出させるとともに、ハーフカット溝105の底面105bにビア導体101の水平面(切削により形成されたビア導体の水平面)101bを露出させることにより、シールド導電層とグランド電位のビア導体101との接触面積が大きくなり、その点では高い接続信頼性を確保することが可能になる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の方法の場合、シールド導電層106との接触面積を大きくするために、ビア導体101の側面101aと水平面101bを露出させるようにしていることから、ビア導体101が集合基板110a側から、ハーフカット溝105側に脱落する懸念があり、信頼性が低下するという問題点がある。
【0011】
また、他のモジュールの製造方法として、集合基板をハーフカットすることにより、内部のグランド電位の内部電極層(面内電極)を、ハーフカット溝の側面に露出させた後、シールド導電層とハーフカット溝の側面に露出した面内電極とを接続させるようにした回路モジュールの製造方法が開示されている(特許文献2、図3参照)。
【0012】
しかしながら、特許文献2の方法の場合、シールド導電層と導通させる内部電極層(面内電極)の厚みが、ハーフカット溝の深さ寸法に比べて、著しく小さい(薄い)ため、ハーフカット溝の深さ精度によっては、ハーフカット溝の側面に内部電極層(面内電極)を露出させることができない場合が生じる。例えば、内部電極層(面内電極)が集合基板の下面に近い位置に形成されているような場合には、集合基板を切断してしまわないようにハーフカット溝を形成して、ハーフカット溝の側面に内部電極層(面内電極)を露出させることが困難になる。
【0013】
また、内部電極層(面内電極)をハーフカット溝の側面に露出させることができたとしても、内部電極層(面内電極)の厚みは薄いため、シールド導電層と内部電極層(面内電極)の接触面積が小さく、接続信頼性が不十分になりやすいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−218484号公報
【特許文献2】特開2008−288610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するものであり、シールド導電層が接続されるビア導体が脱落することを防止しつつ、シールド導電層とグランド電位のビア導体を確実に接続することが可能で、外部からの電磁波の侵入や、外部への電磁波の漏洩を低減することが可能な、信頼性の高い高周波モジュールの製造方法および該製造方法で製造することが可能な信頼性の高い高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するため、本発明の高周波モジュールの製造方法は、
グランド電位と導通するビア導体を備えた個基板の部品実装面に電子部品が実装され、前記部品実装面が前記電子部品とともに絶縁性材料からなる封止層により封止され、かつ、前記封止層を覆うとともに上記ビア導体と導通するようにシールド導電層が配設された構造を有する高周波モジュールの製造方法であって、
それぞれが周縁部にグランド電位と導通するビア導体を備えた複数の個基板がマトリックス状に連設された集合基板を準備する工程と、
前記集合基板の部品実装面上に所定の電子部品を実装する工程と、
前記集合基板の前記部品実装面と前記電子部品を、絶縁性材料からなる封止層により封止する工程と、
前記封止層が配設された前記集合基板を、前記封止層が形成された面側から切削することにより、前記封止層を貫通して分断し、さらに、前記集合基板の厚み方向の途中にまで達するハーフカット溝を形成して、前記ハーフカット溝の底面のみに、前記ビア導体を露出させる工程と、
前記封止層を覆うとともに、前記ハーフカット溝の底面に露出した前記ビア導体と導通するようにシールド導電層を形成する工程と、
前記集合基板をカットすることにより、それぞれが、前記ビア導体を備え、前記シールド導電層が前記ビア導体を介してグランド電位と導通する個々の個基板に分割する工程と
を備えていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の高周波モジュールの製造方法は、
前記ハーフカット溝を介して隣接する一対の個基板についてみた場合に、前記ハーフカット溝の底面に露出した前記ビア導体が、前記一対の個基板に跨るように配設されているとともに、
前記一対の個基板に跨る前記ビア導体が、前記集合基板をカットして個々の個基板に分割する工程で、前記一対の個基板のそれぞれに属する2つのビア導体に分割され、かつ、
分割された前記一対の個基板のそれぞれにおいて、前記シールド導電層が、前記2つに分割されたビア導体を介してグランド電位と導通するように構成されていること
を特徴としている。
【0018】
また、本発明の高周波モジュールの製造方法においては、前記ビア導体が、前記集合基板を貫通して形成されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明の高周波モジュールは、
部品実装面に電子部品が実装され、周縁部が前記部品実装面より標高の低い段差部とされた基板と、
前記基板の底面に配設され、グランド電位にある外部電極と、
絶縁性材料からなり、前記電子部品を前記部品実装面とともに封止する封止層と、
前記封止層を覆うシールド導電層と、
前記シールド導電層と前記外部電極とが導通するように、前記基板の周縁部の前記段差部を貫通して形成されたビア導体と
を備え、
前記ビア導体は、前記基板の前記段差部の表面に露出している端面のみで前記シールド導電層と接続されていること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の高周波モジュールの製造方法は、電子部品が実装され、封止層により封止された集合基板を、封止層が形成された面側から切削し、封止層を貫通して分断し、さらに、集合基板の厚み方向の途中にまで達するハーフカット溝を形成して該ハーフカット溝の底面のみにビア導体を露出させ、封止層を覆うとともに、ハーフカット溝の底面に露出したビア導体と導通するシールド導電層を形成した後、所定の位置で集合基板をカットして、それぞれが、ビア導体を介してシールド導電層がグランド電位と導通する個々の個基板に分割するようにしているので、上述の従来技術(特許文献1)のように、ビア導体がハーフカット溝の側面から露出することがなく、該側面からビア導体が脱落することもないので、シールド導電層とグランド電位のビア導体を確実に接続して、信頼性の高い高周波モジュールを効率よく製造することが可能になる。
【0021】
また、ビアホールは、基板内に配設される内部電極層などに比べて、厚みが大きいため、事実上、ハーフカット溝の深さ精度に影響されることなく、確実にシールド導電層をグランド電位のビア導体に接続することができる。
【0022】
なお、本発明において用いられている集合基板についての、「……周縁部にグランド電位と導通するビア導体を備えた複数の個基板において……」の記載における周縁部とは、集合基板を平面視した場合のそれぞれの個基板の外周に近い領域であって、高周波モジュールを構成する要素が存在せず、ハーフカット溝を形成することに支障のない領域をいう。
【0023】
また、ハーフカット溝を介して隣接する一対の個基板についてみた場合に、ハーフカット溝の底面に露出したビア導体が、一対の個基板に跨るように配設されており、かつ、一対の個基板に跨るビア導体が、集合基板をカットして、個々の個基板に分割する工程で、一対の個基板のそれぞれに属する2つのビア導体に分割され、かつ、分割された一対の個基板のそれぞれにおいて、シールド導電層が、2つに分割されたビア導体を介してグランド電位と導通するように構成した場合、2つの個基板に対して1つのビア導体を配設するだけで、シールド導電層とグランド電位のビア導体とが確実に接続された、信頼性の高い高周波モジュールを効率よく製造することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0024】
また、ビア導体が、集合基板を貫通して形成されている場合、ビア導体の、集合基板の厚み方向の寸法を最大化することが可能になり、ハーフカット溝の深さ寸法の精度に影響されることなく、ビア導体をハーフカット溝の底面に確実に露出させて、シールド導電層とグランド電位のビア導体とを確実に導通させることが可能になり、本発明をさらに実効あらしめることができる。
また、集合基板を貫通してビア導体を形成することにより、ビア導体を個基板に強固に固定することが可能になる。
さらに、個基板の底面に、ビア導体と接続する外部電極を形成することにより、この外部電極をグランド電位にすることが可能になり、構成の自由度を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の高周波モジュールは、基板(個基板)の周縁部の段差部を貫通するように形成されたビア導体により、グランド電位にある外部電極とシールド導電層とを導通させるようにしているので、シールド導電層を短い距離でグランド電位にある外部電極に接続することが可能になり、シールド導電層のシールド性能を向上させることができる。
なお、この高周波モジュールは、本発明の請求項3の方法を適用することにより製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の方法により製造される高周波モジュールの構成を示す正面断面図である。
【図2】(a)は図1の高周波モジュールの製造に用いられる、電子部品を実装した状態の集合基板の要部を示す平面図であり、(b)は(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【図3】図2(b)の封止層が形成された集合基板にハーフカット溝を形成した状態を示す正面断面図である。
【図4】ハーフカット溝が形成された図3の集合基板にシールド導電層を形成した状態を示す正面断面図である。
【図5】図4の集合基板を所定の位置でカットして個々の個基板に分割した状態を示す正面断面図である。
【図6】(a)は本発明の実施例2において用いた集合基板に電子部品を実装した状態を示す図であり、(b)は(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【図7】図6(b)の封止層が形成された集合基板にハーフカット溝を形成した状態を示す正面断面図である。
【図8】ハーフカット溝が形成された図7の集合基板にシールド導電層を形成した状態を示す正面断面図である。
【図9】図8の集合基板を所定の位置でカットして個々の個基板に分割した状態を示す正面断面図である。
【図10】実施例2の方法により製造される高周波モジュールの構成を示す正面断面図である。
【図11】(a)は本発明の実施例3において用いた集合基板に電子部品を実装した状態を示す図であり、(b)は(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【図12】実施例3の方法により製造される高周波モジュールの構成を示す正面断面図である。
【図13】(a)は本発明の実施例4において用いた集合基板に電子部品を実装した状態を示す図であり、(b)は(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【図14】実施例4の方法により製造される高周波モジュールの構成を示す正面断面図である。
【図15】本発明の実施例にかかる高周波モジュールの構成を示す正面断面図である。
【図16】従来の電子モジュールの製造方法の一工程を示す図である。
【図17】従来の電子モジュールの製造方法の他の工程を示す図である。
【図18】従来の電子モジュールの製造方法のさらに他の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0028】
この実施例では、図1に示すように、グランド電位(グランド電極G)と導通するビア導体1(この実施例1ではビア導体1は、個基板10を貫通するように配設されている)、外部電極13を備えた個基板10の部品実装面に電子部品(例えば半導体装置11や積層セラミックコンデンサ12など)が実装され、部品実装面が電子部品11,12とともに絶縁性材料からなる封止層30により封止され、かつ、封止層30を覆うとともに上記ビア導体1と導通するようにシールド導電層50が配設された構造を有する高周波モジュールMを製造する場合を例にとって説明する。
【0029】
なお、図1における個基板10の内部に配設されたグランド電極Gなどの内部電極の配設態様や、電子部品11,12の配設態様などはあくまで模式的なものであり、必要に応じて種々の態様とすることが可能である。
【0030】
以下、図1の高周波モジュールMの製造方法について説明する。
(1)まず、図2(a),(b)に示すように、それぞれが周縁部にビア導体1、すなわち、グランド電位(グランド電極G)と導通するビア導体1、外部電極13を備えた複数の個基板10がマトリックス状に連設された集合基板20を準備する。なお、図2(a)は、図1の高周波モジュールの製造に用いられる集合基板20に電子部品11,12を実装した状態を示す図であり、(b)は(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【0031】
なお、この実施例1で用いた集合基板20において、ビア導体1は集合基板20を構成する各個基板10を上面側から下面側まで貫通して配設されている。
ただし、本発明においては、ビア導体1を、各個基板10に分割される集合基板20を貫通しないような態様で、集合基板20の内部に配設することも可能である。
【0032】
(2)そして、集合基板20を構成する各個基板10上に所定の電子部品11,12を実装する(図2(a)参照)。
なお、本発明において、実装する電子部品の種類に特別の制約はなく、高周波モジュールを構成するのに必要な種々の電子部品を実装することができる。
【0033】
(3)それから、集合基板20の部品実装面および部品実装面上に実装された電子部品11,12を封止する、絶縁性材料からなる封止層(絶縁層)30を形成する(図2(b)参照)。
【0034】
なお、封止層を構成する材料としては、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂や、絶縁性樹脂に、シリカ、水酸化アルミニウムなどの無機フィラーを配合したものなどが用いられる。そして、これらの材料を塗布して、硬化させることにより、図2(b)に示すように、封止層30が形成される。
【0035】
(4)次に、図3に示すように、封止層30を配設した集合基板20を、ダイシングブレードを用いて、封止層30が形成された面側から切削して、封止層30を貫通して分断し、さらに、集合基板20の厚み方向の途中にまで達するハーフカット溝40を形成することにより、ハーフカット溝40の底面40aに、ビア導体1を露出させる。ここで、ビア導体1は、その上端面がハーフカット溝40の底面40aに露出しているのみで、他の部分は露出せず、集合基板20の内部に位置している。そのため、ビア導体1は脱落したりすることなく、確実に集合基板20に保持されることになる。
【0036】
なお、実施例1では、隣り合う個基板10間に位置する2つのビア導体1の両方が位置する領域(図2(a),(b)など参照)を一度に切削して、両方のビア導体1を、ハーフカット溝40の底面40aに露出させることが可能な幅を有するダイシングブレードを用いてハーフカットを行った。このようにハーフカットを行うことにより、一回のハーフカットを実施するだけで、ハーフカット溝40の底面40aに、隣り合う個基板10間に位置する2つのビア導体1の両方を効率よく露出させることが可能になる。
【0037】
(5)それから、図4に示すように、封止層30を覆うとともに、ハーフカット溝40の底面40aに露出したビア導体1と導通するようにシールド導電層50を形成する。
【0038】
なお、この実施例では、シールド導電層50を形成するにあたって、導電成分(通常は金属粉末)と樹脂を主たる成分とする導電性樹脂を、封止層30を覆うとともに、ハーフカット溝40に充填されるような態様で塗布して、硬化させることによりシールド導電層50を形成した。このシールド導電層50は、封止層30を被覆し、かつ、ハーフカット溝40の底面40aに露出した、グランド電位(グランド電極G)と導通するビア導体1に接続されることにより、シールド機能を果たす。なお、シールド導電層を構成する材料としては、上述のように、導電成分と樹脂とを主たる成分とする種々の導電樹脂や、めっき金属などの導電性金属材料などを用いることが可能である。
【0039】
(6)次に、所定のカットライン(基準位置)Sに沿って集合基板20をカットして、図5に示すように、集合基板20を個々の個基板10に分割する。このとき、ブレードとして、上述のハーフカット工程で用いたダイシングブレードよりも幅が狭いブレードを用いて集合基板20をカットし、分割されたそれぞれの個基板10にビア導体1が存在するようにして、シールド導電層50がビア導体1を介してグランド電極Gと確実に導通した個基板(高周波モジュール)が得られるようにした。
【0040】
これにより、図1に示す、ビア導体1を備え、シールド導電層50がビア導体1を介してグランド電極Gと導通した構造を有する個々の個基板(高周波モジュールM)が得られる。
【0041】
なお、この実施例1の高周波モジュールにおいては、図1に示すように、左右それぞれ1つのビア導体1(合計2つのビア導体1)がシールド導電層50に接続されているが、シールド導電層50に接続されるビア導体1の数に特別の制約はない。ただし、複数のビア導体1をシールド導電層50と接続するようにした場合、より確実にグランドに接続することが可能になり、信頼性を向上させることができる。
【実施例2】
【0042】
上記実施例1では、集合基板20として、各個基板10のうち、隣り合う一対の個基板10間には、集合基板20を貫通する2つのビア導体1が配設されており、分割後には、上記2つのビア導体1のうちの一つが、一対の個基板10のうちの一方の個基板10に位置し、上記2つのビア導体のうちの他の1つが、他方の個基板10に位置するように構成された集合基板20を用いたが、この実施例2では、図6(a),(b)に示すように、隣り合う個基板10間には、集合基板20を貫通する1つのビア導体(分割される前のビア導体)1aが配設され、集合基板20を各個基板に分割する際に、該1つのビア導体1aが2つに分割されて、隣り合う各個基板のそれぞれに存在するビア導体1となるように構成された集合基板20を用いた。
【0043】
そして、この集合基板20を用いて、上記実施例1と同様の方法および手順により、
(a)電子部品11,12の実装、
(b)集合基板20の部品実装面と該部品実装面上に実装された電子部品11,12を封止する封止層30の形成、
(c)封止層30が形成された面側からハーフカットを行うことによる、底面にビア導体1aが露出したハーフカット溝40の形成(図7参照)、
(d)シールド導電層50の形成(図8参照)、
(e)集合基板20をカットすることによる個々の個基板10への分割(図9参照)
の各工程を経て、1つのビア導体1aが前記(e)の工程で分割されることにより、図10に示すように、隣り合う一対の個基板10のそれぞれに位置するビア導体1となり、シールド導電層50が、このビア導体1を介してグランド電極Gと導通した構造を有する高周波モジュールMを得た。
なお、ハーフカット溝40を形成した後に、シールド導電層50を形成し、その後に集合基板20をカットするようにしているので、集合基板20をカットする工程で一つのビア導体1aを2つに分割する際にも、分割されたビア導体1が脱落するおそれはない。
【0044】
上述の実施例1では、隣り合う一対の個基板10間に、分割後にそれぞれの個基板10のビア導体1として機能する2個のビア導体1を配設していたが、この実施例2では、隣り合う一対の個基板10間に1つのビア導体1aを配設するだけで、分割後に、それぞれがビア導体1を備えた個基板(高周波モジュールM)を効率よく製造することができる。
【実施例3】
【0045】
図11(a)は本発明の他の実施例(実施例3)で用いた集合基板を示す図、本図11(b)は図11(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【0046】
上記実施例1では、集合基板20として、各個基板10のうち、隣り合う一対の個基板10間には、集合基板20を貫通する2つのビア導体1が配設されており、分割後には、上記2つのビア導体1のうちの一つが、一対の個基板10のうちの一方の個基板10に位置し、上記2つのビア導体1のうちの他の1つが、他方の個基板10に位置するように構成された集合基板20を用いたが、本発明においては、図11に示すように、ビア導体1が、集合基板20(個基板)の上面側から、集合基板20の厚み方向の途中にまで達するような、集合基板20を貫通していない状態で配設されている集合基板20を用いることも可能である。
【0047】
図11(a),(b)に示すように、集合基板20を貫通していないビア導体1を備えた集合基板20を用いた場合にも、上記実施例1と同様の方法および手順により、図12に示すような構造を有する、シールド導電層50が、個基板10を貫通していないビア導体1を介してグランド電極Gに接続された高周波モジュールMを得ることができる。
【実施例4】
【0048】
図13(a)は本発明の他の実施例(実施例4)で用いた集合基板を示す図、本図13(b)は図13(a)の集合基板の部品実装面を封止層により封止した状態を示す正面断面図である。
【0049】
上記実施例2では、図6(a),(b)に示すように、隣り合う個基板10間には、集合基板20を貫通する1つのビア導体(分割される前のビア導体)1aが配設され、集合基板20を各個基板10に分割する際に、該1つのビア導体1aが2つに分割されて、隣り合う各個基板10のそれぞれに存在するビア導体1となるように構成された集合基板20を用いているが、本発明においては、図13に示すように、1つのビア導体(分割される前のビア導体)1aが、集合基板20の厚み方向の途中にまで達するような貫通していない状態で配設されている集合基板20を用いることも可能である。
【0050】
図13(a),(b)に示すように、集合基板20を貫通していないビア導体1aを備えた集合基板20を用いた場合にも、上記実施例2と同様の方法および手順により、図14に示すような構造を有する、シールド導電層50が、個基板10を貫通していないビア導体1を介してグランド電極Gに接続された高周波モジュールMを得ることができる。
【0051】
なお、上記の実施例3および4では、集合基板を貫通していないビア導体1あるいはビア導体1aが、上面側に露出した集合基板20を用いているが、ハーフカット溝を形成する工程で露出させることが可能でありさえすれば、集合基板20の上面側および下面側のいずれにも露出しないような態様でビア導体1あるいはビア導体1aが集合基板20の内部に配設されていてもよい。
【実施例5】
【0052】
図15は、本発明の実施例にかかる高周波モジュールを示す正面断面図である。
この高周波モジュールMは、上述の外部電極13を、特に図示しないグランド電極と接続される電極とし、この外部電極13をビア導体1の下端面に直接接続するように配設した構造を有している。その他の構成は、上述の実施例1の方法で製造した、図1に示す高周波モジュールMと同一であり、図15において、図1と同一符号を付した部分は同一部分を示している。
【0053】
この実施例5の高周波モジュールは、上述のように、基板(個基板)の周縁部の、部品実装面よりも標高が一段低い段差部を貫通するように形成されたビア導体により、グランド電位にある外部電極とシールド導電層とを導通させるようにしているので、シールド導電層を短い距離でグランド電位にある外部電極に接続することが可能になり、シールド導電層のシールド性能を向上させることができる。
なお、この実施例5の高周波モジュールは、例えば、上記実施例1の方法を適用し、外部電極の配設位置を調整することにより、効率よく製造することができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、ビア導体の具体的な配設態様、集合基板および個基板の具体的な構成、封止層およびシールド導電層を構成する材料、ハーフカット溝を形成する際に用いる治具の種類、集合基板をカットして個基板に分割する方法などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ビア導体
1a 分割される前のビア導体
10 個基板
11,12 電子部品
13 外部電極
20 集合基板
30 封止層
40 ハーフカット溝
40a ハーフカット溝の底面
50 シールド導電層
G グランド電位(グランド電極)
M 高周波モジュール
S カットライン(基準位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド電位と導通するビア導体を備えた個基板の部品実装面に電子部品が実装され、前記部品実装面が前記電子部品とともに絶縁性材料からなる封止層により封止され、かつ、前記封止層を覆うとともに上記ビア導体と導通するようにシールド導電層が配設された構造を有する高周波モジュールの製造方法であって、
それぞれが周縁部にグランド電位と導通するビア導体を備えた複数の個基板がマトリックス状に連設された集合基板を準備する工程と、
前記集合基板の部品実装面上に所定の電子部品を実装する工程と、
前記集合基板の前記部品実装面と前記電子部品を、絶縁性材料からなる封止層により封止する工程と、
前記封止層が配設された前記集合基板を、前記封止層が形成された面側から切削することにより、前記封止層を貫通して分断し、さらに、前記集合基板の厚み方向の途中にまで達するハーフカット溝を形成して、前記ハーフカット溝の底面のみに、前記ビア導体を露出させる工程と、
前記封止層を覆うとともに、前記ハーフカット溝の底面に露出した前記ビア導体と導通するようにシールド導電層を形成する工程と、
前記集合基板をカットすることにより、それぞれが、前記ビア導体を備え、前記シールド導電層が前記ビア導体を介してグランド電位と導通する個々の個基板に分割する工程と、
を備えていることを特徴とする高周波モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記ハーフカット溝を介して隣接する一対の個基板についてみた場合に、前記ハーフカット溝の底面に露出した前記ビア導体が、前記一対の個基板に跨るように配設されているとともに、
前記一対の個基板に跨る前記ビア導体が、前記集合基板をカットして、個々の個基板に分割する工程で、前記一対の個基板のそれぞれに属する2つのビア導体に分割され、かつ、
分割された前記一対の個基板のそれぞれにおいて、前記シールド導電層が、前記2つに分割されたビア導体を介してグランド電位と導通するように構成されていること
を特徴とする請求項1記載の高周波モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記ビア導体が、前記集合基板を貫通して形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の高周波モジュールの製造方法。
【請求項4】
部品実装面に電子部品が実装され、周縁部が前記部品実装面より標高の低い段差部とされた基板と、
前記基板の底面に配設され、グランド電位にある外部電極と、
絶縁性材料からなり、前記電子部品を前記部品実装面とともに封止する封止層と、
前記封止層を覆うシールド導電層と、
前記シールド導電層と前記外部電極とが導通するように、前記基板の周縁部の前記段差部を貫通して形成されたビア導体と
を備え、
前記ビア導体は、前記基板の前記段差部の表面に露出している端面のみで前記シールド導電層と接続されていること
を特徴とする高周波モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−164913(P2012−164913A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25832(P2011−25832)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)