説明

高周波成分除去装置

【課題】微弱な低周波信号を変調する際に用いられる変調のためのキャリアが復調後に高調波成分として信号情報に残存する場合に、このキャリアの高調波成分である周期的なリップルやサージ電圧成分を簡易な構成で且つ広帯域に亘って確実に除去する。
【解決手段】入力信号を当該入力信号にキャリアで変調された変調信号を高周波増幅し、当該高周波増幅された高周波信号を同期検波して低周波信号として出力し、当該低周波信号に重畳された高調波成分を除去する高調波成分除去装置において、前記入力信号の周波数に対して2倍より高い周波数で、且つ前記キャリアの周波数に対して整数倍又は整数分の一倍の周波数からなるサンプリング周波数で前記同期検波後の信号をサンプリングするサンプリング手段として、サンプリング信号生成回路7、サンプリング回路8及び低周波生成回路9を備え、前記サンプリング手段から出力される複数のサンプリング値に基づいて低周波信号に重畳された高調波成分を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波信号に重畳された高周波成分を除去する高周波成分除去装置に関し、特に微弱な低周波信号を変調・復調する際に出力に重畳されたキャリアの高周波成分若しくはサージ電圧等を除去する高周波成分除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、センサ等で検出されたアナログの微弱な信号から信号情報を出力する信号処理装置としては、この微弱な信号を高周波のキャリアで変調し、この変調された変調信号を高周波増幅し、この高周波増幅した変調信号を同期検波し、この同期検波した変調信号をローパスフィルタで低周波信号として復調する構成である。このローパスフィルタは、微弱な出力信号に重畳された変調波の高周波とスイッチングサージ電圧を除去している。
【0003】
また、他の背景技術の高周波成分除去装置は、特許文献1に周期ノイズ除去装置として開示されるものがある。この周期ノイズ除去装置は、周期的に重畳されるノイズをその前後の信号成分を使って近似するとともに、ノイズを含むその前後一定期間では、サンプリング周波数をノイズ発生期間を基にした比較的高いものとし、それ以外の期間では、サンプリング周波数をノイズ以外のアナログ信号の上限周波数を基にした比較的低いものとするというようにサンプリング周波数をノイズ部分を含む一定期間とそれ以外の期間とで変えるようにしてデジタル処理によってノイズを除去する構成である。
【0004】
このように従来の周期ノイズ除去装置は、ノイズ部分を含む前後一定期間の信号を他の期間よりも高い周波数でサンプリングする構成にすれば、近似補正時間合わせのための遅延回路規模の増大を前記一定期間分に抑えることができ、更に信号の高域成分におけるノイズ除去も簡略的な近似補正により行うことができる。
【0005】
また、他の背景技術として特許文献2に記載される同期検波方法及び製造、磁気計測方法および装置がある。この他の背景技術の同期検波方法(又は装置) は、検波対象とな
る信号をA/D変換した後、ディジタル信号処理により同期検波を行う同期検波方法(又
は装置)において、前記A/D変換する際のサンプリング周波数を、参照信号の周波数の
2倍よりも小さく、且つ、同期検波後の信号の最高周波数の2倍以上とする構成である。
【0006】
この背景技術としての同期検波方法(又は装置)は、参照信号である励磁信号の励磁周波数が高い場合にも、励磁周波数の2倍より小さく、且つ、同期検波後の信号周波数の2倍以上の周波数で、A/D変換を同期検波前に行うようにしているので、低コストで同期検波を行うことができる。
【0007】
さらにまた、他の背景技術として特許文献3に記載される同期検波方法及び装置及びセンサ信号検出装置がある。
【0008】
この他の背景技術の同期検波方法及び装置は、同期検波方法においては、同期検波後の信号を、同期検波の際に用いた基準信号若しくは該基準信号を1/m分周(但し、mは正整数)した信号に同期した周期毎にアナログ移動平均処理することにより、同期検波後の信号から高周波ノイズを除去する構成である。このように他の背景技術に係る同期検波方法は、同期検波後の信号に含まれる不要な高周波ノイズを、従来のようにCRフィルタ等からなるローパスフィルタを用いて除去するのではなく、アナログ移動平均処理によって除去することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭64−7368号公報
【特許文献2】特開2007−225303号公報
【特許文献3】特開2003−65768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
背景技術としてローパスフィルタを用いた信号処理装置は、復調後の平滑フィルタが十分でない場合、特に回路集積度が高くなり、若しくは回路基板自体を小さくすることにより配線間にクロストークが生じて変調信号であるキャリアが出力信号である低周波信号に重畳された場合に、このキャリアとその高周波からなる高周波成分を除去できないという課題を有する。
【0011】
また、前記特許文献1に記載の周期ノイズ除去装置は、入力されるアナログ信号に対してほぼ一定の周期で発生するノイズに対して、このノイズを含むその前後の一定期間でサンプリングクロックの周波数を高くし、これ以外ではサンプリングクロックの周波数を低くするようにしているので、連続的に常時生じる高周波成分のノイズに対しては何ら除去できないという課題を有する。
【0012】
特に、交流励磁磁界を使用する計測法を利用した(渦電流非破壊検査、磁気モーションキャプチャなど)においては、通常直流ないし低周波となる出力電圧を出す最終段に含まれる増幅回路に交流励磁磁界が直接磁気結合して、出力に不要な励磁磁界成分が現れることがある。
【0013】
これらは、もともと小さい信号を高い増幅率で計測したいときに、高周波成分のノイズ成分として信号情報に含まれることとなり、しばしば問題となる。つまり、波形観測によって信号を補足しようとする場合は、不要な高周波の変調キャリア、あるいは、励磁磁界が大きくて視認を不可能にするという課題がある。
【0014】
また、前記特許文献2に検出試合の同期検波方法(又は装置)は、参照信号の周波数の2倍よりも小さく、且つ、同期検波後の信号の最高周波数の2倍以上とするサンプリング周波数で、A/D変換する際のサンプリングを行うことにより、ディジタル信号処理で低周波信号の検出を低コストの同期検波によって実行することができるものの、前記サンプリング時に周期的に生じるリップル成分若しくはサージ電圧成分については何ら除去できないという課題を有する。
【0015】
即ち、特許文献2の同期検波方法(又は装置)は、同期検波後の信号に対してサンプリング定理を満足して低周波に周波数変換を可能とするが、参照信号の周波数の2倍よりも小さくされるという条件のみで何ら周波数が特定されていないことから、サンプリングによる直流化、即ち、サンプリングの信号処理で変調信号に重畳された周期的なリップル成分若しくはサージ電圧成分を除去できない。
【0016】
さらに、前記特許文献3には記載の同期検波方法(又は装置)は、CRフィルタ等のローパスフィルタを用いることなく、同期検波後の信号に含まれる高周波ノイズを一応除去できるものの、基準信号(キャリア)若しくは基準信号(キャリア)を1/m分周(m;正整数)した信号に同期した周期毎にアナログ移動平均処理では同期検波によって周期的に発生する不要な基準信号(キャリア)の高周波成分を確実に除去できないという課題を有する。
【0017】
特に、前記背景技術において、信号の復調において電子的に開閉するスイッチで信号処理されることから、最終的な出力信号に当該スイッチング動作に伴う周期的なリップル若しくはサージ電圧が不可避的に含まれることとなる。この周期的なリップル若しくはサージ電圧に基づく高周波成分をアナログフィルタで除去する場合は、低次のフィルタ回路では極めて困難である。また、高次のフィルタ回路で高周波成分を除去しようとすると、広い帯域の信号情報を検出することができず、狭い帯域の信号情報に限定されるという課題を有すると共に、装置構成が複雑になるという課題を有する。
【0018】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、微弱な低周波信号を変調する際に用いられる変調のためののキャリアが復調後に高周波成分として信号情報に残存する場合に、このキャリアの高周波成分周期的なリップルやサージ電圧成分を簡易な構成で且つ広帯域に亘って確実に除去できる高周波成分除去装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る高周波成分除去装置は、入力信号を当該入力信号にキャリアで変調された変調信号を高周波増幅し、当該高周波増幅された高周波信号を同期検波して低周波信号として出力し、当該低周波信号に重畳された高周波成分を除去する高周波成分除去装置において、前記入力信号の周波数に対して2倍より高い周波数で、且つ前記キャリアの周波数に対して整数倍又は整数分の一倍の周波数からなるサンプリング周波数で前記同期検波後の信号をサンプリングするサンプリング手段を備え、前記サンプリング手段から出力される複数のサンプリング値に基づいて低周波信号に重畳された高周波成分を除去することを特徴とするものである。
【0020】
このように本発明によれば、入力信号に対してサンプリング定理を満足する2倍より高い周波数であって、入力信号を変調するキャリアの周波数に対して整数倍又は整数分の一倍の周波数からなるサンプリング周波数とし、このサンプリング周波数で入力信号に基づく検波信号をサンプリングして情報信号を出力することから、フィルタ回路、特に高次のフィルタ回路を用いることなく、単にサンプリングのみにより情報信号に残存するキャリアの高周波からなるリップル成分およびサージ電圧成分を除去できることとなり、簡易な構成で広帯域に亘って高周波成分を除去できる効果を奏する。
【0021】
また、本発明に係る高周波成分除去装置は、必要に応じて、前記高周波成分除去装置において、前記サンプリング手段の複数のサンプリング値相互間を補間して補間曲線を出力する補間手段と、前記補間手段から出力された補間曲線に基づいて低周波信号を生成する低周波生成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
このように本発明においては、補間手段によってサンプリング値相互間を補間して補間曲線を出力し、この補間曲線に基づいて低周波生成手段が低周波信号を生成することから、エイリアス等のノイズ成分をより確実に除去して正確な低周波信号の情報信号を出力できる効果を有する。
【0023】
また、本発明に係る高周波成分除去装置は必要に応じて、前記の高調成分除去装置において、前記サンプリング手段が、前記キャリアの周波数の位相角πに相当する位相差の二つのサンプリング周波数を一対としてサンプリングし、前記低周波生成手段が、前記一対のサンプリング周波数に基づいてサンプリングされたサンプリング値の平均を求め、当該平均値に基づいて低周波を生成するものである。
【0024】
このように本発明においては、位相角πだけ異なる二つのサンプリング周波数を一対としてサンプリングし、この一対のサンプリング周波数による二つのサンプリング値を平均して低周波を生成するようにしているので、変調信号からシフト演算によるオフセットを
行うことなく直接的キャリブレーションにより情報信号を正確に検出できる効果を有する。
【0025】
また、本発明に係る高周波成分除去装置は必要に応じて、前記の高周波成分除去装置において、前記サンプリング手段が、前記同期検波された検波信号をローパスフィルタにより濾波された後の低周波信号をサンプリングすることを特徴とするものである。
【0026】
このように本発明においては、ローパスフィルタにより検波信号を濾波した後の信号をサンプリングするようにしているので、サンプリング値に混入するリップル成分若しくはサージ電圧成分、さらにスパイク、エイリアス又はノイズ等の高周波成分をより正確に除去できることとなり、精密な情報信号が検出できる効果を有する。
【0027】
また、本発明に係る高周波成分除去装置は必要に応じて、前記の高周波成分除去装置において、前記サンプリング手段から出力されるサンプリング値を変調信号に帰還して誤差を補正する誤差補正手段を備えることを特徴とするものである。
【0028】
このように本発明においては、サンプリング手段からのサンプリング値を変調信号に帰還して各周期の誤差を誤差補正手段により補正していることから、キャリアの周期毎におけるスパイク、エイリアス若しくはノイズ等の高周波成分の重畳変動を補正できることとなり、より精密な情報信号を検出できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る高周波成分除去装置のブロック回路構成図である。
【図2】図1に記載の高周波成分除去装置に係る動作時に出力される各波形図である。
【図3】図1に記載の高周波成分除去装置に係る動作動作時に出力される各波形図である。
【図4】本実施形態に係る高周波成分除去装置のブロック回路構成図である。
【図5】図3に記載の高周波成分除去装置に係る動作タイミングチャートを示す図である。
【図6】本実施形態に係る高周波成分除去装置のブロック回路構成図である。
【図7】図5に記載のサンプリング信号生成回路及びサンプリング回路の詳細ブロック構成図である。
【図8】図5及び図6に記載の高周波成分除去装置に係る動作タイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る高周波成分除去装置を図1、図2及び図3に基づ
いて説明する。この図1は本実施形態に係る高周波成分除去装置のブロック回路構成図、図2及び図3は図1に記載の高周波成分除去装置に係る動作動作時に各々出力される各波形図を示す。
【0031】
前記各図において本実施形態に高周波成分除去装置は、アナログ値の入力信号S01を変調するキャリアSを出力するキャリア出力部1と、被測定対象からの物理的変動状態が入力され、この入力状態をアナログ値を入力信号S01として検出して、この入力信号S01を変調するキャリアSに基づき変調して変調信号Sを出力するセンサ部2と、このキャリアSにより変調された変調信号Sが入力され、この変調信号Sを高周波増幅する高周波増幅回路3と、前記キャリア出力部1から出力されるキャリアSの位相をシフトされる移送回路4と、この位相がシフトされたキャリアSの位相を検出して同
期検波制御信号Sを出力する位相検出回路5と、この同期検波制御信号Sに基づいて高周波増幅された変調信号Sを同期検波して同期検波信号Sを出力する同期検波回路6と、前記同期検波制御信号Sに基づいてサンプリング信号Sを生成するサンプリング生成回路7と、このサンプリング信号Sに基づいて同期検波信号Sをサンプリングして各サンプリング値S61を出力するサンプリング回路8と、このサンプリング値S61に基づいて低周波信号Sを生成する低周波信号生成回路9とを備える構成である。この同期検波回路6は、スイッチング回路及び一次のローパスフィルタを備え、このスイッチング回路によりキャリアに同期してスイッチされて、変調信号Sと同期検波制御信号Sとの積算で得られる変調波の検波信号S51を生成し、この検波信号S51を一次のローパスフィルタにより同期検波信号Sを生成して出力する。
【0032】
前記サンプリング信号Sを生成するサンプリング生成回路7と、サンプリング値S61を出力するサンプリング回路8と、低周波信号Sを生成する低周波信号生成回路9とでサンプリング手段を構成し、このサンプリング信号Sを生成するサンプリング生成回路7は、前記周期検波回路6から出力される同期検波信号Sに含まれる入力信号S01の周波数に対して2倍より高い周波数で、且つ前記変調信号Sの周波数に対して整数倍又は整数分の一倍の周波数からなるサンプリング信号Sで前記同期検波信号SをサンプリングしS61生を成するものである。また、このサンプリング信号Sは、前記同期検波制御信号Sの位相に対して位相角がほぼ90°ずれるタイミングで生成することができる。
【0033】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る高周波成分除去装置の高周波成分を除去する動作について説明する。まず、アナログ信号のアナログ値の入力信号S01がセンサ部2で検出されると、このアナログ値の入力信号S01に対してキャリア出力部1が出力されるキャリアSで変調されて変調信号Sが高周波増幅回路3に入力される。
【0034】
前記キャリア出力部1から出力されるキャリアSの基づき、このキャリアSにおける四分の一周期以下の位相角α(<(2π・1/4)だけ移相回路4で移相させ、この移
相されたタイミングにより位相検出回路5が同期検波制御信号Sを生成して同期検波回路6及びサンプリング信号生成回路7に入力する。この高周波増幅回路3に入力された変調信号Sが高周波増幅されて、この増幅された高周波の変調信号Sが同期検波回路6に入力される。
【0035】
この同期検波回路6は、入力された高周波の変調信号S及び同期検波制御信号Sに基づきスイッチング回路で検波信号S51を生成し、この検波信号S51を一次のローパスフィルタで同期検波信号Sを生成してサンプリング信号生成回路7及びサンプリング回路8へ入力する。このサンプリング信号生成回路7は、前記位相検出回路5からの位相検出信号S及び同期検波回路6からの同期検波信号Sに基づきサンプリング信号Sを生成してサンプリング回路8へ出力する。
【0036】
前記サンプリング回路8は、同期検波信号Sをサンプリング信号Sに基づきサンプリングしてサンプリング値S61を出力する。このサンプリング値S61に基づき低周波信号回路9は、低周波信号Sを出力する。このようにサンプリング信号Sが出力信号S01の2倍より高い周波数でサンプリング定理を満足すると共に、出力信号S01を変調するキャリアSの周波数に対して整数倍(又は整数分の一倍)の周波数であることから、サンプリング回路8は出力信号S01に重畳されるノイズ成分及び信号処理回路・信号処理動作中に生じるスパイク、エイリアス若しくはノイズ成分を除去する。このように,高次のローパスフィルタを用いることなくノイズ成分及び信号処理回路・信号処理動作中に生じるスパイク、エイリアス若しくはノイズ成分を除去できるのでセンサの検出周波数帯域を著しく低下させることなく情報信号を検出することができることとなる。
【0037】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る高周波成分除去装置を図3及び図4に基づいて説明する
。この図3は本実施形態に係る高周波成分除去装置のブロック回路構成図、図4は図3に記載の高周波成分除去装置に係る動作タイミングチャートを示す。
前記各図において本実施形態に係る高周波成分除去装置は、前記第1の実施形態と同様
に、キャリア出力部1、センサ部2、高周波増幅回路3、移相回路4、位相検出回路5、同期検波回路6、サンプリング信号生成回路7、サンプリング回路8、低周波信号生成回路9及び低周波増幅回路11を備え、この構成に加えローパスフィルタ回路61、補間回路10及び低周波増幅回路11を備える構成である。
【0038】
前記ローパスフィルタ回路61は、出力される同期検波信号Sの低周波成分のみを通過させて高周波成分を濾波(以下同じ)濾波し、この濾波した同期検波信号Sを濾波検波信号S51としてサンプリング回路8へ出力する構成である。また、このローパスフィルタ回路61は、比較的低次の信号成分を除去する、例えば一次フィルタ回路で構成することもできる。
【0039】
また、前記補間回路10は、前記サンプリング回路8でサンプリングされた複数のサンプリング値S61における相互間を導関数の連続性を仮定して、近似的に演算し、この演算結果により滑らかな曲線となるように補間し、この演算結果を低周波信号生成回路9で生成された低周波信号Sを増幅して出力信号S11として出力する構成である。
【0040】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る高周波成分除去装置の高周波成分を除去する動作について説明する。本実施形態に係る高周波成分除去装置は、前記第1の実施形態の
図2に記載するタイミングチャートと同様にキャリアS、入力信号S01、変調信号S、同期検波制御信号S及びサンプリング信号Sが順次生成される。
【0041】
まず、図4(A)において実線で示す高周波の変調信号Sをサンプリング信号Sによりサンプリングし、その複数のサンプリング値S61を黒ドットで示す。この複数のサンプリング値S61に基づいて補間回路10が補完し、図4(B)に破線で示す低周波信号の曲線から実線で示す低周波信号の曲線となるように
補完する。
【0042】
前記低周波信号生成回路9は、図4(C)に示すように補完された低周波信号(図中破線で示す。)がオフセットされて実線で示す低周波信号Sを生成し、この低周波信号Sを低周波増幅回路11が増幅して出力信号S11として出力する。
【0043】
このように本実施形態は、サンプリング回路8でサンプリングする前提としてローパスフィルタ回路61で高周波成分を濾波し、さらに、補間回路10でサンプリング値S61を補間するようにしているので、低周波信号をより精密な情報信号として広帯域に検出できることとなる。
【0044】
(本発明の第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る高周波成分除去装置を図5ないし図7に基づいて説明す
る。この図5は本実施形態に係る高周波成分除去装置のブロック回路構成図、図6は図5に記載のサンプリング信号生成回路及びサンプリング回路の詳細ブロック構成図、図7は図5及び図6に記載の高周波成分除去装置に係る動作タイミングチャートを示す。
【0045】
前記各図において本実施形態に係る高周波成分除去装置は、前記第2の実施形態と同様
に、キャリア出力部1、センサ部2、高周波増幅回路3、移相回路4、位相検出回路5,
同期検波回路6、サンプリング信号生成回路70(図3の7に相当)、サンプリング回路80(図3の8に相当)、低周波信号回路9、ローパスフィルタ回路61、補間回路10及び低周波増幅回路11を備え、この構成に加え、誤差補正回路12を備えると共に、前記サンプリング信号生成回路70及びサンプリング回路80の構成内容を異にする構成である。
【0046】
前記サンプリング信号生成回路70は、移相回路4及び位相検出回路5からの同期検波制御信号S及び同期検波信号Sに基づいてサンプリング信号Sを生成する第1のサ
ンプリング信号生成回路71と、このサンプリング信号生成回路71が生成したサンプリング信号Sに基づき、このサンプリング信号Sの周波数の位相角πに相当する位相差を有する新たなサンプリング周波数S41を生成する第2のサンプリング信号生成回路7
2とを備える構成である。
【0047】
前記サンプリング回路80は、前記サンプリング信号生成回路71が生成したサンプリング信号Sに基づき移相回路4からローパスフィルタ回路61を演算する第1のサンプ
リング回路81と、前記誤差補正回路82が生成した
サンプリング周波数S41に基づき移相回路4からローパスフィルタ回路61を介して出力される濾波検波信号S51をサンプリングしてサンプリング値S62を演算する第2の
サンプリング回路82とを備える構成である。
【0048】
また、サンプリング回路81及び第2のサンプリング回路82後段には平均値演算回路
90が配設され、この平均値演算回路90は、第1のサンプリング回路81及び第2のサンプリング回路と82から各々出力されるサンプリング値S61及びサンプリング値S62を各々πの位相差で対応付けて平均値を演算して平均サンプリング値S63として出力する構成である。
【0049】
さらに、前記誤差補正回路12は、サンプリング回路8の第1及び第2のサンプリング回路81及び82から出力されるサンプリング値S61及びサンプリング値S62を変調信号Sに帰還して入力信号及び変調信号Sの誤差を補正する構成である。
【0050】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係る高周波成分除去装置の高周波成分を除去する動作について説明する。本実施形態に係る高周波成分除去装置は、前記第1の実施形態の
図2に記載するタイミングチャートと同様にキャリアS、入力信号S01、変調信号S、同期検波制御信号S及びサンプリング信号Sが順次生成される。
【0051】
まず、図7(A)において実線で示す高周波の同期検波信号Sをサンプリング信号Sによりサンプリング回路81がサンプリングし、その複数のサンプリング値S61を黒丸のドットで示す。同様に、図7(A)において同期検波信号Sをサンプリング周波数S41により第2のサンプリング回路82がサンプリングし、その複数のサンプリング値S62を前記サンプリング信号生成回路71のサンプリング値S61に対して位相差πで出力され、このサンプリング値S62を白丸のドットで示す。
【0052】
次に、平均値演算回路90は、前記サンプリング値S61及びS62の各位相差πで対応付けられた各値の平均値を演算して平均サンプリング値S63を演算する。この演算された平均サンプリング値S63を図7(B)に黒丸のドットで示す。
【0053】
前記平均サンプリング値S63は前記第2の実施形態の場合と同様に補間回路10、低周波信号回路9及び低周波増幅回路11により補間後のサンプリング値S10、低周波信号Sを介して出力信号S11として出力されることとなる。
【0054】
このように本実施形態に係る高周波成分除去装置は、位相差πの二つの系列のサンプリング周波数S、S41で同期検波信号Sをサンプリングして各々のサンプリング値S61、S62を検出し、この各々のサンプリング値S61、S62から平均値演算回路90が平均サンプリング値S63を演算して低周波信号を出力するようにしているので、オフセット動作と高周波の除去処理とを同時に行えることとなり、精密且つ正確な情報信号の検出が可能となる。
【0055】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態に係る高周波成分除去装置は、センサ部2で検出されたアナログ信号の入力信号をアナログ/デジタル変換し、この変換されたデジタル信号の入力信号を前記キャリア出力部1、高周波増幅回路3、移相回路4、位相検出回路5、同期検波回路6、サンプリング信号生成回路7、サンプリング回路8及び低周波信号回路9と同等の演算を実行する演算処理手段でデジタル処理する構成とすることもできる。
【0056】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る高周波成分除去装置は、センサ部2が高感度のフラックスゲート磁気センサで構成し、このフラックスゲート磁気センサの励磁周波数用交流電源から印加される交流励磁磁界がキャリアとして外部の検出磁界の低周波を変調して変調信号とする構成とすることもできる。
【0057】
この高感度のフラックスゲート磁気センサをセンサ部2として構成した実験例を以下に示す。一般に高感度のフラックスゲート磁気センサは、微弱な信号を高い増幅率で増幅し、且つ緩やかに変動する信号を捉えることができる。
【0058】
このフラックスゲート磁気センサで地中に埋設された強磁性体の埋設位置を特定したり、一定速度で通過する物品中に含まれる強磁性ターゲットを検出する場合等を例として、フラックスゲート磁気センサの出力波形をオシロスコープで緩やかに変動する信号を観測することができる。
【0059】
また、フラックスゲート磁気センサの交流励磁磁界が検出磁界に直接磁気結合して変調波となり、この変調波が十分に低減されず、この変調波の周波数は100kHzとなる。前記オシロスコープの観測時間を10秒とすると、100kHzの変調波がエイリアスとならないようにするためには、1/(200kHz)=5μsより早いサンプリングで(且つ、サンプリング定理を満足することを前提とする。)波形を取り込むものとする。この波形を10秒間観測するためには、10/(5・10−6)=2・10個のサンプリング値が必要となる。
【符号の説明】
【0060】
1:キャリア出力部
2:センサ部
3:高周波増幅回路
4:移相回路
5:位相検出回路
6:同期検波回路
7:サンプリング信号生成回路
8:サンプリング回路
9:低周波生成回路
10:補間回路
11:低周波増幅回路
12:誤差補正回路
61:ローパスフィルタ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低周波の入力信号を当該入力信号にキャリアで変調された変調信号を同期検波して低周波信号として出力し、当該低周波信号に重畳された高周波成分を除去する高周波成分除去装置において、
前記入力信号の周波数に対して2倍より高い周波数で、且つ前記キャリアの周波数に対して整数倍又は整数分の一倍の周波数からなるサンプリング周波数で前記同期検波後の信号をサンプリングするサンプリング手段を備え、
前記サンプリング手段から出力される複数のサンプリング値に基づいて低周波信号に重畳された高周波成分を除去することを
特徴とする高周波成分除去装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の高周波成分除去装置において、
前記サンプリング手段の複数のサンプリング値相互間を補間して補間曲線を出力する補間手段と、
前記補間手段から出力された補間曲線に基づいて低周波信号を生成する低周波生成手段とを備えることを
特徴とする高周波成分除去装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の高調成分除去装置において、
前記サンプリング手段が、前記キャリアの周波数の位相角πに相当する位相差の二つのサンプリング周波数を一対としてサンプリングし、
前記低周波生成手段が、前記一対のサンプリング周波数に基づいてサンプリングされたサンプリング値の平均を求め、当該平均値に基づいて低周波を生成することを
特徴とする高周波成分除去装置。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波成分除去装置において、
前記サンプリング手段が、前記同期検波された検波信号をローパスフィルタにより濾波された後の低周波信号をサンプリングすることを
特徴とする高周波成分除去装置。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波成分除去装置において、
前記サンプリング手段から出力されるサンプリング値を変調信号に帰還して誤差を補正する誤差補正手段を備えることを
特徴とする高周波成分除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−195671(P2012−195671A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56543(P2011−56543)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月4日 「平成23年電気学会全国大会 講演論文集」に発表
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】