説明

高周波発熱性樹脂組成物および該樹脂組成物からなる高周波融着性成形体

【課題】従来高周波融着適性に優れているといわれるポリ塩化ビニル樹脂などと同等の高周波融着性を有するポリオレフィン系樹脂を主体とした樹脂組成物およびそれからなる高周波融着性成形体を提供する。
【解決手段】エチレンと不飽和カルボン酸からなるエチレン共重合体のカルボキシル基の一部又は全部がアルカリ金属で中和された特定のアイオノマー樹脂(A)はポリ塩化ビニルと比較して遜色ない高周波発熱性を有しており、該アイオノマー樹脂(A)をメタロセン触媒によって製造されたポリオレフィン系樹脂(B)に一定量以上配合することにより得られる樹脂組成物は優れた高周波発熱性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオレフィン系樹脂からなる高周波発熱性樹脂組成物および該樹脂組成物からなる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂成形品を熱接合する手段の一つとして高周波接合がある。この高周波接合は内部発熱を利用しているので、ヒートシール法やインパルスシール法などの外部加熱法に比べて、(i)フィルムおよび成形品の熱劣化が少ない、(ii)温度上昇が速い、ならびに(iii)温度の均一性が高い等の長所を有しており、主にポリ塩化ビニルの二次加工に利用されている。ところが、最近、塩素を含まないポリオレフィン系材料を用いてポリ塩化ビニルに代替しようという動きが高まってきており、高周波融着性が付与されたポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂の提供が強く要望されるようになってきている。
【0003】
このような要望に応えるものとして、一般に、エチレンと、ビニルエステルまたは不飽和カルボン酸エステルなどの極性モノマーとを共重合させた、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−メタクリル酸メチル共重合体などを用いる方法が知られている。しかしながら、高周波融着性を発揮させるためには、エチレン−酢酸ビニル共重合体の場合で平均酢酸ビニル含有量を15〜22重量%にすることが必要(特許文献1参照)であり、その高い酢酸ビニル含有量のため、成形品の剛性および耐熱性が低下したり、成形品がフィルムの場合はフィルム同士がブロッキングしやすくなるという問題があった。このような問題を解決する方法として酢酸ビニル含量が40〜80重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体およびポリオレフィンを所定量含む高周波融着可能な樹脂組成物(特許文献2参照)も提案されているが、このようなエチレン−酢酸ビニル共重合体は未だ市販されておらず、特別に製造する必要があるだけでなく、きわめて取り扱いにくいものであった。さらに、このような共重合体は高周波融着性は有しているものの、その高周波融着性はポリ塩化ビニルに比較して乏しいため、実際の使用にあたっては、高周波の印加時間をポリ塩化ビニルに比べて長くしたり、プレヒーターを併用する必要があり、生産性や取り扱いやすさの点で未だ十分なものとはいえないものであった。
【0004】
その他にも、ポリオレフィン系樹脂に高周波融着性を付与する方法として、ポリオレフィン系樹脂にカーボンブラックを配合する方法(特許文献3参照)、熱可塑性樹脂に水酸基を有する化合物を配合する方法(特許文献4参照)、ポリマーに特定の比表面積を有する微粒状磁性金属酸化物を配合する方法(特許文献5参照)およびポリオレフィン系樹脂に結晶水を有する無機粉末を配合する方法(特許文献6参照)など数多くの提案がある。しかしながら、カーボンブラックや金属酸化物等の無機粉末を配合した場合は、成形品の透明性が著しく損われ、さらには発熱のコントロールが難しく、発熱が過ぎるとポリオレフィン系樹脂が熱劣化を起こすという問題があり、水酸基を有する化合物はポリオレフィン系樹脂との相溶性に問題があり、水酸基を有する化合物がブリードアウトし易いという問題があった。
【特許文献1】特開平1−301247号公報
【特許文献2】特開平6−287362号公報
【特許文献3】特開平3−218813号公報
【特許文献4】特開平6−283657号公報
【特許文献5】特開平2−242856号公報
【特許文献6】特開平2−129243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決して、従来,高周波融着適性に優れているといわれているポリ塩化ビニル樹脂等と比較しても遜色ない高周波発熱性、すなわち高周波融着性を有するポリオレフィン系樹脂を主体とした樹脂組成物およびそれからなる高周波融着性成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、高周波によって発熱性を示すポリオレフィン系樹脂について鋭意研究を重ねた結果、エチレンと不飽和カルボン酸とからなるエチレン共重合体のカルボキシル基の一部または全部がアルカリ金属で中和された特定のアイオノマー樹脂(A)がポリ塩化ビニルと比較して遜色ない高周波発熱性を有しており、該アイオノマー樹脂(A)をメタロセン触媒によって製造されたポリオレフィン系樹脂(B)に一定量以上配合することにより得られる樹脂組成物が、優れた高周波発熱性を示すことを見出し、本発明に到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の事項を含む。
(1)エチレンと不飽和カルボン酸とからなるエチレン共重合体のカルボキシル基の一部又は全部がアルカリ金属で中和され、該アルカリ金属の含有量が樹脂1gあたり0.1ミリモル以上であるアイオノマー樹脂(A)2〜99重量%と、メタロセン触媒によって製造されたポリオレフィン系樹脂(B)98〜1重量%とからなることを特徴とする高周波発熱性樹脂組成物。
(2)アイオノマー樹脂(A)のアルカリ金属がカリウムであることを特徴とする前記高周波発熱性樹脂組成物。
(3)上記樹脂組成物が、さらに多価アルコール(C)を含有していることを特徴とする高周波発熱性樹脂組成物。
(4)上記樹脂組成物が、さらに水を含有していることを特徴とする高周波発熱性樹脂組成物。
(5)前記高周波発熱性樹脂組成物からなることを特徴とする高周波融着性成形体。
(6)前記高周波発熱性樹脂組成物からなる発熱層および該発熱層から伝達された熱によって融着する熱融着層を必須の層として含む高周波融着性成形体をその要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来高周波融着適性に優れているといわれるポリ塩化ビニル樹脂などと同等の高周波発熱性を有するポリオレフィン系樹脂を主体とした樹脂組成物およびそれからなる高周波融着性成形体が提供される。そして該樹脂組成物は、目的に応じて、フィルム、シート、チューブまたはパイプ等の各種形状の成形体に加工され、その高周波発熱性を生かして有用に活用されるものであり、産業に利するところ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明において使用する、アイオノマー樹脂(A)は、エチレンと不飽和カルボン酸からなるエチレン共重合体のカルボキシル基の一部または全部がアルカリ金属で中和され、該アルカリ金属の含有量が樹脂1g当たり0.1ミリモル以上であることが必要である。このようなアイオノマー樹脂(A)は、エチレンと不飽和カルボン酸を共重合して得られる共重合体のカルボキシル基を金属の酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物または酢酸塩などで中和することによって得られるが、この際ベースポリマーとして使用する不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸およびイタコン酸などが挙げられる。また、エチレンと不飽和カルボン酸からなる共重合体中の不飽和カルボン酸の含有量は3〜40重量%が好ましい。さらに、このエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンおよび
不飽和カルボン酸の他に、0〜40重量%の他の極性ポリマーを含んでいてもよい。前記他の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n―ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n―ヘキシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステルおよび一酸化炭素などが挙げられる。なかでも不飽和カルボン酸エステル、特に(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。一般に、アイオノマー樹脂としては、ナトリウム、カリウムまたは亜鉛で中和したものが知られているが、本発明においては、アルカリ金属でない亜鉛で中和したものは高周波発熱性を示さず本発明の範囲外である。該共重合体中のカルボキシル基の一部又は全部を中和するのに使用するアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムなどが挙げられる。なかでもナトリウムまたはカリウムが好ましく、特に、カリウムが好ましい。さらに、共重合体中のアルカリ金属の含有量は樹脂1gあたり0.1ミリモル以上、好ましくは0.4ミリモル以上 さらに好ましくは0.8〜6.0ミリモルとすることが好ましい。このアルカリ金属の含有量が樹脂1gあたり0.4ミリモル未満では、十分な高周波発熱性を付与することができず好ましくない。また、本発明におけるアイオノマー樹脂(A)の分子量は3000以上であることが得られる組成物の機械的性質を維持する上で好ましい。なお、アイオノマー樹脂(A)中に必要により少量の不飽和カルボン酸のアルキルエステル等のセグメントを分子鎖に含有するものも本発明に含まれる。以上述べたアイオノマー樹脂(A)は単独で、あるいは、複数種組み合わせて用いることができる。また、アイオノマー樹脂のメルトフローレート(MFR)は0.1〜50g/10分(JIS K7210−1999、190℃、2.16kg荷重)であることが好ましい。
【0010】
本発明で用いられるメタロセン触媒によって製造されたポリオレフィン樹脂(B)は、好ましくは、メタロセン触媒により製造されたポリエチレン系樹脂である。
メタロセン触媒によって製造されたポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体またはエチレンと他のα−オレフィンの共重合体である。他のα−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1およびオクテン−1などの炭素数が3〜12、好ましくは3〜8のα−オレフィンを挙げられる。
【0011】
本発明において用いられるメタロセン触媒によって製造されたポリエチレン系樹脂の密度は、0.880〜0.945g/cm3、好ましくは0.900〜0.930g/cm3、より好ましくは0.915〜0.930g/cm3であることが好ましい。
【0012】
本発明において用いられるメタロセン触媒によって製造されたポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kg荷重で測定した値で0.1〜100g/10分、より好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分、特に好ましくは1〜3g/10分であることが好ましい。
また本発明において用いられるメタロセン触媒によって製造されたポリエチレン系樹脂は、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)であることが好ましい。
メタロセン触媒とは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムなどの遷移金属に、少なくとも1つのシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を有するメタロセン化合物と、アルモキサンおよびアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物および有機アルミニウムオキシ化合物ならびにイオン化イオン性化合物などの共触媒成分から構成される触媒をいう。メタロセン触媒は、その触媒としての特徴からシングルサイト触媒と呼ばれることがある。
【0013】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、シクロペンタジエニル環インデニル環およびフルオレニル環などをあげることができ、これらの配位子は置換基を有していてもよく、また配位子同士が炭化水素基、シリル基などを介して結合していてもよい。
【0014】
メタロセン触媒としては具体的に、特開昭58−19309号、特開昭59−96292号、特開昭60−35005号、特開昭61−130314号、特開平3−163088号、欧州特許公開420,436号および米国特許5,055,438号などに記載されているものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
メタロセン化合物としては、シクロペンタシエニルチタニウム(ジメチルアミド)、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、インデニルチタニウム(ジエチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドおよびビス(インデニル)ジルコニウムビス(メチルホスホナト)などを挙げることができる。
【0016】
前記メタロセン触媒を用いてポリエチレン系樹脂を製造する方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができる。たとえば、エチレンおよびα−オレフィンを重合させる圧力として、100Kg/cm2以下の中低圧法を採用してもいいし、300〜3000Kg/cm2の高圧法を採用することもできる。
【0017】
本発明のメタロセン触媒で製造されたポリエチレン系樹脂は、1種で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本発明のメタロセン触媒で製造されたポリエチレン系樹脂としては、市販されているポリエチレンの中から入手することが可能である。その他本発明では、メタロセン触媒で製造された他のポリオレフィン樹脂、たとえば、ポリプロピレンまたはポリブテンなども使用することができる。
【0018】
本発明においては、上述したアイオノマー樹脂(A)がきわめて優れた高周波発熱性を有していることから、組成物中にアイオノマー樹脂(A)を少量配合するだけで十分優れた高周波発熱性を示す。すなわち、本発明の高周波発熱性組成物におけるアイオノマー樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との配合割合は、併用するポリオレフィン系樹脂(B)の種類や融点にもよるが、アイオノマー樹脂(A):ポリオレフィン系樹脂(B)が2〜99重量%:98〜1重量%、好ましくは10〜99重量%:90〜1重量%、さらに好ましくは15〜99重量%:85〜1重量%の範囲になるように配合することが好ましい。また、本発明の高周波発熱性組成物を発熱層として使用して他の層を熱融着させる場合にはアイオノマー樹脂(A):ポリオレフィン系樹脂(B)が2〜100重量%:98〜0重量%の範囲、好ましくは2〜99重量%:98〜1重量%の範囲になるように配合するのが好ましい。組成物中に占めるアイオノマー樹脂(A)の割合が2重量%を下回ると、該組成物の高周波発熱性が十分でなくなり好ましくない。
【0019】
さらに、本発明においては、当該組成物に多価アルコール(C)をさらに配合することができる。通常、多価アルコールはポリオレフィン系樹脂との相溶性に乏しく、配合しても次第に多価アルコールがブリードアウトするという問題があったが、本発明の組成物においては多価アルコールがきわめて安定に保持されブリードアウトすることがないという特徴を有している。そして、このような多価アルコール(C)を配合することによって組成物の高周波発熱性がさらに向上する。なお、多価アルコール(C)としては、グリセロール、ジグリセロール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびソルビトールなどの1分子中に水酸基を2個以上含有する多価アルコールあるいはそれらの部分エステル化物が挙げられる。その配合割合はアイオノマー樹脂(A)100重量部に対して50重量部まで、好ましくは3〜50重量部、特に好ましくは5〜50重量部とするのが好ましい。
【0020】
なお、本発明においては、アイオノマー樹脂(A)とポリオレフィン系樹脂(B)との相溶性を向上させる目的で、不飽和カルボン酸および/またはその誘導体をグラフト反応させることにより得られる変性ポリオレフィンなど公知の相溶化剤や、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、加工助剤および顔料などを高周波発熱性を損なわない範囲で添加することもできる。
【0021】
さらにまた、本発明の組成物を吸湿させることによって高周波発熱性を向上させることが可能である。特に本発明で使用するアイオノマー樹脂(A)は、吸湿性があり、また含水率を0.1〜5重量%とすることによって高周波発熱性が大きく向上する。したがって、高周波融着時に水の気化に起因する発泡の問題が起こらない範囲で組成物が水を含有するようにすることが望ましい。
【0022】
本発明の高周波発熱性樹脂組成物は通常の樹脂組成物と同様に公知の方法によってフィルム、シート、チューブおよび成形品など、その用途に応じた所望の形状に加工することが可能であり、得られる成形体はその高い高周波発熱性によって高周波融着加工が可能な高周波融着性成形体として各種用途に使用することができる。
【0023】
さらにまた、本発明の高周波発熱性組成物はきわめて高い高周波発熱性を有しているので、当該高周波発熱性組成物を発熱層として利用して、当該発熱層から伝達された熱によって他の層(熱融着層)を熱融着させることも可能である。たとえば、熱融着層/発熱層/熱融着層、他層/発熱層/熱融着層、あるいは他層/発熱層/他層/発熱層/熱融着層または発熱層/熱融着層の積層構造とすることによって、成形体に該高周波発熱性樹脂組成物だけでは困難な物理的および機械的性質を付与したり、他の層によって温度または湿度などに比較的影響を受けやすい高周波発熱性組成物からなる層を保護したりすることもできる。なお、このような場合の熱融着層としては、通常、熱融着性の良好さ、低温で熱融着可能である点、化学的な安定性および価格の低廉さなどの観点からポリエチレン、エチレン−酢酸ビル共重合体およびポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が最適である。
【0024】
また、その際の各構成層の厚み構成比は、発熱層の発熱能力、高周波印加条件、積層体の全体厚みおよび熱融着層の融点などに応じて適宜設定されるものであるが、発熱層の厚みをT1 、発熱層以外の厚みをT2 とした場合、T2 /T1 ≦20、好ましくはT2
/T1 ≦15、さらに好ましくは、T2 /T1 ≦10となるようにするのが好ましい。このような積層構造を有する高周波融着性成形体としては、通常の共押出成形法、押出ラミネート法またはドライラミネート法などにより、フィルム、シート、チューブおよびパイプなど、その用途に応じた形状に成形されたものが挙げられる。
【0025】
また前記したエチレンと不飽和カルボン酸とからなるエチレン共重合体のカルボキシル基の一部または全部がアルカリ金属で中和され、該アルカリ金属の含有量が樹脂1gあたり0.1ミリモル以上であるアイオノマー樹脂(A)2〜99重量%と、メタロセン触媒によって製造されたポリオレフィン系樹脂(B)98〜1重量%とからなる樹脂組成物は優れた高周波融着性を示すことから高周波融着性樹脂組成物としても有用であり、この高周波融着性樹脂組成物は高周波融着性を示さないフィルムやシートに積層として高周波融着性の積層体として用いたり、あるいは高周波融着性樹脂組成物をフィルム、シート、 チューブ、パイプ、容器等に成形して高周波融着性成形体として用いることができる。
【0026】
[実施例]
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
1.原料
《アイオノマー樹脂》
(1)アイオノマー(IO−1)
MFR=1、メタクリル酸基含有量=14.9重量%およびカリウムイオン密度=1.5mmol/gのアイオノマー
(2)アイオノマー(IO−2)
MFR=0.4、メタクリル酸基含有量=12.5重量%およびカリウムイオン密度=1.2mmol/gのアイオノマー91重量部と、グリセロール9重量部とからなる組成物
《ポリオレフィン系樹脂》
(1)メタロセンポリエチレン(mPE)
MFR=1.9、密度=925kg/m3、融点=122℃
(2)ランダムポリプロピレン(PP)
MFR=7、密度=910kg/m3、融点=131℃
2.フィルムキャスト方法
多層キャスト成形機(モダンマシナリー社製50/65/50mmψ押出機、クローレン社製フィードブロック、コートハンガーダイ)を使用し、表1に示す配合、層構成にて総厚み200μmの2種3層フィルムを作成した。ここで、中間層のmPEとIOとはドライブレンド後にホッパー投入した。
【0028】
【表1】

【0029】
3.評価方法
(1)高周波ウェルダーシール
精電舎電子工業株式会社製高周波ウェルダーKV3000TRを用い、二枚重ねにしたフィルムに高周波を印加してその接合状況、すなわち高周波融着性を判断することにより行った。接合条件および高周波融着性の評価基準は以下のとおりである。
発振周波数:40.46MHz
同調:70%
発振時間:1〜8秒
加圧:0.15MPa(ゲージ圧)×2秒間
シールバー:3mm幅×300mm長さ
冷却時間:4秒間
(2)剥離強度測定
試験片:15mm幅短冊
剥離速度:200mm/min
結果を表2に示す。高周波を印加することにより中間層に添加されたIOが高周波発熱を起こし、その熱量によって二枚重ねにしたPP層間で融着した。その剥離強度は1〜2
秒間の発振時間でも十分高いものであった。グリセロールを配合してなるIO−2を添加した実施例2のフィルムはグリセロールを配合していないIO−1を添加した実施例1のフィルムに比べて短時間で高周波融着が可能であり、より高い高周波発熱性を示していることが分かる。それに対し、IOを添加していないメタロセンポリエチレン層は高周波発熱を起こさないため、8秒以上の発振時間でもPP層間の融着を起こさなかった。
【0030】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと不飽和カルボン酸とからなるエチレン共重合体のカルボキシル基の一部または全部がアルカリ金属で中和され、該アルカリ金属の含有量が樹脂1gあたり0.1ミリモル以上であるアイオノマー樹脂(A)2〜99重量%と、メタロセン触媒によって製造されたポリオレフィン系樹脂(B)98〜1重量%とからなることを特徴とする高周波発熱性樹脂組成物。
【請求項2】
アイオノマー樹脂(A)のアルカリ金属がカリウムであることを特徴とする請求項1記載の高周波発熱性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の樹脂組成物が、さらに多価アルコール(C)を含有していることを特徴とする高周波発熱性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物が、さらに水を含有していることを特徴とする高周波発熱性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の高周波発熱性樹脂組成物からなることを特徴とする高周波融着性成形体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の高周波発熱性樹脂組成物からなる発熱層および該発熱層から伝達された熱によって融着する熱融着層を必須の層として含む高周波融着性成形体。

【公開番号】特開2008−88308(P2008−88308A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271283(P2006−271283)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】