説明

高周波装置

【課題】高周波の不要波抑圧の性能を低下させることなく、しかも小型の高周波装置を提供する。
【解決手段】高周波装置の一例は、高周波信号の所定周波数成分を除去し、内部導体とこれを囲む外部導体とを有する構造の出力端子を持つ高周波フィルタと、この高周波フィルタの出力端子に一端を接続される同軸コネクタと、前記高周波フィルタ及び前記同軸コネクタの一部を内蔵し、前記同軸コネクタの他端を外部に露出させたケースと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波フィルタを有する高周波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波の送受信モジュールや高周波増幅器では、送信RF信号を増幅した際に発生する不要波を抑圧するために、それらの出力側にフィルタを設ける。
【0003】
従来の送受信モジュールの高周波フィルタの実装構造の一例を図6に示す。送信RF信号はフィルタの入力側に設けられる電力増幅器により送信に必要な電力にまで増幅される。この際、増幅器の非線形動作により出力される送信RF信号に高調波の不要波が含まれてしまう。そこで、この送受信モジュール60では、通常、電力増幅器の出力側と送受信モジュールの出力側(同軸ケーブル)との間に高周波フィルタ61を挿入して不要波を抑圧している。
【0004】
しかし、図6に示す従来例では、高周波フィルタ61により高周波の不要波を抑圧できるが、この高周波フィルタ61の入力端子61aと出力端子61bとの間に、このフィルタを介さない空間による伝搬経路ができる。したがって、この伝搬経路によって不要波が送受信モジュールの出力側に現れ、不要波の抑圧能力が低下してしまう。この空間による不要波の伝搬をなくするためには、高周波フィルタ61の出力側のシールド性能を強化する必要があり、これが送受信モジュールケースの構造を複雑かつ大型にする一因となっていた。
【0005】
従来の送受信モジュールにおける高周波フィルタの実装構造の他の例を、図7に示す。この例では、高周波フィルタ71の入力端子71a及び出力端子71bを同軸コネクタにより構成したものである。この構造では、コネクタやケーブルの同軸線路が外部導体によりシールドされる。したがって、空間による伝搬経路は形成されず、高周波フィルタ本来の不要波抑圧性能を発揮することが可能である。反面、同軸コネクタによる接続する箇所が増えることになり、送受信モジュールが大型化し送信RF信号の損失が増加するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−124704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高周波の不要波抑圧の性能を低下させることなく、しかも小型の高周波装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、高周波信号の所定周波数成分を除去し、内部導体とこれを囲む外部導体とを有する構造の出力端子を持つ高周波フィルタと、この高周波フィルタの出力端子に一端を接続される同軸コネクタと、前記高周波フィルタ及び前記同軸コネクタの一部を内蔵し、前記同軸コネクタの他端を外部に露出させたケースと、を有することを特徴とする高周波装置提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】高周波装置の第1の実施形態の構造を示す図である。
【図2】高周波装置の第1の実施形態の製造方法を示す図である。
【図3】高周波装置の第2の実施形態の構造を示す図である。
【図4】高周波装置の第2の実施形態の製造方法を示す図である。
【図5】高周波装置の第3の実施形態の構造を示す図である。
【図6】高周波装置の従来の一例の構造を示す図である。
【図7】高周波装置の従来の一例の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
この第1の実施形態の高周波装置の構造を図1に示す。高周波装置は送受信モジュール10でありこれは、例えば金属製のケース11と、このケース11内に設置された電力増幅器12と、マイクロストリップ線路13によりこの電力増幅器12の出力端子に接続された高周波フィルタ14と、この高周波フィルタ14の出力端子に接続された送受信モジュール10の出力端子15とを備える。高周波フィルタ14は直方体形状をしており、所定の高周波周波数成分を除去する機能を有する。
【0012】
送受信モジュール10の出力端子は同軸コネクタ15により構成されており、ケース11の出力部分を切り欠いた部分に高周波フィルタ14の出力端子を突出させて構成される。同軸コネクタは、内部導体とその外側にこの内部導体を取り囲むように設けられる外導体から成る構造を有している。
【0013】
この送受信モジュール10の出力端子部分の構成方法を図2により説明する。まず、ケース11の出力部分の板を切り欠いて凹部21を作る。電力増幅器12を接続された高周波フィルタ14の出力側部分とその出力端子である同軸コネクタとを、凹部21に当設する。22は、高周波フィルタ14の出力端子である同軸コネクタであり、これはネジ23により、高周波フィルタ14に留められる。
【0014】
この同軸コネクタ22に相当する部分に孔のあいた、凹部21より大きい大きさの出力板24を凹部21の外側から当てて、その四隅をネジ25でケース11に固定する。
【0015】
この後、上記凹部を塞ぐように側板26をケース11に当てて、ネジ27により固定し封止する。このようにして、送受信モジュール10が構成される。
【0016】
この第1実施形態においては、高周波フィルタ14の出力側は同軸コネクタの構造になっている。したがって、この同軸コネクタの外部導体により、電力増幅器12の出力側からの不要な高周波信号が高周波フィルタ14の出力に侵入することを防ぐことができる。
【0017】
またこの実施形態では、高周波フィルタ14の出力側である同軸コネクタは、そのまま送受信モジュール10の出力端子である同軸コネクタである。したがって、高周波フィルタの出力端子と送受信モジュールの出力端子を兼用することができ、両方を同軸コネクタにするよりも損失を少なくすることができると共に、より小型にすることが可能となる。
【0018】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、高周波フィルタの出力端子をそのまま、同軸コネクタ構造としていた。しかし、高周波フィルタの出力端子を同軸ケーブル構造とすることもできる。このような第2の実施形態を図3に示す。送受信モジュール30は、ケース31と、このケース31内に設置された電力増幅器32と、この電力増幅器32の出力端子であるマイクロストリップ線路33により接続された高周波フィルタ34と、この高周波フィルタ34の出力端子である同軸ケーブル34cに接続された送受信モジュール30の同軸コネクタ35とを備える。この同軸ケーブル34cは、内部導体とその外側にこの内部導体を取り囲むように設けられる外部導体から成る構造を有している。
【0019】
高周波フィルタ34は第1の実施形態と同様に直方体形状をしており、その入力端子は、マイクロストリップ線路33により、電力増幅器32の出力端子に接続されているが、高周波フィルタ34の出力端子は同軸ケーブル34cとなっており、この同軸ケーブル34cが、送受信モジュール30の同軸コネクタ35に接続される。
【0020】
この送受信モジュール30の、特に出力端子のあたりの構成の方法を、図4を用いて説明する。まず、図4(a)に示すように、高周波フィルタ34の出力端子の同軸ケーブル34cを横から挿入できように、送受信モジュール30の出力側の板に切り込み41を入れる。この切り込み41に同軸ケーブル34cを挿入する。次に図4(b)に示すような、切り込みを入れた同軸ケーブル34cを入れる止め板42を作成する。次に図4(c)に示すように、同軸ケーブル24cを送受信モジュール30の出力側の板の切り込み41の外側から入れて、この止め板42をネジ43により送受信モジュール30の出力側の板に固定する。
【0021】
次に図4(d)に示すように、その外側に同軸コネクタ25を当てて、送受信モジュール30の出力側の板に固定する。同軸コネクタ35と同軸ケーブル34cは、中心導体と外部導体が各々電気的に接続される。
【0022】
この実施形態では、高周波フィルタの出力側の同軸ケーブルはいわゆるセミリジッド構造のものであってもよい。
【0023】
この実施形態において、高周波フィルタ34の出力側が同軸ケーブル構造となっている。したがって、電力増幅器の出力側からの不要波の高周波信号は空中に出たとしても、高周波フィルタの出力側に直接、伝搬することはない。なぜなら、同軸ケーブル34cの外部導体により、電力増幅器32の出力側からの不要な高周波信号が高周波フィルタ34の出力に侵入することを防ぐことができるからである。
【0024】
またこの第2の実施形態では、高周波フィルタの出力側が同軸ケーブル34cになっており、同軸ケーブルはある程度柔軟性を有する。したがって、送受信モジュール30の出力端子の同軸コネクタ35を設ける位置が、高周波フィルタ34の出力端子の位置と一致しない場合にもこの実施形態は適用可能であり、装置の柔軟性に富む。
【0025】
ところで、上記第1、第2の実施形態では、高周フィルタの入力端子と、その前段の電力増幅器の出力端子とは、マイクロストリップ線路により接続されていた。しかし、この間を同軸コネクタにより接続してもよい。
【0026】
<第3の実施形態>
高周波フィルタの入力端子を同軸コネクタより前段と接続し、この出力端子を同軸ケーブルとした構成の第3の実施形態の構成例を図5に示す。
【0027】
送受信モジュール50は、ケース51と、このケース51内に設置された電力増幅器52と、この電力増幅器52の出力端子である同軸コネクタ53により接続された高周波フィルタ54と、この高周波フィルタ54の出力端子である同軸ケーブル54cに接続された送受信モジュール50の同軸コネクタ55とを備える。
【0028】
高周波フィルタ54は第1の実施形態と同様に直方体形状をしており、その入力端子は、同軸コネクタ53により、電力増幅器52の出力端子に接続されているが、高周波フィルタ54の出力端子は同軸ケーブル54cとなっており、この同軸ケーブル54cが、送受信モジュール50の同軸コネクタ55に接続される。
【0029】
この第3の実施形態においては、高周波フィルタ54の出力端子が同軸ケーブル54cになっており、高周波フィルタ54の入力側からこの出力側への不要波の空気伝搬を防止することができる。更にこの実施形態においては、高周波フィルタ54の入力端子は同軸コネクタ53により構成されているので、電力増幅器52の出力端子からの不要波の放射自体を低減することが可能であり、上記第1、第2の実施形態よりもさらに不要波の抑圧性能を向上することが可能となる利点がある。
【0030】
上記第1の実施形態においても、高周波フィルタの入力端子を同軸コネクタの構造にすることが可能である。
【0031】
<その他の変形例>
上記第1、第2、第3の実施形態では、送受信モジュールに適用した場合について説明した。しかし、本発明はこのような高周波フィルタを用いる送受信モジュールだけに限られず、高周波フィルタを用いる高周増幅器にも適用でき、一般的には、高周波フィルタを有する高周波装置に適用可能である。
【0032】
以上、いくつかの実施形態について説明したがこれらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
10、30、50・・・・送受信モジュール、
11、31、51・・・・ケース、
12、32、52・・・・電力増幅器、
13、33・・・・マイクロストリップ線路、
14、34、54・・・・高周波フィルタ、
15、35、53、55・・・・同軸コネクタ、
21・・・・凹部、
22、34c、54c・・・・・同軸ケーブル、
23、25、27、43・・・・ネジ、
24・・・・出力板、
42・・・・止め板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号の所定周波数成分を除去し、内部導体とこれを囲む外部導体とを有する構造の出力端子を持つ高周波フィルタと、
この高周波フィルタの出力端子に一端を接続される同軸コネクタと、
前記高周波フィルタ及び前記同軸コネクタの一部を内蔵し、前記同軸コネクタの他端を外部に露出させたケースと、
を有することを特徴とする高周波装置。
【請求項2】
前記高周波フィルタの出力端子は、前記同軸コネクタと兼用としたことを特徴とする請求項1記載の高周波装置。
【請求項3】
前記高周波フィルタの出力端子は、同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1記載の高周波装置。
【請求項4】
前記高周波フィルタの入力端子は、電力増幅器の出力端子にマイクロストリップ線路により接続されてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波装置。
【請求項5】
前記高周波フィルタの入力端子は、電力増幅器の出力端子に同軸コネクタにより接続されてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波装置。
【請求項6】
高周波信号の電力を増幅する電力増幅器と、
この電力増幅器により増幅された高周波信号の所定周波数成分を除去し、内部導体とこれを囲む外部導体とを有する構造の出力端子を持つ高周波フィルタと、
この高周波フィルタの出力端子に一端を接続される同軸コネクタと、
前記電力増幅器、前記高周波フィルタ及び前記同軸コネクタの一部を内蔵し、貫通孔により前記同軸コネクタの他端を外部に露出させたケースと、
を有することを特徴とする高周波装置。
【請求項7】
前記高周波フィルタの出力端子は、前記同軸コネクタと兼用としたことを特徴とする請求項6記載の高周波装置。
【請求項8】
前記高周波フィルタの出力端子は、同軸ケーブルであることを特徴とする請求項6記載の高周波装置。
【請求項9】
前記高周波フィルタの入力端子は、電力増幅器の出力端子にマイクロストリップ線路により接続されてなることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の高周波装置。
【請求項10】
前記高周波フィルタの入力端子は、電力増幅器の出力端子に同軸コネクタにより接続されてなることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の高周波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−81123(P2013−81123A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220847(P2011−220847)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】