高周波電源装置及びその制御方法
【課題】包絡線がステップ状のレベル変化を示すように変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、レベル変化時にリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができる高周波電源装置の制御方法を提供する。
【解決手段】高周波電力の電圧波形の包絡線の波形がレベル変化を示すタイミングから設定された過渡期間が経過するまでの期間は、高周波信号発生・増幅部1をオープンループ制御することにより高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに一致させる制御を行ない、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形がレベル変化を示すタイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間においては、高周波電力の電圧波形の包絡線レベルの検出値に基づいて、高周波信号発生・増幅部1をフィードバック制御することにより、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように制御する。
【解決手段】高周波電力の電圧波形の包絡線の波形がレベル変化を示すタイミングから設定された過渡期間が経過するまでの期間は、高周波信号発生・増幅部1をオープンループ制御することにより高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに一致させる制御を行ない、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形がレベル変化を示すタイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間においては、高周波電力の電圧波形の包絡線レベルの検出値に基づいて、高周波信号発生・増幅部1をフィードバック制御することにより、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップ状のレベル変化を示す信号により変調された電圧波形を有する高周波電力を出力する高周波電源装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の被処理物を処理する際に、高周波電力の輻射によりガスをプラズマ化する技術が用いられている。例えば、半導体製造工程において行なわれるエッチング工程では、プロセスチャンバ内に配置した電極に高周波電力を供給してチャンバ内に高周波電力を輻射することにより、チャンバ内のガスをプラズマ化し、このプラズマ化したガスを被処理物に供給することによりエッチング処理を行なっている。この種の用途に用いる高周波電源装置は、高周波信号を発生する高周波信号発生器と、高周波信号を増幅して高周波電力を出力する増幅器とを有する高周波信号発生・増幅部と、高周波信号発生・増幅部の出力端で検出される高周波電圧のレベルを目標レベルに保つように制御する制御部とにより構成される。
【0003】
近年、半導体の製造工程では、微細なエッチング加工を可能にするために、パルス波形で変調された高周波電力をプロセスチャンバ内に輻射することが行なわれるようになっている。パルス波形により変調された高周波電力は、増幅器に入力する高周波信号のレベルをオンオフ制御することにより得ることができる。
【0004】
パルス波形により変調された高周波電力をプラズマ処理に用いる場合、その電圧波形の包絡線の波形(パルス波形)の周波数、レベル(振幅値)、デューティ及び繰り返し周期が厳密に管理されることが必要であり、加工の微細化に伴って、電圧波形の包絡線の波形が、より精密に管理された安定な波形を呈する高周波電力をプロセスチャンバ内の電極に供給することが求められるようになっている。
【0005】
また最近では、ステップ状のレベル変化を生じるレベル変化タイミングを1周期の間に複数有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間がレベルを保持すべきインターバル期間となっていて、1周期の間にレベルが複数の異なる値をとるステップ波形により変調された高周波電力をプロセスチャンバ内に輻射することも検討されている。
【0006】
パルス波形により変調された高周波電力を得る高周波電源装置としては、例えば特許文献1に示されたものが知られている。特許文献1に示された高周波電源装置においては、高周波信号をその周波数よりも低い周波数を有するパルス信号で変調してパルス変調された高周波信号を生成するパルス変調部と、パルス変調された高周波信号を増幅してパルス変調された高周波電力に変換する高周波電力変換部(増幅器)と、高周波電力変換部が出力する高周波電圧を検出する出力検出器と、この出力検出器により検出された出力電圧を検波してその包絡線を示す検波電圧を生成する検波部と、サンプルホールド信号に応じて検波電圧をサンプリングしてサンプリング電圧を出力するサンプルホールド部と、上記パルス信号とサンプルホールド信号とを生成する制御部と、サンプリング電圧と基準電圧とを比較して誤差電圧を出力する誤差増幅部とを設けて、誤差電圧の大きさを最小にするように高周波電力変換部をフィードバック制御することにより、高周波電圧のレベルを制御している。
【0007】
特許文献1に示された高周波電源装置においては、高周波電力を変調するパルス信号の波形の各立ち上がりよりも一定時間遅れたタイミングから、各立ち下がりよりも一定時間だけ早いタイミングまでの期間をサンプルホールド信号のオン期間とするように、パルス信号のデューティ比に応じてサンプルホールド信号のサンプリング期間を設定している。そして、サンプルホールド部は、サンプルホールド信号のオン期間の間、検波部から得られる検波電圧をそのままサンプリング電圧として誤差増幅部に与えて、高周波電圧のレベル変動をフィードバックすることにより、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを所定のレベルに保つ制御を行なわせる。サンプルホールド信号のオフ期間中は、サンプルホールド信号がオン期間からオフ期間に切り替わるタイミング(パルス信号が立ち下がる直前のタイミング)の検波電圧をホールドする。パルス信号のオン期間の開始時には、ホールドしているサンプリング電圧を誤差増幅部に与えることにより、誤差電圧を出力させてフィードバック制御を行なわせ、パルス信号の波形が立ち上がった後、一定の遅れ時間が経過した時点でホールド信号をオンにして、検波電圧に等しいサンプリング電圧を誤差増幅部に与えることにより、パルス信号のオン期間における高周波電圧のレベル変動をフィードバックして、パルス信号のオン期間における高周波電圧のレベルを所定のレベルに保つ制御を行なわせている。
【0008】
特許文献1に示された高周波電源装置によれば、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形(パルス波形)が立ち上がった後にそのレベルが変動した場合に、そのレベル変動をフィードバックして、高周波電圧のレベルを所定のレベルに保持する制御を行なわせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−263452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示された高周波電源装置においては、高周波電力を変調するパルス信号の立ち上がり時及び立ち下がり時に、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを示す検波電圧のサンプリング値を基準値に保つようにフィードバック制御が行なわれる。パルス信号の各立ち上がり及び立ち下がりの過渡時には高周波電圧のレベルが急峻に変動するため、制御の追従性を良くしておかないと、パルス信号の各立ち上がり及び立ち下がりでリンギングや波形鈍りが生じることになる。高周波電力を変調するパルス信号の時間軸が長い場合(パルス幅が広い場合)には、パルス信号の立ち上がり時及び立ち下がり時にリンギングや波形鈍りが生じても目立たないため、負荷に大きな影響は与えないが、パルス信号の繰り返し周期が短くなり、パルス信号のオン期間が短くなった場合や、パルス信号の振幅が大きい場合には、パルス信号の立ち上がり及び立ち下がりで高周波電圧に生じるリンギングや波形鈍りが目立つ存在になり、これらの過渡波形が負荷に与える影響が問題になる。
【0011】
特に、高周波電力を変調する波形が単純なパルス波形ではなく、各周期の間に短い時間間隔で上下にステップ状のレベル変化を示すステップ波形であるような場合には、ステップ波形の各立ち上がりで高周波電圧に生じるリンギングまたは波形鈍りと、各立ち下がりで高周波電圧に生じるリンギングまたは波形鈍りとが短い時間間隔で現れるため、リンギングまたは波形鈍りを無視することができなくなる。従って、高周波電力を変調する波形が、高い周波数を有するパルス波形やステップ波形である場合には、変調波形の各立ち上がり及び立ち下がりでの制御の追従性を良くすることが課題になる。
【0012】
従来技術のように、高周波信号を増幅する増幅器から出力される高周波電圧を検出する検出器から得た検出データを基にして高周波電圧のレベルをフィードバック制御する制御ループを構成した場合には、変調波形のレベル変化が高速である場合に、追従性が悪くなるのを避けられず、無理矢理制御を行なおうとすると、変調波形のレベルの立ち上がり時及び立ち下がり時にリンギングや波形鈍りが生じて、これらが負荷に悪影響を及ぼすことになる。
【0013】
例えば、図10(A)に示したように、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に複数(図示の例では3個のレベル変化タイミングta,tb,tc)有して、1周期の間にレベルが複数(図示の例では3個)の値をとる多値ステップ波形(図示の例では3値ステップ波形)により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る場合に、ステップ波形の各立ち上がり及び立ち下がりで高周波電圧のレベルの検出値を基にしてフィードバック制御を行なうと、制御ゲインが大きすぎる場合等に、同図(B)に示すようにステップ波形の各レベル変化タイミングで、オーバシュートとダウンシュートとが繰り返されてリンギングLが発生する。また制御ゲインが不足する場合等には、同図(C)に示すように、ステップ波形の各レベル変化タイミングで制御が間に合わなくなって波形鈍りDが生じる。
【0014】
図10(B)の状態と、図10(C)の状態との間に、リンギングも波形鈍りも生じない状態が存在することになるが、変調波形がレベル変化を示すタイミングの時間間隔が短い場合には、リンギングも波形鈍りも生じないように制御系を構成することは困難である。
【0015】
図11(A)に示されているように、図10(A)に示した場合よりも、レベル変化の繰り返し周期を短くした高速のステップ波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る場合、フィードバック制御系がリンギングを生じる特性を有していると、図11(B)に示すように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各立ち上がり及び立ち下がりで発生するリンギングLが、レベル変化タイミング相互間のレベル保持期間の長さに対して無視し得ない波形になる。また図11(A)に示したように、レベル変化の繰り返し周期が短い高速のステップ波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る場合に、フィードバック制御系が波形鈍りを生じる特性を有していると、図11(C)のように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各立ち上がり及び立ち下がりで発生する波形鈍りDが、レベル変化タイミング相互間のレベル保持期間の長さに対して無視し得ない波形になる。
【0016】
上記のように、パルス波形またはステップ波形により変調された高周波電力を負荷に供給することが必要とされる場合に、高周波電圧の包絡線がレベル変化を示すタイミングでも、包絡線のレベルの検出値と目標値との偏差(誤差)に基づいて出力レベルのフィードバック制御を行なう従来の高周波電源装置を用いた場合には、得られる高周波電力の電圧波形が、リンギングまたは波形鈍りが目立つ波形となり、希望する波形と似ても似つかない波形になるため、要求にかなった電圧波形を有する高周波電力を負荷に供給することができないという問題があった。レベルがステップ状に変化した際にリンギングや波形鈍りが生じて負荷に悪影響が及ぶという問題が生じるのは、高周波電力を変調する波形がパルス波形や、ステップ波形である場合に限られるものではなく、高周波電力を変調する波形がステップ状のレベル変化を伴う他の波形である場合にも同様の問題が生じる。
【0017】
本発明の目的は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を得る際に、変調する波形のレベル変化の速度が如何なる場合であっても、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形がステップ状のレベル変化を示す過渡時にリンギングや波形鈍りが生じるのを防いで、安定な電圧波形を有する高周波電力を得ることを可能にした高周波電源装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願に開示された第1の発明は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法に係わるものである。
【0019】
本発明においては、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を高周波信号発生・増幅部に持たせておき、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておく。そして、上記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行う。また検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間は、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なう。
【0020】
上記の過渡期間は、各レベル変化タイミングでオープンループ制御により、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくした後、フィードバック制御系がフィードバック制御を安定に行なうことができる状態になるまでに要する時間に等しく設定する。この過渡期間は、実際には、検出部により検出される電圧レベルの検出値が安定になるまでに要する時間である。
【0021】
上記のように、ステップ状のレベル変化を示す波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御を、フィードバック制御によるのではなく、オープンループ制御により行なうようにすると、レベル変化の繰り返し周期が如何なる場合でも、各レベル変化タイミングでリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができる。
【0022】
また上記のように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうようにすると、各インターバル期間におけるレベルが正確に目標レベルに保たれた電圧波形を有する高周波電力を得ることができる。
【0023】
また上記のように構成すると、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、リンギングや波形鈍りが発生しないので、過度期間を短くすることができ、高周波電圧の包絡線の検出速度を高めることができる。そのため、高周波電力を変調する波形のレベル変化が高速である場合にも、各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御と、各インターバル期間におけるレベル制御とを正確に行なわせることができ、高速のパルス波形またはステップ波形により高周波電力を変調する場合にも対応することができる。
【0024】
本願に開示された第2の発明は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間が、レベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法に係わるものである。
【0025】
本発明においても、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を前記高周波信号発生・増幅部に持たせておき、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておく。また、高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして初期目標レベル記憶部に記憶しておき、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして次周期目標レベル記憶部に記憶するステップを、検出部が検出する高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期毎に行う。
【0026】
そして、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目においては、該高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0027】
また第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0028】
上記のような制御を行なうと、高周波電力を零から立ち上げる際の高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各レベル変化タイミングにおいて高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを所定の初期目標レベルまで立ち上げ、または立ち下げる制御を、リンギングや波形鈍りを生じさせることなく行なうことができ、また高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間におけるレベルを所定の初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により正確に行なわせることができる。
【0029】
上記のように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第2周期目以降の各周期において、各インターバル期間における包絡線のレベルを、一つ前の(直前の)周期の対応するインターバル期間の過渡期間が過ぎた後の期間において検出されたレベルを目標レベルとして制御するようにすると、第2周期目以降の各周期において、各レベル変化タイミングにおける初期の目標レベルが、直前の周期の対応するインターバル期間において実際にフィードバック制御された安定なレベルに等しくなるので、第2周期目以降の各周期において各レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過するまでの間にオープンループ制御により増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと、フィードバック制御に切替えた瞬間に増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの間に殆ど差が生じないようにすることができる。
【0030】
本願に開示された第3の発明は、第1の発明に係わる制御方法を実施する高周波電源装置に係わるもので、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を対象とする。
【0031】
本発明においては、高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、インターバル期間における前記電圧波形の目標レベルを記憶した目標レベル記憶部と、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部とが設けられる。
【0032】
上記高周波信号発生・増幅部は、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成される。
【0033】
また上記高周波電力制御部は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間は、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうように構成される。
【0034】
本願に開示された第4の発明は、第2の発明に係わる制御方法を実施する高周波電源装置に係わるもので、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を対象とする。
【0035】
本発明に係わる高周波電源装置は、信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして記憶する初期目標レベル記憶部と、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして記憶する次周期目標レベル記憶部と、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部とが設けられる。上記高周波信号発生・増幅部は、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成される。
【0036】
上記高周波電力制御部は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目と、第1周期目に続く第2周期目以降の各周期とにおいて異なる制御を行なう。
第1周期目においては、検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0037】
第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なうように構成される。
【0038】
本願に開示された第5の発明は第4の発明に適用されるもので、本発明においては、高周波信号発生・増幅部が、高周波信号発生器から増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備えている。また高周波信号発生器は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成される。
【0039】
そして、第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行う。また第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行なう。
【0040】
本願に開示された第6の発明も、第4の発明に適用される。本発明においては、高周波信号発生・増幅部が、高周波信号発生器から増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備える。そして、第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行う。
【0041】
また第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行なう。
【0042】
本願に開示された第7の発明も第4の発明に適用される。本発明においても、高周波信号発生・増幅部に設けられた高周波信号発生器が、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成される。
【0043】
そして、第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにDDSにレベルデータを与えることにより行う。
【0044】
また第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにDDSにレベルデータを与えることにより行なう。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、ステップ状のレベル変化を示す波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御を、フィードバック制御によるのではなく、オープンループ制御により行なうので、レベル変化の繰り返し周期が如何なる場合でも、各レベル変化タイミングでリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができる。
【0046】
本発明によればまた、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうので、各インターバル期間におけるレベルが正確に目標レベルに保たれた電圧波形を有する高周波電力を得ることができる。
【0047】
また本発明によれば、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、リンギングや波形鈍りが発生しないので、過度期間を短くすることができ、高周波電圧の包絡線の検出速度を高めることができる。そのため、高周波電力を変調する波形のレベル変化が高速であるにも、各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御と、各インターバル期間におけるレベル制御とを正確に行なわせることができ、高速のパルス波形またはステップ波形等により高周波電力を変調する場合にも対応することができる。
【0048】
本願に開示された第2の発明及び第4ないし第7の発明によれば、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間が、レベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を繰り返す波形で変調された高周波電力を得る場合に、高周波電力を零から立ち上げる際の高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各レベル変化タイミングにおいて高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを所定の初期目標レベルまで立ち上げ、または立ち下げる制御を、リンギングや波形鈍りを生じさせることなく行なうことができ、また高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間におけるレベルを所定の初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により正確に行なわせることができる。
【0049】
また第2の発明及び第4ないし第7の発明によれば、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第2周期目以降の各周期において、各インターバル期間における包絡線のレベルを、一つ前の周期の対応するインターバル期間において過渡期間を過ぎた後の期間に検出した安定なレベルを目標レベルとして制御するので、第2周期目以降の各周期の各インターバル期間において、電圧レベルの制御をオープンループ制御からフィードバック制御に切り替える際にレベル変動が生じるのを防いで、電圧波形の包絡線が無用な電圧変動を伴わないきれいな波形を呈する変調された高周波電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係わる高周波電源装置の第1の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明に係わる高周波電源装置の第2の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明に係わる高周波電源装置の第3の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明に係わる高周波電源装置の第4の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図5】高周波電力を変調する波形の一例を模式的に示した波形図である。
【図6】(A)は本発明に係わる高周波電源装置が出力する高周波電力の電圧波形を模式的に示した波形図である。(B)は本発明における高周波電圧のレベル制御の方法を説明する波形図である。
【図7】図6(B)に示した波形の一部を拡大して示した波形図である。
【図8】図6(B)に示した波形の他の一部を拡大して示した波形図である。
【図9】(A)及び(B)は、高周波電力を変調する波形の他の異なる例を模式的に示した波形図である。
【図10】(A)は高周波電源装置から出力させるべき高周波電力の電圧波形の一例を模式的に示した波形図、(B)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の一例を模式的に示した波形図、(C)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の他の例を模式的に示した波形図である。
【図11】(A)は図10(A)に示した例よりも変調波形の周波数を高くした場合の電圧波形の包絡線の波形を模式的に示した波形図、(B)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の一例を模式的に示した波形図、(C)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の他の例を模式的に示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の高周波電源装置は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を出力するように制御される。本実施形態では、図5に示すように、1周期の間に3つのレベル変化タイミングを有する3値の(1周期の間に3つのレベルをとる)ステップ波形により高周波電力を変調するものとする。従って、本実施形態の高周波電源装置から出力される高周波電圧は、その包絡線が図5に示すようなステップ波形(階段状波形)を呈する。
【0052】
図5において、Tk (k=1,2,3,…)はk番目の周期、tak,tbk,tckは、k番目の周期に存在するレベル変化タイミング、t1k,t2k,t3kはk番目の周期に存在するインターバル期間である。またP1k,P2k,P3k(図示の例ではP1k>P2k>P3k)はそれぞれ、k番目の周期のインターバル期間t1k,t2k,t3kにおける高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルである。k番目の周期におけるインターバル期間t1k,t2k,t3kの長さは等しくなくてもよいが、図5に示した例では、これらのインターバル期間がすべて等しく設定されている。即ちt1k=t2k=t3kとなっている。また、k番目の周期のインターバル期間t1k,t2k,t3kにおける高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルP1k,P2k,P3kはそれぞれ他の周期のインターバル期間における対応するレベルに等しくなくてもよいが、図5に示した例では、k番目の周期のインターバル期間t1k,t2k,t3kにおける高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルP1k,P2k,P3kがそれぞれ、他の周期のインターバル期間における対応するレベルに等しく設定されている。
【0053】
本発明の一態様では、上記のように、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力させるに当たり、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を高周波信号発生・増幅部に持たせておき、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておく。
【0054】
そして、上記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間は、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なう。
【0055】
図1は上記の制御方法を実施する本発明に係わる高周波電源装置の第1の実施形態の構成を示したものである。図1において、1は高周波信号を増幅して高周波電力を出力する高周波信号発生・増幅部、2は高周波信号発生・増幅部1が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部、3はインターバル期間における電圧波形の目標レベルを記憶した目標レベル記憶部、4は検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部である。
【0056】
各部を更に詳細に説明すると、高周波信号発生・増幅部1は、外部から与えられた周波数データ(デジタル値)が示す周波数と、外部から与えられたレベルデータ(デジタル値)が示す電圧レベルとを有する高周波信号を発生する高周波信号発生器101と、高周波信号発生器101が発生する高周波信号を増幅する増幅器102と、高周波信号発生器101と増幅器102との間に挿入されて、外部から与えられるレベルデータ(アナログ信号)に応じて、高周波信号発生器101から増幅器102に入力される高周波信号の電圧レベルを調整するレベル調節器103と、外部から与えられるレベルデータ(デジタル値)をアナログ信号に変換してレベル調節部103に与えるD/A変換器104とからなっている。
【0057】
本実施形態では、高周波信号発生器101として、周波数データ(デジタル値)が示す通りの周波数と、外部から与えられたレベルデータ(デジタル値)が示す通りの電圧レベルとを有する高周波信号を発生するダイレクト・デジタル・シンセサイザー(DDS)が用いられている。
【0058】
レベル調節部103は例えば電子ボリュームからなっていて、A/D変換器104から与えられた制御信号(電圧信号)に応じて増幅器102に入力する高周波信号のレベルを調節する。本実施形態では、レベル調節部103によるレベル調節と、DDS用レベルデータによるDDS101の出力レベルの調節との双方により、高周波信号発生・増幅部1の出力をオープンループで調節することができるようにしている。
【0059】
レベル調節部103によるレベル調節及びDDS用レベルデータによるDDS101の出力レベルの調節のいずれによっても、増幅器102から出力させる高周波電力の出力を調整できるが、本実施形態では、高周波電力を変調する波形がステップ状のレベル変化を示す各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの期間においては、DDS101に与えるレベルデータの大きさにより増幅器102から出力させる高周波電力の出力を調整し、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間においては、レベル調節部103に与えるレベルデータの大きさにより増幅器102から出力させる高周波電力の出力を調整する。
【0060】
本実施形態では、D/A変換器104として、デジタルデータがパラレル入力されるように構成されていて、高速でD/A変換を行なうことができるものを用いている。これに対し、DDS101としては、デジタル値からなるレベルデータがシリアル入力されるものを用いている。
【0061】
検出部2は、増幅器102の出力端と負荷につながるケーブルとの間に挿入されて増幅器102が出力する高周波電圧の一部を分岐する分波器201と、分波器201の出力から高調波成分などの不要成分を除去して高周波電圧の基本周波数成分を取り出すフィルタ202と、フィルタ202から出力される高周波電圧を包絡線検波してその包絡線を検出する検波器203と、検波器203の出力のレベルを検出するレベル検出器204と、レベル検出器204の出力をデジタル値に変換するA/D変換器205とからなっている。
【0062】
目標レベル記憶部3は、マイクロプロセッサに設けられたメモリからなっていて、各インターバル期間における電圧波形の目標レベルを記憶している。
【0063】
高周波電力制御部4は、各部を制御するコントローラ401と、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各インターバル期間の長さ、各インターバル期間における電圧レベル、変調波形の繰り返し周波数など、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線の波形を規定するために必要なデータ(出力設定データ)をコントローラ401に入力する出力設定データ入力部402と、検出部2が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各インターバル期間におけるレベルと、目標レベル記憶部3から読み出した対応するインターバル期間における目標レベルとを比較して、両レベルの間の偏差を示す誤差信号を出力する誤差検出部404と、誤差検出部404が出力する誤差信号と、目標レベル記憶部3から読み出した目標レベルを示す信号とのいずれを制御に用いるかを選択する選択処理部405と、選択処理部405から与えられた制御信号に基づいて、高周波信号発生・増幅部1の高周波信号発生部101及びD/A変換器104にそれぞれ与えるDDS用レベルデータ及びレベル調節用レベルデータの大きさを演算して、演算した大きさを有するDDS用レベルデータ及びレベル調節用レベルデータをそれぞれ高周波信号発生部101及びD/A変換器104に与える制御演算部406とにより構成されている。
【0064】
図1に示した実施形態においては、コントローラ401、誤差検出部404、選択処理部405及び制御演算部406がマイクロプロセッサにより構成され、出力設定データ入力部402は、キーボードなどにより構成されている。
【0065】
コントローラ401は、目標レベル記憶部3へのデータの書き込み及び該記憶部3からのデータの読み出しを制御するとともに、誤差検出部404及び制御演算部406の演算動作と、選択処理部405の選択動作とを制御する。
【0066】
装置が起動すると、コントローラ401は先ず出力設定データ入力部402から入力されたデータに基づいて、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線の各インターバル期間における目標レベルを目標レベル記憶部3に記憶させる。
【0067】
高周波電力制御部4が起動すると、コントローラ401は、出力設定データ入力部402から与えられた周波数データに基づいて、DDS101に周波数データを与える。コントローラ401は又、内蔵したタイマの動作により、出力設定データ入力部402から入力されたデータに基づいて、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形のレベルをステップ状に変化させる各レベル変化タイミングや、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した時の時刻を示すタイミングを検出して、検出したタイミングを示す一連のタイミング信号を時系列的に発生させ、これらのタイミング信号に同期して各部を制御する。
【0068】
上記過渡期間は、各レベル変化タイミングでオープンループ制御により、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくした後、フィードバック制御系が、フィードバック制御を安定に行なうことができる状態になるまでに要する時間に等しく設定する。この過渡期間は、実際には、検出部により検出される電圧レベルの検出値が安定になるまでに要する時間であり、各レベル変化タイミングでフィードバック制御を行なわせた場合にリンギングや波形鈍りが消滅するのに要する過渡期間に比べると非常に短い時間である。この過渡期間は、制御に用いるプログラマブルロジックデバイスや、マイクロコンピュータのマシンサイクル、制御回路の追従特性、装置全体の実際の振る舞いなどを考慮して適当な値に設定する。
【0069】
ここで、高周波電力を図6(A)に示した波形で変調するものとすると、コントローラ401は、最初のレベル変化タイミングta1を検出した時に、当該レベル変化タイミングta1に続くインターバル期間t11における高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルの目標レベルP11を、目標レベル記憶部3から読み出し、読み出した目標レベルP11を選択処理部405に与える。コントローラ401はまた、選択処理部405に指令を与えて、読み出した目標レベルP11を制御演算部406に入力させる。このときコントローラ401は、予め設定した一定の大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与えることを制御演算部406に指令すると共に、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP11とするために、DDS101に与える必要があるレベルデータの大きさの演算を制御演算部406に行なわせる。
【0070】
制御演算部406は、予め設定した一定の大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与えるとともに、演算した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。これにより、増幅器102から電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を瞬時に出力させる。この制御はフィードバック制御によらず、DDS101及びD/A変換器104にそれぞれレベルデータを与えるだけのオープンループ制御により行なうため、レベル変化タイミングta1においてリンギングが発生したり波形鈍りが発生したりするのを防ぐことができる。レベル変化タイミングt11から、設定された過渡期間Δt11が経過するまでの間は、上記のオープンループ制御を継続させる。オープンループ制御時にレベル調節部に与えるレベルデータの大きさは、例えば、レベル調節部103によるレベルの減衰量を0dBとする大きさに設定する。
【0071】
コントローラ401は、レベル変化タイミングta1から、設定された過渡期間Δt11が経過したことを検出した時に、目標レベル記憶部3から読み出した目標レベルP11を誤差検出部404に与えて、目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を演算させる。
【0072】
誤差検出部404は、演算した偏差を示す誤差信号を選択処理部405に入力する。この時コントローラ401は、選択処理部405に選択切替え指令を与えて、選択処理部405から制御演算部406に入力する信号を、目標レベルP11を与える信号から偏差を示す誤差信号に切り替えるとともに、制御演算部406に演算指令を与えて、目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を零にするためにレベル調節部103に与える必要があるレベルデータの大きさを演算させる。このレベルデータの演算値は、制御演算部406から高周波信号DDS101に与えられるレベルデータ(DDS101から出力される高周波信号のレベル)の大きさにより相違する。
【0073】
制御演算部406は、予め設定した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与えるとともに、演算した大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与える。制御演算部406からD/A変換器104を通してレベル調節部103に与えられるレベルデータは、DDS101から出力される高周波信号のレベル(DDS用レベルデータにより決まる)を、偏差を零にするために増幅器102に入力する必要があるレベルに調節するように、レベル調節部103の減衰量を設定するためのデータである。上記のように、DDS101及びレベル調節部103にレベルデータを与えることにより、電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を増幅器102から出力させる。
【0074】
上記のように、レベル変化タイミングta1から過渡期間Δt11が経過した後の残りのインターバル期間(t11−Δt11の期間)においては、目標レベルP11と、検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差に基づいて、高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御が、フィードバック制御により行なわれる。従って、過渡期間に相当する一定期間Δt11が経過した後のインターバル期間(t11−Δt11の期間)における電圧波形の包絡線のレベルは正確に目標レベルP11に保たれる。上記のフィードバック制御は、シリアルデータが入力されるように構成されたDDS101に与えるレベルデータを固定値とし、パラレルデータが入力されるように構成された高速のD/A変換器104を通してレベル調節部103に与える入力レベル調節用レベルデータを可変値として偏差に応じて変化させることにより行なうので、高い応答性をもたせて行なわせることができる。
【0075】
同様にして、レベル変化タイミングtb1,tc1,ta2,tb2,…及びそれぞれのレベル変化タイミングから設定された過渡期間Δt21,Δt31,Δt12,Δt22,…が経過するまでの間オープンループ制御により高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP21,P31,P12,P22,…とする制御が行なわれ、それぞれのレベル変化タイミングtb1,tc1,ta2,tb2,…から過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間(t21−Δt21,t31−Δt31,t12−Δt12,…の期間)の間、フィードバック制御により高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP21,P31,P12,P22,…に保つ制御が行なわれる。
【0076】
上記のように、本実施形態では、ステップ状のレベル変化を示す波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、増幅器102から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルまで立ち上げ(または立ち下げ)る制御を、フィードバック制御によるのではなく、オープンループ制御により行なうので、各レベル変化タイミングで、電圧波形の包絡線のレベルを、リンギングや波形鈍りを生じさせることなく、瞬時に目標レベルに一致させることができる。従って、レベル変化の繰り返し周期が如何なる場合でも、各レベル変化タイミングでリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができ、制御系がフィードバック制御を安定に行なうことができる状態になるまでの過渡期間の間、電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つことができる。
【0077】
また本実施形態では、増幅器102から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間、検出部2が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部1にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうので、各インターバル期間におけるレベルが正確に目標レベルに保たれた電圧波形を有する高周波電力を得ることができる。
【0078】
更に本実施形態によれば、増幅器102から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、リンギングや波形鈍りが発生することがないので、過度期間を短くすることができ、高周波電圧の包絡線の検出速度を高めることができる。そのため、高周波電力を変調する波形のレベル変化が高速である場合にも、各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御と、各インターバル期間におけるレベル制御とを正確に行なわせることができ、高速のパルス波形やステップ波形等により高周波電力を変調する場合にも問題なく対応することができる。
【0079】
図2は本発明に係わる高周波電源装置の第2の実施形態を示したものである。本実施形態では、高周波電圧波形の包絡線が各インターバル期間においてとるべき目標レベルを記憶する記憶部として、初期目標レベル記憶部3Aと、次周期目標レベル記憶部3Bとが設けられ、高周波電力制御部4に演算処理部403が追加されている。
【0080】
初期目標レベル記憶部3Aは、高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において電圧波形の包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に、高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間(図6に示した例ではt11,t21,t31)において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベル(図6に示した例ではP11,P21,P31)を初期目標レベルとして記憶する記憶部である。
【0081】
初期目標レベル記憶部3Aには、初期目標レベルそのものを記憶させておいてもよく、出力設定データ入力部402から入力された出力データに対して初期目標レベルを補間演算するためのマップデータ等を記憶させておいてもよい。例えば、出力設定データ入力部402から入力された高周波電力の所望の出力(W)に対して、増幅器102から出力させる高周波電圧のレベルの初期目標レベルを求めるようにするために、所望の出力と初期目標レベルとの間の関係を与えるマップデータを、初期目標レベル記憶部3Aに記憶させておくようにしてもよい。
【0082】
演算処理部403は、コントローラ401から与えられる指令に応じて、初期目標レベル記憶部3Aに記憶されているデータを用いて初期目標レベルを演算するか、または初期目標レベル記憶部3Aに記憶されている初期目標レベルを読み出すことにより、起動後第1周期目の各インターバル期間の目標レベルである初期目標レベルを取得し、取得した初期目標レベルを選択処理部405に与える。
【0083】
次周期目標レベル記憶部3Bは、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間の、安定にフィードバック制御が行なわれるインターバル期間の間に検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして記憶する記憶部である。
【0084】
図6に示した例で具体的に説明すると、次周期目標レベル記憶部3Bは、起動後の最初の周期である第1周期T1の1番目のインターバル期間t11の過渡期間に相当する時間Δt11が経過した後の残りの期間(t11−Δt11の期間)で検出部2により検出された電圧レベルを、第2周期T2の対応するインターバル期間t12における目標レベルとして記憶し、第1周期T1の2番目のインターバル期間t21の過渡期間に相当する時間Δt21が経過した後の残りの期間(t21−Δt21の期間)で検出部2により検出された電圧レベルを、第2周期T2の対応するインターバル期間t22における目標レベルとして記憶する。また第1周期T1の3番目のインターバル期間t31の過渡期間に相当する時間Δt31が経過した後の残りの期間(t31−Δt31の期間)で検出部2により検出された電圧レベルを、第2周期T2の対応するインターバル期間t32における目標レベルとして記憶する。
【0085】
同様にして、次周期目標レベル記憶部3Bは、第2周期目以降の各インターバル期間の過渡期間に相当する時間が経過した後の安定期間において検出された電圧レベルを、第3周期目以降の次の周期の対応するインターバル期間における目標レベルとして記憶する。次周期目標レベル記憶部3Bの記憶内容は、各周期の各インターバル期間の過渡期間に相当する時間が経過した後に検出された電圧レベルを次の周期の対応するインターバル期間における目標レベルとして記憶する際に随時更新される。次周期目標レベル記憶部3Bへの目標レベルの書き込み及び次周期目標レベル記憶部3Bからの次周期目標レベルの読み出しは、コントローラ401により制御される。図2に示した実施形態のその他の構成及び動作は、図1に示した実施形態のそれと同様である。
【0086】
図2に示した実施形態の高周波電力制御部4は、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目において、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を高周波信号発生・増幅部1から出力させるために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部1に与えることにより、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部1にレベルデータを与えることにより、高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0087】
高周波電力制御部4はまた、第1周期目に続く第2周期目以降の各周期において、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部1に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間、検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部1にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部1が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0088】
図2に示した実施形態における高周波電力制御部4の動作の一例を図6に示した例を用いて具体的に説明すると次の通りである。
コントローラ401は、第1周期T1の最初のレベル変化タイミングta1で高周波電力を零から立ち上げる際に、インターバル期間t11における高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルの目標レベルP11を、初期目標レベル記憶部3Aから読み出し、読み出した目標レベルP11を選択処理部405に与える。
【0089】
コントローラ401はまた、選択処理部405に指令を与えて、読み出した目標レベルP11を制御演算部406に入力させる。このときコントローラ401は、レベル調節用レベルデータD/A変換器104に予め設定した大きさのレベルデータをD/A変換器104に与えることを制御演算部406に指令するとともに、制御演算部406に、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP11とするためにDDS101に与える必要があるレベルデータの大きさの演算を行なわせる。
【0090】
制御演算部406は、演算した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。これにより、増幅器102から電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を瞬時に出力させる。この制御はオープンループ制御により行なうため、レベル変化タイミングta1においてリンギングが発生したり波形鈍りが発生したりするのを防ぐことができる。
【0091】
コントローラ401は、第1周期目のレベル変化タイミングta1から、設定された過渡期間Δt11が経過したことを検出した時に、初期目標レベル記憶部3Aから読み出した初期目標レベルP11を誤差検出部404に与えて、初期目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を演算させる。
【0092】
誤差検出部404は、演算した偏差を示す誤差信号を選択処理部405に入力する。この時コントローラ401は、選択処理部405に選択切替え指令を与えて、選択処理部405から制御演算部406に入力する信号を、初期目標レベルP11を与える信号から偏差を示す誤差信号に切り替えるとともに、制御演算部406に演算指令を与えて、目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を零にするためにレベル調節部103に与える必要があるレベルデータの大きさを演算させる。このレベルデータの大きさは、制御演算部406から高周波信号DDS101に与えられるレベルデータ(DDS101から出力される高周波信号のレベル)の大きさにより相違する。
【0093】
制御演算部406は、演算した大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与えるとともに、予め設定した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。このように、DDS101及びレベル調節部103にレベルデータを与えることにより、電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を増幅器102から出力させる。
【0094】
同様にして、第1周期目の他のレベル変化タイミングにおけるオープンループ制御と、レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過した後のインターバル期間におけるフィードバック制御とを行なわせる。
【0095】
第2周期T2のレベル変化タイミングta2においては、一つ前の周期T1のインターバル期間t11の過渡期間が経過した後の安定期間で検出された電圧波形の包絡線のレベルP11を、最初のインターバル期間t12における高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルの目標レベルP12として次周期目標レベル記憶部3Bから読み出し、読み出した目標レベルP12を選択処理部405に与える。コントローラ401はまた、選択処理部405に指令を与えて、読み出した目標レベルP12を制御演算部406に入力させる。
【0096】
このときコントローラ401は、レベル調節用レベルデータD/A変換器104に予め設定した大きさのレベルデータ(固定値)を与えることを制御演算部406に指令するとともに、制御演算部406に、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP12とするためにDDS101に与える必要があるレベルデータの大きさの演算を行なわせる。制御演算部406は、演算した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。これにより、増幅器102から電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP12に等しい高周波電力を瞬時に出力させる。
【0097】
コントローラ401は、レベル変化タイミングta1から、設定された過渡期間Δt12が経過したことを検出した時に、次周期目標レベル記憶部3Bから読み出した対応するインターバル期間の目標レベルP12を誤差検出部404に与えて、目標レベルP12と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を演算させる。
【0098】
誤差検出部404は、演算した偏差を示す誤差信号を選択処理部405に入力する。この時コントローラ401は、選択処理部405に選択切替え指令を与えて、選択処理部405から制御演算部406に入力する信号を、目標レベルP12を与える信号から偏差を示す誤差信号に切り替えるとともに、制御演算部406に演算指令を与えて、目標レベルP12と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を零にするためにレベル調節部103に与える必要があるレベルデータの大きさを演算させる。
【0099】
制御演算部406は、予め設定した大きさを有するDDS用レベルデータ(固定値)をDDS101に与えるとともに、演算した大きさを有するレベル調節用レベルデータ(可変値)をD/A変換器104に与える。このように、DDS101及びレベル調節部103にレベルデータを与えることにより、電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP12に等しい高周波電力を増幅器102から出力させる。
【0100】
第2周期T2の2番目のインターバル期間t22以降の各インターバル期間における制御及び第3周期以降の各周期の各インターバル期間における制御も同様にして行なわれる。
【0101】
上記のような制御を行なわせた場合に高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の一例を、図7及び図8に拡大して示した。図7は、図6のインターバル期間t11及びインターバル期間t21の前半部分付近の波形を拡大して示したものであり、図8は、図6のインターバル期間t12及びインターバル期間t22の前半部分の波形を拡大して示したものである。
【0102】
第1周期T1においては、各レベル変化タイミングで先ずオープンループ制御で電圧波形の包絡線の波形のレベルを予め設定された初期目標レベルとする制御が行なわれ、次いで過渡期間が経過した時点で、制御演算部406に与えられる制御信号が誤差信号に切り替えられて、電圧レベルの制御がフィードバック制御に切替えられるが、この切換の際には、図7のΔt11,Δt21の期間の波形に見られるように、僅かではあるがレベル変動Vが生じることがある。
【0103】
これに対し、第2周期目以降の各周期においては、各インターバル期間における包絡線のレベルを、一つ前の(直前の)周期の対応するインターバル期間において過渡期間を過ぎた後の期間に検出した安定なレベルを目標レベルとして制御するので、第2周期目以降の各周期においては、各レベル変化タイミングにおける初期の目標レベルを、直前の周期の対応するインターバル期間において実際にフィードバック制御されたレベルに等しくすることができる。そのため、第2周期目以降の各周期において各レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過するまでの間にオープンループ制御により増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと、各レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過した時点でフィードバック制御に切替えた瞬間に増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの間に殆ど差が生じないようにすることができ、図8のΔt12の期間の波形及びΔt22の期間の波形に見られるように、第2周期目以降の各周期における電圧波形を、制御がオープンループ制御からフィードバック制御に切り替えられる際に電圧変動が生じることがないきれいな波形とすることができる。
【0104】
上記の動作説明では、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力を零から立ち上げる際の最初の周期を第1周期目として、この第1周期目の各インターバル期間における電圧レベルの目標レベルを予め設定した初期レベルとするとしたが、上記のように、第2周期目以降の各インターバル期間における目標レベルを、一つ前の対応するインターバル期間の安定期間において検出されたレベルとする構成をとる場合、高周波信号発生・増幅部1から一旦高周波電力を出力させた後、高周波電力の出力を中断することなく、途中で各インターバル期間における目標レベルを変更する場合には、各インターバル期間における目標レベルが変更された(更新された)高周波電力を発生させる際の最初の周期を第1周期目として、その周期の各インターバル期間における目標レベルを更新された初期目標レベルとする必要がある。
【0105】
図2に示したように、高周波信号発生・増幅部1に高周波信号発生器101とレベル調節器103とを設けて、高周波信号発生器101に与えるレベルデータを可変値とし、レベル調節器103に与えるレベルデータを固定値としてオープンループ制御を行い、高周波信号発生器101に与えるレベルデータを可変値とし、レベル調節器103に与えるレベルデータを固定値としてフィードバック制御を行う構成は、高周波信号発生器を構成するDDS101として、レベルデータをシリアルデータとして入力する形式のものしか入手することができない場合、及びレベル調整器103として、その出力レベルを0dBまで絞り込むことが難しいものしか入手することができない場合に有利な構成である。
【0106】
図2に示したように構成しておくと、レベル変化タイミングで高周波電力の電圧レベルを零から立ち上げる動作及び当該電圧レベルを零まで立ち下げる動作を、DDSの性能により問題なく実現することができる。またレベルデータがパラレルデータとして入力される高速のD/A変換器104を通してレベル調節器103にレベルデータを与えることにより、各インターバル期間の安定期間におけるフィードバック制御を高速で行なわせて、各インターバル期間において電圧レベルを目標レベルに保つ制御を正確に行なわせることができる。即ち、DDSとレベル調整器がそれぞれ有するメリットを活かして、各レベル変化タイミングから過渡期間の間に行なうオープンループ制御と、各インターバル期間の過渡期間が経過した後の残りの期間に行なうフィードバック制御との双方を適確に行なわせることができる。
【0107】
図2に示した実施形態に係わる高周波電源装置の構成の特徴をまとめて示すと、下記の通りである。
(a)高周波信号発生・増幅部1は、高周波信号発生器101から増幅器102に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備えている。
(b)高周波信号発生器101は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成されている。
(c)第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDS101にレベルデータ(可変値)を与えることにより行う。このときレベル調整器103には一定のレベルデータを与えておく。
(d)第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行う。
(e)第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行う。
(f)第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータ(可変値)を与えることにより行なう。このときDDS101には一定値に固定されたレベルデータを与えておく。
【0108】
図3は、本発明の第3の実施形態に係わる高周波電源装置の構成を示したブロック図である。本実施形態では、コントローラ401から高周波信号発生器(DDS)101にレベルデータ(固定値)が与えられ、制御演算部406からはレベル調節器103へのみレベルデータ(可変値)が供給される。
【0109】
図3に示した実施形態では、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの時間に行なうオープンループ制御及び各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間に行なうフィードバック制御の双方を、レベル調節器103に与えるレベルデータを可変値とすることにより行なう。その他の点は図2に示した実施形態と同様である。図3に示した実施形態の構成は、レベル調節部103として、その出力レベルを零レベルまで問題なく絞ることができる特性を有するものを用いることができる場合に有利な構成である。本実施形態のように構成すると、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間に行なうオープンループ制御及び各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間に行なうフィードバック制御の双方を高い応答性を持たせて行なうことができる。
【0110】
図3に示した実施形態に係わる高周波電源装置の構成の特徴をまとめて示すと、下記の通りである。
(a)高周波信号発生・増幅部1は、高周波信号発生器から増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器103を備えている。
(b)第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行う。
(c)第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行う。
(d)第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行う。
(e)第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行なう。
【0111】
図4は、本発明の第4の実施形態に係わる高周波電源装置の構成を示したブロック図である。本実施形態では、図1及び図2の実施形態で設けられていたレベル調節器103が省略されて、高周波信号発生器(DDS)101の出力が直接増幅器102に入力されている。
【0112】
この例では、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの時間に行なうオープンループ制御及び各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間に行なうフィードバック制御の双方を、高周波信号発生部101に与えるレベルデータを可変値として行なう。その他の点は図2に示した実施形態と同様である。
【0113】
図4に示したように構成すると、図1ないし図3の実施形態で用いられていたレベル調節部103を省略することができるため、装置の構成を簡素化することができる。図3に示した実施形態の構成は、DDS101として、レベルデータをシリアルデータで入力し得る高速のもの(出力レベルの調整を高速度で行なうことができるもの)を入手することができる場合に有利な構成である。
【0114】
図4に示した実施形態に係わる高周波電源装置の構成の特徴をまとめて示すと、下記の通りである。
(a)高周波信号発生器101は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成されている。
(b)第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行う。
(c)第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行う。
(d)第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行う。
(e)第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行なう。
【0115】
上記の各実施形態では、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に複数有して、各レベル変化タイミングから次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間がレベルを保持する期間となっているステップ波形を変調波形として、この変調波形で変調された高周波電力を得るように、高周波信号発生・増幅部1を制御するようにしたが、本発明はステップ波形を変調波形とする場合に限られるものではなく、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈する変調波形で高周波電力を変調する場合に広く適用することができる。
【0116】
例えば、図9(A)に示すようにパルス波形により高周波電力を変調する場合や、図9(B)に示すように、各インターバル期間においてレベル変化タイミングの直後に一定時間の間レベルを保持した後、レベルが一定の傾きをもって変化する波形で高周波電力を変調するような場合にも本発明を適用することができる。
【0117】
図9(B)に示すように、各インターバル期間においてレベル変化タイミングの直後に一定時間の間レベルを保持した後、レベルが一定の傾きをもって変化する波形で高周波電力を変調する場合には、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後、電圧レベルが一定値を保持している間に検出部2が検出したレベルを次の周期の対応するインターバル期間の初期の目標レベルとする。また設定された過渡期間が経過した後の各インターバル期間において電圧波形の包絡線のレベルを変化させるには、設定された過渡期間が経過した後の各インターバル期間における目標レベルを、関数を用いて演算するようにすればよい。
【符号の説明】
【0118】
1 高周波信号発生・増幅部
101 高周波信号発生部(DDS)
102 増幅器
103 レベル調節部
104 D/A変換器
2 検出部
201 分波器
202 フィルタ
203 検波器
204 レベル検出器
205 A/D変換器
3 目標レベル記憶部
4 高周波電力制御部
401 コントローラ
402 出力設定データ入力部
403 演算処理部
404 誤差検出部
405 選択処理部
406 制御演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステップ状のレベル変化を示す信号により変調された電圧波形を有する高周波電力を出力する高周波電源装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の被処理物を処理する際に、高周波電力の輻射によりガスをプラズマ化する技術が用いられている。例えば、半導体製造工程において行なわれるエッチング工程では、プロセスチャンバ内に配置した電極に高周波電力を供給してチャンバ内に高周波電力を輻射することにより、チャンバ内のガスをプラズマ化し、このプラズマ化したガスを被処理物に供給することによりエッチング処理を行なっている。この種の用途に用いる高周波電源装置は、高周波信号を発生する高周波信号発生器と、高周波信号を増幅して高周波電力を出力する増幅器とを有する高周波信号発生・増幅部と、高周波信号発生・増幅部の出力端で検出される高周波電圧のレベルを目標レベルに保つように制御する制御部とにより構成される。
【0003】
近年、半導体の製造工程では、微細なエッチング加工を可能にするために、パルス波形で変調された高周波電力をプロセスチャンバ内に輻射することが行なわれるようになっている。パルス波形により変調された高周波電力は、増幅器に入力する高周波信号のレベルをオンオフ制御することにより得ることができる。
【0004】
パルス波形により変調された高周波電力をプラズマ処理に用いる場合、その電圧波形の包絡線の波形(パルス波形)の周波数、レベル(振幅値)、デューティ及び繰り返し周期が厳密に管理されることが必要であり、加工の微細化に伴って、電圧波形の包絡線の波形が、より精密に管理された安定な波形を呈する高周波電力をプロセスチャンバ内の電極に供給することが求められるようになっている。
【0005】
また最近では、ステップ状のレベル変化を生じるレベル変化タイミングを1周期の間に複数有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間がレベルを保持すべきインターバル期間となっていて、1周期の間にレベルが複数の異なる値をとるステップ波形により変調された高周波電力をプロセスチャンバ内に輻射することも検討されている。
【0006】
パルス波形により変調された高周波電力を得る高周波電源装置としては、例えば特許文献1に示されたものが知られている。特許文献1に示された高周波電源装置においては、高周波信号をその周波数よりも低い周波数を有するパルス信号で変調してパルス変調された高周波信号を生成するパルス変調部と、パルス変調された高周波信号を増幅してパルス変調された高周波電力に変換する高周波電力変換部(増幅器)と、高周波電力変換部が出力する高周波電圧を検出する出力検出器と、この出力検出器により検出された出力電圧を検波してその包絡線を示す検波電圧を生成する検波部と、サンプルホールド信号に応じて検波電圧をサンプリングしてサンプリング電圧を出力するサンプルホールド部と、上記パルス信号とサンプルホールド信号とを生成する制御部と、サンプリング電圧と基準電圧とを比較して誤差電圧を出力する誤差増幅部とを設けて、誤差電圧の大きさを最小にするように高周波電力変換部をフィードバック制御することにより、高周波電圧のレベルを制御している。
【0007】
特許文献1に示された高周波電源装置においては、高周波電力を変調するパルス信号の波形の各立ち上がりよりも一定時間遅れたタイミングから、各立ち下がりよりも一定時間だけ早いタイミングまでの期間をサンプルホールド信号のオン期間とするように、パルス信号のデューティ比に応じてサンプルホールド信号のサンプリング期間を設定している。そして、サンプルホールド部は、サンプルホールド信号のオン期間の間、検波部から得られる検波電圧をそのままサンプリング電圧として誤差増幅部に与えて、高周波電圧のレベル変動をフィードバックすることにより、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを所定のレベルに保つ制御を行なわせる。サンプルホールド信号のオフ期間中は、サンプルホールド信号がオン期間からオフ期間に切り替わるタイミング(パルス信号が立ち下がる直前のタイミング)の検波電圧をホールドする。パルス信号のオン期間の開始時には、ホールドしているサンプリング電圧を誤差増幅部に与えることにより、誤差電圧を出力させてフィードバック制御を行なわせ、パルス信号の波形が立ち上がった後、一定の遅れ時間が経過した時点でホールド信号をオンにして、検波電圧に等しいサンプリング電圧を誤差増幅部に与えることにより、パルス信号のオン期間における高周波電圧のレベル変動をフィードバックして、パルス信号のオン期間における高周波電圧のレベルを所定のレベルに保つ制御を行なわせている。
【0008】
特許文献1に示された高周波電源装置によれば、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形(パルス波形)が立ち上がった後にそのレベルが変動した場合に、そのレベル変動をフィードバックして、高周波電圧のレベルを所定のレベルに保持する制御を行なわせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−263452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示された高周波電源装置においては、高周波電力を変調するパルス信号の立ち上がり時及び立ち下がり時に、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを示す検波電圧のサンプリング値を基準値に保つようにフィードバック制御が行なわれる。パルス信号の各立ち上がり及び立ち下がりの過渡時には高周波電圧のレベルが急峻に変動するため、制御の追従性を良くしておかないと、パルス信号の各立ち上がり及び立ち下がりでリンギングや波形鈍りが生じることになる。高周波電力を変調するパルス信号の時間軸が長い場合(パルス幅が広い場合)には、パルス信号の立ち上がり時及び立ち下がり時にリンギングや波形鈍りが生じても目立たないため、負荷に大きな影響は与えないが、パルス信号の繰り返し周期が短くなり、パルス信号のオン期間が短くなった場合や、パルス信号の振幅が大きい場合には、パルス信号の立ち上がり及び立ち下がりで高周波電圧に生じるリンギングや波形鈍りが目立つ存在になり、これらの過渡波形が負荷に与える影響が問題になる。
【0011】
特に、高周波電力を変調する波形が単純なパルス波形ではなく、各周期の間に短い時間間隔で上下にステップ状のレベル変化を示すステップ波形であるような場合には、ステップ波形の各立ち上がりで高周波電圧に生じるリンギングまたは波形鈍りと、各立ち下がりで高周波電圧に生じるリンギングまたは波形鈍りとが短い時間間隔で現れるため、リンギングまたは波形鈍りを無視することができなくなる。従って、高周波電力を変調する波形が、高い周波数を有するパルス波形やステップ波形である場合には、変調波形の各立ち上がり及び立ち下がりでの制御の追従性を良くすることが課題になる。
【0012】
従来技術のように、高周波信号を増幅する増幅器から出力される高周波電圧を検出する検出器から得た検出データを基にして高周波電圧のレベルをフィードバック制御する制御ループを構成した場合には、変調波形のレベル変化が高速である場合に、追従性が悪くなるのを避けられず、無理矢理制御を行なおうとすると、変調波形のレベルの立ち上がり時及び立ち下がり時にリンギングや波形鈍りが生じて、これらが負荷に悪影響を及ぼすことになる。
【0013】
例えば、図10(A)に示したように、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に複数(図示の例では3個のレベル変化タイミングta,tb,tc)有して、1周期の間にレベルが複数(図示の例では3個)の値をとる多値ステップ波形(図示の例では3値ステップ波形)により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る場合に、ステップ波形の各立ち上がり及び立ち下がりで高周波電圧のレベルの検出値を基にしてフィードバック制御を行なうと、制御ゲインが大きすぎる場合等に、同図(B)に示すようにステップ波形の各レベル変化タイミングで、オーバシュートとダウンシュートとが繰り返されてリンギングLが発生する。また制御ゲインが不足する場合等には、同図(C)に示すように、ステップ波形の各レベル変化タイミングで制御が間に合わなくなって波形鈍りDが生じる。
【0014】
図10(B)の状態と、図10(C)の状態との間に、リンギングも波形鈍りも生じない状態が存在することになるが、変調波形がレベル変化を示すタイミングの時間間隔が短い場合には、リンギングも波形鈍りも生じないように制御系を構成することは困難である。
【0015】
図11(A)に示されているように、図10(A)に示した場合よりも、レベル変化の繰り返し周期を短くした高速のステップ波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る場合、フィードバック制御系がリンギングを生じる特性を有していると、図11(B)に示すように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各立ち上がり及び立ち下がりで発生するリンギングLが、レベル変化タイミング相互間のレベル保持期間の長さに対して無視し得ない波形になる。また図11(A)に示したように、レベル変化の繰り返し周期が短い高速のステップ波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る場合に、フィードバック制御系が波形鈍りを生じる特性を有していると、図11(C)のように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各立ち上がり及び立ち下がりで発生する波形鈍りDが、レベル変化タイミング相互間のレベル保持期間の長さに対して無視し得ない波形になる。
【0016】
上記のように、パルス波形またはステップ波形により変調された高周波電力を負荷に供給することが必要とされる場合に、高周波電圧の包絡線がレベル変化を示すタイミングでも、包絡線のレベルの検出値と目標値との偏差(誤差)に基づいて出力レベルのフィードバック制御を行なう従来の高周波電源装置を用いた場合には、得られる高周波電力の電圧波形が、リンギングまたは波形鈍りが目立つ波形となり、希望する波形と似ても似つかない波形になるため、要求にかなった電圧波形を有する高周波電力を負荷に供給することができないという問題があった。レベルがステップ状に変化した際にリンギングや波形鈍りが生じて負荷に悪影響が及ぶという問題が生じるのは、高周波電力を変調する波形がパルス波形や、ステップ波形である場合に限られるものではなく、高周波電力を変調する波形がステップ状のレベル変化を伴う他の波形である場合にも同様の問題が生じる。
【0017】
本発明の目的は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を得る際に、変調する波形のレベル変化の速度が如何なる場合であっても、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形がステップ状のレベル変化を示す過渡時にリンギングや波形鈍りが生じるのを防いで、安定な電圧波形を有する高周波電力を得ることを可能にした高周波電源装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願に開示された第1の発明は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法に係わるものである。
【0019】
本発明においては、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を高周波信号発生・増幅部に持たせておき、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておく。そして、上記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行う。また検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間は、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なう。
【0020】
上記の過渡期間は、各レベル変化タイミングでオープンループ制御により、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくした後、フィードバック制御系がフィードバック制御を安定に行なうことができる状態になるまでに要する時間に等しく設定する。この過渡期間は、実際には、検出部により検出される電圧レベルの検出値が安定になるまでに要する時間である。
【0021】
上記のように、ステップ状のレベル変化を示す波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御を、フィードバック制御によるのではなく、オープンループ制御により行なうようにすると、レベル変化の繰り返し周期が如何なる場合でも、各レベル変化タイミングでリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができる。
【0022】
また上記のように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうようにすると、各インターバル期間におけるレベルが正確に目標レベルに保たれた電圧波形を有する高周波電力を得ることができる。
【0023】
また上記のように構成すると、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、リンギングや波形鈍りが発生しないので、過度期間を短くすることができ、高周波電圧の包絡線の検出速度を高めることができる。そのため、高周波電力を変調する波形のレベル変化が高速である場合にも、各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御と、各インターバル期間におけるレベル制御とを正確に行なわせることができ、高速のパルス波形またはステップ波形により高周波電力を変調する場合にも対応することができる。
【0024】
本願に開示された第2の発明は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間が、レベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法に係わるものである。
【0025】
本発明においても、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を前記高周波信号発生・増幅部に持たせておき、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておく。また、高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして初期目標レベル記憶部に記憶しておき、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして次周期目標レベル記憶部に記憶するステップを、検出部が検出する高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期毎に行う。
【0026】
そして、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目においては、該高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0027】
また第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0028】
上記のような制御を行なうと、高周波電力を零から立ち上げる際の高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各レベル変化タイミングにおいて高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを所定の初期目標レベルまで立ち上げ、または立ち下げる制御を、リンギングや波形鈍りを生じさせることなく行なうことができ、また高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間におけるレベルを所定の初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により正確に行なわせることができる。
【0029】
上記のように、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第2周期目以降の各周期において、各インターバル期間における包絡線のレベルを、一つ前の(直前の)周期の対応するインターバル期間の過渡期間が過ぎた後の期間において検出されたレベルを目標レベルとして制御するようにすると、第2周期目以降の各周期において、各レベル変化タイミングにおける初期の目標レベルが、直前の周期の対応するインターバル期間において実際にフィードバック制御された安定なレベルに等しくなるので、第2周期目以降の各周期において各レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過するまでの間にオープンループ制御により増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと、フィードバック制御に切替えた瞬間に増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの間に殆ど差が生じないようにすることができる。
【0030】
本願に開示された第3の発明は、第1の発明に係わる制御方法を実施する高周波電源装置に係わるもので、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を対象とする。
【0031】
本発明においては、高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、インターバル期間における前記電圧波形の目標レベルを記憶した目標レベル記憶部と、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部とが設けられる。
【0032】
上記高周波信号発生・増幅部は、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成される。
【0033】
また上記高周波電力制御部は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間は、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうように構成される。
【0034】
本願に開示された第4の発明は、第2の発明に係わる制御方法を実施する高周波電源装置に係わるもので、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を対象とする。
【0035】
本発明に係わる高周波電源装置は、信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして記憶する初期目標レベル記憶部と、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして記憶する次周期目標レベル記憶部と、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部とが設けられる。上記高周波信号発生・増幅部は、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成される。
【0036】
上記高周波電力制御部は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目と、第1周期目に続く第2周期目以降の各周期とにおいて異なる制御を行なう。
第1周期目においては、検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0037】
第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なうように構成される。
【0038】
本願に開示された第5の発明は第4の発明に適用されるもので、本発明においては、高周波信号発生・増幅部が、高周波信号発生器から増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備えている。また高周波信号発生器は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成される。
【0039】
そして、第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行う。また第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行なう。
【0040】
本願に開示された第6の発明も、第4の発明に適用される。本発明においては、高周波信号発生・増幅部が、高周波信号発生器から増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備える。そして、第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行う。
【0041】
また第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行なう。
【0042】
本願に開示された第7の発明も第4の発明に適用される。本発明においても、高周波信号発生・増幅部に設けられた高周波信号発生器が、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成される。
【0043】
そして、第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにDDSにレベルデータを与えることにより行う。
【0044】
また第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行い、第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにDDSにレベルデータを与えることにより行なう。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、ステップ状のレベル変化を示す波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御を、フィードバック制御によるのではなく、オープンループ制御により行なうので、レベル変化の繰り返し周期が如何なる場合でも、各レベル変化タイミングでリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができる。
【0046】
本発明によればまた、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうので、各インターバル期間におけるレベルが正確に目標レベルに保たれた電圧波形を有する高周波電力を得ることができる。
【0047】
また本発明によれば、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、リンギングや波形鈍りが発生しないので、過度期間を短くすることができ、高周波電圧の包絡線の検出速度を高めることができる。そのため、高周波電力を変調する波形のレベル変化が高速であるにも、各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御と、各インターバル期間におけるレベル制御とを正確に行なわせることができ、高速のパルス波形またはステップ波形等により高周波電力を変調する場合にも対応することができる。
【0048】
本願に開示された第2の発明及び第4ないし第7の発明によれば、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間が、レベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を繰り返す波形で変調された高周波電力を得る場合に、高周波電力を零から立ち上げる際の高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各レベル変化タイミングにおいて高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを所定の初期目標レベルまで立ち上げ、または立ち下げる制御を、リンギングや波形鈍りを生じさせることなく行なうことができ、また高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間におけるレベルを所定の初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により正確に行なわせることができる。
【0049】
また第2の発明及び第4ないし第7の発明によれば、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第2周期目以降の各周期において、各インターバル期間における包絡線のレベルを、一つ前の周期の対応するインターバル期間において過渡期間を過ぎた後の期間に検出した安定なレベルを目標レベルとして制御するので、第2周期目以降の各周期の各インターバル期間において、電圧レベルの制御をオープンループ制御からフィードバック制御に切り替える際にレベル変動が生じるのを防いで、電圧波形の包絡線が無用な電圧変動を伴わないきれいな波形を呈する変調された高周波電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係わる高周波電源装置の第1の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図2】本発明に係わる高周波電源装置の第2の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図3】本発明に係わる高周波電源装置の第3の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図4】本発明に係わる高周波電源装置の第4の実施形態の構成を示したブロック図である。
【図5】高周波電力を変調する波形の一例を模式的に示した波形図である。
【図6】(A)は本発明に係わる高周波電源装置が出力する高周波電力の電圧波形を模式的に示した波形図である。(B)は本発明における高周波電圧のレベル制御の方法を説明する波形図である。
【図7】図6(B)に示した波形の一部を拡大して示した波形図である。
【図8】図6(B)に示した波形の他の一部を拡大して示した波形図である。
【図9】(A)及び(B)は、高周波電力を変調する波形の他の異なる例を模式的に示した波形図である。
【図10】(A)は高周波電源装置から出力させるべき高周波電力の電圧波形の一例を模式的に示した波形図、(B)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の一例を模式的に示した波形図、(C)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の他の例を模式的に示した波形図である。
【図11】(A)は図10(A)に示した例よりも変調波形の周波数を高くした場合の電圧波形の包絡線の波形を模式的に示した波形図、(B)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の一例を模式的に示した波形図、(C)は従来の高周波電源装置により(A)の電圧波形を有する高周波電力を発生させた場合に得られる電圧波形の包絡線の実波形の他の例を模式的に示した波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の高周波電源装置は、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を出力するように制御される。本実施形態では、図5に示すように、1周期の間に3つのレベル変化タイミングを有する3値の(1周期の間に3つのレベルをとる)ステップ波形により高周波電力を変調するものとする。従って、本実施形態の高周波電源装置から出力される高周波電圧は、その包絡線が図5に示すようなステップ波形(階段状波形)を呈する。
【0052】
図5において、Tk (k=1,2,3,…)はk番目の周期、tak,tbk,tckは、k番目の周期に存在するレベル変化タイミング、t1k,t2k,t3kはk番目の周期に存在するインターバル期間である。またP1k,P2k,P3k(図示の例ではP1k>P2k>P3k)はそれぞれ、k番目の周期のインターバル期間t1k,t2k,t3kにおける高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルである。k番目の周期におけるインターバル期間t1k,t2k,t3kの長さは等しくなくてもよいが、図5に示した例では、これらのインターバル期間がすべて等しく設定されている。即ちt1k=t2k=t3kとなっている。また、k番目の周期のインターバル期間t1k,t2k,t3kにおける高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルP1k,P2k,P3kはそれぞれ他の周期のインターバル期間における対応するレベルに等しくなくてもよいが、図5に示した例では、k番目の周期のインターバル期間t1k,t2k,t3kにおける高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルP1k,P2k,P3kがそれぞれ、他の周期のインターバル期間における対応するレベルに等しく設定されている。
【0053】
本発明の一態様では、上記のように、電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力させるに当たり、増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を高周波信号発生・増幅部に持たせておき、高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておく。
【0054】
そして、上記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間は、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部に与えることにより、高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間は、検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なう。
【0055】
図1は上記の制御方法を実施する本発明に係わる高周波電源装置の第1の実施形態の構成を示したものである。図1において、1は高周波信号を増幅して高周波電力を出力する高周波信号発生・増幅部、2は高周波信号発生・増幅部1が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部、3はインターバル期間における電圧波形の目標レベルを記憶した目標レベル記憶部、4は検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部である。
【0056】
各部を更に詳細に説明すると、高周波信号発生・増幅部1は、外部から与えられた周波数データ(デジタル値)が示す周波数と、外部から与えられたレベルデータ(デジタル値)が示す電圧レベルとを有する高周波信号を発生する高周波信号発生器101と、高周波信号発生器101が発生する高周波信号を増幅する増幅器102と、高周波信号発生器101と増幅器102との間に挿入されて、外部から与えられるレベルデータ(アナログ信号)に応じて、高周波信号発生器101から増幅器102に入力される高周波信号の電圧レベルを調整するレベル調節器103と、外部から与えられるレベルデータ(デジタル値)をアナログ信号に変換してレベル調節部103に与えるD/A変換器104とからなっている。
【0057】
本実施形態では、高周波信号発生器101として、周波数データ(デジタル値)が示す通りの周波数と、外部から与えられたレベルデータ(デジタル値)が示す通りの電圧レベルとを有する高周波信号を発生するダイレクト・デジタル・シンセサイザー(DDS)が用いられている。
【0058】
レベル調節部103は例えば電子ボリュームからなっていて、A/D変換器104から与えられた制御信号(電圧信号)に応じて増幅器102に入力する高周波信号のレベルを調節する。本実施形態では、レベル調節部103によるレベル調節と、DDS用レベルデータによるDDS101の出力レベルの調節との双方により、高周波信号発生・増幅部1の出力をオープンループで調節することができるようにしている。
【0059】
レベル調節部103によるレベル調節及びDDS用レベルデータによるDDS101の出力レベルの調節のいずれによっても、増幅器102から出力させる高周波電力の出力を調整できるが、本実施形態では、高周波電力を変調する波形がステップ状のレベル変化を示す各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの期間においては、DDS101に与えるレベルデータの大きさにより増幅器102から出力させる高周波電力の出力を調整し、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間においては、レベル調節部103に与えるレベルデータの大きさにより増幅器102から出力させる高周波電力の出力を調整する。
【0060】
本実施形態では、D/A変換器104として、デジタルデータがパラレル入力されるように構成されていて、高速でD/A変換を行なうことができるものを用いている。これに対し、DDS101としては、デジタル値からなるレベルデータがシリアル入力されるものを用いている。
【0061】
検出部2は、増幅器102の出力端と負荷につながるケーブルとの間に挿入されて増幅器102が出力する高周波電圧の一部を分岐する分波器201と、分波器201の出力から高調波成分などの不要成分を除去して高周波電圧の基本周波数成分を取り出すフィルタ202と、フィルタ202から出力される高周波電圧を包絡線検波してその包絡線を検出する検波器203と、検波器203の出力のレベルを検出するレベル検出器204と、レベル検出器204の出力をデジタル値に変換するA/D変換器205とからなっている。
【0062】
目標レベル記憶部3は、マイクロプロセッサに設けられたメモリからなっていて、各インターバル期間における電圧波形の目標レベルを記憶している。
【0063】
高周波電力制御部4は、各部を制御するコントローラ401と、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各インターバル期間の長さ、各インターバル期間における電圧レベル、変調波形の繰り返し周波数など、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線の波形を規定するために必要なデータ(出力設定データ)をコントローラ401に入力する出力設定データ入力部402と、検出部2が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各インターバル期間におけるレベルと、目標レベル記憶部3から読み出した対応するインターバル期間における目標レベルとを比較して、両レベルの間の偏差を示す誤差信号を出力する誤差検出部404と、誤差検出部404が出力する誤差信号と、目標レベル記憶部3から読み出した目標レベルを示す信号とのいずれを制御に用いるかを選択する選択処理部405と、選択処理部405から与えられた制御信号に基づいて、高周波信号発生・増幅部1の高周波信号発生部101及びD/A変換器104にそれぞれ与えるDDS用レベルデータ及びレベル調節用レベルデータの大きさを演算して、演算した大きさを有するDDS用レベルデータ及びレベル調節用レベルデータをそれぞれ高周波信号発生部101及びD/A変換器104に与える制御演算部406とにより構成されている。
【0064】
図1に示した実施形態においては、コントローラ401、誤差検出部404、選択処理部405及び制御演算部406がマイクロプロセッサにより構成され、出力設定データ入力部402は、キーボードなどにより構成されている。
【0065】
コントローラ401は、目標レベル記憶部3へのデータの書き込み及び該記憶部3からのデータの読み出しを制御するとともに、誤差検出部404及び制御演算部406の演算動作と、選択処理部405の選択動作とを制御する。
【0066】
装置が起動すると、コントローラ401は先ず出力設定データ入力部402から入力されたデータに基づいて、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線の各インターバル期間における目標レベルを目標レベル記憶部3に記憶させる。
【0067】
高周波電力制御部4が起動すると、コントローラ401は、出力設定データ入力部402から与えられた周波数データに基づいて、DDS101に周波数データを与える。コントローラ401は又、内蔵したタイマの動作により、出力設定データ入力部402から入力されたデータに基づいて、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形のレベルをステップ状に変化させる各レベル変化タイミングや、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した時の時刻を示すタイミングを検出して、検出したタイミングを示す一連のタイミング信号を時系列的に発生させ、これらのタイミング信号に同期して各部を制御する。
【0068】
上記過渡期間は、各レベル変化タイミングでオープンループ制御により、高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくした後、フィードバック制御系が、フィードバック制御を安定に行なうことができる状態になるまでに要する時間に等しく設定する。この過渡期間は、実際には、検出部により検出される電圧レベルの検出値が安定になるまでに要する時間であり、各レベル変化タイミングでフィードバック制御を行なわせた場合にリンギングや波形鈍りが消滅するのに要する過渡期間に比べると非常に短い時間である。この過渡期間は、制御に用いるプログラマブルロジックデバイスや、マイクロコンピュータのマシンサイクル、制御回路の追従特性、装置全体の実際の振る舞いなどを考慮して適当な値に設定する。
【0069】
ここで、高周波電力を図6(A)に示した波形で変調するものとすると、コントローラ401は、最初のレベル変化タイミングta1を検出した時に、当該レベル変化タイミングta1に続くインターバル期間t11における高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルの目標レベルP11を、目標レベル記憶部3から読み出し、読み出した目標レベルP11を選択処理部405に与える。コントローラ401はまた、選択処理部405に指令を与えて、読み出した目標レベルP11を制御演算部406に入力させる。このときコントローラ401は、予め設定した一定の大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与えることを制御演算部406に指令すると共に、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP11とするために、DDS101に与える必要があるレベルデータの大きさの演算を制御演算部406に行なわせる。
【0070】
制御演算部406は、予め設定した一定の大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与えるとともに、演算した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。これにより、増幅器102から電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を瞬時に出力させる。この制御はフィードバック制御によらず、DDS101及びD/A変換器104にそれぞれレベルデータを与えるだけのオープンループ制御により行なうため、レベル変化タイミングta1においてリンギングが発生したり波形鈍りが発生したりするのを防ぐことができる。レベル変化タイミングt11から、設定された過渡期間Δt11が経過するまでの間は、上記のオープンループ制御を継続させる。オープンループ制御時にレベル調節部に与えるレベルデータの大きさは、例えば、レベル調節部103によるレベルの減衰量を0dBとする大きさに設定する。
【0071】
コントローラ401は、レベル変化タイミングta1から、設定された過渡期間Δt11が経過したことを検出した時に、目標レベル記憶部3から読み出した目標レベルP11を誤差検出部404に与えて、目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を演算させる。
【0072】
誤差検出部404は、演算した偏差を示す誤差信号を選択処理部405に入力する。この時コントローラ401は、選択処理部405に選択切替え指令を与えて、選択処理部405から制御演算部406に入力する信号を、目標レベルP11を与える信号から偏差を示す誤差信号に切り替えるとともに、制御演算部406に演算指令を与えて、目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を零にするためにレベル調節部103に与える必要があるレベルデータの大きさを演算させる。このレベルデータの演算値は、制御演算部406から高周波信号DDS101に与えられるレベルデータ(DDS101から出力される高周波信号のレベル)の大きさにより相違する。
【0073】
制御演算部406は、予め設定した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与えるとともに、演算した大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与える。制御演算部406からD/A変換器104を通してレベル調節部103に与えられるレベルデータは、DDS101から出力される高周波信号のレベル(DDS用レベルデータにより決まる)を、偏差を零にするために増幅器102に入力する必要があるレベルに調節するように、レベル調節部103の減衰量を設定するためのデータである。上記のように、DDS101及びレベル調節部103にレベルデータを与えることにより、電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を増幅器102から出力させる。
【0074】
上記のように、レベル変化タイミングta1から過渡期間Δt11が経過した後の残りのインターバル期間(t11−Δt11の期間)においては、目標レベルP11と、検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差に基づいて、高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御が、フィードバック制御により行なわれる。従って、過渡期間に相当する一定期間Δt11が経過した後のインターバル期間(t11−Δt11の期間)における電圧波形の包絡線のレベルは正確に目標レベルP11に保たれる。上記のフィードバック制御は、シリアルデータが入力されるように構成されたDDS101に与えるレベルデータを固定値とし、パラレルデータが入力されるように構成された高速のD/A変換器104を通してレベル調節部103に与える入力レベル調節用レベルデータを可変値として偏差に応じて変化させることにより行なうので、高い応答性をもたせて行なわせることができる。
【0075】
同様にして、レベル変化タイミングtb1,tc1,ta2,tb2,…及びそれぞれのレベル変化タイミングから設定された過渡期間Δt21,Δt31,Δt12,Δt22,…が経過するまでの間オープンループ制御により高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP21,P31,P12,P22,…とする制御が行なわれ、それぞれのレベル変化タイミングtb1,tc1,ta2,tb2,…から過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間(t21−Δt21,t31−Δt31,t12−Δt12,…の期間)の間、フィードバック制御により高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP21,P31,P12,P22,…に保つ制御が行なわれる。
【0076】
上記のように、本実施形態では、ステップ状のレベル変化を示す波形により変調された電圧波形を有する高周波電力を得る際に、増幅器102から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルまで立ち上げ(または立ち下げ)る制御を、フィードバック制御によるのではなく、オープンループ制御により行なうので、各レベル変化タイミングで、電圧波形の包絡線のレベルを、リンギングや波形鈍りを生じさせることなく、瞬時に目標レベルに一致させることができる。従って、レベル変化の繰り返し周期が如何なる場合でも、各レベル変化タイミングでリンギングや波形鈍りが生じるのを防ぐことができ、制御系がフィードバック制御を安定に行なうことができる状態になるまでの過渡期間の間、電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つことができる。
【0077】
また本実施形態では、増幅器102から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間、検出部2が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部1にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうので、各インターバル期間におけるレベルが正確に目標レベルに保たれた電圧波形を有する高周波電力を得ることができる。
【0078】
更に本実施形態によれば、増幅器102から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングで、リンギングや波形鈍りが発生することがないので、過度期間を短くすることができ、高周波電圧の包絡線の検出速度を高めることができる。そのため、高周波電力を変調する波形のレベル変化が高速である場合にも、各レベル変化タイミングから過渡期間の間のレベル制御と、各インターバル期間におけるレベル制御とを正確に行なわせることができ、高速のパルス波形やステップ波形等により高周波電力を変調する場合にも問題なく対応することができる。
【0079】
図2は本発明に係わる高周波電源装置の第2の実施形態を示したものである。本実施形態では、高周波電圧波形の包絡線が各インターバル期間においてとるべき目標レベルを記憶する記憶部として、初期目標レベル記憶部3Aと、次周期目標レベル記憶部3Bとが設けられ、高周波電力制御部4に演算処理部403が追加されている。
【0080】
初期目標レベル記憶部3Aは、高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において電圧波形の包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に、高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間(図6に示した例ではt11,t21,t31)において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベル(図6に示した例ではP11,P21,P31)を初期目標レベルとして記憶する記憶部である。
【0081】
初期目標レベル記憶部3Aには、初期目標レベルそのものを記憶させておいてもよく、出力設定データ入力部402から入力された出力データに対して初期目標レベルを補間演算するためのマップデータ等を記憶させておいてもよい。例えば、出力設定データ入力部402から入力された高周波電力の所望の出力(W)に対して、増幅器102から出力させる高周波電圧のレベルの初期目標レベルを求めるようにするために、所望の出力と初期目標レベルとの間の関係を与えるマップデータを、初期目標レベル記憶部3Aに記憶させておくようにしてもよい。
【0082】
演算処理部403は、コントローラ401から与えられる指令に応じて、初期目標レベル記憶部3Aに記憶されているデータを用いて初期目標レベルを演算するか、または初期目標レベル記憶部3Aに記憶されている初期目標レベルを読み出すことにより、起動後第1周期目の各インターバル期間の目標レベルである初期目標レベルを取得し、取得した初期目標レベルを選択処理部405に与える。
【0083】
次周期目標レベル記憶部3Bは、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間の、安定にフィードバック制御が行なわれるインターバル期間の間に検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして記憶する記憶部である。
【0084】
図6に示した例で具体的に説明すると、次周期目標レベル記憶部3Bは、起動後の最初の周期である第1周期T1の1番目のインターバル期間t11の過渡期間に相当する時間Δt11が経過した後の残りの期間(t11−Δt11の期間)で検出部2により検出された電圧レベルを、第2周期T2の対応するインターバル期間t12における目標レベルとして記憶し、第1周期T1の2番目のインターバル期間t21の過渡期間に相当する時間Δt21が経過した後の残りの期間(t21−Δt21の期間)で検出部2により検出された電圧レベルを、第2周期T2の対応するインターバル期間t22における目標レベルとして記憶する。また第1周期T1の3番目のインターバル期間t31の過渡期間に相当する時間Δt31が経過した後の残りの期間(t31−Δt31の期間)で検出部2により検出された電圧レベルを、第2周期T2の対応するインターバル期間t32における目標レベルとして記憶する。
【0085】
同様にして、次周期目標レベル記憶部3Bは、第2周期目以降の各インターバル期間の過渡期間に相当する時間が経過した後の安定期間において検出された電圧レベルを、第3周期目以降の次の周期の対応するインターバル期間における目標レベルとして記憶する。次周期目標レベル記憶部3Bの記憶内容は、各周期の各インターバル期間の過渡期間に相当する時間が経過した後に検出された電圧レベルを次の周期の対応するインターバル期間における目標レベルとして記憶する際に随時更新される。次周期目標レベル記憶部3Bへの目標レベルの書き込み及び次周期目標レベル記憶部3Bからの次周期目標レベルの読み出しは、コントローラ401により制御される。図2に示した実施形態のその他の構成及び動作は、図1に示した実施形態のそれと同様である。
【0086】
図2に示した実施形態の高周波電力制御部4は、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目において、高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を高周波信号発生・増幅部1から出力させるために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部1に与えることにより、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部1にレベルデータを与えることにより、高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0087】
高周波電力制御部4はまた、第1周期目に続く第2周期目以降の各周期において、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを高周波信号発生・増幅部1に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間、検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように高周波信号発生・増幅部1にレベルデータを与えて高周波信号発生・増幅部1が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なう。
【0088】
図2に示した実施形態における高周波電力制御部4の動作の一例を図6に示した例を用いて具体的に説明すると次の通りである。
コントローラ401は、第1周期T1の最初のレベル変化タイミングta1で高周波電力を零から立ち上げる際に、インターバル期間t11における高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルの目標レベルP11を、初期目標レベル記憶部3Aから読み出し、読み出した目標レベルP11を選択処理部405に与える。
【0089】
コントローラ401はまた、選択処理部405に指令を与えて、読み出した目標レベルP11を制御演算部406に入力させる。このときコントローラ401は、レベル調節用レベルデータD/A変換器104に予め設定した大きさのレベルデータをD/A変換器104に与えることを制御演算部406に指令するとともに、制御演算部406に、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP11とするためにDDS101に与える必要があるレベルデータの大きさの演算を行なわせる。
【0090】
制御演算部406は、演算した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。これにより、増幅器102から電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を瞬時に出力させる。この制御はオープンループ制御により行なうため、レベル変化タイミングta1においてリンギングが発生したり波形鈍りが発生したりするのを防ぐことができる。
【0091】
コントローラ401は、第1周期目のレベル変化タイミングta1から、設定された過渡期間Δt11が経過したことを検出した時に、初期目標レベル記憶部3Aから読み出した初期目標レベルP11を誤差検出部404に与えて、初期目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を演算させる。
【0092】
誤差検出部404は、演算した偏差を示す誤差信号を選択処理部405に入力する。この時コントローラ401は、選択処理部405に選択切替え指令を与えて、選択処理部405から制御演算部406に入力する信号を、初期目標レベルP11を与える信号から偏差を示す誤差信号に切り替えるとともに、制御演算部406に演算指令を与えて、目標レベルP11と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を零にするためにレベル調節部103に与える必要があるレベルデータの大きさを演算させる。このレベルデータの大きさは、制御演算部406から高周波信号DDS101に与えられるレベルデータ(DDS101から出力される高周波信号のレベル)の大きさにより相違する。
【0093】
制御演算部406は、演算した大きさを有するレベル調節用レベルデータをD/A変換器104に与えるとともに、予め設定した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。このように、DDS101及びレベル調節部103にレベルデータを与えることにより、電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP11に等しい高周波電力を増幅器102から出力させる。
【0094】
同様にして、第1周期目の他のレベル変化タイミングにおけるオープンループ制御と、レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過した後のインターバル期間におけるフィードバック制御とを行なわせる。
【0095】
第2周期T2のレベル変化タイミングta2においては、一つ前の周期T1のインターバル期間t11の過渡期間が経過した後の安定期間で検出された電圧波形の包絡線のレベルP11を、最初のインターバル期間t12における高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルの目標レベルP12として次周期目標レベル記憶部3Bから読み出し、読み出した目標レベルP12を選択処理部405に与える。コントローラ401はまた、選択処理部405に指令を与えて、読み出した目標レベルP12を制御演算部406に入力させる。
【0096】
このときコントローラ401は、レベル調節用レベルデータD/A変換器104に予め設定した大きさのレベルデータ(固定値)を与えることを制御演算部406に指令するとともに、制御演算部406に、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルP12とするためにDDS101に与える必要があるレベルデータの大きさの演算を行なわせる。制御演算部406は、演算した大きさを有するDDS用レベルデータをDDS101に与える。これにより、増幅器102から電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP12に等しい高周波電力を瞬時に出力させる。
【0097】
コントローラ401は、レベル変化タイミングta1から、設定された過渡期間Δt12が経過したことを検出した時に、次周期目標レベル記憶部3Bから読み出した対応するインターバル期間の目標レベルP12を誤差検出部404に与えて、目標レベルP12と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を演算させる。
【0098】
誤差検出部404は、演算した偏差を示す誤差信号を選択処理部405に入力する。この時コントローラ401は、選択処理部405に選択切替え指令を与えて、選択処理部405から制御演算部406に入力する信号を、目標レベルP12を与える信号から偏差を示す誤差信号に切り替えるとともに、制御演算部406に演算指令を与えて、目標レベルP12と検出部2により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの偏差を零にするためにレベル調節部103に与える必要があるレベルデータの大きさを演算させる。
【0099】
制御演算部406は、予め設定した大きさを有するDDS用レベルデータ(固定値)をDDS101に与えるとともに、演算した大きさを有するレベル調節用レベルデータ(可変値)をD/A変換器104に与える。このように、DDS101及びレベル調節部103にレベルデータを与えることにより、電圧波形の包絡線のレベルが目標レベルP12に等しい高周波電力を増幅器102から出力させる。
【0100】
第2周期T2の2番目のインターバル期間t22以降の各インターバル期間における制御及び第3周期以降の各周期の各インターバル期間における制御も同様にして行なわれる。
【0101】
上記のような制御を行なわせた場合に高周波信号発生・増幅部1から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の一例を、図7及び図8に拡大して示した。図7は、図6のインターバル期間t11及びインターバル期間t21の前半部分付近の波形を拡大して示したものであり、図8は、図6のインターバル期間t12及びインターバル期間t22の前半部分の波形を拡大して示したものである。
【0102】
第1周期T1においては、各レベル変化タイミングで先ずオープンループ制御で電圧波形の包絡線の波形のレベルを予め設定された初期目標レベルとする制御が行なわれ、次いで過渡期間が経過した時点で、制御演算部406に与えられる制御信号が誤差信号に切り替えられて、電圧レベルの制御がフィードバック制御に切替えられるが、この切換の際には、図7のΔt11,Δt21の期間の波形に見られるように、僅かではあるがレベル変動Vが生じることがある。
【0103】
これに対し、第2周期目以降の各周期においては、各インターバル期間における包絡線のレベルを、一つ前の(直前の)周期の対応するインターバル期間において過渡期間を過ぎた後の期間に検出した安定なレベルを目標レベルとして制御するので、第2周期目以降の各周期においては、各レベル変化タイミングにおける初期の目標レベルを、直前の周期の対応するインターバル期間において実際にフィードバック制御されたレベルに等しくすることができる。そのため、第2周期目以降の各周期において各レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過するまでの間にオープンループ制御により増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと、各レベル変化タイミングから過渡期間に相当する時間が経過した時点でフィードバック制御に切替えた瞬間に増幅器から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルとの間に殆ど差が生じないようにすることができ、図8のΔt12の期間の波形及びΔt22の期間の波形に見られるように、第2周期目以降の各周期における電圧波形を、制御がオープンループ制御からフィードバック制御に切り替えられる際に電圧変動が生じることがないきれいな波形とすることができる。
【0104】
上記の動作説明では、高周波信号発生・増幅部1から出力させる高周波電力を零から立ち上げる際の最初の周期を第1周期目として、この第1周期目の各インターバル期間における電圧レベルの目標レベルを予め設定した初期レベルとするとしたが、上記のように、第2周期目以降の各インターバル期間における目標レベルを、一つ前の対応するインターバル期間の安定期間において検出されたレベルとする構成をとる場合、高周波信号発生・増幅部1から一旦高周波電力を出力させた後、高周波電力の出力を中断することなく、途中で各インターバル期間における目標レベルを変更する場合には、各インターバル期間における目標レベルが変更された(更新された)高周波電力を発生させる際の最初の周期を第1周期目として、その周期の各インターバル期間における目標レベルを更新された初期目標レベルとする必要がある。
【0105】
図2に示したように、高周波信号発生・増幅部1に高周波信号発生器101とレベル調節器103とを設けて、高周波信号発生器101に与えるレベルデータを可変値とし、レベル調節器103に与えるレベルデータを固定値としてオープンループ制御を行い、高周波信号発生器101に与えるレベルデータを可変値とし、レベル調節器103に与えるレベルデータを固定値としてフィードバック制御を行う構成は、高周波信号発生器を構成するDDS101として、レベルデータをシリアルデータとして入力する形式のものしか入手することができない場合、及びレベル調整器103として、その出力レベルを0dBまで絞り込むことが難しいものしか入手することができない場合に有利な構成である。
【0106】
図2に示したように構成しておくと、レベル変化タイミングで高周波電力の電圧レベルを零から立ち上げる動作及び当該電圧レベルを零まで立ち下げる動作を、DDSの性能により問題なく実現することができる。またレベルデータがパラレルデータとして入力される高速のD/A変換器104を通してレベル調節器103にレベルデータを与えることにより、各インターバル期間の安定期間におけるフィードバック制御を高速で行なわせて、各インターバル期間において電圧レベルを目標レベルに保つ制御を正確に行なわせることができる。即ち、DDSとレベル調整器がそれぞれ有するメリットを活かして、各レベル変化タイミングから過渡期間の間に行なうオープンループ制御と、各インターバル期間の過渡期間が経過した後の残りの期間に行なうフィードバック制御との双方を適確に行なわせることができる。
【0107】
図2に示した実施形態に係わる高周波電源装置の構成の特徴をまとめて示すと、下記の通りである。
(a)高周波信号発生・増幅部1は、高周波信号発生器101から増幅器102に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備えている。
(b)高周波信号発生器101は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成されている。
(c)第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDS101にレベルデータ(可変値)を与えることにより行う。このときレベル調整器103には一定のレベルデータを与えておく。
(d)第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行う。
(e)第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行う。
(f)第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータ(可変値)を与えることにより行なう。このときDDS101には一定値に固定されたレベルデータを与えておく。
【0108】
図3は、本発明の第3の実施形態に係わる高周波電源装置の構成を示したブロック図である。本実施形態では、コントローラ401から高周波信号発生器(DDS)101にレベルデータ(固定値)が与えられ、制御演算部406からはレベル調節器103へのみレベルデータ(可変値)が供給される。
【0109】
図3に示した実施形態では、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの時間に行なうオープンループ制御及び各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間に行なうフィードバック制御の双方を、レベル調節器103に与えるレベルデータを可変値とすることにより行なう。その他の点は図2に示した実施形態と同様である。図3に示した実施形態の構成は、レベル調節部103として、その出力レベルを零レベルまで問題なく絞ることができる特性を有するものを用いることができる場合に有利な構成である。本実施形態のように構成すると、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間に行なうオープンループ制御及び各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間に行なうフィードバック制御の双方を高い応答性を持たせて行なうことができる。
【0110】
図3に示した実施形態に係わる高周波電源装置の構成の特徴をまとめて示すと、下記の通りである。
(a)高周波信号発生・増幅部1は、高周波信号発生器から増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器103を備えている。
(b)第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行う。
(c)第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行う。
(d)第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにレベル調節器にレベルデータを与えることにより行う。
(e)第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにレベル調節器103にレベルデータを与えることにより行なう。
【0111】
図4は、本発明の第4の実施形態に係わる高周波電源装置の構成を示したブロック図である。本実施形態では、図1及び図2の実施形態で設けられていたレベル調節器103が省略されて、高周波信号発生器(DDS)101の出力が直接増幅器102に入力されている。
【0112】
この例では、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの時間に行なうオープンループ制御及び各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後の残りのインターバル期間の間に行なうフィードバック制御の双方を、高周波信号発生部101に与えるレベルデータを可変値として行なう。その他の点は図2に示した実施形態と同様である。
【0113】
図4に示したように構成すると、図1ないし図3の実施形態で用いられていたレベル調節部103を省略することができるため、装置の構成を簡素化することができる。図3に示した実施形態の構成は、DDS101として、レベルデータをシリアルデータで入力し得る高速のもの(出力レベルの調整を高速度で行なうことができるもの)を入手することができる場合に有利な構成である。
【0114】
図4に示した実施形態に係わる高周波電源装置の構成の特徴をまとめて示すと、下記の通りである。
(a)高周波信号発生器101は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成されている。
(b)第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベル記憶部3Aに記憶された対応する初期目標レベルに等しくするようにDDSにレベルデータを与えることにより行う。
(c)第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行う。
(d)第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、増幅器102から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルに等しくするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行う。
(e)第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間検出部2により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて次周期目標レベル記憶部3Bに記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするようにDDS101にレベルデータを与えることにより行なう。
【0115】
上記の各実施形態では、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に複数有して、各レベル変化タイミングから次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間がレベルを保持する期間となっているステップ波形を変調波形として、この変調波形で変調された高周波電力を得るように、高周波信号発生・増幅部1を制御するようにしたが、本発明はステップ波形を変調波形とする場合に限られるものではなく、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈する変調波形で高周波電力を変調する場合に広く適用することができる。
【0116】
例えば、図9(A)に示すようにパルス波形により高周波電力を変調する場合や、図9(B)に示すように、各インターバル期間においてレベル変化タイミングの直後に一定時間の間レベルを保持した後、レベルが一定の傾きをもって変化する波形で高周波電力を変調するような場合にも本発明を適用することができる。
【0117】
図9(B)に示すように、各インターバル期間においてレベル変化タイミングの直後に一定時間の間レベルを保持した後、レベルが一定の傾きをもって変化する波形で高周波電力を変調する場合には、各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後、電圧レベルが一定値を保持している間に検出部2が検出したレベルを次の周期の対応するインターバル期間の初期の目標レベルとする。また設定された過渡期間が経過した後の各インターバル期間において電圧波形の包絡線のレベルを変化させるには、設定された過渡期間が経過した後の各インターバル期間における目標レベルを、関数を用いて演算するようにすればよい。
【符号の説明】
【0118】
1 高周波信号発生・増幅部
101 高周波信号発生部(DDS)
102 増幅器
103 レベル調節部
104 D/A変換器
2 検出部
201 分波器
202 フィルタ
203 検波器
204 レベル検出器
205 A/D変換器
3 目標レベル記憶部
4 高周波電力制御部
401 コントローラ
402 出力設定データ入力部
403 演算処理部
404 誤差検出部
405 選択処理部
406 制御演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミングの直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法であって、
前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を前記高周波信号発生・増幅部に持たせておき、
前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておき、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間は、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間は、前記検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうこと、
を特徴とする高周波電源装置の制御方法。
【請求項2】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法であって、
前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を前記高周波信号発生・増幅部に持たせておき、
前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておき、
前記高周波電力を零から立ち上げる際、及び各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間において電圧波形の包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目のインターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして初期目標レベル記憶部に記憶しておき、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして次周期目標レベル記憶部に記憶するステップを、前記検出部が検出する高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期毎に行い、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の前記第1周期目においては、該高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を前記高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行ない、
前記第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なうこと、
を特徴とする高周波電源装置の制御方法。
【請求項3】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置であって、
前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、前記インターバル期間における前記電圧波形の目標レベルを記憶した目標レベル記憶部と、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記目標レベルとするように前記高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部とを具備し、
前記高周波信号発生・増幅部は、前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成され、
前記高周波電力制御部は、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間は、前記検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうように構成されていることを特徴とする高周波電源装置。
【請求項4】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置であって、
前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、
前記高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして記憶する初期目標レベル記憶部と、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして記憶する次周期目標レベル記憶部と、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように前記高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部と、
を具備し、
前記高周波信号発生・増幅部は、前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成され、
前記高周波電力制御部は、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の前記第1周期目においては、該高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を前記高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行ない、前記第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なうように構成されていること、
を特徴とする高周波電源装置。
【請求項5】
前記高周波信号発生・増幅部は、前記高周波信号発生器から前記増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備え、
前記高周波信号発生器は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成され、
前記第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行なうこと、
を特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置。
【請求項6】
前記高周波信号発生・増幅部は、前記高周波信号発生器から前記増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備え、
前記第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行なうこと、
を特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置。
【請求項7】
前記高周波信号発生器は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成され、
前記第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行なうこと、
を特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置。
【請求項1】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミングの直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法であって、
前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を前記高周波信号発生・増幅部に持たせておき、
前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておき、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間は、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間は、前記検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうこと、
を特徴とする高周波電源装置の制御方法。
【請求項2】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置を制御する方法であって、
前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を前記高周波信号発生・増幅部に持たせておき、
前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部を設けておき、
前記高周波電力を零から立ち上げる際、及び各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間において電圧波形の包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目のインターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして初期目標レベル記憶部に記憶しておき、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして次周期目標レベル記憶部に記憶するステップを、前記検出部が検出する高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期毎に行い、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の前記第1周期目においては、該高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を前記高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行ない、
前記第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なうこと、
を特徴とする高周波電源装置の制御方法。
【請求項3】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置であって、
前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、前記インターバル期間における前記電圧波形の目標レベルを記憶した目標レベル記憶部と、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記目標レベルとするように前記高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部とを具備し、
前記高周波信号発生・増幅部は、前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成され、
前記高周波電力制御部は、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過するまでの間、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御で行い、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後の各インターバル期間の間は、前記検出部が検出した高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御で行なうように構成されていることを特徴とする高周波電源装置。
【請求項4】
電圧波形の包絡線が、ステップ状のレベル変化を示すレベル変化タイミングを1周期の間に少なくとも一つ有し、各レベル変化タイミングと次のレベル変化タイミングとの間のインターバル期間がレベルを保持し続ける期間であるか又はレベル変化タイミング直後の一定時間の間レベルを保持した後にステップ状のレベル変化を伴わずにレベル変化を示す期間となっている波形を周期的に繰り返す波形を呈するように変調された高周波電力を、高周波信号発生器と該高周波信号発生器が発生する高周波信号を増幅する増幅器とを備えた高周波信号発生・増幅部から出力する高周波電源装置であって、
前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを検出する検出部と、
前記高周波電力を零から立ち上げる際、及び電圧波形の包絡線の波形の各周期の各インターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルが更新された高周波電力を立ち上げる際に前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の第1周期目の各インターバル期間において該高周波電圧の包絡線がとるべき目標レベルを初期目標レベルとして記憶する初期目標レベル記憶部と、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各周期の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでの間のインターバル期間に前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の次の周期の対応するインターバル期間において該包絡線がとるべき目標レベルとして記憶する次周期目標レベル記憶部と、
前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルとするように前記高周波信号発生・増幅部を制御する高周波電力制御部と、
を具備し、
前記高周波信号発生・増幅部は、前記増幅器から出力する高周波電力の電圧レベルを与えられたレベルデータに応じてオープンループで制御する機能を有するように構成され、
前記高周波電力制御部は、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の前記第1周期目においては、該高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、該包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくした高周波電圧を前記高周波信号発生・増幅部から出力させるために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部から出力される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを初期目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行ない、前記第1周期目に続く第2周期目以降の各周期においては、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記高周波信号発生・増幅部から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするために必要なレベルデータを前記高周波信号発生・増幅部に与えることにより、出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに等しくする制御をオープンループ制御により行なった後、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線の波形の各レベル変化タイミングから設定された過渡期間が経過した後のインターバル期間の間、前記検出部により検出された高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記高周波信号発生・増幅部にレベルデータを与えて前記高周波信号発生・増幅部が出力する高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを目標レベルに保つ制御をフィードバック制御により行なうように構成されていること、
を特徴とする高周波電源装置。
【請求項5】
前記高周波信号発生・増幅部は、前記高周波信号発生器から前記増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備え、
前記高周波信号発生器は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成され、
前記第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行なうこと、
を特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置。
【請求項6】
前記高周波信号発生・増幅部は、前記高周波信号発生器から前記増幅器に与えられる高周波信号のレベルをレベルデータに応じて調節するレベル調節器を備え、
前記第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記レベル調節器にレベルデータを与えることにより行なうこと、
を特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置。
【請求項7】
前記高周波信号発生器は、外部から与えられたレベルデータが示すレベルを有する高周波信号を出力するダイレクト・デジタル・シンセサイザ(DDS)により構成され、
前記第1周期目におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを前記初期目標レベル記憶部に記憶された対応する初期目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第1周期目におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間、前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと対応する初期目標レベルとの偏差を零にするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるオープンループ制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過するまでの間、前記増幅器から出力させる高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルを一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルに等しくするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行い、
前記第2周期目以降の各周期におけるフィードバック制御は、各レベル変化タイミングから前記過渡期間が経過した後次のレベル変化タイミングまでのインターバル期間の間前記検出部により検出される高周波電力の電圧波形の包絡線のレベルと一つ前の周期で検出されて前記次周期目標レベル記憶部に記憶されている対応する目標レベルとの偏差を零にするように前記DDSにレベルデータを与えることにより行なうこと、
を特徴とする請求項4に記載の高周波電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−5538(P2013−5538A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132570(P2011−132570)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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