説明

高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート、高周波共振器及び高周波伝送線路

【目的】 高周波電磁界結合型薄膜積層電極をシート状に、かつ安価に製造することができる薄膜積層電極シートの製造方法と、この薄膜積層電極を用いた高周波共振器及び高周波伝送線路を提供する。
【構成】 製造工程は複数の薄膜誘電体シートD1,D2,D3の各下面に薄膜導体E1,E2,E3を形成する第1の工程と、各薄膜誘電体シートと各薄膜導体とが交互に積層されるように、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が形成された複数の薄膜誘電体シートを重ねて固定する第2の工程と、互いに接する固定された各薄膜誘電体シートと各薄膜導体とをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程とを含む。製造装置は真空蒸着装置S1,S2,S3と、固定機40と、熱圧着装置H1を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波、準ミリ波又はミリ波の高周波帯において用いられる高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート、高周波共振器及び高周波伝送線路に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子部品の小型化が進む中、マイクロ波、準ミリ波又はミリ波などの高周波帯においても高い誘電率を有する材料を用いることによって、デバイスの小型化がなされてきた。デバイスの小型化を行う場合、誘電率を大きくする一方、相似形として形状を縮小させると、原理的には体積の立方根に反比例してエネルギー損失が増大するという問題点があった。
【0003】高周波デバイスのエネルギー損失は、表皮効果による導体損失と、誘電体材料による誘電体損失とに大きく分類することができる。近年の誘電体材料は、高誘電率なものでも低損失な特性を有する材料が実用化されており、従って、誘電体損失よりも導体損失の方が回路の無負荷Qにおいて支配的である。また、高周波帯においては、表皮効果によって、導体表面において高周波電流が集中するために、導体表面に近づくほど表面抵抗(表皮抵抗ともいう。)が大きくなり、導体損失(ジュール損失)が大きくなる。
【0004】本出願人は、高周波帯における表面抵抗を低減できる高周波電磁界結合型薄膜積層電極を特願平5−212630で提案した。当該高周波電磁界結合型薄膜積層電極は、所定の膜厚を有する薄膜導体と所定の膜厚を有する薄膜誘電体とを交互に積層することによって、少なくとも1つのTEM伝送線路が積層されてなる。そして、各薄膜誘電体の膜厚と誘電率を所定の値に設定し、かつ各薄膜導体の膜厚を、使用周波数の表皮深さδよりも薄い所定の膜厚に設定することによって、各薄膜導体にそれぞれ高周波電流が流れるように構成して、高周波帯における表皮効果を大幅に抑圧することにより、高周波帯における表面抵抗を低減するものである。
【0005】上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極は、誘電体基板の上面に、例えばスパッタリング装置等の薄膜形成装置を用いて上記薄膜導体と上記薄膜誘電体を交互に形成することにより作成される。ここで、上記誘電体基板は、例えばアルミナの単結晶であるサファイアにてなり、上記薄膜導体は、例えばCu、Ag、Al又はAuなどの電気的導電性を有する導体にてなり、上記薄膜誘電体は、例えばSiOにてなる。上述の方法によって上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極を上記誘電体基板上に所定の形状になるように形成する場合は、各薄膜導体と各薄膜誘電体を形成する毎にエッチング等の方法を用いて、各薄膜導体と各薄膜誘電体を所定の形状にした後、上層の薄膜導体又は薄膜誘電体を形成して、さらにエッチング方法を用いて当該薄膜導体又は薄膜誘電体を所定の形状に形成する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の製造方法では、誘電体基板の上面に薄膜導体を直接形成しているので、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極をシート状にして製造することはできなかった。また、従来のスパッタリング装置等を用いて上記薄膜導体と薄膜誘電体を1層毎に形成する方法では、各層を順次形成しているので、製造工程数が多くなって製造コストが高くなるという問題点があった。またさらに、上記電磁界結合型薄膜積層電極を所定の形状になるように形成しようとすると、薄膜導体又は薄膜誘電体を1層形成する毎に、エッチング工程が必要になり、製造工程数はさらに多くなって、製造コストがさらに高くなるという問題点があった。
【0007】本発明の第1の目的は、高周波電磁界結合型薄膜積層電極をシート状に製造でき、かつ安価に製造することができる高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法を提供することにある。
【0008】本発明の第2の目的は、切断したときに切断面において薄膜導体間での短絡を防ぐことができる高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法を提供することにある。
【0009】本発明の第3の目的は、高周波電磁界結合型薄膜積層電極をシート状に形成した高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを提供することにある。
【0010】本発明の第4の目的は、無負荷Qが高くできる高周波共振器と安価でかつ伝送損失の小さい高周波伝送線路を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明に係る請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、複数の薄膜誘電体シートの各下面に薄膜導体を形成する第1の工程と、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が形成された上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて固定する第2の工程と、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程とを含むことを特徴とする。
【0012】請求項2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法においてさらに、上記各薄膜誘電体シートを所定のより薄い膜厚になるように厚さ方向に所定の圧力で押圧して上記第1の工程に先立って予め形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0013】請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第3の工程は、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに熱圧着することにより接合する工程であることを特徴とする。
【0014】請求項4記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第3の工程は、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに焼成することにより接合する工程であることを特徴とする。
【0015】請求項5記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートは、可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする。
【0016】請求項6記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項1乃至5のうちの1つに記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第1の工程は、上記各薄膜導体を上記薄膜誘電体シートの幅方向の両側から所定の距離だけ内側の幅方向の中央部に形成することを特徴とする。
【0017】本発明に係る請求項7記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、複数の薄膜誘電体シートの各下面に薄膜導体を形成する第1の工程と、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に別の誘電体上に積層されるように、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が形成された上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて上記別の誘電体上に固定する第2の工程と、上記固定された別の誘電体と上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とを同時に焼成することによって、上記別の誘電体と上記薄膜導体と上記薄膜誘電体シートとをともに接合して上記別の誘電体上に高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程とを含むことを特徴とする。
【0018】本発明に係る請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有しかつ薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとを、上記誘電体フィルムの薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するように交互に繰り返し重ねて固定する第1の工程と、上記各誘電体フィルムの薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0019】請求項9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートを所定のより薄い膜厚になるように厚さ方向に所定の圧力で押圧して上記第1の工程に先立って予め形成する工程をさらに含むことを特徴とする。
【0020】請求項10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項8又は9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第2の工程は、上記固定された上記薄膜誘電体シートと上記誘電体フィルムと上記薄膜導体とをともに熱圧着することにより接合する工程であることを特徴とする。
【0021】請求項11記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項8、9又は10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートは可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする。
【0022】本発明に係る請求項12記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、複数の薄膜誘電体シートの各一方の面に、上記各薄膜誘電体シートの長手方向の所定の幅だけ上記各薄膜誘電体シートの表面が露出した切り取り線部と上記各薄膜誘電体シートの長手方向に所定の長さを有する薄膜導体とを上記各薄膜誘電体シートの長手方向に交互に形成する第1の工程と、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように、かつ上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、上記切り取り線部と上記薄膜導体とがそれぞれ形成された複数の薄膜誘電体シートを重ねて固定する第2の工程と、上記第2の工程の後に、互いに接する上記各薄膜導体と上記各薄膜誘電体シートの他方の面とを接合することにより、上記薄膜導体と上記切り取り線部とがそれぞれ形成された複数の薄膜誘電体シートをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程と、上記第2の工程と上記第3の工程との間又は上記第3の工程の後に、表面に露出した上記薄膜誘電体シートの他方の面上であって、上記切り取り線部と対向する面の幅方向の略中央部に切り取り線を印刷する第4の工程とを含むことを特徴とする。
【0023】本発明に係る請求項13記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有する誘電体フィルムの長手方向に所定の長さを有する薄膜導体と上記誘電体フィルムの一方の面の長手方向の所定の幅だけ上記誘電体フィルムの一方の面の表面が露出した切り取り線部とが上記誘電体フィルムの一方の面の長手方向に交互に予め形成された複数の誘電体フィルムとを、上記誘電体フィルムの一方の面に形成された薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するようにかつ上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、交互に繰り返し重ねて固定する第1の工程と、上記第1の工程の後に、上記各誘電体フィルムの一方の面に形成された薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜導体と上記切り取り線部とがそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムと上記薄膜誘電体シートとをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第2の工程と、上記第1の工程と上記第2の工程との間又は上記第2の工程の後に、表面に露出した上記誘電体フィルムの他方の面上であって、上記切り取り線部と対向する面の幅方向の略中央部に切り取り線を印刷する第3の工程とを含むことを特徴とする。
【0024】本発明に係る請求項14記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートは、複数の薄膜誘電体シートの各下面に薄膜導体を設け、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が設けられた上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて接合することにより、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とを交互に積層してなることを特徴とする。
【0025】本発明に係る請求項15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートは、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有しかつ薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとを、上記誘電体フィルムの薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するように交互に繰り返し重ねて、上記各誘電体フィルムの薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとをともに接合してなることを特徴とする。
【0026】本発明に係る請求項16記載の高周波共振器は、所定の形状を有する電極を備えた高周波共振器において、上記電極は請求項14又は15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなることを特徴とする。
【0027】本発明に係る請求項17記載の高周波伝送線路は、所定の形状を有する電極を備えた高周波伝送線路において、上記電極は請求項14又は15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなることを特徴とする。
【0028】本発明に係る請求項18記載の高周波伝送線路は、互いに平行な上面と下面を有する誘電体と、上記誘電体の上面に所定の幅と所定の長さに形成され、かつ薄膜導体と薄膜誘電体シートが最下層が薄膜導体になるように交互に積層されて構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる第1の電極と、上記誘電体の下面に上記第1の電極と対向するように上記所定の幅と上記所定の長さに形成され、かつ薄膜導体と薄膜誘電体シートが最上層が薄膜導体になるように交互に積層されて構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる第2の電極とからなることを特徴とする。
【0029】請求項19記載の高周波伝送線路は、請求項18に記載の高周波伝送線路において、上記第2の電極が形成された上記誘電体の下面に形成された誘電体膜と、上記誘電体膜の下面に形成されたアース導体膜とをさらに備えたことを特徴とする。
【0030】請求項20記載の高周波伝送線路は、請求項18記載の高周波伝送線路において、上記誘電体と上記薄膜誘電体シートはともに可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする。
【0031】請求項21記載の高周波伝送線路は、請求項19記載の高周波伝送線路において、上記誘電体と上記薄膜誘電体シートと上記誘電体膜とはともに可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする。
【0032】
【作用】本発明に係る請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、上記第1の工程で各下面に薄膜導体が形成された複数の薄膜誘電体シートは、上記第2の工程で上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように重ねられて固定される。そして、上記第3の工程で、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと各薄膜導体とがともに接合されて、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。
【0033】請求項2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法においてさらに、上記第1の工程に先立って上記各薄膜誘電体シートは厚さ方向に所定の圧力で押圧される。これによって、上記各薄膜誘電体シートの厚さは所定のより薄い膜厚になるように予め形成される。
【0034】請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第3の工程で、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とがともに熱圧着されることにより接合される。これによって、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。
【0035】請求項4記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第3の工程で、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とがともに焼成されることにより接合される。これによって、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。
【0036】請求項5記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートは可とう性を有する誘電体からなる。
【0037】請求項6記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、請求項1乃至5のうちの1つに記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第1の工程で、上記各薄膜導体は上記薄膜誘電体シートの幅方向の両側から所定の距離だけ内側の幅方向の中央部に形成される。
【0038】本発明に係る請求項7記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法においては、第1の工程で各下面に薄膜導体が形成された複数の薄膜誘電体シートは、第2の工程で上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に別の誘電体上に積層されるように重ねられて上記別の誘電体上に固定される。そして、第3の工程で、上記固定された別の誘電体と上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とは同時に焼成することによって、上記別の誘電体と上記薄膜導体と上記薄膜誘電体シートとがともに接合されて上記別の誘電体上に高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。
【0039】本発明に係る請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法においては、第1の工程で、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有しかつ薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとが、上記誘電体フィルムの薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するように交互に繰り返し重ねられて固定される。第2の工程で、上記各誘電体フィルムの薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とはそれぞれ接合されかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とはそれぞれ接合されることにより、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとがともに接合されて高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。
【0040】請求項9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第1の工程に先立って、上記薄膜誘電体シートは厚さ方向に所定の圧力で押圧されて所定のより薄い膜厚になるように形成される。
【0041】請求項10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法では、請求項8又は9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第2の工程で、上記固定された上記薄膜誘電体シートと上記誘電体フィルムと上記薄膜導体とがともに熱圧着されることにより接合される。
【0042】請求項11記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、請求項8、9又は10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートは可とう性を有する誘電体からなる。
【0043】本発明に係る請求項12記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法においては、第1の工程で、複数の薄膜誘電体シートの各一方の面に、上記各薄膜誘電体シートの長手方向の所定の幅だけ上記各薄膜誘電体シートの表面が露出した切り取り線部と上記各薄膜誘電体シートの長手方向に所定の長さを有する薄膜導体とが上記各薄膜誘電体シートの長手方向に交互に形成される。第2の工程で、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように、かつ上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、上記切り取り線部と上記薄膜導体とがそれぞれ形成された複数の薄膜誘電体シートは重ねられて固定される。上記第2の工程の後に、第3の工程で、互いに接する上記各薄膜導体と上記各薄膜誘電体シートの他方の面とが接合されることにより、上記薄膜導体と上記切り取り線部とがそれぞれ形成された複数の薄膜誘電体シートはともに接合されて高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。上記第2の工程と上記第3の工程との間又は上記第3の工程の後に、第4の工程で、表面に露出した上記薄膜誘電体シートの他方の面上であって、上記切り取り線部と対向する面の幅方向の略中央部に切り取り線が印刷される。
【0044】本発明に係る請求項13記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法においては、第1の工程で、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有する誘電体フィルムの長手方向に所定の長さを有する薄膜導体と上記誘電体フィルムの一方の面の長手方向の所定の幅だけ上記誘電体フィルムの一方の面の表面が露出した切り取り線部とが上記誘電体フィルムの一方の面の長手方向に交互に予め形成された複数の誘電体フィルムとは、上記誘電体フィルムの一方の面に形成された薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するようにかつ上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、交互に繰り返し重ねられて固定される。上記第1の工程の後に、第2の工程で、上記各誘電体フィルムの一方の面に形成された薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜導体と上記切り取り線部とがそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムと上記薄膜誘電体シートとがともに接合されて高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートが形成される。上記第1の工程と上記第2の工程との間又は上記第2の工程の後に、第3の工程で、表面に露出した上記誘電体フィルムの他方の面上であって、上記切り取り線部と対向する面の幅方向の略中央部に切り取り線が印刷される。
【0045】本発明に係る請求項14記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートは、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が設けられた上記複数の薄膜誘電体シートが重ねて接合されて、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されて形成される。
【0046】本発明に係る請求項15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートは、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有しかつ薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとが、上記誘電体フィルムの薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するように交互に繰り返し重ねられて、上記各誘電体フィルムの薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とがそれぞれ接合されかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とがそれぞれ接合されることにより、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとがともに接合されて形成される。
【0047】請求項16記載の高周波共振器は、所定の形状を有する電極を備えた高周波共振器において、上記電極は請求項14又は15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる。
【0048】請求項17記載の高周波伝送線路は、所定の形状を有する電極を備えた高周波伝送線路において、上記電極は請求項14又は15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる。
【0049】本発明に係る請求項18記載の高周波伝送線路は、互いに平行な上面と下面を有する誘電体が、上記誘電体の上面に所定の幅と所定の長さに形成され、かつ薄膜導体と薄膜誘電体シートが最下層が薄膜導体になるように交互に積層されて構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる第1の電極と、上記誘電体の下面に上記第1の電極と対向するように上記所定の幅と上記所定の長さに形成されかつ薄膜導体と薄膜誘電体シートが最上層が薄膜導体になるように交互に積層されて構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる第2の電極とによって挟設されて構成される。
【0050】請求項19記載の高周波伝送線路は、請求項18に記載の高周波伝送線路において、上記第2の電極が形成された上記誘電体の下面に形成された誘電体膜と、上記誘電体膜の下面に形成されたアース導体膜とをさらに備える。
【0051】請求項20記載の高周波伝送線路は、請求項18記載の高周波伝送線路において、上記誘電体と上記薄膜誘電体シートはともに可とう性を有する誘電体からなる。
【0052】請求項21記載の高周波伝送線路は、請求項19記載の高周波伝送線路において、上記誘電体と上記薄膜誘電体シートと上記誘電体膜とはともに可とう性を有する誘電体からなる。
【0053】
【実施例】以下図面を用いて本発明に係る実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1,1a,2,2aの製造装置について説明する。
<第1の実施例>図1は、本発明に係る第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置を示す斜視図である。当該製造装置は、薄膜誘電体シートD1,D2,D3と薄膜導体E1,E2,E3とが交互に積層されることによって構成される高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置であって、真空蒸着装置S1,S2,S3と固定機40と熱圧着装置H1を備えて構成され、以下の特徴を有する。当該製造装置において、真空蒸着装置S1,S2,S3は、それぞれ薄膜誘電体シートD1,D2,D3を長手方向に一定の走行速度vで走行させながら、真空蒸着方法によって薄膜誘電体シートD1,D2,D3の各下面にそれぞれ薄膜導体E1,E2,E3を形成する。固定機40は、薄膜誘電体シートD1,D2,D3と薄膜導体E1,E2,E3とが交互に積層されるようにそれぞれ薄膜導体E1,E2,E3が下面に形成された薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aを、上記走行速度vで走行させながらともに重ね合わせて所定の温度で所定の圧力を厚さ方向に印加することによって固定する。そして、熱圧着機H1は、互いに接する上記固定した薄膜誘電体シートD1,D2,D3と薄膜導体E1,E2,E3とを上記走行速度vで走行させながらともに熱圧着方法によって接合して、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を形成する。
【0054】以下図面を用いて第1の実施例の製造装置について詳細に説明する。図1の製造装置において、可とう性を有する誘電体からなる薄膜誘電体シートD1は、所定の比誘電率と所定の膜厚を有しかつ幅方向の長さに比べて長手方向に十分長いシート状に形成され、シート供給装置K1のドラム(図示せず。)に巻かれた状態で格納される。シート供給装置K1は、上記薄膜誘電体シートD1を一定の走行速度vで真空蒸着装置S1に供給する。上記真空蒸着装置S1は、上記薄膜誘電体シートD1を一定の走行速度vで走行させながら薄膜誘電体シートD1の下面に所定の膜厚を有する薄膜導体E1を真空蒸着方法を用いて形成して、薄膜誘電体シートD1と薄膜導体E1とからなる薄膜誘電体シートD1aをシート走行機10へ供給する。上記シート走行機10は、互いに対向する円周面で上記薄膜誘電体シートD1aを挟んで走行させるローラR11とローラR12とからなる。上記ローラR11と上記ローラR12は、同じ直径を有しかつ軸方向の長さが上記薄膜誘電体シートD1の幅より長い互いに等しい長さを有する円柱形状にてなり、それぞれの軸方向が上記薄膜誘電体シートD1aの幅方向と平行になるように、かつ上記ローラR11の円周面が上記薄膜誘電体シートD1aの上面に接し上記ローラR12の円周面が上記薄膜誘電体シートD1aの下面に接するように設けられる。そして、ローラR11とローラR12は、互いに逆方向に一定の角速度で回転することによって間に挟んだ薄膜誘電体シートD1aを一定の走行速度vで固定機40に向けて走行させる。
【0055】また同様に、可とう性を有する誘電体からなる薄膜誘電体シートD2は、上記薄膜誘電体シートD1と同じ幅と同じ長さを有しかつ所定の膜厚を有するシート状に形成され、シート供給装置K2のドラム(図示せず。)に巻かれた状態で格納される。ここで、上記薄膜誘電体シートD2は、上記薄膜誘電体シートD1と同じ材料からなる。シート供給装置K2は、上記薄膜誘電体シートD2を一定の走行速度vで真空蒸着装置S2に供給する。上記真空蒸着装置S2は、上記薄膜誘電体シートD2を一定の走行速度vで走行させながら薄膜誘電体シートD2の下面に所定の膜厚を有する薄膜導体E2を真空蒸着方法を用いて形成して、薄膜誘電体シートD2と薄膜導体E2とからなる薄膜誘電体シートD2aをシート走行機20へ供給する。上記シート走行機20は、シート走行機10と同様に、互いに対向する円周面で上記薄膜誘電体シートD2aを挟んで走行させるローラR21とローラR22とからなり、ローラR21とローラR22は、互いに逆方向に一定の角速度で回転することによって間に挟んだ薄膜誘電体シートD2aを一定の走行速度vで固定機40に向けて走行させる。
【0056】さらに、可とう性を有する誘電体からなる薄膜誘電体シートD3は、上記薄膜誘電体シートD1と同じ幅と同じ長さを有しかつ所定の膜厚を有するシート状に形成され、シート供給装置K3のドラム(図示せず。)に巻かれた状態で格納される。ここで、上記薄膜誘電体シートD3は、上記薄膜誘電体シートD1と同じ材料からなる。シート供給装置K3は、上記薄膜誘電体シートD3を一定の走行速度vで真空蒸着装置S3に供給する。上記真空蒸着装置S3は、上記薄膜誘電体シートD3を一定の走行速度vで走行させながら薄膜誘電体シートD3の下面に所定の膜厚を有する薄膜導体E3を真空蒸着方法を用いて形成して、薄膜誘電体シートD3と薄膜導体E3とからなる薄膜誘電体シートD3aをシート走行機30へ供給する。上記シート走行機30は、上記シート走行機10と同様に、互いに対向する円周面で上記薄膜誘電体シートD2aを挟んで走行させるローラR31とローラR32とからなり、ローラR31とローラR32は、互いに逆方向に一定の角速度で回転することによって間に挟んだ薄膜誘電体シートD3aを一定の走行速度vで固定機40に向けて走行させる。
【0057】固定機40は、ローラR41とローラR42とからなり、それぞれの対向する円周面で薄膜誘電体シートD1aと薄膜誘電体シートD2aと薄膜誘電体シートD3aとを重ね合わせて固定して熱圧着機H1に供給する。ローラR41,R42は、同じ直径を有しかつ軸方向の長さが上記薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aの幅より長い等しい長さを有する円柱形状にてなり、それぞれの軸が上記薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aの幅方向と平行になるように、かつ上記ローラR41の円周面が上記薄膜誘電体シートD1aの上面に接し上記ローラR42の円周面が上記薄膜誘電体シートD3aの下面に接するように設けられる。そして、ローラR41とローラR42は、それぞれの対向する円周面で薄膜誘電体シートD1aと薄膜誘電体シートD2aと薄膜誘電体シートD3aとを、所定の温度でかつ厚さ方向に所定の圧力で押さえるように挟んで互いに逆方向に回転して、上記薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aをともに重ね合わせて固定して上記所定の走行速度vで熱圧着機H1に供給する。上記熱圧着機H1は、上記固定された薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aをともに所定の走行速度vで走行させながら所定の圧力と温度で押さえる熱圧着方法によって接合して、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を形成する。
【0058】以上のように構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置において、シート状の薄膜誘電体シートD1,D2,D3は、一定の走行速度vでそれぞれシート供給装置K1,K2,K3からそれぞれ真空蒸着装置S1,S2,S3に供給される。上記真空蒸着装置S1,S2,S3に供給された薄膜誘電体シートD1,D2,D3の各下面の全面には、それぞれ上記真空蒸着装置S1,S1,S3によって真空蒸着方法を用いて所定の膜厚の薄膜導体E1,E2,E3が形成され、それぞれ上記薄膜導体E1,E2,E3が形成された薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aは、それぞれ上記シート走行機10,20,30を介して固定機40に供給される。
【0059】上記固定機40に供給された誘電体シートD1a,D2a,D3aは、ともに上記固定機40によって重ね合わされて固定され熱圧着機H1に供給される。そして、上記重ね合わされた誘電体シートD1a,D2a,D3aは、上記熱圧着機H1によって、熱圧着方法により所定の圧力と温度でともに接合されて、薄膜導体E1,E2,E3,E4と誘電体シートD1,D2,D3とが交互に積層された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1が形成される。
【0060】以上のように形成された上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1は、上記薄膜誘電体シートD2が上記薄膜導体E1と上記薄膜導体E2とによって挟設されて構成されたTEMモード伝送線路と、上記薄膜誘電体シートD3が上記薄膜導体E2と上記薄膜導体E3とによって挟設されて構成されたTEMモード伝送線路とが積層されてなる。そして、上記薄膜誘電体シートD2,D3の膜厚は、上記積層された2つのTEM伝送線路を伝搬する各TEM波の位相速度が互いに実質的に一致するように設定され、上記薄膜導体E2,E3の膜厚は、上記2つのTEMモード伝送線路の電磁界が互いに結合するように使用周波数の表皮深さδ0よりも薄く設定される。ここで、好ましくは薄膜導体E1の膜厚は薄膜導体E2の膜厚より厚くなるようにかつ薄膜導体E2の膜厚は薄膜導体E3の膜厚より厚くなるように設定される。
【0061】以上のように構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1においては、上記2つのTEMモード伝送線路を高周波で励振したとき、薄膜導体E2は、隣接する薄膜誘電体D2,D3を介して入射した高周波電力の一部を、それぞれ薄膜導体E3と薄膜導体E1に透過するとともに、当該高周波電力の一部を薄膜誘電体D2,D3を介してそれぞれ薄膜導体E1と薄膜導体E3に反射している。そして、各薄膜誘電体シートD2,D3内ではそれぞれ、反射波と透過波とが共振しており、上記導体薄膜E2の上側表面近傍と下側表面近傍では互いに逆方向の対面する2つの高周波電流が流れている。すなわち、薄膜導体E2の膜厚が表皮深さδ0よりも薄いために、対面する上記互いに逆方向の2つの高周波電流は干渉し、一部を残して互いに相殺される。このように、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1では、隣接する薄膜誘電体D2,D3の共振エネルギー又は伝送エネルギーが薄膜導体E2を介して互いに結合する。一方、薄膜誘電体D2,D3には、電磁界によって変位電流が生じ、隣接する薄膜導体E1,E3の表面に高周波電流を生じさせる。
【0062】さらに、上記2つのTEMモード伝送線路を伝搬する各TEM波の位相速度を互いに実質的に一致させているので、各薄膜導体E1,E2,E3に流れる高周波電流は実質的に互いに同位相となる。これによって、各薄膜導体E1,E2,E3において同位相で流れる高周波電流は、実効的に表皮深さδ0を増大させる。言い換えれば、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1は、より小さい表面抵抗Rsを有することになる。
【0063】また、高周波電磁界結合型薄膜積層電極1において、上層の薄膜導体ほど、膜厚が厚くなるように構成すると、表皮深さδ0をより増大させるように、言い換えればより小さい表面抵抗になるように動作する。
【0064】以上のように、第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置では、薄膜誘電体シートD1,D2,D3の下面に直接薄膜導体E1,E2,E3を形成した後、熱圧着しているので、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1をシート状にして製造することができる。また、上記熱圧着機H1を用いて構成しているので、樹脂の誘電体からなる薄膜誘電体シートD1,D2,D3を用いて高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を製造することができる。
【0065】以上のように、第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置では、下面にそれぞれ薄膜導体E1,E2,E3が形成された薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aをともに重ね合わせて固定してともに熱圧着しているので、薄膜導体と薄膜誘電体とを交互に繰り返し形成して重ねる従来例に比較して少ない工程数で高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を製造することができる。また、上記薄膜誘電体シートD1,D2,D3及び薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aを、長手方向に一定の走行速度vで走行させながら、蒸着、固定、熱圧着の各工程を行っているので、長手方向に長い高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を製造することができる。
【0066】以上の第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置では、上記薄膜誘電体シートD1,D2,D3に可とう性を有する誘電体を使用しかつ薄膜導体E1,E2,E3が薄いので、可とう性を有する高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を製造することができる。
【0067】以上の第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置では、それぞれ予め傷やピンホールのないように製造及び検査された薄膜誘電体シートD1,D2,D3を用い、かつ薄膜導体E1,E2,E3を各層ごとに欠陥のないように形成することにより薄膜導体間における短絡のない信頼性の高い高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を製造することができる。
【0068】以上の第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置を用いて作成される高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1は、所定の比誘電率と所定の膜厚を有する薄膜誘電体シートD1,D2,D3と所定の膜厚に形成された薄膜導体E1,E2,E3とが交互に形成されることによって、各薄膜導体E1,E2,E3にそれぞれ高周波電流が流れるように構成され、実質的に表皮深さδ0を深くすることができるので、表面抵抗を大幅に低減することができる。
【0069】以上の第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置を用いて作成される高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1は、可とう性を有する薄膜誘電体シートD1,D2,D3と薄い薄膜導体E1,E2,E3とによって構成されるので、所定の形状に容易に切断したり打ち抜いたりすることができる。
【0070】図2は、図1の製造装置によって作成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を用いて構成したTM110二重モード誘電体共振器50を示す斜視図である。TM110二重モード誘電体共振器50は、誘電体の共振器ケース52の外表面に、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1からなる外導体54を備えた正方筒形状の共振器ケース52内の中央部に、共振器ケース52と一体成型された十字形状の誘電体51が設けられて構成されている。
【0071】上記TM110二重モード誘電体共振器50の外導体54は、所定の幅と長さに切断された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を上記共振器ケース52の外表面に沿って巻いて接着剤などで接着することにより形成される。ここで、スリット53は、上記共振器ケース52の外表面が所定の幅で露出した高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の継ぎ目であって、電磁界的にオープン、すなわち上記誘電体共振器50が共振したときに磁界が存在しない部分に設けられる。以上のように、図2のTM110二重モード誘電体共振器50は、高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を用いて上記外導体54が形成され、上記外導体54の高周波帯における表皮深さδ0を実質的に深くすることができ、表面抵抗を大幅に低減することができるので、当該誘電体共振器の損失を低下させ無負荷Qを増大させることができる。さらに、本発明に係る第1の実施例の製造方法を用いて製造された可とう性を有する高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を、上記共振器ケース52の外表面に沿って巻いて接着することにより形成できるので、スパッタリング方法等を用いた従来例の形成方法に比較して安価に形成することができる。
【0072】図3は、図1の製造装置を用いて作成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を用いて構成した高周波フレキシブルケーブル60を示す斜視図である。図4は、図3の高周波フレキシブルケーブル60のA−A’線における断面図である。以下、図3と図4を参照して上記高周波フレキシブルケーブル60の構成を説明する。
【0073】まず、幅方向に比べて十分長い長手方向の長さを有し、例えばポリイミドフィルムなどからなる可とう性を有する誘電体シート65の上面に、誘電体シート65の長手方向の一端から他端までホット電極61a乃至64aが等間隔でかつ互いに平行になるように形成される一方、上記誘電体シート65の下面に、誘電体シート65の長手方向の一端から他端まで上記ホット電極61a乃至64aに対向して、それぞれアース電極61b乃至64bが形成される。ここで、上記ホット電極61a乃至64aは、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を上記誘電体シート65の幅より十分小さい所定の幅に切断したものを用いて、互いに所定の間隔でかつ互いに平行になるように接着剤などを用いて上記誘電体シート65の上面に接着されて形成される。また、上記アース電極61b乃至64bは、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を上記ホット電極61a乃至64aと同じ幅に切断したものを用いて、接着剤などを用いて上記誘電体シート65の下面に接着されて形成される。以上のようにして、誘電体シート65をホット電極61aとアース電極61bとによって挟設することによって信号伝送線路L61が構成され、同様に誘電体シート65をホット電極62aとアース電極62bとによって挟設することにより信号伝送線路L62が構成され、誘電体シート65をホット電極63aとアース電極63bとによって挟設することによって信号伝送線路L63が構成され、誘電体シート65をホット電極64aとアース電極64bとによって挟設することによって信号伝送線路L64が構成される。
【0074】また、上記誘電体シート65の下面と上記アース電極61b乃至64bの下面と側面とには、誘電体膜69が形成され、さらに上記誘電体膜69の下面にアース導体膜68が形成される。さらに、上記誘電体シート65の一端と他端には、それぞれ上記信号伝送線路L61乃至L64を外部装置を接続するためのコネクタ66が接続される。
【0075】以上のように構成された上記高周波フレキシブルケーブル60は、上記誘電体シート65の上面と下面に上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1が所定の幅に切断されたものを用いて、互いに所定の間隔でかつ互いに平行になるように接着剤などを用いて接着されて形成される。従って、上記高周波フレキシブルケーブル60は、各信号伝送線路L61乃至L64毎に薄膜導体と薄膜誘電体とを交互に繰り返し積層することによって構成される場合に比較して簡単な工程で安価に製造することができる。
【0076】また、以上のように構成された上記高周波フレキシブルケーブル60は、高周波帯における表面抵抗が小さい上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を用いて上記ホット電極61a乃至64aと上記アース電極61b乃至64bが形成され、上記ホット電極61a乃至64aと上記アース電極61b乃至64bの高周波帯における表皮深さを実質的に深くすることができ、表面抵抗を大幅に低減することができるので、上記信号伝送線路L61乃至L64の伝送損失を小さくすることができる。
【0077】さらに、以上のように構成された上記高周波フレキシブルケーブル60は、上記誘電体膜69と上記アース導体膜68を備えているので、上記信号伝送線路L61乃至L64を通過する高周波信号が、上記信号伝送線路L61乃至L64から漏洩することを防ぐことができる。
【0078】<第2の実施例>図5は本発明に係る第2の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2の製造装置を示す斜視図である。図5において、図1の第1の実施例と同じ物は同じ符号を付している。第2の実施例の製造装置は、第1の実施例の製造装置の中の固定機40と熱圧着機H1を備えて構成され、第1の実施例と異なるところは、第1の実施例の真空蒸着装置S1,S2,S3を備えずに、誘電体フィルムP11,P12,P13の下面に予めそれぞれ薄膜導体E11,E12,E13が形成された誘電体フィルムP11,P12,P13を用いて高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2を製造することである。
【0079】第2の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極2の製造装置において、固定機40は、薄膜誘電体シートD11,D12と、誘電体フィルムP11,P12,P13の下面に予めそれぞれ所定の膜厚の薄膜導体E11,E12,E13が形成された誘電体フィルムP11,P12,P13とを、上記薄膜導体E11が上記薄膜誘電体シートD11の上面に接するようにかつ上記薄膜導体E12が上記薄膜誘電体シートD12の上面に接するように交互に繰り返し重ねて固定して、上記熱圧着機H1に供給する。熱圧着機H1は、互いに接する上記薄膜導体E11と上記薄膜誘電体シートD11の上面、互いに接する上記薄膜誘電体シート11の下面と上記誘電体フィルムP12の上面、互いに接する上記薄膜導体E12と上記誘電体シートD12の上面、及び上記薄膜誘電体シートD12の下面と上記誘電体フィルムP13の上面とをそれぞれ所定の温度と所定の圧力で接合する熱圧着方法によって接合することにより高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2を形成する。
【0080】ここで、上記薄膜誘電体シートD11,D12は、所定の膜厚を有しかつ所定の幅と上記幅より十分長い所定の長さを有する。また、上記誘電体フィルムP11,P12,P13は、上記薄膜誘電体シートD11,D12より小さい比誘電率を有しかつ上記薄膜誘電体シートD1,D2より薄く形成された例えばポリエチレンテレフタレートのフィルムなどからなり、上記薄膜誘電体シートD11,D12と同じ幅と同じ長さを有する。
【0081】以上の第2の実施例の製造装置によって製造された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2は、上記誘電体フィルムP11,P12,P13の誘電率が、上記薄膜誘電体D11,D12に比べて小さくかつ上記薄膜誘電体シートD11,D12より薄いので、実質的に上記薄膜誘電体D11,D12と上記薄膜導体E11,E12,E13とが交互に積層された高周波電磁界結合型薄膜積層電極と同様の動作をする。また、上記薄膜誘電体シートD11,D12の膜厚と上記薄膜導体E11,E12,E13の膜厚は、それぞれ第1の実施例における薄膜誘電体シートD2,D3の膜厚と薄膜導体E1,E2,E3の膜厚と同様に設定される。従って、第2の実施例の製造装置によれば、表面抵抗の小さい高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2を製造することができ、第1の実施例の製造装置と同様の作用効果を有する。
【0082】また、以上の第2の実施例の製造装置においては、第1の実施例の真空蒸着装置S1,S2,S3に代えて、薄膜導体E11,E12,E13がそれぞれ予め形成された誘電体フィルムP11,P12,P13を用いているので、工程数を少なくすることができる。
【0083】<第3の実施例>図6は、本発明に係る第3の実施例の製造方法を用いて作成した同軸ケーブルの斜視図である。本発明に係る第3の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極の製造方法は、芯材22や誘電体樹脂23の外周面に薄膜導体E21,E22,E23,E21a,E22a,E23aと薄膜誘電体シートD21,D22,D21a,D22aとを交互に巻いて形成して固定することを特徴とする。
【0084】図6に示すように、円柱形状の導体又は誘電体などからなる芯材22の外周面に上記電磁界結合型薄膜積層電極を形成する方法であって、上記円柱形状の芯材22の外周面に薄膜導体E21,E22,E23と薄膜誘電体シートD21,D22とを交互に巻き付けることにより積層して形成した後、上記薄膜導体と薄膜誘電体シートのうちの最上層の薄膜導体E23の外周面上に所定の誘電率を有しかつ誘電体損失の小さい円筒形状の誘電体樹脂23を形成した後、上記誘電体樹脂23の外周面上から熱圧着することにより交互に巻き付けた薄膜導体E21,E22,E23と薄膜誘電体シートD21,D22とを固定する。ここで、上記誘電体樹脂23は径方向の厚さが均一になるように形成される。図6の同軸ケーブルでは、さらに誘電体樹脂23の円周面に薄膜導体E21a,E22a,E23aと薄膜誘電体シートD21a,D22aとを交互に巻き付けることにより積層して形成した後、絶縁体である被覆材24を形成して熱圧着することにより交互に巻き付けた薄膜導体E21a,E22a,E23aと薄膜誘電体シートD21a,D22aとを固定する。ここで、薄膜誘電体シートD21,22,D21a,D22aの膜厚と薄膜導体E21,E22,E23,E21a,E22a,E23aの膜厚は、それぞれ第1の実施例の薄膜誘電体シートD2,D3の膜厚と薄膜導体E1,E2,E3の膜厚と同様に設定される。
【0085】以上の第3の実施例の製造方法によると、例えば円柱状の導体又は誘電体などからなる芯材22の外周面に、上記電磁界結合型薄膜積層電極を形成することができる。
【0086】以上のように構成された図6の同軸ケーブルは、中心導体70と外導体80とを高周波電磁界結合型薄膜積層電極を用いて構成し、中心導体70と外導体80の高周波帯における表皮深さを実質的に大きくすることができ表面抵抗を小さくすることができるので、従来の同軸ケーブルに比較して伝送損失を小さくすることができる。
【0087】<変形例>以下、変形例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造装置(図示せず。)について説明する。第1の変形例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1aの製造装置は、第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置に比較して以下の点が異なる。
(1)真空蒸着装置S1は、図7(a)に示すように、薄膜誘電体シートD1の下面に上記薄膜誘電体シートD1の長手方向の所定の幅だけ上記薄膜誘電体シートD1の表面が露出した切り取り線部4aと、上記薄膜誘電体シートD1の長手方向に所定の長さを有する薄膜導体E1とを、上記薄膜誘電体シートD1の長手方向に交互に形成する。同様に真空蒸着装置S2は、図7(b)に示すように薄膜誘電体シートD2の下面に切り取り線部4bと薄膜導体E2とを交互に形成し、真空蒸着装置S3は、図7(c)に示すように薄膜誘電体シートD3の下面に切り取り線部4cと薄膜導体E3とを交互に形成する。ここで、各薄膜導体E1,E2,E3の長手方向の長さは互いに等しくなるように、かつ上記切り取り線部4a,4b,4cの(薄膜誘電体シートD1,D2,D3の長手方向に平行な)幅は、互いに等しくなるように形成される。
(2)固定機40は、図8に示すように上記切り取り線部4a,4b,4cが厚さ方向に互いに対向するように、薄膜誘電体シートD1の下面に薄膜導体E1と切り取り線部4aが形成された薄膜誘電体シートD10aと、薄膜誘電体シートD2の下面に薄膜導体E2と切り取り線部4bが形成された薄膜誘電体シートD20aと、薄膜誘電体シートD3の下面に薄膜導体E3と切り取り線部4cが形成された薄膜誘電体シートD30aとを固定する。
(3)上記固定機40と上記熱圧着器H1の間又は上記熱圧着器H1の後に、表面に露出した上記薄膜誘電体シートD1の上面であって、上記切り取り線部4aに対向する切り取り線部表面4の幅方向の略中央部に、上記薄膜誘電体シートD1の幅方向に対して平行に所望の切断位置を示す切り取り線3を印刷する印刷機(図示せず。)を備える。
【0088】以上のように構成された第1の変形例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1aの製造装置によって製造された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1aでは、図8に示すように、上記切り取り線3の下方には切り取り線部4a,4b,4cが形成され薄膜導体E1,E2,E3の形成されていないので、上記切り取り線3に沿って上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1aを切断したとき、切断面において隣接する薄膜導体E1と薄膜導体E2間又は薄膜導体E2と薄膜導体E3間が短絡することを防ぐことができる。また、切り取り線3に沿って切断することにより所望の切断位置で切断することができる。
【0089】また、第2の変形例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aの製造装置(図示せず。)は、第2の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2の製造装置に比較して、以下の点が異なる。
(1)誘電体フィルムP11の下面には、図9(a)に示すように上記誘電体フィルムP11の長手方向に所定の長さを有する薄膜導体E11と、上記誘電体フィルムの下面の長手方向の所定の幅だけ上記誘電体フィルムP11の下面が表面に露出した切り取り線部5aとが、上記誘電体フィルムP11の下面の長手方向に交互に形成されている。同様に、誘電体フィルムP12の下面には、図9(c)に示すように、薄膜導体E12と切り取り線部5bとが交互に形成され、誘電体フィルムP13の下面には、図9(e)に示すように、薄膜導体E13と切り取り線部5cが交互に形成されている。
(2)上記固定機40は、上記誘電体フィルムP11,P12,P13と薄膜誘電体シートD11,D12とを、上記薄膜導体E11、E12がそれぞれ上記薄膜誘電体シートD11,D12の上面に接するように、かつ上記切り取り線部5a,5b,5cが厚さ方向に互いに対向するように交互に繰り返し重ねて固定する。
(3)上記固定機40と上記熱圧着器H1の間又は上記熱圧着器H1の後に、表面に露出した上記誘電体フィルムの他方の面上であって、上記切り取り線部5aに対向する切り取り線部表面5の幅方向の略中央部に所望の切断位置を示す切り取り線3を印刷する印刷機(図示せず。)を備える。以上のように構成された第2の変形例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aの製造装置(図示せず。)は、第1の変形例の真空蒸着装置S1,S2,S3を備えずに、予め誘電体フィルムP11,P12,P13の各下面に薄膜導体E1,E2,E3と切り取り線部5a,5b,5cとが交互に形成された誘電体フィルムP11,P12,P13を用いて高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aを製造することを特徴とする。
【0090】以上のように構成された第2の変形例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aの製造装置によって製造された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aでは、図10に示すように、上記切り取り線3の下方には切り取り線部5a,5b,5cが形成され薄膜導体E11,E2,E3が形成されていないので、上記切り取り線3に沿って上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aを切断したとき、切断面において隣接する薄膜導体E11と薄膜導体E12間又は薄膜導体E12と薄膜導体E13間が短絡することを防ぐことができる。また、切り取り線3に沿って切断することにより所望の切断位置で切断することができる。
【0091】以上の第1と第2の実施例の製造装置では、熱圧着機H1を用いて熱圧着をすることによって薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3a又は薄膜誘電体シートD11a,D12a,D13aを接合したが、本発明はこれに限らず、焼成炉を用いて焼成することにより接合してもよい。以上のように構成することにより、薄膜誘電体シートにSiO2などのセラミックス材料を用いた高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを製造することができる。この場合、薄膜誘電体シートD1,D2,D3,D11,D12は、粉末のSiO2などのセラミックス材料を所定の樹脂の中に分散させてシート状に形成したグリーンシートからなる。
【0092】また、上記電磁界結合型薄膜積層電極シートを、例えば誘電体基板上に直接、薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aを重ねて形成して上記誘電体基板とともに焼成するようにしてもよい。以上のように構成することにより焼成前の基板と同時に焼成することができ製造工程数を少なくすることができる。
【0093】以上の第1と第2の実施例の製造装置及び第1と第2の変形例の製造装置では、予め所定の膜厚になるように形成された薄膜誘電体シートを用いたが、本発明はこれに限らず、予め所定の膜厚より厚く形成した薄膜誘電体シートを用い、上記固定機40に供給される前に又は上記固定機40によって重ね合わせるときに厚さ方向に所定の圧力で押さえることにより、上記薄膜誘電体シートを薄くして、上記薄膜誘電体シートが所定の膜厚になるようしてもよい。以上のように構成することによって、所望の膜厚より厚い薄膜誘電体シートを使用できるので、上記製造装置における上記薄膜誘電体シートの取り扱いを容易にすることができる。
【0094】以上の第1と第2の実施例の製造装置では、上記薄膜導体E1,E2,E3,E11,E12,E13と上記薄膜誘電体シートD1,D2,D3,D11,D12とが同じ幅になるように形成したが、本発明はこれに限らず、上記薄膜導体E1,E2,E3,E11,E12,E13の幅をそれぞれ上記薄膜誘電体シートD1,D2,D3,D11,D12の幅より狭くなるように、上記薄膜誘電体シートD1,D2,D3,D11,D12の略中央部に形成して、上記薄膜誘電体シートD1,D2,D3,D11,D12の両側から所定の幅だけ上記薄膜導体E1,E2,E3,E11,E12,E13が形成されない部分を設けるようにしてもよい。以上のように構成することにより、例えば上記薄膜誘電体シートD1a,D2a,D3aが幅方向にずれて重ねられた場合、又は上記薄膜誘電体シートD11,D12と上記誘電体フィルムP11,P12,P13とが幅方向にずれて重ねられた場合に発生することがある上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1,2の両側面での薄膜導体E1,E2,E3,E11,E12,E13間の導通を防ぐことができる。以上の第2の実施例の製造装置では、上記薄膜導体E11,E12,E13を上記誘電体フィルムP11,P12,P13とともに積層したが、本発明はこれに限らず、上記固定機40によって固定する前に、上記薄膜導体E11,E12,E13をそれぞれ上記誘電体フィルムP11,P12,P13からはがして、上記薄膜導体E11,E12,E13と上記薄膜誘電体シートD11,D12とを交互に積層するようにしてもよい。
【0095】以上の第3の実施例の製造方法では、上記誘電体樹脂23及び上記被覆材24を形成した後、熱圧着することにより固定するようにしたが、本発明はこれに限らず、誘電体樹脂23又は上記被覆材24として樹脂を封入する方法、若しくは、樹脂23又は被覆材24を形成した後、樹脂23又は被覆材24によって囲まれた部分を減圧することにより固定する方法を用いてもよい。またこのとき減圧した後に熱圧着するようにしてもよい。
【0096】以上の第3の実施例の製造方法では、上記誘電体樹脂23及び上記被覆材24を形成した後、熱圧着することにより固定するようにしたが、本発明はこれに限らず、上記誘電体樹脂23及び上記被覆材24に、室温より高い所定の温度で非可逆的に収縮する熱収縮性を有する樹脂をさらに被覆して、当該樹脂に上記所定の温度になるように熱を加えて、当該樹脂を収縮させることにより、上記交互に形成された薄膜導体E21,E22,E23,E21a,E22a,E23aと薄膜誘電体シートD21,D22,D21a,D22aとを上記樹脂によって固定するようにしてもよい。また、上記誘電体樹脂23及び上記被覆材24そのものに熱収縮性を有する樹脂を用いてもよい。
【0097】以上の第3の実施例の製造方法では、例えば円柱状の芯材22の外周面に、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極を形成したが、本発明はこれに限らず、四角柱、六角柱などの他の形状の芯材の外表面に形成してもよい。
【0098】
【発明の効果】本発明に係る請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、上記第1の工程で各下面に薄膜導体が形成された複数の薄膜誘電体シートを、第2の工程で上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように重ねて固定し、第3の工程で接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成するので、高周波電磁界結合型薄膜積層電極をシート状に製造することができ、かつ各下面に薄膜導体が形成された複数の薄膜誘電体シートを重ねてともに接合しているので薄膜導体と薄膜誘電体とを交互に繰り返し形成して積層する従来例に比較して安価に製造することができる。
【0099】請求項2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記各薄膜誘電体シートを所定のより薄い膜厚になるように厚さ方向に所定の圧力で押圧して上記第1の工程に先立って予め形成する工程を含んでいるので、所望の膜厚より厚い薄膜誘電体シートを使用でき薄膜誘電体シートの取り扱いを容易にすることができる。
【0100】請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第3の工程は、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに熱圧着することにより接合するので、上記薄膜誘電体シートに樹脂からなる誘電体を用いることができる。
【0101】請求項4記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第3の工程は、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに焼成することにより接合するので、上記薄膜誘電体シートにセラミック材料を用いることができる。
【0102】請求項5記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートは、可とう性を有する誘電体からなるので、可とう性を有する高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを製造することができる。
【0103】請求項6記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項1乃至5のうちの1つに記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第1の工程は、上記各薄膜導体を上記薄膜誘電体シートの幅方向の両側から所定の距離だけ内側の幅方向の中央部に形成するので、上記高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの側面における上記薄膜導体間の導通を防ぐことができる。
【0104】本発明に係る請求項7記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に別の誘電体上に積層されるように、第1の工程で下面に薄膜導体が形成された上記複数の薄膜誘電体シートを、第2の工程で重ねて上記別の誘電体上に固定して、第3の工程で同時に焼成することによって、上記別の誘電体と上記薄膜導体と上記薄膜誘電体シートとをともに接合する。これによって、上記別の誘電体上に直接高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成することができる。
【0105】本発明に係る請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、第1の工程で、上記薄膜誘電体シートと、薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとを、交互に繰り返し重ねて固定し、第2の工程で、ともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する。これによって、高周波電磁界結合型薄膜積層電極をシート状に製造することができ、かつ各下面に薄膜導体が形成された複数の薄膜誘電体シートを重ねてともに接合しているので薄膜導体と薄膜誘電体とを交互に繰り返し形成して積層する従来例に比較して安価に製造することができる。
【0106】請求項9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートを所定のより薄い膜厚になるように厚さ方向に所定の圧力で押圧して上記第1の工程に先立って予め形成する工程をさらに含むので、所望の膜厚より厚い薄膜誘電体シートを使用でき薄膜誘電体シートの取り扱いを容易にすることができる。
【0107】請求項10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項8又は9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記第2の工程は、上記固定された上記薄膜誘電体シートと上記誘電体フィルムと上記薄膜導体とをともに熱圧着することにより接合するので、上記薄膜誘電体シートに樹脂からなる誘電体を用いることができる。
【0108】請求項11記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、請求項8、9又は10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法において、上記薄膜誘電体シートは可とう性を有する誘電体からなるので、可とう性を有する高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを製造することができる。
【0109】本発明に係る請求項12記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法は、第1の工程で形成された上記切り取り線部が、第2の工程で、厚さ方向に互いに対向するように重ねて固定され、第3の工程で接合される。そして、第4の工程で、上記切り取り線を印刷しているので、上記切り取り線に沿って切断することにより薄膜導体が形成されていない部分で切断することができ、切断面において薄膜導体間の短絡を防ぐことができる高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを製造することができる。
【0110】本発明に係る請求項13記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法によれば、第1の工程で、上記薄膜誘電体シートと、上記切り取り線部が一方の面に予め形成された複数の誘電体フィルムとが、上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、交互に繰り返し重ねられて固定され、第2の工程で接合されて、第4の工程で切り取り線が印刷される。従って、上記切り取り線に沿って切断することにより薄膜導体が形成されていない部分で切断することができ、切断面において薄膜導体間の短絡を防ぐことができる高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを製造することができる。
【0111】本発明に係る請求項14記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートによれば、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が設けられた上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて接合することにより、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されて形成されるので、シート状の高周波電磁界結合型薄膜積層電極を提供することができる。
【0112】本発明に係る請求項15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートによれば、少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとを、交互に繰り返し重ねて、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとをともに接合することにより形成されるので、シート状の高周波電磁界結合型薄膜積層電極を提供することができる。
【0113】本発明に係る請求項16記載の高周波共振器によれば、表面抵抗の小さい高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる電極を備えているので、一層の導体層からなる電極を備えた高周波共振器に比較して無負荷Qを高くすることができる。
【0114】本発明に係る請求項17及び18記載の高周波伝送線路によれば、表面抵抗の小さい高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる電極を備えているので、一層の導体層からなる電極を備えた高周波伝送線路に比較して伝送損失を小さくすることができる。
【0115】請求項19記載の高周波伝送線路によれば、請求項18に記載の高周波伝送線路において、上記第2の電極が形成された上記誘電体の下面に形成された誘電体膜と、上記誘電体膜の下面に形成されたアース導体膜とをさらに備えているので、上記高周波伝送線路を通過する高周波信号が上記高周波伝送線路から漏洩することを防ぐことができる。
【0116】請求項20記載の高周波伝送線路は、請求項18記載の高周波伝送線路において、上記誘電体と上記薄膜誘電体シートはともに可とう性を有する誘電体からなるので、上記高周波伝送線路は可とう性を有する。
【0117】請求項21記載の高周波伝送線路は、請求項19記載の高周波伝送線路において、上記誘電体と上記薄膜誘電体シートと上記誘電体膜とはともに可とう性を有する誘電体からなるので、上記高周波伝送線路は可とう性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1の製造装置を示す斜視図である。
【図2】 図1の製造装置を用いて製造した高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を用いて共振器ケース52の外導体54を形成したTM110二重モード型誘電体共振器50を示す斜視図である。
【図3】 図1の製造装置を用いて製造した高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1を用いて構成した高周波フレキシブルケーブル60の斜視図である。
【図4】 図3の高周波フレキシブルケーブル60のA−A’における断面図である。
【図5】 本発明に係る第2の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2の製造装置を示す斜視図である。
【図6】 本発明に係る第3の実施例の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法を用いて製造した同軸線路の斜視図である。
【図7】 (a)は第1の変形例における薄膜誘電体シートD10aの断面図であり、(b)は第1の変形例における薄膜誘電体シートD20aの断面図であり、(c)は第1の変形例における薄膜誘電体シートD30aの断面図である。
【図8】 第1の変形例の製造装置によって製造された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート1aの斜視図である。
【図9】 (a)は第2の変形例における薄膜導体E11が形成された誘電体フィルムP11の断面図であり、(b)は第2の変形例における薄膜誘電体シートD11の断面図であり、(c)は第2の変形例における薄膜導体E12が形成された誘電体フィルムP12の断面図であり、(d)は第2の変形例における薄膜誘電体シートD12の断面図であり、(e)は第2の変形例における薄膜導体E13が形成された誘電体フィルムP13の断面図である。
【図10】 第2の変形例の製造装置よって製造された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート2aの斜視図である。
【符号の説明】
1,2…高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート、
D1,D2,D3,D1a,D2a,D3a,D10a,D11,D12,D20a,D21,D22,D21a,D22a,D30a…薄膜誘電体シート、
E1,E2,E3,E11,E12,E13,E21,E22,E23,E21a,E22a,E23a…薄膜導体、
H1…熱圧着機、
K1,K2,K3…シート供給装置、
S1,S2,S3…真空蒸着装置、
3…切り取り線、
4,5…切り取り線部表面、
4a,4b,4c,5a,5b,5c…切り取り線部、
10,20,30…シート走行機、
R11,R12,R21,R22,R31,R32,R41,R42…ローラ、
P11,P12,P13…誘電体フィルム、
22…芯材、
23…誘電体樹脂、
24…被覆材、
40…固定機、
50…TM110二重モード型誘電体共振器、
51…誘電体、
52…共振器ケース、
53…スリット、
54,80…外導体、
60…高周波フレキシブルケーブル、
61a,62a,63a,64a…ホット電極、
61b,62b,63b,64b…アース電極、
L61,L62,L63,L64…信号伝送線路、
65…誘電体シート、
68…アース導体膜、
69…誘電体膜、
70…中心導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の薄膜誘電体シートの各下面に薄膜導体を形成する第1の工程と、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が形成された上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて固定する第2の工程と、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程とを含むことを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項2】 上記各薄膜誘電体シートを所定のより薄い膜厚になるように厚さ方向に所定の圧力で押圧して上記第1の工程に先立って予め形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項3】 上記第3の工程は、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに熱圧着することにより接合する工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項4】 上記第3の工程は、互いに接する上記固定された各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とをともに焼成することにより接合する工程であることを特徴とする請求項1又は2記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項5】 上記薄膜誘電体シートは、可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項3記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項6】 上記第1の工程は、上記各薄膜導体を上記薄膜誘電体シートの幅方向の両側から所定の距離だけ内側の幅方向の中央部に形成することを特徴とする請求項1乃至5のうちの1つに記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項7】 複数の薄膜誘電体シートの各下面に薄膜導体を形成する第1の工程と、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に別の誘電体上に積層されるように、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が形成された上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて上記別の誘電体上に固定する第2の工程と、上記固定された別の誘電体と上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とを同時に焼成することによって、上記別の誘電体と上記薄膜導体と上記薄膜誘電体シートとをともに接合して上記別の誘電体上に高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程とを含むことを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項8】 少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有しかつ薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとを、上記誘電体フィルムの薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するように交互に繰り返し重ねて固定する第1の工程と、上記各誘電体フィルムの薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第2の工程とを含むことを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項9】 上記薄膜誘電体シートを所定のより薄い膜厚になるように厚さ方向に所定の圧力で押圧して上記第1の工程に先立って予め形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項8記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項10】 上記第2の工程は、上記固定された上記薄膜誘電体シートと上記誘電体フィルムと上記薄膜導体とをともに熱圧着することにより接合する工程であることを特徴とする請求項8又は9記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項11】 上記薄膜誘電体シートは可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項8、9又は10記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項12】 複数の薄膜誘電体シートの各一方の面に、上記各薄膜誘電体シートの長手方向の所定の幅だけ上記各薄膜誘電体シートの表面が露出した切り取り線部と上記各薄膜誘電体シートの長手方向に所定の長さを有する薄膜導体とを上記各薄膜誘電体シートの長手方向に交互に形成する第1の工程と、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とが交互に積層されるように、かつ上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、上記切り取り線部と上記薄膜導体とがそれぞれ形成された複数の薄膜誘電体シートを重ねて固定する第2の工程と、上記第2の工程の後に、互いに接する上記各薄膜導体と上記各薄膜誘電体シートの他方の面とを接合することにより、上記薄膜導体と上記切り取り線部とがそれぞれ形成された複数の薄膜誘電体シートをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第3の工程と、上記第2の工程と上記第3の工程との間又は上記第3の工程の後に、表面に露出した上記薄膜誘電体シートの他方の面上であって、上記切り取り線部と対向する面の幅方向の略中央部に切り取り線を印刷する第4の工程とを含むことを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項13】 少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有する誘電体フィルムの長手方向に所定の長さを有する薄膜導体と上記誘電体フィルムの一方の面の長手方向の所定の幅だけ上記誘電体フィルムの一方の面の表面が露出した切り取り線部とが上記誘電体フィルムの一方の面の長手方向に交互に予め形成された複数の誘電体フィルムとを、上記誘電体フィルムの一方の面に形成された薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するようにかつ上記各切り取り線部が厚さ方向に互いに対向するように、交互に繰り返し重ねて固定する第1の工程と、上記第1の工程の後に、上記各誘電体フィルムの一方の面に形成された薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜導体と上記切り取り線部とがそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムと上記薄膜誘電体シートとをともに接合して高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートを形成する第2の工程と、上記第1の工程と上記第2の工程との間又は上記第2の工程の後に、表面に露出した上記誘電体フィルムの他方の面上であって、上記切り取り線部と対向する面の幅方向の略中央部に切り取り線を印刷する第3の工程とを含むことを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートの製造方法。
【請求項14】 複数の薄膜誘電体シートの各下面に薄膜導体を設け、上記薄膜誘電体シートの下面に薄膜導体が設けられた上記複数の薄膜誘電体シートを重ねて接合することにより、上記各薄膜誘電体シートと上記各薄膜導体とを交互に積層してなることを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート。
【請求項15】 少なくとも1つの薄膜誘電体シートと、上記薄膜誘電体シートの誘電率より低い誘電率を有しかつ薄膜導体が一方の面に予めそれぞれ形成された複数の誘電体フィルムとを、上記誘電体フィルムの薄膜導体が上記薄膜誘電体シートの一方の面に接するように交互に繰り返し重ねて、上記各誘電体フィルムの薄膜導体と上記薄膜誘電体シートの一方の面とをそれぞれ接合しかつ上記各誘電体フィルムの他方の面と上記薄膜誘電体シートの他方の面とをそれぞれ接合することにより、上記薄膜誘電体シートと上記薄膜導体が形成された複数の誘電体フィルムとをともに接合してなることを特徴とする高周波電磁界結合型薄膜積層電極シート。
【請求項16】 所定の形状を有する電極を備えた高周波共振器において、上記電極は請求項14又は15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなることを特徴とする高周波共振器。
【請求項17】 所定の形状を有する電極を備えた高周波伝送線路において、上記電極は請求項14又は15記載の高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなることを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項18】 互いに平行な上面と下面を有する誘電体と、上記誘電体の上面に所定の幅と所定の長さに形成され、かつ薄膜導体と薄膜誘電体シートが最下層が薄膜導体になるように交互に積層されて構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる第1の電極と、上記誘電体の下面に上記第1の電極と対向するように上記所定の幅と上記所定の長さに形成され、かつ薄膜導体と薄膜誘電体シートが最上層が薄膜導体になるように交互に積層されて構成された高周波電磁界結合型薄膜積層電極シートからなる第2の電極とからなることを特徴とする高周波伝送線路。
【請求項19】 上記第2の電極が形成された上記誘電体の下面に形成された誘電体膜と、上記誘電体膜の下面に形成されたアース導体膜とをさらに備えたことを特徴とする請求項18に記載の高周波伝送線路。
【請求項20】 上記誘電体と上記薄膜誘電体シートはともに可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項18記載の高周波伝送線路。
【請求項21】 上記誘電体と上記薄膜誘電体シートと上記誘電体膜とはともに可とう性を有する誘電体からなることを特徴とする請求項19記載の高周波伝送線路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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