説明

高圧ガス充填装置

【課題】小型で安全で安価な高圧ガス充填装置を提供する。
【解決手段】ハウジング(5)内に設けた圧縮手段(6)をハウジング(5)外に設けた改質手段(3)に接続し、圧縮手段(6)を蓄圧手段(8)に接続し、蓄圧手段(8)に接続された流路管(10)に流量計(12)を介装し、ハウジング(5)外へ導出した流路管(10)に充填ホース(14)を接続し、充填ホース(14)の先端に充填ノズル(15)を設け、そして、流量計(12)の流量信号を受けて充填量を演算し、演算した充填量を表示器(19)に表示する制御手段(18)を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の燃料として普及しつつある水素ガス又は天然ガス(CNG)を燃料タンクへ充填するための高圧ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題及び原油の高騰問題から、近年ガソリンに代わって水素ガス又は天然ガスを燃料とする自動車が注目され、実用化されつつある。ガソリンを給油する給油所は多数あるが、水素ガス又は天然ガスの充填所は少なく、これらを燃料とする自動車が普及するに連れて充填所の新たな開設が求められている。
【0003】
しかしながら従来の高圧ガス充填装置は、通常の公知の機器を流路管で接続しただけのものであり、大型化し、かつ高価なものである。
【0004】
例えば図5に示すように、従来の高圧ガス充填装置は、ガス供給源31から供給されるガスを改質手段32で良質のガスに改質し、改質されたガスを圧縮手段33で圧縮して蓄圧手段34に蓄圧し、蓄圧手段34に蓄圧されたガスを充填機35から自動車の燃料タンクへ充填するようになっている。
【0005】
そして、上述した改質手段32、圧縮手段33、及び蓄圧手段34は、各産業分野で従来から使用されていた機器が使用され、大型で高価なものである。そのために、敷地が狭い従来の給油所に併設することが難しく、設備投資が嵩み開設が遅れている。また、各機器は別々に現場に設置され、現場で各機器を流路管及び電線で接続している。このように現場作業が多くなるので、安全性に欠ける虞があり、工期も長く掛かって費用が嵩むことになる。
【0006】
本出願人は水素ガスの充填装置として特許文献1を開発したが、まだ充分ではなかった。
【特許文献1】特開2005−155864
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、小型であり、また工期も短く安全で安価な高圧ガス充填装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高圧ガス充填装置によれば、ハウジング(5)内に設けた圧縮手段(6)をハウジング(5)外に設けた改質手段(3)に接続し、圧縮手段(6)を蓄圧手段(8)に接続し、蓄圧手段(8)に接続された流路管(10)に流量計(12)を介装し、ハウジング(5)外へ導出した流路管(10)に充填ホース(14)を接続し、充填ホース(14)の先端に充填ノズル(15)を設け、そして、流量計(12)の流量信号を受けて充填量を演算し、演算した充填量を表示器(19)に表示する制御手段(18)を設けている。
【0009】
そして、本発明の水素ガス充填装置によれば、前記蓄圧手段(8)及び流路管(10)に圧力センサ(9、13)を設け、前記制御装置(18)は蓄圧保持制御手段(26)及び充填制御手段(27)を具備し、蓄圧保持制御手段(26)は蓄圧手段(8)に設けた圧力センサ(9)の計測信号を受けて、蓄圧手段(8)内のガス圧を一定範囲に保つように圧縮手段(6)を駆動制御し、充填制御手段(27)は流路管(10)に設けた圧力センサ(13)の計測信号を受けて、流路管(10)内の圧力が一定値となると充填を終了するようになっている。
【0010】
また、本発明の水素ガス充填装置によれば、前記ハウジング(5)の上部には開口(29)が、ハウジング(5)の中部には換気扇(21)が設けられ、前記制御装置(18)はハウジング(5)内の機器駆動時に換気扇(21)を駆動するようになっている。
【発明の効果】
【0011】
(1) 圧縮手段及び蓄圧手段を小型化して高圧ガス充填装置のハウジング内に組み込むので、各機器の組み込みが工場でおこなえ、安全で安価な高圧ガス充填装置となる。
(2) 制御装置の蓄圧保持制御手段の働きで、蓄圧手段内は常に一定の高圧に保たれるので、自動車の燃料タンクへの充填がスムーズにおこなわれるようになる。
(3) 充填制御手段により充填は自動的に終了するので、充填作業は容易でスムーズにおこなわれるようになる。
(4) ハウジング内は強制換気されるので、ハウジング内に危険なガスが滞留する虞がなく、安全な高圧ガス充填装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の高圧ガス充填装置の全体を示す模式図で、図2は高圧ガス充填装置の制御関係を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の高圧ガス充填装置1は、流路管2を介して改質手段3に接続されている。この改質手段3はガス供給源4から供給されるガスを良質のガスに改質するものである。
【0014】
例えば、高圧ガス充填装置1で充填されるガスが水素ガスである場合は、水素ガス供給源4から供給される水素ガスを公知の改質手段3で良質の水素ガスに改質する。そして、高圧ガス充填装置1で充填されるガスが天然ガス(CNG)である場合は、天然ガス供給源4から供給される天然ガスを良質の天然ガスに改質する。
【0015】
なお、改質手段3は小型化すると、改質性能が極端に低下するために、高圧ガス充填装置1とは別個に設置し、両者を流路管2で接続している。
【0016】
高圧ガス充填装置1のハウジング5内に導入された流路管2は圧縮手段6に接続され、圧縮手段6は開閉弁7を介して蓄圧手段8に接続されている。そして、蓄圧手段8には圧力センサ9が設けられている。
【0017】
蓄圧手段8に接続された流路管10には開閉弁11及び流量計12が直列に介装され、流量計12の下流側には圧力センサ13が設けられている。そして、流路管10はハウジング5外へ導出され、流路管10に接続された充填ホース14の先端には充填ノズル15が設けられている。
【0018】
充填ノズル15は、ハウジング5に設けられたノズル掛け16に掛けられ、ノズル掛け16には後述のように作動するノズルスイッチ17が設けられている。
さらに、ハウジング5には、制御装置18、表示器19、キーボード20、及び換気扇21が設けられている。キーボード20には、開始スイッチ22、停止スイッチ23、及び切替スイッチ24が設けられている。そして、制御装置18は、図示しない事務所等に設けられたPOS25に接続されている。
【0019】
図2に示すように、圧力センサ9、13の計測信号、流量計12の計量信号、ノズルスイッチ17のオン・オフ信号、及びキーボード20に設けられた各スイッチ22、23、24のオン信号が制御装置18へ入力している。そして、制御装置18からは、改質手段3及び圧縮手段6へ駆動信号、開閉弁7、11へ開閉信号、表示器19へ表示信号、換気扇21へ駆動信号、及びPOS25へ充填データが出力されるようになっている。
なお、制御装置18には、後述するように、蓄圧保持制御手段26及び充填制御手段27が具備されている。
【0020】
また、ハウジング5の上部には、雨水流入防止用の屋根28を設けた開口29が設けられている。この様に開口29が設けられているので、ハウジング5内の機器からガスが漏出した場合でも、軽いガスは開口29から流出し、ハウジング5内に滞留することがないので安全である。そして、換気扇21を駆動することにより、ハウジング5内の空気は開口29から強制的に排出され、より安全となる。
【0021】
次に図3、図4のフロー図に基づいて、高圧ガス充填装置1で水素ガスを充填する場合の動作を説明する。
【0022】
図3は、制御装置18に具備されている蓄圧保持制御手段26の機能、即ち、蓄圧手段8内のガス圧を一定範囲に保つためのフロー図である。
制御装置18は蓄圧手段8に設けられた圧力センサ9の計測信号を受け、蓄圧手段8内のガス圧が一定以下、例えば35MPa(メガパスカル)以下となると(ST1)、開閉弁7を開き、改質手段3及び圧縮手段6を駆動し、換気扇21を駆動する(ST2)。
改質手段3が駆動されることにより、水素ガス供給源4から供給される水素ガスが良質の水素ガスに改質され、圧縮手段6に送られる。そして、圧縮手段6が駆動されることにより水素ガスは加圧され、開閉弁7を介して蓄圧装置8へ送られ、高圧に圧縮されて蓄えられる。
【0023】
このようにして水素ガスが蓄圧手段8へ蓄えられ、圧力センサ9の計測信号が一定以上、例えば50MPaになると(ST3)、改質手段3及び圧縮手段6の駆動を停止し、開閉弁7を閉じ、換気扇21の駆動を停止する(ST4)。
このようにして蓄圧手段8内の水素ガスは、一定範囲内、例えば35MPa〜50MPaの間のガス圧に保たれるようになっている。
【0024】
また、換気扇21の駆動により、外気がハウジング5内へ送風され、ハウジング5内の空気が上部の開口29から流出し、危険な水素ガスがハウジング5内に滞留することがなく、安全である。
【0025】
図4は、制御装置18に具備されている充填制御手段27の機能、即ち、自動車へ水素ガスを充填するためのフロー図である。
充填ノズル15をノズル掛け16から外すと、ノズルスイッチ17が閉じ、ノズルスイッチ17のオン信号が制御装置18へ入力する(ST11)。すると表示器19に表示されていた前回の充填量が帰零(リセット)され、換気扇21が駆動される(ST12)。
充填ノズル15を自動車の水素燃料タンクへ接続し、キーボード20のスタートスイッチ22を押すと(ST13)、開閉弁11が開き(ST14)、水素ガスの充填が開始される。
【0026】
蓄圧手段8内の水素ガスは、開閉弁11、流量計12、及び充填ホース14を介して充填ノズル15から自動車の水素燃料タンクへ充填される。
充填量は流量計12で計量され、流量信号を受けた制御装置18は(ST15)、充填量を演算して表示器19に表示する(ST16)。
【0027】
充填中に圧力センサ13の計測信号を受け、ガス圧力が一定値、例えば35MPaとなると(ST17)、制御装置18は充填終了と判断して開閉弁11を閉じる(ST18)。
そして、充填ノズル15を水素ガス燃料タンクから外してノズル掛け16に掛けると、ノズルスイッチ17からオフ信号が制御装置18へ入力し(ST19)、充填データをPOS25へ出力し、換気扇21の駆動を停止し(ST20)、充填作業が終了する。
【0028】
なお、ステップST17で、圧力センサ13で計測されるガス圧が一定値になる前に充填を終了する場合、即ち、所望量の充填が終わった場合又は何らかの理由により充填が危険状態となった場合、充填を強制的に終了するには、キーボード20の停止スイッチ23を押せば(ST21)、開閉弁11が閉じて充填終了となる(ST18)。
また、図3のフロー図で説明したように、蓄圧手段8内は一定の圧力に保たれるようになっているが、圧縮手段6の故障等により、蓄圧手段8内のガス圧が異常値となり、圧力センサ9の計測信号が異常値となると(ST22)、制御手段18は開閉弁11を閉じて充填終了となる(ST18)。しかしながら、ステップST22で異常圧でない場合はステップST15に戻り作業は続けられる。
【0029】
蓄圧手段8内のガス圧の異常としては、例えば、ガス圧が30MPa以下では圧力不足により充填不可となり、ガス圧が55MPa以上では過充填を防止するために充填不可となるものである。
充填作業中は換気扇21が駆動され、ハウジング5内は強制的に換気されるので、水素ガスがハウジング5内に滞留する危険が防止される。
【0030】
なお、キーボード20に設けられている切替スイッチ24は、ガスの充填圧を切替えるものである。例えば、充填される自動車のタンクの能力により、充填圧を35MPa又は70MPaに切替えられるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0031】
小型で安全で安価な高圧ガス充填装置となるので、高圧ガス充填所の開設が促進され、実用化されつつある水素ガス又は天然ガスを燃料とする自動車の普及促進に寄与することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の高圧ガス充填装置の全体を示す模式図。
【図2】高圧ガス充填装置の制御関係を示すブロック図。
【図3】制御装置の蓄圧保持制御手段の動作を説明するフロー図。
【図4】制御装置の充填制御手段の動作を説明するフロー図。
【図5】従来の高圧ガス充填装置の模式図。
【符号の説明】
【0033】
1・・・高圧ガス充填装置
2、10・・・流路管
3・・・改質手段
4・・・ガス供給源
5・・・ハウジング
6・・・圧縮手段
7、11・・・開閉弁
8・・・蓄圧手段
9、13・・・圧力センサ
12・・・流量計
14・・・充填ホース
15・・・充填ノズル
16・・・ノズル掛け
17・・・ノズルスイッチ
18・・・制御装置
19・・・表示器
20・・・キーボード
21・・・換気扇
22・・・スタートスイッチ
23・・・停止スイッチ
24・・・切替スイッチ
25・・・PSO
26・・・蓄圧保持制御手段
27・・・充填制御手段
28・・・屋根
29・・・開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に設けた圧縮手段をハウジング外に設けた改質手段に接続し、圧縮手段を蓄圧手段に接続し、蓄圧手段に接続された流路管に流量計を介装し、ハウジング外へ導出した流路管に充填ホースを接続し、充填ホースの先端に充填ノズルを設け、そして、流量計の流量信号を受けて充填量を演算し、演算した充填量を表示器に表示する制御手段を設けたことを特徴とする高圧ガス充填装置。
【請求項2】
前記蓄圧手段及び流路管に圧力センサを設け、前記制御装置は蓄圧保持制御手段及び充填制御手段を具備し、蓄圧保持制御手段は蓄圧手段に設けた圧力センサの計測信号を受けて、蓄圧手段内のガス圧を一定範囲に保つように圧縮手段を駆動制御し、充填制御手段は流路管に設けた圧力センサの計測信号を受けて、流路管内の圧力が一定値となると充填を終了する請求項1に記載の高圧ガス充填装置。
【請求項3】
前記ハウジングの上部には開口が、ハウジングの中部には換気扇が設けられ、前記制御装置はハウジング内の機器駆動時に換気扇を駆動する請求項1又は2に記載の高圧ガス充填装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−232117(P2007−232117A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−55886(P2006−55886)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ・メカトロニクス (167)
【Fターム(参考)】