説明

高圧処理装置のシリンダ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、食品等の被処理物に高い圧力を加えて密度や特性を変化させるための高圧処理装置に関し、特にそのシリンダに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の高圧処理装置の概要を図1で説明する。機台に固定されたシリンダ1は、上部に上蓋2が、下部にピストン3がそれぞれ嵌装され、これら上蓋およびピストンによりシリンダ内部に処理室5が形成される。上蓋およびピストンは、シリンダ内壁との間を液密に保つためのシールパッキン6を備える。上蓋2には、エアー抜きのための穴7と、それを塞ぐためのプラグ9が設けられる。
【0003】符号10はターンテーブルであり、その上にスクリュージャッキ11を載せ、これで上蓋2を昇降開閉する。符号13は油圧シリンダであり、この中に、ピストン3と一体のラム15を嵌装する。符号16はリング状のヨークフレームであり、油圧シリンダ13の底面と上蓋2の上面を支持する。ヨークフレーム16は図示しない油圧シリンダによって水平方向に移動できる。
【0004】使用するときは、ヨークフレームを図1に鎖線で示すように横に移動させ、上蓋2をジャッキ11によって持ち上げてシリンダ1から抜き取り、ターンテーブルを回して上蓋2をシリンダ1の上から退避させる。こうしておいて、被処理物をかご等に入れて処理室5に収め、処理室を水などの液体で満たす。次いで、ジャッキ11を使って上蓋2をシリンダ1の中にゆっくり嵌入する。このとき、オーバーフロー穴7から空気と余分な液体が外に排出される。上蓋21を嵌装したらプラグ9を閉じ、ヨークフレーム16を実線位置まで移動する。
【0005】こうしてから、油圧シリンダ13の下側ポート13aに油圧を送り、ラム15およびピストン3を上昇させ、これで処理室5内の圧力を高め、被処理物に高圧を掛ける。
【0006】処理後は、油圧シリンダ13の上側ポート13bに油圧を送ってラム15を下降させると、ピストン3も下降して処理室5は減圧する。こうして、ヨークフレーム16を横に移し、上蓋2を外して被処理物を取り出す。
【0007】図1の装置はピストン加圧式とも言うべきもので、処理室の底のピストンを押上げることで処理室の圧力を高めるようになっていたが、シリンダの下部に、ピストンに代えて下蓋を嵌装し、下蓋の内部に形成した流路を通じて処理室に直に高圧の液体を注入するするようにした形式のものもある(高圧液体導入式)。
【0008】いづれの形式の高圧処理装置も、従来市販されているものは、最高圧力が300〜700MPaくらいのものが多いが、このような高い圧力に耐えるようにそのシリンダは鍛造で一体に作られていた。さらに強度を増すために、シリンダの周囲にワイヤを巻き付けたものもある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の高圧処理装置のシリンダは、鍛造で作るため、製造コストが高いものに付いた。また、シリンダが一体で作られているので、シリンダにクラック等の損傷が見つかると、補修は困難であり、そっくり新品と交換する必要があった。この発明は、高圧処理装置のシリンダを安価に提供することを目的とする。また、補修も簡単に行えるようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の高圧処理装置のシリンダは、何段かに積み重ねられる複数のリングプレートと、それらリングプレートの中心穴に嵌装された内筒から構成する。このものでは、内筒の内面に加わる圧力は、リングプレートで周囲から支持されるので、内筒そのものは薄肉のもので足りる。また、一つ一つのリングプレートはシリンダ全体から比べると小さなものなので、製造が簡単であり、安価に作ることができる。リングプレートは必ずしも鍛造で作る必要はなく、鋼板を加工してもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図1の従来装置と同効部材には同一符号を付し、説明を省略する。この高圧処理装置のシリンダ3は図2、図3に示すように、何段にも積み重ねたリングプレート20と、内筒21からなる。
【0012】各リングプレート20は鋼板製で、中心に穴20aがあいており、その中心孔の中に内筒を嵌装する。中心穴20aの周囲にはボルト孔20bがあいており、その中にボルト22を通してリングプレート全体を結束する。
【0013】内筒21は、比較的薄肉に形成され、腐食に強くするため全体をステンレス鋼で作る。内筒21を鋼管で作り、内面にステンレスをライニングしてもよい。
【0014】内筒21に被処理物と液体を入れて上蓋2を被せ、油圧シリンダによりピストン3を押し上げると、内筒21の中の圧力が高まる。内筒21は比較的薄肉にできており、圧力が掛かると外側に膨張しようとするが、内筒21は周囲からリングプレート20で支えられるので、内筒の膨れは抑制され、全体として高い強度を保つことができる。
【0015】このものでは、検査時にリングプレート20にクラック等の損傷が発見されたときは、損傷のあるリングプレートだけを交換することができ、修理に要する時間、費用が節約できる。なお、シリンダの周囲に超音波探傷装置を取り付け、これで、クラックの発生を常時監視するようにすると安全性が増す。
【0016】上記実施例はピストン加圧式であったが、このリングプレートと内筒からなるシリンダは前述の高圧液体導入式のものにも適用できることは言うまでもない。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、高圧処理装置のシリンダを、何段にも積み重ねたリングプレートと、その中心穴に嵌装した内筒で構成したので、安価に製造でき、しかも、クラック等の損傷が生じた場合には、損傷のあるリングプレートだけを交換すればよいので、メンテナンスが容易である。このような効果は、、シリンダが大形になればなるほど、顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の高圧処理装置の縦断面図である
【図2】 この発明の高圧処理装置の要部縦断面図である。
【図3】 シリンダの組立て斜視図である。
【符号の説明】
1 シリンダ
20 リングプレート
20a 中心穴
21 内筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】 何段かに積み重ねられる複数の同一内径を有するリングプレート(20)と、それらリングプレートの中心穴(20a)に嵌装された内筒(21)から構成した高圧処理装置のシリンダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2920121号
【登録日】平成11年(1999)4月23日
【発行日】平成11年(1999)7月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−47094
【出願日】平成9年(1997)2月13日
【公開番号】特開平10−225284
【公開日】平成10年(1998)8月25日
【審査請求日】平成9年(1997)3月14日
【出願人】(393004111)