説明

高圧放電ランプおよび照明装置

【課題】透光性セラミックス放電容器の開口部の溶融封着の前後における電極間距離のずれを低減できる高圧放電ランプおよび照明装置を提供する。
【解決手段】放電空間を包囲する包囲部21aおよびこの包囲部に開口部が形成された透光性セラミックス放電容器21と;この放電容器の開口部から包囲部に向って挿入される一対の挿入部24、これら一対の挿入部の内端にそれぞれ配設されて所定の電極間距離Lを置いて対向配置される一対の電極22a,22bおよび放電容器の開口部に係止されてこの所定の電極間距離を保持する高融点金属製の係止部26を備えてこの開口部に封着される電極マウント13a,13bと;放電容器内に封入された放電媒体と;放電容器の開口部を、前記係止部が溶融可能の温度により加熱して溶融することにより電極マウントの少なくとも係止部を含む一部をこの開口部に封着すると共に、この開口部を封止する封着部23a,23bと;を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプ、これを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプにおいては、電流導入導体を介して上記放電容器を封止するために、種々の態様が提案されている。その中でも最も普及しているのは、ガラスフリットを用いる態様である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、このガラスフリット封着では、ガラスフリットの耐熱性が充分に高くないので、所要のランプ寿命特性を得るためには封止部の温度を所要に抑制しなければならない。そこで、管壁負荷を小さくするために、管壁温度を低下させるので、ハロゲン化物の蒸発が充分に行われなくなり、蒸気圧を高めることができない。その結果、発光効率を所期の程度まで高くすることができない。また、ガラスフリットは、封入放電媒体の一例である発光金属のハロゲン化合物と比較的反応し易いために、発光特性は良好であるが反応性が高いハロゲン化物を用いることができない等の課題がある。
【0004】
そこで、このようなフリットガラスを用いないフリットレス封着が従来から提案され知られている。このフリットレス封着の一例としては、透光性セラミックス放電容器の開口端部内に、電流導入導体の一端部を挿入し、その挿入状態でこの透光性セラミックス放電容器の開口端部を加熱溶融して、この電流導入導体を開口端部に封着すると共に開口端部が封止されるものである(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−196131号公報
【特許文献2】特開2007−115651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されているようなフリットレス封着では、セラミックス放電容器の開口部の加熱溶融前に、直棒状の電流導入導体を開口部の開口内に若干の遊びを持たせた状態で挿入し、その挿入状態でこの開口部を加熱溶融するので、その加熱溶融の際に、電流導入導体の自重により、その挿入位置にずれが発生する場合がある。このために、一対の電流導入導体の内端に配設されて対向配置されている一対の電極の電極間距離と電極軸中心のずれが大きいという課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、透光性セラミックス放電容器の開口部の溶融封着の前後における電極同士のずれを低減できる高圧放電ランプおよび照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る高圧放電ランプは、放電空間を包囲する包囲部およびこの包囲部に開口部が形成された透光性セラミックス放電容器と;この放電容器の開口部から包囲部に向って挿入される一対の挿入部、これら一対の挿入部の内端にそれぞれ配設されて所定の電極間距離を置いて対向配置される一対の電極および放電容器の開口部に係止されてこの所定の電極間距離を保持する高融点金属製の係止部を備えてこの開口部に封着される電流導入導体と;前記放電容器内に封入された放電媒体と;前記放電容器の開口部を、前記係止部が溶融可能の温度により加熱して溶融することにより前記電流導入導体の少なくとも係止部を含む一部をこの開口部に封着すると共に、この開口部を封止する封着部と;を具備していることを特徴とする。
【0009】
本発明は、以下の各態様を含む。
【0010】
〔透光性セラミックス放電容器について〕
透光性セラミックス放電容器は、単結晶の金属酸化物例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えたセラミック材料からなり、内部の放電空間が外部に対して気密に形成される容器である。しかし、上記材料の中でも透光性多結晶アルミナセラミックスは、工業的に量産できて比較的容易に入手できるため、透光性セラミックス放電容器の構成材料として好適である。
【0011】
本発明は、電流導入導体を加熱し、その伝熱により透光性セラミックス放電容器の開口部を間接的に加熱し溶融させて電流導入導体に溶着させることにより封着できることを発明者が新たに見出した。本発明は、この新たな知見に基づいてなされたものである。
【0012】
なお、透光性セラミックス放電容器における透光性とは、その内部の放電によって発生した光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明ばかりでなく、光拡散性であってもよい。そして、少なくとも放電空間を包囲する部分の主要部が透光性を備えていればよく、要すれば上記主要部以外の付帯的構造を備えているときには、当該部分は遮光性であってもよい。
【0013】
透光性セラミックス放電容器は、放電空間を包囲するために、包囲部を備えている。包囲部の内部、すなわち放電空間が適当な形状、例えば球状、楕円球状、ほぼ円柱状などの形状をなしていることを許容する。放電空間の容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力、電極間距離などに応じてさまざまな値が選択され得る。例えば、液晶プロジェクタ用ランプの場合、0.5cc以下にすることができる。自動車前照灯用ランプの場合、0.05cc以下にすることができる。また、一般照明用ランプの場合、定格ランプ電力に応じて1cc以上および以下のいずれにすることもできる。
【0014】
また、透光性セラミックス放電容器は、包囲部に連通する開口部を備えている。開口部は、少なくとも後述する電流導入導体をそこに挿入し、かつ、電流導入導体を開口部に封着することによって透光性セラミックス放電容器を封止するために機能する。また、後述する放電媒体を透光性セラミックス放電容器すなわち包囲部の内部へ封入するためにも機能させることができる。
【0015】
開口部の数は、一般的な一対の電極を封装する構成のためには2つであるが、配設する電流導入導体の数に応じて1つないし3つ以上の複数であることを許容する。一対の電極を封装するために2つの開口部を配設する場合、各開口部は、それぞれ離間した位置に配設されるが、好適には管軸に沿って同心状に離間対向している。
【0016】
開口部は、透光性セラミックス放電容器を形成したときに別体をなしているが、電流導入導体と一緒に封止後には、開口部として一体化される筒状の中間部材を付加的に用いることができる。すなわち、透光性セラミックス放電容器を形成したときに一体的に形成されている開口部の部分と電流導入導体とが直接融着して封止が形成されるだけでなく、透光性セラミックス放電容器と一体の開口部と電流導入導体との間にセラミックス製などの筒状の中間部材を介在させることができる。この中間部材は、筒状に固形化された状態または粉体状態などであることが許容される。中間部材は、開口部と電流導入導体とに融着してこれらの間を良好に封止する。
【0017】
また、開口部を包囲部に連続して形成してもよく、包囲部に連続する小径筒部を付帯的に形成し、この小径筒部の包囲部と反対側の端部に開口を形成するのであってもよい。後者の場合、小径筒部の長さは自由である。なお、開口部のセラミックスは遮光性であってもよい。
【0018】
小径筒部は、従来フリットガラスを用いて透光性セラミック放電容器を封止する場合に採用されているいわゆるキャピラリー構造を形成するために採用されている構造であるが、本発明においても、所望によりキャピラリー構造を形成するように小径筒部を形成することが許容される。しかし、キャピラリー構造を形成しない場合であっても、短寸の筒部を開口部に形成することにより、開口部の封止が確実になる。上記のいずれの構成であっても、開口部の大きさは、電流導入導体を挿入し、かつ、開口部の透光性セラミックス放電容器が溶融することによって、溶融した透光性セラミックスが導入導体に溶着することができるような大きさおよび形状に形成されている。封着部の管軸方向の長さは、約1〜7mm程度、好適には1.5〜4mmであることを許容する。
【0019】
透光性セラミック放電容器を封止するために、開口部のセラミックスを溶融させる手段は、特段限定されない。例えば、開口部のセラミックスを加熱して、その溶融温度以上および後述する電流導入導体の高融点金属製の係止部の融点以上の温度に上昇させれば、放電容器のセラミックスが溶融し、開口部に挿入されている電流導入導体の表面を濡らして馴染ませることができる。また、このとき、電流導入導体の係止部も溶融して開口部の封着部に融着される。この後、加熱を止めて馴染んだ個所を冷却すれば、放電容器のセラミックスが冷却固化して、電流導入導体が開口部に封着され、かつ、開口部が封止される。開口部のセラミックスを加熱する手段は特段限定されない。例えば、レーザーや反射鏡付ハロゲン電球などの熱線投射形の局部加熱手段、誘導加熱手段および電気ヒータなどを用いることができる。なお、レーザーとしては、例えばYAGレーザー、COレーザーなどを用いることができる。
【0020】
熱線輻射形の上記局部加熱手段を用いて開口部の全周を加熱する場合、局部加熱手段を開口部に対して所定の離間位置、例えば開口部の側方に固定し、局部加熱手段を作動させながら透光性セラミック放電容器の開口部および局部加熱手段のいずれか一方または双方を回転させれば、開口部の全周を均一に加熱することができる。しかし、所望により、開口部の延在方向、例えば管軸方向からレーザーを照射したり、固定的に配置された開口部の周囲に複数の局部加熱手段を配置したり、局部加熱手段を開口部の周囲に回転させたり、あるいは開口部の全周を包囲する加熱手段を配設したりすれば、透光性セラミック放電容器を静止状態で加熱することもできる。
【0021】
さらに、上記レーザ等により電流導入導体を加熱し、その加熱の輻射熱により、この電流導入導体とその係止部に接触し、または間隙を置いて近接するセラミックス放電容器の開口部を間接的に加熱し溶融させてもよい。
【0022】
また、透光性セラミックス放電容器を製作する場合には、包囲部を一体的に成形して形成してもよいし、複数の構成部材を接合させたり、嵌合させたりして形成してもよい。例えば、包囲部の他に小径の筒部などの付帯的構造を備えている場合、包囲部の両端または一端に付帯的構造を最初から一体に成形することができる。しかし、例えば包囲部と、付帯的構造とを、それぞれ別に仮焼結してから所要に接合させて、全体を焼結することにより、一体の透光性セラミックス放電容器を形成することもできる。また、筒状部分と端板部分とをそれぞれ別に仮焼結してから接合して、全体を焼結することにより、一体化された包囲部を形成することもできる。
【0023】
〔電流導入導体について〕
電流導入導体は、後述する電極に電圧を印加して、電極に電流を供給し、かつ、透光性セラミックス放電容器を封止するために機能する導体である。そのために、透光性セラミックス放電容器の開口部の内部に挿入されている内端側の部分が電極に接続し、外端側が透光性セラミックス放電容器の外部に延出露出している。なお、透光性セラミックス放電容器の外部に露出しているとは、透光性セラミックス放電容器から外部へ突出していてもよいし、また突出していなくてもよいが、外部から給電できる程度に外部に臨んでいればよい。
【0024】
また、電流導入導体は、封着性金属、すなわちその熱膨張係数が透光性セラミックス放電容器を構成している透光性セラミックスのものと近似している導電性金属であるニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)などの金属やサーメットなどを用いることができる。また、透光性セラミックス放電容器の材料にアルミナセラミックスなどのアルミニウム酸化物を用いる場合、ニオブおよびタンタルは、平均熱膨張係数がアルミニウム酸化物とほぼ同一であり、またモリブデンはその平均熱膨張係数が上記酸化物のそれと接近しているから、封止に好適である。イットリウム酸化物およびYAGの場合も差が少ない。窒化アルミニウムを透光性セラミックス放電容器に用いる場合には、電流導入導体にジルコニウムを用いるとよい。また、電流導入導体を複数の材料部分を接合して形成することもできる。例えば、一部を上記のグループから選択した金属の部分とし、この金属部分にサーメットを管軸方向に接合したり、管軸と直交する周方向に接合したりした構成とすることができる。そして、電流導入導体の少なくとも一部にモリブデン(Mo)の部分とニオブ(Nb)の部分とを設ける場合、これらモリブデンとニオブの部分で透光性セラミックス放電容器の開口部と電流導入導体との間の封着を行うことができる。例えば、これらモリブデン部とニオブ部とをレーザ等により加熱すると、これらモリブデン部とニオブ部が昇温し、この熱が透光性セラミックス放電容器の開口部に伝熱されることで封着予定部が溶融し、モリブデンデン部とニオブ部に融着する。これにより封着部と封止部が共に形成される。
【0025】
電流導入導体の係止部は、Nb,Mo,Ta等の高融点金属から形成されている。例えば、高融点金属製の細線を電流導入導体本体に直交させて溶融等により固着することで形成することができる。この細線の長さは溶融前の開口部外端に係止される長さに形成され、この開口部の封着部形成後はこの封着部に融着される。
【0026】
〔電極について〕
電極は、透光性セラミックス放電容器の内部に後述する放電媒体の放電を生起させる手段である。電極は、一般的にその一対が透光性セラミックス放電容器の内部において電極間でアーク放電が生起されるように離間対向して配設される。なお、本発明においては、少なくとも1個の電極が上記導入導体に接続して透光性セラミックス放電容器内に封装されている。
【0027】
また、電極は、電流導入導体に接続され、その係止部により透光性セラミックス放電容器内の所定位置に保持されている。例えば、電極の基端が電流導入導体の透光性セラミックス放電容器の内部側に位置する内端部に接続される。
【0028】
さらに、電極の材料としては、タングステン、ドープドタングステン、トリエーテッドタングステン、レニウムまたはタングステン−レニウム合金などを用いることができる。
【0029】
さらにまた、一対の電極を用いる場合、交流点灯形の場合にはそれらを対称構造とするが、直流点灯形の場合には、非対称構造にすることができる。
【0030】
〔放電媒体について〕
放電媒体は、その放電により所望の発光を得るための手段であるが、本発明においては、その構成が特段限定されない。例えば、下記に列挙する態様であることを許容する。しかし、好ましくは発光金属のハロゲン化物、ランプ電圧形成媒体および希ガスにより構成される。なお、本発明において、「高圧放電」とは、イオン化媒体の点灯中の圧力が大気圧以上になる放電をいい、いわゆる超高圧放電を含む概念である。
【0031】
発光金属のハロゲン化物は、主として可視光を発光する発光金属のハロゲン化物であり、既知の各種金属ハロゲン化物を採用することができる。すなわち、発光金属の金属ハロゲン化物は、発光色、平均演色評価数Raおよび発光効率などについて所望の発光特性を備えた可視光の放射を得るため、さらには透光性セラミックス放電容器のサイズおよび入力電力に応じて、既知の金属ハロゲン化物の中から任意所望に選択することができる。例えば、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、希土類金属(ジスプロシウム(Dy)、ツリウム(Tm)、ホルミウム(Ho)、プラセオジム(Pr)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)など)、タリウム(Tl)、インジウム(In)およびリチウム(Li)からなるグループの中から選択された一種または複数種のハロゲン化物を用いることができる。
【0032】
ランプ電圧形成媒体は、ランプ電圧を形成するのに効果的な媒体であり、例えば水銀または下記の金属のハロゲン化物を用いることができる。すなわち、ランプ電圧形成媒体としてのハロゲン化物は、点灯中の蒸気圧が相対的に大きくて、かつ、可視域の発光量が上記発光金属による可視域の発光量に比較して少ない金属、例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)などのハロゲン化物が好適である。発光金属のハロゲン化物は、ハロゲンとしてよう素、臭素、塩素またはフッ素のいずれか一種または複数種を用いることができる。
【0033】
そして、請求項2記載の高圧放電ランプは、前記電流導入導体は、前記係止部を前記放電容器の開口部の内径よりも大径の突部により形成されていることを特徴とする。
【0034】
電流導入導体の係止部は、溶融前の放電容器の開口部に係止し得る大きさに形成され、開口部に係止されることにより電流導入導体の内端に形成された電極を所定の位置に支持し、開口部の溶融後も電極の位置ずれを低減できる。
【0035】
請求項3記載の高圧放電ランプは、前記電流導入導体は、前記開口部の封着部予定部内面に接触する高融点金属製の接触部を設けていることを特徴とする。
【0036】
接触部は、係止部と同様、Nb,Mo,Ta等の高融点金属により形成されているので、放電容器の開口部の加熱溶融時に、係止部と共に加熱溶融されるものであり、係止部と一体に形成されてもよい。接触部は開口部の内面に接触しているので、この開口部と電流導入導体との接触面積の増大を図ることができる。このために、開口部と電流導入導体との伝熱面積の増大を図ることができるので、これら一方の加熱を他方に迅速かつ高効率に伝熱することができる。このために、開口部の封着部の形成時間を短くすることができる。また、電流導入導体の接触部が放電容器開口部の内面に接触しているので、この部分でヒートショックが発生し、この開口部にクラックが発生し易い。さらに、このクラックは電流導入導体側に倒れ込み溶着するので、封着部が形成され易くなる。
【0037】
また、この接触部により、各開口部にそれぞれ挿入されて、対向配置される一対の電流導入導体の中心軸同士を一致させる芯合せを容易に行うことができる。このために、一対の電流導入導体の内端にそれぞれ形成される一対の電極同士の芯合せを容易に保持できると共に、封着部形成後の当該芯合せのずれも低減できる。
【0038】
請求項4記載の照明装置は、照明装置本体と;この照明装置本体に配設された請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;この高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
請求項1に係る高圧放電ランプによれば、放電容器の開口部の加熱溶融により封着部が形成される際には、この開口部内に挿入されている電流導入導体も自重により変位しようとするが、この電流導入導体は係止部により開口部に係止されているので、電流導入導体の変位、すなわち位置ずれは低減される。
【0040】
このために、この一対の電流導入導体の内端にそれぞれ形成されて対向する一対の電極同士のずれも低減できる。
【0041】
請求項2に係る高圧放電ランプによれば、電流導入導体の係止部が放電容器開口部の内径よりも大径であるので、この係止部を開口部外端上に置くだけで、簡単かつ確実に係止させることができる。
【0042】
請求項3に係る高圧放電ランプによれば、電流導入導体の接触部により開口部の加熱溶融による封着部の形成時間の短縮と、一対の電極の軸中心のずれの低減とを共に図ることができる。
【0043】
請求項4に係る照明装置によれば、請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプを具備しているので、照明装置としての寿命も長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図2で示す本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプに組み付けられる発光管の縦断面図。
【図2】図1で示す発光管を具備した高圧放電ランプの全体を示す正面図。
【図3】(a),(b),(c)は図1で示す電極マウントの形成工程をそれぞれ示す工程図。
【図4】(a)は図3の(c)で示す電極マウントの側断面図、(b)は同,平面図、(c)は他の変形例の電極マウントの平面図。
【図5】(a)は図3(c)で示す電極マウントの挿入部を透光性セラミックス放電容器の開口部内に挿入し、その係止突部を当該開口部の外端上に載置した状態を示す要部縦断面図、(b)は同,開口部の封着部形成後の要部縦断面図。
【図6】(a)は本発明の第1の変形例に係る電極マウントの縦断面図、(b)は同(a)で示す電極マウントの挿入部を透光性セラミックス放電容器の開口部内に挿入し、その係止突部を当該開口部の外端上に載置した状態を示す要部縦断面図、(c)は同,開口部の封着部形成後の要部縦断面図。
【図7】図6(a)で示す電極マウントの製造方法の一例を示す工程図であって、(a)は同,電極マウントの加工前の工程図、(b)は同,電極マウントの第2突部(接触部)を形成する工程図、(c)は同第1突部を形成する工程図。
【図8】(a)は図6(a)で示す電極マウントの正面図、(b)は同(a)で示す第1,第2突部の平断面をそれぞれ示す図。
【図9】(a)は本発明の第2の変形例に示す電極マウントの正面図、(b)は同(a)で示す電極マウントの挿入部を透光性セラミックス放電容器の開口部内に挿入し、その係止突部を当該開口部の外端上に載置した状態を示す要部縦断面図、(c)は同,開口部の封着部形成後の要部縦断面図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る照明装置の概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、複数の添付図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0046】
図1は、図2で示す本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプに組み付けられる発光管の縦断面図、図2は当該高圧放電ランプの全体を示す正面図、図3(a)〜(c)は図1で示す発光管の電極マウントの製造方法の一例を示す工程図である。
【0047】
図2に示すように高圧放電ランプ1は、定格ランプ電力100W用として好適な構造であって、発光管2を具備している。発光管2は外管3内に封入されている。
【0048】
外管3は、硬質ガラスからなるT形バルブ状をなしていて、そのネック部にフレアステム4を封着して備えている。フレアステム4は、一対の導入線4a,4bを気密に導入している。外管3は、その内部の所定位置に発光管2を後述する支持構体5a,5bにより支持して収納している。
【0049】
UVエンハンサ6は、気密容器、導入線、内部電極、放電媒体および外部電極を具備して構成されている。気密容器は、石英ガラスなどの紫外線透過性ガラス製で、その一端部にピンチシール部が形成されていることにより、内部に細長い放電空間が形成されている。導入線は、先端が後述する内部電極に溶接し、ピンチシール部から外部へ導出され、基端部の部分で図1に示すように、一方の支持枠7aに溶接されている。
【0050】
上記内部電極は、モリブデン製の板状をなしていて、気密容器の放電空間内に封装されており、その基部がピンチシール部内に気密に埋設されている。外部電極は、外径0.4mmのモリブデン線からなり、気密容器の外周に密着して5ターン巻き付けられているとともに、その基端部が支持構体8bに溶接されている。こうして、UVエンハンサ6は、その導入線の基端部および外部電極の基端部により、外管3内の所定の位置に配置されている。以上説明した構造により、UVエンハンサ6は、外管3内において発光管2と並列に接続されているとともに、発光管2の一方の電極に接近した位置に保持されている。
【0051】
シュラウドガラス9は、肉厚1.0mmで外管3内に収納可能な外径の円筒状石英ガラス体からなり、外管3内において発光管2を包囲する位置に後述する支持部材45aによって保持されている。
【0052】
一方の支持構体5aは、支持枠7a,7b、ブリッジ導体11、一対のスプリング片12a,12bおよび支持部材10からなる。支持枠7a,7bは、図1において下端が一方の導入線4aに接続し、上端が延長されてスプリング片12aを形成している。ブリッジ導体11は、発光管2の図2中、上側の電流導入導体(導電体)13aに溶接されることによって発光管2の上部を支持している。一対のスプリング片12a,12bは、外管3の内面に弾力的に当接して、一対の支持枠7a,7bの上部を外管3の内面に対して横揺れを防止している。支持部材10aは、シュラウドガラス3の上下両端を支持している。
【0053】
一方の支持構体5bは、直棒状をなしていて、その下部がフレアステム4に封着されている導入線4bに溶接されることによって電気的に接続し、かつ、機械的に支持されている。そして、上端部が発光管2の図2中、下側の電流導入導体(導電体)13bに接続導体を介して溶接されて、発光管2の下部を支持している。
【0054】
口金14は、E39形口金であり、外管3のネック部に固着され、外管3から外部へ露出した図示しない一対の導入線の一方がシェル部に、他方がセンターコンタクトに、それぞれ接続している。なお、図2において、符号Gはゲッタであり、外管3内の不純ガスを吸収して清浄化するもので、支持枠42aの上部に溶接されている。
【0055】
そして、図1に示すように発光管2は、透光性セラミックス放電容器の一例である放電容器21、一対の電極22a,22b、一対の電流導入導体の一例である電極マウント13a,13bおよび放電容器21の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0056】
放電容器21は、アルミナセラミックスを主成分とし、焼結助剤を含むものであって、透光性を有する。放電容器21は、例えば楕円球状の包囲部21aおよびこの包囲部21aの長径方向両端に連通して配設された一対の小径筒部21b,21cを備えている。これら小径筒部21b,21cおよび包囲部21aは、鋳込み成形により一体に形成され、一対の小径筒部21b,21cの軸方向両端は、一対の電極マウント13a,13bを挿入させる開口部として開口されている。
【0057】
包囲部21aは、例えば2つの楕円球の半球体が、互いに向かい合うように軸方向に離間した状態で、半球状の部分の間を直線で結んで形成されてほぼ楕円球形の形状をなしていており、肉厚が0.8mmである。
【0058】
一対の小径筒部21b,21cは、それぞれ内径約1mmのパイプ状をなし、先端が対応する包囲部21aの半球状部分の中央部に一体的に接続されている。なお、包囲部21aおよび小径筒部21b,21cの境界部は、その内外両面が曲面によって形成されている。
【0059】
電極22a,22bは、それぞれ外径0.5mmの所要長のタングステン棒からなる細長い直棒状に形成され、ほぼ同径棒状の一対の電極マウント13a,13bの各内端部として同心状に一体に連結されている。
【0060】
すなわち、図3(a)〜(c)に示すように各電極マウント13a,13bは、その内端(図3では下端)の各電極22a,22bから外端(図3では上端)に向けて、モリブデンMoにより直棒状に形成されたモリブデン部13cと、サーメット13d、ニオブNbにより同径直棒状に形成されたニオブ部13eとをこの順に順次直線状に溶接して一体に連結しており、さらに、各モリブデン(Mo)部13cの先端に電極22a,22bを溶接等により、それぞれ同心状に一体に連結することにより、図3(a)で示す電極軸13を形成している。サーメットSはアルミナとモリブデンの混合物よりなり、体積比率が30〜70%のものを利用できるが50%(50:50)が好適である。
【0061】
そして、図3(b)に示すようにこの電極軸13のニオブ部13eの所定位置の径方向一側面に、例えば1本の高融点金属(例えば、ニオブNb、モリブデンMo、タンタルTa)からなる係止用細棒26aを直交するように十字状に位置決めし、図3(c)、図4(a)、図4(b)に示すように十字状に溶接により固着している。各係止用細棒26aは、電極軸13の外径に対して例えば30〜100%の外径に形成され、各小径筒部21b,21cの開口端内径よりも十分に長い円柱や角柱に形成されており、係止用細棒26aの2本を電極軸13の所定位置で径方向両側面に溶接により固着してもよい。また、図4(c)に示すように電極軸13はサーメット13dを省略し、モリブデン部13cを延伸させてもよい。
【0062】
このように形成された電極マウント13a,13bは、その電極22a,22b側の先端から一対の小径筒部21b,21c内に、その開口外端から同心状に挿入される挿入部24と、各ニオブ部13e側の基端部が小径筒部21b,21cの封着部23a,23bから外部へ気密に突き出す外端部25と、各封着部23a,23bの外端側において各電極マウント13a,13bのニオブ部13eに溶着される係止部26,26を具備している。これら電極マウント13a,13bの各挿入部24の外周面と、小径筒部21b,21cの内周面との間には所定の微少間隙gがそれぞれ形成されている。各係止部26は電極マウント13a,13bの係止用細棒26aの加熱溶融後に形成され、係止部26の内端部は、封着部23a,23bの外端部に一体に融着し、係止部26の外端部は、電極マウント13a,13bの外端部に封着される。
【0063】
放電媒体は、始動ガスおよびバッファガスとしてアルゴン(Ar)、下記のハロゲン化金属、ならびにバッファ蒸気としての水銀からなり、透光性セラミックスの放電容器21内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されているので、その一部が安定点灯時に小径筒部21b,21c内に形成されるわずかな隙間内に液相状態で滞留している。そして、図2中、点灯中下側となる例えば小径筒部13b内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。
【0064】
そして、一対の封着部23a,23bは、アルミナセラミックス製の一対の小径筒部21b,21cの軸方向外端部である開口部の局所的な加熱溶融と、その加熱後の冷却固化とにより形成され、その開口部を、その内部に各電極マウント13a,13bの挿入部24をそれぞれ挿入させた状態で気密に封止している。
【0065】
すなわち、図5(a)に示すように、まず、一対の小径筒部21b,21cの開口端内へ、一対の各電極マウント13a,13bの各挿入部24,24を、その先端の電極22a,22b側から同心状に挿入し、係止用細棒26aを各小径筒部21b,21cの開口端外面に係止させる。これにより、包囲部21a内で一対の電極22a,22b同士が同心状に対向するので、その対向間隔を所定の電極間距離Lに設定して所要の治具により保持する。
【0066】
次に、この状態で、各小径筒部21b,21cの所定の封着予定部の外面に、例えばその周方向を3等分する角度、すなわち120°等間隔を置いた3方向(図5(a)中矢印で示す方向)から例えば波長が1μmのYAGレーザ等所要のレーザ光を所要の出力で垂直方向に照射する。波長が1μmのレーザによれば金属である電極マウント13a,13bによるレーザ光反射を抑制できる。
【0067】
すると、このレーザ光は、小径筒部21b,21cの開口端部アルミナを透過して、電極マウント13a,13bの金属のニオブ部13eと係止用細棒26aで吸収され、ここで加熱され、係止用細棒26aが溶融する。
【0068】
さらに、このニオブ部13eと係止用細棒26aの加熱の輻射熱によりアルミナセラミックス製の小径筒部21b,21cの開口端部が間接的に加熱され溶融する。これにより、この溶融したアルミナセラミックスが電極マウント13a,13bのニオブ部13eとその周辺部に融着して封着されると共に、小径筒部21b,21cの開口部が気密に封止される。
【0069】
ところで、各小径筒部21b,21c開口端部の局所的な溶融状態から冷却固化して封着部23a,23bが形成されるまでの間にクラックCや大きな空孔が生じるのを回避するために、アルミナの小径筒部21b,21cが局所的に溶融するときのレーザ出力を100%とすると、その溶融するまでは、熱衝撃によるクラックCが生じない出力から徐々に出力を上げて行き、100%の出力に達したときに、その100%出力を数秒間維持し、その後に一定時間内に徐々に0%まで出力を落とす方法を取る方が、より少ない出力で制御が可能となる。また、レーザ光照射時に、レーザ光の焦点を上記のサーメット部13dに対向する小径筒部21b,21cの最表面から、後方に例えば5〜10mmずらすことで、加熱が一点に集中することを抑えることができ、急加熱に伴うクラックCの発生を抑制することができる。これにより、ランプ点灯時のヒートショックによる破損,リークを防止または低減できる。
【0070】
但し、小径筒部21b,21cの加熱時のヒートショックによりクラックCが発生した場合は、そのクラックCにより割れた開口端部が電極マウント13a,13b側に倒壊して熱伝熱面積が増大するので、溶融し易くなり、封着部23a,23bを迅速に形成できる。
【0071】
したがって、この発光管2によれば、放電容器2の各小径筒部21b,21cの開口部の加熱溶融により封着部23a,23bが形成される際には、この開口部内に挿入されている電極マウント13a,13bも自重により変位しようとするが、この電極マウント13a,13bは、その係止用細棒26aにより開口部に係止されているので、この電極マウント13a,13bの変位、すなわち位置ずれは低減される。この電極マウント13a,13bの位置ずれ低減効果は、係止用細棒26aの体積が大きいために、封着部23a,23bの溶融時の粘度により変位が減少することに起因する。
【0072】
このために、一対の電極マウント13a,13bの内端にそれぞれ形成されて対向する一対の電極22a,22b同士の電極間距離Lのずれも低減できる。
【0073】
図6(a)は本発明の第2の変形例に係る一対の電極マウント13x,13xの縦断面図である。この電極マウント13x,13xは、上記図1,図3(a)〜(c)、図4(a)〜(c)で示す電極マウント13a,13bにおいて、その係止用細棒26aを、係止用の第1突起部26bおよび第2突起部26cに置換した点に特徴があり、これ以外は、一対の電極マウント13a,13bと同一の構成である。
【0074】
すなわち、図6(a)に示すように電極マウント13xは、電極軸13のニオブ部13eの図中軸方向中間部に、第1突起部26bを係止部として一体に形成し、その若干下方にて第1突起部26bよりも突起が小さい第2突起部26cを接触部の一例として一体に形成している。
【0075】
第1突起部26bは、縦断面がほぼ直角三角形の複数の突出部26baを周方向複数等分位置(3方向)から外方へ突出するように一体に突設しており、これらの下面が図6(b)に示すように放電容器21の小径筒部21b,21cの開口端外面に着座して、その開口端に係止される形状と大きさに形成されている。
【0076】
一方、第2突起部26cは、図6(b)に示すように、縦断面がほぼ山形の複数の突起26caを、ニオブ部13eの周方向から外方へ突出して、その突出先端が小径筒部21b,21cの内面にそれぞれ接触するように形成されている。
【0077】
図7(a)〜(c)はこの電極マウント13xの加工方法の一例を示している。この電極マウント13xは、上記第1の実施形態に係る電極マウント13a,13bの電極軸13とほぼ同様に、図中下端から上端へ向けて電極22a,22b、モリブデン部13c、サーメット13d、ニオブ部13eをこの順に順次形成し、ニオブ部13eのみを他の部分より若干大径に形成している。
【0078】
そして、図7(a)に示すように、まず、第2突起部26cを形成する予定の部分に、そのニオブ部13eの例えば周方向3等分位置の側面へ、その外側方から複数のカッター27,27の先端を当てて、所要深さ挿入させる。次に、図3(b)に示すように、電極軸13とカッター27,27を軸方向に相対的に移動させて、第2突起部26cを形成する。
【0079】
次に、図7(c)に示すように、これとほぼ同様の方法により第1突起部26bを形成するが、第2突起部26cを形成する場合のカッター27,27と電極軸13の相対的な軸方向移動量を大きくすることにより、第1突起部26bの突出量を第2突起部26cのものよりも大きくすることができる。このように、第1,第2突起部26b,26cは、ニオブ部13eの切り起しにより形成されるので、高融点金属により形成されていることになる。
【0080】
なお、図8(a)は上記電極マウント13xの正面図、(b)は同図(a)のA部とB部の横断面をそれぞれ示す。
【0081】
そして、このように構成された電極マウント13xは、その挿入部24が図6(b)に示すように小径筒部21b,21c内へ、その開口端から挿入されると、第2突起部26cの突出先端が小径筒部21b,21cの内面に接触部として接触する一方、第1突起部26bの図中下面が小径筒部21b,21cの開口端外面に着座して係止される。
【0082】
次に、上記第1の実施形態と同様に、小径筒部21b,21cの開口端部外面に、その垂直方向の3方向からYAGレーザ等のレーザ光を照射すると、第1,第2突起部26b,26cとその周辺部のニオブ部13eが加熱され、その輻射熱により小径筒部21b,21cの開口端部が加熱溶融され、図6(c)に示すように封着部23a,23bが形成される。この封着部23a,23b内には第1,第2突起部26b,26cのほぼ全体または少なくとも一部が係止部26として埋設される。
【0083】
このために、この電極マウント13xによれば、上記電極マウント13a,13bとほぼ同様の作用効果を奏する上に、電極マウント13xの第1突起部26bが小径筒部21b,21cの開口部内径よりも大径であるので、この第1突起部26bを当該開口部外端上に単に置くだけで簡単かつ確実に係止させることができる。このために、実用性が高い。また、接触部の一例である第2突起部26cの先端が小径筒部21b,21cの内面に接触しているので、この小径筒部21b,21cの開口端部の加熱時のヒートショックによりクラックCが形成される。このために、封着部23a,23bを簡単迅速に形成することができる。
【0084】
図9(a)は本発明の第2の変形例に係る電極マウント13yの正面図、(b)は同電極マウント13yの縦断面を示すと共に、この電極マウント13yを小径筒部21b,21c内に挿入した状態を示す。
【0085】
図9(b)に示すように、この電極マウント13yは係止部26を複数本の屈曲棒26d,26d,26dにより構成すると共に、電極軸13を、図4(c)で示すようにサーメット13dを削除し、その削除跡にニオブ部13eを形成することにより、構成した点に主な特徴を有する。
【0086】
すなわち、ニオブ部13eとモリブデン部13cとの境界部の外周面に、これら両者13c,13e間に跨るように複数の屈曲棒26d,26d,26dを溶接により固着している。
【0087】
各屈曲棒26d,26d,26dは、高融点金属(Nb,Mo,Ta)製で所要径の直状の丸棒または角棒の軸方向中間部を構U字状に突出する突出部26daをそれぞれ一体に屈曲形成しており、ニオブ部13eの外周面の周方向複数等分位置(例えば3方向)に溶接により固着されている。
【0088】
したがって、図9(b)に示すように、この電極マウント13yは、その挿入部24が一対の小径筒部21b,21c内へ、その開口端から挿入されると、各屈曲棒26dの下端部26db外面が、小径筒部21b,21cの内面に接触部として接触する一方、各突出部26daが小径筒部21b,21cの開口端外面に係止部26として着座して係止される。
【0089】
次に、上記第1,第2の変形例と同様に、小径筒部21b,21cの開口端部外面に、その垂直方向の3方向からYAGレーザ等のレーザ光を照射すると、複数本の屈曲棒26d,26d,26dとその周辺部のニオブ部13eが加熱され、その輻射熱により小径筒部21b,21cの開口端部が加熱溶融され、図9(c)に示すように封着部23a,23bが形成される。この封着部23a,23b内には複数本の屈曲棒26d,26d,26dのほぼ全体または少なくとも一部が係止部26として埋設される。
【0090】
このために、この電極マウント13yによれば、上記電極マウント13a,13b,13xとほぼ同様の作用効果を奏する上に、電極マウント13yの各屈曲棒26dの接触部26dbにより小径筒部21b,21cの開口部の加熱溶融時に発生するクラックCにより封着部23a,23bの形成時間の短縮と、一対の電極22a,22bの芯合せのずれの低減とを共に図ることができる。
【0091】
また、各屈曲棒26dの接触部26dbの外面が小径筒部21b,21cの内周面に接触しているので、各屈曲棒26dのレーザ光照射による加熱時に、この接触部26dbの加熱が小径筒部21b,21cに高効率で伝熱される。また、その加熱時のヒートショックによりクラックCが発生する。このために、小径筒部21b,21cに形成される封着部23a,23bの形成時間を短くすることができる。
【0092】
図10は本発明の第2の実施形態に係る照明装置31の概略側面図である。この照明装置31は、天井32に埋設される埋込形照明装置であり、天井32側に取り付けられる器具(装置)本体33を有する。この器具(装置)本体33内にはソケット34が設けられ、このソケット34には図2で示す前記高圧放電ランプ1の口金14が装着される。また、この器具(装置)本体33内には高圧放電ランプ1の放射光を図8中下方へ反射させる反射鏡35が配設され、この反射鏡35の開口側を覆ってガラスなどからなるカバー部材やレンズ等からなる制光体36が配設されている。
【0093】
そして、この高圧放電ランプ1は、器具(装置)本体33またはこの本体33やあるいはこの本体33とは別置された安定器などを有する図示しない点灯装置と電気的に接続され、この点灯装置からの給電により点灯することができる。
【0094】
また、照明装置はこの実施の形態に限らず、他の構造や用途をなすものであってもよく、点灯方式も矩形波点灯回路装置を用いるものに限らず、チョークコイル式やトランス式などの磁気式の安定器を用いるものであってもよい。なお、上記実施形態に係る発光管2,2Aでは、一対の電極マウント13a,13b,13yの電極軸13をその全長に亘ってほぼ同径の棒状に形成し、この電極軸13のニオブ部13eに係止部26を突設した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば一対の封着部23a,23bより外方へ延在するニオブ部13eの外端部に、小径筒部21b,21cの開口径よりも大径の係止部を形成してもよい。これによれば、各電極マウント13a,13b,13yの位置決め精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…高圧放電ランプ、2…発光管、13a,13b…一対の電極マウント(電流導入導体)、21…放電容器(透光性セラミックス放電容器)、21b,21c…一対の小径筒部(開口部)、22a,22b…一対の電極、23a,23b…一対の封着部、24…電極マウント値の挿入部、26…係止部、26a…係止用細棒、26b…第1突起部、26c…第2突起部(接触部)、26d…屈曲棒、26db…屈曲棒の挿入部(接触部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を包囲する包囲部およびこの包囲部に開口部が形成された透光性セラミックス放電容器と;
この放電容器の開口部から包囲部に向って挿入される一対の挿入部、これら一対の挿入部の内端にそれぞれ配設されて所定の電極間距離を置いて対向配置される一対の電極および放電容器の開口部に係止されてこの所定の電極間距離を保持する高融点金属製の係止部を備えてこの開口部に封着される電流導入導体と;
前記放電容器内に封入された放電媒体と;
前記放電容器の開口部を、前記係止部が溶融可能の温度により加熱して溶融することにより前記電流導入導体の少なくとも係止部を含む一部をこの開口部に封着すると共に、この開口部を封止する封着部と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記電流導入導体は、前記係止部を前記放電容器の開口部の内径よりも大径の突部により形成されていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記電流導入導体は、前記開口部の封着部予定部内面に接触する高融点金属製の接触部を設けていることを特徴とする請求項2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
照明装置本体と;
この照明装置本体に配設された請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
この高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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