説明

高圧放電ランプの製造方法

【課題】外管の外周面に遮光膜を高い信頼性で、容易かつ効率よく形成可能な高圧放電ランプの製造方法を提供する。
【解決手段】高圧放電ランプの製造方法は、外管の外周面に広幅遮光部及び狭幅遮光部からなる遮光膜を形成する方法であって、前記外管の外周面の広幅遮光部または狭幅遮光部の形成予定位置に遮光膜形成用塗料を塗布する第1の塗布工程と、前記遮光膜形成用塗料を残りの遮光部の形成予定位置に塗布する第2の塗布工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの前照灯の光源として使用される高圧放電ランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプの構造としては、例えば、放電空間を有する内管と、この内管を収容する外管と、内管に一端部を対向させて設けられた一対の電極と、放電空間に封入された放電媒体と、を備えたバルブの一端部に口金を装着した構造が知られている。高圧放電ランプはアーク放電により発光するものであり、その光は放電空間を中心として全方向に照射される。
【0003】
このような高圧放電ランプは、自動車などの前照灯の光源に汎用されている。対向車の運転者や歩道上の歩行者が眩しさを感じないように、ランプの側方は遮光して前方に光を照射することが求められており、一般に、高圧放電ランプの外管には遮光膜が形成されている。遮光膜は、略コ字状であり、ランプの軸方向に狭幅で延びる左右一対の狭幅遮光部と、これら一対の狭幅遮光部の一端を連結するようにして前後所定幅で軸回りに延びる広幅遮光部とからなる。
【0004】
高圧放電ランプの外管に遮光膜を形成する方法としては、例えば、内部に塗料が満たされた塗料塗布手段、いわゆるディスペンサを用い、その先端部であるディスペンサヘッドから遮光膜形成用塗料を吐出させながら、1回の塗布作業で、ランプをランプの軸方向及び軸回りに移動させて遮光膜形成用塗料をコ字状に塗布し、乾燥して焼き付ける方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、外管の遮光膜の形成予定位置に合わせて位置決めされたスクリーン板上に遮光膜形成用塗料を供給し、ランプを軸回りに回転させるとともに、へらをスクリーン板上の塗料に押し付けながら移動させて塗布し、乾燥して焼き付ける方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、ディスペンサを用いて塗料を塗布する方法では、ランプを軸方向と軸回りに移動させながら塗布するため、塗布作業中に外管に塗布された塗料が垂れやすく、厚みの不均一、直線性の低下を招きやすい。また、コ字状の遮光膜を形成するためには、複数回にわたってディスペンサヘッドを往復させる必要があり、塗布効率が悪く、量産性が低下しやすい。量産性を向上させるために、ディスペンサヘッドの先端開口径を通常よりも大きめにして、吐出量を増やしてディスペンサヘッドの往復回数を減らすことも考えられるが、外管に形成された遮光膜の角部が丸くなりやすく、配光特性の低下、信頼性の低下を招く。
【0006】
一方、へらとスクリーン板を用いて塗料を塗布する方法では、ランプを軸回りに回転させながら塗料を塗布するため、ランプの軸回りに沿って形成される広幅遮光部は直線性を出しやすいが、軸方向に沿って形成される狭幅遮光部は直線性を出しにくい。狭幅遮光部の直線性が低下すると、配光特性の悪化、信頼性の低下を招く。
【特許文献1】特開2001−52608号公報
【特許文献2】特開2003−317613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、外管の外周面に遮光膜を高い信頼性で、容易かつ効率よく形成可能な高圧放電ランプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の高圧放電ランプの製造方法は、外管の外周面に広幅遮光部及び狭幅遮光部からなる遮光膜が形成された高圧放電ランプの製造方法であって、前記外管の外周面の広幅遮光部または狭幅遮光部の形成予定位置に遮光膜形成用塗料を塗布する第1の塗布工程と、前記遮光膜形成用塗料を残りの遮光部の形成予定位置に塗布する第2の塗布工程と
を含むことを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の高圧放電ランプの製造方法は、請求項1記載の高圧放電ランプの製造方法において、前記第1の塗布工程および第2の塗布工程では、前記広幅遮光部または狭幅遮光部の長手方向に前記遮光膜形成用塗料を塗布することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の高圧放電ランプの製造方法は、請求項1または2記載の高圧放電ランプの製造方法において、前記第1の塗布工程の後に、塗布された遮光膜形成用塗料を乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の高圧放電ランプの製造方法は、請求項1ないし3のいずれか1項記載の高圧放電ランプの製造方法において、前記第2の塗布工程では、前記第1の塗布工程で広幅遮光部または狭幅遮光部の形成予定位置に塗布された遮光膜形成用塗料と重なるように、残りの遮光部の形成予定位置に該塗料を塗布することを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の高圧放電ランプの製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項記載の高圧放電ランプの製造方法において、前記第1の塗布工程では、前記広幅遮光部の形成予定位置にスクリーン印刷を用いて遮光膜形成用塗料を塗布し、前記第2の塗布工程では、前記狭幅遮光部の形成予定位置にディスペンサを用いて遮光膜形成用塗料を塗布することを特徴としている。
【0013】
上記した請求項1ないし請求項5記載の発明において、特に指定しない限り、用語の定義及び技術的意味は以下の通りである。
【0014】
高圧放電ランプは、アーク放電により発光するものである。
【0015】
高圧放電ランプの外管は、ソーダライムガラスや鉛ガラスなどの軟質ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスや石英ガラスなどの硬質ガラスあるいはアルミナなどのセラミックスからなるものを用いることができる。
【0016】
遮光膜は、外管の外周面に形成されている。遮光膜の形状は、略コ字状であり、ランプの軸方向に狭幅で延びる左右一対の狭幅遮光部と、これら一対の狭幅遮光部の一端を連結するようにして前後所定幅で軸回り(周方向)に延びる広幅遮光部とからなる。遮光膜は、外管の外周面に遮光膜形成用塗料を塗布し、乾燥工程を経て形成することができる。
【0017】
遮光膜形成用塗料は、遮光性を保つことができるものであれば特に限定されるものではないが、バルブ内の放電で発生した光を吸収しやすく、さらには、遮光膜の剥がれを防止する点から、例えば、金属酸化物(例えば酸化鉄、酸化マンガンなど)と軟質ガラス(いわゆる、フリットガラス)とを溶媒に分散させた茶色系ないし黒色系の塗料が好ましい。なお、遮光膜形成用塗料の粘度は、溶媒により調整可能である。
【0018】
乾燥工程は、外管の外周面に塗布された遮光膜形成用塗料を乾燥させて、定着させる工程である。本発明においては、乾燥工程は仮乾燥工程と本焼き工程の2つの工程からなり、仮乾燥工程では約300℃に設定された加熱手段(例えば、セラミックヒーター)により塗布された遮光膜形成用塗料中の溶媒が蒸発し、本焼き工程では約800℃に設定された加熱手段(例えば、バーナー)により、さらに乾燥させて外管に定着させる。なお、加熱手段としては、ハロゲンヒーターなどを用いることもできる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の高圧放電ランプの製造方法によれば、外管の外周面に遮光膜形成用塗料を塗布して遮光膜を形成するに際し、遮光膜を構成する広幅遮光部と狭幅遮光部とを、複数の工程に分けてそれぞれ別々に塗布して形成することで、従来と比べて、容易かつ効率よく、直線性の高い、信頼性に優れた遮光膜を形成することができる。
【0020】
請求項2記載の高圧放電ランプの製造方法によれば、広幅遮光部または狭幅遮光部の長手方向に沿うように塗布して形成することで、広幅遮光部と狭幅遮光部をそれぞれ容易かつ効率よく形成することができ、さらには、高い直線性が得られる。
【0021】
請求項3記載の高圧放電ランプの製造方法によれば、広幅遮光部または狭幅遮光部の形成予定位置に遮光膜形成用塗料を塗布し、乾燥してから、残りの遮光部に該塗料を塗布することで、外管に塗布された遮光膜形成用塗料の垂れによる塗布厚みの不均一や直線性の低下を回避することができる。
【0022】
請求項4記載の高圧放電ランプの製造方法によれば、広幅遮光部と狭幅遮光部とが重なるように形成することで、隙間の発生を防止し、信頼性に優れた遮光膜を形成することができる。
【0023】
請求項5記載の高圧放電ランプの製造方法によれば、広幅遮光部をスクリーン印刷により遮光膜形成用塗料を塗布して形成し、広幅遮光部よりも面積の小さい狭幅遮光部をディスペンサにより該塗料を塗布して形成することで、容易かつ効率よく、高い直線性の遮光膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の高圧放電ランプの製造方法の第1の実施形態について説明する。本実施形態の高圧放電ランプの製造方法は、遮光膜を構成する広幅遮光部について遮光膜形成用塗料をスクリーン印刷により塗布し、乾燥、焼き付けを行ってから、狭幅遮光部について遮光膜形成用塗料をディスペンサにより塗布する方法である。図1は、本実施形態に係る製造方法を用いて得られた高圧放電ランプの最終的な構成を示す平面図である。図2は、図1に示す高圧放電ランプの側面図である。図3は、図1と図2に示した遮光膜の全体を示す図である。
【0026】
図1、図2に示すように、高圧放電ランプ1は、バルブ2の一端部に口金3が装着された構成である。バルブ2は、放電空間4を有する内管5と、この内管5を収容する外管6と、外管6の外周面に形成された遮光膜7と、一対の電極8と、一対の封着金属箔9と、一対の外部導入体10と、を有する。
【0027】
内管5及び外管6は、透明な石英ガラスなどから構成されている。内管5は、その長手方向の略中央に紡錘形状の放電空間4を有しており、その両端には一対の封着金属箔9が設けられている。外管6は、内管5を収容し、外管6の両端は溶着されている。
【0028】
遮光膜7は、外管6の外周面に形成されている。遮光膜7の形状は、図3に示すような略コ字状であり、ランプ1の軸方向に狭幅で延びる左右一対の狭幅遮光部7aと、これら一対の狭幅遮光部7aの一端部を連結するようにして前後所定幅で軸回りに延びる広幅遮光部7bとからなる。
【0029】
電極8は、一対で対向配置された棒状体であり、その一方の端部は、それぞれ封着金属箔9と接続されており、他方の端部は、それぞれ放電空間4内に突出している。
【0030】
放電空間4には、メタルハライドと希ガスが封入されている。メタルハライドは、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)などのヨウ化物または臭化物である。希ガスは、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)及びキセノン(Xe)から選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
外部導入体10は、一対で対向配置された棒状体であり、それぞれの一方の端部が封着金属箔9に接続されており、他方の端部は、バルブ2の外部へ突出している。
【0032】
以下、高圧放電ランプ1の外管6に遮光膜7を形成する方法について図4〜図6を用いて説明する。図4は、第1の実施形態においてスクリーン板とへらによる塗布方法を模式的に示す図である。図5は、図4のX−X線断面図である。図6は、第1の実施形態においてディスペンサヘッドによる塗布方法を模式的に示す図である。
【0033】
予め、周知の方法で、内管5を覆うように外管6を配置したバルブ2を作製し、バルブ2の一端部に口金3を装着しておく。口金3には、ランプ1を水平に保持するためのランプ保持装置20を取り付ける。ランプ保持装置20は、ランプ1を装置本体20に対して水平に保持するものであり、必要に応じて、ランプ1を軸回りに回転させたり、軸方向に移動させることが可能である。
【0034】
次に、図4、図5に示すように、外管6の外周面の広幅遮光部7bの形成予定位置に合わせて位置決めされ、広幅遮光部7bに対応するパターンが形成されているとともに、そのパターン部分に目の細かいメッシュが取着されたスクリーン板73上に遮光膜形成用塗料50を供給し、外管6を軸回りに回転させ、スクリーン板73を外管6の回転に伴ってスライドさせつつ、へら74を遮光膜形成用塗料50に押し付けて広幅遮光部7bの長手方向に沿うように移動させて遮光膜形成用塗料50を塗布する。遮光膜形成用塗料50としては、金属酸化物(例えば酸化鉄)と軟質ガラス(フリットガラス)とを溶媒に分散させたものを用いることができる。その粘度は、塗布しやすく、塗布した際にタレを生じにくい範囲(例えば25℃で0.1〜20Pa・s)であればよい。
【0035】
そして、広幅遮光部7bの形成予定位置に遮光膜形成用塗料50が塗布された高圧放電ランプ1を乾燥させた後、焼き付けを行う。加熱温度及び加熱時間は、塗布された遮光膜形成用塗料50中の溶媒が蒸発するとともに、軟質ガラスが軟化して一枚膜状となるような範囲であればよい。これにより、遮光膜形成用塗料50が外管6に定着して、広幅遮光部7bが形成される。
【0036】
なお、遮光膜形成用塗料50のタレなどを防止する上で広幅遮光部7bを形成した後には乾燥、焼付けを行うことが望ましいが、遮光膜形成用塗料50の粘度が高い場合などには必ずしも行う必要はない。
【0037】
次に、図6に示すように、遮光膜形成用塗料50が封入されたディスペンサヘッド60を狭幅遮光部7aの形成予定位置に配置し、ディスペンサヘッド60は固定したまま、ランプ1を軸方向(狭幅遮光部7aの長手方向)に往復させて、外管6に形成された広幅遮光部7bの一端部と重なるように(図8、図9参照)遮光膜形成用塗料50を塗布し、続けて、遮光膜形成用塗料50の吐出を一時止め、ランプ1を周方向に約180度回転させてディスペンサヘッド60を他方の狭幅遮光部7aの形成予定位置に移動させたのち、同様に、軸方向(狭幅遮光部7aの長手方向)に往復させて広幅遮光部7bの一端部と重なるように遮光膜形成用塗料50を塗布する。
【0038】
そして、狭幅遮光部7aの形成予定位置に遮光膜形成用塗料50が塗布された高圧放電ランプ1を乾燥させた後、焼き付けを行い、該塗料50を外管6に定着させて、狭幅遮光部7aを形成する。
【0039】
このようにして、外管6の外周面に広幅遮光部7bと狭幅遮光部7aからなる遮光膜7をコ字状で形成する。
【0040】
第1の実施形態の高圧放電ランプの製造方法によれば、遮光膜7を形成する際に、遮光膜7を構成する広幅遮光部7bをスクリーン印刷により遮光膜形成用塗料50を塗布して形成した後、広幅遮光部7bよりも面積の小さい狭幅遮光部7aをディスペンサにより塗料50を塗布して形成することで、遮光膜7を従来のような1回の塗布作業ではなく、複数の工程に分けて塗布して形成するため、容易かつ効率よく、直線性の高い、信頼性に優れた遮光膜7を形成することができる。
【0041】
また、遮光膜形成用塗料50を塗布する際に、広幅遮光部7bまたは狭幅遮光部7aの長手方向に沿うように塗布することで、高い直線性の遮光膜7を容易に形成することができる。
【0042】
また、広幅遮光部7bの形成予定位置に塗料50を塗布した後、乾燥工程を経て、狭幅遮光部7aを形成することで、外管6に塗布された塗料50のタレを防ぎ、信頼性に優れた遮光膜7を形成することができる。
【0043】
また、広幅遮光部7bに重なるように狭幅遮光部7aを形成することで、隙間の発生を防止し、高信頼性の遮光膜7を形成することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
本発明の高圧放電ランプの製造方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態の高圧放電ランプの製造方法は、遮光膜を構成する広幅遮光部について遮光膜形成用塗料をディスペンサにより塗布し、乾燥、焼き付けを行ってから、狭幅遮光部について遮光膜形成用塗料をディスペンサにより塗布する方法である。図7は、第2の実施形態においてディスペンサヘッドによる塗布方法を模式的に示す図である。図10は、第2の実施形態において塗料を塗布する際のランプに対するディスペンサヘッドの相対移動軌跡を示す図である(実際にはランプを移動させる)。本実施形態に係る製造方法を用いて得られた高圧放電ランプの最終的な構成は図1と同様である。なお、第1の実施形態と同一の構成部分には、その説明を簡略または省略する。
【0045】
予め、周知の方法で、内管5の外側に外管6を配置したバルブ2を作製して、その一端部に口金3を装着しておく。
【0046】
図7に示すように、口金3をランプ保持装置20に取り付けてから、遮光膜形成用塗料50が封入されたディスペンサヘッド60を広幅遮光部7bの形成予定位置に配置し、ランプ1を軸回りに回転させながら、広幅遮光部7bの長手方向に沿うように複数回往復させて塗料50を塗布する。ディスペンサヘッド60の先端開口径は、やや大きめに調整してあり(例えば0.15〜0.35mm)、これにより、塗料50を塗布する際にディスペンサヘッド60の往復回数を低減して、塗布効率を高めることができる。径大のディスペンサヘッド60を使用した場合には、ディスペンサヘッド60を折り返した時の直線性が低下しやすくなるが、この点については、狭幅遮光部7aを形成する際に、広幅遮光部7bの折り返し付近と狭幅遮光部7aが重なるように形成することで直線性を改善することができる。
【0047】
そして、遮光膜形成用塗料50が塗布された高圧放電ランプ1を乾燥させた後、焼き付けを行い、該塗料50を外管6に定着させて、広幅遮光部7bを形成する。
【0048】
次に、図6に示すように、遮光膜形成用塗料50が封入されたディスペンサヘッド60を一方の狭幅遮光部7aの形成予定位置に配置し、狭幅遮光部7aの長手方向に沿うようにディスペンサヘッド60は固定したまま、ランプ1を軸方向に往復させて、外管6に形成された広幅遮光部7bの一端部と重なるように(図10参照)遮光膜形成用塗料50を塗布し、続けて、遮光膜形成用塗料50の吐出を一時止め、ランプ1を周方向に約180度回転させてディスペンサヘッド60を他方の狭幅遮光部7aの形成予定位置に移動させたのち、同様にして該塗料50を塗布する。ディスペンサヘッド60の先端開口径は、広幅遮光部7bを形成する際と比べてやや小さめ(例えば0.10〜0.30mm)に調整してある。径小のディスペンサヘッド60を使用することで、塗料50を塗布する際に直線性を高めることができ、塗布精度を向上させることができる。さらには、広幅遮光部7bと重なるように径小のディスペンサヘッド60で塗料を塗布することで、広幅遮光部7bの端部(ディスペンサヘッド60の折り返し付近)の直線性の低下を補うことができる。
【0049】
そして、遮光膜形成用塗料50が塗布された高圧放電ランプ1を乾燥させた後、焼き付けを行い、該塗料50を外管6に定着させて、狭幅遮光部7aを形成する。
【0050】
このようにして、外管6の外周面に広幅遮光部7bと狭幅遮光部7aからなる遮光膜7をコ字状で形成する。
【0051】
実施形態の高圧放電ランプの製造方法によれば、遮光膜7を形成する際に、広幅遮光部7bをディスペンサにより遮光膜形成用塗料50を塗布して形成した後、乾燥工程を経て、狭幅遮光部7aをディスペンサにより形成することで、遮光膜7を従来のような1回の塗布作業ではなく、複数の工程に分けて塗布して形成するため、容易かつ効率よく、直線性の高い、信頼性に優れた遮光膜7を形成することができる。
【0052】
また、広幅遮光部7bについてはディスペンサヘッド60の先端開口径を大きめに調整しておくことでディスペンサヘッド60の往復回数を減らして塗布効率を向上させることができ、狭幅遮光部7aについてはディスペンサヘッド60の先端開口径を小さめに調整しておくことで直線性を高め塗布精度を向上させることができる。
【0053】
(第3の実施形態)
本発明の高圧放電ランプの製造方法の第3の実施形態について説明する。本実施形態の高圧放電ランプの製造方法は、遮光膜を構成する広幅遮光部について遮光膜形成用塗料をスクリーン印刷により塗布し、乾燥、焼き付けを行ってから、狭幅遮光部について遮光膜形成用塗料をスクリーン印刷により塗布する方法である。本実施形態に係る製造方法を用いて得られた高圧放電ランプの最終的な構成は図1と同様である。なお、第1の実施形態と同一の構成部分には、その説明を簡略または省略する。
【0054】
予め、周知の方法で、内管5の外側に外管6を配置したバルブ2を作製して、その一端部に口金3を装着しておく。
【0055】
図4、図5に示すように、口金3をランプ保持装置20に取付けてから、外管6の外周面の広幅遮光部7bの形成予定位置に合わせて位置決めされ、広幅遮光部7bに対応するパターンが形成されたスクリーン板73上に遮光膜形成用塗料50を供給し、外管6を軸回りに回転させ、スクリーン板73を外管6の回転に伴ってスライドさせつつ、へら74を遮光膜形成用塗料50に押し付けて広幅遮光部7bの長手方向に沿うように移動させて遮光膜形成用塗料50を塗布する。
【0056】
そして、遮光膜形成用塗料50が塗布された高圧放電ランプ1を乾燥させた後、焼き付けを行い、該塗料50を外管6に定着させて、広幅遮光部7bを形成する。
【0057】
次に、外管6の外周面の狭幅遮光部7aの形成予定位置に合わせて位置決めされ、狭幅遮光部7aに対応するパターンが形成されたスクリーン板73上に遮光膜形成用塗料50を供給し、へら74を塗料50に押し付けながら移動させて、狭幅遮光部7aの長手方向に沿うように遮光膜形成用塗料50を塗布する。このとき、外管6に形成された広幅遮光部7bの一端部に重なるように塗料50を塗布する(図8、図9参照)。
【0058】
そして、遮光膜形成用塗料50が塗布された高圧放電ランプ1を乾燥させた後、焼き付けを行い、該塗料50を外管6に定着させて、狭幅遮光部7aを形成する。
【0059】
このようにして、外管6の外周面に広幅遮光部7bと狭幅遮光部7aからなる遮光膜7をコ字状で形成する。
【0060】
実施形態の高圧放電ランプの製造方法によれば、遮光膜7を形成する際に、広幅遮光部7bをスクリーン印刷により遮光膜形成用塗料50を塗布して形成した後、乾燥工程を経て、狭幅遮光部7aをスクリーン印刷により形成することで、複数の工程に分けて塗布して形成するため、外管6の所定位置に対して確実に塗布して、塗布不良の発生を低減することができ、高信頼性の遮光膜7を容易に効率よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の高圧放電ランプの製造方法の第1の実施形態を用いて得られた高圧放電ランプの最終的な構成を模式的に示す平面図。
【図2】図1に示した高圧放電ランプの側面図。
【図3】図1と図2に示した遮光膜の全体を示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態においてスクリーン板とへらによる塗布方法を模式的に示す図。
【図5】図4のX−X線断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態においてディスペンサヘッドによる塗布方法を模式的に示す図。
【図7】本発明の第2の実施形態においてディスペンサヘッドによる塗布方法を模式的に示す図。
【図8】広幅遮光部7bと狭幅遮光部7aとの重なりを模式的に示す図。
【図9】図7の変形例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態において塗料を塗布する際のランプに対するディスペンサヘッドの相対移動軌跡を示す図。
【符号の説明】
【0062】
1…高圧放電ランプ、2…バルブ、3…口金、6…外管、7…遮光膜、7a…狭幅遮光部、7b…広幅遮光部、20…ランプ保持装置、50…遮光膜形成用塗料、60…ディスペンサヘッド、73…スクリーン板、74…へら。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管の外周面に広幅遮光部及び狭幅遮光部からなる遮光膜が形成された高圧放電ランプの製造方法であって、
前記外管の外周面の広幅遮光部または狭幅遮光部の形成予定位置に遮光膜形成用塗料を塗布する第1の塗布工程と、
前記遮光膜形成用塗料を残りの遮光部の形成予定位置に塗布する第2の塗布工程と
を含むことを特徴とする高圧放電ランプの製造方法。
【請求項2】
前記第1の塗布工程および第2の塗布工程では、前記広幅遮光部または狭幅遮光部の長手方向に前記遮光膜形成用塗料を塗布することを特徴とする請求項1に記載の高圧放電ランプの製造方法。
【請求項3】
前記第1の塗布工程の後に、塗布された遮光膜形成用塗料を乾燥する乾燥工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高圧放電ランプの製造方法。
【請求項4】
前記第2の塗布工程では、前記第1の塗布工程で広幅遮光部または狭幅遮光部の形成予定位置に塗布された遮光膜形成用塗料と重なるように、残りの遮光部の形成予定位置に該塗料を塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高圧放電ランプの製造方法。
【請求項5】
前記第1の塗布工程では、前記広幅遮光部の形成予定位置にスクリーン印刷を用いて遮光膜形成用塗料を塗布し、
前記第2の塗布工程では、前記狭幅遮光部の形成予定位置にディスペンサを用いて遮光膜形成用塗料を塗布することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の高圧放電ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−300287(P2008−300287A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147076(P2007−147076)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】