説明

高圧放電ランプ

【課題】
点灯中に外管が不所望に落下するのを阻止するようにした3重管形の高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、内管固定部132、外管固定部33および受電部31を備えた口金Bと、発光管LTを内蔵し内管固定部により口金に固定された内管ITと、内管をその周囲に隙間を形成して包囲するとともに基端部が口金の外管固定部に接着して口金に固定された外管OTと、内管の外面と外管の内面との間の隙間に介在し、かつ内管および外管にそれぞれ圧接して外管を保持する弾性保持部材EHとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管を内蔵した内管を包囲する外管を備えた3重管形の高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
発光管を内蔵し基端部が口金に固定された内管を包囲する外管を具備した3重管形の高圧放電ランプは既知である(特許文献1参照)。この高圧放電ランプは、内管の基端部にピンチシール部が形成されていて、発光管が内管の内部に気密に収納されている。外管は、有底筒状をなし、基端が開口している。また、口金は、その上面に環状溝が形成されるとともに、環状溝によって中央部に残った円柱状部分にはその直径方向に形成された直線状溝によって2分され、かつ環状溝と直線状溝が連通している。
【0003】
そうして、内管は、そのピンチシール部が接着剤によって直線状溝内に接着されることで口金に固定されている。また、外管は、その基端部の内外両面が接着剤によって環状溝内に接着されることで口金に固定されている。上記接着剤には、耐熱性の無機質系接着剤を用いるのが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−331663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記高圧放電ランプは、その寿命中における接着剤の固着強度の脆弱化や製造時の接着不良によって使用中に外管が不所望に落下する虞のあることが分かった。
【0006】
本発明は、点灯中に外管が口金から不所望に落下するのを阻止するようにした3重管形の高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高圧放電ランプは、内管固定部、外管固定部および受電部を備えた口金と;発光管を内蔵し内管固定部により口金に固定された内管と;内管をその周囲に隙間を形成して包囲するとともに基端部が口金の外管固定部に固定された外管と;内管の外面と外管の内面との間の隙間に介在し、かつ内管および外管にそれぞれ圧接して外管を保持する弾性保持部材と;を具備していることを特徴としている。
【0008】
本発明は以下の態様であることを許容する。
【0009】
〔口金について〕 口金は、高圧放電ランプの本体をソケットに保持し、電源と電気的に接続する機能を果たすランプ構成要素であると一般的に定義されているが、本発明においては上記に加えて内管固定持部、外管固定部および受電部を備えていれば、その余の構造は自由である。したがって、本発明において、口金は既知の多様な構造を採用することができる。
【0010】
また、口金は、内管固定持部、外管固定部および受電部を機能的な位置に配置するために、好ましくは耐熱性絶縁物製の口金基体を配設することができる。なお、口金基体は、例えばステアタイトなどのセラミックスにより一体的に形成される。
【0011】
(内管固定部について) 内管固定部は、後述する内管の基端部を固定する部位である。基端部の固定は、内管固定部に挿入により行う構成でもよいし、接着剤により行う構成など多様な固着手段を適宜採用することができる。なお、「挿入により固定する態様において、接着剤を使用することなしに内管を挿入する行為だけで内管を口金に固定することのできる。基端部を挿入して内管を固定する内管固定部の態様として、基端部を直接的に固定してもよいし、例えば金属クリップなどの固定補助部材を介在させて間接的に固定してもよい。後者の場合、固定補助部材を内管の基端部に装着してもよいし、内管固定部の例えば内部に装着してもよい。
【0012】
また、内管の基端部が後述するようにピンチシール部を構成している態様においては、当該ピンチシール部の両扁平面を内管固定部に対する固定に利用すると好都合である。例えば、両扁平面を主として挟持して固定するように離間対向する一対の起立舌片を口金の底部から上方へ突出させて形成し、両起立舌片がピンチシール部の両側面を直接的または間接的に挟持するように構成することができる。さらに、離間対向する一対の起立舌片の外面に基底部に向って間隔が広がる、好適には切頭円錐面の一部をなすようなテーパー面を形成することにより、このテーパー面を外管の基端部を口金内に挿入する際のガイドとして、またセンタリングのガイドとして利用することができる。
【0013】
(外管固定部について) 外管固定部は、外管を口金に例えば接着などにより固定する部位である。しかし、外管を固定するための外管固定部の構造は特段限定されない。例えば、外管固定部を環状周壁により形成して、当該環状周壁の内面に外管の基端部の外面を接着して外管を口金に固定することができる。この態様においては、環状周壁の内面と外管の基端部の外面との間を例えば接着剤で固定する。なお、環状周壁は、好ましくは内管固定部に対して同心関係に内管固定部を外側から包囲するように形成するのがよい。しかし、所望により外管端部を内外両面で挟持するように同心関係に2重の環状周壁を形成してもよい。なお、接着剤を用いて固定する場合には、外管の基端部の外面に、または2重の環状周壁の場合には内外両面に接着剤を、それぞれ全周にわたり施与してもよいし、周面に対して離間した複数箇所に断続的に施与してもよい。
【0014】
(受電部について) 受電部は、高圧放電ランプに投入する電力を電源から受電して高圧放電ランプ本体に供給する手段であり、既知の各種口金形態における受電部を適宜所望により選択的に採用することができる。なお、差込み形、ねじ込み形、ピンなし差込み形、バイポスト形などの口金は、主として受電部の構造が相違している。
【0015】
次に、高圧放電ランプには主にねじ込み形口金が使用されているので、この口金における受電部について以下説明する。すなわち、ねじ込み形口金における受電部は、口金シェルおよびセンターコンタクトが絶縁基体の所定の位置に互いに絶縁関係を保持して配設されることによって構成されていて、内管から導出された一対の外部リード線の一方が口金シェルに、他方がセンターコンタクトに、それぞれ接続される。
【0016】
〔発光管について〕 本発明において、発光管は、透光性気密容器、一対の電極、一対の電流導入導体および放電媒体を備えている。
【0017】
透光性気密容器は、透光性セラミックスまたは石英ガラスなどの透孔性にして耐熱性の物質からなり、包囲部および一対の封止体を備えている。包囲部は、膨出していて、その内部に放電空間として利用される。なお、透光性であるとは、放電により発生した放射のうち、所望波長域の発光成分を少なくとも所望の部位から外部へ透過させることができればよいことを意味する。また、透光度は、高圧放電ランプの正常な作動状態において、透光性気密容器として問題なく機能する程度を有していればよい。
【0018】
封止体は、包囲部の両端に連設されていて、後述するように電極を支持するととともに、透光性気密容器を封止する。透光性気密容器が透光性セラミックスからなる場合、一般的には封止体が小径筒部により形成されている。小径筒部からなる封止体は、その内部に挿通する電極および/または電流導入導体と小径筒部の内面との間にわずかな隙間が形成される。したがって、小径筒部の長さを適切な値に設定することにより、点灯中にわずかな隙間の内部に液相のハロゲン化物が滞留して、いわゆるキャピラリーとして作用して透光性気密容器の最冷部を形成したり、封止部の温度を所定温度に維持させたりすることができる。しかし、本発明においては、封止体を備えているものの、封止体がキャピラリーを形成することを必須要件とするものではない。
【0019】
透光性気密容器が透光性セラミックスにより形成される場合、例えばサファイヤなどの単結晶の金属酸化物、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)などを用いることができる。
【0020】
透光性気密容器の内容積すなわち放電空間の体積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力の大きさに応じて多様な値に設定することができる。また、放電空間の形状も円筒状、球状、楕円球状など多様であることを許容する。
【0021】
(一対の電極について) 一対の電極は、透光性気密容器に封装されて先端が互いに離間して放電空間に臨んでいる。また、電極は、タングステン(W)、ドープドタングステン、トリウム入りタングステン、レニウム(Re)、レニウム−タングステン合金(Re−W)またはモリブデン(Mo)などの耐火性金属を用いて形成することができる。また、電極は、その基端側などの一部を異種の耐火性金属またはサーメットなどを用いて形成することができる。例えば、電極の主要部をタングステンで形成し、基端部をモリブデンまたはサーメットで形成する。さらに、電極は、好ましくは細長い電極軸部および電極軸部の先端部に配設される電極主部から構成することができる。この場合、電極主部は、電極軸の先端に配設されて主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、電極の先端部を構成する。また、電極主部は、その表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じて例えばタングステンのコイルを巻装したりすることができる。
【0022】
(電流導入導体について) 電流導入導体は、一対の電極に電流を供給するための手段であり、封止体から透光性気密容器の内部へ導入されて、先端が電極の基端に直接または間接に接続し、基端が封止体から外部へ露出する。また、透光性気密容器が透光性セラミックスからなる場合、電流導入導体は、例えばセラミックス封止用コンパウンドのシール部および小径筒部からなる封止体と協働して透光性気密容器を封止する。電流導入導体としては、透光性気密容器の材質に応じて熱膨張係数が接近した導電性物質、例えば透光性アルミナセラミックス製の場合、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)またはサーメットなどが好適である。石英ガラスの場合には、モリブデンが好適である。
【0023】
(放電媒体について) 放電媒体は、少なくとも金属ハロゲン化物および始動ガスにより構成される。また、好適にはランプ電圧形成物質を含むことができる。
【0024】
金属ハロゲン化物は、少なくとも発光金属のハロゲン化物を含むものとする。発光金属のハロゲン化物としては、既知の各種発光金属およびそれらの組み合わせの金属ハロゲン化物を用いることができる。
【0025】
始動ガスは、少なくとも高圧放電ランプを始動させるときに放電を開始させるのに寄与する。しかし、具体的なガスの種類は限定されない。一般照明用の高圧放電ランプの場合、好適にはネオン(Ne)およびアルゴン(Ar)の混合ガスである。始動ガスの封入圧は、一般的には8〜80kPaである。8kPa未満では、パッシェン曲線から理解できるように始動が困難になる。また、80kPaを超えると始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。
【0026】
ランプ電圧形成物質は、主として緩衝体として点灯中に一対の電極間に現れる電圧を形成するのに主体的に寄与する放電媒体であり、水銀および/または金属ハロゲン化物を用いることができる。ランプ電圧形成物質としての金属ハロゲン化物には、蒸気圧の比較的高い金属のハロゲン化物などを用いることができる。
【0027】
〔内管について〕 内管は、その内部に発光管を内蔵していて、基端部が適宜の手段により口金の内管固定部に固定される。発光管を内蔵する態様は、外部に対して気密および連通のいずれであってもよい。発光管は、内管に対して好ましくは軸中心の位置に支持され、かつ一対の電極が内管から導出される一対の外部リード線に接続する。
【0028】
また、内管は、発光管を所要に始動するために必要に応じて始動用の部品要素、例えば紫外線発生源、高電圧パルス発生器または近接導体などを内部の所定位置に収納することができる。
【0029】
さらに、内管は、その基端部が、口金に挿入した際に内管を固定するのに耐えるように構成されている。例えば、内管の基端部に形成されたシール部を口金に挿入したり、外部リード線を挿入したりすることで、内管は口金に固定されるように構成することを許容する。内管のシール部は、例えば既述のようにピンチシール部として形成される。ピンチシール部の扁平面の両側端縁に凸条を形成することにより、内管の基端部を口金に挿入した際に凸条間に形成される平坦部を固定するように構成すれば、内管の位置決めが容易、かつ確実になる。
【0030】
さらにまた、内管の材質は、特段限定されない。しかし、内管を石英ガラスで形成することにより、耐熱性が向上するので、小形化を図ることができる。また、内管は、外管で覆われるので、指で直接内管を触れることがなくなり、内管が汚損することもない。
【0031】
さらにまた、内管の内部を外部に対して気密に保持したり、外気に連通したりするように構成される。一般照明用の高圧放電ランプとしては、外管内部を真空または不活性ガス(例えば、窒素やアルゴンなど)雰囲気にするのが一般的である。
【0032】
〔外管について〕 外管は、その内部に内管を収納して、内管および発光管を機械的および触指による汚損などに対して保護する。外管の材質は、特段限定されない。例えば、硬質ガラスや半硬質ガラスにより外管を形成することができる。
【0033】
また、外管は、内管と分離していて、口金の外管固定部に例えば接着剤を用いて接着される。そのために、外管の基端は、開放されているが、その余の形状および構造は問わない。例えば、T形、BT形、R形など各種形状の管を所望に応じて適宜選択して採用することがきる。
【0034】
接着剤は、高圧放電ランプの点灯中の動作温度に耐えるものであれば特段限定されない。一般的には耐熱性の無機質接着剤が好適である。なお、接着剤を用いないで、所定の固着手段によって固定される態様でもよい。
【0035】
〔弾性保持部材について〕 弾性保持部材は、内管を利用して外管を保持する手段であり、外管と口金との間の接着が不所望に離脱した際に外管を保持して口金から落下するのを阻止し得る手段として機能する。そのために、弾性保持部材は、内管および外管の両方に圧接し、内管および外管の両方に対して弾性を作用させた状態を作り出すことにより、外管が口金から離脱した際に、外管を内管が保持して外管の不所望な落下を防止する。ただし、弾性保持部材は、内管および外管のいずれか一方に固定または係止されていてもよい。
【0036】
上記構成を備えた弾性保持部材であれば、その材質は特段限定されない。しかし、高圧放電ランプの点灯中の高温に耐え、かつ弾性が阻害されない程度の耐熱性を有している必要がある。これらの条件を満たす材料としては、ばね性金属例えばステンレスなどおよび耐熱性プラスチックスなどを適宜選択して用いることができる。
【0037】
また、弾性保持部材は、高圧放電ランプが弾性保持部材を具備していることに起因する全光束の低下が最小限となり、かつ配光特性を乱さないように配慮されていることが好ましい。このためには、内管および外管の頂部側の位置に弾性保持部材を配置するのがよい。また、外管を保持する弾性力を維持しながら、内管から外部へ放射される光の進路を遮る弾性保持部材の面積を最小限にするのがよい。このためには、弾性保持部材が線状または帯状をなした弾性が付与された複数の圧接片を内管および外管の間の隙間内に管軸を中心としてほぼ等間隔に配置されるように設けているのがよい。そうすれば、弾性保持部材による外管の保持のバランスが良好になる。また、内管と外管を組み立てる際の製造性が良好になる。なお、複数の圧接片を統合し、各圧接片が所定の間隔を維持するように構成するために、複数の圧接片の中心位置に中核部を形成するのがよい。
【0038】
さらに、弾性保持部材が複数の圧接片を備えている構成において、外管をその内面側から所望の保持力で保持するために、管軸方向に位置がずれた内管当接部と外管当接部を圧接片に形成するのが好ましい。これにより、圧接片を線材または帯材で形成することができるとともに、プレス加工で比較的簡単に製造することができる。また、圧接片による遮断される光量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、内管の外面と外管の内面との間の隙間に介在して内管および外管にそれぞれ圧接して外管を保持する弾性保持部材を具備していることにより、ダウンライトやスポットライトなどの使用中に、そこに装着されている高圧放電ランプの外管が固定されている口金から離脱した際に外管の不所望な脱落が発生するのを阻止できるので、外管の脱落が重大事故の原因になるのを解消して長期にわたる安全を高い信頼性の下で確保した高圧放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0041】
図1ないし図6は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は高圧放電ランプの正面を斜め前から見た斜視図、図2は発光管を内蔵した内管の拡大正面図、図3は発光管の拡大断面図、図4は高圧放電ランプの内管および外管の口金への取付状態を示す口金部近傍の拡大正面断面図、図5は弾性保持部材の打抜状態における展開図および正面図、図6は弾性保持部材による外管の保持を説明する拡大要部断面図である。
【0042】
本形態の高圧放電ランプは、定格ランプ電力70W用として好適な構造であり、図1に示すように、外管OT、内管IT、発光管LT、口金Bおよび弾性保持部材EHを具備して構成されている。
【0043】
外管OTは、本形態において硬質ガラス製の有底筒状をなすT形バルブからなる。したがって、本形態において、外管OTの基端部は、開口縁部により構成されている。なお、外管OTの頭部の外面に遮光物質を塗布してキャップ状のグレアカット膜を形成すれば、照明器具に別設の遮光キャップを配設する必要がなくなる。しかし、後述する弾性保持部材EHがその形状によってはある程度遮光キャップ的な作用を呈することが確かめられた。照明器具側に遮光キャップを配設しないでもよくなれば、照明器具の構造が簡単になってその分安価になるとともに、高圧放電ランプの着脱操作も頗る容易になる。
【0044】
内管ITは、本形態において石英ガラス製であり、閉鎖された先端部の中央には排気チップオフ部11が形成されている。また、基端部にはピンチシール部12が形成されている。ピンチシール部12には、いずれも一対の封着金属箔12a、12aが気密に埋設され、内部リード線12b、12cおよび外部導入線12d、12dが封着金属箔12aの両端部に接続している。なお、ピンチシール部12の両扁平面の側縁部には一対の突条12e、12eが形成され、それらの間に一段低い平坦面12fが形勢されている。
【0045】
したがって、本形態において、内管ITの基端部は、ピンチシール部12により構成されている。なお、本形態において、内管ITの内部には、発光管LTに加えて紫外線発生源UVE、サポート部材SFおよびゲッタGなどの付帯的構成要素が後述するように配設されている。しかし、図1においてはこれらの付帯的構成要素は図示を省略されている。
【0046】
発光管LTは、図3に示すように、透光性気密容器1、一対の電極2、2、一対の電流導入導体3、3、一対のシール部4、4および透光性セラミックス気密容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0047】
透光性気密容器1は、本形態において透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、包囲部1aおよび包囲部1aの両端に連通して配設された一対の封止体1b1、1b2としての小径筒部を備え、内部に放電空間1cが形成されている。そして、包囲部1aおよび封止体1b1、1b2は、鋳込み成形により一体化されている。
【0048】
一対の電極2、2は、タングステン棒からなり、封止体1b1、1b2内に挿通されていている。そして、電極2の軸部と封止体1b1、1b2の小径筒部の内面との間にキャピラリーと称されるわずかな隙間が形成されている。電極2の先端は、包囲部1a内に突出している。
【0049】
一対の電流導入導体3、3は、図3に示すように、基端側がニオブまたはサーメットなどからなる封着性部分3aで、先端側が例えばモリブデンなどの耐ハロゲン性部分3bであり、両者が長手方向に接合した複合体からなる。そして、封止体1b1、1b2内に挿入され、耐ハロゲン性部分3bの先端が電極2の基端に接続して電極2を支持するとともに、封着性部分3aの基端が封止体1b1、1b2から外部へ突出している。封止体1b2から導出された図1において上部側の電流導入導体3の基端は、外管OTの排気チップオフ部11の内部に挿入されることによって、後述するサポート部材SFの一部を兼ねていて、発光管ITのセンタリングに寄与している。
【0050】
一対のシール部4、4は、セラミックス封止用コンパウンドからなるフリットガラスを加熱して溶融し、次いで固化させることにより形成されている。そうして、一対のシール部4、4は、透光性放電容器1の封止体1b1、1b2の端面側の部分と、これに対向する電流導入導体3、3の封着性部分3aと、の間に介在して透光性気密容器1を気密に封止しているとともに、一対の導入導体3、3の封着性部分3aが透光性気密容器1の内部に露出しないように封止体1b1、1b2内に挿入されている部分の全体を被覆している。
【0051】
放電媒体は、金属ハロゲン化物、始動ガスおよび水銀からなり、透光性気密容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されている。そして、金属ハロゲン化物の一部が安定点灯時に封止体1b、1b内に形成されるわずかな隙間内に液相状態で滞留する。そして、点灯中下側となる例えば封止体1b1内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。
【0052】
金属ハロゲン化物は、発光金属のハロゲン化物からなり、例えばツリウム(Tm)、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)よび希土類金属のグループから選択された金属のハロゲン化物により構成することができる。
【0053】
サポート部材SFは、図1に示すように、内部リード線12bが一体に延長して形成されている。そして、外管OTの内壁に接近した位置を管軸方向に沿って延在し、先端が外管OTの先端付近で屈曲され、かつ発光管ITの図1において上部の電流導入導体3に溶接されることによって、発光管ITを支持している。
【0054】
紫外線発生源UVEは、図1に示すように、小形容器21、導入線22、内部電極23、放電性ガスおよび外部電極24を具備して構成されている。また、紫外線発生源UVEは、サポート部材SFと正対する位置で、かつその主体部分が内管ITの内面と発光管LTの一方の小径筒部1b1との間に配設されている。これにより封止体1b1と紫外線発生源UVEとが管軸方向に沿ってほぼ平行に、かつ正対して配置される。
【0055】
ゲッタGは、図1に示すように、サポート部材SFに溶接されており、内管IT内を清浄にする。
【0056】
口金Bは、図4に示すように、口金基体30、受電部31、内管固定部32および外管固定部33を備えている。口金基体30は、ステアタイトの成形体からなり、内管固定部32、外管固定部33および受電部絶縁体34を一体的に有している。
【0057】
内管固定部32は、口金基体30の上面にその中心を挟んで突設した一対の起立舌片32a、32aおよび金属クリップMCにより構成されている。そして、一対の起立舌片32a、32aの対面している平坦な内面間の隙間に内管ITのピンチシール部12における表裏一対の扁平面の中間部に形成された図1および図2に示す平坦部12fを挿入することにより、後述する金属クリップMCに補助されて内管ITが口金Bに固定される。そして、本形態においては、ピンチシール部12の扁平面の両側縁に形成された一対の凸条12e、12eが起立舌片32aの両側から外部に露出して内管ITのセンタリングを行う。
【0058】
金属クリップMCは、1枚のリボン状金属ばね材を変形U字状に屈曲させて構成されている。そして、U字の底部の幅がほぼピンチシール部12の厚みになっていて、両脚部の中間に内管固定部32の起立舌片32aの内面への当接部35aとピンチシール部12の外面への当接部35bがそれぞれ形成されている。また、両脚部の先端に起立舌片32aの内面への係止部35cが形成されている。
【0059】
そうして、金属クリップMCは、予めピンチシール部12に装着されてから内管ITと一緒に内管固定部32に挿入される。挿入の際に金属クリップMCは、その当接部35aが起立舌片32aの内面を弾接し、係止部35cがピンチシール部12の外面に弾接して内管ITを口金Bに対して定置するとともに、さらに係止部35cが起立舌片32aの内面に抜け止め方向に係止する。
【0060】
外管固定部33は、一対の起立舌片32a、32aを同心的に包囲するように形成された環状周壁により構成されている。この環状周壁の内側にわずかな隙間を形成して外管OTの基端部が挿入される。また、内管固定持部31の一対の起立舌片32a、32aの背面が切頭円錐体形状の一部を構成していて、この切頭円錐体形状部分と環状周壁との間に先細りの溝が形成されている。したがって、一対の起立舌片32a、32aの背面が環状周壁の内部に外管OTの基端部を挿入した際のガイド作用およびセンタリング作用を行う。
【0061】
外管OTの基端部の外面と外管固定部33の環状周壁の内面とは接着剤CBによって接着されている。なお、接着剤CBは、本形態において、外管OTの基端部の外管固定部33への固定に先立ち予め上記基端部の外面に塗布される。
【0062】
受電部絶縁体34は、口金基体30の内管固定部32および外管固定部33から図4において下方へ突出して形成されている。そして、中心部に内管固定部32の底部に連通する中心孔34aが形成されている。
【0063】
受電部31は、いずれも導電性金属からなる外周にねじ溝を形成した口金シェル31aおよびセンターコンタクト31bからなり、口金基体30の受電部絶縁体34の外面に配設されている。口金シェル31aは、口金基体30の図4において下部に形成された受電部絶縁体34の外側に嵌合され、その開口縁をポンチで加締めて開口縁の一部を受電部絶縁体34に形成した一対の凹部34b、34bの内部へ押し込むことにより、受電部絶縁体34に装着されている。そして、口金基体30の受電部絶縁体34に外管固定部32の底部に連通した通孔34cが形成され、この通孔34cから導出された内管ITの外部リード線12bの一方が溶接または加締め付けにより口金シェル34aに接続している。なお、通孔34cは、図6に示すように中心孔34aの点対称位置に一対形成されているが、組立機による自動組立の利便のためであり、1個でも差し支えない。センターコンタクト33bは、受電部絶縁体33の中央先端に配設されている。そして、受電部絶縁体34の中心孔34a内に挿通された内管ITの外部リード線12bの他方が例えばろう付けにより接続している。
【0064】
弾性保持部材EHは、図5(a)にばね性金属板材を打ち抜いたときの展開状態を示し、(b)に装着前の折り曲げ加工後の状態を示し、また図6に装着状態を示すように、内管ITの外面OSと外管OTの内面ISとの間の隙間G内に介在して、外管OTと口金Bとの間の接着が不所望に離脱した際に外管OTを内管ITに保持して落下を阻止する。そして、圧接片42が内管ITおよび外管OTのそれぞれに圧接することにより外管OTを保持している。
【0065】
さらに、詳述すれば、弾性保持部材EHは、中核部41および複数の圧接片42を備えて形成されている。本形態において、中核部41は、その中央部に透孔41aを有していて、当該透孔を内管ITの排気チップオフ部11に嵌合されている。これにより、弾性保持部材EHがセンタリングされるとともに、内管ITと外管OTの組立時に弾性保持部材EHが落下するのを防止する。
【0066】
圧接片42は、図5(b)および図6に示すように、その3個が120°間隔で中核部41から放射状に形成され、かつそれぞれ折り曲げにより管軸方向にずれた位置に形成された複数の圧接部42a、42b、42cを有している。図6に示すように、圧接部42aは、外管OTの内面ISに管軸方向の第1の位置で圧接する。圧接部42bは、内管ITの外面OSに圧接する。圧接部42cは、圧接片42の先端であり、圧接部42aと42bとが上記のように圧接することにより、その先端部が外管OTの内面ISに圧接するので、その圧接力が大きくなる。
【0067】
すなわち、外管OTの内面ISには圧接部42bと、これに対して管軸方向に離間して位置する圧接部42cとが圧接するので、外管OTの保持がより一層確実になる。また、圧接部42cは、その先端が楔状に外管OTの内面に圧接するので、その圧接力が大きくなり、外管OTの保持がより一層確実になる。以上の結果、弾性保持部材EHは、外管OTの内面ISと内管ITの外面OSとに圧接して外管OTを内管ITに強固に保持する。このため、たとえ外管OTの基端部の口金Bに対する固定が不所望に離脱したとしても、外管OTは、弾性保持部材EHの介在により内管ITに保持されるので、その落下が防止される。また、弾性保持部材EHが中核部41および複数の圧接片42を備えていることにより、遮光キャップのような作用を呈して配光特性が改善される。
【0068】
図7は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態における弾性保持部材の打抜状態における展開図および正面図である。本形態は、弾性保持部材EHが4個の圧接片42を備えている。4個の圧接片42は、中核部41から90°間隔で放射状に延在している。
【0069】
図8は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態における弾性保持部材の打抜状態における展開図および正面図である。本形態は、弾性保持部材EHが2個の圧接片42を備えている。2個の圧接片42は、中核部41から180°間隔で放射状に延在している。なお、所望により圧接片42の先端から直交方向に延在する2個の圧接部をさらに延在させて、展開状態において約H字状をなすような形状に変形させることができる。これにより、より一層外管OTの保持が確実になる。
【0070】
図9は、本発明の高圧放電ランプを用いた照明器具を示す要部断面正面図である。本発明の高圧放電ランプを用いる照明器具は、照明器具本体40、高圧放電ランプHDLおよび点灯装置からなり、屋内用および屋外用の各種照明器具を含む概念である。また、照明器具は、一般照明用および特殊照明用のいずれであってもよい。なお、特殊照明用とは、一般照明用以外の各種用途を含む。
【0071】
照明器具本体40は、照明器具から高圧放電ランプHDLおよび点灯装置を除外した残余の部分からなる。本形態において、照明器具が屋内照明用のスポットライトであり、照明器具本体40は、取付台41、支柱42、基体43、ソケット44、反射板45、遮光キャップ46および全面ガラス47を主な構成要素として構成されている。なお、基体43は、支柱42に対して水平面内および鉛直面内の回動が可能になっている。
【0072】
高圧放電ランプHDLは、図1ないし図7に示す本発明の高圧放電ランプである。なお、前述のように弾性保持部材が遮光キャップ的な作用を呈するので、所望により遮光キャップ46を用いなくてもよい。点灯装置は、照明器具本体40とは別置きで、例えば天井裏に配設される。そして、高圧放電ランプHDLを点灯する回路手段であり、電子化されているものおよびコアおよび巻線を主体とするもののいずれであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】高圧放電ランプの正面を斜め前から見た斜視図
【図2】同じく発光管を内蔵した内管の拡大正面図
【図3】同じく発光管の拡大断面図
【図4】同じく高圧放電ランプの内管および外管の口金への取付状態を示す口金部近傍の拡大正面断面図
【図5】同じく弾性保持部材の打抜状態における展開図および正面図
【図6】同じく弾性保持部材による外管の保持を説明する拡大要部断面図
【図7】本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態における弾性保持部材の打抜状態における展開図および正面図
【図8】本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態における弾性保持部材の打抜状態における展開図および正面図
【図9】本発明の高圧放電ランプを用いた照明器具を示す要部断面正面図
【符号の説明】
【0074】
30…口金基体、31…受電部、32…内管固定部、33…外管固定部、41…中核部、42…圧接片、42a、42b、42c…圧接部、B…口金、EH…弾性保持部材、IT…内管、LT…発光管、OT…外管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管固定部、外管固定部および受電部を備えた口金と;
発光管を内蔵し内管固定部により口金に固定された内管と;
内管をその周囲に隙間を形成して包囲するとともに基端部が口金の外管固定部に固定された外管と;
内管の外面と外管の内面との間の隙間に介在し、かつ内管および外管にそれぞれ圧接して管を保持する弾性保持部材と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
弾性保持部材は、内管の先端側の外面と外管の先端側の内面とにそれぞれ圧接する圧接片を備えていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
弾性保持部材は、その圧接片が管軸を中心として等間隔に配置された複数設けられていることを特徴とする請求項2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
弾性保持部材は、その圧接片が管軸方向に互いにずれた位置で内管の外面と外管の内面とにそれぞれ圧接することを特徴とする請求項2または3記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
弾性保持部材は、内管の先端側に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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