説明

高圧栓

【課題】 高圧容器は、ネジ式蓋の開閉に大きな力が必要で、特に女性の研究者等にとっては非常に不便であった。また、蓋を何回転もさせなければならない。また、ピン式のものでは、どうしても1直線状で接触することになる。このため、ピンと蓋および本体は強い力で押し付けあうことになり、圧力解放後、ピンを抜く際に蓋を強く押し下げる必要がある。そこで、簡単に蓋の開閉ができ、且つ部材の損傷の少ない寿命の長い高圧栓を提供する。
【解決手段】 受部と蓋部からなる高圧栓であって、該受部は金属製の筒状体であって、開口端部から順にカバー部、回転部、収納部から構成され、該カバー部は、該蓋部の挿入部及び係止部が貫通でき、該係止部が回転したときに抜け止めとなる形状の貫通孔を有し、該回転部は、該係止部が回転できる空間を有し、該収納部は、該挿入部が挿入でき、該蓋部は、該挿入部及び該係止部から構成されているもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願でいう高圧栓とは、内圧が最低でも1MPa(約10気圧)以上の容器や配管等に接続させる栓をいう。1MPa以上の容器は、種々の高圧反応の実験用、深海生物の生存環境用等として利用されている。
【0003】
高圧、特に100MPa以上の容器としては、従来容器の外径が10〜20cm程度のものであって、肉厚の胴体容器に大きなネジの蓋が付いたものであった。容器の肉厚は2〜5cm程度であった。
【0004】
このような高圧容器は、ネジ式蓋の開閉に大きな力が必要で、特に女性の研究者等にとっては非常に不便であった。また、蓋を何回転もさせなければならず、容器の開閉に時間がかかるため、深海微生物の培養に使用する場合や、試料導入後速やかに加圧を開始したい場合など適当ではない。
同様に、フランジを用い多数のボルトによって容器と連結する形式の高圧容器も多数使用されているが、これも蓋の開閉に多くのボルトを開閉しなくてはならず、しかもボルトの締め付け力が均一でないと密閉不良を起こすことがあった。
【0005】
そこで、最近ではピン式のものが考案され使用もされてきている。これは、容器と蓋に共通の貫通孔を開け、そこに太いピンを挿入して内圧に耐えるものである。ピンを挿入するだけで封止完了であり、ピンを抜くだけで蓋は持ち上がるため開閉はスムーズになった。
【0006】
しかし、挿入するピンと貫通孔はわずかであるが径が異なるため、加圧時にピンおよび貫通孔は円周全体で力を受けることができず、どうしても1点(1直線状)で接触することになる。このため、ピンと蓋および本体は強い力で押し付けあうことになり、圧力解放後、ピンを抜く際に蓋を強く押し下げる必要がある。さらに加圧時にピンに接触する蓋側貫通孔下端部、本体側貫通孔上端部で応力集中により変形が生じピンが抜けにくくなり、ついにはハンマー等で大きな力を掛けなければならなくなる。この場合はピンと変形した容器が強く押し付けあっているので、焼付が生じ回復不可能な損傷をこうむる場合がある。そのうえ、ピンは、変形防止のため硬度の高い素材を必要とするが、これは弾性が小さいので、応力集中により折れる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、簡単に蓋の開閉ができ、且つ部材の損傷の少ない寿命の長い高圧栓を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果、本発明高圧栓を完成したものであり、その特徴とするところは、受部と蓋部からなる高圧栓であって、
該受部は金属製の筒状体であって、開口端部から順にカバー部、回転部、収納部から構成され、
該カバー部は、該蓋部の挿入部及び係止部が貫通でき、該係止部が回転したときに抜け止めとなる形状の貫通孔を有し、
該回転部は、該係止部が回転できる空間を有し、
該収納部は、該挿入部が挿入でき、
該蓋部は、該挿入部及び該係止部から構成されている点にある。
【0009】
ここで、高圧栓とは、その用途にかかわらず栓の一方側の圧が1MPa以上であるものをいう。本発明の構成で大きな効果が得られるのは、より高圧においてであり、50MPa以上では従来例とは大きな差になる。
【0010】
栓であるので、どのような容器、配管、装置に取り付けてもよい。取り付け方は直接溶接する、フランジを介して接続する、全体をネジにして接続する等どのような方法でもよい。また、本発明栓の収納部の一端が閉止されて容器となっているものでもよい。
【0011】
本発明高圧栓は、受部と蓋部からなる。勿論、これらに付属品を取り付けてもよい。材質は、ステンレス、チタン等がある。特に軽量で強度もあるチタン合金が好ましい。勿論、取っ手その他強度に問題がなければプラスチックや木材等でもよい。
【0012】
受部は、金属製の筒状体である。
【0013】
該受部は、カバー部、回転部、収納部から構成されている。これは、機構上の区別であり、3つとも一体に形成(1部材を切削して製造)しても、任意の1つ又は2つを別部材としてネジ止め、目ボルト/ナット止め、あるいは溶接してもよい。
【0014】
収納部とは、肉厚の筒状であり、後述する挿入部を収納する部分であり、栓としての他の容器や部材への接続部である。しかし、前記した通りこの部分が底部を有し容器となる場合もある。底部は、収納部と一体でも別体でもよい。また、他の蓋や栓であってもよい。
【0015】
上記収納部の上部が回転部であり、後述する挿入された蓋部の係止部が回転できるように、収納部より内径が大きくなっている。
【0016】
カバー部は、回転部の上部にあり、蓋部が内圧によって外れるのを防止するためのものである。カバー部には、蓋部が入る貫通孔が設けられている。該貫通孔の形状は、蓋部が回転したときには、蓋部が抜けないような形状であり、かつ蓋部の係止部とほぼ同形状であることが好ましい。なぜならば、同一形状であるときが、回転したときに蓋部の係止部とカバー部の重なりが最大となり、重なりが大きいほうが圧力に対して強度が高いためである。
【0017】
次に蓋部について説明する。蓋部は、挿入部及び係止部からなる。
挿入部は、該収納部に気密に挿入できるものであり、Oリング等のパッキンによりシーリングされていてもよい。本発明の蓋部は高圧時には上部に押し上げられるので、シール部が移動しても気密がもれないように、収納部でシールすることがより好ましい。
【0018】
係止部は、挿入部の上部にあり、これが前記カバー部に係止して蓋部が圧によって外れるのを防止する。また、回転させることによってカバー部を通過でき、回転させることによってカバー部と係合し、圧に耐えて挿入部が押し出されないように支える部分である。
この係止部の形状は、平面視円形では回転によって通過したり、係止したりすることはできないため、円形の一部を切り欠いた形状となるが、これは前記したカバー部との兼ね合いで決めるものである。例えば、カバー部の貫通孔の形状が、挿入部が通過する円形部の周囲に1又は複数の切り欠きがあるような場合、それと同じ形状でよい。
【0019】
また、該蓋部には操作を簡単にするために取っ手を設けてもよい。
取っ手は、係止部と一体(溶接等で一体化したものも含む)でも別体でもよい。また、形状やサイズ等は自由である。挿入部と同径であってもよいし、より細くしてもよい。別体の場合には、ネジ等で着脱可能に取り付けてもよい。
【0020】
蓋部は挿入した後、適当な位置まで回転させることが必須であり、その回転させる角度は、適当なマークを入れてそれを目印にしてそこで止めてもよいが、回転部の中にストッパー(突起)を設けて、そこに当たるとそれ以上回転できないようにし、回転角度を一定にするようにしてもよい。
【0021】
このようなストッパーは、カバー部の上部に設けて、取っ手と衝突させる方式でもよい。
【0022】
本発明の高圧栓は、その蓋部に貫通孔を設けることができる。例えば、本発明高圧栓が容器に接続されている場合、その貫通孔に手押しポンプ等を接続し水等の圧力媒体を注入してその容器を所望の圧力にまで昇圧することができる。あるいは該貫通孔には圧力計を取り付けることもできる。複数の貫通孔を設け、加圧および圧力計さらには温度測定用のセンサーあるいは電極等の取り付けに供することもできる。さらに、あるいは内部観察用の光学窓を設置することもできる。勿論、本発明高圧栓が取り付けられた容器等に貫通孔を設けて上記の用に供することも自由である。
【発明の効果】
【0023】
本発明高圧栓には次のような大きな利点がある。
(1) 栓を閉じるのに、栓を半回転以上する必要はない。
(2) 栓を開けるのに大きな力が不要である。
(3) 加圧による応力が一点又は1線上に加わることがなく、局部的に金属が凹むことや、ミクロ的な噛み込みが非常に少ない。
(4) 総合的に容器の寿命が長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面に示す実施の形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明高圧栓の収納部が容器となった例である。
図1は、本発明高圧栓を用いた容器1の1例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図(正面図の位置から見た)である。蓋部は取っ手2、係止部3及び挿入部4から構成されている。取っ手2は係止部3にネジ止めされている。また、受部は、カバー部5、回転部6、収納部7から構成されている。この時のカバー部5の縦断面上の広さは、係止部3が入る広さである。
【0025】
挿入部4には、気密にするためのOリング8及び収納部7を加圧するための導入孔9が設けられている。その導入孔は外部のパイプ10と接続されている。また、回転部6の中にストッパー11が設けられている。回転部6内で回転する係止部3の動きを規制するためである。どちらに回転させても、係止部3がストッパー11にあたり、その位置で蓋部が外れるようになっており、また逆の方向では、その位置が加圧時の所定位置になるようにしている。ストッパー11は、図1(b)では係止部3の裏側になり見えていない。
【0026】
図2は、図1と同様の図であるが、蓋部のみを90度回転したところである。(a)は、図1(a)の状態から矢印の方向に取っ手2を90度回し、取っ手2が上下(図上)になっている。この状態では、取っ手2が接続されている係止部3も上下方向になっている。この係止部3が通過するカバー部5の貫通孔形状12は、係止部3と同形状であり、図2(a)に横方向に見えている。縦断面図である(b)にはカバー部5は広い方で切断されている。
【0027】
図3は、図2(b)を90度横から見た図である。係止部3が、カバー部5でしっかり係止されているのがわかる。
【0028】
図4は、受部の各部の構成方法の例を示す断面図である。(a)は、3つの部材が一体のもの、(b)はカバー部5と回転部6が一体で、別体の収納部7にネジ又は溶接で固定されているタイプ、(c)はカバー部5のみを他の部材と固着したタイプである。
【0029】
図5は、蓋部の各部の構成方法の例を示す側面図である。(a)は取っ手2、係止部3及び挿入部4が一体に成型されているタイプ、このタイプでは係止部3に挿入部4と同じ径の部材があり、そこに手で把持する部分が差し込まれているものである。(b)は取っ手2が係止部3にネジ止めされているタイプであり、取っ手2全体が非常に軽量になる。(c)は係止部の突出部を別体で構成するタイプである。このようにすれば大きな金属塊が不要になり軽量かつ安価になる。
【0030】
図6は、係止部3の種々の例の平面図である。中央の円は収納部7の内径と同様である。カバー部5には、これらが挿入でき、且つある程度回転させれば係止できるような貫通孔が構成されている。
【0031】
図7は、収納部7の底面の底が本発明の蓋部で閉止されるタイプであり、上下が同様に構成されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明高圧栓を用いた容器1の1例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図(正面図の位置から見た)である。
【図2】図1と同様の図であるが、蓋部のみを90度回転したところである。
【図3】図2(b)を90度横から見た、縦断面図である。
【図4】受部の各部の構成方法の例を示す断面図である。
【図5】蓋部の各部の構成方法の例を示す側面図である。
【図6】係止部3の種々の例の平面図である。
【図7】収納部7の底面の底が本発明の蓋部で閉止されるタイプの断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 本発明高圧栓を用いた容器
2 取っ手
3 係止部
4 挿入部
5 カバー部
6 回転部
7 収納部
8 Oリング
9 導入孔
10 パイプ
11 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受部と蓋部からなる高圧栓であって、
該受部は金属製の筒状体であって、開口端部から順にカバー部、回転部、収納部から構成され、
該カバー部は、該蓋部の挿入部及び係止部が貫通でき、該係止部が回転したときに抜け止めとなる形状の貫通孔を有し、
該回転部は、該係止部が回転できる空間を有し、
該収納部は、該挿入部が挿入でき、
該蓋部は、該挿入部及び該係止部から構成されていることを特徴とする高圧栓。
【請求項2】
該係止部を所定回転で停止させるためのストッパーが該回転部内に設けられているものである請求項1記載の高圧栓。
【請求項3】
該係止部に取っ手が取り付けられているものである請求項1又は2記載の高圧栓。
【請求項4】
該取っ手は着脱自在に取り付けられているものである請求項3記載の高圧栓。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−197984(P2009−197984A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43262(P2008−43262)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(508057405)株式会社シン・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】