説明

高圧金属蒸気放電ランプおよび照明器具

【課題】始動補助に紫外線放射始動素子を封装した小形低定格出力の高圧放電ランプにおいて、始動が容易で不所望な光放射の低減や発光効率の向上および部品点数の減少がはかれる高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】発光管5と;この発光管5の周囲を囲繞するように配設された耐熱透光性部材からなる円筒状の円筒管8と;この円筒管8内に少なくとも一部が臨むように配設された紫外線放射始動素子7と;上記発光管5および円筒管8の両端部を支持するとともに紫外線放射始動素子7の外部電極48を形成する導電体からなるサポート部材4a,4bと;上記発光管5の導入導体63と接続した給電部材3a,3bと;上記発光管5、円筒管8、紫外線放射始動素子7、サポート部材4a,4bおよび給電部材3a,3bを収容した外管バルブ1と;を備えた高圧金属蒸気放電ランプL。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動用の紫外線放射始動素子を設けた高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧金属蒸気放電ランプ、たとえば発光管内にハロゲン化物を封入し高効率、高演色を得るようにしたメタルハライドランプは、ハロゲンによる電子吸着作用により初期電子が不足して、始動特性がよくないということがある。
【0003】
そこで、この初期電子を増やす対策として、従来は発光管の内部にプロメチウムPm147 やクリプトンKr85などの放射性物質を封入して、始動時の電極間の電子放射を容易にすることが行われていたが、発光管内部に放射性物質を封入することは、作業上、放射性物質に対する取り扱いおよび保管に厳重な管理を必要とするため、近年では、このような放射性物質に替わる始動補助の手段が採られている。
【0004】
この始動補助手段として、特開平1−134848号公報、特開平1−134849号公報や特公平7−7662号公報などには、始動時、メタルハライドランプなどの発光管に紫外線を照射する始動素子を備えた紫外線を利用する高圧金属蒸気放電ランプが開示されている。
【0005】
この紫外線照射による高圧金属蒸気放電ランプは、放電ランプを点灯させる際に安定器から供給される高いパルス電圧を発光管の一対の電極および紫外線放射始動素子が有する内部導電部材と外部導電部材とにそれぞれ印加し、紫外線放射始動素子のバルブ内で放電させて紫外線を発生させ、この紫外線を発光管内に向け照射することにより電極の表面から電子が放出され初期電子数が増加して発光管内における放電が生起し易く、始動が行われるものである。
【0006】
また、この高圧金属蒸気放電ランプは、点灯時の発光管内の圧力がランプ電力や大きさにもよるが100kPa〜500kPa程度になり、不測の事態たとえば寿命末期には発光管バルブの劣化、傷や点灯回路装置の不具合に起因する異常電流などによって内圧が上昇したときなどに、その圧力に耐えきれず発光管バルブの破裂を招くことがあり、この発光管バルブが破裂した場合は、発光管バルブなどの破片が外管バルブをも破損してこれらの破片などを器具外に飛散するおそれがあった。
【0007】
この対応手段として、照明器具側に保護カバー部材などを設けていたが、経時とともにカバー部材が汚れ可視光の透過率を下げて器具の発光効率が低下したり、この汚れの清掃も高所にある照明器具の場合は大変手間を要していた。
【0008】
そこで、この器具側の保護カバー部材に代えて放電ランプを構成する外管バルブの外表面に透光性樹脂などの材料で防飛被膜を形成したり、あるいは発光管バルブを囲繞して耐熱透光性の円筒管を設けるなど放電ランプ側に
防飛手段を施し、外管バルブの破損を防ぐようにすることが知られているとともに実際に多く採用されている。
【0009】
そして、本発明者等はこの種高圧金属蒸気放電ランプにおいて、外管バルブ内に上記発光管バルブ破裂時の破片などの飛散防止および発光管の発光特性の向上のため発光管を囲繞して昇温させる円筒管と、この円筒管外の円筒管の仮想延長線内の所定位置に上記始動補助のための紫外線放射始動素子を有する始動回路構成部材とを設けてなる発明を出願している。(特許文献1)
【特許文献1】特開2003−100256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の技術文献1のように、発光管バルブ内にこの発光管を囲繞する円筒管および紫外線放射始動素子を有する始動回路構成部材を設けたランプは、構成が簡単であるとともに経済性も高くなるという利点を有する。
【0011】
しかしながら、近時、照明器具の小形化に伴いこの器具に挿着される放電ランプも外径および全長などの小形化が求められている。この小形化されたランプにおいて、小さくなった外管バルブ内に発光管、円筒管や紫外線放射始動素子およびこれらを支持するサポート部材や給電部材などを封装するにはその作業や部材の配置などに問題が生じることがある。
【0012】
すなわち上記発光管、円筒管や紫外線放射始動素子などはそれぞれがサポート部材などを介し支持されていて、外管バルブの内容積の関係などでこれら部材の組立や配置などの作業が困難になっていた。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、外管内に発光管を囲繞して耐熱透光性の円筒管を設けるとともに始動補助に紫外線放射始動素子を封装した高圧放電ランプにおいて、始動が容易で不所望な光放射の低減や発光効率の向上および部品点数の減少がはかれる高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプを用いた照明器具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、バルブ内に導入導体を介して一対の電極が封装されるとともに放電媒体が封入された発光管と;この発光管の周囲を囲繞するように配設された耐熱透光性部材からなる円筒管と;この円筒管内に少なくとも一部が臨むように配設された紫外線放射始動素子と;上記発光管および円筒管の両端部を支持するとともに紫外線放射始動素子の外部電極が配設された導電体性のサポート部材と;上記発光管の導入導体と接続した給電部材と;上記発光管、円筒管、紫外線放射始動素子、サポート部材および給電部材を収容した外管バルブと;を具備していることを特徴とする。
【0015】
本発明の高圧金属蒸気放電ランプは、電位がかかるサポート部材で紫外線放射始動素子を機械的に支持させるとともにこのサポート部材が外部電極を形成するようにしたもので、紫外線放射始動素子を単独支持させる格別な支持部材を必要としない。また、部品点数を減らすことができるので発光管からの光放射を阻害する要因の低減がはかれる。
【0016】
また、紫外線を発生する紫外線放射始動素子の少なくとも一部が円筒管内に位置して配設された、紫外線放射始動素子を発光管内の電極に近付けてある。そして、発光管上下の電極およびこの電極に並列的に接続した紫外線放射始動素子には同時に通電され、始動器として電極に近付け配設した紫外線放射始動素子は、内部のグロー放電によりアルゴンガスや水銀から発生した紫外線の電極への照射量が多くなり初期電子数が増加して、放電ランプに接続した点灯回路装置の安定器からのパルス電圧が電極に印加されることによって放電ランプの始動を容易に行わせることができる。
【0017】
また、紫外線放射始動素子から発光管方向へ直接放射される紫外線だけでなく、円筒管方向に向かった紫外線の一部が円筒管の壁面で反射して遠方側の電極に向け照射して初期電子の増加がはかれるのでその始動性を高めることができる。
【0018】
さらに、紫外線放射始動素子が円筒管内に位置しているので、小形化された外管バルブとステムとを封止する際、外管バルブ内面側から紫外線放射始動素子に伝熱される熱的影響を低減することができる。
【0019】
なお、本発明および以下の発明において、紫外線放射始動素子の外部電極は、紫外線放射始動素子とは別体をなす、導電性の金属体からなるサポート部材側を指すが、その紫外線放射始動素子に設けられていて、この外部電極がサポート部材と接続するようにしたものでもよい。
【0020】
本発明の請求項2に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、紫外線放射始動素子が、サポート部材を切り起して形成した外部電極によって挟持され機械的支持と電気的接続がなされていることを特徴とする。
【0021】
サポート部材の一部を切り起した切片に紫外線放射始動素子を抱持させることにより、外部電極を容易、かつ、安価に製造することができ、組立て性も向上する。
【0022】
本発明の請求項3に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、紫外線放射始動素子が、導電体からなるサポート部材に形成した透孔内に嵌挿されていることを特徴とする。
【0023】
サポート部材に形成した孔内に紫外線放射始動素子を嵌挿させることで、挿着支持が完了するので、組立て作業が容易になる。
【0024】
本発明の請求項4に記載の照明器具は、器具本体と;この器具本体内に配設された上記請求項1ないし3のいずれか一に記載の高圧金属蒸気放電ランプと;この高圧金属蒸気放電ランプに接続した点灯回路装置と;を具備していることを特徴とする。
【0025】
上記請求項1ないし3に記載の始動特性の向上した高圧金属蒸気放電ランプを組み込んでいるので、短時間でランプの点灯がはかれるとともに、万一、発光管バルブが破損しても部材の破片を飛散させることがない安全性の高い照明器具を提供できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、発光管に近接して紫外線放射始動素子を配設したので、電極への紫外線照射量を多くして、短時間のうちに容易に始動することができ、また、格別な紫外線放射始動素子の支持部材を別個に設ける必要がないにで、部品点数の低減がはかれ、組立てが容易な金属蒸気高圧放電ランプを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る高圧金属蒸気放電ランプとして、メタルハライドランプの概略を示す正面図、図2は図1中の上方(口金)側にあるサポート部材を下方から見た概略を示す横断面図、図3は図1中の外管バルブ内に配設した発光管部分を示す拡大断面正面図、図4は図1および図2中に配設した紫外線放射始動素子の支持部を拡大して示し図4(a)は正面図、同図4(b)は下面図である。
【0028】
この図1に示すメタルハライドランプLは、外管バルブ1の一端部に封止されたステム2から導出した一対の内導線2a,2bの一方に長尺の給電部材3aを、他方に短尺の給電部材3bを接続するとともに長尺の給電部材3aの中間部の上下に設けたサポート部材4a,4bに発光管5、紫外線放射始動素子7およびこの発光管5と紫外線放射始動素子7とを囲繞した耐熱透光性円筒管8の端部を支持させた構造となっている。
【0029】
これら各部分を詳述すると、外管バルブ1はホウケイ酸ガラスなどの透光性の硬質ガラスからなる直管形(T形)をなし、図示下部側の略半球状に閉塞されたトップ部11および上部側のネック部12を有し、このネック部12側にはステム2との封止部(図示しない。)が形成され、この封止部を覆ってE形の口金10が取付けられている。
【0030】
発光管5は図3に拡大して示すように、略球状をしている膨出部52の両端に連続的な曲面によって繋った小径筒状部53a,53bを連設したアルミナ製の透光性セラミックス製の放電容器を形成する発光管バルブ51を備え、この発光管バルブ51の小径筒状部53a,53bの先端内を貫通して、電極6A,6Bに接続したニオブなどからなる線状の導入導体63,63が耐熱性シール剤64,64により気密に封止られた上下対称構造をしている。
【0031】
上記導入導体63,63は、発光管バルブ51外に導出した外導体部66と、この外導体部66を小径筒状部53a,53b内に延長した部位においてモリブデン線を巻回したコイル状部65とからなる。また、上記各電極6A,6Bはコイル状部65を介し互いに突合せ溶接し、先端側を膨出部52側に臨ませたタングステン線からなる電極軸62およびこの電極軸62の先端にタングステン細線を巻装したコイル状電極61から構成されている。
【0032】
なお、上記コイル状部65は小径筒状部53a,53b内を貫通する電極軸62と小径筒状部53a,53b内壁面との隙間が大きい場合に形成されたもので、細線からなるコイルを巻装して隙間を0.1mm以下と小さくしてあり、このコイルの外側面が小径筒状部53a,53bの内面と接触していてもよい。また、上記電極軸62の先端のコイル状電極61は必須のものではなく、電極軸62の先端が電極作用を行うものであってもよい。
【0033】
また、この発光管5のバルブ51内には、放電媒体としてたとえばアルゴンArなどを含む始動および緩衝ガスならびに発光金属としてよう化ナトリウム、よう化タリウム、よう化インジウムおよびよう化ツリウムなどの金属ハロゲン化物と水銀とが封入されている。
【0034】
耐熱透光性円筒管8は、石英ガラスからなる上下端部が開口した円筒形状をなし、発光管5の周囲を所定の間隔を隔て囲繞しているともに少なくとも発光管バルブ51の内端部を覆う長さで配設されている。
【0035】
ステム2の内導線2a,2bに接続して外管バルブ1内に延在する給電部材3a、3bは、モリブデンやステンレスなどからなる線状や板状をなし、一方の長尺の給電部材3aは発光管5から導出した外導体部66と接続しているとともに中間部の上下においてサポート部材4a,4bが取り付けられている。また、他方の給電部材3bは、発光管5から導出した外導体部66と接続している。また、これら給電部材3a,3bには、ゲッター40などを取付けることもできる。
【0036】
サポート部材4a,4bは、ステンレスや鉄−ニッケル合金などの導電性の金属からなる薄板を所定形状に打ち抜き形成した、たとえば中央に透孔41が設けられた円環状のランド42の周囲に複数の帯状のレグ部43,44,…,45,…,46,47(ここでは一部図示されてないものもあるがレグ部43(給電部材3a接続用)が各1か所、レグ部44(外管バルブ1内壁当接用),45(円筒管8内壁当接用)が略等角度で各3か所、レグ部46(発光管5の小径筒状部53a,53bの外周壁当接用)が各1〜3か所,レグ部47(紫外線放射始動素子7抱持用)が各1か所)を有し、これらレグ部43,44,…,45,…,46,…,47を上方、下方や側方などに折曲げたり給電部材3aに抱持させることによって上記発光管5、紫外線放射始動素子7および耐熱透光性円筒管8を支持することができる。
【0037】
すなわち、各サポート部材4a,4bは、外管バルブ1軸に対し直交する状態となるようレグ部43を長尺の給電部材3aの中間部の上下に固定され、発光管5両端の小径筒状部53a,53bがサポート部材4a,4b中央の透孔41に緩通してある。
【0038】
また、各サポート部材4a,4bに設けられた複数のレグ部44,…の平坦面と円筒管8の端面とが当接して、円筒管8は上下両端面を挟む状態で支持されているとともにこれら複数のレグ部44,…の先端側は円筒管8と離れる方向に傾斜して折り曲げられその先端部が外管バルブ1の内壁面と弾性的に当接している。また、複数のレグ部45,…は円筒管8内の方向に折り曲げられその先端部が円筒管8の内壁面と弾性的に当接している。
【0039】
また、外管バルブ1のトップ部11側に位置するサポート部材4aに設けられたレグ部46が発光管5軸に沿うよう折曲げられ小径筒状部53aから延出した導入導体63と接続固定され、また、ネック部12側に位置するサポート部材4bに設けられた3か所のレグ部46,…(一部は図示されていない。)は透孔41に遊通された小径筒状部53bを中心軸上に位置するよう外側より押圧している。
【0040】
紫外線放射始動素子7はいわゆるエンハンサであって、図4に拡大して示すように石英ガラスからなる紫外線透過性の気密バルブ71の端部に形成した封止部72内にモリブデン線などからなる封着線兼用のリード線73が気密封止され、気密バルブ71の紫外線放射部75内においてモリブデンなどからなる箔状や線状の内部電極74を構成する導電部材が接続してあり、バルブ71外に導出したリード線73を上記他方の給電部材3bに接続している。また、この気密バルブ71内にはアルゴンなどの希ガスが封入されている。
【0041】
このエンハンサ7は、気密バルブ71の内部電極74側の紫外線放射部75が円筒管8内に臨むとともに発光管5軸にほぼ沿って配設され、サポート部材4bに形成した帯状のレグ部47をバルブ71外周に巻き付けその先端部において溶接固定して抱持させた巻回部48を形成している。
【0042】
すなわちこの巻回部48はサポート部材4bを介し上記給電部材3aに電気的に接続した外部電極の作用をなす。このとき巻回部48は、気密バルブ71との間に少々の隙間があってもよいが少なくとも一部が接触していて気密バルブ71(紫外線放射始動素子7)を機械的に支持するとともに電気的に接触している作用を有する。
【0043】
外管バルブ1内における発光管5、エンハンサ7および円筒管8は、上述したような構成で給電部材3a,3bやサポート部材4a,4bに支持固定または電気的な接続がなされるが、外管バルブ1内壁面や円筒管8壁面、小径筒状部53bの外周面に弾性当接するレグ部44,…,45,…,46,…によりランプ(外管バルブ)軸のほぼ中心軸上に保持されるとともに多少の振動や衝撃が加わってもこれを緩和して発光管5などの損傷を防ぐことができる。
【0044】
なお、各レグ部44,…,45,…,46,…など他の部品と弾性当接する部分には、半球状や屈曲状などの凸部を形成しておいてもよい。また、給電部材3a,3b、サポート部材4a,4bや導電部材など相互の接続や固定は、溶接、ろう付けやかしめなどの手段で行うことができ、また、内導線2a,2b、給電部材3a,3bや導電部材などは格別に設けず、長さや配設方向を変えるなどのことで兼用することにより部材点数を減らすことは構わない。
【0045】
そして、図1に示す高圧金属蒸気放電ランプLは、直管(T形)の外管バルブ1内に発光管5を収容した二重管構造のメタルハライドランプLとして、口金10部をソケットに装着して、電源から安定器などを有する点灯回路装置(図示しない。)を介し通電され、鉛直や水平状態あるいは傾斜状態で点灯される。
【0046】
この点灯回路装置としては、矩形波点灯回路装置またはチョークコイル式やトランス式などの磁気励起方式の安定器点灯回路装置を用い点灯させることができる。たとえば高圧放電ランプを点灯周波数が100Hz〜1kHzの矩形波で、かつ、安定器からの2次開放電圧が150〜400Vで点灯することができる。
【0047】
点灯回路装置に接続された放電ランプLは、始動時、口金10の端子部(図示しない。)に電気的に並列接続した内導線2a(2b)−給電部材3a(3b)−外導体部66(66)−導入導体63(63)を介し発光管5内にある電極6Aと電極6Bおよび内導線2a(2b)−給電部材3a(3b)−サポート部材4bのレグ部43(リード線73)−ランド42−レグ部47を介し外部電極を形成する巻回部48と内部電極74に高圧パルス電圧が印加される。
【0048】
この電圧の印加によって、発光管5内にある電極6A,6B間に比べインピーダンスの低いエンハンサ7の内部電極74と巻回部(外部電極)48間に放電が生起する。この放電によりエンハンサ7内に紫外線が発生するとともにこの気密バルブ71の紫外線放射部75を透過して外部に紫外線が放射され、発光管5内の電極6A,6Bを照射する。
【0049】
本発明においては、発光管5に近接してエンハンサ7が配設されているので、電極6A,6Bに向かう紫外線放射量を多くでき、また、このとき発光管5軸方向などや円筒管8方向に向かい円筒管8壁面で反射した紫外線が他方の電極6Aにも到達して両電極6A,6Bへの紫外線照射量を従来より増すことができる。
【0050】
そして、両電極6A,6B間の放電が促進されて、発光管5を約2〜4秒(従来に比べ約20〜70%短縮)の極めて短時間のうちに容易に始動するとともに、その後は安定した点灯を持続させることができる。すなわち、発光管5の放電空間内に存在する電極6A,6Bに、電極構成金属の仕事関数以上のエネルギをもつ紫外線が照射された場合、電極6A,6B表面から電子が放出され、この初期電子数が増加して放電を生起し易くできる。
【0051】
なお、放電が両電極6A,6B間へと移行すればこの電極6A,6B間のインピーダンスが下がり、エンハンサ7の電極を形成する内部電極74と外部電極を形成する巻回部48との間のインピーダンスの方が高くなってエンハンサ7内の放電が停止する。
【0052】
このように、本発明の高圧金属蒸気放電ランプLは、電位がかかるサポート部材4bに切り起こし形成したレグ部47の先端側を巻き付け形成した巻回部48でエンハンサ7、の機械的支持と電気的接続を行なわせているので、エンハンサ7を単独支持させる格別な支持部材を必要とせず、部品点数の低減および発光管5からの光放射を阻害する要因の低減がはかれ、生産性および発光効率を向上できる利点がある。
【0053】
また、発光管5の電極6A,6Bに近接して配設された、サポート部材4bに紫外線放射始動素子7が支持されているので、ランプ始動時、発光管5内における初期電子数が増加する結果、放電生起がし易くなるとともに確実となり、ランプLの始動に要する時間の短縮がはかれる始動特性の向上した放電ランプLを提供できる。
【0054】
また、この放電ランプLは、外管バルブ1とステム2との封止が行われるが、円筒管8内に紫外線放射始動素子7を配設したことにより、封止の際の加熱バーナなどによる紫外線放射始動素子7の昇温が低減される結果、紫外線放射始動素子7が熱劣化して所定の紫外線放射を行わないなどの事態を防止できる。
【0055】
また、万一、発光管バルブ51が破損し部材の破片が飛散しても、発光管5の周囲を囲繞して円筒管8を設けたことにより、これを阻止ないしは衝撃を緩和して外管バルブ1に及ぶ応力を低減できて、外管バルブ1の破損を防止して安全上も大いに寄与できる。
【0056】
さらに、このランプLは発光管5に近接するとともに周囲を囲繞して配設した円筒管8によって発光管5の放熱が遮蔽されるため、発光管バルブ51をさらに昇温することができる。すなわち、この温度上昇は発光管バルブ51の全体に及び最冷部を形成する内端部の電極6A,6Bの根元部をも昇温するので、バルブ51内に封入された発光金属が蒸発して蒸気圧を高め発光効率や演色性などの特性を向上した高圧金属蒸気放電ランプLを提供できる。
【0057】
なお、本発明者等の実験によれば、定格電力が20〜150W、口金を含むランプ全長が約100〜150mmの小形低電力化がはかられる高圧放電ランプにおいて、円筒管内の発光管の電極と近接してエンハンサなどの紫外線放射始動素子を位置させることにより、始動特性を向上できた。
【0058】
また、図5は本発明に関わる紫外線放射始動素子7を支持させたサポート部材の他の実施の形態を示す。図5(a)はサポート部材4cの上面図、同図5(b)は図5(a)のサポート部材4cが紫外線放射始動素子7を支持した状態の要部を一部切欠して示す正面図で、図中、図2,4と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0059】
このサポート部材4cは導電体からなる金属薄板を円板状に打ち抜き形成し、一対のサポート部材4cでもって発光管5および円筒管8を挟み支持する。このサポート部材4cには、たとえば中央部に発光管5の小径筒状部53a,53bが通る透孔41が、中間部には紫外線放射始動素子7が嵌挿される透孔49が、また、外周縁には図示していないが突出した給電部材3aとの固定部材が設けられている。そして、上記透孔41に発光管5の小径筒状部53bを、また、透孔49に紫外線放射始動素子7のバルブ71を挿入することによりそれぞれ支持がなされ、透孔49の周縁が紫外線放射始動素子7に対する外部電極となる。
【0060】
このとき、これら透孔41、49などの周縁に、小径筒状部53a,53b、紫外線放射始動素子7を固定や係止する切り起こし片や突起など、たとえば図5(b)に示すように透孔49の打ち抜き時に透孔49の周縁に内方に傾斜した複数個の舌片40,…を切り起こし形成しておくことにより、この舌片40,…が透孔41に嵌挿された紫外線放射始動素子7の気密バルブ71を圧接して強力な支持を行なわせるとともに電気的にも広い面積が外部電極として内部電極と対応して始動性を向上することができる。なお、このとき特に紫外線放射始動素子7の嵌挿部は外部電極76として作用するので少々の隙間はあってもよいが気密バルブ71と少なくとも一部が接触しているのが電気的に好ましい。
【0061】
そして、この円板状に形成したサポート部材4cも、図2に示す形状に形成したサポート部材4bと同様な発光管5、円筒管8および紫外線放射始動素子7の支持と始動素子7の外部電極としての作用効果を呈する。
【0062】
また、図6は本発明に係わる高圧金属蒸気放電ランプLを装着した店舗照明用などの照明器具9の実施の形態の概略を示す縦断面図である。
【0063】
この図6の照明器具(ダウンライト)9は、筐体91の内部上方に設けられた基台92にソケット93が取着されているとともに内部に金属板製の円錐形状をして内面に反射面が形成された反射笠94が固定され、上記ソケット93に放電ランプLの口金10が装着されることによりランプLの保持と電気的な接続がなされる。なお、図中、95は筐体91の開口部を覆うよう設けられた透光性のガラス板からなる保護カバー部材である。
【0064】
この照明器具9は、たとえば百貨店などの天井面などに筐体91が反射笠94の開口部側を下方に向けて取付けられ、電源スイッチを入れることにより電源から点灯回路装置(図示しない。)、ソケット93を介して放電ランプLに通電される。
【0065】
そして、この反射笠94内で口金10側を上方(ヘースアップ)にした垂直状態にあるランプLが点灯されると、ランプLからの可視光は反射面で反射され、あるいは直接に開口部を透過して、被照射物である下方の商品、催場や通路などを照射して所定の照度を得ることができる。
【0066】
したがって、上記高圧金属蒸気放電ランプLを用いた本発明の実施の形態に係わる照明器具9は、始動特性の向上した放電ランプLを用いているので、従来の器具よりランプLを短時間のうちに点灯して所望の照明が行えるとともに安全性が向上できるので、器具の開口部に強化ガラスや金網などからなる飛散防止用の保護カバー部材などの配設を省くことが可能な照明器具9を提供できる。
【0067】
なお、この実施の形態では上記筐体91、基台92、ソケット93、反射笠94などで器具本体を構成しているが、必要でない場合は一部部材が省略されたり、あるいは前面カバーなどを含み器具本体を構成しても差し支えない。また、ランプLの点灯回路装置や電源スイッチなどは器具本体とは別の所に設けられていても、筐体91内などに納められていてもよい。
【0068】
なお、本発明は上記実施の形態に限らない。たとえば放電容器である発光管バルブを形成する材料は、アルミニウム酸化物(アルミナ)などからなるセラミックスを用いているが、発光特性、耐熱性、耐蝕性や電気絶縁性などを満足できるイットリウム−アルミニウム−ガーネットの酸化物、イットリウム酸化物、アルミニウム窒化物、ルビーやサファイアなどからなる透光性セラミックスを用いても、あるいは放電ランプの種類によっては石英ガラス、ホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの酸化ケイ素を主成分とする耐熱透光性高シリカガラスであってもよい。
【0069】
発光管バルブは円筒形、長円形、球形などの単一形状や複合形状したものからなる。発光管バルブの端部に形成される封止部の形態はセラミックスの場合は接着剤の充填、ディスクやキャップを焼嵌めたり接着剤による封止を採用することができ、また、ガラスの場合は金属箔や金属線などの導入導体をバルブ端部内に圧潰封止やシュリンク(焼き絞り)封止などで封止することができる。
【0070】
また、発光管内に設けられる電極は、少なくとも一対であって、補助電極の有無は問わない。また、この発光管バルブ内に封入される放電媒体としては、水銀、発光金属、ハロゲンや希ガスなどがランプ種類、用途や特性などに応じて適宜選択して用いることができる。
【0071】
また、円筒管は、上記発光管バルブと同様な耐熱透光性の材料を用いることができ、その形状は円筒形状をなしている。この円筒管の肉厚は、1.0〜3.0mm程度の範囲のもので、円筒管を二重管としてもよい。
【0072】
この円筒管の強度を高める手段として、円筒管の外周に耐熱性のセラミックスなどの無機繊維からなる線状やメッシュ状の補強体を巻装することにより対応させることができる。また、円筒管の表面に蛍光体膜、光拡散膜、紫外線を反射や吸収する遮断膜などの被膜あるいは光拡散用の凹凸面などを形成しても差支えない。
【0073】
また、発光管の支持は、バルブ端部またはこの端部から導出した外部導入導体を、サポート部材または給電部材に直接固定させてもよく、その固定手段は帯状のバンド部材を用いたり溶接、ろう付けやかしめなどにより行うことができる。
【0074】
また、紫外線放射源をなす始動素子は、エンハンサなどからなり、200nm〜460nmの波長の少な<とも一部を透過する石英ガラスやホウケイ酸ガラスなどの硬質ガラス、紫外線透過性の軟質ガラスあるいはセラミックなどの紫外線透過性のバルブが用いられ、バルブ内にはアルゴンガスまたはアルゴンガスと水銀などの放電媒体ならびに内部導電部材が封装されていて、グロー放電の際に紫外線を放出するものである。
【0075】
エンハンサの内部導電部材は、導電性および耐熱性を備えたモリブデンやタングステンなどの金属であってもあるいは内部の不純ガスを吸収するゲッタ機能を兼ねるタンタルなどを用いることができる。また、導電部材の形状および形態は、棒状、箔状やコイル状などであって、封止部を貫通した導入線と接続していてもあるいは導入線を有さず容器外部と誘電的に接続されるものであってもよい。
【0076】
そして、この紫外線放射始動素子の配置は、上記実施の形態では発光管に近接並行して設けたが、発光管に対し傾斜やほぼ直交して設けられていてもよい。また、紫外線放射始動素子の配置は、図1においてネック部12側のサポート部材4bの近傍に設けたが、トップ部11側のサポート部材4aの近傍に設けてもあるいは上下の両サポート部材4a,4bの近傍の複数箇所に設けてもよい。
【0077】
また、サポート部材4b,4cに形成する紫外線放射始動素子の挟持構造は、切り起こし片を巻回したり孔内に挿入したものに限らず、他の構造や手段で挟持させて外部電極を構成するようにしてもよい。
【0078】
要するに紫外線放射始動素子の紫外線放射部が発光管内の電極と近接対面していればよく、エンハンサは発光管内の電極より遠方にバルブの封止部側がくるようにして配設するのが好ましい。
【0079】
また、外管バルブは、石英ガラスまたはホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの硬質ガラスあるいはソーダーライムガラスなどの軟質ガラスでもって、その形状をA形、A形、AP形、B形、BT形やED形などに形成したものを用いることができる。
【0080】
また、この外管バルブの内部は、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気あるいは真空雰囲気としてある。すなわち、外管バルブ内に不活性ガスまたは窒素ガスを低圧封入するか真空雰囲気とすることにより、点灯時に高温となる発光管構成部材、サポート部材やステム構成部材の酸化などを防止するとともにランプの再始動時間を短縮したり、万一の外管バルブ破損時の破裂を防止できる。
【0081】
本発明が適用できる高圧金属蒸気放電ランプは、たとえば、メタルハライドランプ、ショートアークメタルハライドランプや高圧水銀ランプなどで発光管が外管バルブ内に封装された二重管などの多重管構造をしている。また、放電ランプの点灯姿勢は水平、鉛直はもちろん傾斜した姿勢であってもよい。
【0082】
さらに、本発明が適用できる照明器具は、反射鏡、透光性カバーやレンズなどの部材を有していても構わず、また、点灯回路装置の設置は器具内であっても器具外であってもよい。
【0083】
さらにまた、照明器具は高圧放電ランプの発光を何らかの目的で用いるあらゆる器具を含む広い概念である。たとえば百貨店、店舗、劇場、ホール、地下街、広場、オフィスや工場などの照明用はもちろん移動体用前照灯、光ファイバー用光源、画像投射用、光化学用、指紋判別用などに適用して、好ましい始動特性および発光特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の金属蒸気高圧放電ランプ(メタルハライドランプ)の実施の形態を示す概略正面図である。
【図2】図1中の上方(口金)側にあるサポート部材を下方から見た概略を示す横断面図である。
【図3】図1中の外管バルブ内に配設した発光管部分を示す拡大断面正面図である。
【図4】図1および図2中に配設した紫外線放射始動素子の支持部を拡大して示し、図4(a)は正面図、同図4(b)は下面図である。
【図5】本発明に関わる紫外線放射始動素子を支持させたサポート部材の他の実施の形態を示し、図5(a)は上面図、同図5(b)は図5(a)のサポート部材が紫外線放射始動素子を支持した状態の要部を一部切欠して示す正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に示す金属蒸気高圧放電ランプ(メタルハライドランプ)を装着した照明器具の概略を示す正面図である。
【符号の説明】
【0085】
L:金属蒸気高圧放電ランプ(メタルハライドランプ)
1:外管バルブ
3a,3b:給電部材
4a,4b,4c:サポート部材
48:外部電極(巻回部)
49:外部電極(透孔の周縁)
5:発光管
51:発光管バルブ(放電容器)
6A,6B:電極
63:導入導体
7:紫外線放射始動素子(エンハンサ)
74:内部電極
8:耐熱透光性円筒管
9:照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ内に導入導体を介して一対の電極が封装されるとともに放電媒体が封入された発光管と;
この発光管の周囲を囲繞するように配設された耐熱透光性部材からなる円筒管と;
この円筒管内に少なくとも一部が臨むように配設された紫外線放射始動素子と;
上記発光管および円筒管の両端部を支持するとともに紫外線放射始動素子の外部電極が配設された導電体性のサポート部材と;
上記発光管の導入導体と接続した給電部材と;
上記発光管、円筒管、紫外線放射始動素子、サポート部材および給電部材を収容した外管バルブと;
を具備していることを特徴とする高圧金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
紫外線放射始動素子が、サポート部材を切り起して形成した外部電極によって挟持され機械的支持と電気的接続がなされていることを特徴とする請求項1に記載の高圧金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
紫外線放射始動素子が、導電体からなるサポート部材に形成した透孔内に嵌挿されていることを特徴とする請求項2に記載の高圧金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
器具本体と;
この器具本体内に配設された上記請求項1ないし3のいずれか一に記載の高圧金属蒸気放電ランプと;
この高圧金属蒸気放電ランプに接続した点灯回路装置と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−140614(P2008−140614A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324225(P2006−324225)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】