説明

高屈折性浸液およびその使用

【課題】可能な限り高い屈折率と、顕微鏡分析に対するより高い適合性とを同時に備えた浸液を調製する。
【解決手段】浸液、一般構造式Iで示される化合物を、少なくとも1つ含む。


式中、RおよびRはそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含み、Xは、O、S、NR





、または


を示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれ、Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRを示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折性浸液、高屈折性化合物、およびこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡分析における光収集効率および分解能は、使用する対物レンズの開口数(NA)に直接影響を受ける。例えば、生細胞の単分子顕微鏡分析における主な問題は、様々な細胞成分、例えば、タンパク質、細胞代謝産物などの自家蛍光である。このような細胞の分析には、多くの場合、いわゆる全内反射顕微鏡法(TIRF)が用いられるが、これは広視野の技術である。全内反射蛍光顕微鏡分析において対物レンズを通して照射を行う場合、液浸油とカバーガラスの屈折率を含むNAは、更に励起光の侵入深さにも影響する。NAが著しく大きいと、極めて薄い層(100nm以下)の照射が可能となる。
【0003】
これまでの一般的な液浸油で達成可能である約1.49というNAを更に大きくするため、近視野顕微鏡用の高NAの液浸対物レンズを開発するには、より大きな屈折率nを持つ化合物または化合物混合物が必要である。更に、この化合物は様々な要求を満たすものでなければならない。つまり、可能な限り高い屈折率に加え、特に、内部蛍光が小さく、約380nmまで十分に透過性で、揮発性が低く、更に、毒性の低いことが望ましい。
【0004】
先行技術より、様々な高屈折性化合物および浸液が知られている。例えば、米国特許出願公開第2008/0135808号明細書は、ジヨードメタンとイオウとの混合物であって、約1.78の屈折率nを持つ液浸油を開示している。
【0005】
更に、同様の混合物は既に、1934年、AndersonとPayneによって言及されている(Liquids of High Refractive Index, Nature (1934), Vol. 133, p. 66)。“The Handbook of Chemistry and Physics”(The Chemical Rubber Co. (1968), Ohio, Robert C. Weast, 49. edition, E-219)より、特に、ジヨードメタンおよびイオウで飽和させたジヨードメタンも、高屈折性浸液として知られている。
【0006】
商標権所有者の調査より、これらについて次のような測定データが得られている。
ジヨードメタン:
屈折率n(546.1nm)=1.7495(20℃)
透過率(d=10mm、420nmにおいて):4%
粘度(20℃):9mm/s
ガラス濡れに乏しい。
ジヨードメタン−イオウ(90:10重量部):
屈折率n(546.1nm)=1.7896
透過率(d=10mm、450nmにおいて):2%
【0007】
しかし、これらの浸液は、例えば、ガラス濡れが非常に乏しいため、多くの用途には不十分である。更に、いわゆる“生細胞撮影”技術を用いる長時間記録は不可能である。しかし、特に、“生細胞撮影”技術は、これによって動いている細胞の顕微鏡的微速度撮影が可能となるため、現代の細胞生物学において特に興味深いものである。更に、液浸油は極めて臭いが強く、450nm以下では十分に透明ではなく、強い内部蛍光を示す。この性質は、蛍光中での単分子検出を想定している顕微鏡技術においては特に不都合である。このような顕微鏡技術の例として、いわゆる“光活性化局在性顕微鏡(photo activated localization microscopy:PALM)”技術が挙げられ、これは基本的に20nmまでの分解能が可能である。この技術を用いた、従来の分析限界より更に正確に測定可能な単分子の局在性確認により、極めて高解像度の画像を連続的に撮影することができる。更に、ジヨードメタンは、現在でも解明されていないその毒性のため、避けるべき化合物とされている。更に、ジヨードメタンは、約181℃という沸点の割に比較的高い揮発性を持つため、ジヨードメタン−イオウ混合物中にイオウが蓄積し、約12質量%を超えると晶出してしまう。このため、顕微鏡分析を続けることが困難で、不可能となることもある。また、関係する装置部品の洗浄にも多大な労力が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0135808号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】AndersonとPayne, Liquids of High Refractive Index, Nature (1934), Vol. 133, p. 66
【非特許文献2】“The Handbook of Chemistry and Physics”, The Chemical Rubber Co. (1968), Ohio, Robert C. Weast, 49. edition, E-219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、可能な限り高い屈折率と、顕微鏡分析に対するより高い適合性とを同時に備えた浸液の調製である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、請求項1に記載の浸液、請求項14に記載の浸液、請求項18に記載の化合物、更に、請求項19に記載の浸液または化合物の使用によって達成される。適宜発展を加えた有益な形態は、それぞれの従属請求項に規定されている。その中で、浸液の有益な発展形は、化合物の有益な発展形であり、またその逆も言える。
【発明の効果】
【0012】
可能な限り高い屈折率と、顕微鏡分析に対するより高い適合性とを同時に備えた、本発明による浸液は、一般構造式Iで示される化合物を少なくとも1つ含んでいる。
【化1】


式中、RおよびRはそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含み、Xは、O、S、NR
【化2】



【化3】


、または
【化4】


を示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれ、Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRを示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれる。これには、この化合物の全ての光学異性体およびラセミ混合物が含まれるものとする。本件において、この浸液は、顕微鏡、特に近視野顕微鏡用の、高NAの液浸対物レンズに特に適しており、多くの有益な特性を備えている。つまり、一般構造式Iで示される化合物は高い屈折率nを持ち、この化合物の化学構造を変えることができるため、例えば、使用するカバーガラス材料に合わせて、簡単に屈折率を適合させることができる。これにより、浸液の光学特性を、様々な操作温度、例えば、23℃および37℃に、最も良く適合させることができる。更に、この浸液は内部蛍光Fが著しく小さく、405nmの励起波長および485nmの蛍光放射において、硫酸キニーネ10mg/l当量以下である。少なくとも2つの環構造のため、この浸液は沸点が高く、前述の操作温度では蒸発せず、あるいは感知できるほどには蒸発しない。これにより、一方では、顕微鏡で使用している間に屈折率の変化が起こらず、もう一方で、操作範囲中の不対処(immission)値も著しく小さくすることができる。その他の長所は、ガラス表面(カバーガラスなど)を十分に濡らし、更に、この浸液は、カバーガラスを用いない操作において、調製物の不都合な褪色を起こさないため、通常の顕微鏡染料の色安定性が高いことである。本発明に提示の化合物は、ジヨードメタンやジヨードメタン−イオウ混合物に比べて非常に粘稠な媒体である。このように、本浸液は、その様々な長所によって、様々な顕微鏡技術、特に、蛍光顕微鏡法に非常に適している。本件においては、基本的に、浸液に一般構造式Iで示される化合物を2つ以上加えることで、浸液の光学的および機械的特性を、様々な要求の形に合わせて、特に簡単かつ的確に適合させることができる。
【0013】
本発明の有益な発展形において、一般構造式I中のRを、一般構造式IIを持つものとする。
[化5]
−Z− (構造式II)
式中、Rは、少なくとも1つの環構造を含み、Zは、(CRを示し、Rはそれぞれ独立して、水素または炭化水素より選ばれ、nは、1から10の整数である。こうして、2つの環構造、RとRを、調節可能なスペーサ(Z)で互いに隔てることで、一般構造式Iで示される化合物の光学特性に加え、特に、その粘度と揮発性も個別に変えることができる。
【0014】
本発明のもうひとつの有益な発展形において、一般構造式Iで示される化合物を、20℃、435nmから645nmの波長範囲で、少なくとも1.52、望ましくは、少なくとも1.60の屈折率nを持つものとする。望ましくは、一般構造式Iで示される化合物を、20℃、589nmの波長で、1.60以上、特に、1.64以上の屈折率nを持つものとする。このため、本浸液は、高NAの液浸対物レンズに適しており、特に薄い層の顕微鏡分析に使用することができる。
【0015】
本発明のもうひとつの有益な発展形において、一般構造式Iで示される化合物を、20℃、厚さ10mmの層、370nmから400nmの波長範囲で、少なくとも1%、特に、少なくとも2%の透過率、および/または、400nmから420nmの波長範囲で、少なくとも15%、特に、少なくとも20%の透過率、および/または、420nmから450nmの波長範囲で、少なくとも40%、特に、少なくとも50%の透過率、および/または、450nmから800nmの波長範囲で、少なくとも70%、特に、少なくとも80%の透過率を持つものとする。
【0016】
20℃から40℃の温度範囲で、少なくとも50mm/s、特に、少なくとも100mm/sの粘度νを持つ浸液は更に有益である。このような場合、本浸液は、特に、顕微鏡での使用に最も適した流動性を備えている。
【0017】
本発明のもうひとつの有益な発展形において、本浸液を、20℃から40℃の温度範囲で、少なくとも18、特に、少なくとも20のアッベ数Vを持つものとする。このような場合、起こり得る像欠陥を有益に減らし、あるいは少なくともかなりの部分を除くことができる。
【0018】
本発明のもうひとつの有益な発展形において、少なくとも1つの化合物のRおよび/またはRを、少なくとも1つの単環式および/または二環式および/または三環式環構造を含むものとする。これにより、化合物、すなわち浸液の光学的および機械的特性を、それぞれの使用目的に最も良く適合させることができる。本件において、特に二環式および三環式環構造が、屈折率の増大に有益であることが分かった。
【0019】
もうひとつの有益な発展形において、少なくとも1つの化合物のRおよび/または Rを、少なくとも1つの飽和および/または不飽和および/または芳香族環構造を含むものとする。本件において、特に芳香族環構造が、屈折率の増大に有益であることが分かった。
【0020】
少なくとも1つの化合物のRおよび/またはRが、少なくとも1つのヘテロ原子、特に、O、N、および/またはSを含む、少なくとも1つの環構造を含んでいるならば、更に有益である。少なくとも1つのヘテロ原子またはヘテロ環構造があると、化合物または浸液の屈折率を有益に増大させることができる。
【0021】
本件では、もうひとつの発展形において、少なくとも1つの化合物のRおよび/またはRが、少なくとももう1つの官能基を含んでいると、有益であることが分かった。これはまた、浸液の光学的、化学的、および機械的特性を、それぞれの使用目的に最も良く合うよう、簡単かつ柔軟に適合させられることを示している。
【0022】
本件において、少なくとももう1つの官能基が、カルボン酸、チオカルボン酸、カルボン酸エステル、特に、アルキルおよび/またはアリールカルボン酸エステル、チオカルボン酸エステル、特に、アルキルおよび/またはアリールチオカルボン酸エステル、エーテル、特に、アルキルおよび/またはアリールエーテル、チオエーテル、特に、アルキルおよび/またはアリールチオエーテル、ハロゲン化物、特に、塩化物、臭化物、および/またはヨウ化物、ケトン、チオケトン、アルデヒド、チオアルデヒド、アルコール、チオール、および/またはアミンを含んでいると、有益であることが分かった。これにより、屈折率を、それぞれの要求に最も良く適合させることができる。ここで、特にイオウ含有官能基とハロゲン化物は、屈折率を大きくするよう働く。
【0023】
本発明のもうひとつの発展形において、浸液に少なくとも1つの添加剤を加えて、浸液の粘度νおよび/または屈折率nを所定のパラメータ値に調節すると、有益であることが分かった。これによって、粘度νを、所望の操作温度に最も良く、簡単に合わせることができる。あるいは、または更に、添加剤の種類と量を適切に選ぶことで、浸液の屈折率を、特に正確かつ再現性良く調節することができる。
【0024】
もうひとつの有益な発展形において、少なくとも1つの添加剤は、アルキルナフタレン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ヨードナフタレン、フェニルナフタレン、および/またはベンジルナフタレンを含むものである。これには、前述の添加剤の全ての位置異性体が共に挙げられているものとする。アルキルナフタレンで、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、またはイソプロピルナフタレンが示される。また、より長鎖の分枝および/または非分枝アルキル鎖を持つアルキルナフタレン類や、多置換ナフタレン類も含むことができる。前述の添加剤を1つ以上用いることで、分散性、粘度、低揮発性、およびスライドのぬれ性に関する浸液への要望が、確実かつ安価に叶えられる。前述の添加剤は更に、少なくとも1つの環構造をそれぞれ配置するものであり、また一部は、屈折率を大きくする官能基を配置するものであるため、添加剤の質量分率が高くても浸液は高屈折率となる。前述の添加剤は更に、市販品として信頼性が高く、長期に亘って入手可能であり、また通常の調製法(例えば、真空蒸留)を用いて、簡単かつ安価に、高い光学品質のものに変えることができる。
【0025】
もうひとつの態様において、本発明は、一般構造式IIIで示される化合物を少なくとも1つ含む浸液に関する。
【化6】


式中、Xはそれぞれ互いに独立して、O、S、NR
【化7】



【化8】


、または
【化9】


を示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれ、Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRを示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれる。これには、この化合物の全ての光学異性体およびラセミ混合物が含まれるものとする。一般構造式IIIで示される化合物は、20℃、435nmから440nmの波長範囲で、少なくとも1.60の屈折率nを持つ。この浸液は、顕微鏡、特に近視野顕微鏡用の、高NAの液浸対物レンズに特に適しており、多くの有益な特性を備えている。つまり、一般構造式IIIで示される化合物は、少なくとも1.60という高い屈折率nを持ち、この化合物の化学構造を変えることができるため、例えば、使用するカバーガラス材料に合わせて、簡単に屈折率を適合させることができる。これにより、浸液の光学特性を、様々な操作温度、例えば、23℃および37℃に、最も良く適合させることができる。更に、この浸液は内部蛍光Fが著しく小さく、405nmの励起波長および485nmの蛍光放射において、硫酸キニーネ10mg/l当量以下である。その他の長所は、ガラス表面(カバーガラスなど)を十分に濡らし、更に、この浸液は、カバーガラスを用いない操作において、調製物の褪色を起こさないため、通常の顕微鏡染料の色安定性が高いことである。このように、本浸液は、その様々な長所によって、様々な顕微鏡技術、特に、蛍光顕微鏡法に非常に適している。本件においては、基本的に、浸液に、一般構造式IIIで示される化合物を2つ以上加えることで、浸液の光学的および機械的特性を、様々な要求の形に合わせて、特に簡単かつ的確に適合させることができる。
【0026】
20℃、440nmから645nmの波長範囲で、少なくとも1.52、望ましくは、少なくとも1.57の屈折率nを持つ、一般構造式IIIで示される化合物は、更に有益である。これにより、本浸液は、広い波長範囲に亘って高い屈折率を持つため、様々な顕微鏡技術を高い分解能で行うことができる。
【0027】
本発明のもうひとつの有益な発展形において、少なくとも1つの化合物のRおよび/またはRをそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含むものとする。少なくとも1つの環構造のため、この浸液は沸点が高く、前述の操作温度では蒸発せず、あるいは感知できるほどには蒸発しない。これにより、一方では、使用している間に屈折率の変化が起こらず、もう一方で、操作範囲中の不対処値(immission value)も著しく小さくすることができる。
【0028】
本発明のもうひとつの有益な発展形において、一般構造式IIIで示される化合物のRおよび/またはRを、一般構造式IVを持つものとする。
[化10]
−Y− (構造式IV)
式中、Rは、少なくとも1つの環構造を示し、Yは、(CRを示す。このとき、Rはそれぞれ独立して、水素または炭化水素より選ばれ、nは、1から10の整数である。こうして、2つの環構造を、調節可能なスペーサ(Z)で互いに空間的に隔てることで、一般構造式Iで示される化合物の光学特性に加え、特に、その粘度と揮発性も個別に変えることができる。
【0029】
本発明のもうひとつの態様は、一般構造式Vで示される化合物に関する。
【化11】


式中、RおよびRはそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含み、Xは、O、S、NR
【化12】



【化13】


、または
【化14】


を示し、Rは、水素または炭化水素より選ばれ、Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRであって、Rは、水素または炭化水素より選ばれる。これには、この化合物の全ての光学異性体およびラセミ混合物が含まれるものとする。一般構造式Vで示される化合物は、20℃、435nmから440nmの波長範囲で、少なくとも1.60の屈折率nを持つ。これより生じる利点は先の説明より明らかであり、一般構造式Vで示される化合物についても言える。このように、一般構造式Vで示される化合物から、可能な限り高い屈折率と、顕微鏡分析に対するより高い適合性とを同時に備えた浸液を調製することができる。このとき、適用できるのであれば、前述の浸液の有益な発展形を、一般構造式Vで示される化合物の有益な発展形と見なす。
【0030】
本発明のもうひとつの態様は、前述の実施の形態のいずれかに記載の、浸液の1つ、および/または化合物の1つの、顕微鏡用、特に、近視野顕微鏡用の液浸油としての使用に関する。これによって生じる特徴および利点は前述の説明より明らかであり、本発明による使用についても言える。
【0031】
本発明のその他の特徴は、請求項および実施の形態より明らかである。先の説明で述べた特徴および特徴の組み合わせと、後の実施の形態に述べる特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ明示した組み合わせだけでなく、本発明の範囲から外れない、その他の組み合わせ、または単独でも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次の実施例では、一般構造式I、II、およびIIIで示される化合物の実施の形態を説明する。これらの化合物は、顕微鏡用の浸液として、個々に、または更に一般構造式I、II、およびIIIで示される化合物と組み合わせて使用することができる。必要ならば、浸液の粘度νおよび/または屈折率nを、所定のパラメータ値に調節するための添加剤を更に用いても良い。適当な添加剤としては、例えば、アルキルナフタレン類、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、またはイソプロピルナフタレン、更に、クロロナフタレン類、ブロモナフタレン類、ヨードナフタレン類、フェニルナフタレン類、および/またはベンジルナフタレン類が挙げられる。
【0033】
本件において、全ての実施例は次の要件を満たしている。
・屈折率n>1.60(20℃)
・アッベ数(分散)V≧20
・380nmから1000nmの範囲で十分に透過性
・小さい内部蛍光F(405nm/485nm)<硫酸キニーネ10mg/l当量
・操作温度での粘度>80mm/s
・通常の操作温度で揮発しない、または実質的に揮発しない
・ガラス表面(カバーガラスなど)を十分に濡らす
・顕微鏡染料の色が安定で、カバーガラスを使用しない操作において調製物の褪色が起きない
・長期間に亘って入手可能
・通常の安価な調製法(例えば、短経路(short-path)真空蒸留)で最適な光学特性となる
【0034】
一般構造式I、II、およびIIIで示される化合物と、必要に応じて1つ以上の添加剤とを、適当に選び、および/または組み合わせることで、特に、次のような特性を備えた浸液が調製可能である。
・様々な操作温度、特に、23℃および37℃の温度に合わせて調節可能な浸液(特に、屈折率および粘度を)
・±0.0005の屈折率nの再現性
・使用するカバーガラス材質に屈折率を適合させることができる
【実施例】
【0035】
[実施例1]
1−ナフチル酢酸ベンジルエステル
【化15】


(ベンジル=2−(ナフタレン−1−イル)アセタート)
分子量 276g/mol
【0036】
一般構造式Iで、X=
【化16】


、Y=O、R=R−Z−、R=ナフタリニル、Z=CH、R=ベンジルであれば、RおよびRはそれぞれ、少なくとも1つの(この場合は、芳香族)環構造を含んでいる。1−ナフチル酢酸ベンジルエステルは、次のような特性を備えている。
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6476
F’(480.0nm)=1.6331
(546.1nm)=1.6192
(589.3nm)=1.6130
C’(643.8nm)=1.6072
アッベ数(分散):V=23.9
【0037】
アッベ数は、次のように計算する。
[数1]
=(n−1)/(nF’−nC’
粘度(20℃):86mm/s
【0038】
示したナフタリニルまたはフェニル環構造の代わりに、またはそれに加えて、一般構造式I、II、およびIIIで示される化合物は、環構造として、例えば、アクリジニル、アダマンタニル、アントラセニル、アゼピニル、アズレニル、ベノキサジアジニル(benoxadiazinyl)、ベンゾフラニル、ベンゾピラン−オン−イル、ベンゾピラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサジニル、ベンジル、ビフェニル、カルバゾリル、シンノリニル、クマラニル、ジアゼピニル、ジオキサゾリル、ジオキシニル、ジチアニル、フルオレニル、フリル、キナゾリニル(guinazolinyl)、ジミダゾリン−2−チオニル、イミダゾリル、インデニル、インドリニル、イソベンゾフラニル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチル、ナフチリジニル、ノルボルナニル、ノルピナニル、オキサジアジニル、オキサジアゾリル、オキサチアジニル、オキサチアゾリル、オキサチオリル、オキサトリアゾリル、オキサジニル、オキサゾロニル、オキサゾリル、オキセピニル(oxepinyl)、フェナレニル、フェナントレニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェニル、フタラジニル、プテリジニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロニル、ピロリル、キノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエピニル、チオモルホリニル、チオフェニル、チオフェニル、トリアジニル、トリアゾリル、トリシクロデカニル、トリチアニル、キサンテニルなどから選ばれる、1つ以上の環構造要素を基本的に含むことができる。基本的に、Zを、アルキル鎖中に、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む、より長鎖の分枝または非分枝アルキルラジカルとしても良い。更に、基本的に、浸液を、ハロゲンおよび/または重金属を含まないよう、および/または、元素イオウを加えずに調製することができる。
【0039】
[実施例2]
1−ナフチル酢酸トリシクロデカンメチロールエステル
【化17】


分子量:334g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6097
F’(480.0nm)=1.5988
(546.1nm)=1.5883
(589.3nm)=1.5837
C’(643.8nm)=1.5790
アッベ数(分散):V=29.7
粘度(20℃):2180mm/s
【0040】
[実施例3]
1−ナフチル酢酸[2−(フェニルチオ)エチル]エステル
【化18】


(2−(フェニルチオ)エチル=2−(ナフタレン−1−イル)アセタート)
分子量:322g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6609
F’(480.0nm)=1.6466
(546.1nm)=1.6327
(589.3nm)=1.6262
C’(643.8nm)=1.6202
アッベ数(分散):V=24.0
【0041】
[実施例4]
1−ナフチル酢酸(2−メチロールチエニル)エステル
【化19】


(チオフェン−2−イルメチル=2−(ナフタレン−1−イル)アセタート)
分子量:282g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6618
F’(480.0nm)=1.6468
(546.1nm)=1.6327
(589.3nm)=1.6261
C’(643.8nm)=1.6201
アッベ数(分散):V=23.7
【0042】
[実施例5]
1−ナフチル酢酸(2−ビフェニル)エステル
【化20】


分子量:338g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6810
F’(480.0nm)=1.6650
(546.1nm)=1.6496
(589.3nm)=1.6427
C’(643.8nm)=1.6360
アッベ数(分散):V=22.4
1−ナフチル酢酸(2−ビフェニル)エステルは、非常に粘稠である。
【0043】
[実施例6]
1−ナフチル酢酸フェニルエステル
【化21】


(フェニル=2−(ナフタレン−1−イル)アセタート)
分子量:262g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6562
F’(480.0nm)=1.6413
(546.1nm)=1.6269
(589.3nm)=1.6201
C’(643.8nm)=1.6141
アッベ数(分散):V=23.0
【0044】
[実施例7]
1−ナフチル酢酸チオフェニルエステル
【化22】


(S−フェニル=2−(ナフタレン−1−イル)エタンチオアート)
分子量:278g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.7059
F’(480.0nm)=1.6877
(546.1nm)=1.6706
(589.3nm)=1.6630
C’(643.8nm)=1.6555
アッベ数(分散):V=20.8
粘度(20℃):1022mm/s
【0045】
[実施例8]
1−ナフチル酢酸チオベンジルエステル
【化23】


(S−ベンジル=2−(ナフタレン−1−イル)エタンチオアート)
分子量:292g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6902
F’(480.0nm)=1.6739
(546.1nm)=1.6579
(589.3nm)=1.6509
C’(643.8nm)=1.6442
アッベ数(分散):V=22.2
粘度(20℃):308mm/s
【0046】
[実施例9]
トリシクロデカン−ジメタノール−ビス(1−ナフチル酢酸エステル)
【化24】


分子量:532g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6407
F’(480.0nm)=1.6282
(546.1nm)=1.6159
(589.3nm)=1.6102
C’(643.8nm)=1.6050
アッベ数(分散):V=26.5
トリシクロデカン−ジメタノール−ビス(1−ナフチル酢酸エステル)は、非常に粘稠である。
【0047】
[実施例10]
1−ナフトエ酸ベンジルエステル
【化25】


(ベンジル=1−ナフトアート)
分子量:262g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6710
F’(480.0nm)=1.6536
(546.1nm)=1.6368
(589.3nm)=1.6292
C’(643.8nm)=1.6225
アッベ数(分散):V=20.5
【0048】
[実施例11]
2−ナフトキシ酢酸ベンジルエステル
【化26】


(ベンジル=2−(ナフタレン−2−イルオキシ)アセタート)
分子量:292g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6506
F’(480.0nm)=1.6359
(546.1nm)=1.6219
(589.3nm)=1.6158
C’(643.8nm)=1.6094
アッベ数(分散):V=23.5
融点:約55℃
【0049】
[実施例12]
2−チオフェン酢酸(1−メチロールナフチル)エステル
【化27】


(ナフタレン−1−イルメチル=2−(チオフェン−2−イル)アセタート)
分子量:282g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6601
F’(480.0nm)=1.6455
(546.1nm)=1.6312
(589.3nm)=1.6249
C’(643.8nm)=1.6186
アッベ数(分散):V=23.5
【0050】
[実施例13]
フェニルチオ酢酸ベンジルエステル
【化28】


(ベンジル=2−(フェニルチオ)アセタート)
分子量:258g/mol
粘度(20℃):13mm/s
屈折率(20℃):
(435.8nm) 1.6166
F’(480.0nm) 1.6056
(546.1nm) 1.5948
(589.3nm) 1.5896
C’(643.8nm) 1.5845
アッベ数(分散)V 28.2
【0051】
[実施例14]
フェニルチオ酢酸(1−メチロールナフチル)エステル
【化29】


(ナフタレン−1−イルメチル=2−(フェニルチオ)アセタート)
分子量:308g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6768
F’(480.0nm)=1.6610
(546.1nm)=1.6459
(589.3nm)=1.6390
C’(643.8nm)= 1.6327
アッベ数(分散):V=22.8
【0052】
[実施例15]
フェニルチオ酢酸(2−フェニルチオエチル)エステル
【化30】


(2−(フェニルチオ)エチル=2−(フェニルチオ)アセタート)
分子量:304g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6387
F’(480.0nm)=1.6266
(546.1nm)=1.6148
(589.3nm)=1.6093
C’(643.8nm)=1.6041
アッベ数(分散):V=27.3
【0053】
[実施例16]
フェニルチオ酢酸(ビフェニル−4−メチル)エステル
【化31】


分子量:334g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6661
F’(480.0nm)=1.6515
(546.1nm)=1.6369
(589.3nm)=1.6301
C’(643.8nm)=1.6234
アッベ数(分散):V=22.7
融点:約53℃
【0054】
[実施例17]
(2−フェニルチオ)フェニル酢酸(1−メチロールナフチル)エステル
【化32】


(ナフタレン−1−イルメチル=2−フェニル−2−(フェニルチオ)アセタート)
分子量:384g/mol
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.6851
F’(480.0nm)=1.6693
(546.1nm)=1.6539
(589.3nm)=1.6468
C’(643.8nm)=1.6403
アッベ数(分散):V=22.5
ナフタレン−1−イルメチル=2−フェニル−2−(フェニルチオ)アセタートは、非常に粘稠である。
【0055】
[実施例18]
実施の形態に従って、近視野顕微鏡用の液浸油として有用な浸液を調製するため、92mol%の1−ナフチル酢酸チオフェニルエステル(NETPE)と、8mol%の1−ナフチル酢酸チオベンジルエステル(NETBE)とを混合する。得られる浸液は、次のような特性を備えている。
屈折率(20℃):
(435.8nm)=1.7041
F’(480.0nm)=1.6860
(546.1nm)=1.6690
(589.3nm)=1.6617
C’(643.8nm)= 1.6543
アッベ数(分散):V=21.1
【0056】
[実施例19]
もうひとつの実施の形態に従って、近視野顕微鏡用の液浸油として有用な浸液を調製するため、25mol%の1−ナフチル酢酸チオフェニルエステル(NETPE)と、75mol%の1−ナフチル酢酸チオベンジルエステル(NETBE)とを混合する。得られる浸液は、表1に掲げたような特性を備えている。
【0057】
【表1】

【0058】
浸液の組成および混合比を変えることで、所望とする目標の屈折率を、n±0.0005で再現性良く調節することが可能である。これにより、浸液と、液浸対物レンズの光学的構造とを、互いに最も適切に合わせることができる。更に、使用するカバーガラス材料それぞれに対して、屈折率を適合させることが可能となる。これは、例えば、近視野顕微鏡分析における、重要な要件を示している。この実施の形態で、変化幅を、
10mol% NETPE + 90mol% NETBE から
90mol% NETPE + 10mol% NETBE
とすると、この混合物で次のような屈折率範囲が可能となる。
23℃:n=1.658から1.668
37℃:n=1.652から1.662
【0059】
適当なカバーガラス材料は、例えば、Schott AG(マインツ)製の、SF9(n=1.65907/V=33.41)、および、SF50(n=1.65944/V=32.63)である。SF50カバーガラスと共に、例えば、25mol%のNETPと75mol%のNETBとを含む浸液(IF)を用いると、表2に挙げたような特性が得られる。
【0060】
【表2】

【0061】
[実施例20]
もうひとつの実施の形態に従って、近視野顕微鏡用の液浸油として有用な浸液(IF)を調製するため、次のような混合物を調製する。
IF1:
98質量%の混合エステル(40mol%NETPE+60mol%NETBE)
2質量%のNETBE
IF2:
97.5質量%の混合エステル(92mol%NETPE+8mol%NETBE)
2.5質量%のNEBE
このとき、
NETPE:1−ナフチル酢酸チオフェニルエステル
NETBE:1−ナフチル酢酸チオベンジルエステル
NEBE:1−ナフチル酢酸ベンジルエステル
である。
【0062】
浸液IF1およびIF2は、表3に掲げたような特性を備えており、IF1は、23℃の操作温度に最も適し、IF2は、37℃の操作温度に最も適している。
【0063】
【表3】

【0064】
本発明の対象物の具体的な特性を示すために、方法および測定条件を定義する文書に明記されているパラメータ値は、偏り(例えば、測定誤差、装置誤差、秤量誤差、DIN許容公差などによる)の範囲までも含めて、本発明の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般構造式Iで示される化合物を少なくとも1つ含む浸液であって、
【化1】


式中、
およびRはそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含み、
Xは、O、S、NR
【化2】



【化3】


、または
【化4】


を示し、
は、水素または炭化水素より選ばれ、
Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRを示し、
は、水素または炭化水素より選ばれる、
ことを特徴とする浸液。
【請求項2】
請求項1に記載の浸液であって、前記一般構造式I中の前記Rは、一般構造式IIで示され、
[化5]
−Z− (構造式II)
式中、
は、少なくとも1つの環構造を含み、
Zは、(CRを示し、
はそれぞれ独立して、水素または炭化水素より選ばれ、
nは、1から10の整数である、
ことを特徴とする浸液。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の浸液であって、前記一般構造式Iで示される前記化合物は、20℃、435nmから645nmの波長範囲で、少なくとも1.52、望ましくは、少なくとも1.60の屈折率nを持つことを特徴とする浸液。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の浸液であって、前記一般構造式Iで示される前記化合物は、20℃、厚さ10mmの層、370nmから400nmの波長範囲で、少なくとも1%、特に、少なくとも2%の透過率、および/または、400nmから420nmの波長範囲で、少なくとも15%、特に、少なくとも20%の透過率、および/または、420nmから450nmの波長範囲で、少なくとも40%、特に、少なくとも50%の透過率、および/または、450nmから800nmの波長範囲で、少なくとも70%、特に、少なくとも80%の透過率を持つことを特徴とする浸液。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の浸液であって、前記浸液は、20℃から40℃の温度範囲で、少なくとも50mm/s、特に、少なくとも100mm/sの粘度νを持つことを特徴とする浸液。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の浸液であって、前記浸液は、20℃から40℃の温度範囲において、少なくとも18、特に、少なくとも20のアッベ数Vを持つことを特徴とする浸液。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の浸液であって、前記Rおよび/またはRは、少なくとも1つの単環式および/または二環式および/または三環式環構造を含むことを特徴とする浸液。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の浸液であって、前記Rおよび/またはRは、少なくとも1つの飽和および/または不飽和および/または芳香族環構造を含むことを特徴とする浸液。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の浸液であって、前記Rおよび/またはRは、少なくとも1つのヘテロ原子、特に、O、N、および/またはSを含む、少なくとも1つの環構造を含むことを特徴とする浸液。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の浸液であって、前記Rおよび/またはRは、少なくとももう1つの官能基を含むことを特徴とする浸液。
【請求項11】
請求項10に記載の浸液であって、前記の少なくとももう1つの官能基は、カルボン酸、チオカルボン酸、カルボン酸エステル、特に、アルキルおよび/またはアリールカルボン酸エステル、チオカルボン酸エステル、特に、アルキルおよび/またはアリールチオカルボン酸エステル、エーテル、特に、アルキルおよび/またはアリールエーテル、チオエーテル、特に、アルキルおよび/またはアリールチオエーテル、ハロゲン化物、特に、塩化物、臭化物、および/またはヨウ化物、ケトン、チオケトン、アルデヒド、チオアルデヒド、アルコール、チオール、および/またはアミンを含むことを特徴とする浸液。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の浸液であって、前記浸液は、少なくとも1つの添加剤を含み、これにより、前記浸液の粘度νおよび/または屈折率nを、所定のパラメータ値に調節することを特徴とする浸液。
【請求項13】
請求項12に記載の浸液であって、前記の少なくとも1つの添加剤は、アルキルナフタレン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、ヨードナフタレン、フェニルナフタレン、および/またはベンジルナフタレンを含むことを特徴とする浸液。
【請求項14】
一般構造式IIIで示される化合物を少なくとも1つ含む浸液であって、
【化6】


式中、
Xは、O、S、NR
【化7】



【化8】


、または
【化9】


を示し、
は、水素または炭化水素より選ばれ、
Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRを示し、
は、水素または炭化水素より選ばれ、
前記一般構造式IIIで示される前記化合物は、20℃、435nmから440nmの波長範囲で、少なくとも1.60の屈折率nを持つことを特徴とする浸液。
【請求項15】
請求項14に記載の浸液であって、前記一般構造式IIIで示される前記化合物は、20℃、440nmから645nmの波長範囲で、少なくとも1.52、望ましくは、少なくとも1.57の屈折率nを持つことを特徴とする浸液。
【請求項16】
請求項14または請求項15のいずれかに記載の浸液であって、前記Rおよび/またはRはそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含むことを特徴とする浸液。
【請求項17】
請求項14または請求項15のいずれかに記載の浸液であって、前記一般構造式IIIの前記Rおよび/またはRは、一般構造式IVで示され、
[化10]
−Y− (構造式IV)
式中、
は、少なくとも1つの環構造を示し、
Yは、(CRを示し、
はそれぞれ独立して、水素または炭化水素より選ばれ、
nは、1から10の整数である、
ことを特徴とする浸液。
【請求項18】
一般構造式Vで示される化合物であって、
【化11】


式中、
およびRはそれぞれ、少なくとも1つの環構造を含み、
Xは、O、S、NR
【化12】



【化13】


、または
【化14】


を示し、
は、水素または炭化水素より選ばれ、
Yはそれぞれ互いに独立して、O、S、またはNRを示し、
は、水素または炭化水素より選ばれ、
前記一般構造式Vで示される前記化合物は、20℃、435nmから440nmの波長範囲で、少なくとも1.60の屈折率nを持つ、
ことを特徴とする化合物。
【請求項19】
顕微鏡、特に、近視野顕微鏡用の液浸油としての、請求項1から請求項13および/または請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の浸液、および/または、請求項18に記載の化合物の使用。

【公開番号】特開2010−211201(P2010−211201A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−38129(P2010−38129)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(510051185)カール ツァイス アーゲー (2)
【Fターム(参考)】