説明

高屈折率かつ耐熱性に優れたポリカーボネート共重合体

【課題】高屈折率であり且つ耐熱性に優れたポリカーボネート共重合体を提供する。
【解決手段】全ヒドロキシ化合物の少なくとも60モル%が一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であるポリカーボネート共重合体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネート共重合体に関する。さらに詳しくは高屈折率性、低光弾性、高耐熱性を有する芳香族ポリカーボネート共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラレンズや光学フィルム等の光学素子用材料として、光学用透明樹脂が使用されている。光学用透明樹脂は射出成形により大量生産が可能であり、現在カメラ用レンズ用途として使用されているが、光学ガラスに比べ屈折率や耐熱性が低く、使用範囲が限られていた。また、光学用透明樹脂はプラセル基板や位相差フィルム等の耐熱性の要求される用途としても検討されているが、電極形成プロセスや配向膜形成プロセス等で高温処理を要し、その耐熱性が不足するという問題がある。
【0003】
樹脂や樹脂原料において、熱的特性(耐熱性など)、光学的特性(高屈折率など)などの重要な特性を付与又は改善するため、樹脂の重合成分を選択したり、樹脂を改質可能な化合物を添加するなどの方法がとられている。例えば、フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する化合物は、屈折率、耐熱性などにおいて優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現する方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。
【0004】
例えば、特定のフルオレン構造を有するポリカーボネート共重合体が開示されている(特許文献1、2)。しかしながら、該特許文献はガラス転移点(Tg)が不十分であり、リフロー炉での処理等の高温処理時にレンズの形状が変化したり、色相が悪化したりすることがあった。
【0005】
また、フルオレン骨格以外にアントラセン構造を有するポリカーボネート樹脂が開示されている(特許文献3)。しかし、該特許文献はレンズにとって重要な光学物性である屈折率ならびにアッベ数に関して調べられておらず、発明の効果として光ディスクといった光学材料基盤用途を想定しているに過ぎない。
【0006】
また、フルオレン骨格及びアントラセン構造を有するポリアリレート共重合体が開示されている(特許文献4)。しかし、該特許文献は光学部材として重要な屈折率や光弾性係数に関して調べられておらず、発明の効果として耐熱性部品を想定しているにすぎない。さらに、ポリアリレート共重合体では共重合体構成成分としてビスフェノール類を50モル%までしか導入できないため、屈折率や複屈折等光学的性質の向上に制限があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−331688号公報
【特許文献2】特開平2−304741号公報
【特許文献3】特開平2−304742号公報
【特許文献4】特開昭63−63718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、特定のジヒドロキシ化合物を特定割合含有するポリカーボネート共重合体に関する。さらに詳しくは特定のジヒドロキシ化合物から形成された高屈折率性、低光弾性、高耐熱性を有する芳香族ポリカーボネート共重合体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定のアントラセン含有ジヒドロキシ化合物及びフルオレン含有ジヒドロキシ化合物を特定割合で共重合することで、上記目的を達成することを見出し本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、全ヒドロキシ化合物の少なくとも60モル%が一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であるポリカーボネート共重合体からなる。
【0011】
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子、R5、R6はアルキレン基、k、lは0〜3の整数である。]
【0012】
【化2】

[式中、R7〜R10は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子、R11、R12はアルキレン基、m、nは0〜3の整数である。]
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高屈折率であり且つ耐熱性に優れたポリカーボネート共重合体を得ることができる。該ポリカーボネート共重合体から形成された光学レンズは耐熱性に優れ、リフロー炉での高温処理時に形状変化や色相の悪化がないため、カメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。また、該ポリカーボネート共重合体から形成された透明フィルム、シートは光弾性係数が小さく、耐熱性に優れるため、タッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板として、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のポリカーボネート共重合体のプロトンNMRを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリカーボネート共重合体組成において10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロンが51モル%未満の場合、Tgが230℃より低くなり、該共重合体を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が不満足となり好ましくない。
【0016】
10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン及び9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの割合は、モル比で99:1〜51:49の範囲が好ましく、85:15〜51:49の範囲が更に好ましく、80:20〜51:49の範囲がより一層好ましい。
【0017】
本発明のポリカーボネート共重合体は目的に応じて10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン及び9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと共重合可能な他のジヒドロキシ化合物を加えても良く、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン等があげられ、特にビスフェノールA、ビスフェノールMが好ましい。これらの他のジヒドロキシ化合物は全ジヒドロキシ化合物成分の35モル%以下である。
【0018】
本発明の芳香族ポリカーボネート共重合体は、それぞれ通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば二価フェノール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0019】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0020】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。
【0021】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃ 、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0022】
溶融法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃ の範囲である。反応後期には系を1.3×10〜1.3×10Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0023】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0024】
また、溶融法において重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド類、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩類、亜鉛化合物類、ホウ素化合物類、アルミニウム化合物類、珪素化合物類、ゲルマニウム化合物類、有機スズ化合物類、鉛化合物類、オスミウム化合物類、アンチモン化合物類、マンガン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、1×10−8〜1×10−3当量、好ましくは1×10−7〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−6〜5×10−4当量の範囲で選ばれる。
【0025】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリマーは、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
【0026】
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノール或いは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0027】
【化3】

[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。]
【0028】
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0029】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基或いは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いて芳香族ポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易となるばかりでなく、物性も改良される。これらは下記一般式[I−a]〜[I−h]で表される。
【0030】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0031】
[前記一般式[I−a]〜[I−h]中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、Tは単結合または上記X と同様の結合を示し、nは10〜50の整数を示す。
Qはハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基を示し、pは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、W1は水素原子、−CO−R17、−CO−O−R18またはR19である、ここでR17、R18およびR19は、それぞれ炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。
aは4〜20、好ましくは5〜10の整数を示し、mは1〜100、好ましくは3〜60 、特に好ましくは4〜50の整数を示し、Zは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、W2は水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。]
【0032】
これらのうち好ましいのは、[I−a]および[I−b]の置換フェノール類である。この[I−a]の置換フェノール類としては、nが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては、例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。
【0033】
また、[I−b]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては、例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0034】
前記一般式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類または置換安息香酸クロライドにおいて置換基の位置は、p位またはo位が一般的に好ましく、その両者の混合物が好ましい。
【0035】
前記単官能フェノール類は、得られた芳香族ポリカーボネート共重合体の全末端に対して少なくとも5モル% 、好ましくは少なくとも10モル% 末端に導入されることが望ましく、また単官能フェノール類は単独でもしくは2種以上混合して使用してもよい。
【0036】
本発明におけるポリカーボネート共重合体はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.55の範囲のものが好ましく、0.15〜0.45の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.12未満では成形品が脆くなり、0.55より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になるので好ましくない。
【0037】
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が230℃以上であることが好ましい。Tgが230℃未満では、該共重合体を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でないので好ましくない。
【0038】
本発明におけるポリカーボネート共重合体は、熱安定性の指標として、昇温速度20℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上であることが好ましい。さらには400℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
本発明におけるポリカーボネート樹脂は、25℃、波長587nmにおける屈折率が好ましくは1.633〜1.650であることが好ましい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:ポリマー0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し20℃の温度で測定した。
(2)共重合比:日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。図1に示すように8.2〜8.4ppmの10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロンに起因するピークと2.0〜2.2ppmの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンに起因するピークの積分比から求めた。
(3)ガラス転移点(Tg):デュポン社製910型DSC により測定した。
(4)屈折率(n):ATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて測定した。
(5)光弾性係数:日本分光(株)製エリプソメータM−220に光弾性ステージをセ
ットして測定を行った。測定条件は、フィルムに1N以下の荷重をかけ、そのときの位相
差を測定した。測定は5点行い、下記算出式により、光弾性係数を算出した。
Re=F×c×d
Re:位相差[nm]、F:応力[N/m2]、c:光弾性定数[m2/N]、d:厚み
(6)全光線透過率:1mm厚の成形片を日本電色(株)製MDH−300Aを用いて測定した。
【0040】
[実施例1]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水19.206重量部、48%水酸化ナトリウム水溶液29.33重量部を入れ、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”または“BCF”と略称することがある)8.40重量部、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン(以下“BP−ANT”と略称することがある)26.97重量部およびハイドロサルファイト0.07重量部を溶解した後、クロロホルム138.71重量部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン12.06重量部を60分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール0.4668重量部を塩化メチレン5重量部に溶解した溶液および48%水酸化ナトリウム水溶液3.67重量部を加え、乳化後、トリエチルアミン0.02重量部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。この溶液から溶媒を除去して得たポリカーボネートはBP−ANTとBCFとの構成単位の比がモル比で75:25であった。またこのポリマーの比粘度は0.29、Tgは260℃であった。このポリマーを塩化メチレンに溶解させてフィルムを製膜した。このフィルムの屈折率は1.643、光弾性係数は33×10-12/Paであった。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
実施例1のBCFの使用量を6.72重量部、BP−ANTの使用量を28.77重量部とする以外は実施例1と同様にしてBP−ANTとBCFの比がモル比で80:20であるポリマーを得た。このポリマーの比粘度は0.22、Tgは262℃であった。このポリマーを実施例1と同様にして製膜した。このフィルムの屈折率は1.643、光弾性係数は34×10-12/Paであった。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例3]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水19.206重量部、48%水酸化ナトリウム水溶液29.33重量部を入れ、BCF6.72重量部、BP−ANT21.58重量部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある)4.05重量部およびハイドロサルファイト0.07重量部を溶解した後、クロロホルム138.71重量部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン12.06重量部を60分要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール0.4668重量部を塩化メチレン5重量部に溶解した溶液および48%水酸化ナトリウム水溶液3.67重量部を加え、乳化後、トリエチルアミン0.02重量部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。この溶液から溶媒を除去して得たポリカーボネートはBP−ANTとBCFとBPAとの構成単位の比がモル比で60:20:20であった。またこのポリマーの比粘度は0.29、Tgは237℃であった。このポリマーを塩化メチレンに溶解させてフィルムを製膜した。このフィルムの屈折率は1.632、光弾性係数は39×10-12/Paであった。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1]
実施例1のBCFをBPAに変更し、その使用量を6.08重量部、BP−ANTの使用量を25.17重量部とする以外は実施例1と同様にしてBP−ANTとBPAの比がモル比で70:30であるポリマーを得た。このポリマーの比粘度は0.22、Tgは229℃であった。このポリマーを実施例1と同様にして製膜した。このフィルムの屈折率は1.632、光弾性係数は43×10-12/Paであった。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
実施例1のBCFの使用量を23.53重量部、BP−ANTをBPAに変更し、その使用量を6.08重量部とする以外は実施例1と同様にしてBCFとBPAの比がモル比で70:30であるポリマーを得た。このポリマーの比粘度は0.26、Tgは215℃であった。このポリマーを実施例1と同様にして製膜した。このフィルムの屈折率は1.628、光弾性係数は40×10-12/Paであった。結果を表1に示す。
【0045】
実施例1〜3及び比較例1、2は、IR測定より、1760cm−1付近にカーボネート結合由来の吸収が確認された。また、DSC測定より得られるTgに起因するピークが1つであることからランダム共重合体であることが確認できた。また、EX−PC1は図1のプロトンNMRからBP−ANTとBCFとのポリカーボネート共重合体であることを示している。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1〜3は屈折率が高く、光弾性係数も小さいため、該共重合体を用いて得られる光学部品は光学レンズや光学フィルム用材料として適している。さらに、Tgが極めて高いため、リフロー処理等の高温処理に対する耐性に優れる。これに対して、比較例1、2は屈折率、光弾性係数、Tgが不十分であり、光学部品としての使用範囲が限定される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のポリカーボネート共重合体からなる光学レンズはカメラ、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ極めて有用である。また、本発明のポリカーボネート共重合体からなるフィルム、シートはタッチパネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板として用いることができ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ヒドロキシ化合物の少なくとも60モル%が一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及び一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であり、且つ一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物の割合がモル比で99:1〜51:49の範囲で構成されたポリカーボネート共重合体。
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子、R5、R6はアルキレン基、k、lは0〜3の整数である。]
【化2】

[式中、R7〜R10は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子、R11、R12はアルキレン基、m、nは0〜3の整数である。]
【請求項2】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物が下記式(3)で表される10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロンである請求項1のポリカーボネート共重合体。
【化3】

【請求項3】
一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物が9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンである請求項1〜2のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項4】
屈折率が1.633〜1.650、かつガラス転移温度が230℃〜300℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。
【請求項5】
該ポリカーボネート樹脂はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.12〜0.55である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート共重合体。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275412(P2010−275412A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128986(P2009−128986)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】