高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置
【課題】高度計機能を備えた携帯型スケジュール管理装置において、意識的な高度補正操作を不要にする。
【解決手段】表示器4と、気圧センサ29と、行程中の各地点に到着予定時刻と標高とを対応付けした基準スケジュール情報60bを記憶する記憶部34と、操作入力部5と、制御部20を備え、制御部は、気圧データに基づいて高度を計算する高度計算処理と、いずれかの地点を現在地点として指示する地点入力を受け付けると、計算した高度を基準スケジュール情報中の当該地点に対応する標高の値に補正する高度補正処理と、基準スケジュール情報の内容、および高度を表示器に表示する表示制御処理とを実行する。
【解決手段】表示器4と、気圧センサ29と、行程中の各地点に到着予定時刻と標高とを対応付けした基準スケジュール情報60bを記憶する記憶部34と、操作入力部5と、制御部20を備え、制御部は、気圧データに基づいて高度を計算する高度計算処理と、いずれかの地点を現在地点として指示する地点入力を受け付けると、計算した高度を基準スケジュール情報中の当該地点に対応する標高の値に補正する高度補正処理と、基準スケジュール情報の内容、および高度を表示器に表示する表示制御処理とを実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、登山やトレッキングなどの行程スケジュールを管理する機能とともに高度計機能を備えた携帯型行程スケジュール管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、登山やトレッキング、キャンプなど、アウトドアでの活動を趣味にしている人が多くなってきている。そして、それらの活動を支援するための各種電子機器や情報処理装置が提供されている。例えば、各種センサを搭載して、気圧、温度、方位などを測定するとともに、気圧に基づいて高度を計算する機能(アウトドア機能)を備えた腕時計や携帯型の計器(電子計器)がある。(非特許文献1参照)。また、以下の特許文献1には、GPSを用いて利用者の行動スケジュールを管理するための携帯端末について記載されている。この携帯端末を利用すれば、登山やトレッキングをする際の行程スケジュールを管理することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−283786号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】カシオ計算機株式会社、”PROTREKの「センサー技術」”、[online]、[平成21年3月4日検索]、インターネット<URL:http://casio.jp/wat/PROTREK/sensor/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記携帯端末に上記電子計器の機能を搭載すれば、一つの装置で、行程スケジュールと周囲の環境についての情報を利用者に提示できるアウトドア用途に最適な情報処理装置が提供できると考えた。
【0006】
しかし、上記非特許文献1に記載されている電子計器は、気圧センサを搭載し、気圧に基づいて高度を計算して、その高度を表示することができるようになっている。しかし、同じ高度でも気圧が変化すれば、異なる高度を表示してしまう。もちろん、高度を正しい値に修正することもできるが、利用者は自身のいる標高を確認し、正しい高度に再設定するための煩雑や手順や操作が必要となる。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の技術は、GPS信号の受信機能を搭載し、あらかじめ作成程スケジュールに対し、目的地や経由地への到着時刻が予定通りであったかどうかを確認することができるようになっている。しかし、GPS受信機能を搭載しているため、装置自体が高価なものとなる。また、小型・軽量化にも限界がある。小型化を達成したとしても、情報の表示面積が相対的に少なくなり、GPSによって正確な相対位置情報を得られても、それに見合う十分な情報を表示することができなくなる。操作キーやボタンの数も限られ、複雑な操作が困難となる。
【0008】
本発明は、簡素な構成で安価であるとともに、正しい高度を表示する機能を備えた携帯型行程スケジュール管理装置を提供することを目的としている。なお、その他の目的については、以下の記載で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、時計機能を備えて、出発地点から目的地までの行程スケジュールを管理するための携帯型行程スケジュール管理装置であって、
表示器と、
気圧センサと、
利用者入力を受け付ける操作入力部と、
出発地点と経由地点と目的地点の各地点に、到着予定時刻と標高とを対応付けした基準スケジュール情報を記憶する記憶部と、
高度計算処理と、高度補正処理と、表示制御処理とを実行する制御部と、
を備え、
前記高度計算処理は、前記気圧センサからの気圧データに基づいて高度を計算し、
前記高度補正処理は、前記基準スケジュール情報に含まれるいずれかの地点を現在地点として指示する旨の地点入力を受け付けて、前記計算した高度を前記基準スケジュール情報中の当該地点に対応する標高の値に補正し、
前記表示制御処理は、前記基準スケジュール情報の内容、および前記高度を前記表示器に表示することを特徴とする高度計付き行程スケジュール管理装置としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の携帯型行程スケジュール管理装置の一実施形態であるリスト・コンピュータを示す図である。
【図2】上記リスト・コンピュータの液晶表示器に配設されているパターンを示す図である。
【図3】上記リスト・コンピュータの機能ブロック構成を示す図である。
【図4】上記リスト・コンピュータをクレイドルに接続した状態を示す図(A)と、クレイドルの内部回路の概略図(B)である。
【図5】上記リスト・コンピュータに記憶されている基準スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図6】上記リスト・コンピュータに対して出発地点を指示する現在地点入力操作を行った際のLCDの表示状態を示す図である。
【図7】到着予定時刻が付記された基準スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図8】上記リスト・コンピュータに対して第1の経由地点を指示する現在地点入力操作を行った際のLCDの表示状態を示す図である。
【図9】上記リスト・コンピュータにて生成される最新スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図10】上記LCDにて第1の経由地点に関する情報が表示されている状態を示す図である。
【図11】上記リスト・コンピュータに対して第2の経由地点を指示する現在地点入力操作を行った際のLCDの表示状態を示す図である。
【図12】更新後の上記最新スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図13】上記LCDにて第2の経由地点に関する情報が表示されている状態を示す図である。
【図14】上記リスト・コンピュータにおける高度補正機能に関わる情報処理の流れを示す図である。
【図15】上記リスト・コンピュータに記憶されている天候予報情報のデータ構造を示す図である。
【図16】上記リスト・コンピュータにおける天候予報機能に関わる情報処理の流れを示す図である。
【図17】上記LCDにて上記天候予報機能に関わる情報が表示されている状態を示す図である。
【図18】上記天候予報情報の変形例のデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
===本発明の特徴===
本発明は、行程スケジュールの管理機能と、気圧、温度、方位などを測定する機能(アウトドア機能)とを備えた携帯型行程スケジュール管理装置である。行程スケジュール管理機能は、利用者が、登山やトレッキング、ハイキングなどに行く際、実際の行程が、事前に計画したスケジュール(基準スケジュール)通りに進んでいるかどうかを確認するための機能である。基準スケジュールは、出発地や目的地の出発時間と到着予定時刻、目的地までの経由地点の到着時刻などを記述したものである。利用者は、行程中、基準スケジュールをこの装置に表示させ、各経由地点の到着時間と実際の到着時間を逐次確認し、歩速を早めたり休憩を取ったりする。
【0012】
しかし、上述した課題のように、アウトドア機能と行程スケジュール管理機能を同じ装置に一体化して搭載しただけでは、却って使いにくい装置となってしまう。そこで、アウトドア機能と行程スケジュール管理機能を並載するのにあたり、これらの機能を個別のものとするのではなく、上手く連動させることで、利用者にとってより便利で使いやすいインタフェース環境を実現させようと考えた。また、二つの機能を連動させることで、行程中の安全を支援できればより好ましいとも考えた。本発明は、このような考察に基づいて創作されたものであり、上記主たる発明の他に、以下の特徴を備えた携帯型行程スケジュール管理装置も本発明の範囲とした。
【0013】
前記制御部は、前記いずれかの地点についての前記地点入力を受け付けて、前記基準スケジュール情報に含まれる前記現在地点の到着予定時刻と、現在時刻との差に基づいて、前記各地点の到着予定時刻を変更した最新スケジュール情報を生成して前記記憶部に記憶する最新スケジュール生成処理を実行するとともに、前記表示制御処理では、前記最新スケジュール情報の内容を前記表示器に表示すること。
【0014】
前記記憶部は、標高と高度との大小関係に天候の傾向についての情報を対応付けした天候予報情報を記憶し、
前記制御部は、ある地点についての前記地点入力を受け付けた際に高度を補正したのち、他の地点についての前記地点入力を受け付けた際の補正前の高度と、前記基準スケジュール情報に含まれる当該他の地点における標高との大小関係に対応する前記天候の傾向を前記表示器に出力する天候予報処理を実行すること。
【0015】
前記天候予報情報は、前記標高と高度との大小関係について、標高と高度との差を数値範囲ごとに区分するとともに、各数値範囲に天候の傾向についての情報を対応付けしていること。
【0016】
===装置の基本的な構成===
図1は、本発明の実施例における携帯型行程スケジュール管理装置の外観図である。当該携帯型行程スケジュール管理装置1は、腕に装着するためのバンド2を備えた腕時計型であり、基本的な構造や構成は、ケース3の前面に液晶表示器(LCD)4を文字盤として備えたデジタル式腕時計と同様である。そして、ケース3の側面には、この携帯型行程スケジュール管理装置(以下、リスト・コンピュータ)1を操作するための複数のボタン5が配設されている。
【0017】
図2に、LCD4の表示パターンを示した。特定の文字や図形を専用に表示するためのアイコン用パターン41と、数字を表示するための7セグメントパターン42、テキストや図形をビットマップ表示するための大小2つのドットマトリクスパターン(43a,43b)が配設されている。
【0018】
図3に、上記リスト・コンピュータ1の機能ブロック構成を示した。リスト・コンピュータのハードウエア構成は、各種センサ(29〜32)を搭載して、温度、気圧や標高、方位などの情報を表示する、いわゆる「アウトドア・ウオッチ」と呼ばれる腕時計と同様である。MPU20、RAM21、ROM22からなるコンピュータ本体をコントローラとし、ROM22にはMPU20によって実行される各種プログラムやフォントデータが記憶されている。また、外部記憶としてフラッシュメモリ34を内蔵している。
【0019】
発振回路23と分周回路24は、各種周波数のクロックを発生させる回路であり、MPU20を動作させるための基準クロックや時刻表示やストップウオッチなどの計時機能に関わるクロックを発生する。表示制御部25は、MPU20からの指示に従って各種情報をLCD4に表示し、操作制御部26は、操作ボタン5からの操作信号をMPU20に入力する。音声制御部28は、MPU20からの指示に従ってスピーカ27を駆動し、アラーム音など音声出力させる。
【0020】
さらに、アウトドアでの用途を想定した様々な情報を利用者に提供するための機能(アウトドア機能)を実現するために、気圧センサ29、温度センサ30、方位センサ31に加え、歩行に伴う振動を検出するためのセンサ32を備えている。本実施例では加速度センサ32を採用している。そして、各センサ(29〜32)が出力する信号は、それぞれのセンサ(29〜32)に対応するA/D変換回路(33a〜33d)にて各種デジタルータ(気圧データ、温度データ、方位データ、振動データ)に変換されてMPU20に入力される。
【0021】
MPU20は、操作制御部26からの操作信号に応動してROM22に記憶されている所定のプログラムを実行し、そのプログラムの実行結果などをRAM21に書込んだり、その書き込んだデータをRAM21から読み出したりする。MPU20は、各センサ(29〜32)に接続されているA/D変換回路(33a〜33d)からの各種データについても、サンプリング機会ごとに更新しながらRAM21に読み出し可能にして格納する。
【0022】
さらに、格納した各種データ基づいて所用の情報を随時生成してRAM21に格納する。例えば、あらかじめ記憶されている気圧と高度との関係から気圧センサ29からの気圧データに基づいて高度を計算し、その計算結果を格納する。
【0023】
また、リスト・コンピュータ1は、歩数計機能を備え、利用者入力された歩幅をフラッシュメモリ34に記憶し、MPU20が、加速度センサ32からの振動データを解析して歩行に伴う振動を抽出するとともに、その振動に基づいて歩数を計数したり、その歩数に歩幅を乗算して歩行距離を計算したりする。そして、利用者が所定の操作入力を行った時点を起点とした歩行距離を計算し、その計算結果を更新しながらRAM21に格納していく。
【0024】
さらにリスト・コンピュータ1は、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部の情報処理装置と通信する機能を備え、そのための構成として、通信インタフェース(IF)35を備えている。MPU20は、この通信IF35を介して、情報処理装置に各種データを転送したり、情報処理装置から各種データを受け取ったりする。
【0025】
なお、通信IF35と外部の情報処理装置とは、直接接続される形態である場合もあるし、クレイドルと呼ばれる中間装置を介して接続される形態である場合もある。本実施例では、通信IF35は、電波や赤外線などを用いた無線信号によりクレイドルと通信する。
【0026】
図4の(A)と(B)に、クレイドル50に装着された状態のリスト・コンピュータ1と、クレイドル50の内部回路の概略構成とを示した。クレイドル50は、無線信号によりリスト・コンピュータ1の通信IF35と通信するための無線通信IF51と、情報処理装置と汎用の通信規格に準じたプロトコルで通信するための汎用通信IF52とを備え、CPU、RAM、ROMを備えたコントローラ53は、双方の通信IF(41,42)を介して送受信されるプロトコルの異なる信号を解釈して相互変換する。なお、クレイドル50と情報処理装置とは、例えば、USB規格に準じたコネクタ54を両端に備えたケーブル55を介して接続される。このような構成により、リスト・コンピュータ1のMPU20は、通信IF35を介して間接的に外部の情報処理装置と通信する。そして、MPU20は、通信IF35を介して外部の情報処理装置から転送されてきたデータをフラッシュメモリ34に格納したり、フラッシュメモリ34内のデータを外部の情報通信装置に転送したりする。
【0027】
上記構成を備えたリスト・コンピュータ1は、MPU20の制御により、アウトドア機能や時計機能に関わる情報、受信したデータ、情報処理の実行結果などをLCD4に表示したり、アラーム音をスピーカ27から出力したりする。
【0028】
さらに、リスト・コンピュータ1は、利用者が事前に作成した登山やトレッキングのスケジュールについての情報(基準スケジュール情報)を記憶し、実際の行程と比較しながらスケジュールを随時最新のものに更新し、その最新スケジュールの内容を利用者に提示するスケジュール管理機能を備えている。しかも、本実施例のスケジュール管理機能によれば、基準スケジュールと実際の行程との差を確実に確認させて、利用者が安全に登山やトレッキングを遂行できるように支援する機能も備えている。
【0029】
===基準スケジュール情報===
フラッシュメモリ34には、スケジュール管理機能を実現させるための情報として、基準スケジュール情報が記憶さている。図5に当該基準スケジュール情報60のデータ構造を示した。本実施例では、出発地点P0と目的地点Pnの途上に複数の経由地点Pk(k=1,2,3…,n−1)が設定されている。この図では、登山のスケジュールが示されており、各地点61についての情報として、名称62と標高63が含まれているとともに、各地点間の各地点間の距離64や歩行予定時間65も記述されている。例えば、出発地点P0は、名称が「猿倉」で標高が1240mである。また、P0と最初の経由地点P1とは、2400mの距離(地点間距離)があり、その歩行予定時間は55分となっている。
【0030】
もちろん、基準スケジュール情報60のデータの構造や記述内容は、適宜に変更可能である。例えば、地点間距離64は、出発地点P0からの距離で記述してもよいし、歩行予定時間65に加え、各地点61における休憩時間を記述してもよい。地点間の歩行予定時間65に代えて、出発地点P0からの累積歩行予定時間を記述したり、各地点61の出発予定時刻や到着予定時刻を記述したりすることも可能である。少なくとも、各地点間の距離64が特定できるとともに、出発地点P0の出発予定時刻、あるいは実際の出発時刻を特定した段階で、以後の各地点61の到着予定時刻が特定できるようなデータ構造であればよい。
【0031】
===基準スケジュール情報の入力===
図5に示した基準スケジュール情報は、リスト・コンピュータ1に当初から記憶させておくことも考えられる。また、手間が掛かるが、操作ボタン5により、テキストや数値入力をすることも可能である。しかし、本実施例では、リスト・コンピュータ1が標準で備える通信機能を使って基準スケジュール情報60を外部の情報処理装置から入力することとしている。
【0032】
例えば、PCを情報処理装置として、そのPCに基準スケジュール情報60を編集するためのソフトウエアをインストールさせておく、利用者はPCを使って基準スケジュール情報60を編集し、所定形式のファイルに作成する。そして、そのファイルをフラッシュメモリ34に転送し記憶させる。MPU20は、所定形式のファイルを基準スケジュール情報60として認識する。
【0033】
あるいは、Webサーバー上に基準スケジュール情報60をダウンロード可能に用意しておいてもよい。この場合、PCはブラウザを実装しているだけでよく、基準スケジュール情報60の編集ソフトウエアをインストールする必要がない。
【0034】
===基準スケジュールの設定===
基準スケジュール情報60の内容を実際の行程における時刻に対応させるためには、まず、各地点61の到着予定時刻を規定する必要がある。本実施例では、基準スケジュール情報60には到着予定時刻が記載されていないため、実際の出発時刻と各地点間の歩行予定時間65とに基づいて、基準ケジュール情報60に各地点の到着予定時刻を付記することとしている。
【0035】
この到着予定時刻を当初の基準スケジュール情報60に付記するために、利用者は、出発地点において、所定の操作入力を行い、現在地点が出発地点P0である旨を指示する操作を行う。図6に出発地点の指示入力に伴うLCD4の表示状態の遷移を示した。基本的な表示状態である時刻表示状態(A)において、各種機能に対応する画面を呼び出すための所定の操作ボタン5を押して、スケジュール管理機能に関わる画面(スケジュール管理画面)を表示させる。なお、この表示状態において、他のボタン5を押すと、スケジュールに関わる各種情報(現在地点、次の地点、次の地点の到着予定時刻や到着までの時間、距離、標高など)を順次呼び出して表示させることができる。また、所定のボタン5に対する操作により、スケジュール管理機能に関わる各種情報を入力することもできる。
【0036】
MPU20は、スケジュール管理画面を表示する際、出発地点P0の情報を表示し、所定の操作入力を受け付けるごとに、順次P1、P2・・・と地点を進め、各地点についての情報を表示する。ここでは、出発地点P0の情報を表示させると、現在時刻44が時刻表示用の7セグメントパターン(42a,42b)に表示されている状態で、出発地点である旨の「P0」45が小さな表示面積の方のドットマトリクスパターン領域(副ドットパターン領域)43bに表示され、名称46が大きい方のドットマトリクスパターン領域(主ドットパターン領域)43aに表示される。なお、現在地点の指示入力があるまでは、出発時間47が未入力状態「−− −−」となっている。
【0037】
利用者は、出発に際して所定のボタン5を押して現在地点が出発地点P0であることを指示すると、MPU20は、当該入力時点の時刻をRAM32に記憶するなどして取得するとともに、この出発時刻47を主ドットパターン領域43aの名称46の上に表示する(B)。
【0038】
また、基準スケジュール情報60に含まれる各地点間の歩行予定時間65に従って、各地点への到着予定時刻を計算し、各地点に到着予定時刻を対応付けして基準スケジュール情報を更新し、この更新した基本スケジュール情報をフラッシュメモリ34に記憶する。図7に到着予定時刻66が付記された基準スケジュール情報60bのデータ構造を示した。
【0039】
===最新スケジュール情報の生成===
利用者は、行程中、基本スケジュール情報に含まれる各地点にて地点入力を行って、基本スケジュール情報に記載されている到着予定時間と、実際の到着時間との差を確認することで、予定に対する行程の進捗状況を確認することができる。しかも、本実施例では、実際の行程進捗状況に応じて当初の基準スケジュール情報を変更して到着予定時刻を随時更新する最新スケジュール生成機能を備えている。
【0040】
具体的には、MPU20は、利用者が出発地点P0の場合と同様にして、各地点61でその地点に到着した旨の指示入力(現在地点入力)を行うことで、行程中、現在の位置が基準スケジュール情報60bに記載されているどの地点とどの地点の間なのかを認識する。すなわち、利用者が特定の地点をスケジュール管理画面に表示させ、その地点を現在地点であると指示すると、MPU20は、その地点を到着済みのフラグを立てる。そして、ある連続する2地点が到着済みと未到着であれば、現在位置がその2地点の間であること特定することができる。そして、MPU20は、各地点にて現在地点入力を受け付けると、その都度、基準スケジュール情報60bの内容を実際の行程に応じて変更した最新のスケジュール情報を生成する。
【0041】
図8(A)〜(C)にこの最新スケジュールの生成過程でLCD4に表示される画面の遷移を示した。利用者は、出発地点P0から歩き始めて最初の経由地点P1に来たら、リスト・コンピュータ1を操作してスケジュール管理画面を呼び出す。呼び出した画面には、現在時刻44が表示された状態で、出発地点「P0」表示45と、その名称46と、先に出発地点P0で入力した出発時刻47とが表示されている(A)。ここで、所定の操作入力を行って、最初の経由地点P1の情報を表示させる(B)。この表示画面には、最初の経由地点である「P1」45と、その名称46が表示されているとともに、到着予定時刻が付記された基準スケジュール情報60bに記載されている当該P1への到着予定時刻47aが表示されている。この状態で利用者は同じ画面に表示されている現在時刻44から、当初の予定到着時間との差を確認することができる。そして、所定のボタン5を押して経由地点P1である旨の現在地点入力を行うと、MPU20は、この入力時刻を取得し、到着予定時刻に代えて実際に到着した時刻47bを表示し(C)、この時刻47bと基準スケジュール情報60bに含まれている各地点間の歩行予定時間65とに基づいて、次の経由地点P2以降の各地点61の到着予定時刻を計算し、その到着予定時刻66を各地点61に対応付けした最新スケジュール情報を生成する。
【0042】
図9に生成された最新スケジュール情報70の概略を示した。この例では、基準スケジュール情報60bに含まれる地点間の歩行予定時間65と実際に掛かった時間との差ΔTw73や、当該経由地点P1の到着予定時刻との時間差ΔTp74を計算し、これらの時間差(ΔTw73,ΔTp74)も最新スケジュール情報70に含める。また、地点P1について、現在地点入力した旨の「済」のフラグを立てる。
【0043】
これら最新スケジュール情報の内容は、利用者による所定の操作入力に従って、適宜にスケジュール管理画面に表示させることができる。図10に、上記各時間差(ΔTw,ΔTp)の表示例を示した。ここでは、最初の経由地点P1が指示された段階なので、ΔTw(48a)を表示した状態(A)とΔTp(48b)を表示した状態(B)では、ともに同じ時間差が表示されている。
【0044】
利用者は、次の経由地点P2でも、経由地点P1での操作と同様の操作を行い、P2の到着予定時刻を名称とともに表示させる。図11(A)(B)に2番目の経由地点P2を現在地点入力したときのLCD4の表示状態の遷移を示した。経由地点P2についての情報を最初に表示させた状態(A)では、到着予定時刻47aは、先の経由地点P1の現在地点入力がなされた時点で生成された最新スケジュール情報70に記載されている経由地点P2に対応する到着予定時刻47aであり、利用者は、同じ画面に表示されている到着予定時刻47aと現在時刻44とを比較することで、地点間の歩行予定時間と実際の歩行時間との差を確認することができる。そして、現在地点がP2である旨の現在地点入力操作を行うと、この入力時点の時刻を実際の経由地点P2の到着時刻として以後の地点における到着予定時刻を計算して最新スケジュール情報を更新する。また、当該指示時刻47bをP2の名称46とともに表示する(B)。
【0045】
図12に、経由地点P2点にて更新された最新スケジュール情報の概略を示した。経由地点P2に対応する歩行予定時間と実際の歩行時間との差ΔTw、および基準スケジュール情報における到着予定時刻との差ΔTpが付記されている。そして、利用者が所定の操作を行うと、MPU20は、これらの時間差(ΔTw,ΔTp)を取得して、図13に示すように、P1、P2間の歩行予定時間との具体的な差ΔTwを表示したり(A)、基準スケジュール情報における到着予定時刻との差ΔTpを表示したりする(B)。
【0046】
===高度補正機能===
以上、行程スケジュール管理機能の基本的な情報処理や操作手順について説明した。この基本的な情報処理は、利用者が各経由地点で確実に現在地点を指示する操作を行うことを前提としている。利用者は、行程中に各地点で現在地点入力を行うことが必須の操作となっている。しかも、その操作は、ある地点に到着した、という旨の単純な操作で、常時スケジュール管理画面にさせておけば、ボタン5を一回押せば済む。本実施例では、この地点入力の操作に連動させて高度を補正する機能を備えている。
【0047】
<高度補正処理>
上述したように高度は、気圧に基づいて計算されるため、ある程度の誤差が生じることはやむを得ない。しかし、本実施例のリスト・コンピュータ1は、行程スケジュール管理機能を備え、その機能を実現するために、各地点の正確な標高情報63が含まれている基準スケジュール情報(60,60b)を記憶している。そして、この正確な標高情報63を利用して、気圧に基づく高度を補正している。
【0048】
図14に高度補正機能に関わる情報処理の流れを示した。利用者は、行程スケジュール管理機能を利用するために、各地点で現在地点入力を行う。そこで、MPU20は、ある地点Pkで、現在地点入力があると、行程スケジュール情報60bにおけるこの地点Pk61の標高63を取得し(s1→s2)、気圧センサ29からの気圧データに基づいて計算している高度の値をこの標高63の数値に一致させて、高度を補正する(s3)。
【0049】
それによって利用者は、高度補正の操作を意識することなく、すなわち、面倒な操作を経ずに正確な高度に補正することができる。高度は、特に登山では、重要な情報であるため、また、高地での天候はよく変わる(気圧が変動する)ため、従来では、行程中、各地点や標高が分かっている位置で、高度を幾度となく補正する必要があった。本実施例のリスト・コンピュータ1は、この高度を煩わしい操作なしに正確な値に維持することができる極めて優れたユーザインタフェース環境を備えている。また本実施例では、各地点において、基準スケジュール情報における到着予定時刻と実際の行程との差を利用者に確認させるとともに、最新スケジュール情報を生成させる必要性から、利用者は、確実に各地点で地点入力を行う動機付けが発生する。それによって、行程中、計算による高度をほぼ正確な値に維持でき、その正確な高度を利用者に提示できる。したがって、利用者の行程中の安全性を高めることが期待できる。
【0050】
===天候予報機能===
周知のごとく、気圧は、高度が上昇するのに従って減少する。リスト・コンピュータ1は、ROM22などに、気圧と高度との対応関係を記述した関数などを記憶し、MPU20は、高度を補正していない初期状態では、高度0mで1気圧として、気圧センサからの気圧データを前記関数に代入して高度を算している。すなわち、補正していない状態で高度を計算したとき、ある標高での計算高度がその標高よりも高い数値であれば、低気圧となる。このように、標高と計算高度との大小関係に応じて天候の状況や傾向を判断することができる。
【0051】
しかし、実際の標高と計算高度との大小関係で天候の傾向がわかるのは、定点観測時だけである。本実施例のリスト・コンピュータ1は、行程スケジュール管理機能を備えて、実際の高度が経時変化する登山などの用途を想定している。すなわち、定点観測時では気圧変動が無くても、行程中の標高変化に伴って気圧が変動する。したがって、標高と計算高度との大小関係だけでは天候の傾向を判断することができない。
【0052】
そこで本実施例では、上記の天候傾向の判断アルゴリズムを採用しつつ、行程スケジュール管理機能に連動した上記高度補正機能を応用することで、標高が経時変化する行程中であっても、「維持」「悪化」「回復」などの天候の傾向を利用者に提示できる天候予報機能を実現している。
【0053】
図15は、上記天候予報機能を実現するために、MPU20が処理の対象としてROM22などに記憶されている天候予報情報80のデータ構造を示している。この天候予報情報80は、実際の標高Hと計算高度hとの大小関係に天候の傾向についての情報を対応付けしている。この例では、実際の標高Hと計算高度hとの差についての許容範囲を規定する誤差Δhが定義されており、この差の絶対値(符号81:|H−h|)とこの差(符号82:H−h)の正負の符号とに応じて、各種天候の傾向83が対応付けされている。
【0054】
図16に、上記天候予報機能に関わる情報処理の流れを示した。また、図17に、当該機能により、天候の傾向がLCD4に表示されている状態を示した。実際の標高Hと計算高度hとの差についての許容範囲を規定する誤差Δhが定義されており(s11)、まず、ある地点Paで地点入力を行った際、高度を当該地点Paの標高と同じ数値に補正したとする(s12→s13)。その後、標高が異なる他の地点Pbで同様に地点入力を行ったとする。このとき、この地点Pbにおける標高Hと、補正前の高度h(計算高度)とを取得し(s14→s15,s16)、地点Paの時と同様にして高度を補正する(s17)。
【0055】
そして、取得した標高Hと計算高度hとの差が許容誤差Δhの範囲であるときは、天候予報情報に基づいて、例えば、図17(A)に示したように「天候維持」49aなどと一時表示する(s18→s22)。この処理の流れ(s18→s22)では、Hとhがほぼ一致していれば(|H−h|≦Δh≒0)、気圧と高度との対応関係に従っており、定点観測点では気圧が一定している、と見なせることを根拠としている。
【0056】
また、Pbにおける補正前の計算高度hが実際の標高Hより大きく、その差が所定値Δhよりも大きければ、(H−h<0,|H−h|>Δh)気圧が減少していることになる。すなわち天候は「下り坂」で悪化傾向であり、図17(B)に示したように、「天候悪化」49bなどと表示する(s18→s19→s21)。その逆に補正前の計算高度hが実際の標高Hよりも小さければ(H−h>0,|H−h|>Δh)回復傾向であり、図17(C)に示したように、「天候回復」49cを表示する(s18→s19→s20)。
【0057】
このように、天候予報機能は、高度とともに行程中における重要な情報の一つである天候についてもその傾向を利用者に提示することができ、さらに利用者の行程中の安全性を向上させることができる。
【0058】
なお、図18に示した天候予報情報80bのように、実際の標高hと計算高度Hとの大小関係を数値で記述し、その数値に天候の傾向を対応付けしておいてもよい。すなわち、H−hの符号82bと、双方の差の絶対値81bの大きさとに従って、天候の傾向83bをより細かく表現することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 リスト・コンピュータ、4 液晶表示器、5 操作ボタン、20 MPU、
21 RAM、22 ROM、25 表示制御部、26 操作制御部、
27 スピーカ、28 音声出力制御部、29〜32 センサ、
34 不揮発性メモリ、35 通信インタフェース、
42,42a,42b 7セグメントパターン
43a 主ドットパターン領域、43b 副ドットパターン領域
50 クレイドル、60,60b,60c 基準スケジュール情報、
70,70b 最新スケジュール情報、80,80b 天候予報情報
【技術分野】
【0001】
この発明は、登山やトレッキングなどの行程スケジュールを管理する機能とともに高度計機能を備えた携帯型行程スケジュール管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、登山やトレッキング、キャンプなど、アウトドアでの活動を趣味にしている人が多くなってきている。そして、それらの活動を支援するための各種電子機器や情報処理装置が提供されている。例えば、各種センサを搭載して、気圧、温度、方位などを測定するとともに、気圧に基づいて高度を計算する機能(アウトドア機能)を備えた腕時計や携帯型の計器(電子計器)がある。(非特許文献1参照)。また、以下の特許文献1には、GPSを用いて利用者の行動スケジュールを管理するための携帯端末について記載されている。この携帯端末を利用すれば、登山やトレッキングをする際の行程スケジュールを管理することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−283786号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】カシオ計算機株式会社、”PROTREKの「センサー技術」”、[online]、[平成21年3月4日検索]、インターネット<URL:http://casio.jp/wat/PROTREK/sensor/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記携帯端末に上記電子計器の機能を搭載すれば、一つの装置で、行程スケジュールと周囲の環境についての情報を利用者に提示できるアウトドア用途に最適な情報処理装置が提供できると考えた。
【0006】
しかし、上記非特許文献1に記載されている電子計器は、気圧センサを搭載し、気圧に基づいて高度を計算して、その高度を表示することができるようになっている。しかし、同じ高度でも気圧が変化すれば、異なる高度を表示してしまう。もちろん、高度を正しい値に修正することもできるが、利用者は自身のいる標高を確認し、正しい高度に再設定するための煩雑や手順や操作が必要となる。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の技術は、GPS信号の受信機能を搭載し、あらかじめ作成程スケジュールに対し、目的地や経由地への到着時刻が予定通りであったかどうかを確認することができるようになっている。しかし、GPS受信機能を搭載しているため、装置自体が高価なものとなる。また、小型・軽量化にも限界がある。小型化を達成したとしても、情報の表示面積が相対的に少なくなり、GPSによって正確な相対位置情報を得られても、それに見合う十分な情報を表示することができなくなる。操作キーやボタンの数も限られ、複雑な操作が困難となる。
【0008】
本発明は、簡素な構成で安価であるとともに、正しい高度を表示する機能を備えた携帯型行程スケジュール管理装置を提供することを目的としている。なお、その他の目的については、以下の記載で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための主たる発明は、時計機能を備えて、出発地点から目的地までの行程スケジュールを管理するための携帯型行程スケジュール管理装置であって、
表示器と、
気圧センサと、
利用者入力を受け付ける操作入力部と、
出発地点と経由地点と目的地点の各地点に、到着予定時刻と標高とを対応付けした基準スケジュール情報を記憶する記憶部と、
高度計算処理と、高度補正処理と、表示制御処理とを実行する制御部と、
を備え、
前記高度計算処理は、前記気圧センサからの気圧データに基づいて高度を計算し、
前記高度補正処理は、前記基準スケジュール情報に含まれるいずれかの地点を現在地点として指示する旨の地点入力を受け付けて、前記計算した高度を前記基準スケジュール情報中の当該地点に対応する標高の値に補正し、
前記表示制御処理は、前記基準スケジュール情報の内容、および前記高度を前記表示器に表示することを特徴とする高度計付き行程スケジュール管理装置としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の携帯型行程スケジュール管理装置の一実施形態であるリスト・コンピュータを示す図である。
【図2】上記リスト・コンピュータの液晶表示器に配設されているパターンを示す図である。
【図3】上記リスト・コンピュータの機能ブロック構成を示す図である。
【図4】上記リスト・コンピュータをクレイドルに接続した状態を示す図(A)と、クレイドルの内部回路の概略図(B)である。
【図5】上記リスト・コンピュータに記憶されている基準スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図6】上記リスト・コンピュータに対して出発地点を指示する現在地点入力操作を行った際のLCDの表示状態を示す図である。
【図7】到着予定時刻が付記された基準スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図8】上記リスト・コンピュータに対して第1の経由地点を指示する現在地点入力操作を行った際のLCDの表示状態を示す図である。
【図9】上記リスト・コンピュータにて生成される最新スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図10】上記LCDにて第1の経由地点に関する情報が表示されている状態を示す図である。
【図11】上記リスト・コンピュータに対して第2の経由地点を指示する現在地点入力操作を行った際のLCDの表示状態を示す図である。
【図12】更新後の上記最新スケジュール情報のデータ構造を示す図である。
【図13】上記LCDにて第2の経由地点に関する情報が表示されている状態を示す図である。
【図14】上記リスト・コンピュータにおける高度補正機能に関わる情報処理の流れを示す図である。
【図15】上記リスト・コンピュータに記憶されている天候予報情報のデータ構造を示す図である。
【図16】上記リスト・コンピュータにおける天候予報機能に関わる情報処理の流れを示す図である。
【図17】上記LCDにて上記天候予報機能に関わる情報が表示されている状態を示す図である。
【図18】上記天候予報情報の変形例のデータ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
===本発明の特徴===
本発明は、行程スケジュールの管理機能と、気圧、温度、方位などを測定する機能(アウトドア機能)とを備えた携帯型行程スケジュール管理装置である。行程スケジュール管理機能は、利用者が、登山やトレッキング、ハイキングなどに行く際、実際の行程が、事前に計画したスケジュール(基準スケジュール)通りに進んでいるかどうかを確認するための機能である。基準スケジュールは、出発地や目的地の出発時間と到着予定時刻、目的地までの経由地点の到着時刻などを記述したものである。利用者は、行程中、基準スケジュールをこの装置に表示させ、各経由地点の到着時間と実際の到着時間を逐次確認し、歩速を早めたり休憩を取ったりする。
【0012】
しかし、上述した課題のように、アウトドア機能と行程スケジュール管理機能を同じ装置に一体化して搭載しただけでは、却って使いにくい装置となってしまう。そこで、アウトドア機能と行程スケジュール管理機能を並載するのにあたり、これらの機能を個別のものとするのではなく、上手く連動させることで、利用者にとってより便利で使いやすいインタフェース環境を実現させようと考えた。また、二つの機能を連動させることで、行程中の安全を支援できればより好ましいとも考えた。本発明は、このような考察に基づいて創作されたものであり、上記主たる発明の他に、以下の特徴を備えた携帯型行程スケジュール管理装置も本発明の範囲とした。
【0013】
前記制御部は、前記いずれかの地点についての前記地点入力を受け付けて、前記基準スケジュール情報に含まれる前記現在地点の到着予定時刻と、現在時刻との差に基づいて、前記各地点の到着予定時刻を変更した最新スケジュール情報を生成して前記記憶部に記憶する最新スケジュール生成処理を実行するとともに、前記表示制御処理では、前記最新スケジュール情報の内容を前記表示器に表示すること。
【0014】
前記記憶部は、標高と高度との大小関係に天候の傾向についての情報を対応付けした天候予報情報を記憶し、
前記制御部は、ある地点についての前記地点入力を受け付けた際に高度を補正したのち、他の地点についての前記地点入力を受け付けた際の補正前の高度と、前記基準スケジュール情報に含まれる当該他の地点における標高との大小関係に対応する前記天候の傾向を前記表示器に出力する天候予報処理を実行すること。
【0015】
前記天候予報情報は、前記標高と高度との大小関係について、標高と高度との差を数値範囲ごとに区分するとともに、各数値範囲に天候の傾向についての情報を対応付けしていること。
【0016】
===装置の基本的な構成===
図1は、本発明の実施例における携帯型行程スケジュール管理装置の外観図である。当該携帯型行程スケジュール管理装置1は、腕に装着するためのバンド2を備えた腕時計型であり、基本的な構造や構成は、ケース3の前面に液晶表示器(LCD)4を文字盤として備えたデジタル式腕時計と同様である。そして、ケース3の側面には、この携帯型行程スケジュール管理装置(以下、リスト・コンピュータ)1を操作するための複数のボタン5が配設されている。
【0017】
図2に、LCD4の表示パターンを示した。特定の文字や図形を専用に表示するためのアイコン用パターン41と、数字を表示するための7セグメントパターン42、テキストや図形をビットマップ表示するための大小2つのドットマトリクスパターン(43a,43b)が配設されている。
【0018】
図3に、上記リスト・コンピュータ1の機能ブロック構成を示した。リスト・コンピュータのハードウエア構成は、各種センサ(29〜32)を搭載して、温度、気圧や標高、方位などの情報を表示する、いわゆる「アウトドア・ウオッチ」と呼ばれる腕時計と同様である。MPU20、RAM21、ROM22からなるコンピュータ本体をコントローラとし、ROM22にはMPU20によって実行される各種プログラムやフォントデータが記憶されている。また、外部記憶としてフラッシュメモリ34を内蔵している。
【0019】
発振回路23と分周回路24は、各種周波数のクロックを発生させる回路であり、MPU20を動作させるための基準クロックや時刻表示やストップウオッチなどの計時機能に関わるクロックを発生する。表示制御部25は、MPU20からの指示に従って各種情報をLCD4に表示し、操作制御部26は、操作ボタン5からの操作信号をMPU20に入力する。音声制御部28は、MPU20からの指示に従ってスピーカ27を駆動し、アラーム音など音声出力させる。
【0020】
さらに、アウトドアでの用途を想定した様々な情報を利用者に提供するための機能(アウトドア機能)を実現するために、気圧センサ29、温度センサ30、方位センサ31に加え、歩行に伴う振動を検出するためのセンサ32を備えている。本実施例では加速度センサ32を採用している。そして、各センサ(29〜32)が出力する信号は、それぞれのセンサ(29〜32)に対応するA/D変換回路(33a〜33d)にて各種デジタルータ(気圧データ、温度データ、方位データ、振動データ)に変換されてMPU20に入力される。
【0021】
MPU20は、操作制御部26からの操作信号に応動してROM22に記憶されている所定のプログラムを実行し、そのプログラムの実行結果などをRAM21に書込んだり、その書き込んだデータをRAM21から読み出したりする。MPU20は、各センサ(29〜32)に接続されているA/D変換回路(33a〜33d)からの各種データについても、サンプリング機会ごとに更新しながらRAM21に読み出し可能にして格納する。
【0022】
さらに、格納した各種データ基づいて所用の情報を随時生成してRAM21に格納する。例えば、あらかじめ記憶されている気圧と高度との関係から気圧センサ29からの気圧データに基づいて高度を計算し、その計算結果を格納する。
【0023】
また、リスト・コンピュータ1は、歩数計機能を備え、利用者入力された歩幅をフラッシュメモリ34に記憶し、MPU20が、加速度センサ32からの振動データを解析して歩行に伴う振動を抽出するとともに、その振動に基づいて歩数を計数したり、その歩数に歩幅を乗算して歩行距離を計算したりする。そして、利用者が所定の操作入力を行った時点を起点とした歩行距離を計算し、その計算結果を更新しながらRAM21に格納していく。
【0024】
さらにリスト・コンピュータ1は、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部の情報処理装置と通信する機能を備え、そのための構成として、通信インタフェース(IF)35を備えている。MPU20は、この通信IF35を介して、情報処理装置に各種データを転送したり、情報処理装置から各種データを受け取ったりする。
【0025】
なお、通信IF35と外部の情報処理装置とは、直接接続される形態である場合もあるし、クレイドルと呼ばれる中間装置を介して接続される形態である場合もある。本実施例では、通信IF35は、電波や赤外線などを用いた無線信号によりクレイドルと通信する。
【0026】
図4の(A)と(B)に、クレイドル50に装着された状態のリスト・コンピュータ1と、クレイドル50の内部回路の概略構成とを示した。クレイドル50は、無線信号によりリスト・コンピュータ1の通信IF35と通信するための無線通信IF51と、情報処理装置と汎用の通信規格に準じたプロトコルで通信するための汎用通信IF52とを備え、CPU、RAM、ROMを備えたコントローラ53は、双方の通信IF(41,42)を介して送受信されるプロトコルの異なる信号を解釈して相互変換する。なお、クレイドル50と情報処理装置とは、例えば、USB規格に準じたコネクタ54を両端に備えたケーブル55を介して接続される。このような構成により、リスト・コンピュータ1のMPU20は、通信IF35を介して間接的に外部の情報処理装置と通信する。そして、MPU20は、通信IF35を介して外部の情報処理装置から転送されてきたデータをフラッシュメモリ34に格納したり、フラッシュメモリ34内のデータを外部の情報通信装置に転送したりする。
【0027】
上記構成を備えたリスト・コンピュータ1は、MPU20の制御により、アウトドア機能や時計機能に関わる情報、受信したデータ、情報処理の実行結果などをLCD4に表示したり、アラーム音をスピーカ27から出力したりする。
【0028】
さらに、リスト・コンピュータ1は、利用者が事前に作成した登山やトレッキングのスケジュールについての情報(基準スケジュール情報)を記憶し、実際の行程と比較しながらスケジュールを随時最新のものに更新し、その最新スケジュールの内容を利用者に提示するスケジュール管理機能を備えている。しかも、本実施例のスケジュール管理機能によれば、基準スケジュールと実際の行程との差を確実に確認させて、利用者が安全に登山やトレッキングを遂行できるように支援する機能も備えている。
【0029】
===基準スケジュール情報===
フラッシュメモリ34には、スケジュール管理機能を実現させるための情報として、基準スケジュール情報が記憶さている。図5に当該基準スケジュール情報60のデータ構造を示した。本実施例では、出発地点P0と目的地点Pnの途上に複数の経由地点Pk(k=1,2,3…,n−1)が設定されている。この図では、登山のスケジュールが示されており、各地点61についての情報として、名称62と標高63が含まれているとともに、各地点間の各地点間の距離64や歩行予定時間65も記述されている。例えば、出発地点P0は、名称が「猿倉」で標高が1240mである。また、P0と最初の経由地点P1とは、2400mの距離(地点間距離)があり、その歩行予定時間は55分となっている。
【0030】
もちろん、基準スケジュール情報60のデータの構造や記述内容は、適宜に変更可能である。例えば、地点間距離64は、出発地点P0からの距離で記述してもよいし、歩行予定時間65に加え、各地点61における休憩時間を記述してもよい。地点間の歩行予定時間65に代えて、出発地点P0からの累積歩行予定時間を記述したり、各地点61の出発予定時刻や到着予定時刻を記述したりすることも可能である。少なくとも、各地点間の距離64が特定できるとともに、出発地点P0の出発予定時刻、あるいは実際の出発時刻を特定した段階で、以後の各地点61の到着予定時刻が特定できるようなデータ構造であればよい。
【0031】
===基準スケジュール情報の入力===
図5に示した基準スケジュール情報は、リスト・コンピュータ1に当初から記憶させておくことも考えられる。また、手間が掛かるが、操作ボタン5により、テキストや数値入力をすることも可能である。しかし、本実施例では、リスト・コンピュータ1が標準で備える通信機能を使って基準スケジュール情報60を外部の情報処理装置から入力することとしている。
【0032】
例えば、PCを情報処理装置として、そのPCに基準スケジュール情報60を編集するためのソフトウエアをインストールさせておく、利用者はPCを使って基準スケジュール情報60を編集し、所定形式のファイルに作成する。そして、そのファイルをフラッシュメモリ34に転送し記憶させる。MPU20は、所定形式のファイルを基準スケジュール情報60として認識する。
【0033】
あるいは、Webサーバー上に基準スケジュール情報60をダウンロード可能に用意しておいてもよい。この場合、PCはブラウザを実装しているだけでよく、基準スケジュール情報60の編集ソフトウエアをインストールする必要がない。
【0034】
===基準スケジュールの設定===
基準スケジュール情報60の内容を実際の行程における時刻に対応させるためには、まず、各地点61の到着予定時刻を規定する必要がある。本実施例では、基準スケジュール情報60には到着予定時刻が記載されていないため、実際の出発時刻と各地点間の歩行予定時間65とに基づいて、基準ケジュール情報60に各地点の到着予定時刻を付記することとしている。
【0035】
この到着予定時刻を当初の基準スケジュール情報60に付記するために、利用者は、出発地点において、所定の操作入力を行い、現在地点が出発地点P0である旨を指示する操作を行う。図6に出発地点の指示入力に伴うLCD4の表示状態の遷移を示した。基本的な表示状態である時刻表示状態(A)において、各種機能に対応する画面を呼び出すための所定の操作ボタン5を押して、スケジュール管理機能に関わる画面(スケジュール管理画面)を表示させる。なお、この表示状態において、他のボタン5を押すと、スケジュールに関わる各種情報(現在地点、次の地点、次の地点の到着予定時刻や到着までの時間、距離、標高など)を順次呼び出して表示させることができる。また、所定のボタン5に対する操作により、スケジュール管理機能に関わる各種情報を入力することもできる。
【0036】
MPU20は、スケジュール管理画面を表示する際、出発地点P0の情報を表示し、所定の操作入力を受け付けるごとに、順次P1、P2・・・と地点を進め、各地点についての情報を表示する。ここでは、出発地点P0の情報を表示させると、現在時刻44が時刻表示用の7セグメントパターン(42a,42b)に表示されている状態で、出発地点である旨の「P0」45が小さな表示面積の方のドットマトリクスパターン領域(副ドットパターン領域)43bに表示され、名称46が大きい方のドットマトリクスパターン領域(主ドットパターン領域)43aに表示される。なお、現在地点の指示入力があるまでは、出発時間47が未入力状態「−− −−」となっている。
【0037】
利用者は、出発に際して所定のボタン5を押して現在地点が出発地点P0であることを指示すると、MPU20は、当該入力時点の時刻をRAM32に記憶するなどして取得するとともに、この出発時刻47を主ドットパターン領域43aの名称46の上に表示する(B)。
【0038】
また、基準スケジュール情報60に含まれる各地点間の歩行予定時間65に従って、各地点への到着予定時刻を計算し、各地点に到着予定時刻を対応付けして基準スケジュール情報を更新し、この更新した基本スケジュール情報をフラッシュメモリ34に記憶する。図7に到着予定時刻66が付記された基準スケジュール情報60bのデータ構造を示した。
【0039】
===最新スケジュール情報の生成===
利用者は、行程中、基本スケジュール情報に含まれる各地点にて地点入力を行って、基本スケジュール情報に記載されている到着予定時間と、実際の到着時間との差を確認することで、予定に対する行程の進捗状況を確認することができる。しかも、本実施例では、実際の行程進捗状況に応じて当初の基準スケジュール情報を変更して到着予定時刻を随時更新する最新スケジュール生成機能を備えている。
【0040】
具体的には、MPU20は、利用者が出発地点P0の場合と同様にして、各地点61でその地点に到着した旨の指示入力(現在地点入力)を行うことで、行程中、現在の位置が基準スケジュール情報60bに記載されているどの地点とどの地点の間なのかを認識する。すなわち、利用者が特定の地点をスケジュール管理画面に表示させ、その地点を現在地点であると指示すると、MPU20は、その地点を到着済みのフラグを立てる。そして、ある連続する2地点が到着済みと未到着であれば、現在位置がその2地点の間であること特定することができる。そして、MPU20は、各地点にて現在地点入力を受け付けると、その都度、基準スケジュール情報60bの内容を実際の行程に応じて変更した最新のスケジュール情報を生成する。
【0041】
図8(A)〜(C)にこの最新スケジュールの生成過程でLCD4に表示される画面の遷移を示した。利用者は、出発地点P0から歩き始めて最初の経由地点P1に来たら、リスト・コンピュータ1を操作してスケジュール管理画面を呼び出す。呼び出した画面には、現在時刻44が表示された状態で、出発地点「P0」表示45と、その名称46と、先に出発地点P0で入力した出発時刻47とが表示されている(A)。ここで、所定の操作入力を行って、最初の経由地点P1の情報を表示させる(B)。この表示画面には、最初の経由地点である「P1」45と、その名称46が表示されているとともに、到着予定時刻が付記された基準スケジュール情報60bに記載されている当該P1への到着予定時刻47aが表示されている。この状態で利用者は同じ画面に表示されている現在時刻44から、当初の予定到着時間との差を確認することができる。そして、所定のボタン5を押して経由地点P1である旨の現在地点入力を行うと、MPU20は、この入力時刻を取得し、到着予定時刻に代えて実際に到着した時刻47bを表示し(C)、この時刻47bと基準スケジュール情報60bに含まれている各地点間の歩行予定時間65とに基づいて、次の経由地点P2以降の各地点61の到着予定時刻を計算し、その到着予定時刻66を各地点61に対応付けした最新スケジュール情報を生成する。
【0042】
図9に生成された最新スケジュール情報70の概略を示した。この例では、基準スケジュール情報60bに含まれる地点間の歩行予定時間65と実際に掛かった時間との差ΔTw73や、当該経由地点P1の到着予定時刻との時間差ΔTp74を計算し、これらの時間差(ΔTw73,ΔTp74)も最新スケジュール情報70に含める。また、地点P1について、現在地点入力した旨の「済」のフラグを立てる。
【0043】
これら最新スケジュール情報の内容は、利用者による所定の操作入力に従って、適宜にスケジュール管理画面に表示させることができる。図10に、上記各時間差(ΔTw,ΔTp)の表示例を示した。ここでは、最初の経由地点P1が指示された段階なので、ΔTw(48a)を表示した状態(A)とΔTp(48b)を表示した状態(B)では、ともに同じ時間差が表示されている。
【0044】
利用者は、次の経由地点P2でも、経由地点P1での操作と同様の操作を行い、P2の到着予定時刻を名称とともに表示させる。図11(A)(B)に2番目の経由地点P2を現在地点入力したときのLCD4の表示状態の遷移を示した。経由地点P2についての情報を最初に表示させた状態(A)では、到着予定時刻47aは、先の経由地点P1の現在地点入力がなされた時点で生成された最新スケジュール情報70に記載されている経由地点P2に対応する到着予定時刻47aであり、利用者は、同じ画面に表示されている到着予定時刻47aと現在時刻44とを比較することで、地点間の歩行予定時間と実際の歩行時間との差を確認することができる。そして、現在地点がP2である旨の現在地点入力操作を行うと、この入力時点の時刻を実際の経由地点P2の到着時刻として以後の地点における到着予定時刻を計算して最新スケジュール情報を更新する。また、当該指示時刻47bをP2の名称46とともに表示する(B)。
【0045】
図12に、経由地点P2点にて更新された最新スケジュール情報の概略を示した。経由地点P2に対応する歩行予定時間と実際の歩行時間との差ΔTw、および基準スケジュール情報における到着予定時刻との差ΔTpが付記されている。そして、利用者が所定の操作を行うと、MPU20は、これらの時間差(ΔTw,ΔTp)を取得して、図13に示すように、P1、P2間の歩行予定時間との具体的な差ΔTwを表示したり(A)、基準スケジュール情報における到着予定時刻との差ΔTpを表示したりする(B)。
【0046】
===高度補正機能===
以上、行程スケジュール管理機能の基本的な情報処理や操作手順について説明した。この基本的な情報処理は、利用者が各経由地点で確実に現在地点を指示する操作を行うことを前提としている。利用者は、行程中に各地点で現在地点入力を行うことが必須の操作となっている。しかも、その操作は、ある地点に到着した、という旨の単純な操作で、常時スケジュール管理画面にさせておけば、ボタン5を一回押せば済む。本実施例では、この地点入力の操作に連動させて高度を補正する機能を備えている。
【0047】
<高度補正処理>
上述したように高度は、気圧に基づいて計算されるため、ある程度の誤差が生じることはやむを得ない。しかし、本実施例のリスト・コンピュータ1は、行程スケジュール管理機能を備え、その機能を実現するために、各地点の正確な標高情報63が含まれている基準スケジュール情報(60,60b)を記憶している。そして、この正確な標高情報63を利用して、気圧に基づく高度を補正している。
【0048】
図14に高度補正機能に関わる情報処理の流れを示した。利用者は、行程スケジュール管理機能を利用するために、各地点で現在地点入力を行う。そこで、MPU20は、ある地点Pkで、現在地点入力があると、行程スケジュール情報60bにおけるこの地点Pk61の標高63を取得し(s1→s2)、気圧センサ29からの気圧データに基づいて計算している高度の値をこの標高63の数値に一致させて、高度を補正する(s3)。
【0049】
それによって利用者は、高度補正の操作を意識することなく、すなわち、面倒な操作を経ずに正確な高度に補正することができる。高度は、特に登山では、重要な情報であるため、また、高地での天候はよく変わる(気圧が変動する)ため、従来では、行程中、各地点や標高が分かっている位置で、高度を幾度となく補正する必要があった。本実施例のリスト・コンピュータ1は、この高度を煩わしい操作なしに正確な値に維持することができる極めて優れたユーザインタフェース環境を備えている。また本実施例では、各地点において、基準スケジュール情報における到着予定時刻と実際の行程との差を利用者に確認させるとともに、最新スケジュール情報を生成させる必要性から、利用者は、確実に各地点で地点入力を行う動機付けが発生する。それによって、行程中、計算による高度をほぼ正確な値に維持でき、その正確な高度を利用者に提示できる。したがって、利用者の行程中の安全性を高めることが期待できる。
【0050】
===天候予報機能===
周知のごとく、気圧は、高度が上昇するのに従って減少する。リスト・コンピュータ1は、ROM22などに、気圧と高度との対応関係を記述した関数などを記憶し、MPU20は、高度を補正していない初期状態では、高度0mで1気圧として、気圧センサからの気圧データを前記関数に代入して高度を算している。すなわち、補正していない状態で高度を計算したとき、ある標高での計算高度がその標高よりも高い数値であれば、低気圧となる。このように、標高と計算高度との大小関係に応じて天候の状況や傾向を判断することができる。
【0051】
しかし、実際の標高と計算高度との大小関係で天候の傾向がわかるのは、定点観測時だけである。本実施例のリスト・コンピュータ1は、行程スケジュール管理機能を備えて、実際の高度が経時変化する登山などの用途を想定している。すなわち、定点観測時では気圧変動が無くても、行程中の標高変化に伴って気圧が変動する。したがって、標高と計算高度との大小関係だけでは天候の傾向を判断することができない。
【0052】
そこで本実施例では、上記の天候傾向の判断アルゴリズムを採用しつつ、行程スケジュール管理機能に連動した上記高度補正機能を応用することで、標高が経時変化する行程中であっても、「維持」「悪化」「回復」などの天候の傾向を利用者に提示できる天候予報機能を実現している。
【0053】
図15は、上記天候予報機能を実現するために、MPU20が処理の対象としてROM22などに記憶されている天候予報情報80のデータ構造を示している。この天候予報情報80は、実際の標高Hと計算高度hとの大小関係に天候の傾向についての情報を対応付けしている。この例では、実際の標高Hと計算高度hとの差についての許容範囲を規定する誤差Δhが定義されており、この差の絶対値(符号81:|H−h|)とこの差(符号82:H−h)の正負の符号とに応じて、各種天候の傾向83が対応付けされている。
【0054】
図16に、上記天候予報機能に関わる情報処理の流れを示した。また、図17に、当該機能により、天候の傾向がLCD4に表示されている状態を示した。実際の標高Hと計算高度hとの差についての許容範囲を規定する誤差Δhが定義されており(s11)、まず、ある地点Paで地点入力を行った際、高度を当該地点Paの標高と同じ数値に補正したとする(s12→s13)。その後、標高が異なる他の地点Pbで同様に地点入力を行ったとする。このとき、この地点Pbにおける標高Hと、補正前の高度h(計算高度)とを取得し(s14→s15,s16)、地点Paの時と同様にして高度を補正する(s17)。
【0055】
そして、取得した標高Hと計算高度hとの差が許容誤差Δhの範囲であるときは、天候予報情報に基づいて、例えば、図17(A)に示したように「天候維持」49aなどと一時表示する(s18→s22)。この処理の流れ(s18→s22)では、Hとhがほぼ一致していれば(|H−h|≦Δh≒0)、気圧と高度との対応関係に従っており、定点観測点では気圧が一定している、と見なせることを根拠としている。
【0056】
また、Pbにおける補正前の計算高度hが実際の標高Hより大きく、その差が所定値Δhよりも大きければ、(H−h<0,|H−h|>Δh)気圧が減少していることになる。すなわち天候は「下り坂」で悪化傾向であり、図17(B)に示したように、「天候悪化」49bなどと表示する(s18→s19→s21)。その逆に補正前の計算高度hが実際の標高Hよりも小さければ(H−h>0,|H−h|>Δh)回復傾向であり、図17(C)に示したように、「天候回復」49cを表示する(s18→s19→s20)。
【0057】
このように、天候予報機能は、高度とともに行程中における重要な情報の一つである天候についてもその傾向を利用者に提示することができ、さらに利用者の行程中の安全性を向上させることができる。
【0058】
なお、図18に示した天候予報情報80bのように、実際の標高hと計算高度Hとの大小関係を数値で記述し、その数値に天候の傾向を対応付けしておいてもよい。すなわち、H−hの符号82bと、双方の差の絶対値81bの大きさとに従って、天候の傾向83bをより細かく表現することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 リスト・コンピュータ、4 液晶表示器、5 操作ボタン、20 MPU、
21 RAM、22 ROM、25 表示制御部、26 操作制御部、
27 スピーカ、28 音声出力制御部、29〜32 センサ、
34 不揮発性メモリ、35 通信インタフェース、
42,42a,42b 7セグメントパターン
43a 主ドットパターン領域、43b 副ドットパターン領域
50 クレイドル、60,60b,60c 基準スケジュール情報、
70,70b 最新スケジュール情報、80,80b 天候予報情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計機能を備えて、出発地点から目的地までの行程スケジュールを管理するための携帯型行程スケジュール管理装置であって、
表示器と、
気圧センサと、
利用者入力を受け付ける操作入力部と、
出発地点と経由地点と目的地点の各地点に、到着予定時刻と標高とを対応付けした基準スケジュール情報を記憶する記憶部と、
高度計算処理と、高度補正処理と、表示制御処理とを実行する制御部と、
を備え、
前記高度計算処理は、前記気圧センサからの気圧データに基づいて高度を計算し、
前記高度補正処理は、前記基準スケジュール情報に含まれるいずれかの地点を現在地点として指示する旨の地点入力を受け付けて、前記計算した高度を前記基準スケジュール情報中の当該地点に対応する標高の値に補正し、
前記表示制御処理は、前記基準スケジュール情報の内容、および前記高度を前記表示器に表示する、
ことを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御部は、前記いずれかの地点についての前記地点入力を受け付けて、前記基準スケジュール情報に含まれる前記現在地点の到着予定時刻と、現在時刻との差に基づいて、前記各地点の到着予定時刻を変更した最新スケジュール情報を生成して前記記憶部に記憶する最新スケジュール生成処理を実行するとともに、前記表示制御処理では、前記最新スケジュール情報の内容を前記表示器に表示することを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記記憶部は、標高と高度との大小関係に天候の傾向についての情報を対応付けした天候予報情報を記憶し、
前記制御部は、ある地点についての前記地点入力を受け付けた際に高度を補正したのち、他の地点についての前記地点入力を受け付けた際の補正前の高度と、前記基準スケジュール情報に含まれる当該他の地点における標高との大小関係に対応する前記天候の傾向を前記表示器に出力する天候予報処理を実行する、
ことを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項4】
請求項3において、前記天候予報情報は、前記標高と高度との大小関係について、標高と高度との差を数値範囲ごとに区分するとともに、各数値範囲に天候の傾向についての情報を対応付けしていることを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項1】
時計機能を備えて、出発地点から目的地までの行程スケジュールを管理するための携帯型行程スケジュール管理装置であって、
表示器と、
気圧センサと、
利用者入力を受け付ける操作入力部と、
出発地点と経由地点と目的地点の各地点に、到着予定時刻と標高とを対応付けした基準スケジュール情報を記憶する記憶部と、
高度計算処理と、高度補正処理と、表示制御処理とを実行する制御部と、
を備え、
前記高度計算処理は、前記気圧センサからの気圧データに基づいて高度を計算し、
前記高度補正処理は、前記基準スケジュール情報に含まれるいずれかの地点を現在地点として指示する旨の地点入力を受け付けて、前記計算した高度を前記基準スケジュール情報中の当該地点に対応する標高の値に補正し、
前記表示制御処理は、前記基準スケジュール情報の内容、および前記高度を前記表示器に表示する、
ことを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御部は、前記いずれかの地点についての前記地点入力を受け付けて、前記基準スケジュール情報に含まれる前記現在地点の到着予定時刻と、現在時刻との差に基づいて、前記各地点の到着予定時刻を変更した最新スケジュール情報を生成して前記記憶部に記憶する最新スケジュール生成処理を実行するとともに、前記表示制御処理では、前記最新スケジュール情報の内容を前記表示器に表示することを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記記憶部は、標高と高度との大小関係に天候の傾向についての情報を対応付けした天候予報情報を記憶し、
前記制御部は、ある地点についての前記地点入力を受け付けた際に高度を補正したのち、他の地点についての前記地点入力を受け付けた際の補正前の高度と、前記基準スケジュール情報に含まれる当該他の地点における標高との大小関係に対応する前記天候の傾向を前記表示器に出力する天候予報処理を実行する、
ことを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【請求項4】
請求項3において、前記天候予報情報は、前記標高と高度との大小関係について、標高と高度との差を数値範囲ごとに区分するとともに、各数値範囲に天候の傾向についての情報を対応付けしていることを特徴とする高度計付き携帯型行程スケジュール管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−227146(P2010−227146A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75116(P2009−75116)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
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