高強度のポリHIPE材料、その製造方法、その製造に有用なエマルジョン、およびこの材料からなる物品
本発明は、高強度のポリHIPE材料に関する。この材料は、少なくとも1種のN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマーを、架橋性モノマー/N-アルケニルトリアゾールモノマーの質量比が1/100から60/100の範囲で含む。本発明はさらに、この材料を製造するための方法およびエマルジョンに関し、完全にまたは部分的にこの材料からなる物品、特に、不均一触媒作用用の触媒担体、粒子フィルター、金属イオン吸着剤またはガスセンサにも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数ある特性の中でも特に高い機械的強度を有するポリHIPE材料に関する。
【0002】
本発明はさらに、この材料を製造するための方法およびエマルジョン、ならびに全部または一部がこの材料からなる物品または物に関する。
【0003】
本発明のポリHIPE材料は、すべての分野において用途を見出すことができ、固有の特性である互いに連結した気泡構造と優れた機械的強度とを兼ね備えた材料の使用についてすべての分野で関心がもたれる可能性がある。
【0004】
特に、本発明のポリHIPE材料は、不均一触媒用、とりわけ光触媒作用による空気または水の処理のための二酸化チタンまたは二酸化スズのタイプの光触媒用の触媒担体の製造、粒子フィルターの製造、浄水用の金属イオン吸着剤の製造、ガス、例えば、オゾンのセンサの製造において、さらにより一般的には、互いに連結した連続気泡の一体的なブロック材料の使用が必要とされるすべての用途において使用することができる。
【背景技術】
【0005】
重合した高内相エマルジョン(Polymerised High Internal Phase Emulsion)「ポリHIPE」材料は、HIPE(高内相エマルジョン(High Internal Phase Emulsion)を表す)と呼ばれるエマルジョンを重合させることによって得られる。このHIPEは、
・ 第一に、重合可能なモノマーと、溶媒中の界面活性剤溶液とから本質的になる外部相すなわち連続相、および
・ 第二に、典型的にはエマルジョンの全容積のうち74%以上を占め、重合可能なモノマーと混和せず、かつ/あるいは連続相の溶媒と混和しない溶媒から本質的になる内部相すなわち分散相
を含む。
【0006】
重合させ、分散相から溶媒を除去した後、連続気泡の材料が得られる。一般に孔と称されるこの気泡は、エマルジョンの調製中にこうした溶媒によって形成される泡の跡であり、気泡自体よりも小さな隙間部によって互いに連結している。
【0007】
ポリHIPE材料は、空隙容量/充填容量の比率が特に高く、したがって特に低密度であり、球状で等方性の規則的な気泡構造を有する。これにより、ポリHIPE材料は、従来技術によりブロー成形または押し出し成形によって得られ、配向した異方性の不規則な気泡構造によって特徴付けられるポリマー発泡体材料とは、非常に異なっている。
【0008】
上記の特徴を考慮して、ポリHIPE材料への関心が高まっており、使い捨ての吸収性製品、断熱、遮音、電気絶縁もしくは機械的絶縁のための材料、ならびに、インク、染料および触媒用の膜、フィルター、または担体の製造について言及される可能性がある多くの分野においてポリHIPE材料の使用が提案されてきている。
【0009】
現在までの文献で報告されているポリHIPE材料の大部分は、その連続相が有機相であり、その分散相が水性相である「油中水型」HIPEエマルジョンから得られる材料によって代表される。この場合、重合可能なモノマーは疎水性モノマーであり、一般的には、スチレン、ジビニルベンゼン、および2-エチル-ヘキシルアクリレートなどの不飽和のビニルモノマーである。
【0010】
さらに、H. Deleuzeらは、Polymer、2005、Vol. 46、9653〜9663[1]において、スチレンおよびジビニルベンゼンタイプの疎水性モノマーから得られるポリHIPE材料は、架橋の割合が50%であっても、ヤング係数が9MPa、すなわち、一般的に一部の用途に対しては低すぎると考えられる値であることを示している。
【0011】
「水中油型」HIPEエマルジョン、すなわち、連続相として水性相を有し、分散相として有機相を有するエマルジョン由来のポリHIPE材料も公知である。例えば、WO2004/044041[2]として公開された国際PCT出願には、吸収性衛生物品の製造のためのHIPEエマルジョンの使用が記載されており、この連続相は、アクリル酸タイプのモノマーおよびその誘導体の重合可能な親水性モノマーが溶解した水性相である一方、分散相はシリコーン油からなっている。さらに、P. Krajncら、Macromol. Rapid Comm.、2005、Vol. 26、1289〜1293[3]には、「水中油型」HIPEエマルジョンから得られる、N,N'-メチレン-ビス(アクリルアミド)と架橋したアクリル酸からなる多孔質ポリマーの調製について記載されている。しかし、これらの研究からもたらされるポリHIPE材料はいずれも、水性媒体中の高い膨張性を有するが、機械的強度が低い。
【0012】
したがって、ポリHIPE材料の特異な特性を有する一方で、高い機械的強度、すなわちこれらのタイプの材料に対して提案されてきたすべての用途おける使用が実際に想定可能となるために少なくとも十分な高い機械的強度をも有する材料を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2004/044041号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,646,293号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Polymer、2005、Vol. 46、9653〜9663
【非特許文献2】Macromol. Rapid Comm、2005、Vol. 26、1289〜1293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、正確には、高い機械的強度を有するポリHIPE材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の主題は、第一に、共重合された形態で、
a)下記一般式(I)の、少なくとも1種のN-アルケニルトリアゾールモノマーと、
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、R1およびR2は、それぞれが独立に、水素原子もしくはハロゲン原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOH、-CnF2n+1(nは1から12の範囲の整数である)基、または、1個もしくは複数個の酸素原子および/もしくは硫黄原子ならびにC3からC16の環式炭化水素基もしくは3から16員の複素環式炭化水素基によって任意選択で中断されていてもよい、C1からC16の脂肪族炭化水素基を表す]
b)少なくとも1種の架橋性モノマーと
を含み、
架橋性モノマー/N-アルケニルトリアゾールモノマーの質量比が1/100から60/100である、ポリHIPE材料である。
【0019】
本明細書の前述および以下において、
- 表現『C1からC16の脂肪族炭化水素基』とは、少なくとも1つの炭素原子であるが16を超えない炭素原子から形成される飽和または不飽和の直鎖または分岐ではあるが環式ではないあらゆる炭化水素基を指し、したがって、これは、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル)、アルケニル基(例えば、エチレニル、プロピレニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、メチルペンテニルもしくはブタ-1,3-ジエニル)またはアルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニル)であってよく、この基が1個または複数個の酸素原子または硫黄原子によって中断されている場合、この原子またはこれらの原子が2つの炭素原子の間に挿入されていることを意味する。
- 表現『C3からC16の環式炭化水素基』とは、少なくとも3つの炭素原子ではあるが16を超えない炭素原子から形成される飽和または不飽和のあらゆる単環式または多環式炭化水素基を指し、これは、非芳香族基、すなわちシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、ノルボルニル、ビシクロ[4.3.2]-ウンデシル、ビシクロ[4.4.0]デシルまたはアダマンチル)、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基であってもよいが、芳香族基、すなわちヒュッケル則を満たし、非局在化電子πの数が4n+2である基(例えば、フェニル、ベンジル、ビフェニル、フェニル-アセチレニル、ピレニルまたはアントラセニル)であってもよい。
- 表現『3から16員の複素環式炭化水素基』とは、定義されるとおり環式炭化水素基を指すが、それを構成する環の1つまたは複数の原子がヘテロ原子、典型的には酸素原子、硫黄原子または窒素原子によって置き換えられている。環式炭化水素基は、非芳香族基、すなわちヘテロシクロアルキル基(例えば、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、ピペリジニル、ジオキサニルまたはモルホリニル)、ヘテロシクロアルケニルまたはヘテロシクロアルキニル基であってもよいが、ヘテロ芳香族基(例えば、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピラニル、キノリニル、ピラジニルまたはピリミジニル)であってもよい。
【0020】
本発明によれば、N-アルケニルトリアゾールモノマーは、R1および/またはR2が塩を形成可能な基を表す場合、とりわけ-OH、-SH、-SO3H、-NH2および-COOH基ならびにピペリジニルまたはモルホリニルのタイプの窒素複素環式基である場合には、塩の形態であってもよい。この塩は、塩化可能な基がカチオン(例えば、-NH3+)の形態である場合は、ハロゲン化物、水酸化物、鉱酸塩(例えば、硝酸塩)または有機酸塩(例えば、酢酸塩)であってよい。ただし、塩化可能な基がアニオン(例えば、-SO3-または-COO-)の形態である場合はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩であってもよい。
【0021】
さらに、R1および/またはR2が環式または複素環式炭化水素基、より特に芳香族基またはヘテロ芳香族基を表す場合、N-アルケニルトリアゾールモノマーの極性溶媒への溶解性を高めるために、この基を-OH、-SH、-NH2、-CO2Hまたは-SO3Hタイプの1個または複数個の極性基で置換してもよい。
【0022】
本発明によれば、一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマーは、式中、R1およびR2がそれぞれ独立に水素原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOHまたはCnF2n+1基(nは上で定義したとおりである)を表すモノマーから選択されることが好ましく、1-ビニル-1,2,4-トリアゾールが特に最も好ましい。
【0023】
架橋性モノマーは、極性溶媒(例えば、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリルおよびこれらの混合物など)に溶解性のポリビニル化合物から選択されることが好ましい。
【0024】
さらに好ましくは、架橋性モノマーは、水溶性のポリビニル化合物、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-エチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-トリメチレン-ビス(アクリルアミド)、N,N'-メチレンビス(メタクリルアミド)およびN,N'-エチレンビス(メタクリルアミド)などであり、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)が特に最も好ましい。
【0025】
本発明によれば、架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は、好ましくは1/100から20/100、さらに好ましくは3/100から10/100の範囲であり、この後者の場合、3から10%のN-アルケニルトリアゾールモノマーの架橋率に相当する。
【0026】
本発明の材料は、以下の工程:
a)- 一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤(またはプライマー)を含み、任意選択でN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい、いわゆる連続相である第一相と、
- 上記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の溶媒と混和しない溶媒を含む、いわゆる分散相である第二相と
の間でエマルジョンを形成させる工程;
b)固形材料が得られるまで、工程a)で得られたエマルジョンを重合させる工程;および
c)工程b)で得られた材料を洗浄し、乾燥する工程
を含む方法に従って製造することができる。
【0027】
本発明の好適な一構成によると、連続相は、一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマー、架橋性モノマー、界面活性剤、および架橋開始剤に加えて、極性溶媒(例えば、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、またはのられらの混合物など)を含む一方、分散相は、非極性溶媒を含む。
【0028】
この場合、極性溶媒とN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は、好ましくは1/3から4/1、さらに好ましくは0.8/1から2/1の範囲であり、非極性溶媒と上記モノマーとの質量比は、有利には1/1から10/1、好ましくは1/1から6/1、より好ましくは1.5/1から5/1の範囲である。
【0029】
さらに好ましくは、エマルジョンが「水中油型」エマルジョン、すなわち連続相の溶媒が、水、好ましくは蒸留水、または水と別の極性溶媒との混合物である一方、分散相の溶媒が、長鎖のアルカン、すなわちC6からC32のアルカン、有利にはドデカンまたはテトラデカンであることが好ましい。
【0030】
本発明によれば、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であることが好ましく、この場合、とりわけ、アルキルエトキシレート、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、オキサアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート(例えば、オクチルフェノールエトキシレートおよびノニルフェノールエトキシレートなど)、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの複合ポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(例えば、PEO-PPO-PEOトリブロックコポリマーなど)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの脂肪族アルコールとの縮合物、脂肪酸とソルビタンとのモノエステル(モノラウレート、モノミリステート、モノステアレート、モノパルミテート、モノオレエートなど)およびポリエステル、脂肪酸とグリセロールとのモノエステル(モノラウレート、モノミリステート、モノステアレート、モノパルミテート、モノオレエートなど)およびポリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0031】
特に適切であることが判明している界面活性剤は、例えば、商標名Tween(登録商標)として公知のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、商標名Brij(登録商標)として公知の脂肪族アルコールエトキシレート、商標名Igepal(登録商標)として公知のアルキルフェノールエトキシレート、商標名Pluronic(登録商標)として公知のものなどのPEO-PPO-PEOトリブロックコポリマー、およびこれらの混合物である。
【0032】
使用する界面活性剤に関わらず、界面活性剤とN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は、有利には0.2/1から1/1、好ましくは0.25/1から0.8/1、より好ましくは0.3/1から0.6/1である。
【0033】
重合開始剤は、好ましくはラジカル重合開始剤であり、この場合、ラジカルタイプの重合を開始できることが知られているあらゆる化合物から選択することができるが、極性溶媒に溶解性の化合物、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、2,2'-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミジン)二塩素酸塩、および一部の有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイルなど)などが好ましい。
【0034】
いずれにせよ、重合開始剤は、有利には、エマルジョン中、N-アルケニルトリアゾールモノマーに対して0.5/100から10/100、好ましくは2/100から8/100、さらに好ましくは4/100から6/100の質量比で存在する。
【0035】
本発明によれば、エマルジョンは、異なるタイプの2相の間でエマルジョンを形成させることができる任意の装置を用いて製造することができる。例えば、少容量のエマルジョンは、ボルテックス型攪拌機を用いて製造することができる(その後、エマルジョンの成分を試験管に入れる)一方、大量のエマルジョンは、機械的攪拌システムを備えた反応器で、あるいは互いに接続された2つのシリンジを備え、シリンジポンプによって作動されるシステムを用いて形成させることができる。
【0036】
エマルジョンの重合は、加熱下、すなわち周囲温度(常温)より高いが100℃を超えない温度、典型的には40から80℃で行うことが好ましい。一般的に重合は、目的とする使用に対する最終的な材料に対応する形状および大きさを有する、有利にはポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))製の型に、エマルジョンを注いだ後に行う。この型は、重合の間の揮発性溶媒の蒸発および想定されるエマルジョンの汚染を避けるために、密封されていることが好ましい。固形材料を得るために必要とされるエマルジョンの重合時間は、典型的には12から48時間程度である。
【0037】
重合後に得られた固形材料を、重合が型中で行われた場合には型から外された後で、洗浄して、重合しなかったすべての成分、すなわち反応しなかったモノマー、界面活性剤、ならびに重合開始剤の変換精製物、分散相の溶媒、および、場合により連続相の溶媒を除去する。この洗浄工程は、いくつかの異なる溶媒またはさまざまな溶媒の混合物を連続的に用いることによって行うことが好ましい。特に、この洗浄工程は、ソックスレー型抽出器でエタノール、蒸留水、蒸留水/エタノール、またはアセトン混合物を用いて連続的に実施することができる。エタノール中で洗浄した後、アセトンで洗浄することが好ましい。
【0038】
次に、この材料を洗浄し、好ましくは真空内、20から150℃、より好ましくは40から80℃の範囲の温度で乾燥する。
【0039】
本発明の別の主題は、上で定義した材料などのポリHIPE材料を製造するために使用することができるエマルジョンに関する。このエマルジョンは、
- 一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤を含み、任意選択でN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい、第一相と、
- 上記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の溶媒と混和しない溶媒を含んでいてもよい、第二相と
を含む。
【0040】
このエマルジョンにおいて、N-アルケニルトリアゾールモノマー、架橋性モノマー、界面活性剤、重合開始剤および溶媒の好ましい特徴は、本発明のポリHIPE材料およびその製造方法のために前述により示した特徴と同じである。同じことが、これらのさまざまな化合物の好ましい割合にも当てはまる。
【0041】
本発明のポリHIPE材料には、多くの利点がある。本発明のポリHIPE材料は、硬く、熱的に安定性であり、均質であり、架橋率が低い場合でも特に高い強度を有する。したがって、本発明のポリHIPE材料は、強い応力に耐えることができ、劣化することなく一体的なブロックから機械加工することができる。
【0042】
したがって、互いに連結した連続気泡構造を有する必要があるだけでなく、機械的応力および/または熱応力に耐えうる必要のある製品、例えば、不均一触媒用の触媒担体、粒子フィルター、金属イオン吸着剤、またはガスセンサの製造に特に有用である。
【0043】
さらに、本発明のポリHIPE材料は、比較的単純な方法を用いて製造することができ、この方法は実施が容易であり、商業的に入手可能な、あるいは当業者が容易に合成できる化合物のみを使用するだけですむ。この点、一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールの合成については、米国特許第5,646,293号[4]に記載されており、したがって当業者には周知であることに留意されたい。
【0044】
本発明の他の特徴および利点は、本発明のポリHIPE材料を得るために用いることができるエマルジョンの調製例、ならびに、これらのエマルジョンからの本発明のポリHIPE材料の例示的な実施形態およびその特性について述べる本明細書の残りの部分を読むことにより、さらに明らかになるであろう。
【0045】
これらの例が、本発明を例示する目的で示されていることは明白であり、これに関して制限的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、倍率750倍を用いて走査型電子顕微鏡法で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第1の例の写真である。
【図2】図2は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第2の例の写真である。
【図3】図3は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第3の例の写真である。
【図4】図4は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第4の例の写真である。
【図5】図5は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第5の例の写真である。
【図6】図6は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第6の例の写真である。
【図7】図7は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第7の例の写真である。
【図8】図8は、走査型電子顕微鏡法、倍率3500倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第8の例の写真である。
【図9】図9は、本発明によるポリHIPE材料の第9の例の、倍率5000倍の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、本発明によるポリHIPE材料の第10の例の、倍率7500倍の走査電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、本発明によるポリHIPE材料の第11の例の試験片を圧縮試験に供することによって得られた応力-歪曲線およびヤング率を示すグラフである。
【図12】図12は、図4に示すポリHIPE材料を熱重量分析に供することによって得られる温度記録である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0047】
[実施例1]:ボルテックスを使用するエマルジョンの調製
1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含有する10種のエマルジョン(以下エマルジョン1から10とする)を以下の手順で調製した。
【0048】
試験管に以下のものを加えた:
- 1-ビニル-1,2,4-トリアゾール(以下、VTとする)(Interchim、番号:BE893);
- 蒸留水;
- ペルオキソ二硫酸カリウムK2S2O8;
- N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)(以下MBAとする)(Sigma-Aldrich、番号:148326);
- 以下のものから選択される界面活性剤(TA):
- ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(以下T1とする)(Sigma-Aldrich、Tween(登録商標)20)、
- ポリオキシエチレンオレイルエーテル(以下T3とする)(Sigma-Aldrich、Brij(登録商標)98)、
- ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(以下T4とする)(Sigma-Aldrich、Igepal(登録商標)CO-890)、
- 80%PEOを含むPEO-PPO-PEOトリブロックコポリマー(以下T5とする)(Sigma-Aldrich、Pluronic(登録商標)F108)、および
- T1/T4混合物、T3/T4混合物、およびT4/T5混合物;ならびに最後に
- n-ドデカンC12H26およびn-テトラデカンC14H30から選択される非水混和性溶媒。
【0049】
次いで、この試験管をボルテックス(Bioblock Scientific、モデル:Top-Mix(登録商標))を用いて30分間激しく攪拌し、安定で不透明なエマルジョンを得る。
【0050】
下記の表Iにおいて、エマルジョン1から10のそれぞれについて、使用したVT、MBA、K2S2O8、および蒸留水の量を、ミリグラムを用いて明記し、使用した界面活性剤の種類および非水混和性溶媒の種類ならびにそれらの量も、ミリグラムを用いて明記する。
【0051】
【表1】
【0052】
[実施例2]:機械的攪拌機を備えた反応器におけるエマルジョンの調製
1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含む2種類のエマルジョン(以下、エマルジョン11および12とする)を以下のとおりの手順で調製する。
【0053】
機械的攪拌機、ここではD形状の羽根を備えた反応器に、1-ビニル-1,2,4-トリアゾール、蒸留水、ペルオキソ二硫酸カリウム、およびN,N'-メチレン-ビス(アクリルアミド)を加える。媒体を激しい攪拌下に維持しながらn-ドデカンを滴下により添加し、さらに激しい攪拌を1時間継続して、安定で不透明な白色のエマルジョンを得る。
【0054】
下記の表IIにおいて、エマルジョン11および12それぞれについて、使用したるVT、MBA、K2S2O8、界面活性剤、蒸留水、およびn-ドデカンの量を、グラムを用いて明記する。
【0055】
【表2】
【0056】
[実施例3]:シリンジポンプを使用するエマルジョンの調製
1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含む6種類のエマルジョン(以下エマルジョン13から18とする)を、以下のとおりの手順で調製する。
【0057】
ビーカー内で機械的な激しい攪拌下、1-ビニル-1,2,4-トリアゾール、蒸留水、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)を、
・ ペルオキソ二硫酸カリウム、
・ 過酸化ベンゾイル(以下PBとする)、および
・ 2,2'-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミジン)二塩素酸塩(以下V-50とする)(Wako Chemicals、V-50)
から選択される重合開始剤を含む溶液中に入れる。
【0058】
この溶液およびn-ドデカンを60mLの第一のシリンジの本体に注ぐ。このシリンジを空の第二のシリンジに接続する。シリンジのプランジャーを押し入れ、さらにシリンジは直径が4mmで長さが20mmの管を備えるものとする。このように接続された2本のシリンジをシリンジポンプに取り付ける。乳化時間を25分に設定する。
【0059】
表IIIにおいて、エマルジョン13から18それぞれについて、VT、MBA、蒸留水、およびドデカンの使用量をグラムを用いて明記し、使用した重合開始剤の種類および界面活性剤の種類もグラムを用いたそれらの量とともに明記する。
【0060】
【表3】
【0061】
[実施例4]:本発明によるポリHIPE材料の調製
N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)を用いて5質量%まで架橋させた、1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含む11種類のポリHIPE材料(以下、材料19から28とする)を以下のとおりの手順で調製する。
【0062】
実施例1から3により調製されたエマルジョンを、Teflon(登録商標)の型に注ぎ、その型を閉じ、60℃に24時間加熱する。この時間の後、この材料を型から外し、エタノールで48時間、次いでアセトンで24時間ソックスレー洗浄を行い、さらに55℃で5日間真空乾燥した。
【0063】
下記の表IVにおいて、材料19から28それぞれについて、材料を形成するエマルジョン、このエマルジョンを注ぐ型の内側寸法、および乾燥工程後の材料の気孔率を明記する。この気孔率は、水銀圧入式ポロシメータによって測定した。
【0064】
【表4】
【0065】
図1から10は、場合により×750から×7500の範囲の倍率で走査型電子顕微鏡法により撮影した材料19から28の写真であり、これらの材料の互いに連結した連続気泡構造を示している。
【0066】
[実施例5]:本発明によるポリHIPE材料の特性
5.1.機械的強度:
N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)を用いて5質量%まで架橋させた1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含むポリHIPE材料の試験片を、上記の実施例4に記載の手順により、ただし、エマルジョン15、および、内径7mm、内部高さ4mmの型を使用して、作製する。したがって、こうして得られた試験片は、円筒状で寸法が直径7mm、厚さ4mmである。この試験片の気孔率は70%である。
【0067】
この試験片を、500Nの静的な測定セルを装着したInstron 4460計器を使用して周囲温度で行う圧縮試験に供する。試験片を、一定の速度(5mm/min)で、その平らな面に垂直な方向に、2つの金属板の間で圧縮する。
【0068】
図11は、最低でも4つのサンプルについて収集したデータから作製した応力-歪曲線およびこの同じデータから算出したヤング率Ecを示している。
【0069】
この弾性率は、23.4MPa、すなわち(前述の)H. Deleuzeらによって報告されている、ジビニル-ベンゼンで50%架橋されたポリスチレンから形成され、材料29の気孔率(70%)に相当する気孔率(80%)を有するポリHIPE材料の値の2倍であることが確認された。
【0070】
このことは、架橋率が非常に低いものでも(ここでは5%)、本発明のポリHIPE材料が十分に優れた機械的強度を有することを意味する。
【0071】
5.2.熱的安定性:
材料22を真空内で一晩110℃に予め加熱し、次いで、Netzsch STA409分析装置を使用して、アルゴン雰囲気内で25℃から650℃まで10℃/分の速度で温度を上昇させる熱重量分析に供する。
【0072】
図12は、このように得られた温度記録を示しており、これにより、本発明のポリHIPE材料が、280〜300℃で良好な熱的安定性を有することがわかる。
【0073】
(参考文献)
[1] H. Deleuzeら、Polymer、2005、Vol. 46、9653〜9663
[2] 国際公開第2004/044041号パンフレット
[3] P. Krajncら、Macromol. Rapid Comm、2005、Vol. 26、1289〜1293
[4] 米国特許第5,646,293号
【技術分野】
【0001】
本発明は、数ある特性の中でも特に高い機械的強度を有するポリHIPE材料に関する。
【0002】
本発明はさらに、この材料を製造するための方法およびエマルジョン、ならびに全部または一部がこの材料からなる物品または物に関する。
【0003】
本発明のポリHIPE材料は、すべての分野において用途を見出すことができ、固有の特性である互いに連結した気泡構造と優れた機械的強度とを兼ね備えた材料の使用についてすべての分野で関心がもたれる可能性がある。
【0004】
特に、本発明のポリHIPE材料は、不均一触媒用、とりわけ光触媒作用による空気または水の処理のための二酸化チタンまたは二酸化スズのタイプの光触媒用の触媒担体の製造、粒子フィルターの製造、浄水用の金属イオン吸着剤の製造、ガス、例えば、オゾンのセンサの製造において、さらにより一般的には、互いに連結した連続気泡の一体的なブロック材料の使用が必要とされるすべての用途において使用することができる。
【背景技術】
【0005】
重合した高内相エマルジョン(Polymerised High Internal Phase Emulsion)「ポリHIPE」材料は、HIPE(高内相エマルジョン(High Internal Phase Emulsion)を表す)と呼ばれるエマルジョンを重合させることによって得られる。このHIPEは、
・ 第一に、重合可能なモノマーと、溶媒中の界面活性剤溶液とから本質的になる外部相すなわち連続相、および
・ 第二に、典型的にはエマルジョンの全容積のうち74%以上を占め、重合可能なモノマーと混和せず、かつ/あるいは連続相の溶媒と混和しない溶媒から本質的になる内部相すなわち分散相
を含む。
【0006】
重合させ、分散相から溶媒を除去した後、連続気泡の材料が得られる。一般に孔と称されるこの気泡は、エマルジョンの調製中にこうした溶媒によって形成される泡の跡であり、気泡自体よりも小さな隙間部によって互いに連結している。
【0007】
ポリHIPE材料は、空隙容量/充填容量の比率が特に高く、したがって特に低密度であり、球状で等方性の規則的な気泡構造を有する。これにより、ポリHIPE材料は、従来技術によりブロー成形または押し出し成形によって得られ、配向した異方性の不規則な気泡構造によって特徴付けられるポリマー発泡体材料とは、非常に異なっている。
【0008】
上記の特徴を考慮して、ポリHIPE材料への関心が高まっており、使い捨ての吸収性製品、断熱、遮音、電気絶縁もしくは機械的絶縁のための材料、ならびに、インク、染料および触媒用の膜、フィルター、または担体の製造について言及される可能性がある多くの分野においてポリHIPE材料の使用が提案されてきている。
【0009】
現在までの文献で報告されているポリHIPE材料の大部分は、その連続相が有機相であり、その分散相が水性相である「油中水型」HIPEエマルジョンから得られる材料によって代表される。この場合、重合可能なモノマーは疎水性モノマーであり、一般的には、スチレン、ジビニルベンゼン、および2-エチル-ヘキシルアクリレートなどの不飽和のビニルモノマーである。
【0010】
さらに、H. Deleuzeらは、Polymer、2005、Vol. 46、9653〜9663[1]において、スチレンおよびジビニルベンゼンタイプの疎水性モノマーから得られるポリHIPE材料は、架橋の割合が50%であっても、ヤング係数が9MPa、すなわち、一般的に一部の用途に対しては低すぎると考えられる値であることを示している。
【0011】
「水中油型」HIPEエマルジョン、すなわち、連続相として水性相を有し、分散相として有機相を有するエマルジョン由来のポリHIPE材料も公知である。例えば、WO2004/044041[2]として公開された国際PCT出願には、吸収性衛生物品の製造のためのHIPEエマルジョンの使用が記載されており、この連続相は、アクリル酸タイプのモノマーおよびその誘導体の重合可能な親水性モノマーが溶解した水性相である一方、分散相はシリコーン油からなっている。さらに、P. Krajncら、Macromol. Rapid Comm.、2005、Vol. 26、1289〜1293[3]には、「水中油型」HIPEエマルジョンから得られる、N,N'-メチレン-ビス(アクリルアミド)と架橋したアクリル酸からなる多孔質ポリマーの調製について記載されている。しかし、これらの研究からもたらされるポリHIPE材料はいずれも、水性媒体中の高い膨張性を有するが、機械的強度が低い。
【0012】
したがって、ポリHIPE材料の特異な特性を有する一方で、高い機械的強度、すなわちこれらのタイプの材料に対して提案されてきたすべての用途おける使用が実際に想定可能となるために少なくとも十分な高い機械的強度をも有する材料を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2004/044041号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,646,293号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Polymer、2005、Vol. 46、9653〜9663
【非特許文献2】Macromol. Rapid Comm、2005、Vol. 26、1289〜1293
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、正確には、高い機械的強度を有するポリHIPE材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の主題は、第一に、共重合された形態で、
a)下記一般式(I)の、少なくとも1種のN-アルケニルトリアゾールモノマーと、
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、R1およびR2は、それぞれが独立に、水素原子もしくはハロゲン原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOH、-CnF2n+1(nは1から12の範囲の整数である)基、または、1個もしくは複数個の酸素原子および/もしくは硫黄原子ならびにC3からC16の環式炭化水素基もしくは3から16員の複素環式炭化水素基によって任意選択で中断されていてもよい、C1からC16の脂肪族炭化水素基を表す]
b)少なくとも1種の架橋性モノマーと
を含み、
架橋性モノマー/N-アルケニルトリアゾールモノマーの質量比が1/100から60/100である、ポリHIPE材料である。
【0019】
本明細書の前述および以下において、
- 表現『C1からC16の脂肪族炭化水素基』とは、少なくとも1つの炭素原子であるが16を超えない炭素原子から形成される飽和または不飽和の直鎖または分岐ではあるが環式ではないあらゆる炭化水素基を指し、したがって、これは、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル)、アルケニル基(例えば、エチレニル、プロピレニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、メチルペンテニルもしくはブタ-1,3-ジエニル)またはアルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニル)であってよく、この基が1個または複数個の酸素原子または硫黄原子によって中断されている場合、この原子またはこれらの原子が2つの炭素原子の間に挿入されていることを意味する。
- 表現『C3からC16の環式炭化水素基』とは、少なくとも3つの炭素原子ではあるが16を超えない炭素原子から形成される飽和または不飽和のあらゆる単環式または多環式炭化水素基を指し、これは、非芳香族基、すなわちシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、ノルボルニル、ビシクロ[4.3.2]-ウンデシル、ビシクロ[4.4.0]デシルまたはアダマンチル)、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基であってもよいが、芳香族基、すなわちヒュッケル則を満たし、非局在化電子πの数が4n+2である基(例えば、フェニル、ベンジル、ビフェニル、フェニル-アセチレニル、ピレニルまたはアントラセニル)であってもよい。
- 表現『3から16員の複素環式炭化水素基』とは、定義されるとおり環式炭化水素基を指すが、それを構成する環の1つまたは複数の原子がヘテロ原子、典型的には酸素原子、硫黄原子または窒素原子によって置き換えられている。環式炭化水素基は、非芳香族基、すなわちヘテロシクロアルキル基(例えば、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、テトラヒドロフリル、ピペリジニル、ジオキサニルまたはモルホリニル)、ヘテロシクロアルケニルまたはヘテロシクロアルキニル基であってもよいが、ヘテロ芳香族基(例えば、フリル、ピロリル、チエニル、オキサゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピラニル、キノリニル、ピラジニルまたはピリミジニル)であってもよい。
【0020】
本発明によれば、N-アルケニルトリアゾールモノマーは、R1および/またはR2が塩を形成可能な基を表す場合、とりわけ-OH、-SH、-SO3H、-NH2および-COOH基ならびにピペリジニルまたはモルホリニルのタイプの窒素複素環式基である場合には、塩の形態であってもよい。この塩は、塩化可能な基がカチオン(例えば、-NH3+)の形態である場合は、ハロゲン化物、水酸化物、鉱酸塩(例えば、硝酸塩)または有機酸塩(例えば、酢酸塩)であってよい。ただし、塩化可能な基がアニオン(例えば、-SO3-または-COO-)の形態である場合はアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩であってもよい。
【0021】
さらに、R1および/またはR2が環式または複素環式炭化水素基、より特に芳香族基またはヘテロ芳香族基を表す場合、N-アルケニルトリアゾールモノマーの極性溶媒への溶解性を高めるために、この基を-OH、-SH、-NH2、-CO2Hまたは-SO3Hタイプの1個または複数個の極性基で置換してもよい。
【0022】
本発明によれば、一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマーは、式中、R1およびR2がそれぞれ独立に水素原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOHまたはCnF2n+1基(nは上で定義したとおりである)を表すモノマーから選択されることが好ましく、1-ビニル-1,2,4-トリアゾールが特に最も好ましい。
【0023】
架橋性モノマーは、極性溶媒(例えば、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリルおよびこれらの混合物など)に溶解性のポリビニル化合物から選択されることが好ましい。
【0024】
さらに好ましくは、架橋性モノマーは、水溶性のポリビニル化合物、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-エチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-トリメチレン-ビス(アクリルアミド)、N,N'-メチレンビス(メタクリルアミド)およびN,N'-エチレンビス(メタクリルアミド)などであり、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)が特に最も好ましい。
【0025】
本発明によれば、架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は、好ましくは1/100から20/100、さらに好ましくは3/100から10/100の範囲であり、この後者の場合、3から10%のN-アルケニルトリアゾールモノマーの架橋率に相当する。
【0026】
本発明の材料は、以下の工程:
a)- 一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤(またはプライマー)を含み、任意選択でN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい、いわゆる連続相である第一相と、
- 上記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の溶媒と混和しない溶媒を含む、いわゆる分散相である第二相と
の間でエマルジョンを形成させる工程;
b)固形材料が得られるまで、工程a)で得られたエマルジョンを重合させる工程;および
c)工程b)で得られた材料を洗浄し、乾燥する工程
を含む方法に従って製造することができる。
【0027】
本発明の好適な一構成によると、連続相は、一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマー、架橋性モノマー、界面活性剤、および架橋開始剤に加えて、極性溶媒(例えば、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、またはのられらの混合物など)を含む一方、分散相は、非極性溶媒を含む。
【0028】
この場合、極性溶媒とN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は、好ましくは1/3から4/1、さらに好ましくは0.8/1から2/1の範囲であり、非極性溶媒と上記モノマーとの質量比は、有利には1/1から10/1、好ましくは1/1から6/1、より好ましくは1.5/1から5/1の範囲である。
【0029】
さらに好ましくは、エマルジョンが「水中油型」エマルジョン、すなわち連続相の溶媒が、水、好ましくは蒸留水、または水と別の極性溶媒との混合物である一方、分散相の溶媒が、長鎖のアルカン、すなわちC6からC32のアルカン、有利にはドデカンまたはテトラデカンであることが好ましい。
【0030】
本発明によれば、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であることが好ましく、この場合、とりわけ、アルキルエトキシレート、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、オキサアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート(例えば、オクチルフェノールエトキシレートおよびノニルフェノールエトキシレートなど)、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの複合ポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー(例えば、PEO-PPO-PEOトリブロックコポリマーなど)、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの脂肪族アルコールとの縮合物、脂肪酸とソルビタンとのモノエステル(モノラウレート、モノミリステート、モノステアレート、モノパルミテート、モノオレエートなど)およびポリエステル、脂肪酸とグリセロールとのモノエステル(モノラウレート、モノミリステート、モノステアレート、モノパルミテート、モノオレエートなど)およびポリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ならびにこれらの混合物から選択することができる。
【0031】
特に適切であることが判明している界面活性剤は、例えば、商標名Tween(登録商標)として公知のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、商標名Brij(登録商標)として公知の脂肪族アルコールエトキシレート、商標名Igepal(登録商標)として公知のアルキルフェノールエトキシレート、商標名Pluronic(登録商標)として公知のものなどのPEO-PPO-PEOトリブロックコポリマー、およびこれらの混合物である。
【0032】
使用する界面活性剤に関わらず、界面活性剤とN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は、有利には0.2/1から1/1、好ましくは0.25/1から0.8/1、より好ましくは0.3/1から0.6/1である。
【0033】
重合開始剤は、好ましくはラジカル重合開始剤であり、この場合、ラジカルタイプの重合を開始できることが知られているあらゆる化合物から選択することができるが、極性溶媒に溶解性の化合物、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、2,2'-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミジン)二塩素酸塩、および一部の有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイルなど)などが好ましい。
【0034】
いずれにせよ、重合開始剤は、有利には、エマルジョン中、N-アルケニルトリアゾールモノマーに対して0.5/100から10/100、好ましくは2/100から8/100、さらに好ましくは4/100から6/100の質量比で存在する。
【0035】
本発明によれば、エマルジョンは、異なるタイプの2相の間でエマルジョンを形成させることができる任意の装置を用いて製造することができる。例えば、少容量のエマルジョンは、ボルテックス型攪拌機を用いて製造することができる(その後、エマルジョンの成分を試験管に入れる)一方、大量のエマルジョンは、機械的攪拌システムを備えた反応器で、あるいは互いに接続された2つのシリンジを備え、シリンジポンプによって作動されるシステムを用いて形成させることができる。
【0036】
エマルジョンの重合は、加熱下、すなわち周囲温度(常温)より高いが100℃を超えない温度、典型的には40から80℃で行うことが好ましい。一般的に重合は、目的とする使用に対する最終的な材料に対応する形状および大きさを有する、有利にはポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))製の型に、エマルジョンを注いだ後に行う。この型は、重合の間の揮発性溶媒の蒸発および想定されるエマルジョンの汚染を避けるために、密封されていることが好ましい。固形材料を得るために必要とされるエマルジョンの重合時間は、典型的には12から48時間程度である。
【0037】
重合後に得られた固形材料を、重合が型中で行われた場合には型から外された後で、洗浄して、重合しなかったすべての成分、すなわち反応しなかったモノマー、界面活性剤、ならびに重合開始剤の変換精製物、分散相の溶媒、および、場合により連続相の溶媒を除去する。この洗浄工程は、いくつかの異なる溶媒またはさまざまな溶媒の混合物を連続的に用いることによって行うことが好ましい。特に、この洗浄工程は、ソックスレー型抽出器でエタノール、蒸留水、蒸留水/エタノール、またはアセトン混合物を用いて連続的に実施することができる。エタノール中で洗浄した後、アセトンで洗浄することが好ましい。
【0038】
次に、この材料を洗浄し、好ましくは真空内、20から150℃、より好ましくは40から80℃の範囲の温度で乾燥する。
【0039】
本発明の別の主題は、上で定義した材料などのポリHIPE材料を製造するために使用することができるエマルジョンに関する。このエマルジョンは、
- 一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤を含み、任意選択でN-アルケニルトリアゾールモノマーおよび架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい、第一相と、
- 上記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の溶媒と混和しない溶媒を含んでいてもよい、第二相と
を含む。
【0040】
このエマルジョンにおいて、N-アルケニルトリアゾールモノマー、架橋性モノマー、界面活性剤、重合開始剤および溶媒の好ましい特徴は、本発明のポリHIPE材料およびその製造方法のために前述により示した特徴と同じである。同じことが、これらのさまざまな化合物の好ましい割合にも当てはまる。
【0041】
本発明のポリHIPE材料には、多くの利点がある。本発明のポリHIPE材料は、硬く、熱的に安定性であり、均質であり、架橋率が低い場合でも特に高い強度を有する。したがって、本発明のポリHIPE材料は、強い応力に耐えることができ、劣化することなく一体的なブロックから機械加工することができる。
【0042】
したがって、互いに連結した連続気泡構造を有する必要があるだけでなく、機械的応力および/または熱応力に耐えうる必要のある製品、例えば、不均一触媒用の触媒担体、粒子フィルター、金属イオン吸着剤、またはガスセンサの製造に特に有用である。
【0043】
さらに、本発明のポリHIPE材料は、比較的単純な方法を用いて製造することができ、この方法は実施が容易であり、商業的に入手可能な、あるいは当業者が容易に合成できる化合物のみを使用するだけですむ。この点、一般式(I)のN-アルケニルトリアゾールの合成については、米国特許第5,646,293号[4]に記載されており、したがって当業者には周知であることに留意されたい。
【0044】
本発明の他の特徴および利点は、本発明のポリHIPE材料を得るために用いることができるエマルジョンの調製例、ならびに、これらのエマルジョンからの本発明のポリHIPE材料の例示的な実施形態およびその特性について述べる本明細書の残りの部分を読むことにより、さらに明らかになるであろう。
【0045】
これらの例が、本発明を例示する目的で示されていることは明白であり、これに関して制限的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、倍率750倍を用いて走査型電子顕微鏡法で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第1の例の写真である。
【図2】図2は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第2の例の写真である。
【図3】図3は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第3の例の写真である。
【図4】図4は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第4の例の写真である。
【図5】図5は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第5の例の写真である。
【図6】図6は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第6の例の写真である。
【図7】図7は、走査型電子顕微鏡法、倍率750倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第7の例の写真である。
【図8】図8は、走査型電子顕微鏡法、倍率3500倍で撮影した、本発明によるポリHIPE材料の第8の例の写真である。
【図9】図9は、本発明によるポリHIPE材料の第9の例の、倍率5000倍の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】図10は、本発明によるポリHIPE材料の第10の例の、倍率7500倍の走査電子顕微鏡写真である。
【図11】図11は、本発明によるポリHIPE材料の第11の例の試験片を圧縮試験に供することによって得られた応力-歪曲線およびヤング率を示すグラフである。
【図12】図12は、図4に示すポリHIPE材料を熱重量分析に供することによって得られる温度記録である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0047】
[実施例1]:ボルテックスを使用するエマルジョンの調製
1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含有する10種のエマルジョン(以下エマルジョン1から10とする)を以下の手順で調製した。
【0048】
試験管に以下のものを加えた:
- 1-ビニル-1,2,4-トリアゾール(以下、VTとする)(Interchim、番号:BE893);
- 蒸留水;
- ペルオキソ二硫酸カリウムK2S2O8;
- N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)(以下MBAとする)(Sigma-Aldrich、番号:148326);
- 以下のものから選択される界面活性剤(TA):
- ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(以下T1とする)(Sigma-Aldrich、Tween(登録商標)20)、
- ポリオキシエチレンオレイルエーテル(以下T3とする)(Sigma-Aldrich、Brij(登録商標)98)、
- ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(以下T4とする)(Sigma-Aldrich、Igepal(登録商標)CO-890)、
- 80%PEOを含むPEO-PPO-PEOトリブロックコポリマー(以下T5とする)(Sigma-Aldrich、Pluronic(登録商標)F108)、および
- T1/T4混合物、T3/T4混合物、およびT4/T5混合物;ならびに最後に
- n-ドデカンC12H26およびn-テトラデカンC14H30から選択される非水混和性溶媒。
【0049】
次いで、この試験管をボルテックス(Bioblock Scientific、モデル:Top-Mix(登録商標))を用いて30分間激しく攪拌し、安定で不透明なエマルジョンを得る。
【0050】
下記の表Iにおいて、エマルジョン1から10のそれぞれについて、使用したVT、MBA、K2S2O8、および蒸留水の量を、ミリグラムを用いて明記し、使用した界面活性剤の種類および非水混和性溶媒の種類ならびにそれらの量も、ミリグラムを用いて明記する。
【0051】
【表1】
【0052】
[実施例2]:機械的攪拌機を備えた反応器におけるエマルジョンの調製
1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含む2種類のエマルジョン(以下、エマルジョン11および12とする)を以下のとおりの手順で調製する。
【0053】
機械的攪拌機、ここではD形状の羽根を備えた反応器に、1-ビニル-1,2,4-トリアゾール、蒸留水、ペルオキソ二硫酸カリウム、およびN,N'-メチレン-ビス(アクリルアミド)を加える。媒体を激しい攪拌下に維持しながらn-ドデカンを滴下により添加し、さらに激しい攪拌を1時間継続して、安定で不透明な白色のエマルジョンを得る。
【0054】
下記の表IIにおいて、エマルジョン11および12それぞれについて、使用したるVT、MBA、K2S2O8、界面活性剤、蒸留水、およびn-ドデカンの量を、グラムを用いて明記する。
【0055】
【表2】
【0056】
[実施例3]:シリンジポンプを使用するエマルジョンの調製
1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含む6種類のエマルジョン(以下エマルジョン13から18とする)を、以下のとおりの手順で調製する。
【0057】
ビーカー内で機械的な激しい攪拌下、1-ビニル-1,2,4-トリアゾール、蒸留水、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)を、
・ ペルオキソ二硫酸カリウム、
・ 過酸化ベンゾイル(以下PBとする)、および
・ 2,2'-アゾビス(2-メチル-プロピオンアミジン)二塩素酸塩(以下V-50とする)(Wako Chemicals、V-50)
から選択される重合開始剤を含む溶液中に入れる。
【0058】
この溶液およびn-ドデカンを60mLの第一のシリンジの本体に注ぐ。このシリンジを空の第二のシリンジに接続する。シリンジのプランジャーを押し入れ、さらにシリンジは直径が4mmで長さが20mmの管を備えるものとする。このように接続された2本のシリンジをシリンジポンプに取り付ける。乳化時間を25分に設定する。
【0059】
表IIIにおいて、エマルジョン13から18それぞれについて、VT、MBA、蒸留水、およびドデカンの使用量をグラムを用いて明記し、使用した重合開始剤の種類および界面活性剤の種類もグラムを用いたそれらの量とともに明記する。
【0060】
【表3】
【0061】
[実施例4]:本発明によるポリHIPE材料の調製
N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)を用いて5質量%まで架橋させた、1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含む11種類のポリHIPE材料(以下、材料19から28とする)を以下のとおりの手順で調製する。
【0062】
実施例1から3により調製されたエマルジョンを、Teflon(登録商標)の型に注ぎ、その型を閉じ、60℃に24時間加熱する。この時間の後、この材料を型から外し、エタノールで48時間、次いでアセトンで24時間ソックスレー洗浄を行い、さらに55℃で5日間真空乾燥した。
【0063】
下記の表IVにおいて、材料19から28それぞれについて、材料を形成するエマルジョン、このエマルジョンを注ぐ型の内側寸法、および乾燥工程後の材料の気孔率を明記する。この気孔率は、水銀圧入式ポロシメータによって測定した。
【0064】
【表4】
【0065】
図1から10は、場合により×750から×7500の範囲の倍率で走査型電子顕微鏡法により撮影した材料19から28の写真であり、これらの材料の互いに連結した連続気泡構造を示している。
【0066】
[実施例5]:本発明によるポリHIPE材料の特性
5.1.機械的強度:
N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)を用いて5質量%まで架橋させた1-ビニル-1,2,4-トリアゾールを含むポリHIPE材料の試験片を、上記の実施例4に記載の手順により、ただし、エマルジョン15、および、内径7mm、内部高さ4mmの型を使用して、作製する。したがって、こうして得られた試験片は、円筒状で寸法が直径7mm、厚さ4mmである。この試験片の気孔率は70%である。
【0067】
この試験片を、500Nの静的な測定セルを装着したInstron 4460計器を使用して周囲温度で行う圧縮試験に供する。試験片を、一定の速度(5mm/min)で、その平らな面に垂直な方向に、2つの金属板の間で圧縮する。
【0068】
図11は、最低でも4つのサンプルについて収集したデータから作製した応力-歪曲線およびこの同じデータから算出したヤング率Ecを示している。
【0069】
この弾性率は、23.4MPa、すなわち(前述の)H. Deleuzeらによって報告されている、ジビニル-ベンゼンで50%架橋されたポリスチレンから形成され、材料29の気孔率(70%)に相当する気孔率(80%)を有するポリHIPE材料の値の2倍であることが確認された。
【0070】
このことは、架橋率が非常に低いものでも(ここでは5%)、本発明のポリHIPE材料が十分に優れた機械的強度を有することを意味する。
【0071】
5.2.熱的安定性:
材料22を真空内で一晩110℃に予め加熱し、次いで、Netzsch STA409分析装置を使用して、アルゴン雰囲気内で25℃から650℃まで10℃/分の速度で温度を上昇させる熱重量分析に供する。
【0072】
図12は、このように得られた温度記録を示しており、これにより、本発明のポリHIPE材料が、280〜300℃で良好な熱的安定性を有することがわかる。
【0073】
(参考文献)
[1] H. Deleuzeら、Polymer、2005、Vol. 46、9653〜9663
[2] 国際公開第2004/044041号パンフレット
[3] P. Krajncら、Macromol. Rapid Comm、2005、Vol. 26、1289〜1293
[4] 米国特許第5,646,293号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高内相エマルジョンを重合させることによって得られる材料であって、共重合された形態で、
a)下記一般式(I)を満たす、少なくとも1種のN-アルケニルトリアゾールモノマー:
【化1】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOH、-CnF2n+1(nは1から12の範囲の整数である)基、または、1個もしくは複数個の酸素原子および/もしくは硫黄原子またはC3からC16の環式炭化水素基もしくは3から16員の複素環式炭化水素基によって任意に中断されていてもよい、C1からC16の脂肪族炭化水素基を表す]と、
b)架橋性モノマーと
を含み、
前記架橋性モノマーと前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、1/100から60/100の範囲である、材料。
【請求項2】
前記N-アルケニルトリアゾールモノマーが、一般式(I)において、R1およびR2がそれぞれ独立に、水素原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOHまたはCnF2n+1基(nは上で定義したとおりである)を表すモノマーから選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記N-アルケニルトリアゾールモノマーが、1-ビニル-1,2,4-トリアゾールである、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記架橋性モノマーが、極性溶媒に溶解性のポリビニルモノマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記架橋性モノマーが、水溶性ポリビニルモノマーである、請求項4に記載の材料。
【請求項6】
前記架橋性モノマーが、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-エチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-トリメチレン-ビス(アクリルアミド)、N,N'-メチレンビス(メタクリルアミド)、およびN,N'-エチレンビス(メタクリルアミド)から選択される、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記架橋性モノマーが、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)である、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記架橋性モノマーと前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、1/100から20/100、好ましくは3/100から10/100の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項で定義した材料などの材料の製造方法であって、
a)- 一般式(I)の前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤を含み、任意選択で前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい第一相と、
- 前記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の前記溶媒と混和しない溶媒を含む第二相と
の間でエマルジョンを形成させる工程と、
b)固形材料が得られるまで、工程a)で得られた前記エマルジョンを重合させる工程と、
c)工程b)で得られた前記材料を洗浄し、乾燥する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
第一相が極性溶媒を含む一方で、第二相が非極性溶媒を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記極性溶媒と前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、1/3から4/1、好ましくは0.8/1から2/1の範囲である一方、前記非極性溶媒と前記モノマーとの質量比が1/1から10/1、好ましくは1/1から6/1の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第一相が、水、または水と別の極性溶媒とから形成される混合物を含む一方、第二相が、C6からC32のアルカンを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記界面活性剤が、アルキルエトキシレート、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、オキサアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの複合ポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの脂肪族アルコールとの縮合物、脂肪酸とソルビタンのモノエステルおよびポリエステル、脂肪酸とグリセロールのモノエステルおよびポリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記界面活性剤と前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、0.2/1から1/1、好ましくは0.25/1から0.8/1の範囲である、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記重合開始剤がラジカル重合開始剤である、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記重合開始剤と前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、0.5/100から10/100、好ましくは2/100から8/100の範囲である、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記エマルジョンを、常温より高いが100℃を超えない温度、好ましくは40℃から80℃で重合させる、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から8のいずれか一項で定義した材料などの材料を製造するために有用なエマルジョンであって、
- 一般式(I)の前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤を含み、任意選択で、前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい、第一相と、
- 前記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の前記溶媒と混和しない溶媒を含む、第二相と
を含む、エマルジョン。
【請求項20】
全部または一部が請求項1から8のいずれか一項に記載の材料からなる物品。
【請求項21】
不均一触媒用の触媒担体、粒子フィルター、金属イオン吸着剤、またはガスセンサである、請求項20に記載の物品。
【請求項1】
高内相エマルジョンを重合させることによって得られる材料であって、共重合された形態で、
a)下記一般式(I)を満たす、少なくとも1種のN-アルケニルトリアゾールモノマー:
【化1】
[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子またはハロゲン原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOH、-CnF2n+1(nは1から12の範囲の整数である)基、または、1個もしくは複数個の酸素原子および/もしくは硫黄原子またはC3からC16の環式炭化水素基もしくは3から16員の複素環式炭化水素基によって任意に中断されていてもよい、C1からC16の脂肪族炭化水素基を表す]と、
b)架橋性モノマーと
を含み、
前記架橋性モノマーと前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、1/100から60/100の範囲である、材料。
【請求項2】
前記N-アルケニルトリアゾールモノマーが、一般式(I)において、R1およびR2がそれぞれ独立に、水素原子、-OH、-SH、-SO3H、-NO2、-NH2、-COOHまたはCnF2n+1基(nは上で定義したとおりである)を表すモノマーから選択される、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記N-アルケニルトリアゾールモノマーが、1-ビニル-1,2,4-トリアゾールである、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
前記架橋性モノマーが、極性溶媒に溶解性のポリビニルモノマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
【請求項5】
前記架橋性モノマーが、水溶性ポリビニルモノマーである、請求項4に記載の材料。
【請求項6】
前記架橋性モノマーが、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-エチレンビス(アクリルアミド)、N,N'-トリメチレン-ビス(アクリルアミド)、N,N'-メチレンビス(メタクリルアミド)、およびN,N'-エチレンビス(メタクリルアミド)から選択される、請求項5に記載の材料。
【請求項7】
前記架橋性モノマーが、N,N'-メチレンビス(アクリルアミド)である、請求項6に記載の材料。
【請求項8】
前記架橋性モノマーと前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、1/100から20/100、好ましくは3/100から10/100の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項で定義した材料などの材料の製造方法であって、
a)- 一般式(I)の前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤を含み、任意選択で前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい第一相と、
- 前記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の前記溶媒と混和しない溶媒を含む第二相と
の間でエマルジョンを形成させる工程と、
b)固形材料が得られるまで、工程a)で得られた前記エマルジョンを重合させる工程と、
c)工程b)で得られた前記材料を洗浄し、乾燥する工程と
を含む、方法。
【請求項10】
第一相が極性溶媒を含む一方で、第二相が非極性溶媒を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記極性溶媒と前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、1/3から4/1、好ましくは0.8/1から2/1の範囲である一方、前記非極性溶媒と前記モノマーとの質量比が1/1から10/1、好ましくは1/1から6/1の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第一相が、水、または水と別の極性溶媒とから形成される混合物を含む一方、第二相が、C6からC32のアルカンを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記界面活性剤が、アルキルエトキシレート、脂肪族アルコールエトキシレート、脂肪族アミンエトキシレート、オキサアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとの複合ポリマー、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマー、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの脂肪族アルコールとの縮合物、脂肪酸とソルビタンのモノエステルおよびポリエステル、脂肪酸とグリセロールのモノエステルおよびポリエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記界面活性剤と前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、0.2/1から1/1、好ましくは0.25/1から0.8/1の範囲である、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記重合開始剤がラジカル重合開始剤である、請求項9から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記重合開始剤と前記N-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比が、0.5/100から10/100、好ましくは2/100から8/100の範囲である、請求項9から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記エマルジョンを、常温より高いが100℃を超えない温度、好ましくは40℃から80℃で重合させる、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から8のいずれか一項で定義した材料などの材料を製造するために有用なエマルジョンであって、
- 一般式(I)の前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマー(架橋性モノマーとN-アルケニルトリアゾールモノマーとの質量比は1/100から60/100である)、界面活性剤、ならびに重合開始剤を含み、任意選択で、前記N-アルケニルトリアゾールモノマーおよび前記架橋性モノマーの溶媒を含んでいてもよい、第一相と、
- 前記モノマーと混和せず、かつ/あるいは第一相の任意選択の前記溶媒と混和しない溶媒を含む、第二相と
を含む、エマルジョン。
【請求項20】
全部または一部が請求項1から8のいずれか一項に記載の材料からなる物品。
【請求項21】
不均一触媒用の触媒担体、粒子フィルター、金属イオン吸着剤、またはガスセンサである、請求項20に記載の物品。
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−522919(P2011−522919A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512151(P2011−512151)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056998
【国際公開番号】WO2009/150113
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056998
【国際公開番号】WO2009/150113
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】
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