説明

高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法

【課題】シリカフュームの分散性を高強度コンクリートの製造現場で簡易、かつ直接的に評価する高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法を提供する。
【解決手段】水粉体比が350〜450%のシリカフュームと水と、シリカフュームに対して3重量%以上5重量%未満の減水剤とを混練することで試料スラリーを作製し、その後、粘度測定器として安価で携帯性が高い回転粘度計を用いて試料スラリーの粘度を測定する。これにより、シリカフュームの分散性を高強度コンクリートの製造現場で、簡便かつ直接的に評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法、詳しくは高強度コンクリートに対して、流動性および強度を高める混和材として添加されるシリカフュームの分散性を評価可能な高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度コンクリートは、通常、水セメント比を小さくして、単位セメント量を増やすことで強度発現性を高めている。このため、コンクリートの流動性が低下し、施工性が悪くなる傾向があり、高性能減水剤などの添加量を増加するなどで対処していた。また、単位セメント量が多いため、水和発熱量も増加することから、施工後の構造体の耐久性が低下する。そこで、CS(2CaO・SiO)が主成分の低発熱セメントに、シリカフュームを添加することで、これらの問題を解決している。
【0003】
一般的に、シリカフュームは、平均粒径が0.1μm以下の超微粒子であり、一次粒子が凝集し、二次粒子(平均粒径20μm程度)として存在している。そのため、シリカフュームをセメントなどに混合し、コンクリートを製造する際には、シリカフュームが一次粒子まで分散されることで、マイクロフィラー効果および最密充填効果によりコンクリートの流動性が高まって、高強度化が期待される。これにより、高強度コンクリートに使用されるシリカフュームには、一次粒子まで分散し易いものが望まれる。
【0004】
そこで、従来、シリカフュームの粒子の分散性を評価する方法として、超音波を外力としてシリカフュームを分散させるレーザ回析式粒度分布測定装置を用いて、シリカフュームの粒度分布を測定することで、1μm以下の粒子径のシリカフュームの割合を測定し、シリカフュームの分散度を判定する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
また、従来、セメント組成物、無機混和材、骨材、減水剤および水からなる高強度コンクリート用材料として、セメント組成物を、クリンカ鉱物組成中のビーライト量が45〜75質量%、アルミネート相が4.0質量%以下で、比表面積が3000〜4500cm/g、SO量が1.5〜4.5質量%で、半水石膏の割合が石膏の全体量に対して80質量%以下である低熱ポルトランドセメント70〜84質量部と、シリカフューム16〜30質量部とから構成された材料に、水、高性能減水剤を加えたペーストについて、Vロート試験器からの流下時間、または、Lフロー試験器を使用したLフロー初速度によって、シリカフュームの品質を評価する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3300993号公報
【特許文献2】特開2007−119257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシリカフュームの評価方法では、超音波発生装置およびレーザ回析式粒度分布測定装置などの特殊な設備が必要であった。これにより、シリカフュームが実際に使用される現場ではなく、試験室などでそのテストを行う必要があった。
しかも、シリカフュームの分散性の評価は、シリカフュームに関係しない、例えば特許文献2に記載されたセメントの品質などの別の要因に影響され易かった。そのため、実験的には有効な評価方法であるが、製造現場でシリカフュームの品質確認には適さなかった。
【0007】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、シリカフュームと減水剤と水とを混練して得た試料スラリーにおいて、減水剤の添加量の増加に伴いシリカフュームの枯渇凝集後に発生する枯渇再安定化現象に着目した。すなわち、試料スラリー中に減水剤がごく低濃度存在する場合には、減水剤の架橋形成によりシリカフュームは凝集作用を示す。その後、減水剤の濃度の増加(中濃度)とともに、シリカフュームの粒子表面に減水剤の吸着層が形成され、吸着層間の立体反発効果により、シリカフュームの安定化が促進される(立体安定化)。しかしながら、減水剤の濃度がさらに増加すれば(やや高濃度)、過剰な非吸着状態の減水剤がフリー分子として枯渇凝集効果を及ぼし、ゆるやかなシリカフュームの凝集を誘起させる。さらに、減水剤の濃度を増大させれば(高濃度)、減水剤はシリカフューム間にも侵入し、シリカフュームの粒子間の接近を妨害し、枯渇再安定化を引き起こす。
【0008】
このようなシリカフュームの枯渇凝集後の枯渇再安定化を利用し、試料スラリーの粘度およびシリカフュームの良不良の判定を行う。具体的には、まず減水剤(添加量;3%以上5%未満)が添加された水に、所定量のシリカフュームを分散させて試料スラリーを作製する。次に、試料スラリーの粘度を、レーザ回析式粒度分布測定装置に比べて安価で運搬が容易な回転粘度計により測定する。その測定の結果が、50mPa・s以下であれば1μm以下のシリカフュームの割合がシリカフュームの分散性に対する良不良の判定基準となる30%以上となるため、良品のシリカフュームと評価する。一方、50mPa・sを超えれば1μm以下のシリカフュームの割合が30%未満となり、不良のシリカフュームと評価する。この測定結果は、超音波分散方式を採用した従来法による測定結果と相関する。その結果、シリカフュームの分散性を高強度コンクリートの製造現場で簡易、かつ直接的に評価が可能であることを知見し、この発明を完成させた。
【0009】
この発明は、シリカフュームの分散性を高強度コンクリートの製造現場で簡易、かつ直接的に評価することができる高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は水粉体比が350〜450%のシリカフュームと水と、このシリカフュームに対して3重量%以上5重量%未満の減水剤とを混練することで試料スラリーを作製し、得られた該試料スラリーを測定容器に入れ、回転粘度計により粘度を測定し、測定した粘度の値が、50mPa・s以下であれば良品とし、50mPa・sを超えれば不良品とする高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、シリカフュームと水と減水剤とを混練し、試料スラリーを作製する。このとき、シリカフュームと水との水粉体比は350〜450%で、減水剤の添加量はシリカフュームに対して3重量%以上5重量%未満である。
その後、試料スラリーを測定容器に入れ、回転粘度計により粘度を測定する。その結果、測定値が50mPa・s以下であれば、1μm以下のシリカフュームの割合が30%以上となり、良品のシリカフュームと評価する(図2のグラフ)。一方、50mPa・sを超えれば、1μm以下のシリカフュームの割合が30%未満となり、不良のシリカフュームと評価する。この評価方法が正しいことは、超音波分散方式を採用した従来法による測定結果と相関がある点から明らかである(図1および図3のグラフ、表1〜3(SF1〜SF6の銘柄名などは表4参照))。なお、表1は図1のグラフを数値化したデータ、表2は図2のグラフを数値化したデータ、表3は図3のグラフを数値化したデータである。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
【表3】

【0015】
このように、水粉体比が350〜450%のシリカフュームと水と、このシリカフュームに対して3重量%以上5重量%未満の減水剤とを混練することで試料スラリーを作製し、その後、粘度測定器として、従来のレーザ回析式粒度分布測定装置に比べて安価で、携帯性が高い回転粘度計を用いて試料スラリーの粘度を測定するように構成したので、シリカフュームの分散性を、特定の実験室でない高強度コンクリートの製造現場で、簡便かつ直接的に評価することができる。
【0016】
高強度コンクリートは、CS(2CaO・SiO)を主成分としたセメントに、シリカフュームを、セメントに対して4〜21質量%混合して高強度コンクリート用セメント組成物を作製し、その後、高強度コンクリート用セメント組成物と、粗骨材と、細骨材と、水と、減水剤とを所定割合でミキサに投入し、これらを混練することで作製される。なお、シリカフュームに代えて石灰石微粉末を使用する場合もある。
シリカフュームの銘柄としては、例えば、エジプト(エファコ)Lot;2508,エジプト(エファコ)Lot;3308,エジプト(エファコ)Lot;4208、エジプト(エファコ)Lot;3507、エジプト(エファコ)Lot;0707、エジプト(エファコ)Lot;2408、江西湊源珪業有限責任公司(中国)、中国SiO=95%(神鋼商事)、アメリカグローブ社セルマ工場SFなどが挙げられる。これらの品質を表4に示す。表4中、分散性の値は、レーザ回析式粒度分布測定装置による測定値である。
【0017】
【表4】

【0018】
シリカフュームのSiOの含有率は金属シリコンでは95%以上と高いが、フェロシリコンでは85〜95%である。85%未満では、JIS A 6207「コンクリート用シリカフューム」の品質規格を満足できない他、SiOによるポゾラン反応が期待できない。シリカフュームのSiOの好ましい含有率は90%以上である。この範囲であれば、モルタル,コンクリート中に存在するCa(OH)とのポゾラン活性が向上するというさらに好適な効果が得られる。
シリカフュームの平均粒径が1.0μmを超えれば、シリカフュームを混和したフレッシュコンクリートの流動性が低下するほか、最密充填効果の低下、または、ポゾラン活性の低下など、シリカフュームの特性を低下させる。シリカフュームの好ましい平均粒径は0.1〜0.3μmである。この範囲であれば、フレッシュコンクリートの流動性の向上、最密充填効果による圧縮強度の向上というさらに好適な効果が得られる。
【0019】
シリカフュームと水との水粉体比が350%未満であれば、シリカフュームの分散性の良悪に関係なく、スラリー粘度は高くなる。また、450%を超えれば、シリカフュームの分散性の良悪に関係なく、スラリー粘度は低くなる。シリカフュームと水との好ましい水粉体比は、390〜410%である。この範囲であれば、シリカフュームの分散性の良悪に応じて、スラリー粘度の差が明確になるというさらに好適な効果が得られる。
水としては、例えば水道水を採用することができる。
【0020】
減水剤としては、例えば高性能減水剤(ポリカルボン酸エーテル系化合物である竹本油脂株式会社製のチューポールSSP−104など)を採用することができる。その他、高性能AE減水剤でもよい。
減水剤のシリカフュームに対する添加量が3重量%未満では、シリカフュームの分散性が良くても、スラリー粘度は高くなる。また、5重量%以上であれば、シリカフュームの分散性が悪くても、スラリー粘度は低くなる。シリカフュームに対する減水剤の好ましい添加量は3.0〜4.0重量%である。この範囲であれば、シリカフュームの分散性の良悪に応じて、スラリーの粘度の差が明確になるというさらに好適な効果が得られる。
【0021】
シリカフューム、水、減水剤の混練は、ミキサによる混練を採用することができる。
混練は、例えばシリカフュームと水と減水剤とのうち、何れか2つの材料をあらかじめ混練し、その後、残り1つの材料を追加投入して再び混練してもよい。その他、これらの3つを同時に投入し、混練してもよい。
【0022】
回転粘度計とは、円筒あるいは円板、あるいは球などの物体(ロータ)を流体中で回転させる際、その物体が流体の粘性抵抗によるトルクを受けることを利用した粘度計である。
回転粘度計の種類としては、例えば、東機産業株式会社製低粘度用回転粘度計(TV−10M型)、または、中・高粘度用回転粘度計(TV−10 H型)などを採用することができる。
回転粘度計による粘度の測定条件は、試料スラリーの温度が0〜40℃(好ましくは18℃〜25℃)、ロータの回転数が低粘度型装置の場合は0.3〜60rpm、中〜高粘度型装置の場合は2〜100rpmであり、試料の粘度に応じて、適切な機種およびロータを選択することで、10〜2000mPa・sの相対粘度が測定可能である。
【0023】
回転粘度計による試料スラリーの測定値が50mPa・s以下であれば、シリカフュームの分散性が良好とされる1μm以下の粒子の割合が30%以上となる(図2のグラフ)。そのため、シリカフュームは良品と判定される。これに対して、測定値が50mPa・sを超えれば、シリカフュームの分散性が良好とされる1μm以下の粒子の割合が30%未満となり、シリカフュームは不良と判定される。
【0024】
請求項2に記載の発明は、前記シリカフュームと水と減水剤との混練には、攪拌羽根を有するミキサが使用され、その混練時には、前記攪拌羽根を5000〜12000rpmで回転させて攪拌する請求項1に記載の高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法である。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、シリカフュームと水と減水剤とをミキサの容器に投入し、攪拌羽根を5000〜12000rpmで回転させて攪拌することで、試料スラリーの材料を混練する。これにより、2次粒子として存在するシリカフュームを1次粒子まで分散させ、かつ、シリカフュームの粒子表面に減水剤の成分を有効に接触させることができる。
【0026】
攪拌羽根の回転速度が、5000rpm未満では2次粒子の凝集力が強いため、シリカフューム粒子が分散しない。また、12000rpmを超えれば、市販のミキサの能力を超えるため、特別な攪拌機が必要になる。攪拌羽根の好ましい回転速度は、6000〜10000rpmである。この範囲であれば、シリカフューム粒子に与える分散力が最も効率的となり、比較的容易に2次粒子が分散しやすいというさらに好適な効果が得られる。
【0027】
請求項3に記載の発明は、シリカフュームと水と減水剤との混練時間が50〜70秒である請求項2に記載の高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法である。
【0028】
請求項3に記載の発明によれば、ミキサによるシリカフュームと水と減水剤との混練時間を、攪拌羽根の回転を5000〜12000rpmで50〜70秒としたので、シリカフュームの分散性の良悪に応じてスラリーの粘度の差が明確になる。
【0029】
シリカフュームと水と減水剤との混練時間が50秒未満では、シリカフューム粒子を1次粒子まで分散できず、粘度が高くなる。また、70秒を超えれば、一旦分散したシリカフューム粒子が再凝集を起こし、粘度が高くなる。好ましい混練時間は、55〜65秒である。この範囲であれば、シリカフュームの分散性の良悪に応じてスラリーの粘度の差が明確になる。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、まず水粉体比が350〜450%のシリカフュームと水と、シリカフュームに対して3重量%以上5重量%未満の減水剤とを混練することで試料スラリーを作製する。その後、粘度測定器として、従来のレーザ回析式粒度分布測定装置のような高価かつ大型で特殊な測定器を必要とせず、安価で携帯性が高い回転粘度計を用いて試料スラリーの粘度を測定する。その結果、高強度コンクリートの製造に使用されるシリカフュームの品質について、JISで規定される性能以外に、コンクリートの流動性の向上、および高強度化に関与する分散性を評価することができる。しかも、このシリカフュームの分散性を、特定の実験室でない高強度コンクリートの製造現場で、簡便かつ直接的に評価することができる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、混練時には、ミキサに投入されたシリカフュームと水と減水剤とを、攪拌羽根を5000〜12000rpmで回転させて混練するので、従来の超音波による分散力と同等の外力を与えることができ、シリカフューム粒子を1次粒子まで分散させることができる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、ミキサによるシリカフュームと水と減水剤との混練時間を、攪拌羽根を5000〜12000rpmで50〜70秒としたので、シリカフューム粒子を分散させるのに十分な時間であり、かつ、再凝集を起こさないような適切な時間である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】シリカフュームの銘柄別の減水剤の添加量と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【図2】シリカフュームの分散性と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【図3】シリカフュームの減水剤の添加量と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【図4】この発明の実施例に係る高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法におけるシリカフュームの銘柄別の減水剤の添加量と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【図5】この発明の実施例に係る高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法におけるシリカフュームの銘柄別の水粉体比と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【図6】この発明の実施例に係る高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法におけるシリカフュームの銘柄別の試料スラリーの混練時間と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【図7】この発明の実施例に係る高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法におけるシリカフュームの銘柄別のミキサに搭載された攪拌羽根の回転数と試料スラリーの粘度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ただし、この発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
(1)使用材料
この発明に使用される材料を以下の表5に示す。
【0036】
【表5】

【0037】
なお、表5中の高性能減水剤SSP―104は、ポリカルボン酸系グラフトコポリマーを主成分とするアニオン型高分子界面活性剤である。
【0038】
(2)試料スラリー(シリカフュームスラリー)の製造
表5に示す6種類の銘柄(SF1〜SF6)のシリカフューム毎に、シリカフューム100g、減水剤および水400g(うち減水剤0〜10g)を市販の高速攪拌ミキサに投入し、攪拌羽根を8000rpmで60秒間高速回転することで、これらを混練して各試料スラリーを作製した。
【0039】
〔シリカフュームの銘柄別の品質(分散性)評価試験〕
次に、前記(2)試料スラリーの製造方法に則って作製された6種類の試料スラリーを、1つの銘柄ごと測定容器に移し、回転粘度計によりこれらの粘度を測定した。
室温20±2℃、相対湿度85%RH以上に管理された試験室で、スラリーの作製に使用する水の温度は20±1℃とし、シリカフュームの温度は20±3℃とした。
試料スラリーの粘度が100mPa・s以下であれば、TV−10M型粘度計を使用し、また試料スラリーの粘度が100mPa・s未満であればTV−10H型を使用し、試料スラリーの粘度を測定した。
粘度計での計測時間は1回あたり20秒間とし、各試料について3回測定を行い、その平均値を測定値とした。測定容器には、500mlのポリビーカーを使用した。
その結果を、図4のグラフおよび表6に示す。
【0040】
【表6】

【0041】
図4のグラフおよび表6から明らかなように、既往のレーザ回析式粒度分布測定装置により良品とされたSF1〜SF4は、減水剤の添加量が3%以上5%未満のとき、粘度が50mPa・s以下で、分散性はシリカフュームが良好とされる1μm以下の粒子の割合が30%以上となった(図2のグラフ)。一方、不良のSF5およびSF6は、粘度が50mPa・sを超え、その分散性は1μm以下の粒子の割合が30%未満であった。すなわち、50mPa・sを超えるシリカフュームは分散性が著しく不良、または、粒径が大きいシリカフューム(顆粒状)であると評価され、実施例の評価方法と従来法による評価方法との間に相関があることが実証された。
【0042】
ここで、図5のグラフおよび表7を参照して、シリカフュームと水との水粉体比の違いによるシリカフューム(SF3,SF4,SF6)の分散性の変化を調べた結果を報告する。具体的には、シリカフューム(100gで一定)と水との水粉体比を300〜500%で変動させたときの試料スラリーの粘度を示す。その他は、上述の実施例と同じ条件で試験を行った。
【0043】
【表7】

【0044】
図5のグラフおよび表7から明らかなように、水粉体比が350〜450%では、試料スラリーの粘度が50mPa・s以下となり、シリカフュームが良好とされる1μm以下の粒子の割合が30%以上であった。
【0045】
次に、図6のグラフおよび表8を参照して、攪拌羽根による試料スラリーの混練時間の違いによるシリカフューム(SF3,SF4,SF6)の分散性の変化を調べた結果を報告する。具体的には、混練時間を50〜70秒間で変動させたときの試料スラリーの粘度を示す。その他は、上述した実施例と同じ条件で試験を行った。
【0046】
【表8】

【0047】
図6のグラフおよび表8から明らかなように、試料スラリーの混練時間が50〜70秒間では、試料スラリーの粘度が50mPa・s以下となり、シリカフュームが良好とされる1μm以下の粒子の割合が30%以上であった。
【0048】
次いで、図7のグラフおよび表9を参照して、ミキサに搭載された攪拌羽根の回転数の違いによるシリカフューム(SF3,SF4,SF6)の分散性の変化を調べた結果を報告する。その他は、上述の実施例と同じ条件で試験を行った。
【0049】
【表9】

【0050】
図7のグラフおよび表9から明らかなように、攪拌羽根の回転数を8000rpm(ミキサA)、その回転数を139rpm(ミキサB)、その回転数を500rpm(ミキサC)とした場合、回転数が8000rpmのときのみ、試料スラリーの粘度が50mPa・s以下となり、シリカフュームが良好とされる1μm以下の粒子の割合が30%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明は、高性能・高品質吹付コンクリート、または、超高層建築物用高強度コンクリートなどに添加されるシリカフュームの分散性の評価に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水粉体比が350〜450%のシリカフュームと水と、このシリカフュームに対して3重量%以上5重量%未満の減水剤とをミキサに投入して混練することで試料スラリーを作製し、
得られた該試料スラリーを測定容器に入れ、回転粘度計により粘度を測定し、
測定した粘度の値が、50mPa・s以下であれば良品とし、50mPa・sを超えれば不良品とする高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法。
【請求項2】
前記シリカフュームと水と減水剤との混練には、攪拌羽根を有するミキサが使用され、
その混練時には、前記攪拌羽根を5000〜12000rpmで回転させて攪拌する請求項1に記載の高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法。
【請求項3】
シリカフュームと水と減水剤との混練時間が50〜70秒である請求項2に記載の高強度コンクリート用シリカフュームの品質評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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