説明

高強度コンクリート用粗骨材の選定方法

【課題】
静弾性係数を用いなくても、これと強い相関があり、骨材サンプルそのものから測定可能なキャラクターを代替指標とすべく、鋭意探索し、特に高強度コンクリートの圧縮強度に応じて、これに適した粗骨材を簡易に、精度よく選定する方法を提供する
【解決手段】
高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法であって、予め粗骨材原石から切り出した試料で静弾性係数を測定値と、前記粗骨材原石を粗砕して、粗骨材とし、前記粗骨材のポロシメータでの下限値を0.003μmから0.004μmで設定し、上限値を0.2μmから30μmで設定する細孔径の範囲の総細孔容積の測定値と前記静弾性係数の測定値との相関式を作成しておき、選定対象の粗骨材の前記総細孔容積を前記細孔径の範囲で測定して、前記相関式によって、前記静弾性係数値を前記相関式から決定する粗骨材の静弾性係数の決定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗骨材の選定方法に関し、特に圧縮強度の大きなコンクリートに使用可能な粗骨材を選定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度コンクリート構造物の設計の際には、構造体の変形性能、剛性を評価する重要な因子である静弾性係数を把握することは必要不可欠である。この静弾性係数を把握するための推定式が高強度コンクリート施工指針(案)・同解説で定められている。この推定式では、使用する粗骨材の岩種によって定数を定めているが、粗骨材の物性がコンクリートの静弾性係数に及ぼす影響については言及されていない。
【0003】
コンクリートの静弾性係数と粗骨材との関係に関して、例えば、非特許文献1の開示がある。この文献では、80N/mm以上の高強度コンクリートにおいて、モルタルマトリックスの静弾性係数に近い静弾性係数を有する粗骨材に比較して、それより大きい静弾性係数の粗骨材を用いた場合、粗骨材−モルタル間の剛性の違いに起因する応力集中がコンクリート圧縮破壊の原因となってコンクリートの強度が低下することを示唆する記載がある。
【0004】
さらに、設計基準強度が100N/mm程度或いはそれ以上の高強度コンクリートでは、一般のコンクリートとは異なる破壊性状を示すことが確認され、高強度コンクリートに使用する粗骨材の選定が必要とされる記載がある。
【0005】
また、特開2006−212933には、コンクリートの圧縮強度に応じて、予め設定された許容範囲に属するヤング率(静弾性係数)を有する粗骨材を選定する粗骨材選定方法が開示され、粗骨材の静弾性係数と粗骨材の絶乾密度との相関から静弾性係数に代えて絶乾密度に基づいて選定できることが記載されているが、記載された例示においても、静弾性係数と絶乾密度の相関係数は、たかだかR=0.84程度と算出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−212933号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「超高強度コンクリートに関する開発研究(その3)」、日本建築学会大会学術講演梗概集、1990年10月、P495−P496
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、粗骨材の物性が高強度コンクリートの圧縮強度や静弾性係数などの物性に与える影響に関する定量的データは少なく、自然界より採取される粗骨材ではその他の工業製品と比べて物性値のばらつきも大きい。このため、高強度コンクリートの製造の際には粗骨材に関する密度の下限値、吸水率の上限値等以外の特別な品質管理のための規定は設けられていないのが現状である。
【0009】
しかし、より質の高い高強度コンクリートの管理をおこなうためには、静弾性係数等の物性についても検討する必要がある。その一方で、管理は簡易に、粗骨材の選定は容易に行えることが必要である。
【0010】
上述の通り、コンクリートの高強度化を図るには、モルタルマトリックスと同程度の剛性を有する粗骨材を選定するのが良い。また、剛性を示す指標としては、静弾性係数を用いることも妥当である。しかし、静弾性係数の測定には、所定寸法の試験片を切り出して作成する必要があった。原石の粉砕後の粗骨材自体からは、これを作成することはできない。そこで、原石に戻って、コア供試体をコア抜きによって作成する必要があった。また、自然石である原石等では、原石の成分その他のバラツキが、直接的に生産された粗骨材のバラツキとなった。
【0011】
そこで、静弾性係数を用いなくても、これと強い相関があり、骨材サンプルそのものから測定可能なキャラクターを代替指標とすべく、鋭意探索し、特に高強度コンクリートの圧縮強度に応じて、これに適した粗骨材を簡易に、精度よく選定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法であって、
予め粗骨材原石から切り出した試料で静弾性係数を測定する工程と、
前記粗骨材原石を粗砕して、粗骨材とし、ポロシメータでの下限値を0.003μmから0.004μmで設定し、上限値を0.2μmから30μmで設定する細孔径の範囲で前記粗骨材の総細孔容積を測定する工程と、
前記静弾性係数の測定値と前記総細孔容積の測定値との相関式を作成する工程と、
選定対象の粗骨材の総細孔容積を前記細孔径の範囲で測定して、選定対象の粗骨材の静弾性係数値を前記相関式から決定する工程と、
を含む高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法(請求項1の方法)、を提供する。
【0013】
更に、前記ポロシメータでの測定細孔径の下限値が、0.003μmであり、上限値が0.2μmである請求項1記載の高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法(請求項2の方法)、を提供する。
【0014】
また、0.003μmから0.2μmの細孔径の範囲で選定対象の粗骨材の総細孔容積を測定し、相関式 y=−3.17x+79.8 (y:静弾性係数 x:総細孔容積)から粗骨材の静弾性係数を決定する高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法(請求項3の方法)、を提供する。
【0015】
さらに、0.003μmから30μmの細孔径の範囲で選定対象の粗骨材の総細孔容積を測定し、相関式 y=−2.66x+85.3 (y:静弾性係数 x:総細孔容積)から粗骨材の静弾性係数を決定する高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法(請求項4の方法)、を提供する。
【0016】
予め粗骨材の静弾性係数とこれを用いたコンクリートの圧縮強度の関係式を求めておき、
所望の圧縮強度のコンクリート製造にあたって、選定対象の粗骨材を、請求項1乃至4のいずれかの方法で決定した静弾性係数値を用いて、前関係式から圧縮強度を算出し、所望の圧縮強度に対応する粗骨材を合格とする高強度コンクリート用粗骨材の選定方法(請求項5の方法)、を提供する。
【0017】
本発明を適用するコンクリートの圧縮強度は、すくなくとも80N/mmである。この範囲では、マトリックスの静弾性係数と粗骨材の静弾性係数を用いてコンクリート(マトリックスをモルタルとし、充填物を粗骨材とする複合材料)の圧縮強度との定量的な関係を導くことができる
【0018】
先ず、マトリックスのモルタルをさだめる。このモルタルを用いて所定の製造条件で所定の圧縮強度のコンクリートとなることが判明している静弾性係数の粗骨材原石を粗砕して、粗骨材とした。原石の粗砕は、通常の粉砕機を用いることができる。原石の大きさに応じて、二段以上の粉砕工程とすることも好ましい。粉砕機は、クラッシャー、ハンマーミル、パルベライザー、ボールミル、竪型ミル等を用いることができる。ここで、粗骨材の粒径は、5から30mmである。
【0019】
粗骨材原石も通常用いられる安山岩、硬質砂岩、石灰石、流紋岩、石英斑岩でよい。粗骨材例の物理的性質および化学成分を表1に示す。
【0020】
但し、バーミキュライト化した黒雲母はその構造が層状かつ軟らかいため、変形性能が大きい。そのためこの鉱物をおおく含む場合、空隙構造に関係なく静弾性係数が低くなる可能性がある。この変質した黒雲母は硬質砂岩中に含まれることが稀にある。そのため、薄片試料(岩石薄片の作り方、力田正一、ニュー・サイエンス社出版)の鑑定により、この鉱物の含有量を画像解析で判断し、薄片面積比率で1%以上含む場合には粗骨材原石の対象から除くことが望ましい。
【0021】
【表1】

【0022】
前記粗骨材の総細孔容積測定法は、細孔径に対する容積分布が測定できるものであれば良い。水銀圧入式ポロシメータで測定するのが好ましい。BET等の比表面積測定手段では、細孔径分布に応じたデータ取得が困難であり、特定範囲の総細孔容積データが必要な本願発明には不向きである。粗骨材の静弾性係数は、比較的微細領域の細孔に関係することが判明したからである。特に、水銀圧入式ポロシメータでの下限値0.003μmから0.004μm、上限値0.2μmから30μmで設定する範囲の総細孔容積の値が前記静弾性係数の値と相関が特に高いことが判明した。
【0023】
図6に、2種の粗骨材について、水銀圧入式ポロシメータを用いて、細孔径(μm)に対する細孔容積(mm/g)を測定した結果を示した。0.003μm付近から0.2μm付近にかけて、0.03μmをピークとする細孔容積部分が認められる。0.003μmからの立ち上がりは急であり、0.2μm付近は緩やかにテイリングするピーク形状である。
【0024】
前記テイリングは、30μm付近まで続き、わずかな起伏をともなう。この細孔容積を示すピーク部分は、後述する静弾性係数と相関が強い。現状の水銀圧入式ポロシメータでは、その測定限界が0.003μmである。設定範囲の下限が、0.004μmを超えると、求めようとする細孔部分の一部が測定されないこととなる。上限値を0.2μmから30μmで設定したのは、0.2μmより小さいと求めようとする細孔部分の一部が測定されなくなり、又、30μmより大きいと静弾性係数に大きな影響のある細孔部分以外の細孔部を含んで測定することとなり、ともに静弾性係数と求めた総細孔容積との相関が小さくなる傾向が認められたからである。
【0025】
こうして、予め、粗骨材原石から切り出した試料で静弾性係数を測定し、前記粗骨材原石を粗砕して、粗骨材とし、前記粗骨材のポロシメータでの下限値を0.003μmから0.004μmと設定し、上限値を0.2μmから30μmで設定する細孔径の範囲の総細孔容積の値と前記静弾性係数の値との相関式を作成しておいた。
【0026】
一方、静弾性係数を測定していない選定対象の粗骨材の前記総細孔容積を前記測定範囲で、水銀圧乳式ポロシメータを用いて測定した。総細孔容積値を、前記相関式によって、静弾性係数値を算出し、決定することができる。こうして、前記相関式から決定する高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法、を提供できる。
【0027】
更に、静弾性係数と相関の強い総細孔容積を前記水銀圧入式ポロシメータで探索したところ、測定細孔径が細孔径0.003μmから0.2μmの場合、前記静弾性係数と極めて相関の高いことが判明した。
【0028】
即ち、前記ポロシメータでの測定細孔径の下限値0.003μmとして、上限値が0.2μmと定める水銀圧入式ポロシメータでの測定値を予め同様の測定範囲で求めた総細孔容積と静弾性係数関係式に適用することにより、より高精度に高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数を決定することができる。
【0029】
また、「発明を実施するための形態」に後述する静弾性係数と総細孔容積との相関式(相関を示す回帰式)は、広く多様な岩種の骨材原石から求めた相関式であるので、上記の方法で新たに相関式を求める工程を省略し、「発明を実施するための形態」に後述する相関式を用いて高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数を決定することができる。
【0030】
予め、粗骨材の静弾性係数とこれを用いたコンクリートの圧縮強度の関係式を求めておき、所望の圧縮強度のコンクリート製造にあたって、使用する粗骨材を、上記の方法で決定した静弾性係数値を用いて前関係式で圧縮強度を算出し、所望の圧縮強度に対応する粗骨材を合格とする高強度コンクリート用粗骨材の選定方法、を提供する。
【0031】
即ち、予め、原石の静弾性係数とこの原石から製造した粗骨材を用いて得られたコンクリートの圧縮強度の関係式をもとめ、所望の圧縮強度のコンクリートに使用できる粗骨材の静弾性係数の許容範囲を定めておくことができる。
【0032】
次いで、選定対象の粗骨材の前記総細孔容積を測定して、静弾性係数との相関式によって、前記静弾性係数値の許容範囲にあるかを判定して、前記許容範囲にある粗骨材を合格とした。
【発明の効果】
【0033】
静弾性係数をその都度、骨材原石から切り出した試験体を用いて測定しなくても、これと強い相関があり、骨材サンプルそのものから測定可能な総細孔容積を代替指標として、特に高強度コンクリートの圧縮強度に応じて、これに適した粗骨材を簡易に、精度よく選定でき、建設工程管理が容易に精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜30μm)の相関図である。
【図2】粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の相関図である。
【図3】粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.2〜30μm)の相関図である。
【図4】粗骨材の静弾性係数と絶乾密度の相関図である。
【図5】粗骨材の静弾性係数と該粗骨材を用いたコンクリートの圧縮強度の相関図である。
【図6】粗骨材の細孔径に対する細孔容積の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の形態について、詳細に説明する。これによって、本発明を限定するものではない。
【0036】
粗骨材は砕石場で製造されたものを使用した。砕石場で、表土除去を完了させた後、クローラドリルで発破孔をさく孔し、硝安油剤爆薬で爆破して、起砕石を得た。次いで、パワーショベルにて、立坑に投入した。立坑に投入された原石は、坑内で1次クラッシャーを用いて、破砕した。坑内ベルトコンベヤで坑外に搬出したのち、更にコーンクラッシャー又は、インパクトクラッシャーで破砕し、篩で5〜20mmに調整した。
【0037】
試料の乾燥は、予備乾燥(105℃)後、ドライアイス−メタノール温度のトラップを付帯した真空乾燥を行い、恒量とした試料を用いた。
【0038】
次いで、乾燥した試料について、水銀圧入式ポロシメータで総細孔容積を測定した。この方法は、各測定ポイントでサンプルの細孔へ強制的に圧入された水銀の量を静電容量検出器で測定し、総細孔容積データを得るものである。
【0039】
静弾性係数は、社団法人地盤工学会「岩の試験・調査方法の基準・解説書、2003」記載の「岩石の一軸圧縮試験方法」に準拠して行った。供試体は立杭投入前の粗骨材原石から一部分を採取して、ダイヤモンドカッターで切断し、供試体寸法、φ32×64mmに成形した。供試体寸法の影響を少なくするために、高さ径比を2.00±0.05とした。一点測定に、供試体数は6体を用いて、平均値を用いた。
【0040】
使用した粗骨材例の物理的性質および化学成分を表2に示す。5種類の岩種の原石を用いた。
【0041】
【表2】

【0042】
図1には、前記粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜30μm)の関係を示す。
ここで求めた静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜30μm)の相関を示す回帰式y=−2.66x+85.3の相関係数は、R=0.92 であった。
【0043】
次いで、図2には、前記粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の関係を示す。
ここで求めた静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の相関を示す回帰式y=−3.17x+79.8の相関係数は、R=0.94 であった。
【0044】
更に、図3には、前記粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.2〜30μm)の関係を示す。ここで求めた静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.2〜30μm)の相関を示す回帰式y=−5.0x+80.9の相関係数は、R=0.46 であった。
【0045】
一般に、骨材の総細孔容積(細孔径0.003〜30μm)と静弾性係数の間には強い負の相関関係が確認できた。また、測定する細孔径分布を限定することで、更に相関を強めることができた。総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の相関を示す回帰式の相関係数は、R=0.94、総細孔容積(細孔径0.003〜30μm)の相関を示す回帰式の相関係数は、R=0.92、比較のためにおこなった総細孔容積(細孔径0.2〜30μm)の相関を示す回帰式の相関係数は、R=0.46であった。更に詳細に、下限値の細孔径を0.003μmと固定し、上限値の細孔径を0.1μmから1μmとして実測した結果、総細孔容積値と静弾性係数との相関値は、0.2μmのとき、最大であり、0.5μmまでは、極めて満足すべき相関を示した。
【0046】
したがって、総細孔容積は、骨材の静弾性係数と相関の強い簡易測定因子ということができる。更に、細孔径0.003〜0.5μmの範囲で、極めて強い負の相関を示して、静弾性係数の代替指標となった。
【0047】
比較例として、粗骨材の総細孔容積でなく、粗骨材の絶乾密度を測定して、粗骨材の静弾性係数を求めた結果を図4に示す。絶乾密度の測定は、JIS A 1110「粗骨材の密度および吸水率試験方法」に準拠して行った。回帰式は、y=257.8x−610.2であり、相関係数は、R=0.84であった。総細孔容積に比べて静弾性係数との相関が小さく、指標としては総細孔容積の方がより正確であった。
【0048】
また、粗骨材の絶乾密度は、岩種によって、変化する幅が極めて小さく、有効数字3桁を正確に定めないと相関を求める基礎データ自体が不確かなものとなる。例えば、絶乾密度の値が試験誤差により0.01g/cm変化した場合、静弾性係数の予測値は約3.0kN/mm変化する。しかし、総細孔容積の値が0.01mm/g変化しても、静弾性係数の予測値は約0.03kN/mm変化するにとどまる。また、絶乾密度の試験では、サンプルの代表性を確保するためには、比較的おおきなサンプルサイズをとる必要がある。岩種の相違による変化が、測定誤差の範囲に近く、不適切な指標といえる。
【0049】
以下、本発明の実施形態として、粗骨材の静弾性係数決定方法を例示する。
【0050】
前記のとおり、予め、粗骨材原石から切り出した試料で静弾性係数を測定し、前記粗骨材原石を粗砕して粗骨材とし、細孔径の測定範囲0.003μmから0.2μmの総細孔容積を測定した。図2には、前記粗骨材の静弾性係数と総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の関係を示す。このときの相関式は、y=−3.17x+79.8となった。
【0051】
一方、静弾性係数を測定していない選定対象の粗骨材の前記総細孔容積を前記測定範囲で、水銀圧乳式ポロシメータを用いて測定し総細孔容積が、3.0mm/gを得た。ついで、上記Xに3.0を代入して、前記相関式によって、静弾性係数値70.3kN/mmを算出し、決定することができた。
【0052】
以下、本発明の実施形態として、粗骨材の選定方法を例示する。
【0053】
高強度領域のコンクリートにおいては、マトリックスセメントの静弾性係数と、粗骨材の静弾性係数が近い値を示すとき、高強度化することが判明している。
【0054】
図5に粗骨材の静弾性係数と圧縮強度が80N/mmを超えるコンクリートの圧縮強度の関係を示す。このような圧縮強度が80N/mmを超える高強度コンクリートでは、粗骨材の静弾性係数が小さく、マトリックスと同程度の剛性のとき、圧縮強度が高くなる傾向にあった。
【0055】
そこで、粗骨材の選定にあたっては、静弾性係数の決定により、圧縮強度設計がなされている。
【0056】
ここで、高強度コンクリートは、次のように製造した。即ち、試験に使用した材料は、シリカヒューム混合セメント、細骨材(砕砂、表乾密度:2.62g/cm、吸水率:3.02%、粗粒率:2.58)、所定粗骨材、高性能ポリカルボン酸系AE減水剤、空気量調整剤(消泡剤)を所定量用いた。コンクリートの調合はW/C=13%とし、単位粗骨材かさ容積および高性能AE減水剤添加量を一定とし、目標スランプフロー70±7.5cm、目標空気量2.0%以下となるように設定した。練混ぜは水平二軸型強制練りミキサを使用し、セメント、細骨材を投入し30秒、水および混和剤を投入し240秒、その後粗骨材を投入し90秒間行った。養生は標準水中養生とした。
【0057】
図5から、例えば圧縮強度150N/mmのコンクリートを上記製造条件で得るには、粗骨材の静弾性係数が70kN/mm以下であれば良いことがわかる。
【0058】
また、図2より、総細孔容積(0.003〜0.2μm)の値が、3.0mm/g以上(相関を示す回帰式y=−3.17x+79.8を使用)であれば、粗骨材の静弾性係数が70kN/mm以下になることが判る。したがって、総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の値が3.0mm/g以上を許容範囲とした。
【0059】
このようにして総細孔容積(細孔径0.003〜0.2μm)の値に基づいて選定した安山岩、硬質砂岩の粗骨材を用いて、前記の所定製造条件で製造したコンクリートは、予想する150N/mm以上の圧縮強度を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
測定容易な総細孔容積を用いて、特に高強度コンクリートの圧縮強度に応じて、これに適した粗骨材を簡易に選定でき、建設工程管理が容易に精度良く行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法であって、
予め粗骨材原石から切り出した試料で静弾性係数を測定する工程と、
前記粗骨材原石を粗砕して、粗骨材とし、ポロシメータでの下限値を0.003μmから0.004μmで設定し、上限値を0.2μmから30μmで設定する細孔径の範囲で前記粗骨材の総細孔容積を測定する工程と、
前記静弾性係数の測定値と前記総細孔容積の測定値との相関式を作成する工程と、
選定対象の粗骨材の総細孔容積を前記細孔径の範囲で測定して、選定対象の粗骨材の静弾性係数値を前記相関式から決定する工程と、
を含む粗骨材の静弾性係数の決定方法。
【請求項2】
前記ポロシメータでの測定細孔径の下限値が、0.003μmであり、上限値が0.2μmである請求項1記載の高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法。
【請求項3】
0.003μmから0.2μmの細孔径の範囲で選定対象の粗骨材の総細孔容積を測定し、相関式 y=−3.17x+79.8 (y:静弾性係数 x:総細孔容積)から粗骨材の静弾性係数を決定する高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法。
【請求項4】
0.003μmから30μmの細孔径の範囲で選定対象の粗骨材の総細孔容積を測定し、相関式 y=−2.66x+85.3 (y:静弾性係数 x:総細孔容積)から粗骨材の静弾性係数を決定する高強度コンクリート用粗骨材の静弾性係数の決定方法。
【請求項5】
予め粗骨材の静弾性係数とこれを用いたコンクリートの圧縮強度の関係式を求めておき、
所望の圧縮強度のコンクリート製造にあたって、選定対象の粗骨材を、請求項1乃至4のいずれかで決定した静弾性係数値を用いて、前関係式から圧縮強度を算出し、所望の圧縮強度に対応する粗骨材を合格とする高強度コンクリート用粗骨材の選定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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