高強度太径異形鋼棒の製造方法
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、熱間圧延によつて周面に不連続のねじ山を形成する,例えば呼び名25〜32mm等の太径異形鋼棒を高強度化して、プレストレストコンクリート用として使用するための、高強度太径異形鋼棒の製造方法に関する。
(従来の技術)
従来、この種の高強度太径異形鋼棒は、C含有量が0.65〜0.85重量%と比較的高い高材料を、第7図に示す如く、熱間圧延1により周面に不連続のねじ山が形成された太径異形鋼棒とし、次いで当該鋼棒をストレツチング2して加工硬化させ、さらにブルーイング3して弾性限,伸び,レラクセーシヨン値等を回復させる工程に付する製造方法により、プレストレストコンクリート用鋼棒としてJIS規格に適合する機械的性質を付与するようにしていた。
(従来技術に存する問題点)
従来法は、加工硬化を前提とした製造方法であるので、素材鋼のC含有量を比較的高くし、かつストレツチングにおける加工度との兼ね合いで厳密に量定することが必須とされ、量定と加工度とが不適切であると所定の強度に不足をきたす虞があつた。
また、プレストレストコンクリート用として使用するためには、ストレツチングの後工程にブルーイングが当然のこととして要求されるところとされ、製造工程が複雑であつた。
さらに、たとえ本発明の成分の如き比較的低炭素量の鋼材料を、通常の加熱,冷却手段で熱処理して強度を付与しても、十分な直線性が得られず、プレストレストコンクリート用としては適さない。
従来法は上述製造工程上の問題点を抱えている一方、他方では製品使途についての問題点が指摘されている。即ち、極近時PC鋼棒を圧縮して用いるコンプレツシング・プレストレストコンクリート工法が注目されはじめたが、当該工法に使用するPC鋼棒として、ストレツチング,ブルーイングした鋼棒がバウシンガー効果により圧縮に対して降状強度が著しく低下し、不向きであるとされる点である。
(発明の目的)
本発明は、高強度太径異形鋼棒を製造する場合の従来製造方法,さらには従来方法により製造された製品に存する上述した問題点を解消するためになされたもので、プレストレスコンクリート用鋼棒規格に適合する機械的性質を具え、しかも直線性に優れ、かつコンプレツシング・プレストレストコンクリート用鋼棒として好適な高強度太径異形鋼棒の製造方法を提供することを目的とする。
(発明の構成)
本発明の構成は、(1)熱間圧延によつて周面に不連続のねじ山を形成する太径異形鋼棒を高強度化する場合において、(2)微量成分として重量%でC;0.6以下、Si;0.15〜2.00,Mn;0.6〜2.00および不可避元素を含有する鋼材料または必要に応じて上記各成分にさらにCr;0.6以下が添加される鋼材料を使用し、(3)熱間圧延した後,定尺に切断された黒皮付き鋼棒を連続送りしつつ,当該鋼棒の直径に応じた適正周波数・出力からなる誘導加熱手段を用いた全断面急速加熱と、鋼棒の山径よりわずか大きい内径のガイドチップが芯出しされて複数配列された中を通過することによる拘束状態下での急冷とによる焼入れおよび焼戻しを施すことを特徴とする高強度太径異形鋼棒の製造方法にある。
換言すれば、本発明は熱間圧延される鋼材料として、少なくとも重量比%でC;0.6以下を含有する低炭素鋼材料の使用を基本とし、熱間圧延により得られた太径異形鋼棒を、従来法の如くストレツチングおよびブルーイング工程によらず、鋼棒を連続送りしつつ誘導加熱手段を用いた全断面急速加熱と拘束状態下での急冷とによる焼入れおよび焼戻し工程に付して高強度化するにある。
上記構成の(2)において、C量を0.6%以下としたのは、本発明の高強度化工程が加工硬化処理に依拠しないからであり、また後記Mn量との兼ね合いで焼入れ性が確保されれば十分であるからである。
また、Siの添加は製品の靭性を損なわずに強度を確保するためで、0.15%未満では所期の効果が期待されず、2.00%を超えると靭性が阻害される。而して、0.15%以上,2.00%以下の範囲内でのSi添加により、PC鋼材としてのリラクセーシヨン特性,耐遅れ破壊特性の改善が期待できる。
MnはC量との和により焼入れ工程での焼入れ性を確保するためで、好ましくは1.0%前後とし、0.6%未満ではその効果が少なく、2.00%を超えると焼割れをおこす虞が増大するので、上・下限を上記とした。
Crの添加は焼入れ性と焼戻し抵抗性を確保するためで、上記C量およびMn量との関係から必要に応じて添加され、0.6%を超えると焼割れをおこす虞が増大する。
以上の微量成分元素を含む鋼材料を使用し、熱間圧延により周面に不連続のねじ山を形成した直線状の第1図(a)に示されるような太径異形鋼線を得、これを定尺に切断して鋼棒とする。
得られた鋼棒は黒皮付きのまま第1図(b)に示される熱処理工程に付される。図において、Lは熱処理ライン,C1およびC2はそれぞれ焼入れ加熱用および焼戻し加熱用コイル,J1およびJ2はそれぞれ冷却ジヤケツトである。鋼棒Wは順次熱処理ラインL上の図示左方側さら供給され、右方側へと連続移動する間に、焼入れ加熱用コイルC1により所定焼入れ温度まで全断面急速加熱され、次いで冷却ジヤケツトJ1から噴射される冷却流体により急冷・焼入れされ、さらに前進して焼戻し加熱用コイルC2を通過する間に所定焼戻し温度まで全断面急速加熱され、冷却ジヤケツトJ2により冷却を施され、熱処理工程を完了する。
而して、上記冷却ジヤケツトJ1およびJ2による被加熱鋼棒Wの冷却は、拘束状態下でおこなわれる。連続走行中に異形の被加熱鋼棒Wを拘束しつつ冷却する手段として、例えば第2図(a)および(b)として示す冷却ジヤケツトJが使用される。
図において、11は冷却流体噴射孔sが多数孔設されたコーン111を具えた冷却流体噴射室、12は流体排出口121を具えた流体排出室であり、冷却ジヤケツトJは冷却流体噴射室11と流体排出室12とを出側を除き交互に複数配置してなる。而して、コーン111の先端部はカツトされて鋼棒通路を形成し、当該通路の周壁に13として示すリング状のガイドチツプが固着されている。ガイドチツプ13は,被処理鋼棒Wが辛うじて通過可能な如く,最小内径dを被処理鋼棒Wの山径より僅少大に設定されている。また、複数のガイドチツプ13は全て走行ラインLに対して芯出し配置されている。従つて、冷却ジヤケツトJを通過する鋼棒Wは複数のガイドチツプ13により周方向から拘束を受けつつ冷却されることとなり、直線性が保証される。
上記熱処理工程では、鋼棒W周面の特殊形状および当該鋼棒Wの直径から、鋼棒Wのねじ山を含む全断面がそれぞれ所定焼入れ温度および焼戻温度に均一加熱されるよう、焼入れ加熱用コイルC1と焼戻し加熱用コイルC2とに給電する電源の周波数は選択され、それぞれ所定の出力とされなければならない。本発明者の行つた実験結果によれば、周波数および出力の選択が適切であれば、周面が特殊形状でも鋼棒W全断面を均一加熱可能であることが実証されている。
(実施例)
本発明高強度太径異形鋼棒の製造方法による実施例を以下に開示する。
☆鋼材料の微量化学成分:下記第1表に示す。
☆熱間圧延:上記化学成分を含有する2種の素材鋼をそれぞれ熱間圧延し、呼び名25mmの周面に不連続のねじ山が形成された直線状の第1図(a)に示す太径異形鋼線を得、これを所定定尺に切断して鋼棒とした。
☆熱処理:上記鋼棒を第1図(b)に示される熱処理ラインを用いて全断面に焼入れ,焼戻し処理を施し、鋼種Iについては引張強さで110Kgf/mm2クラス,鋼種IIについては引張強さで125Kgf/mm2クラスの製品とした。
鋼種IおよびIIそれぞれについての加熱条件は下記のとおりであつた。
尚、別記しない条件は両鋼種に共通である。
○焼入れ加熱時使用周波数;8KHz出力;400KW加熱温度;
鋼種I……940℃鋼種II……980℃○焼戻し加熱時使用周波数;8KHz出力;200KW加熱温度;
鋼種I……650℃鋼種II……660℃尚、冷却は水冷却である。
(確性試験)
本発明に係る製品がプレストレストコンクリート用鋼棒としてJIS規格G3109のSBPDに規定される機械的性質(JIS G 3109に規定されるSBPDの呼び名は最大13mmφまでであるが、当該規定のそれ以上の呼び名のものにも準用する場合)を満足しているや否やを確認するため、得られた製品それぞれから試験片を作製し、これを下記の試験に付した。
(1)引張試験:JIS Z 2241の規定に従つて行つた。
第3図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種Iの,曲線IIは鋼種IIの荷重−伸び簡関係線である。
(2)圧縮試験:JISには該当試験規格が見当たらないので、ASTM E9に定められた方法に準拠して行つた。
第4図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種Iの,曲線IIは鋼線IIの荷重−縮み関係線である。
(3)レラクセーシヨン試験:JIS G3109に定められた方法に従つて行つた。試験条件は下記のとおりであつた。
初期荷重;鋼種I……38,510Kgf 鋼種II……44,590Kgf温度;20±1℃ 第5図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種Iの,曲線IIは鋼種IIのレラクセーシヨン線である。
また、上記確性試験(1),(2)および(3)の試験結果を別紙第2票にまとめて示す。第2表には、本発明方法に従つた製品の機械的性質をJIS規格のそれとの比較の便を考えてJIS G3109のSBPD95/110,SBPD110/125規格値を並記した。
(4)長時間レラクセーシヨン試験:日本土木学会基準「PC鋼棒の長時間レラクセーシヨン試験方法(案)」に従つて行つた。試験条件は下記のとおりであつた。
初期荷重;鋼種I……39,020Kgf 鋼種II……44,340Kgf温度;20±1℃ 第6図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種IIの,曲線IIは鋼種IIの長時間レラクセーシヨン線である。
(5)遅れ破壊試験:NH SCNの20%溶液を50℃に維持し、その中に試験片を浸漬して下記に示す一定の荷重を負荷し、試験片が破断するまでの時間によつて耐遅れ破壊性能を評価した。検体数は鋼種I,鋼種IIそれぞれ3であつた。
試験荷重;鋼種I……45,640Kgf 鋼種II……52,010Kgf上記試験荷重はそれぞれ引張強さの80%に相当する。
尚、試験は200時間を限度とし、それ以後の試験を打ち切つた。
第3表にこれらの試験結果を示す。
上記各確性試験の結果、本発明方法に従つて製造された太径異形鋼棒はJIS規格値を十分満足し、特に伸びおよびレラクセーシヨン特性において規格値を大幅に上回り、コンプレツシングを含むプレストレストコンクリート用鋼棒として極めて好ましい性質を備えていることが明確に認められた。
(発明の作用)
本発明は、熱間圧延により形成される太径異形鋼棒にコンプレツシングをも含むプレストレストコンクリート用として好ましい性質と直線性とを付与する作用がある。
(発明の効果)
本発明によれば、少なくとも焼入れ可能な程度の低炭素含有量の鋼材料を使用し、熱間圧延して得られる太径異形鋼棒を連続的,かつ所定条件下で熱処理し、プレストレスコンクリート用鋼棒として規格に適合する機械的性質を十分に満足する如く高強度化するので、従来のストレツチング,ブルーイングによる場合に存した煩雑さから開放され、しかも生産された製品は直線性に優れ、かつコンプレツシング・プレストレスコンクリート用鋼棒としても好適であるので、甚大な効果を■すとして賞用される。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)は本発明方法が適用される太径異形鋼棒の正面図およびX−X線断面図、第1図(b)は本発明方法の工程の一部である熱処理工程ラインの正面図、第2図(a)は実施例冷却ジヤケツトの正面断面図、第2図(b)は冷却ジヤケツトに配設される一実施例ガイドチツプの正面断面図、第3図は本発明を実施して得た製品の確性試験結果を示す荷重−伸び関係線図,第4図は同じく確性試験結果を示す荷重−縮み関係線図,第5図は同じく確性試験結果を示すレラクセーシヨン線図、第6図R>図は同じく確性試験結果を示す長時間レラクセーシヨン線図、第7図は従来法を示すブロック図である。
(産業上の利用分野)
本発明は、熱間圧延によつて周面に不連続のねじ山を形成する,例えば呼び名25〜32mm等の太径異形鋼棒を高強度化して、プレストレストコンクリート用として使用するための、高強度太径異形鋼棒の製造方法に関する。
(従来の技術)
従来、この種の高強度太径異形鋼棒は、C含有量が0.65〜0.85重量%と比較的高い高材料を、第7図に示す如く、熱間圧延1により周面に不連続のねじ山が形成された太径異形鋼棒とし、次いで当該鋼棒をストレツチング2して加工硬化させ、さらにブルーイング3して弾性限,伸び,レラクセーシヨン値等を回復させる工程に付する製造方法により、プレストレストコンクリート用鋼棒としてJIS規格に適合する機械的性質を付与するようにしていた。
(従来技術に存する問題点)
従来法は、加工硬化を前提とした製造方法であるので、素材鋼のC含有量を比較的高くし、かつストレツチングにおける加工度との兼ね合いで厳密に量定することが必須とされ、量定と加工度とが不適切であると所定の強度に不足をきたす虞があつた。
また、プレストレストコンクリート用として使用するためには、ストレツチングの後工程にブルーイングが当然のこととして要求されるところとされ、製造工程が複雑であつた。
さらに、たとえ本発明の成分の如き比較的低炭素量の鋼材料を、通常の加熱,冷却手段で熱処理して強度を付与しても、十分な直線性が得られず、プレストレストコンクリート用としては適さない。
従来法は上述製造工程上の問題点を抱えている一方、他方では製品使途についての問題点が指摘されている。即ち、極近時PC鋼棒を圧縮して用いるコンプレツシング・プレストレストコンクリート工法が注目されはじめたが、当該工法に使用するPC鋼棒として、ストレツチング,ブルーイングした鋼棒がバウシンガー効果により圧縮に対して降状強度が著しく低下し、不向きであるとされる点である。
(発明の目的)
本発明は、高強度太径異形鋼棒を製造する場合の従来製造方法,さらには従来方法により製造された製品に存する上述した問題点を解消するためになされたもので、プレストレスコンクリート用鋼棒規格に適合する機械的性質を具え、しかも直線性に優れ、かつコンプレツシング・プレストレストコンクリート用鋼棒として好適な高強度太径異形鋼棒の製造方法を提供することを目的とする。
(発明の構成)
本発明の構成は、(1)熱間圧延によつて周面に不連続のねじ山を形成する太径異形鋼棒を高強度化する場合において、(2)微量成分として重量%でC;0.6以下、Si;0.15〜2.00,Mn;0.6〜2.00および不可避元素を含有する鋼材料または必要に応じて上記各成分にさらにCr;0.6以下が添加される鋼材料を使用し、(3)熱間圧延した後,定尺に切断された黒皮付き鋼棒を連続送りしつつ,当該鋼棒の直径に応じた適正周波数・出力からなる誘導加熱手段を用いた全断面急速加熱と、鋼棒の山径よりわずか大きい内径のガイドチップが芯出しされて複数配列された中を通過することによる拘束状態下での急冷とによる焼入れおよび焼戻しを施すことを特徴とする高強度太径異形鋼棒の製造方法にある。
換言すれば、本発明は熱間圧延される鋼材料として、少なくとも重量比%でC;0.6以下を含有する低炭素鋼材料の使用を基本とし、熱間圧延により得られた太径異形鋼棒を、従来法の如くストレツチングおよびブルーイング工程によらず、鋼棒を連続送りしつつ誘導加熱手段を用いた全断面急速加熱と拘束状態下での急冷とによる焼入れおよび焼戻し工程に付して高強度化するにある。
上記構成の(2)において、C量を0.6%以下としたのは、本発明の高強度化工程が加工硬化処理に依拠しないからであり、また後記Mn量との兼ね合いで焼入れ性が確保されれば十分であるからである。
また、Siの添加は製品の靭性を損なわずに強度を確保するためで、0.15%未満では所期の効果が期待されず、2.00%を超えると靭性が阻害される。而して、0.15%以上,2.00%以下の範囲内でのSi添加により、PC鋼材としてのリラクセーシヨン特性,耐遅れ破壊特性の改善が期待できる。
MnはC量との和により焼入れ工程での焼入れ性を確保するためで、好ましくは1.0%前後とし、0.6%未満ではその効果が少なく、2.00%を超えると焼割れをおこす虞が増大するので、上・下限を上記とした。
Crの添加は焼入れ性と焼戻し抵抗性を確保するためで、上記C量およびMn量との関係から必要に応じて添加され、0.6%を超えると焼割れをおこす虞が増大する。
以上の微量成分元素を含む鋼材料を使用し、熱間圧延により周面に不連続のねじ山を形成した直線状の第1図(a)に示されるような太径異形鋼線を得、これを定尺に切断して鋼棒とする。
得られた鋼棒は黒皮付きのまま第1図(b)に示される熱処理工程に付される。図において、Lは熱処理ライン,C1およびC2はそれぞれ焼入れ加熱用および焼戻し加熱用コイル,J1およびJ2はそれぞれ冷却ジヤケツトである。鋼棒Wは順次熱処理ラインL上の図示左方側さら供給され、右方側へと連続移動する間に、焼入れ加熱用コイルC1により所定焼入れ温度まで全断面急速加熱され、次いで冷却ジヤケツトJ1から噴射される冷却流体により急冷・焼入れされ、さらに前進して焼戻し加熱用コイルC2を通過する間に所定焼戻し温度まで全断面急速加熱され、冷却ジヤケツトJ2により冷却を施され、熱処理工程を完了する。
而して、上記冷却ジヤケツトJ1およびJ2による被加熱鋼棒Wの冷却は、拘束状態下でおこなわれる。連続走行中に異形の被加熱鋼棒Wを拘束しつつ冷却する手段として、例えば第2図(a)および(b)として示す冷却ジヤケツトJが使用される。
図において、11は冷却流体噴射孔sが多数孔設されたコーン111を具えた冷却流体噴射室、12は流体排出口121を具えた流体排出室であり、冷却ジヤケツトJは冷却流体噴射室11と流体排出室12とを出側を除き交互に複数配置してなる。而して、コーン111の先端部はカツトされて鋼棒通路を形成し、当該通路の周壁に13として示すリング状のガイドチツプが固着されている。ガイドチツプ13は,被処理鋼棒Wが辛うじて通過可能な如く,最小内径dを被処理鋼棒Wの山径より僅少大に設定されている。また、複数のガイドチツプ13は全て走行ラインLに対して芯出し配置されている。従つて、冷却ジヤケツトJを通過する鋼棒Wは複数のガイドチツプ13により周方向から拘束を受けつつ冷却されることとなり、直線性が保証される。
上記熱処理工程では、鋼棒W周面の特殊形状および当該鋼棒Wの直径から、鋼棒Wのねじ山を含む全断面がそれぞれ所定焼入れ温度および焼戻温度に均一加熱されるよう、焼入れ加熱用コイルC1と焼戻し加熱用コイルC2とに給電する電源の周波数は選択され、それぞれ所定の出力とされなければならない。本発明者の行つた実験結果によれば、周波数および出力の選択が適切であれば、周面が特殊形状でも鋼棒W全断面を均一加熱可能であることが実証されている。
(実施例)
本発明高強度太径異形鋼棒の製造方法による実施例を以下に開示する。
☆鋼材料の微量化学成分:下記第1表に示す。
☆熱間圧延:上記化学成分を含有する2種の素材鋼をそれぞれ熱間圧延し、呼び名25mmの周面に不連続のねじ山が形成された直線状の第1図(a)に示す太径異形鋼線を得、これを所定定尺に切断して鋼棒とした。
☆熱処理:上記鋼棒を第1図(b)に示される熱処理ラインを用いて全断面に焼入れ,焼戻し処理を施し、鋼種Iについては引張強さで110Kgf/mm2クラス,鋼種IIについては引張強さで125Kgf/mm2クラスの製品とした。
鋼種IおよびIIそれぞれについての加熱条件は下記のとおりであつた。
尚、別記しない条件は両鋼種に共通である。
○焼入れ加熱時使用周波数;8KHz出力;400KW加熱温度;
鋼種I……940℃鋼種II……980℃○焼戻し加熱時使用周波数;8KHz出力;200KW加熱温度;
鋼種I……650℃鋼種II……660℃尚、冷却は水冷却である。
(確性試験)
本発明に係る製品がプレストレストコンクリート用鋼棒としてJIS規格G3109のSBPDに規定される機械的性質(JIS G 3109に規定されるSBPDの呼び名は最大13mmφまでであるが、当該規定のそれ以上の呼び名のものにも準用する場合)を満足しているや否やを確認するため、得られた製品それぞれから試験片を作製し、これを下記の試験に付した。
(1)引張試験:JIS Z 2241の規定に従つて行つた。
第3図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種Iの,曲線IIは鋼種IIの荷重−伸び簡関係線である。
(2)圧縮試験:JISには該当試験規格が見当たらないので、ASTM E9に定められた方法に準拠して行つた。
第4図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種Iの,曲線IIは鋼線IIの荷重−縮み関係線である。
(3)レラクセーシヨン試験:JIS G3109に定められた方法に従つて行つた。試験条件は下記のとおりであつた。
初期荷重;鋼種I……38,510Kgf 鋼種II……44,590Kgf温度;20±1℃ 第5図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種Iの,曲線IIは鋼種IIのレラクセーシヨン線である。
また、上記確性試験(1),(2)および(3)の試験結果を別紙第2票にまとめて示す。第2表には、本発明方法に従つた製品の機械的性質をJIS規格のそれとの比較の便を考えてJIS G3109のSBPD95/110,SBPD110/125規格値を並記した。
(4)長時間レラクセーシヨン試験:日本土木学会基準「PC鋼棒の長時間レラクセーシヨン試験方法(案)」に従つて行つた。試験条件は下記のとおりであつた。
初期荷重;鋼種I……39,020Kgf 鋼種II……44,340Kgf温度;20±1℃ 第6図に試験結果を示す。図において、曲線Iは鋼種IIの,曲線IIは鋼種IIの長時間レラクセーシヨン線である。
(5)遅れ破壊試験:NH SCNの20%溶液を50℃に維持し、その中に試験片を浸漬して下記に示す一定の荷重を負荷し、試験片が破断するまでの時間によつて耐遅れ破壊性能を評価した。検体数は鋼種I,鋼種IIそれぞれ3であつた。
試験荷重;鋼種I……45,640Kgf 鋼種II……52,010Kgf上記試験荷重はそれぞれ引張強さの80%に相当する。
尚、試験は200時間を限度とし、それ以後の試験を打ち切つた。
第3表にこれらの試験結果を示す。
上記各確性試験の結果、本発明方法に従つて製造された太径異形鋼棒はJIS規格値を十分満足し、特に伸びおよびレラクセーシヨン特性において規格値を大幅に上回り、コンプレツシングを含むプレストレストコンクリート用鋼棒として極めて好ましい性質を備えていることが明確に認められた。
(発明の作用)
本発明は、熱間圧延により形成される太径異形鋼棒にコンプレツシングをも含むプレストレストコンクリート用として好ましい性質と直線性とを付与する作用がある。
(発明の効果)
本発明によれば、少なくとも焼入れ可能な程度の低炭素含有量の鋼材料を使用し、熱間圧延して得られる太径異形鋼棒を連続的,かつ所定条件下で熱処理し、プレストレスコンクリート用鋼棒として規格に適合する機械的性質を十分に満足する如く高強度化するので、従来のストレツチング,ブルーイングによる場合に存した煩雑さから開放され、しかも生産された製品は直線性に優れ、かつコンプレツシング・プレストレスコンクリート用鋼棒としても好適であるので、甚大な効果を
【図面の簡単な説明】
第1図(a)は本発明方法が適用される太径異形鋼棒の正面図およびX−X線断面図、第1図(b)は本発明方法の工程の一部である熱処理工程ラインの正面図、第2図(a)は実施例冷却ジヤケツトの正面断面図、第2図(b)は冷却ジヤケツトに配設される一実施例ガイドチツプの正面断面図、第3図は本発明を実施して得た製品の確性試験結果を示す荷重−伸び関係線図,第4図は同じく確性試験結果を示す荷重−縮み関係線図,第5図は同じく確性試験結果を示すレラクセーシヨン線図、第6図R>図は同じく確性試験結果を示す長時間レラクセーシヨン線図、第7図は従来法を示すブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱間圧延によって周面に不連続のねじ山を形成する太径異形鋼棒を高強度化する場合において、微量成分として重量比%でC;0.6以下、Si;0.15〜2.00、Mn;0.6〜2.00および不可避元素を含有する鋼材料または必要に応じて上記成分にさらにCr;0.6以下が添加される鋼材料を使用し、熱間圧延した後、定尺に切断された黒皮付き鋼棒を連続送りしつつ、当該鋼棒の直径に応じた適正周波数・出力からなる誘導加熱手段を用いた全断面急速加熱と、鋼棒の山径よりわずか大きい内径のガイドチップが芯出しされて複数配列された中を通過することによる拘束状態下での急冷とによる焼入れおよび焼戻しを施すことを特徴とする高強度太径異形鋼棒の製造方法。
【請求項1】熱間圧延によって周面に不連続のねじ山を形成する太径異形鋼棒を高強度化する場合において、微量成分として重量比%でC;0.6以下、Si;0.15〜2.00、Mn;0.6〜2.00および不可避元素を含有する鋼材料または必要に応じて上記成分にさらにCr;0.6以下が添加される鋼材料を使用し、熱間圧延した後、定尺に切断された黒皮付き鋼棒を連続送りしつつ、当該鋼棒の直径に応じた適正周波数・出力からなる誘導加熱手段を用いた全断面急速加熱と、鋼棒の山径よりわずか大きい内径のガイドチップが芯出しされて複数配列された中を通過することによる拘束状態下での急冷とによる焼入れおよび焼戻しを施すことを特徴とする高強度太径異形鋼棒の製造方法。
【第1図(a)】
【第1図(b)】
【第2図(a)】
【第2図(b)】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【第1図(b)】
【第2図(a)】
【第2図(b)】
【第3図】
【第4図】
【第5図】
【第6図】
【第7図】
【特許番号】第2565687号
【登録日】平成8年(1996)10月3日
【発行日】平成8年(1996)12月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−218136
【出願日】昭和61年(1986)9月18日
【公開番号】特開昭63−76816
【公開日】昭和63年(1988)4月7日
【出願人】(999999999)高周波熱錬株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭58−157921(JP,A)
【文献】特開 昭59−185723(JP,A)
【文献】特開 昭48−84723(JP,A)
【登録日】平成8年(1996)10月3日
【発行日】平成8年(1996)12月18日
【国際特許分類】
【出願日】昭和61年(1986)9月18日
【公開番号】特開昭63−76816
【公開日】昭和63年(1988)4月7日
【出願人】(999999999)高周波熱錬株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭58−157921(JP,A)
【文献】特開 昭59−185723(JP,A)
【文献】特開 昭48−84723(JP,A)
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