説明

高感度センサケーブル

【課題】従来のセンサケーブルは、圧電体の多層化等による高出力化をはかっており、ケーブル外径や柔軟性や布設性等の課題があった。また、高価な圧電体を多量に使用するため、ケーブル価格が高価格で特殊な用途でしか使用できなかった。
【解決手段】代表例を挙げると、中心導体上に圧電体を設け、更にその上に外部導体を巻き付け、その上に、外被を形成したセンサケーブルにおいて、中心導体ー圧電体間と圧電体ー外部導体間の両方またはいずれか一方に接着層を設け、導体と圧電体間を接着した構造にすることにより、中心導体と圧電体との密着性が高まり、外力により発生した電気エネルギーの導体への移動効率を高めることで、出力の向上をはかると同時に圧電体のずれがなくなり、中心導体と外部導体の接触を防止する高感度センサケーブルで、圧電体の薄膜化が可能であり、低価格化が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてセキュリティ用センサ、工業用センサ等に使用され、防犯用ドアセンサ、防犯用窓開閉・破壊センサ、フェンス上に配置することによる侵入検知システム、工業用装置の故障診断用センサ、大型建造物の振動検出・振動制御用センサ等の分野に最適で、特に、ケーブル形状であり、長距離の範囲にわたる検知、ロボット等の可動部への適用による故障検知等において、容易に障害を検出することができるだけでなく、圧電体の薄膜化が可能になるので、低価格化が可能な高感度センサケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブルは、図2に示すように、同軸ケーブルの中心導体と外部導体間に圧電体(圧力が印加されると電圧を発生する材料で、ポリ弗化ビニリデン(PVDF)の高分子圧電体やチタン酸鉛やジルコン酸鉛等のセラミックスからなる圧電性セラミックス等をいう。)を入れた構造であり、高い電圧出力を得るためには圧電体を複数重ねて多層にする必要があるため、ケーブルの柔軟性や布設性に問題があるだけでなく、どうしても外径が太くなってしまうという課題があった。また、圧電体を固定する方法としては、外部導体を2重化する等の方法が取られていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−230869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来は、ケーブルの感度向上のため、圧電体を導体上に重ね巻きして多層にするか外部導体を2重化する等機械的な締め付けによる方法を採用しているため、ケーブルの柔軟性が劣る、布設性が悪い、出力電圧が低い等の問題があった。また、導体に撚り線導体を使用するため、同一箇所への連続的な衝撃印加の場合、再現性の面において信頼性に劣るという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これらの問題を解決する為に、鋭意検討した結果、
第1に、中心導体上に圧電体を設け、更にその上に外部導体を巻き付け、その上に、外被を形成したセンサケーブルにおいて、中心導体ー圧電体間と圧電体ー外部導体間の両方またはいずれか一方に接着層を設け、導体と圧電体間を接着した構造にすることにより、中心導体と圧電体との密着性が高まり、外力により発生した電気エネルギーの導体への移動効率を高めることで、出力の向上をはかると同時に圧電体のずれがなくなり、中心導体と外部導体の接触を防止する構造で、
第2に、第1の中心導体に高強度・高剛性金属体を使用して高感度と高信頼性を有する高感度センサケーブルにすることにより、長手方向に対する引っ張り強さと曲げた場合のバネ性が高まると同時に、外部からの外力による高強度・高剛性金属体(導体)の変形量をより少なくし、圧電体に局所的に集中させて印加させ、圧電体の変形量(圧縮量)をより増大させることで、出力の向上をはかった構造で、
第3に、テープ状圧電体を2枚のフラットテープ状導体で挟み込み、その間に接着層を設けて接着し、その外周に外被を形成してフラット化した高感度センサケーブルにすることにより、出力の均一性をはかると同時に第1、第2導体のずれがなくなり、第1、第2導体の接触を防止する構造で、
第4に、第3実施例において、2枚のフラットテープ状導体の代わりに、丸形導体を横に並べたテープ状導体や凹凸形状を有する導体を使用してフラット化した高感度センサケーブルにすることにより、導体と圧電体との密着性を高めると同時に、圧電体に局所的に集中させて印加させ、圧電体の変形量(圧縮量)をより増大させることで、出力の向上と均一性をはかると同時に第1、第2導体のずれがなくなり、第1、第2導体の接触を防止する構造で、
第5に、請求項1から請求項4の外被に、外被の外側または内側に感圧突起を均一に配置させた高感度センサケーブルにすることにより、外部から印加される外力を圧電体に局所的に集中させて印加させ、圧電体の変形量(圧縮量)をより増大させることで、出力の向上をはかった高感度センサケーブルである。
【発明の効果】
【0006】
以上説明のように、本発明の圧電体を使用した高感度センサケーブルによれば、
1.圧電体の薄膜化が可能になり、本発明のケーブル価格は、従来ケーブルの約1/4の低価格にすることが可能になる。
2.従来の圧電センサケーブルに対して、より高い電圧出力が得られるため、高感度センサケーブルとして使用することが可能である。
3.導体と圧電材料を接着するため、ケーブルの長さ方向に均一な構造とすることができ、ケーブルの場所によるバラツキが抑えられ、出力から位置特定等を行う場合に高精度な測定が可能となる。
4.従来の丸型ケーブルに対してフラット形状のケーブルが可能であり、窓、ドア等の隙間への設置、ガラス面等の平面への張り付けが可能で、設置場所を選ばない。
5.高強度・高剛性金属体により、長距離の配線時においても自重による断線等が起こりにくく、大規模建造物等への一括布設が可能である。
という優れた効果があるので、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の高感度センサケーブルの実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0008】
始めに、本発明の第1実施例の高感度センサケーブル1Aは、図1(イ)に示すように、中心導体2A上に圧電体4を設け、更にその上に外部導体2Bを巻き付け、その上に、外被5Aを形成したセンサケーブルにおいて、中心導体2Aー圧電体4間と圧電体4ー外部導体2B間の両方またはいずれか一方に接着層を設け、導体と圧電体間を接着した高感度センサケーブルである。ここで、圧電体は、巻き付けた場合を図示しているが、他の縦添えや押し出しによる方法でも構わない。また、中心導体(第1導体)と外部導体(第2導体)は、代表的な軟銅線を使用した。尚、本発明の外部導体は、軟銅線の編組を使用した。外部導体に編組を使用した場合、圧電体と外部導体の間に接着層を設けても、接着の効果はあまりみられなかったが、接着層を設けることにより、大きな効果を発揮する場合には、適宜接着層を設けて接着すれば良い。また、接着層3A、3Bは、導体と圧電体層の密着性を高めるために設け、具体的には、接着性樹脂を使用した。接着性樹脂の代表例としては、ウレタン系、アクリル系、フェノール系接着剤が挙げられる。次に、圧電体層4には、代表的なPVDF(ポリ弗化ビニリデン)を使用したが圧電セラミックスのPZT(ジルコンチタン酸鉛)でも構わない。外被としては、PVCやPE等を使用した。このような構造であるので、図1(イ)に示すように、中心導体と圧電体との密着性が高まり、外力により発生した電気エネルギーの導体への移動効率を高めることで、出力の向上をはかると同時に圧電体のずれがなくなり、中心導体と外部導体の接触を防止することが可能になる。すなわち、中心導体と外部導体の変形量は、小さいのに対して、圧電体の変形量(圧縮量)を増大させることで、大きな圧電効果が得られる。また、本発明の第1〜第5実施例の高感度センサケーブルの構成体の代表例一覧表を下記の表1に示す。
【0009】

【表1】

【実施例2】
【0010】
本発明の第2実施例の高感度センサケーブルは、図面に示さないが、第1実施例の中心導体に高強度・高剛性金属体を使用して高感度と高信頼性を有する構造である。高強度・高剛性金属体の具体的例としては、金属合金等も含まれ、黄銅を使用した。このように、中心導体2Aに黄銅等の高強度・高剛性金属体を使用することにより、長手方向に対する引っ張り強さと曲げた場合のバネ性が高まると同時に、外部からの外力による高強度・高剛性金属体(導体)の変形量をより少なくし、圧電体に局所的に集中させて印加させ、圧電体の変形量(圧縮量)をより増大させることで、出力の向上をはかった構造である。外部からの外力による中心導体の変形量を少なくし、圧電体の変形量(圧縮量)増大することで、ケーブル端末部からの出力電圧を最大化することが可能になる。
【実施例3】
【0011】
本発明の第3実施例の高感度センサケーブル1Bは、図1(ロ)に示すように、テープ状圧電体4を2枚のフラットテープ状導体2C、2Dで挟み込み、その間に接着層3を設けて接着し、その外周に外被5Bを形成してフラット化した高感度センサケーブルである。これにより、出力の均一性をはかると同時に第1導体と第2導体のずれがなくなり、第1、第2導体の接触を防止することが可能になる。
【実施例4】
【0012】
本発明の第4実施例の高感度センサケーブル1Cは、図1(ハ)に示すように、第3実施例において、2枚のフラットテープ状導体の代わりに、丸形導体を横に並べたテープ状導体やエンボス加工等を施して凹凸形状を有する導体を使用してフラット化した高感度センサケーブル構造であるので、導体と圧電体との密着性を高めると同時に、圧電体に局所的に集中させて印加させ、圧電体の変形量(圧縮量)をより増大させることで、出力の向上と均一性をはかると同時に第1導体と第2導体のずれがなくなり、第1、第2導体の接触を防止する高感度センサケーブル1Cである。
【実施例5】
【0013】
本発明の第5実施例の高感度センサケーブル1Dは、代表例として、第1実施例の外被に、外被の外側に感圧突起を均一に配置させた場合の高感度センサケーブルを図1(ハ)に示す。このような構造にすることにより、外部から印加される外力を圧電体に局所的に集中させて印加させ、圧電体の変形量(圧縮量)をより増大させて最大にすることで、出力の向上をはかることが可能になる。ここで、感圧突起6を形成する方法としては、一括押出しによる方法で、外被形成時に同時に突起形状を形成する方法でも良いが、外被上に、別途、感圧突起を配置する方法でも構わない。また、図面では、感圧突起6を外被5Aの外側に施した場合を例にしているが、変形例として内側に施した場合でも構わない。突起物の形状や数量は、ケーブルの外径や用途等により適宜設ければ良い。ここで、感圧突起は、具体的には、プラスチックのPPやPVC等を使用した。
【産業上の利用可能性】
【0014】
これまで、本発明の高感度センサケーブルは、導体上に接着性樹脂を塗布、巻き付け、縦添えする方法と組み合わせによる例を示しているが、第1実施例から第5実施例に示した構造の組み合わせによる場合も設計上本発明の範囲内であることはいうまでもない。尚、これ以外の各種の変形例を含むものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(イ)は、本発明の第1実施例の高感度センサケーブル1Aの側面図と断面図である。(ロ)は、本発明の第3実施例の高感度センサケーブル1Bの斜視図である。(ハ)は、本発明の第4実施例の高感度センサケーブル1Cの斜視図である。(ハ)は、本発明の第5実施例の高感度センサケーブル1Dの断面図である。
【図2】従来のセンサケーブル1′の断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1A、1B、1C、1D
本発明の高感度センサケーブル
2A 中心導体
2B 外部導体
2C 第1導体
2D 第2導体
2E 第1導体
2F 第2導体
3A 接着層
3B 接着層
4 圧電体
5A 外 被
5B 外 被
5C 外 被
6 感圧突起
1′ 従来のセンサケーブル
2A′中心導体
2B′第1外部導体
2C′第2外部導体
4A′第1圧電体
4B′第2圧電体
5 ′ 外 被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体上に圧電体を設け、更にその上に外部導体を巻き付け、その上に、外被を形成したセンサケーブルにおいて、中心導体ー圧電体間と圧電体ー外部導体間の両方またはいずれか一方に接着層を設け、導体と圧電体間を接着したことを特徴とする高感度センサケーブル。
【請求項2】
請求項1の中心導体に高強度・高剛性金属体を使用して高感度と高信頼性を有することを特徴とする高感度センサケーブル。
【請求項3】
テープ状圧電体を2枚のフラットテープ状導体で挟み込み、その間に接着層を設けて接着し、その外周に外被を形成してフラット化したことを特徴とする高感度センサケーブル。
【請求項4】
請求項3において、2枚のフラットテープ状導体の代わりに、丸形導体を横に並べたテープ状導体や凹凸形状を有する導体を使用してフラット化したことを特徴とする高感度センサケーブル。
【請求項5】
請求項1から請求項4の外被に、外被の外側または内側に感圧突起を均一に配置させたことを特徴とする高感度センサケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−98061(P2006−98061A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280848(P2004−280848)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(390002598)沖電線株式会社 (45)