説明

高感度酵素免疫測定方法およびこの方法を利用するタンパク質の超高感度測定法

【課題】酵素サイクリング法に用いる酵素中に混在するTIM活性を特異的かつ効率的に除去する方法を開発して、感度をより高めた酵素免疫測定法(ELISA法)を提供する。
【解決手段】抗体酵素複合体の酵素としてトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いる酵素免疫測定方法。TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法を用いて行われる。少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品は、この酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度酵素免疫測定方法およびこの酵素免疫測定方法を利用するタンパク質の超高感度測定法に関する。特に本発明は、酵素免疫測定方法において、酵素サイクリング法を用いることで、タンパク質の超高感度測定を可能にする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の高感度測定法としてラジオイムノアッセイ法が技術的に確立されているが、検出装置の感度を上げる以外の方法では、現状(10-16moles程度)以上の高感度化は技術的に不可能である。また、特別な施設が必要であり短寿命の核種を使用すれば試薬の使用期限が極端に短くなる上、測定感度も急激に下がってしまう、長寿命の核種を使用すれば、放射性廃棄物という大きな問題を抱えることになるという放射性物質特有のジレンマをかかえており、測定法に関する研究開発も改良もほとんど行われていないのが現状である。
【0003】
その他の高感度測定法として酵素免疫測定法(ELISA法)がある。酵素免疫測定法は開発当初の比色法(10-13moles)から蛍光法、発光法へと高感度化(10-15moles)が進められ、専用測定装置も開発されている。しかし、測定操作が簡便になっただけで感度的には限界がきている。(非特許文献1)
【非特許文献1】「超高感度酵素免疫測定法」(学会出版センター・1993年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、感度をより高めた酵素免疫測定法(ELISA法)を提供することである。具体的には感度を10-15moles 以上に高めた酵素免疫測定法(ELISA法)を提供することである。
【0005】
タンパク質を、酵素免疫測定法を用いて、より高感度に測定するには、酵素免疫測定法の標識酵素によって生成する生成物を増幅することが考えられる。また、ある種の化合物を増幅する方法として、種々の酵素サイクリング法が知られている。そこで、本発明者らは、酵素免疫測定法を用いたタンパク質の超高感度測定法を提供すべく種々検討をした。具体的には、酵素免疫測定法の標識酵素による生成物を、酵素サイクリング法により増幅して、超高感度化を企画した。
【0006】
そして、酵素免疫測定法の標識酵素として、トリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)を選択し、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量の感度を、酵素サイクリング法を用いて高めることを検討した。酵素サイクリング法として、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法を用いた。TIMは、ターンオバー数が極めて高く標識酵素として最適であり、その基質であるグリセルアルデヒド 3-リン酸から生成するジヒドロキシアセトン 3-リン酸(DAP)を上記酵素サイクリング法で増幅定量する方法を考案した。
【0007】
ところが、予想に反して、上記酵素サイクリング法を組み合わせても、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量の感度を思うように挙げることはできなかった。その原因をさらに追求したところ、酵素サイクリング法に用いる酵素、基質、試薬、緩衝液等の反応用の資材に混在するTIMがブランク反応を起こし、その結果、酵素サイクリングとの組合せにより検出シグナルが増幅されても同時にブランク反応も増幅されるためS/N比が改善されることは無く、結果的にタンパク質を超高感度に測定することはできないことが判明した。
【0008】
そこで、反応用の資材に含まれるTIMを除去してタンパク質の超高感度測定を行うことをさらに検討した。ところが、酵素以外の反応用の資材である基質、試薬、緩衝液中に存在するTIMは加熱処理、ゲルろ過等により容易に取り除くことが出来たが、酵素の安定性を損なわずに酵素中のTIM活性を除去することは非常に困難であった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記酵素サイクリング法に用いる酵素中に混在するTIM活性を特異的かつ効率的に除去する方法を開発して、感度をより高めた酵素免疫測定法(ELISA法)を提供することである。
【0010】
本発明者らが種々検討した結果、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトのような3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、酵素サイクリング法に用いる酵素類に混在するTIMを選択的に失活させる自殺基質であることを見いだして、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1] 抗体酵素複合体の酵素としてトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いる酵素免疫測定方法であって、
TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法を用いて行われ、かつ
少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品は、この酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである上記方法。
[2] 前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGAPDHを含む酵素製品および/またはLDHを含む酵素製品は、これらの酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである[1]に記載の方法。
[3] TIMに対する自殺基質が、3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトである[1]または[2]に記載の方法。
[4] 3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である[3]に記載の方法。
[5] GPOを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記GPOを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] GAPDHを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記GAPDHを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む[2]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[7] LDHを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記LDHを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む[2]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[8] 酵素分画と未反応の自殺基質との分離を、カラムを用いて行う[5]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 生成した過酸化水素の定量は、パーオキシダーゼ(POD)を用いる発色法により行われる[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11] タンパク質の分析に用いられる[1]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 抗体酵素複合体の抗体が、被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体である[11]に記載の方法。
[13] 被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体を表面に固着させた基板を用いる[12]に記載の方法。
[14] 3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトを有効成分として含むトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)に対する自殺基質であって、
前記自殺基質は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いて、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる、前記GAPDHを含む酵素製品、GPOを含む酵素製品およびLDHを含む酵素製品の少なくとも1つの酵素製品に混在するTIMを不活性化するために用いられる、前記自殺基質。
[15] TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物である[14]に記載の自殺基質。
[16] 3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である[14]または[15]に記載の自殺基質。
[17] GPOを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品。
[18] GAPDHを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品。
[19] LDHを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品。
[20] TIMに対する自殺基質が、3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトである[17]〜[19]のいずれかに記載の酵素製品。
[21] 3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である[20]に記載の酵素製品。
[22] グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いて、トリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる、[17]〜[21]のいずれかに記載の酵素製品。
[23] TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物である[22]に記載の酵素製品。
[24] 酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる[22]または[23]に記載の方法。
[25] [17]に記載のGPOを含む酵素製品、[18]に記載のGAPDHを含む酵素製品、および[19]に記載のLDHを含む酵素製品を含む酵素サイクリング法用キット。
[26] 酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHをさらに含む[25]に記載のキット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、感度を10-15moles 以上に高めた酵素免疫測定法(ELISA法)を提供することができ、タンパク質の超高感度測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[酵素免疫測定方法]
本発明は、抗体酵素複合体の酵素としてトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いる酵素免疫測定方法である。そして、この方法では、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法を用いて行われる。さらに、少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品は、この酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである。
【0014】
本発明の酵素免疫測定方法は、抗体酵素複合体の酵素としてトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いること以外は、通常の酵素免疫測定と同様に実施することができる。例えば、被検体に特異的に結合する抗体を表面に固着させた基板、例えば、プレートウエルを用いることができる。
【0015】
標識酵素がTIMである抗体酵素複合体は、常法(石川栄治ら:酵素免疫測定法、第3版、医学書院)により調製できる。例えば、実施例に記載のように、マレイミド化したTIMと標識される抗体を混合し、所定時間反応させることで、調製することができる。
【0016】
抗体酵素複合体を構成する抗体は、本発明の酵素免疫測定方法により測定されるべき被検体に特異的に結合する抗体から適宜選択することができる。例えば、本発明の酵素免疫測定方法は、タンパク質の分析に用いられるが、その場合、抗体酵素複合体の抗体は、被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体である。また、この場合、被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体を表面に固着させた基板を用いる。また、抗体酵素複合体を構成する抗体および基板に固着させる抗体は、抗体の断片であっても良い。本発明の酵素免疫測定方法における、被検体は、タンパク質に限定されず、通常の酵素免疫測定方法が測定対象とするタンパク質以外のすべての物質であることができる。
【0017】
本発明の酵素免疫測定方法では、上記酵素サイクリング法を用いる。この酵素サイクリング法の詳細を以下に示す。
【0018】
【化1】

【0019】
GAPDH:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ
GPO:グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ
LDH:ラクテートデヒドロゲナーゼ
TIM:トリオースイソメラーゼ
【0020】
抗体酵素複合体の標識酵素であるTIMによって、グリセルアルデヒド-3-リン酸からジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトが生成する。ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)によりグリセロール-3-リン酸に変換され、グリセロール-3-リン酸は、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)によりジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトに戻され、それと同時に過酸化水素を生成する。このサイクルにより、過酸化水素が蓄積し、この蓄積した過酸化水素を定量する。この時点での過酸化水素の蓄積反応は直線的でしかないが、標識酵素にトリオースホスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いることにより、GAPDHの基質であるDihydroxyacetone-3-phosphateをサイクリング反応系に継続的に追加することができ、その結果過酸化水素の蓄積反応は幾何級数的に増大する。尚、GAPDHの反応により消費(酸化)されたNADは、ラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてNADHに戻される(還元される)。このように、酵素サイクリング法には、基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる。
【0021】
過酸化水素を定量は、比色・発光等の検出系で測定することで実施できる。生成した過酸化水素の定量は、例えば、パーオキシダーゼ(POD)を用いる発色法により行われる。但し、この方法に限定する意図はない。
【0022】
本発明では、少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品として、酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものを用いる。自殺基質としては、3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトを挙げることができる。3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトは、具体的には、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質であることができる。これら3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトは公知化合物であり、例えば、Hartman, Biochemistry 1970, vol 9,No.8,1776-1782(1970)の方法を用いて合成することができる。以下に3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトの合成経路の例を示します。
【0023】
【化2】

【0024】
GPOを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記GPOを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む方法により行うことができる。
【0025】
より具体的には、GPOを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体、例えば、水または緩衝液(例えば、トリエタノールアミン緩衝液)中で、GPOを含む酵素製品100質量部に対して0.001〜10 質量部の自殺基質の割合で混合し、インキュベーションする。インキュベーションは、例えば、室温で0.25〜2.0時間行うことができる。自殺基質の使用割合およびインキュベーション時間等は、酵素製品に不純物として含まれるTIMの量を考慮して適宜決定できる。インキュベーション後、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離する。この分離には、Sephadex G-25等のカラムを用いた方法を適用できる。
【0026】
本発明の方法では、上記のように、TIMに対する自殺基質による不活性化を施したGPOを含む酵素製品も用いる。これは、GPOを含む酵素製品におけるTIMの混在量が多いためである。しかし、GPO以外の酵素サイクリング法に用いる酵素であるGAPDHおよびLDHにも、微量ではあるがTIMが含まれることがあり、そのため、GAPDHを含む酵素製品および/またはLDHを含む酵素製品は、これらの酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものであることが好ましい。GAPDHを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、GAPDHを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む方法で行うことができる。また、LDHを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、LDHを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む方法で行うことができる。自殺基質の使用割合およびインキュベーション時間等は、GPOを含む酵素製品の場合と同様に酵素製品に不純物として含まれるTIMの量を考慮して適宜決定できる。また、酵素分画と未反応の自殺基質との分離も、GPOを含む酵素製品の場合と同様に実施できる。
【0027】
[自殺基質]
本発明は、3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトを有効成分として含むトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)に対する自殺基質を包含する。この本発明の自殺基質は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いて、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる。酵素サイクリング法は、前記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した通りである。尚、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物である。
【0028】
本発明の自殺基質は、GAPDHを含む酵素製品、GPOを含む酵素製品およびLDHを含む酵素製品の少なくとも1つの酵素製品に混在するTIMを不活性化するために用いられる。本発明の自殺基質のTIM不活性への使用は、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明したTIM不活性の方法と同様の方法において行える。
【0029】
上記3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、具体的には、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質であることができる。3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトの合成は、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した方法により実施できる。
【0030】
[TIM不活性化酵素製品]
本発明は、GPOを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品を包含する。TIMに対する自殺基質による不活性化は、自殺基質の具体例を含め、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した方法により実施できる。TIMの不活性化の程度は、GPOの1単位に対して5×10-11単位以下、好ましくは5×10-13単位以下、より好ましくは5×10-15単位以下のTIM活性となるような程度であることが好ましい。
【0031】
本発明は、GAPDHを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品を包含する。TIMに対する自殺基質による不活性化は、自殺基質の具体例を含め、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した方法により実施できる。TIMの不活性化の程度は、GAPDHの1単位に対して5×10-11単位以下、好ましくは5×10-13単位以下、より好ましくは5×10-15単位以下のTIM活性となるような程度であることが好ましい。
【0032】
本発明は、LDHを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品を包含する。TIMに対する自殺基質による不活性化は、自殺基質の具体例を含め、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した方法により実施できる。TIMの不活性化の程度は、LDHの1単位に対して5×10-11単位以下、好ましくは5×10-13単位以下、より好ましくは5×10-15単位以下のTIM活性となるような程度であることが好ましい。
【0033】
上記TIM不活性化酵素製品(GPOを含む酵素製品、GAPDHを含む酵素製品、LDHを含む酵素製品)は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いて、トリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物であることができる。尚、酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる。
【0034】
[酵素サイクリング法用キット]
本発明は、上記TIM不活性化したGPOを含む酵素製品、TIM不活性化したGAPDHを含む酵素製品、およびTIM不活性化したLDHを含む酵素製品を含む酵素サイクリング法用キットを包含する。このキットは、酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHをさらに含むことができる。このキットは、酵素サイクリング法を用いる酵素免疫測定方法に利用できる。ここでの酵素サイクリング法および酵素免疫測定方法とは、上記本発明の酵素免疫測定方法についての説明で説明した方法と同様である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明は実施例によりさらに詳細に説明する。
【0036】
実施例1
[CAPによるTIM処理方法]
酵素(GAPDH:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、GPO:グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ、LDH:ラクテートデヒドロゲナーゼ)1gをCAP(3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト)10mMを含むPBS 5mlに溶解し、37℃で30分間加温する。混合液をSephadexG-25カラムにかけ酵素とCAPを分離する。
【0037】
【化3】

【0038】
[原料酵素中TIM活性の測定]
原料酵素中TIM活性の測定には、以下の反応試液、基質液および反応停止液を用いた。
【0039】
反応試液
トリエタノールアミン緩衝液(PH7.2)
GAPDH 120単位/ml
GPO 60単位/ml
LDH 50単位/ml
POD 15単位/ml
4-アミノアンチピリン 2mM
TOOS 1.5mM
乳酸 10mM
【0040】
基質液
Glyceraldehyde-3-phosphate 10mM
NAD 5mM
【0041】
反応停止液
ピルビン酸 100mM
【0042】
注)
GAPDH:グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ
GPO:グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ
LDH:ラクテートデヒドロゲナーゼ
POD:ペルオキシダーゼ
TOOS:N-Ethyl-N-(2-hydroxy-3-sulfopropyl)-3-methylaniline
【0043】
測定方法
反応試液0.9mlを37℃3分間加温し、続いて基質液0.1mlを加え10分後に反応停止液1.0mlを加える。555nmで吸光度を測定する。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
未処理のGAPDH、GPO、LDHはコンタミしているTIMによりサイクリング反応が進行して吸光度が上昇している(B,C,D)。酵素メーカーに特別に精製してもらったGPOを使用してもコンタミしているTIMは完全には除去されず、吸光度が上昇した(E)。しかし、CAP処理によりコンタミしているTIMを失活させた酵素の組合せでは吸光度が上昇していない(A)。
【0047】
参考例1
TIM標識抗体の作製
抗原に特異的反応性を有するマウス由来等のモノクローナル抗体を100mM酢酸緩衝液(pH4.2)に酸100mMリン酸緩衝1.0mg/mlの濃度で溶解した溶液1mlに3%濃度になるようにペプシンを添加し37℃で3時間加温した後4N-NaOHでpH7付近にpHを調整した。
この混合反応液をセファデックスG-200を充填したカラムを用いてゲル濾過し、F(ab')2を得た。
このF(ab')2フラクションを1mlに濃縮した後、22mM 2-メルカプトエタノール0.1mlを加え37℃で1時間加温する。この混合反応液をセファデックスG-200を充填したカラムを用いてゲル濾過し、F(ab')を得た。
トリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)100mgを10mM PBS(pH6.0)1mlに溶解し、N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide (EMCS)の20mMの濃度のジメチルホルムアミド溶液0.1mlを添加し、25℃の温度で30分間反応させた。次いで、この反応混合液をセファデックスG−25を充填したカラムを用い、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0) でゲル濾過を行ない、マレイミド化TIMと未反応EMCSとを分離した。
次に、F(ab')化モノクローナル抗体とマレイイミド化TIMとを混合し、4℃で一昼夜放置した後、セファデックスG-200を充填したカラムを用いてゲル濾過し、TIM標識モノクローナル抗体を得た。
【0048】
参考例2
不溶性担体固定化モノクローナル抗体の調製
抗原に特異的反応性を有するマウス由来等のモノクローナル抗体を10mMPBS(pH7.4)に1mg/mlの濃度で溶解した溶液を、平底マイクロプレート(ヌンク社)の各ウェルに0.1mlずつ加え、室温で1時間放置した後、PBSで洗浄してから、2%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液を0.3mlずつ加えて室温で2時間放置してブロッキング処理を実施してモノクローナル抗体固定化マイクロプレートを得た。
【0049】
実施例2 AFPの測定
測定対象(被検体)としてAFP(αフェトプロテイン )を選び、本発明の酵素免疫測定方法を実施した。
【0050】
反応試液
トリエタノールアミン緩衝液(PH7.2)
GAPDH 120単位/ml
GPO 60単位/ml
LDH 50単位/ml
POD 15単位/ml
4-アミノアンチピリン 2mM
TOOS 1.5mM
乳酸 10mM
【0051】
基質液
Glyceraldehyde-3-phosphate 10mM
NAD 5mM
【0052】
反応停止液
ピルビン酸 100mM
【0053】
測定方法
参考例2の方法で調製した抗ヒトAFPマウスモノクローナル抗体を固定化したマイクロプレートに、精製したヒトAFP(標準物質)を0〜20ng/mlの範囲で含有する0.5%BSA含有PBS溶液(pH7.4) 50μlと参考例1の方法で調製したTIM標識抗ヒトAFPマウスモノクローナル抗体を約3μg/mlの濃度で含有する0.5%BSA含有PBS溶液(pH7.4) 50μlとを加え、37℃の温度で1時間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を吸引除去した後、ウェル内を生理食塩水で洗浄してから、各ウェルにCAP処理した酵素(3種類ともCAP処理した酵素)で作製した反応試液90μlと基質液10μlを加え、37℃で10分間加温した後、反応停止液100μlを加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダー(コロナ社製MTP−800AFC)で540nmのフィルターを使用して吸光度を測定し、この値を標準物質濃度に対してプロットすることにより、図1に示される低濃度まで濃度依存性の良い検量線を得た。
【0054】
比較例1
CAP処理していない酵素で作製した反応試液を使用して、実施例2と同様の測定を行った。その結果を図2に示した。反応試液中にコンタミしているTIMによる反応でAFP濃度が0の時(試薬ブランク)でも吸光度が高く、マイクロプレートリーダーの測定限界で頭打ちとなっている。
【0055】
実施例3 TSHの測定
測定対象(被検体)としてTSH(甲状腺刺激ホルモン)を選び、本発明の酵素免疫測定方法を実施した。
【0056】
反応試液
トリエタノールアミン緩衝液(PH7.2)
GAPDH 120単位/ml
GPO 60単位/ml
LDH 50単位/ml
POD 15単位/ml
4-アミノアンチピリン 2mM
TOOS 1.5mM
乳酸 10mM
【0057】
基質液
Glyceraldehyde-3-phosphate 10mM
NAD 5mM
【0058】
反応停止液
ピルビン酸 100mM
【0059】
測定方法
参考例2の方法で調製した抗ヒトTSHマウスモノクローナル抗体を固定化したマイクロプレートに、精製したヒトTSH(標準物質)を0〜0.1 U/Lの範囲で含有する0.5%BSA含有PBS溶液(pH7.4)50μlと参考例1の方法で調製したTIM標識抗ヒトTSHマウスモノクローナル抗体を約5μg/mlの濃度で含有する0.5%BSA含有PBS溶液(pH7.4) 50μlとを加え、37℃の温度で1時間インキュベートした。次に、ウェル内の溶液を吸引除去した後、ウェル内を生理食塩水で洗浄してから、各ウェルにCAP処理した酵素で作製した反応試液 90μlと基質液10μlを加え、37℃で10分間加温した後、反応停止液100μlを加えて反応を停止した。マイクロプレートリーダー(コロナ社製MTP−800AFC)で540nmのフィルターを使用して吸光度を測定し、この値を標準物質濃度に対してプロットすることにより、図3に示される低濃度まで濃度依存性の良い検量線を得た。
【0060】
TIMを標識酵素とし、これらの処理酵素を組み合わせた酵素サイクリング法を検出系とする超高感度エンザイムイムノアッセイを構築し10-15molesのTSH(甲状腺刺激ホルモン)を測定することができた。
【0061】
比較例2
CAP処理していない酵素で作製した反応試液を使用して、実施例3と同様の測定を行った。その結果を図4に示した。反応試液中にコンタミしているTIMによる反応でTSH濃度が0の時(試薬ブランク)でも吸光度が高く、マイクロプレートリーダーの測定限界で頭打ちとなっている。
【0062】
本発明を応用した検査法を確立することにより、BSE検査や血液製剤のウイルス検査における検出感度不足による汚染食品や輸血製剤による感染防御に極めて有効な方法になりうる。また、末梢血からの超早期がん診断が可能になる。
その他、今後急速に市場が拡大する分野では、遺伝子組換え医薬品・抗体医薬・再生医療・組織工学から由来する製品の厳密で高感度な品質保証のための超高感度残留タンパク質(異種由来タンパク質)の検出系にも汎用的に利用することが可能と思われる。
また研究用試薬、環境計測、バイオセンサー等への直接的な利用も見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例2で得られたAFPについての測定結果。
【図2】比較例1で得られたAFPについての測定結果。
【図3】実施例3で得られたTSHについての測定結果。
【図4】比較例2で得られた測TSHについての定結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体酵素複合体の酵素としてトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)を用いる酵素免疫測定方法であって、
TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いてジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法を用いて行われ、かつ
少なくとも前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGPOを含む酵素製品は、この酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである上記方法。
【請求項2】
前記ジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトの定量に用いられるGAPDHを含む酵素製品および/またはLDHを含む酵素製品は、これらの酵素製品に混在するTIMが、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TIMに対する自殺基質が、3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
GPOを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記GPOを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
GAPDHを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記GAPDHを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
LDHを含む酵素製品のTIMに対する自殺基質による不活性化は、前記LDHを含む酵素製品と前記自殺基質とを水性媒体中で混合し、インキュベーションし、酵素分画と未反応の自殺基質とを分離することを含む請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酵素分画と未反応の自殺基質との分離を、カラムを用いて行う請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
生成した過酸化水素の定量は、パーオキシダーゼ(POD)を用いる発色法により行われる請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質の分析に用いられる請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
抗体酵素複合体の抗体が、被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
被検体であるタンパク質に特異的に結合する抗体を表面に固着させた基板を用いる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトを有効成分として含むトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)に対する自殺基質であって、
前記自殺基質は、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いて、TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる、前記GAPDHを含む酵素製品、GPOを含む酵素製品およびLDHを含む酵素製品の少なくとも1つの酵素製品に混在するTIMを不活性化するために用いられる、前記自殺基質。
【請求項15】
TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物である請求項14に記載の自殺基質。
【請求項16】
3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である請求項14または15に記載の自殺基質。
【請求項17】
GPOを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品。
【請求項18】
GAPDHを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品。
【請求項19】
LDHを含む酵素製品であって、この酵素製品に混在するトリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)が、TIMに対する自殺基質により不活性化されたものである酵素製品。
【請求項20】
TIMに対する自殺基質が、3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトである請求項17〜19のいずれか1項に記載の酵素製品。
【請求項21】
3-ハロゲン-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトが、3-クロロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ブロモ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、3-ヨード-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイト、および3-フルオロ-1-ヒドロキシ-2-プロパンフォスフェイトから成る群から選ばれる少なくとも1種の物質である請求項20に記載の酵素製品。
【請求項22】
グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ(GPO)、およびラクテートヒドロゲナーゼ(LDH)を用いて、トリオースフォスフェイトイソメラーゼ(TIM)の生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトから過酸化水素を生成させ、生成した過酸化水素を定量することを含む酵素サイクリング法に用いられる、請求項17〜21のいずれか1項に記載の酵素製品。
【請求項23】
TIMの生成物であるジヒドロキシアセトン-3-フォスフェイトは、抗体酵素複合体の酵素としてTIMを用いる酵素免疫測定方法における生成物である請求項22に記載の酵素製品。
【請求項24】
酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHを用いる請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
請求項17に記載のGPOを含む酵素製品、請求項18に記載のGAPDHを含む酵素製品、および請求項19に記載のLDHを含む酵素製品を含む酵素サイクリング法用キット。
【請求項26】
酵素サイクリング法に基質として、ラクテート、グリセロール-3-リン酸、NADおよび/またはNADHをさらに含む請求項25に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−192630(P2007−192630A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10051(P2006−10051)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(300050367)株式会社日立ハイテクフィールディング (11)
【Fターム(参考)】