説明

高所作業用落下物捕集ネット

【課題】高所作業箇所の真下に吊るすことができ、作業の邪魔にならず、作業に応じて移動可能なポイント式の高所作業用落下物捕集ネット。
【解決手段】断面コ字型の把持体1の下部から下方に垂下した主柱2の下部外周に三本以上のステー3をほぼ水平に放射状に設け、前記主柱2の下端を中心として、前記各ステー3の外端を外周縁とするネット4を張った高所作業用落下物受けネットであって、前記把持体1は、水平部材を開口部から内部に挿入して前記水平部材を挟持自在とし、前記各ステー3は、その基部を前記主柱2の下部外周に垂直方向に回転自在に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高所作業車に乗っての架空電線上の作業や電柱周辺での柱上作業等の高所作業の際の電線の被覆等のくずや工具等の落下物を受けるネットであって、作業のポイント箇所に設置自在なポイント式の高所作業用落下物捕集ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記高所作業において、絶縁操作棒を使用した間接活線工法において、絶縁操作棒の先端に工具や材料類を取り付ける、又は掴むため、様々な専用工具類を取り付けて使用する操作棒(単スティック)や、電線被覆剥ぎ取り作業やテープ巻き作業を行う回転式操作棒(ロータリースティック)を作業工程に応じて組み合わせて作業を行っている。そのため、作業中に工具や材料が外れて落下する懸念があり、落下物への安全対策が要求されている。
【0003】
従来の落下物受けネットは、特許文献1に示すように、電柱の外周に取り付けて柱上での作業に対応しているが、ネットの大きさに限りがあり、電柱からやや外れた箇所での作業等、ネットの範囲よりも外側での作業には対応できない。
【0004】
また、特許文献2に示すように、高所作業車に取り付けるバケット用ネットもあるが、高圧線の間接活線作業の作業位置において、バケット用ネットが低圧電線と干渉するため、ネットを大きく拡げることが出来ず、使用できない。これを小さく拡げると、絶縁操作棒の長さがあるため、作業箇所からバケットが離れ、作業の真下にネットが来ない。そこで、電柱から離れた高所作業の場合、実際の作業を行う作業員の他に、さおの先にネット網を設けたものを作業員が地上等から、作業箇所の真下にかざして、落下物に備えており、作業員の労力は多大なものであった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−6399号公報
【特許文献2】特開平7−6398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はこのような従来技術を考慮して為されたもので、高所作業箇所の真下に固定でき、作業の邪魔にならず、作業に応じて移動可能なポイント式の高所作業用落下物捕集ネットを提供し、上記課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1の発明は、断面コ字型の把持体の下部から下方に垂下した主柱の下部外周に三本以上のステーをほぼ水平に放射状に設け、前記主柱の下端を中心として、前記各ステーの外端を外周縁とするネットを張った高所作業用落下物捕集ネットであって、前記把持体は、水平部材を開口部から内部に挿入して前記水平部材を挟持自在とし、前記各ステーは、その基部を前記主柱の下部外周に垂直方向に回転自在に支持した、高所作業用落下物捕集ネットとした。なお、前記ステーとは支持棒を意味するものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、断面コ字型の把持体の下部から下方に垂下した主柱の下部外周に三本以上のステーをほぼ水平に放射状に設け、前記主柱の下端を中心として、前記各ステーの外端を外周縁とするネットを張った高所作業用落下物捕集ネットであって、前記主柱の上部外周に設けたねじ部を、前記把持体の下部の水平片を貫通するねじ孔に螺着し、当該ねじ孔から突出した主柱の上端に、当該上端面を中心に回転自在な押さえ板を設け、当該押さえ板は前記把持体の垂直片に当たって回転を阻止される構成とし、前記ステーは、前記主柱の下部を、中央孔に遊びをもって貫通させた支持体の外周に間隔をあけて各ステーの一端を垂直方向に回転自在に軸支し、各ステーはストッパーにより水平より下方への回転を阻止され、前記ネットは、自体の中央孔に前記主柱の下部を挿入して係止し、外周縁を前記各ステーの外端に係止し、前記主柱の下端には操作ノブを設けた、高所作業用落下物捕集ネットとした。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記支持体の外周の対向する箇所から上方に二本のガイド杆を突設し、各ガイド杆の先端は前記把持体の両側に設けた各貫通孔に摺動自在に挿入されている、高所作業用落下物捕集ネットとした。また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記各ガイド杆に雨切傘を設け、また、前記主柱の外周を被冠してその下端を前記支持体の中央孔の周縁に固定した鞘管を設け、この鞘管の外周に主柱雨切傘を設けた、高所作業用落下物捕集ネットとした。
【0010】
請求項5の発明は、請求項2、3又は4のいずれかの発明において、前記各ステーは、前記支持体の外周に間隔を開けて設けた軸受けにピンにより軸支さて、当該各軸受けの前記ピンより外方に設けたスプリングピンに各ステーの下縁が当たって、各ステーの先端が上方に上がって傾斜した状態を常時保持し、一定値以上の荷重が各ステーにかかると、前記スプリングピンが曲がって、ステーが水平となる構成とした、高所作業用落下物捕集ネットとした。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4又は5のいずれかの発明において、前記ネットは、各ステーの先端部から主柱に係止した箇所まで下方に膨らんだ袋状部を、各ステー毎に形成している高所作業用落下物捕集ネットとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜6の発明によれば、断面コ字型の把持体を上端に設けており、電線や腕金等、この把持体で挟持できる水平部材であれば何にでも設置することができる。そして、当該ネットは設置した真下にネットを拡げるため、作業箇所からの落下物を確実に捕集することができる。しかも、作業箇所が移れば、容易に設置箇所を変更することが出来る。従って、電線上での作業であれば、電線に沿って前記把持体を移動させればよい。また、電線上等に設置してネットを拡げることが邪魔な場合は、ステーが垂直方向に回転自在であるため、電線に前記把持体を把持したまま、ステー及びネットを主柱に沿ってすぼめてテープ等で束ねておくことができる。
【0013】
上記効果の他に、請求項2の発明は、主柱の下端に操作ノブを設け、当該操作ノブを回転させれば、主柱が回転して、把持体の上部水平片と押さえ板とで電線や腕金等の水平部材を挟持することができ、それ故間接活線作業において絶縁操作棒で操作ノブを回して設置できる。勿論、作業員が当該操作ノブを手で回すこともできる。また、請求項3の発明によれば、ステーを支持する支持体から二本のガイド杆を突出させ、これらの各ガイド杆の上部を把持体で摺動自在に支持しているため、強風が吹いても支持体及びネットが回転せず、安定して落下物を捕集できる。
【0014】
請求項4の発明によれば、各ガイド杆及び主柱に雨切傘及び主柱雨切傘を設けているため、これらの雨切傘及び主柱雨切傘で沿面が切れ、下方のネット等の絶縁が保たれ、雨天の作業においても高圧線の作業が出来る。
【0015】
請求項5の発明によれば、各ステーは軸支点より外側の下縁をスプリングピンで支持されているため、各ステーの先端が常に上方に上がって傾斜した状態である。従って、落下物が当該ステーに当たった際、ネットの内側に跳ねて落下するため、落下物をネットで捕集し易い構成となっている。また、一定値以上の荷重が当該ステーにかかった場合は、水平となり、緩衝効果を付与しており、落下物が飛び跳ねるのを防止し、さらに確実にネットに捕集できる構成となっている。
【0016】
また、請求項6の発明は、ネットが、各ステーの下方で袋状に膨らんだ構成としているため、落下物をネットの内側に抱き込むようになっており、落下物のネットへの捕集がより確実となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、断面コ字型の把持体の下部から下方に垂下した主柱の下部外周に三本以上のステーをほぼ水平に放射状に設け、前記主柱の下端を中心として、前記各ステーの外端を外周縁とするネットを張った高所作業用落下物捕集ネットであって、前記把持体は、水平部材を開口部から内部に挿入して前記水平部材を挟持自在とし、前記各ステーは、その基部を前記主柱の下部外周に垂直方向に回転自在に支持した、高所作業用落下物捕集ネットであり、ネットが作業箇所の真下にくるように、作業のポイントごとに移動させて容易に取り付けることができる。
【実施例1】
【0018】
以下、この発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1はこの発明の正面図、図2はこの発明の側面図、図3はこの発明の平面図である。
断面コ字型の把持体1の下部から下方に垂下した主柱2の下部外周に四本のステー3をほぼ水平に放射状に設け、前記主柱2下端を中心として、前記各ステー3の外端を外周縁とするネット4を張ったものである。
【0019】
前記主柱2の上部外周に設けたねじ部2aを、前記把持体1の下部の水平片を貫通するねじ孔(図示省略)に螺着し、当該ねじ孔から突出した主柱2の上端に、当該上端面を中心に回転自在な押さえ板5を設け、当該押さえ板5は前記把持体1の垂直片に当たって回転を阻止される構成としている。従って、主柱2を回転させると、図4に示すように、把持体1内で押さえ板5が上昇し、電線や腕金等の水平部材を把持体1の上部水平片と押さえ板5とで把持できる。
【0020】
図5及び図6は前記主柱の下部のステー支持箇所の拡大図を示し、図5は主柱の下部のステー支持部の拡大一部省略平面図、図6は主柱の下部のステー支持部の拡大一部縦断面図である。
前記主柱2の下部には前記ステー3を支持する支持体6が被冠されている。この支持体6は、中央孔6aに前記主柱2の下部を、遊びをもって貫通させており、前記主柱2の下部に固定したフランジ7の上に載っている。また、このフランジ7の下の主柱2の下端に、絶縁操作棒を係止する操作ノブ8が設けられている。
【0021】
前記各ステー3は、その一端を、前記支持体6の外周に間隔を開けて一体に設けた4つの軸受け9にピン9aにより軸支さている。これらの各軸受け9は、図6に示す如く、底板9bを備え、前記ピン9aによって一端を軸支された各ステー3はこの底板9bがストッパーとなって水平より下方に回転しない。また、前記軸受け9の上面は開口しているため、各ステー3を立ち上げることができる。従って、全てのステー3を立ち上げ、主柱2に沿ってネット4をすぼめることが出来、不要の際は、すぼめたネット4の外周にテープ等を巻いて束ねておくこともできる。
【0022】
また、当該各軸受け9の、前記ピン9aより外方にスプリングピン9cを設けている。これらの各スプリングピン9cに各ステー3の下縁が当たって、各ステー3は、自由端である先端が上方に上がって傾斜した状態を常時保持している。そして、一定値以上の荷重が各ステー3にかかると、前記スプリングピン9cが曲がって、ステー3が水平となる構成となっている。従って、その際各ステー3は緩衝効果を有し、落下物がむやみに跳ね上がったりせず、ネット3内に落下するようになっている。
【0023】
また、前記支持体6の相対向する側面から上方に二本のガイド杆10を突設し、各ガイド杆10の先端は前記把持体1の両側に設けた突出片11にそれぞれ穿った貫通孔11aに摺動自在に挿入されている。このように、二本のガイド杆10が把持体1の両側に摺動自在に係止されているため、支持体6は回転しない。また、これらのガイド杆10には雨切傘12が設けられている。また、前記主柱2の下部を被冠した鞘管13が前記支持体6の中央孔6aの周縁から立設され、この鞘管13に主柱雨切傘14が設けられている。これらの雨切傘12及び主柱雨切傘14は同じ構造であり、夫々当該箇所で雨水を切り、これらの雨切傘12及び主柱雨切傘14以下の主柱2やガイド杆10に雨水が流れないようになっており、ネット4の絶縁性が保てる。
【0024】
また、前記ネット4は、上面が開口した略箱型のもので、上部周縁の四箇所で、前記各ステー3の自由端に係止され、ネット4の中央部に前記主柱2が貫通して、当該箇所でネット4は前記主柱2に係止されている。これにより前記ネット4は、各ステー3の先端部から主柱2箇所まで下方に膨らんだ袋状部を、各ステー3毎に形成している。
【0025】
以上の構成から成る落下物捕集ネットAは、図7に示すように、電柱Bから離れた電線C上の作業箇所Dで電線接続作業をする場合、当該作業箇所Dの脇の電線Cに、その把持体1を取付け、落下物捕集ネットAを吊り下げれば、前記接続作業の接続体や工具又は電線被覆等のくずが落下しても、前記ネット3にそれらを捕集することができる。また、この作業が終わり、引き続き作業箇所Eで作業する場合、前記落下物捕集ネットAの把持体1の電線Cへの把持を解き、これらを電線C上でずらして、作業箇所Dの脇に前記落下物捕集ネットAを吊るし、作業をすることができる。
【0026】
この様に、この発明の落下物捕集ネットは把持体を電線や腕金等の水平部材に容易に取り付け、また外して他の箇所に取り付けられるため、取り付け場所を選ばない。従って、作業の落下物の捕集箇所が拡がる。
【0027】
なお、上記実施例では、把持体を水平部材に取り付けるのに、主柱2を回転させて押さえ板を上げ、把持体の上部水平片と押さえ板との間で把持する構成となっているが、これに限らず、断面コ字型の把持体の開口部から水平部材を挿入し、当該把持体で把持する構成であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施例1の正面図である。
【図2】この発明の実施例1の側面図である。
【図3】この発明の実施例1の平面図である。
【図4】この発明の実施例1の主柱を回転させて押さえ板を把持体内で上方に上げ状態を示す正面図ある。
【図5】この発明の実施例1の主柱下部のステー取付箇所の拡大一部省略平面図である。
【図6】この発明の実施例1の主柱下部のステー取付箇所の拡大一部省略縦断面図である。
【図7】この発明の実施例1の落下物捕集ネットの使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 把持体 2 主柱
2a ねじ部 3 ステー
4 ネット 5 押さえ板
6 支持体 6a 中央孔
7 フランジ 8 操作ノブ
9 軸受け 9a ピン
9b 底板 9c スプリングピン
10 ガイド杆 11 突出片
11a 貫通孔 12 雨切傘
13 鞘管 14 主柱雨切傘
A 落下物捕集ネット B 電柱
C 電線 D 作業箇所
E 作業箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面コ字型の把持体の下部から下方に垂下した主柱の下部外周に三本以上のステーをほぼ水平に放射状に設け、前記主柱の下端を中心として、前記各ステーの外端を外周縁とするネットを張った高所作業用落下物捕集ネットであって、
前記把持体は水平部材を開口部から内部に挿入して前記水平部材を挟持自在とし、前記各ステーはその基部を前記主柱の下部外周に垂直方向に回転自在に支持したことを特徴とする、高所作業用落下物捕集ネット。
【請求項2】
断面コ字型の把持体の下部から下方に垂下した主柱の下部外周に三本以上のステーをほぼ水平に放射状に設け、前記主柱の下端を中心として、前記各ステーの外端を外周縁とするネットを張った高所作業用落下物捕集ネットであって、
前記主柱の上部外周に設けたねじ部を、前記把持体の下部の水平片を貫通するねじ孔に螺着し、当該ねじ孔から突出した主柱の上端に、当該上端面を中心に回転自在な押さえ板を設け、当該押さえ板は前記把持体の垂直片に当たって回転を阻止される構成とし、
前記ステーは、前記主柱の下部を中央孔に遊びをもって貫通させた支持体の外周に間隔をあけて各ステーの一端を垂直方向に回転自在に軸支し、各ステーはストッパーにより水平より下方への回転を阻止され、
前記ネットは、自体の中央孔に前記主柱の下部を挿入して係止し、外周縁を前記各ステーの外端に係止し、
前記主柱の下端には操作ノブを設けたことを特徴とする、高所作業用落下物捕集ネット。
【請求項3】
前記支持体の外周の相対向する箇所から上方に二本のガイド杆を突設し、各ガイド杆の先端は前記把持体の両側に設けた貫通孔に摺動自在に挿入したことを特徴とする、請求項2に記載の高所作業用落下物捕集ネット。
【請求項4】
前記各ガイド杆に雨切傘を設け、また、前記主柱の外周を被冠してその下端を前記支持体の中央孔の周縁に固定した鞘管を設け、この鞘管の外周に主柱雨切傘を設けたことを特徴とする、請求項3に記載の高所作業用落下物捕集ネット。
【請求項5】
前記各ステーは、前記支持体の外周に間隔を開けて設けた軸受けにピンにより軸支し、当該各軸受けの前記ピンより外方に設けたスプリングピンに各ステーの下縁が当たって、各ステーの先端が上方に上がって傾斜した状態を常時保持し、一定値以上の荷重が各ステーにかかると、前記スプリングピンが曲がって、ステーが水平となる構成としたことを特徴とする、請求項2、3又は4のいずれかに記載の高所作業用落下物捕集ネット。
【請求項6】
前記ネットは、各ステーの先端部から主柱に係止した箇所まで下方に膨らんだ袋状部を、各ステー毎に形成していることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の高所作業用落下物捕集ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−121133(P2009−121133A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296419(P2007−296419)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)