説明

高所作業装置

【目的】伸縮ブームの起伏角度変化に応じて、高所作業用バケツトが傾斜するも、常時安定良く立ち乗り作業できるようにする。
【構成】荷役車両(T)の架装クレーン(C)に具備された伸縮ブーム(13)の先端部へ、作業者が立ち乗る高所作業用バケツト(B)を着脱自在に固定設置すると共に、そのバケツト(B)の底面(20)を、上記ブーム(13)の起伏角度が変化するも常時ほぼ水平な踏面部分(20a)を維持し得る全体的な円弧形の凹曲面か、又はこれと類似する多角形の屈折面に造形した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は荷役車両の架装クレーンを利用した高所作業装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
小型トラツクなどの荷役車両に架装されたクレーンのブーム先端部へ、作業者が立ち乗る高所作業用バケツトを付属設置して、建物の屋根や外壁、看板などの各種工事を行なうことは知られているが、そのブームの起伏角度が通例約76度の範囲において変化すると、これに応じて上記バケツトの底面が傾斜するため、その作業者の安定な立ち乗り作業困難となり、甚だ危険でもある。
【0003】
そこで、従来では上記ブームの先端部からバケツトを枢支状態に吊り下げ、そのブームの角度変化に応じて、ロツクピンの差し替え操作などを行なうことにより、バケツトをその底面の水平設置状態に調整固定している。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、このような手段ではブームの起伏角度が変化するたび毎に、一々ロツクピンの差し替え操作などを行なわなければならず、著しく煩雑であることはもとより、その際にもバケツトは揺動するため、上記調整操作を安全裡にすばやく行なうこともできず、高所作業の能率を阻害する結果となる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案はこのような課題の改良を企図しており、そのための便利な高所作業装置として、荷役車両の架装クレーンに具備された伸縮ブームの先端部へ、作業者が立ち乗る高所作業用バケツトを着脱自在に固定設置すると共に、そのバケツトの底面を、上記ブームの起伏角度が変化するも常時ほぼ水平な踏面部分を維持し得る全体的な円弧形の凹曲面か、又はこれと類似する多角形の屈折面に造形したことを特徴とするものである。
【0006】
【作用】
本考案の上記構成によれば、その高所作業用バケツトが伸縮ブームの先端部に固定設置されている。それにも拘らず、ブームの起伏角度が変化したとしても、バケツトの底面は常時ほほ水平な踏面部分を維持するようになっているため、その踏面部分に安定良く立ち乗りして、危険なく高所作業を遂行できるのであり、一々面倒なロツクピンの差し替え操作などを行なう必要がない。
【0007】
【実施例】
以下、図面に基いて本考案の具体的構成を詳述すると、その高所作業装置の概略全体を示した図1において、(T)は小型トラツクやトレーラーなどの荷役車両、(C)はこれに架装されたクレーンの総称であり、公知のようにアウトリガー(11)を初め、縦軸線廻りに旋回するコラム(12)やそのコラム(12)
に枢支された伸縮ブーム(13)、その伸縮ブーム(13)の先端部に懸垂されたチエンブロツク(14)などから組立ユニツト化されていると共に、その伸縮ブーム(13)が約76度の一定角度範囲(α)において、油圧デリツクシリンダー(15)により起伏作動されるようになっている。
【0008】
(B)は上記伸縮ブーム(13)の先端部に付属使用される高所作業用のバケツトであって、図2〜5に抽出する通り、金属角パイプ材から例えば幅−約770mm、長さ−約1000mm、深さ−約730mmの角箱型に枠組み一体化されている。又、そのバケツト(B)の前後両面(16)(17)と左右両側面(18)(19)が、軽量化のため柵状に仕上げられている。
【0009】
但し、金属角パイプ材に代る繊維強化プラスチツク(FRP)などから、上記バケツト(B)の全体を透視不能な角箱型に一体成形しても良く、これによれば高所作業としての電気工事などに有益である。
【0010】
(20)は上記バケツト(B)の底面であり、特に側面から見て円弧形の凹曲面に造形されることによって、上記伸縮ブーム(13)の起伏角度が変化したとしても、常にほぼ水平な踏面部分(20a)を維持確保し、その踏面部分(20a)に作業者が安定良く立ち乗りして、安全裡に高所での各種作業を行なえるようになっている。
【0011】
もっとも、このような趣旨を達成できるならば、図5に対応する図6の変形実施例から示唆される通り、バケツト(B)の底面(20)を上記凹曲面と類似する多角形の屈折面として造形しても良い。因みに、上記凹曲面の曲率半径は、先に例示した数値との相関々係において、約700mmに寸法化されており、その最も深い中央部分での深さ寸法が、約970mmである。
【0012】
又、上記バケツト(B)の底面(20)を全体的な凹曲面や屈折面として造形することに加え、図例のようなエキスパンドメタルや、これに代るリブが突き起された金属板などの張設により、その全体的に凹凸粗面化して、作業者の足が滑る危険を防止することが、効果的である。上記FRPからバケツト(B)を成形する場合にも、その底面(20)を連続一体に凹凸粗面化できることは、言うまでもない。
【0013】
(21)は上記バケツト(B)における前面(16)の中央部から一体的に張り出された支持フレームであって、側面視のく字型を呈しており、左右一対の梁(22)によって補強されている。(23)はその支持フレーム(21)の交叉部に固着された取付ステーであって、平面視のL字型をなしており、その前方への張り出し片(23a)にはボルト挿通孔(24)が開口形成されている。
【0014】
他方、上記伸縮ブーム(13)の先端部からは、そのブーム(13)の延長方向に向かってボルト(25)が一体的に植立されており、これに上記バケツト(B)側の取付ステー(23)が、そのボルト挿通孔(24)を介して差し込まれた上、ナツト(26)の締結によって固定一体化されている。但し、上記バケツト(B)の不使用時には、これを伸縮ブーム(13)から取りはずすことも可能である。
【0015】
その場合、図7から明白なように、バケツト(B)の垂直中心線(Y−Y)が伸縮ブーム(13)の長手中心線(Z−Z)と一定の鋭角(β)保つ交叉状態に固定設置されている。つまり、バケツト(B)は伸縮ブーム(13)の任意な一定角度(γ)に傾斜した状態において、その底面(20)が水平となるように取付け固定されているのである。その伸縮ブーム(13)の任意な一定角度(γ)
としては、上記起伏角度範囲(α)が約76度であることとの関係上、その半分の約38度に定め、上記鋭角(β)を約52度に定めることが望ましい。
【0016】
又、バケツト(B)の上記数値から示唆されるように、これを伸縮ブーム(13)の長手方向に沿う細長い平面視の四角形や楕円形に造形することが好ましい。そうすれば、伸縮ブーム(13)の起伏角度が変化しても、上記作業者の安定良く立ち乗れる踏面部分(20a)を、そのバケツト(B)の底面(20)に極力広い有効面積として、効率良く確保することができるからである。
【0017】
尚、上記のように伸縮ブーム(13)の先端部から植立するボルト(25)と、これに締結されるナツト(26)とを用いて、バケツト(B)側の取付ステー(23)を固定する手段によれば、その着脱操作を所謂ワンタツチ操作式にすばやく行なえ、伸縮ブーム(13)の本来的な機能も阻害しない点で、実益大であると言えるが、そのボルト(25)とナツト(26)に代るクランプ金具やその他の固定手段を採用してもさしつかえない。
【0018】
上記バケツト(B)を用いて、例えば建物におけるトタン屋根材の張り付けやペンキ塗り、看板の交換、構築材の溶接、その他の各種高所作業を行なうに当っては、そのバケツト(B)を上記クレーン(C)の伸縮ブーム(13)に取付け固定し、その内部に作業者が立ち乗るのである。
【0019】
そして、その伸縮ブーム(13)の起伏角度が図7のように変化すると、これに応じてバケツト(B)の底面(20)が傾斜するが、その底面(20)は上記した通り円弧形の凹曲面又は多角形の屈折面として造形されているため、必らずやほぼ水平な踏面部分(20a)が局部的に維持確保されることとなり、その踏面部分(20a)に安定良く立ち乗ったままで、安全裡に作業することができる。
【0020】
その場合、バケツト(B)の底面(20)が凹凸粗面化されておれば、上記傾斜状態に変化するも、作業者の足が滑らず、その安全性をますます昂めることができることとなる。
【0021】
【考案の効果】
以上のように、本考案の高所作業装置では荷役車両(T)の架装クレーン(C)に具備された伸縮ブーム(13)の先端部へ、作業者が立ち乗る高所作業用バケツト(B)を着脱自在に固定設置すると共に、そのバケツト(B)の底面(20)を、上記ブーム(13)の起伏角度が変化するも常時ほぼ水平な踏面部分(20a)を維持し得る全体的な円弧形の凹曲面か、又はこれと類似する多角形の屈折面に造形してあるため、冒頭に述べた従来技術の課題を完全に改良できる効果がある。
【0022】
即ち、本考案の上記構成によれば、高所作業装置用バケツト(B)が伸縮ブーム(13)の先端部へ固定設置状態のもとに使用されるようになっているため、従来のように伸縮ブーム(13)の起伏角度が変化するた毎に、ロツクピンの差し替え操作などを行なうことにより、そのバケツトを水平設置状態に調整固定する必要と煩雑さがない。
【0023】
又、上記バケツト(B)を伸縮ブーム(13)に固定一体化したとして、その伸縮ブーム(13)の起伏角度が変化するも、バケツト(B)の底面(20)は全体的な円弧形の凹曲面又は多角形の屈折面に造形されていため、常にほぼ水平な踏面部分(20a)が維持確保されることとなり、その踏面部分(20a)に安定良く立ち乗って、危険なく高所作業を遂行できるのである。
【0024】
更に、上記バケツト(B)は伸縮ブーム(13)の先端部へ着脱自在に固定設置されているため、その高所作業しない時には取りはずして保管することができ、著しく便利である。
【0025】
特に、請求項2の構成を採用するならば、バケツト(B)における底面(20)の就中踏面部分(20a)を、起伏変化する伸縮ブーム(13)との相関々係上、その起伏角度が大小何れに向かって変化するも、極力大きな有効作用面積として合理的に確保でき、作業者の安全性ますます昂め得る効果がある。
【0026】
又、請求項3の構成を採用するならば、そのバケツト(B)の底面(20)が凹凸粗面化されているため、これに立ち乗る作業者の足が滑らず、やはり安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る高所作業装置の概略全体を示す側面図である。
【図2】高所作業用バケツトを抽出して示す側面図である。
【図3】図2の正面図である。
【図4】図2の平面図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図5に対応するバケツトの変形実施例を示す側断面図である。
【図7】高所作業状態の側面図である。
【符号の説明】
(13)・伸縮ブーム
(20)・底面
(20a)・踏面部分
(B)・バケツト
(C)・クレーン
(T)・荷役車両
(Y−Y)・バケツトの垂直中心線
(Z−Z)・ブームの長手中心線
(α)・ブームの起伏角度範囲

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】荷役車両(T)の架装クレーン(C)に具備された伸縮ブーム(13)の先端部へ、作業者が立ち乗る高所作業用バケツト(B)を着脱自在に固定設置すると共に、そのバケツト(B)の底面(20)を、上記ブーム(13)の起伏角度が変化するも常時ほぼ水平な踏面部分(20a)を維持し得る全体的な円弧形の凹曲面か、又はこれと類似する多角形の屈折面に造形したことを特徴とする高所作業装置。
【請求項2】高所作業用バケツト(B)を伸縮ブーム(13)の長手方向に沿う細長い平面視の四角形又は楕円形に造形すると共に、そのバケツト(B)の垂直中心線(Y−Y)を伸縮ブーム(13)の長手中心線(Z−Z)と一定の鋭角(β)に交叉させて固定設置したことを特徴とする請求項1記載の高所作業装置。
【請求項3】高所作業用バケツト(B)の底面(20)を凹凸粗面化したことを特徴とする請求項1記載の高所作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【登録番号】第3001831号
【登録日】平成6年(1994)6月29日
【発行日】平成6年(1994)9月6日
【考案の名称】高所作業装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平6−3274
【出願日】平成6年(1994)3月8日
【出願人】(394004413)
【代理人】
【氏名又は名称】山下 賢二