説明

高機能性植物の栽培法

【課題】消費者が食べている多様な植物が本来持っているはずの機能を高めて、収量の低下を招かずに、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物や果実などの収穫物を得る方法の提供。
【解決手段】ホウ素およびマンガンおよび鉄および銅を含む混合微量要素および/または亜鉛、モリブデン、セレンから選ばれる少なくとも1つの微量要素を所定量含む化合物水性液および/または前記化合物固形物を用いて植物3を栽培する際に、前記化合物水性液はそのままあるいは水で希釈して、土壌1に灌水施用するかまたは葉面4散布して使用し、前記化合物固形物は土壌1に施用して、前記微量要素を植物3に適用することにより、目的を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高機能性植物の栽培法に関するものであり、更に詳細には、特定の微量要素を施用することでビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物を栽培する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の植物はその機能性成分含有量が昔と比較して劣ってきている(非特許文献1参照)。これらを改良して昔の機能性成分含有量を有する植物を得るためにいくつかの方法が提案されている。
【0003】
例えば、植物の遺伝子組替をおこない、栄養成分を多く含んだり、抗ガン効果やワクチン効果に富む農作物など機能性の高い植物の新品種を生み出すことが検討されている(非特許文献2参照)。
また、植物栽培土の窒素分を少なくして地力を無くし、発芽または定植後に水と窒素肥料を断ち、このような痩地で植物が萎れはじめたら慣行の約1/10〜1/100の少量の水と窒素肥料を与えるなど水や肥料を低減し、高ビタミンC植物を栽培する方法が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、ポリフェノール生成植物を、光ストレスや水ストレスのようなストレスを負荷した条件下で生育させることにより、植物体中のポリフェノール成分を増加させる植物体ポリフェノールの増収法が提案されている(特許文献2参照)。
【非特許文献1】野菜のビタミンとミネラル、頁10〜11、表1−1科学技術庁資源調査会編『四訂日本食品標準成分表』と『五訂日本食品標準成分表』との比較、辻村 卓、女子栄養大学出版部
【非特許文献2】http://www.biotech-house.jp/(農林水産先端技術産業振興センター)
【特許文献1】特開昭59−120027号公報
【特許文献2】特開2003−009665号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、遺伝子組替による方法は安全性の問題やコストの問題があり、解決するには時間が必要となる問題があり、肥料を低減して高ビタミンC植物を栽培する方法や光ストレスあるいは水ストレスを負荷した条件下で生育させる植物体ポリフェノールの増収法は手間がかかる上、植物の収量低下のリスクが問題となっている。
【0005】
本発明の目的は、消費者が食べている多様な植物を通じて、人類の健康に貢献するために、遺伝子組替の方法や肥料を低減して植物を栽培する方法や光ストレスあるいは水ストレスを負荷した条件下で生育させる方法を用いず、微量要素を施用する方法で植物が本来持っているはずの機能を昔のように高めることで、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物であって、ビタミンCやポリフェノールおよびカロチノイドをサプリメントとして摂取したり補給したりできる植物を栽培する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の請求項1記載の高機能性植物の栽培法は、ホウ素およびマンガンおよび鉄および銅を含む混合微量要素および/または亜鉛、モリブデン、セレンから選ばれる少なくとも1つの微量要素を所定量含む化合物水性液および/または前記化合物固形物を用いて植物を栽培する際に、前記化合物水性液はそのままあるいは水で希釈して、土壌に灌水施用するかまたは葉面散布して使用し、前記化合物固形物は土壌に施用して、前記微量要素を植物に適用することにより、前記微量要素を適用しなかった場合に比較してビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物を得ることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2記載の高機能性植物の栽培法は、請求項1記載の高機能性植物の栽培法において、前記化合物固形物を植物の定植前の土壌に施用し、施用後、植物を定植するか、あるいは植物が生育している土壌に施用することを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3記載の高機能性植物の栽培法は、請求項1あるいは請求項2記載の高機能性植物の栽培法において、前記化合物水性液および/または前記化合物固形物を肥料成分とともに使用することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4記載の高機能性植物の栽培法は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の高機能性植物の栽培法において、植物を栽培する土壌中の前記微量要素の分析を行い、その分析結果を予め決められた前記微量要素の最適値と対比して、不足する微量要素を前記最適値になるように調合した前記化合物固形物を所定量用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の高機能性植物の栽培法により、消費者が食べている多様な植物が本来持っているはずの機能が高められ、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物を得ることができ、得られた植物や果実などの収穫物はビタミンCやポリフェノールおよびカロチノイドをサプリメントとして摂取したり補給したりできる、という顕著な効果を奏する。
【0011】
本発明の請求項2記載の高機能性植物の栽培法により、定植された植物あるいは生育中の植物が土壌に施用された前記化合物固形物中の微量要素を徐々に確実に吸収してビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含む植物あるいは果実などの収穫物を確実に収穫できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0012】
本発明の請求項3記載の高機能性植物の栽培法により、植物は肥料成分を吸収して生育しながら微量要素を吸収してビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含む植物や果実などの収穫物をより確実に収穫できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【0013】
本発明の請求項4記載の高機能性植物の栽培法により、植物を栽培する土壌に合わせてビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含む植物や果実などの収穫物を確実に収穫できるという、さらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の内容を詳細に説明する。
図1(イ)〜(ホ)は、本発明の微量要素を用いる高機能性植物の栽培方法の一例を模式的に説明する図である。
図1(イ)に示すように、先ず植物を栽培する土壌1の中の前記微量要素の分析を行う。そしてその分析結果を予め決められた前記微量要素の最適値と対比して、不足する微量要素を前記最適値になるように調合した前記化合物水性液および前記化合物固形物を調製する。
そして(ロ)に示したように、調製した前記化合物固形物を所定量だけ植物の定植前の土壌に施用して前記微量要素が最適値とした土壌2とする。この際、前記化合物固形物を肥料成分とともに使用することもできる。
その後(ハ)に示したように、前記化合物固形物を施用した土壌2に植物3を播種または定植する。
(ニ)に示したように、前記化合物水性液を植物3の葉面4に所定量だけ散布し、必要に応じて土壌2に灌水する。この際、前記化合物水性液や使用する水を肥料成分とともに使用することもできる。
そして(ホ)に示すように、このようにして植物3を栽培することにより植物3が本来持っている機能が高められ、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物3が収穫できる。
【0015】
図2(イ)〜(ニ)は、本発明の微量要素を用いる高機能性植物の他の栽培方法の例を模式的に説明する図である。
図2(イ)に示すように、永年間、桃などの果樹やお茶などの植物3Aが植えられている圃場の土壌1Aの中の前記微量要素の分析を行う。そしてその分析結果を予め決められた前記微量要素の最適値と対比して、不足する微量要素を前記最適値になるように調合した前記化合物水性液および前記化合物固形物を調製する。
そして(ロ)に示したように、植物3Aの株元、樹間などに調製した前記化合物固形物を所定量だけ施用して前記微量要素が最適値とした土壌2Aとする。この際、前記化合物固形物を肥料成分とともに使用することもできる。
その後(ハ)に示したように、必要に応じて前記化合物水性液を植物3Aの葉面4Aに所定量だけ散布し、また必要に応じて土壌2に灌水する。この際、前記化合物水性液や使用する水を肥料成分とともに使用することもできる。
そして(ニ)に示すように、このようにして植物3Aを栽培することにより植物3Aが本来持っている機能が高められ、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する桃などの果実やお茶などの収穫物5を収穫できる。
【0016】
本発明において、微量要素が植物の機能を向上させる作用機作の解明はできていないが、昔よりも近年の土壌中の微量要素が減少してきていることは明白であり、この不足している微量要素を補充することで、昔のような機能を回復させることができ、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物を栽培できたものと考えられる。
カロチノイドは、にんじん、トマト、柿、マンゴーなどの野菜や果物などの黄〜橙〜赤を呈する成分である。またカロチノイドは葉緑体の中に存在しクロロフィルを光の破壊作用から守る働きをしている。
カロチノイドは植物によってその種類や組成が異なることが知られている。
主なカロチノイドとしては、α−カロチン(主ににんじん、かぼちゃ、オレンジなどに含まれる)、β−カロチン(主ににんじん、さつまいも、かぼちゃ、緑黄色野菜などに含まれる)、γ−カロチン(主にあんずなどに含まれる)、リコペン(主にトマト、すいかなどに含まれる)、ルチィン(主にオレンジ、かぼちゃ、ケール、ホウレンソウなどに含まれる)、クリプトキサンチン(主にピーマン赤、柿、とうもろこし、オレンジなどに含まれる)、カプサンチン(主に唐芥子などに含まれる)などを挙げることができる。
カロチノイドの中で、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、クリプトキサンチンなどは人の腸壁でレチナールを経てレチノール(ビタミンA)に変換される。
カロチノイドはそれ自身、抗酸化性(活性酸素消去作用)、免疫賦活作用、抗がん作用などをもつことが知られている。
【0017】
本発明で用いる微量要素としては、1つにはホウ素およびマンガンおよび鉄および銅を含む混合微量要素および亜鉛、モリブデン、セレンから選ばれる少なくとも1つの微量要素であり、また他は亜鉛、モリブデン、セレンから選ばれる少なくとも1つの微量要素である。
微量要素としては塩素なども使用できる。
【0018】
本発明で用いるこれらの微量要素を含む化合物は、無機化合物でも有機化合物でもよく、あるいはこれらの混合物であってもよく、また水溶性化合物であっても、難水溶性化合物であって、あるいは水溶性のない化合物であっても、あるいはこれらの2つ以上の混合物であっても使用することができる。
【0019】
本発明で用いるこれらの微量要素を含む化合物水性液としては、前記化合物が水に溶解した状態の水溶液であってもよく、また前記化合物が水に分散したり懸濁したり乳化したりしたものであってもよく、あるいはこれらの2つ以上の混合物であってもよく、いずれも使用できる。
【0020】
本発明で用いるこれらの微量要素を含む化合物固形物としては、前記化合物が固形状態の乾燥状態にあるものであり、水を含まないかあるいは含んでいてもよく、水分含有量は特に限定されるものではない。形状は特に限定されるものではない。顆粒剤、錠剤、パック剤、粉末、カプセルなどの粉粒体の形態は施用し易く、取り扱い易いので好ましく使用できる。水溶性化合物、難水溶性化合物あるいは水溶性のない化合物あるいはこれらの2つ以上の混合物の固形物を使用できる。
【0021】
土壌に灌水施用するかまたは葉面散布して使用する場合は、植物に摂取され易く、取り扱い易いなどの点から前記化合物が水に溶解した状態の水溶液を用いることが好ましい。
【0022】
土壌に混合して施用する場合は、微量要素を含む化合物固形物を用いることが好ましい。使用する化合物としては、植物に摂取され易いので水溶性化合物が好ましいが、難水溶性化合物であってもあるいは水溶性のない化合物であっても、あるいはこれらの2つ以上の混合物の固形物を使用できる。
【0023】
難水溶性化合物や水溶性のない化合物は、例えば土壌中の微生物の作用により植物がとりこみ易い状態になったり、植物が出す根酸により溶けて植物に利用され易くなったり、肥料成分によって溶解して肥料成分とともに植物にとりこまれたりするので、本発明において使用できる。ただし、これらの化合物を本発明において使用できる理由はこれに限定されるものではない。
【0024】
本発明においては、これらの微量要素を所定量含む化合物水性液を用いたり、化合物固形物を用いたり、あるいは両者を併用して植物を栽培する。
植物を栽培する土壌中の微量要素含有量を分析し、その分析結果を予め決められた微量要素の最適値と対比して、不足する微量要素を最適値になるように調合した化合物水性液や化合物固形物を所定量用いることが好ましい。このようにして植物を栽培することにより、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物を効率よく確実に収穫できるとともに、例えば微量要素が多過ぎて植物の葉や根などが焼けたり、白く抜けたりするなどの被害が生じるのを防止・抑制できるとともに、微量要素が多過ぎて土壌中に残存し、残存した微量要素が雨水などにより流出して、環境が汚染されるのを防止・抑制できる。
【0025】
前記微量要素の最適値は各種試験値や経験値などを総合して決めることができる。前記微量要素の最適値の例を次に述べる。
最適値(土壌中の質量ppm):
ホウ素 0.4〜3.5
マンガン7〜35
鉄 10〜150
銅 1〜5
亜鉛 10〜40
モリブデン0.09〜6
セレン 0.1〜1
【0026】
本発明において、前記化合物固形物を植物の定植前の土壌に施用し、施用後、植物を播種または定植することが好ましい。播種または定植された植物は土壌に施用された前記化合物固形物中の微量要素を徐々に確実に吸収してビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含む植物を確実に収穫できる。
【0027】
本発明において、前記化合物水性液および/または前記化合物固形物と、植物の栄養に有効とされる硝酸塩などの窒素源、リン酸源、カリ塩、苦土、石灰などの肥料成分との混用も必要に応じて適宜おこなうことができる。
混用する肥料成分の場合も土壌分析の結果により、施用量を決定することが好ましい。
【0028】
本発明において微量要素とともに使用される肥料成分は、窒素、リン酸、加里三要素の少なくとも1つを含む肥料成分、石灰、苦土、ケイ酸の第2の三要素の少なくとも1つを含む肥料成分、その他硫黄などを含む肥料成分であり、窒素、リン酸、加里を含む多肥料成分は好ましく使用できる。肥料成分の具体例として下記のものを挙げることができる。
例えば堆肥、きゅう肥、家畜の糞尿、人糞尿、草木灰、木灰、稲わら、麦わら、籾がら、米糠、麦糠、大豆鞘、窒素質肥料、リン酸質肥料、加里質肥料、複合肥料、石灰質肥料、ケイ酸質肥料、苦土肥料、マンガン質肥料、ほう素質肥料、微量要素複合肥料、有機質肥料、魚かす、家畜および家きんの糞、家畜および家きんの糞処理物、家畜および家きんの糞燃焼灰、汚泥肥料、製糖副産石灰、転炉さい、貝灰石粉末、各種農産物のかす、食品工業のかす、発酵工業の廃棄物、発酵粕、繊維工業の廃棄物、水産工業の廃棄物、下水汚泥、都市ゴミコンポスト、骨灰などである。これらの肥料成分は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
また、これらの肥料成分以外に、ゼオライト、ベントナイト、バーミキュライト、泥炭、パーライト、腐食酸質資材、木炭、ポリエチレンイミン系資材、ポリビニールアルコール系資材などの土壌改良剤を混合することも可能である。
【0029】
本発明においてはアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、必要に応じてカチオン系、両イオン系界面活性剤などの界面活性剤を併用できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例により、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例に記載の%、ppmはそれぞれ質量%、質量ppmを示す。
【0031】
(実施例1)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素0.5%、マンガン3.5%、鉄2.7%、銅0.75%、亜鉛3.35%、モリブデン0.025%に調整した化合物固形物を用いた。
上記化合物固形物40Kg/10aをコマツナ(品種 浜美2号)の定植前の土壌に混和し土壌中の微量要素が前記最適値になるように施用した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、食用に供する程度の大きさになったものの食用部を採集し下記のビタミンC測定法、ポリフェノール測定法、および抗酸化活性測定法によりビタミンC含量(mg/100ml)、ポリフェノール含量(μmol/ml)、抗酸化活性(μmol/ml)を測定し、カロチノイド測定法によりコマツナの代表的なカロチノイドであるβ−カロチンの含量(μg/100g)を測定し、表1に示す。
【0032】
(ビタミンC測定法、ポリフェノール測定法、抗酸化活性測定法)
植物は食用部を採取し、3株をまとめて1処理区とし、その5反復にてビタミンC含量、ポリフェノール含量および抗酸化活性を測定した。
5%メタリン酸を用いて抽出した抽出液を調製し、抽出液をそのまま用いてビタミンC含量の測定を行った。ビタミンCはヒドラジン法にて比色定量を行った[新・食品分析法、編纂(社)日本食品科学工学会、新・食品分析法編集委員会、発行所:(株)光琳、発行日:平成8年11月30日、第444頁、4−8ビタミンC定量法、第444〜447頁、[操作例3]ヒドラジン法によるAsAの定量に準ずる]。
【0033】
ビタミンC測定の抽出液の一部は1NNaOHと蒸留水および100%EtOHを用いてpH調整・EtOH濃度調整を施した後、総ポリフェノール含量の測定およびDPPHラジカル消去活性の測定を行った。
【0034】
ポリフェノール含量はフォリン−デニス法にて没食子酸を標準物質として比色定量を行った[食品機能研究法、編集者:篠原和毅等、発行所:(株)光琳、発行日:平成12年5月10日、第318〜322頁、4.機能性食品成分の分離・構造決定、4−1ポリフェノールの分析法(比色定量法、HPLC分析法)に準ずる]。
【0035】
DPPHラジカル消去活性は抽出液によるDPPHの退色程度をマイクロプレートリーダーを用いて測定し、Trolox相当量に換算して求めた[食品機能研究法、編集者:篠原和毅等、発行所:(株)光琳、発行日:平成12年5月10日、第218〜220頁、3−3−9抗酸化機能、(1) 分光学的抗酸化機能評価、1.分光光度計によるDPPHラジカル消去能の測定に準ずる]。
【0036】
(カロチノイド測定法)
植物は食用部を採集し、その植物が多く含んでいる代表的なカロチノイドを測定した。
エタノール:tert−ブチルメチルエーテル(1:1)にBHA(100mg/l)を添加したものを用いて抽出した抽出液を調製し、その抽出液を高速液体クロマトグラフィーを用いて分離し、UV検出器で測定した。[新・食品分析法、編纂(社)日本食品科学工学会、新・食品分析法編集委員会、発行所:(株)光琳、発行日:平成8年11月30日、第316頁、3−4 β−カロテン、第322〜325頁、高速液体クロマトグラフィー法に準ずる]。
【0037】
(比較例1)
微量要素を施用しない以外は実施例1と同様にしてコマツナ(品種 浜美2号)を栽培し、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、表1に示す。
【0038】
表1に示したように、微量要素を土壌に施用した場合は(実施例1)、比較例1の無施用に比べ、コマツナのビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(β−カロチン)含量が向上し、かつ抗酸化活性が向上したことが判る。
【0039】
(実施例2)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素3ppm、マンガン20ppm、鉄20ppm、銅3ppm、亜鉛24ppm、モリブデン1ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をコマツナ(品種 浜美2号)に7日間間隔で3回葉面散布した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から9日後に食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、その結果を表1に示す。
【0040】
表1に示したように、微量要素を葉面散布した場合(実施例2)、比較例1の無施用に比べ、コマツナのビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(β−カロチン)含量が向上し、かつ抗酸化活性が向上したことが判る。
【0041】
(実施例3)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素7.5ppm、マンガン50ppm、鉄50ppm、銅7.5ppm、亜鉛60ppm、モリブデン2.5ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をコマツナ(品種 浜美2号)に7日間間隔で3回灌水施用した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、最後の灌水施用から9日後に食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、その結果を表1に示す。
【0042】
表1に示したように、微量要素を灌水施用した場合(実施例3)、比較例1の無施用に比べ、コマツナのビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(β−カロチン)含量が向上し、かつ抗酸化活性が向上したことが判る。
【0043】
(実施例4)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素0.5%、マンガン3.5%、鉄2.7%、銅0.75%、亜鉛3.35%、モリブデン0.025%に調整した化合物固形物を用いた。
上記化合物固形物40kg/10aをホウレンソウ(品種 アクティブ)の定植前の土壌に混和し土壌中の微量要素が前記最適値になるように施用した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、食用に供する程度の大きさになったものの食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、その結果を表1に示す。
【0044】
(比較例2)
微量要素を施用しない以外は実施例4と同様にして、ホウレンソウ(品種 アクティブ)を栽培し、実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、その結果を表1に示す。
【0045】
表1に示したように、微量要素を土壌に施用した場合(実施例4)、比較例2の無施用に比べ、ホウレンソウのビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(β−カロチン)含量が向上し、かつ抗酸化活性が向上したことが判る。
【0046】
(実施例5)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素7.5ppm、マンガン50ppm、鉄50ppm、銅7.5ppm、亜鉛60ppm、モリブデン2.5ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をホウレンソウ(品種 アクティブ)に7日間間隔で3回灌水施用した。
ホウレンソウはガラスハウス内で栽培し、最後の灌水施用から18日後に食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、その結果を表1に示す。
【0047】
表1に示したように、微量要素を灌水施用した場合(実施例5)、比較例2の無施用に比べ、ホウレンソウのビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(β−カロチン)含量が向上し、かつ抗酸化活性が向上したことが判る。
【0048】
(実施例6)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素0.6%、マンガン3%、鉄4.1%、銅0.5%、亜鉛2.7%、モリブデン0.01%に調整した化合物固形物を用いた。
上記の化合物固形物90kg/10aをカブ(品種 カラフルライブ)の定植前の土壌に混和し土壌中の微量要素が前記最適値になるように施用した。
カブは、ガラスハウス内で栽培し、食用に供する程度の大きさになったものの食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。また、食用部の新鮮重も測定した。その結果を表2に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0049】
(比較例3)
微量要素を施用しない以外は実施例6と同様にしてカブ(品種 カラフルライブ)を栽培し、実施例1と同様にして、ビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定し、また、食用部の新鮮重も測定した。その結果を表2に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0050】
表2に示したように、微量要素を土壌に施用した場合(実施例6)、比較例3の無施用に比べ、収量を低下させることなくカブのビタミンC含量、ポリフェノール含量が向上したことが判る。
【0051】
(実施例7)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素3ppm、マンガン20ppm、鉄20ppm、銅3ppm、亜鉛24ppm、モリブデン1ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をカブ(品種 カラフルライブ)に7日間間隔で3回葉面散布した。
カブはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から7日後に食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。また、食用部の新鮮重も測定し、その結果を表2に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0052】
表2に示したように、微量要素を葉面散布した場合(実施例7)、比較例3の無施用に比べ、収量を低下させることなくカブのビタミンC含量、ポリフェノール含量を向上できたことが判る。
【0053】
(実施例8)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素7.5ppm、マンガン50ppm、鉄50ppm、銅7.5ppm、亜鉛60ppm、モリブデン2.5ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をカブ(品種 カラフルライブ)に7日間間隔で3回灌水施用した。
カブはガラスハウス内で栽培し、最後の灌水施用から7日後に食用部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。また、食用部の新鮮重も測定し、その結果を表2に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0054】
表2に示したように、微量要素を灌水施用をした場合(実施例8)、比較例3の無施用に比べ、収量を低下させることなくカブのビタミンC含量、ポリフェノール含量を向上できたことが判る。
【0055】
(実施例9)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
水溶性化合物(セレン酸ナトリウム)を用いセレン酸ナトリウムが1ppmとなるように希釈した水溶性化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をトマト(品種 東光K)に1回葉面散布した。
トマトはガラスハウス内で栽培し、葉面散布から6日後に地上部を採集し実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表3に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0056】
(比較例4)
微量要素を施用しない以外は実施例9と同様にしてトマト(品種 東光K)を栽培し、実施例1と同様にして、ビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表3に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0057】
表3に示したように、微量要素を葉面散布した場合(実施例9)、比較例4の無施用に比べ、トマトのビタミンC含量、ポリフェノール含量が向上したことが判る。
【0058】
(実施例10)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
水溶性化合物(セレン酸ナトリウム)を用いセレン酸ナトリウムが0.1ppmとなるように希釈した水溶性化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をトマト(品種 東光K)に1回灌水処理した。
トマトはガラスハウス内で栽培し、灌水処理から6日後に地上部を採集し3株をまとめて1処理区とし、実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表3に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0059】
(比較例5)
微量要素を施用しない以外は実施例10と同様にしてトマト(品種 東光K)を栽培し、実施例1と同様にして、ビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表3に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0060】
表3に示したように、微量要素を灌水施用をした場合(実施例10)、比較例5の無施用に比べ、トマトのビタミンC含量、ポリフェノール含量が向上したことが判る。
【0061】
(実施例11)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として亜鉛化合物が24ppmとなるように調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をコマツナ(品種 浜美2号)に1回灌水処理した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、灌水処理から8日後に食用部を採集し、3株をまとめて1処理区とし、その3反復にて実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表4に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0062】
(比較例6)
微量要素を施用しない以外は実施例11と同様にしてコマツナ(品種 浜美2号)を栽培し、実施例1と同様にしてビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表4に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0063】
表4に示したように、微量要素を灌水処理した場合(実施例11)、比較例6の無施用に比べ、コマツナのビタミンC含量、ポリフェノール含量が向上したことが判る。
【0064】
(実施例12)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用し、微量要素としてモリブデン化合物が1ppmとなるように調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をコマツナ(品種 浜美2号)に1回灌水処理した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、灌水処理から8日後に食用部を採集し、3株をまとめて1処理区とし、その3反復にて実施例1と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量を測定した。その結果を表4に示す。
なお、カロチノイド含量の測定は行わなかった。
【0065】
表4に示したように、微量要素を灌水施用をした場合(実施例12)、比較例6の無施用に比べ、コマツナのビタミンC含量、ポリフェノール含量が向上したことが判る。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
(実施例13)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素0.6%、マンガン3%、鉄4.1%、銅0.5%、亜鉛2.7%、モリブデン0.01%に調整した化合物固形物を用いた。
上記化合物固形物90Kg/10aをコマツナ(品種 照彩)の定植前の土壌に混和し土壌中の微量要素が前記最適値になるように施用した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、食用に供する程度の大きさになったものの食用部を採集し、前記のカロチノイド測定法によりコマツナの代表的なカロチノイドであるβ−カロチンの含量(μg/100g)を測定し、また食用部の新鮮重(g)も測定し、その結果を表5に示す。
なお、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性については測定を行わなかった。
【0071】
(比較例7)
微量要素を施用しない以外は実施例13と同様にしてコマツナ(品種 照彩)を栽培し、カロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、また食用部の新鮮重(g)も測定し、その結果を表5に示す。
なお、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性については測定を行わなかった。
【0072】
表5に示したように、微量要素を土壌に施用した場合は(実施例13)、比較例7の無施用に比べ、収量を低下させることなくカロチノイド(β−カロチン)含量が向上したことが判る。
【0073】
(実施例14)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素3ppm、マンガン20ppm、鉄20ppm、銅3ppm、亜鉛24ppm、モリブデン1ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をコマツナ(品種 照彩)に1回葉面散布した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から12日後に食用部を採集し実施例13と同様にカロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、また食用部の新鮮重(g)も測定し、その結果を表5に示す。
なお、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性については測定を行わなかった。
【0074】
表5に示したように、微量要素を葉面散布した場合(実施例14)、比較例7の無施用に比べ、コマツナの収量を低下させることなくカロチノイド(β−カロチン)含量が向上したことが判る。
【0075】
(実施例15)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素7.5ppm、マンガン50ppm、鉄50ppm、銅7.5ppm、亜鉛60ppm、モリブデン2.5ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をコマツナ(品種 照彩)に1回灌水施用した。
コマツナはガラスハウス内で栽培し、最後の灌水施用から12日後に食用部を採集し実施例13と同様にカロチノイド(β−カロチン)含量を測定し、また食用部の新鮮重(g)も測定し、その結果を表5に示す。
なお、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、抗酸化活性については測定を行わなかった。
【0076】
表5に示したように、微量要素を灌水施用した場合(実施例15)、比較例7の無施用に比べ、収量を低下させることなくカロチノイド(β−カロチン)含量が向上したことが判る。
【0077】
【表5】

【0078】
(実施例16)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素0.6%、マンガン3%、鉄4.1%、銅0.5%、亜鉛2.7%、モリブデン0.01%に調整した化合物固形物を用いた。
上記化合物固形物90Kg/10aをニンジン(品種 ベビーピッコロ)の定植前の土壌に混和し土壌中の微量要素が前記最適値になるように施用した。
ニンジンはガラスハウス内で栽培し、食用に供する程度の大きさになったものの食用部を採集し、前記のビタミンC測定法、ポリフェノール測定法、およびカロチノイド測定法によりビタミンC含量(mg/100ml)、ポリフェノール含量(μmol/ml)、ニンジンの代表的なカロチノイドであるα−カロチンおよびβ−カロチンについてα−カロチン含量(μg/100g)およびβ−カロチン(μg/100g)を測定し、その結果を表6に示す。
【0079】
(比較例8)
微量要素を施用しない以外は実施例16と同様にしてニンジン(品種 ベビーピッコロ)を栽培し、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(α−カロチン、β−カロチン)含量を測定し、その結果を表6に示す。
【0080】
表6に示したように、微量要素を土壌に施用した場合は(実施例16)、比較例8の無施用に比べ、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(α−カロチン、β−カロチン)含量が向上したことが判る。
【0081】
(実施例17)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素3ppm、マンガン20ppm、鉄20ppm、銅3ppm、亜鉛24ppm、モリブデン1ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をニンジン(品種 ベビーピッコロ)に7日間隔で5回葉面散布した。
ニンジンはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から7日後に食用部を採集し実施例16と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(α−カロチン、β−カロチン)含量を測定し、その結果を表6に示す。
【0082】
表6に示したように、微量要素を葉面散布した場合(実施例17)、比較例8の無施用に比べ、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(α−カロチン、β−カロチン)含量が向上したことが判る。
【0083】
(実施例18)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素7.5ppm、マンガン50ppm、鉄50ppm、銅7.5ppm、亜鉛60ppm、モリブデン2.5ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をニンジン(品種 ベビーピッコロ)に7日間隔で5回灌水施用した。
ニンジンはガラスハウス内で栽培し、最後の灌水施用から12日後に食用部を採集し実施例16と同様にビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(α−カロチン、β−カロチン)含量を測定し、その結果を表6に示す。
【0084】
表6に示したように、微量要素を灌水施用した場合(実施例18)、比較例8の無施用に比べ、ビタミンC含量、ポリフェノール含量、カロチノイド(α−カロチン、β−カロチン)含量が向上したことが判る。
【0085】
【表6】

【0086】
(実施例19)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素0.6%、マンガン3%、鉄4.1%、銅0.5%、亜鉛2.7%、モリブデン0.01%に調整した化合物固形物を用いた。
上記化合物固形物90Kg/10aをミニトマト(品種 ココ)の定植前の土壌に混和し土壌中の微量要素が前記最適値になるように施用した。
ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、食用に供する状態になったものの果実を採集し、前記のビタミンC測定法、カロチノイド測定法によりビタミンC含量(mg/100ml)、トマト果実の代表的なカロチノイドであるβ−カロチンおよびリコペンについてβ−カロチン含量(μg/100g)、リコペン含量(μg/100g)を測定し、表7に示す。なおポリフェノールは測定しなかった。
【0087】
(比較例9)
微量要素を施用しない以外は実施例19と同様にしてミニトマト(品種 ココ)を栽培し、ビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量を測定し、表7に示す。
なおポリフェノールは測定しなかった。
【0088】
表7に示したように、微量要素を土壌に施用した場合は(実施例19)、比較例9の無施用に比べ、ビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量が向上したことが判る。
【0089】
(実施例20)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素3ppm、マンガン20ppm、鉄20ppm、銅3ppm、亜鉛24ppm、モリブデン1ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をミニトマト(品種 ココ)に7日間隔で6回葉面散布した。
ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の葉面散布から10日後に果実を採集し実施例19と同様にビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量を測定しその結果を表7に示す。なおポリフェノールは測定しなかった。
【0090】
表7に示したように、微量要素を葉面散布した場合(実施例20)、比較例9の無施用に比べ、ビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量が向上したことが判る。
【0091】
(実施例21)
栽培用土壌として微量要素がほとんど含まれていないものを使用した。
微量要素として、ホウ素7.5ppm、マンガン50ppm、鉄50ppm、銅7.5ppm、亜鉛60ppm、モリブデン2.5ppmに調整した化合物水性液を用いた。
このようにして調整した微量要素の水性液をミニトマト(品種 ココ)に7日間隔で9回灌水施用した。
ミニトマトはガラスハウス内で栽培し、最後の灌水施用から14日後に果実を採集し実施例19と同様にビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量を測定しその結果を表7に示す。なおポリフェノールは測定しなかった。
【0092】
(比較例10)
微量要素を施用しない以外は実施例21と同様にしてミニトマト(品種 ココ)を栽培し、ビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量を測定し、表7に示す。
なおポリフェノールは測定しなかった。
【0093】
表7に示したように、微量要素を灌水施用した場合(実施例21)、比較例10の無施用に比べ、ビタミンC含量、カロチノイド(β−カロチン、リコペン)含量が向上したことが判る。
【0094】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0095】
コストおよび安全面の問題がある遺伝子組替え法を用いることなく、また手間がかかる上、収量の低下を招く問題がある肥料を低減して植物を栽培する方法や植物にストレスを与える方法を用いることなく、本発明の栽培方法によれば、消費者が食べている多様な植物が本来持っているはずの機能が高められ、そして収量の低下を招かずに、ビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドを多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物や果実などの収穫物を得ることができ、得られた植物や果実などの収穫物はビタミンCやポリフェノールおよびカロチノイドをサプリメントとして摂取したり補給したりできる、という顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(イ)〜(ホ)は、本発明の微量要素を用いる高機能性植物の栽培方法の一例を模式的に説明する図である。
【図2】(イ)〜(ニ)は、本発明の微量要素を用いる高機能性植物の他の栽培方法の例を模式的に説明する図である。
【符号の説明】
【0097】
1、1A 土壌
2、2A 化合物固形物を施用した土壌
3、3A 植物
4、4A 葉面
5 収穫物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素およびマンガンおよび鉄および銅を含む混合微量要素および/または亜鉛、モリブデン、セレンから選ばれる少なくとも1つの微量要素を所定量含む化合物水性液および/または前記化合物固形物を用いて植物を栽培する際に、前記化合物水性液はそのままあるいは水で希釈して、土壌に灌水施用するかまたは葉面散布して使用し、前記化合物固形物は土壌に施用して、前記微量要素を植物に適用することにより、前記微量要素を適用しなかった場合に比較してビタミンCおよびポリフェノールおよびカロチノイドをより多量に含み、かつ抗酸化機能を有する植物を得ることを特徴とする高機能性植物の栽培法。
【請求項2】
前記化合物固形物を植物の定植前の土壌に施用し、施用後、植物を定植するか、あるいは植物が生育している土壌に施用することを特徴とする請求項1記載の高機能性植物の栽培法。
【請求項3】
前記化合物水性液および/または前記化合物固形物を肥料成分とともに使用することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の高機能性植物の栽培法。
【請求項4】
植物を栽培する土壌中の前記微量要素の分析を行い、その分析結果を予め決められた前記微量要素の最適値と対比して、不足する微量要素を前記最適値になるように調合した前記化合物固形物を所定量用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の高機能性植物の栽培法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−304777(P2006−304777A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79074(P2006−79074)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(391029495)エーザイ生科研株式会社 (5)
【Fターム(参考)】