説明

高気圧チャンバ用加圧給気装置

【課題】 マイナスイオン効果に加えて高気圧チャンバ内の除電も、一つのイオン発生器で行えるようにする。
【解決手段】 プラスイオンとマイナスイオンとがほぼ等量生成される除電モードと、マイナスイオンの方が多く生成されるマイナスイオンモードとを切り替えることができるイオン発生器24を、給気ホース24からの高気圧空気が高気圧チャンバに入る直前位置に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を収容して高気圧酸素療法を行うためのカプセル型の高気圧チャンバ内に、ホースを通じて高気圧空気を供給する高気圧チャンバ用加圧給気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の加圧給気装置として、特許文献1(特開2004−275706号公報)に記載されたものがある。これに記載のものでは、マイナスイオン効果を意図して、マイナスイオンを発生するイオン発生器を、加圧給気装置(加圧機構)内又は高気圧チャンバ内に備えている。
【0003】
しかし、マイナスイオン効果は期待できても、マイナスイオンのみでは除電できないので、高圧の密室となるカプセル型の高気圧チャンバ内に、先の利用者による帯電電位が残留したままとなり、放電による電撃や引火の恐れがあるとともに、塵埃等がチャンバ内面に付着し、衛生上も問題がある。
【0004】
また、加圧ポンプを使用しているが、その駆動源であるモータ等からの発熱により、高気圧チャンバ内に供給される空気が温風となり、発汗用カプセルのようになってしまうとか、新鮮な高気圧酸素浴という感じが減退するとか、息苦しさを感ずる等の問題がある。
【特許文献1】特開2004−275706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の第1の課題は、マイナスイオン効果に加えて高気圧チャンバ内の除電も、一つのイオン発生器で行えるようにすることにある。
【0006】
本発明の第2の課題は、高気圧チャンバ内に供給される空気が温風となるのを、簡単構成で防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の課題を達成するため、本発明は、人体を収容できる高気圧チャンバと加圧給気装置本体とを給気ホースを介して連結し、加圧給気装置本体からの高気圧空気をホースを通じて高気圧チャンバ内へ供給する加圧給気装置において、プラスイオンとマイナスイオンとがほぼ等量生成される除電モードと、マイナスイオンの方が多く生成されるマイナスイオンモードとを切り替えることができるイオン発生器を、給気ホースからの高気圧空気が高気圧チャンバに入る直前位置に設置したことを特徴とする。
【0008】
イオン発生器は、具体例として、プラス・マイナスそれぞれの放電電極と、これらにプラス・マイナスそれぞれの直流高電圧を印加するプラス・マイナスそれぞれの高電圧発生回路と、マイナス側の高電圧発生回路を、その出力電圧がプラス側の高電圧発生回路よりも高くなるように切り替えるマイナス高電圧上昇回路と、このマイナス高電圧上昇回路を周期的に動作させるタイマと、これらマイナス高電圧上昇回路及びタイマの動作・停止を切り替えるマイナス優勢モード用スイッチとを備えている。
【0009】
上記第2の課題も達成するため、加圧給気装置本体に内蔵されたコンプレッサと給気ホースとの間に、コンプレッサからの空気流をボルテック効果により冷却して給気ホースへ流す低温空気発生器を接続する。
【0010】
さらに、加圧給気装置本体に、コンプレッサからの空気を熱交換により冷却する熱交換器を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高気圧チャンバ内に給気と共にマイナスイオンを吹き込むことができるマイナスイオンモードと、プラスイオンとマイナスイオンの両方を同時に吹き込むことができる除電モードとに、一つのイオン発生器で切り替えることができるので、マイナスイオン効果に加えて高気圧チャンバ内の除電も、一つのイオン発生器で行える。また、そのイオン発生器は、給気ホースからの高気圧空気が高気圧チャンバに入る直前位置に設置してあるため、高気圧チャンバに入るまでにイオンが給気ホース中で消滅するようなことはない。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、プラスイオンとマイナスイオンとがほぼ等量生成されるモードと、マイナスイオンの方が多く生成されるマイナス優勢状態が周期的に起こるモードとに切り替えることができ、特に後者のモードの場合、プラスイオンとマイナスイオンとがほぼ等量生成された直後に、マイナスイオンの方が多く生成され、それが交互に周期的に繰り返されるので、高気圧チャンバの内面に付着した塵や細菌等を、除電して付着力を弱めた直後に除菌(殺菌)し、しかもそれを周期的に繰り返すことができるため、死菌が塵と共に高気圧チャンバに付着したまま残留するということはなく、除電と除菌(殺菌)、更に除塵を効果的に行える。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、コンプレッサからの空気流をボルテック効果を利用した低温空気発生器により冷却して給気ホースへ流すので、低温空気発生器は小型であるため、コンプレッサからの高気圧空気を小さい設備で効率良く冷却して高気圧チャンバへ給気できる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、コンプレッサからの空気を熱交換器にて熱交換により冷却するので、空気量が多くても、コンプレッサからの高気圧空気を冷却して高気圧チャンバへ給気できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
本発明による加圧給気装置は、図1に示すように、人体を収容できるカプセル型高気圧チャンバ21内に、高気圧空気の給気と共にイオンを吹き込むことができるもので、給気ホース22を介して高気圧チャンバ21に接続された加圧給気装置本体23と、給気ホース22と高気圧チャンバ21との接続口に付設されたイオン発生器24とからなる。
【0017】
高気圧チャンバ21は、横長の袋状で、ファスナ25を開けて入り、横臥して使用するようになっている。高気圧チャンバ21には透明な覗き窓26・27が設けられている。
【0018】
図2は全体の概要構成を示すブロック図で、加圧給気装置本体23には、モータを駆動源とするコンプレッサ28、コンプレッサ28からの高圧空気を空冷ファン29の空冷による熱交換で冷却する熱交換器30、その排気側に接続した切換弁31、その後段に接続された低温空気発生器32、通常の空気フィルタ33、除菌フィルタ34、高電圧電源部35が備えられている。
【0019】
図3に示すように、コンプレッサ28、空冷ファン29、熱交換器30、切替弁31、低温空気発生器32、高電圧電源部35は、加圧給気装置本体23の筐体36内に組み込まれているが、切換弁31の切換レバー31a、空気フィルタ33、除菌フィルタ34は筐体36の外面に取り付けられている。
【0020】
熱交換器30を通ってきた高圧空気は、切換弁31により、低温空気発生器32を介するか介さないかを切り換えることができるようになっている。空気フィルタ33で除塵され、除菌フィルタ34で除菌された高圧空気は、給気ホース35を通じてイオン発生器3へ送られ、ここでイオンを混入され、その混入と同時に高気圧チャンバ21内へ吹き込まれる。イオン発生器24には、給気ホース35と一緒に束ねた高圧ケーブル37を介して高電圧電源部35より高電圧が供給される。
【0021】
図4に、高電圧電源部35を含めたイオン発生器24の回路構成を示し、定電圧回路1と、連続的又は間欠的に高周波発振する高周波発振回路2と、その高周波出力からプラス・マイナスそれぞれの直流高電圧を生成するプラス・マイナスの倍電圧整流回路3A・3Bと、そのプラス・マイナスそれぞれの高電圧を印加されるプラス・マイナスそれぞれの放電電極4A・4Bに加え、マイナス側倍電圧整流回路3Bの出力を上昇させるマイナス高電圧上昇回路5と、このマイナス高電圧上昇回路5を周期的に動作させるタイマ6とで構成されている。
【0022】
定電圧回路1は、外部の商用電源からの電圧を一定の直流電圧にする。高周波発振回路2は、その一定の直流電圧により自励で連続的又は間欠的に高周波発振して高周波トランス7の二次側に高周波の高電圧を連続的又は間欠的に出力する。
【0023】
高周波トランス7の一次側コイル7aの一端は入力側グランドライン8に、二次側コイル7bの一端は出力側グランドライン9にそれぞれ接続され、この出力側グランドライン9は、プラス・マイナスの倍電圧整流回路3A・3Bのグランドラインと、プラス・マイナスそれぞれの接地用抵抗10A・10Bを介して接続され、これら倍電圧整流回路3A・3Bはグランドラインを基準として電位の極性及び大きさが決まる。
【0024】
プラス・マイナスの倍電圧整流回路3A・3Bは、それぞれダイオードDとコンデンサCとを直列に積み重ねるように接続することにより、その積み重ねた段数だけ、高周波トランス7の二次電圧の倍数の高圧直流電圧が得られる。この実施例では、マイナス側倍電圧整流回路3Bよりもプラス側倍電圧整流回路3Aの増幅段数を1段だけ多くしてある。
【0025】
これらプラス・マイナスの倍電圧整流回路3A・3Bの出力端は、プラス・マイナスの放電電極4A・4Bとそれぞれ抵抗結合にするため、プラス・マイナス別々に電流制限用抵抗11A・11Bを介して放電電極3A・3Bに接続されている。
【0026】
マイナス側倍電圧整流回路3Bのグランドラインには、接地用抵抗10Bを介さずにバイパスして接地するため、マイナス高電圧上昇回路5のトランジスタ12が接続され、このトランジスタ12がオンになったときは、マイナス側倍電圧整流回路3Bは接地用抵抗10Bを介さずに接地されることにより、出力電圧が上昇し、プラス側倍電圧整流回路3Aの出力電圧よりも高くなる。
【0027】
トランジスタ12は、タイマ6の出力波形(矩形波)を図4に併記してあるように、タイマ6の出力、つまりタイマ6にて任意に設定した周期でかつ任意に設定した時間幅で繰り返しオン・オフされる。このタイマ6は、マイナス優勢モード用スイッチ13をオンにすることにより動作する。
【0028】
従って、このマイナス優勢モード用スイッチ13をオンにすると、タイマ6が動作してトランジスタ12がタイマ6で任意に設定した周期でかつ任意に設定した時間幅で繰り返しオン・オフされるので、マイナス側倍電圧整流回路3Bの出力電圧が、トランジスタ12がオンになる周期でプラス側倍電圧整流回路3Aの出力電圧よりも高くなり、プラス・マイナスの放電電極4A・4Bによる放電では、タイマ6の出力波形がHIGHになる周期でマイナスイオンの生成量の方がプラスイオンの生成量よりも多くなる。つまり、タイマ6の出力波形がLOWのときはプラスイオンとマイナスイオンとはほぼ等量であるが、HIGHのときはマイナスイオンの方が多くなる。
【0029】
これをイオンによる効果から見ると、プラスイオンとマイナスイオンとをほぼ等量とした除電(及び除菌並びに除塵)作用と、マイナスイオンを優勢とした除菌(殺菌)作用とが交互に周期的に繰り返されることになる。
【0030】
マイナス側倍電圧整流回路3Bについては、それ自体の出力電圧を可変抵抗であるマイナス高電圧調整ボリューム14によって調整できるようにもなっている。
【0031】
プラス・マイナスの放電電極4A・4Bの放電により出力側グランドライン9に流れる放電電流は、放電電流検出用抵抗15にて検出されてから、比較回路16にて閾値と比較され、閾値を越えたとき音又は光による警報器17が動作するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】高気圧チャンバを含めて示した本発明の一実施例の加圧給気装置の斜視図である。
【図2】全体の概要構成を示すブロック図である。
【図3】加圧給気装置本体の斜視図である。
【図4】高電圧電源部を含めたイオン発生器の回路構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 定電圧回路
2 高周波発振回路
3A プラス側倍電圧整流回路
3B マイナス側倍電圧整流回路
4A・4B プラス・マイナスの放電電極
5 マイナス高電圧上昇回路
6 タイマ
7 高周波トランス
7a 一次側コイル
7b 二次側コイル
8 入力側グランドライン
9 出力側グランドライン
10A・10B 接地用抵抗
11A・11B 電流制限用抵抗
12 トランジスタ
13 マイナス優勢モード用スイッチ
14 マイナス高電圧調整ボリューム
15 放電電流検出用抵抗
16 比較回路
17 警報器
21 高気圧チャンバ
22 給気ホース
23 加圧給気装置本体
24 イオン発生器
25 ファスナ
26・27 覗き窓
28 コンプレッサ
29 空冷ファン
30 熱交換器
31 切換弁
31a 切換レバー
32 低温空気発生器
33 空気フィルタ
34 除菌フィルタ
35 高電圧電源部
36 筐体
37 高圧ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を収容できる高気圧チャンバと加圧給気装置本体とを給気ホースを介して連結し、加圧給気装置本体からの高気圧空気をホースを通じて高気圧チャンバ内へ供給する加圧給気装置において、プラスイオンとマイナスイオンとがほぼ等量生成される除電モードと、マイナスイオンの方が多く生成されるマイナスイオンモードとを切り替えることができるイオン発生器を、前記給気ホースからの高気圧空気が前記高気圧チャンバに入る直前位置に設置したことを特徴とする高気圧チャンバ用加圧給気装置。
【請求項2】
イオン発生器は、プラス・マイナスそれぞれの放電電極と、これらにプラス・マイナスそれぞれの直流高電圧を印加するプラス・マイナスそれぞれの高電圧発生回路と、マイナス側の高電圧発生回路を、その出力電圧がプラス側の高電圧発生回路よりも高くなるように切り替えるマイナス高電圧上昇回路と、このマイナス高電圧上昇回路を周期的に動作させるタイマと、これらマイナス高電圧上昇回路及びタイマの動作・停止を切り替えるマイナス優勢モード用スイッチとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の高気圧チャンバ用加圧給気装置。
【請求項3】
加圧給気装置本体に内蔵されたコンプレッサと給気ホースとの間に、コンプレッサからの空気流をボルテック効果により冷却して給気ホースへ流す低温空気発生器を接続したことを特徴とする請求項1又は2に記載の高気圧チャンバ用加圧給気装置。
【請求項4】
加圧給気装置本体に、コンプレッサからの空気を熱交換により冷却する熱交換器を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の高気圧チャンバ用加圧給気装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate