説明

高温でリボヌクレアーゼを失活する方法

RNaseの分解からRNAを保護し、溶液中のRNaseを失活するための方法が開示される。本発明は、保存中にRNAを保護し、定量PCR反応を実行し、又はcDNAを調製するための方法を含む。本方法は、還元剤を含むか、又は含まない溶液中のRNase阻害剤と、RNaseを失活させる高熱との組合せを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リボヌクレアーゼ(RNases)による分解からリボ核酸(RNA)を保護する方法を導く。より詳細には、本発明は、RNAを活用する研究プロトコール(例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、RT−PCRなど)で使用する試薬に存在するRNasesからRNAを保護するための方法と同様に、RNAの保存中にRNasesからRNAを保護するための方法を含む。さらに、本発明はRT−PCRの感度を高める方法を含む。
【背景技術】
【0002】
リボ核酸(RNA)は、ほとんどの生物のシステムにおいて非常に重要な要素である。その生物学的な役割は、核からの遺伝コードを運ぶメッセンジャーRNA(mRNA)、核酸のメッセージをポリペプチドに翻訳するように支援するリボソーマルRNA(rRNA)、及びメッセンジャーRNAの解読を支援ように機能するトランスファーRNA(tRNA)を含む。さらに、RNAは、酵素的機能を有する、干渉RNA及び調節的なリボザイムなどの他の調節機能の宿主において、認識させるように開始する。数多のウィルスにおいて、RNAはウィルス自身の核となる遺伝的なメッセージを運ぶ。
【0003】
生物学的な作用におけるRNAの重要性のため、RNA生成及び分解はin vivoで厳しく制御されなければならない。一方で、DNAは全く安定しており、それは二重鎖分子の影響によるものであり、RNA(一本鎖分子)は酵素的な分解に対して非常に弱い。酵素的な分解は、リボヌクレアーゼ(RNases)と呼ばれるユビキタスクラスの酵素によって実行される。
【0004】
RNasesは非常にロバストな酵素である。ほとんどのタンパク質と違って、RNasesは、極度のpHまたは高温のいずれによっても分解するのが非常に困難である。RNasesが非常にロバストとなるように進化したいくつかの理論がある。それらは、縮重RNAからタンパク質に翻訳する結果の保護と、細胞内RNAの調節とを含む。加えて、RNasesは一時的に高温によって変性できるが、高温だけによるRNasesの変性が、つまり室温でのRNasesからRNAを保護するための効果的な方法でないように、いくつかのRNasesは冷却で元に戻る(この現象を可逆的熱変性と呼ぶ)。
【0005】
RNAは分子生物学において非常に重要なツールである。真核生物ゲノムDNAのイントロンの存在により、ゲノムDNAに存在する遺伝的なメッセージは、直接的にタンパク質に翻訳できない。したがって、ゲノムDNAは、ライブラリーの作成、クローニング、プラスミドまたはベクターの細胞に遺伝子を導入する場合の第二の選択である。ライブラリーに最適なソースは、相補鎖DNA(cDNA)である。cDNAは、mRNAからDNAに逆転写して直接的に作成される。このプロセスは、一般的に“スプライシング”と呼ばれる、イントロンの除去を経る、mRNAの分離を必要とする。スプライシングの過程で、非翻訳のイントロンは、RNAがタンパク質に翻訳される以前に除去される。デオキシヌクレチド基(RNAに見られるウラシルに代わって、チミンも含む)の存在下で逆転写酵素を使用することによって、mRNAに相補的な一本鎖DNAが合成される。
【0006】
さらに、DNAポリメラーゼを使用する一本鎖DNAの転写の複製は、mRNAテンプレートの配列を有する二本鎖cDNA分子を生成する。さらに、ゲノムDNAと同様にcDNAは非常に安定であり、分子生物学的な操作におけるcDNAの活用性は多大である。cDNAは、PCRを使用する増幅、クローニングで使用するためのcDNAライブラリーの作製を含む、様々な目的で使用できる。cDNAを合成することによって、研究者は、生物に導入する場合に、機能的なタンパク質に直接的に翻訳できる、合成遺伝子を作製できる。イントロンが存在する理由で、この能力は真核生物のゲノムDNAを使用して不可能である。適切なタンパク質を生じるために、イントロンは、ゲノムシークエンスから適切にスプライスされなければならない。
【0007】
cDNAの合成は、RNAのための単に試験的な使用ではない。また、RNAベクター(例えば、非特許文献1参照)及びRNAプローブなど他の使用は、RNasesによって悪影響を受ける。したがって、ここ数年の重要な研究努力は、RNasesからRNAを保護する方法を開発することである。概略すると、分析のためにRNAを保存する必要性があったので、多くの異なる方法がRNase活性を阻害するために用いられてきた。サンプルから除去されるRNase活性は、RNAとのRNaseの共同精製によるか、またはサンプルを処理する際に使用する試薬からサンプルに導入されてよい。
【0008】
RNase活性を阻害するための幾つかの方法が開発されている。それらの方法は、ジエチルピロカルボネート(DEPC)の使用、RNase阻害タンパク質の使用、RNaseに優先的に結合するリボース化合物の使用を含む。
【0009】
RNase活性を阻害する一つの方法は、化学剤ジエチルピロカルボネート(DEPC)の使用を含む。DEPCは、酵素を失活するようにRNaseと反応する。しかしながら、このタイプの化学的な存在の使用は、常に便利ではなく、可能でもない。(例えば、可逆的な化学反応により、TrisとMOPSの溶液は、DEPCと共に処理できない。)DEPCは、RNaseの多数の異なる残基と反応し、RNase酵素の失活を導く。例えば、RNaseA(EC3.2.27.5)において、2つのヒスチジン残基(His−12及びHis−119)は、酵素の触媒活性において重要である。DEPCはRNaseAのHis−12残基と反応して、カルバメート(carbamate)タイプの結合を生じ、これによって、この残基がRNAとの反応において利用できなくさせる。(例えば、非特許文献2及び3参照。)他のタイプのRNasesにおいて、DEPCは、リジンのε−アミノ基と、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基と、分子内及び分子間で妨害し、RNasesを失活する。DEPCとの処理が効果的である一方、その使用は非常に煩雑である。DEPCはまた、疑わしい発癌物質である。
【0010】
RNasesに対する保護としてDEPCを使用する場合、RNAと接触する試薬、メガネ、電気泳動装置及び他の実験器具はDEPCで処理した水で洗浄し、RNasesの分解を促進するように37℃で数時間インキュベーションする。次いで、DEPCを破壊するために、処理された器具は約30分間オートクレーブする。加えて、保存中にRNAを保護するように、RNA溶液はDEPCで処理した水で保存される。RNAを保存するこの方法が使用される場合、DEPCは、RNAを使用する前に溶液から除去される必要がある。
【0011】
RNase阻害タンパク質は、膵臓のRNaseを阻害したタンパク質として最初に認識された。このRNase阻害タンパク質の系は識別され、胎盤エキスから精製された。(例えば、特許文献4参照。)結果として、RNase阻害剤の遺伝子は、胎盤からクローニングされ、組換え体RNase阻害タンパク質が開発された。(例えば、特許文献1参照。)それらの阻害タンパク質は、阻害剤とRNaseとの間で非常に強固な1:1の複合体を形成することによって力学的に機能する。
【0012】
ブタ及びラットと同様に、ヒトの胎盤の阻害剤をコード化する遺伝子がクローニングされ、配列の解読が行なわれた。この系の数多の要素における三次元構造が決定された。(例えば、非特許文献5参照。)この系のRNase阻害タンパク質の特徴の比較が発行された。(例えば、非特許文献6、7参照。)分子生物学の応用におけるそれら阻害タンパク質の有用性は、ある程度それらの特徴に帰する。特に、阻害タンパク質のヒトの胎盤の形態は、(1)酵素のRNaseA、B及びC系のRNaseを阻害し、(2)約55℃の水溶液で熱的に失活されるように、(3)E.coliからの主要なRNase(通常、RNaseIという)または植物に由来するRNaseを阻害することができないことが報告されている。(例えば、非特許文献8、9参照。)RNaseが阻害剤と複合体となる場合、複合体はRNase活性を全く有しない。しかしながら、特許文献9で報告されているように、RNaseは阻害剤によって永久的に失活されない。ある条件下で阻害剤が阻害剤とRNaseとの複合体から開放される場合、自由になったRNaseはRNAを分解する能力を回復する。
【0013】
天然源からの分離または組換手段によってなされた、ヒトの胎盤からのRNase阻害タンパク質は、長年にわたって市販されて入手可能である。この間、RT−PCRなどの特定の分子生物学の応用においてRNAの分解を防ぐ際に阻害剤が効果的でない報告がされている。これは、RT−PCR反応で使用される温度における阻害タンパク質の脆弱な熱安定性によると報告している。実際、RNase阻害剤を添加することを提案する上記の文献は、RT−PCR実験の成功的な完遂に悪影響を及ぼし得る。要するに、供給されたRNase阻害タンパク質は、RNaseに対して複合される阻害タンパク質の重要な分画をすでに有することを非特許文献9は提案している。さらに、このRNaseは、RNase阻害剤を含有する溶液の加熱における活性な形態から放出され得る。非特許文献9は、放出される潜在的に活性なRNaseが実験におけるRNAテンプレートを破壊し得ると推測し、したがって、実験の失敗に至る。
【特許文献1】米国特許第5,552,302号
【非特許文献1】Zhang et al. (1997) Virology 233:327−338)
【非特許文献2】Findlay et al. (1961) Nature 190:781−784
【非特許文献3】Raines (1998) Chem Rev. 98:1045−1066.
【非特許文献4】Blackburn, P. et al. (1977) J. Biol. Chem. 252:5904−5910.
【非特許文献5】Kobe & Deisenhofer (1996) “Mechanism of ribonuclease inhibition by ribonuclease inhibitor protein based on the crystal structure of its complex with ribonuclease A,” J. Mol. Biol. 264(5):1028−1043.
【非特許文献6】Blackburn et al. (1977) J. Biol. Chem. 252:5904−5910
【非特許文献7】Burton & Fucci (1982) Int. J. Pept. Protein Res. 19:372−379
【非特許文献8】“Expressions 9.3,” a publication of Invitrogen Life Technologies (San Diego, California),
【非特許文献9】Ambion, Inc.’s (Austin, Texas) product literature for Ambion’s RNase Inhibitor.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
RNaseからRNAを防ぐことの難しさにより、RNAの保存及びRNAの操作中において、RNaseの分解からRNAを保護する良好な手法を必要としているが、満足したものではなかった。実施が簡素で、有害な試薬を使用するべきでない手法を必要とする。介在して追加的な精製ステップがなく、RNAの酵素的な分解を気にすることなく、(プロトコールから別のプロトコールへと移る際に)直接的に使用できる、RNaseから保護されたRNAを生じる手法を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは驚いたことに、哺乳類(ヒトの胎盤、ラットなど、天然または組換え体)からのRNase阻害タンパク質が、特定の化学的な条件で組み合わせできることを発見し、組み合わせがRT−PCR及び定量RT−PCRなどの特に高温度の応用で阻害剤を効果的にさせることを発見した(Joe:それらの特定の化学的な試薬、つまりDTTはもはや必要ではなく、熱だけが作用する)。特に、RNaseの含有が疑わしいサンプルを含むRNA阻害剤の溶液を加熱する場合、反応におけるRNaseの阻害となるだけでなく、RNase阻害剤を失活する状況下の溶液処理後の活性RNaseの放出がない。RNase阻害剤の溶液は如何なる状況(RNA阻害剤を失活し、潜在的に活性なRNaseを実験溶液に放出する)でも加熱されるべきでないことを上述の文献が示す限り、本発明は胎盤由来のRNA阻害剤が用いられる従来の手法と対立する。
【0016】
本発明の別の特異的な態様は、本発明のRNase阻害剤溶液が加熱される場合、溶液は、通常、RNase阻害剤単独、又は添加した試薬単独では阻害されないRNaseを失活可能であることである。作用の特定方法に限定されないが、明らかにRNaseを失活されることができる範囲のこの増加は、RNase阻害剤と添加試薬または熱との間の相乗の結果である。組み合わせがその部分の合計よりも大きいと、その組み合わせは、阻害剤又は添加試薬によっては失活されない、RNaseを失活する。最終結果は、本願明細書に記載されて、請求される本発明が、溶液の加熱の前後で哺乳類のRNaseに対するRNAの保護となり、さらに穏やかに溶液を加熱した後に細菌及び植物源に由来するRNaseに対する保護を提供することである。
【0017】
本発明の別の特異的な態様は、反応混合物が還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DTT)が欠けている時でさえ、本発明のRNase阻害剤の溶液がRNaseを失活可能にすることである。従来技術において、ジチオスレイトール又は同様の機能の還元剤は、必須の試薬とみなされる。しかしながら、本発明者らは、この種の還元剤は、本願明細書において記載されている阻害剤を使用してRNaseを失活するために、絶対に必要でないと決定した。
【0018】
したがって、本発明の主な目的は、RNAをRNase分解から保護する方法を提供することである。本発明の第一の実施態様は、RNAをRNaseによる酵素分解から保護するための方法を導く。この方法は、RNAを含有する、又は後にRNAが添加される第一溶液に、RNase阻害剤タンパク質と、DTTなどの還元剤(例えば、少なくとも約50μM)を含むか又は含まないバッファー量を含有する第二溶液を添加することからなる。第二溶液のRNase阻害剤タンパク質の容量は、混合液に存在するRNaseによる酵素分解からRNAを保護するために十分である。次いで、混合液に存在するRNase活性を阻害するために十分な時間において約50℃程度の温度まで加熱する。代替となる実施態様において、混合液は65℃より高い温度まで加熱される。
【0019】
この手法において、混合液に存在するか、または後に混合液に加えられるRNAは、一般的に、RNase、特に哺乳類のRNaseによる酵素分解から保護される。RNAが後に混合液に添加される場合、混合液は、少なくとも約90℃まで加熱できる。
【0020】
好ましい方法は、RNaseA、RNaseB、RNaseC及びRNaseIによる酵素分解からRNAを保護する。
【0021】
RNase阻害タンパク質を含有するバッファーは、β−メルカプトエタノールまたはDTTなどの還元剤を含むことができるし、含まないこともできる。RNase阻害タンパク質を含有するバッファーが還元剤を含む場合、好ましい還元剤はDTTである。DTTを含有するバッファーにおいて、好ましくは、混合液のDTTの終濃度が少なくとも約50μMDTTであるように、バッファーは十分なDTTを含む。同様に、バッファーは追加的なDTTを含むことができる。例えば、混合液のDTTの終濃度が少なくとも約100μMDTTであるか、または少なくとも1.0mMDTTであるように、バッファーは十分なDTTを含むことができる。
【0022】
好ましくは、RNase阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤または組換え体のヒトの胎盤の供給源に由来する。そのようなRNase阻害剤は、米国、ウィスコンシン州、マジソンのプロメガコーポレーションなどから市販されており入手可能である。
【0023】
本発明の利点を得るために、混合液は長期間加熱される必要はない。一般的に、50℃かそれより高い温度で、約20秒間が十分である。(65℃よりも高い温度で使用してもよい。)当然のこととして、混合液は、分単位(RNAが存在する場合)から時間単位(RNAが後に添加される場合)まで、長時間において加熱できる。例えば、約70℃かそれより高い温度で約1分間加熱することは、多くタイプの実験において十分である。
【0024】
本発明の第二の実施態様は、RNAを含むことが知られているか、RNaseを含むことが疑われる第一溶液のRNaseを失活する方法を導く。この第二の実施態様は、混合液を生じるために、第一溶液に還元剤(既に記載のような)を含むか又は含まないバッファーに存在するRNase阻害タンパク質を含む第二溶液を添加して、次いで、混合液に存在するRNaseの活性を阻害するように、混合液を少なくとも約50℃(または、少なくとも約70℃)で十分な時間加熱することを含む。これは、第一溶液に存在するRNaseが失活される結果となる。溶液が20秒間から5分間において加熱されることが好ましい。
【0025】
本発明の第三の実施態様は、RNaseによる酵素分解からRNAを保護する状況下でRNAを保存する方法を導く。第三の実施態様は、混合液を生じるために、分離したRNAを含有するか、又は分離したRNAを後に加える第一溶液に、還元剤を含むか又は含まないバッファー中のRNase阻害タンパク質を含む第二溶液を添加することを含む。次いで、混合液は、混合液に存在するRNaseの活性を阻害するために約70℃程度で十分な時間において加熱され、次いで、混合液は冷却されて適切な容器に保存される。
【0026】
本発明のさらに別の実施態様は、RT−PCR及び定量的RT−PCRを実行する方法を導く。本発明における、この第四の実施態様は、混合液を生じるために、第一に、サーマルサイクルを受けるに先立って、RNAを含有するRT−PCR反応溶液に対して、還元剤を含むか又は含まないバッファー中のRNase阻害タンパク質を含有する溶液量を添加することを含む。添加される溶液量は、第一のサーマルサイクル反応中の酵素分解からRT−PCR反応液に存在するRNAを防ぐために十分な量である。次いで、RNAが混合液に存在しない場合、RNAテンプレートを混合液に添加する。次いで、RT−PCR反応は混合液に導かれ、ここで混合液中のRNAは、RT−PCR反応溶液に存在するRNaseによる酵素的な分解から保護され、さらに、第一のサーマルサイクル反応中、及びRT−PCR反応を通して、RNaseによる酵素分解から保護される。
【0027】
この実施態様の変化は、第二溶液を生じるために、RT−PCR試薬の混合液に対して、バッファー中のRNase阻害タンパク質を含有する第一溶液を添加することを含む。次いで、第二溶液は、第二溶液に存在するRNase活性を阻害するように十分な時間において少なくとも約50℃(または、少なくとも約70℃)まで加熱される。次いで、RNAは、RNA混合液を生じるように第二溶液に添加される。最後に、RT−PCR反応はRNA混合液でなされ、ここでRNA混合液中のRNAは、第二溶液に存在するRNaseによる酵素分解から保護され、かつ、混合液中のRNAはさらに、RT−PCR反応中のRNaseから保護される。
【0028】
本発明のさらなる実施態様は、RNaseIを失活する方法を導く。本発明のこの実施態様は、混合液を生じるために、RNaseIを含有することが疑われる第一溶液に対して、還元剤を含むか又は含まないバッファー中にRNase阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加し、次いで、混合液に存在するRNaseI活性を阻害するために十分な時間において少なくとも約70℃の温度で混合液を加熱することを含み、それによって、第一溶液に存在するRNaseIは失活される。
【0029】
ここに開示した実施態様において、本方法で使用されるRNase阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤又は組換え体のヒトの胎盤の供給源に由来する。
【0030】
本発明の目的及び利点は、添付図と共になる本発明の好ましい実施態様の下記の詳細な記載から、より明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、RNaseによる分解からRNAを保護するための方法を導く。本発明はさらに、RNase活性がない保存溶液でRNAを保存する方法を導く。
【0032】
略語及び定義
ここで使用されるように、限定されるものではないが、用語「還元剤」は、ジチオスレイトールおよびメルカプトエタノールを含む、いかなる還元剤も意味する。
【0033】
ここで使用されるように、用語「RNA」は限定されるものではないが、いかなる供給願からのRNAを意味し、原核細胞RNA、真核生物RNA、ミトコンドリアRNAおよび転写反応からのRNAを含む。
【0034】
ここで使用されるように、条件のない用語「RNase」は限定されるものではないがいかなる供給源からのRNaseを意味し、原核細胞および真核生物RNaseを含む。RNaseは、ほとんどの生物にあり、かつ、多くの器官及び体液に存在する。下記に限定するものではないが、RNaseの例は、特に、細菌のRNaseI、II、III、P、PH、R、D、T、BN、E及びMと同様に、RNaseA、B及びC(哺乳類、例えば、ウシ膵臓)、RNase1(例えば、ヒトの膵臓)、RNase2(好酸球由来の神経毒)、RNase3(好酸球陽イオン・タンパク質)、RNase4及びRNase5である。これらはすべて、RNAを分解する主要な活性を共有する。RNaseに関するより広範囲な議論のために、例えば、D’Allesio & Riordan “Ribonucleases: Structures and Functions,” Academic Press, New York (1997); Sorrentino & Libonati (1997) “Structure−Function Relationships in Human Ribonucleases: Main Distinctive Features of the Major RNases,” FEBS Letters 404:1−5;及びNicholson (1999) “Function, Mechanism, and Regulation of Bacterial Ribonucleases,” FEMS Microbiol. Rev. 23:371−390を参照のこと。
【0035】
ここで使用されるように、用語「RNase阻害タンパク質」または「RNase阻害剤」は、RNaseの活性を阻害する哺乳類の由来のタンパク質を意味する。本発明において使用するための好ましいRNase阻害タンパク質は、米国ウィスコンシン州、マジソンのプロメガコーポレーションによって製造される。連邦政府によって登録された商標「RNasin」登録のブランドRNase阻害剤(米国商標登録番号No.1,237,884)の下で、天然のタンパク質及び組換えタンパク質として、ヒトの胎盤に由来するRNase阻害タンパク質をプロメガは販売している。RNasinブランドのRNase阻害剤での追加的な情報において、Blackburn & Moore (1982) In: The Enzymes, Vol. XV, Part B; Blackburn, Wilson, & Moore, (1977) J. Biol. Chem. 252:5904; Lee et al. (1989) Biochemistry 28:219; Lee et al. (1989) Biochemistry 28, 225を参照のこと。また、米国特許第4,966,964号、5,019,556号及び5,266,687号を参照のこと。
【0036】
本発明において使用するための別の好ましいRNase阻害タンパク質は、「RNasin−Plus」登録商標のRNase阻害剤として本明細書に示される。このRNase阻害タンパク質は、ラットの肺に由来して、大腸菌において合成される組換えタンパク質である。このタンパク質のクローニングの記載において、ラットの肺のcDNAライブラリーから分離される、ラットのリボヌクレアーゼ阻害剤のcDNAクローニング及びシークエンスを議論する、Kawanomoto et al. (1992), Biochim. Biophys. Acta 1129: 335−338を参照のこと。このタンパク質は、市販されており、米国ウィスコンシン州、マジソンのプロメガコーポレーションから購入できる。また、このラット由来のRNase阻害剤をコードするクローニングされたRNAは、市販されており、オリジーンテクノロジーズインク(米国メリーランド州ロックビル)から入手できる。
【0037】
本明細書において記載されている本発明は、RNAを使用するかまたは必要とする、種々の分子生物学的プロトコールの使用において適切である。このようなプロトコールの宿主の概要において、“RNA Methodologies, Second Edition,” E. Farrell, Jr., editor, Academic Press, 1998を参照すること。
【0038】
以下のプライマーが実施例で使用される。
【0039】
F−CGCCCCCTCGGAG (SEQ. ID. NO: 1): ルシフェラーゼRT−PCRリバースプライマー
F−GAAAGGCCCGG (SEQ. ID. NO: 2): フォワードluc RT−PCR
F−GGGATCCTCTAGAGTCGCCA (SEQ. ID. NO: 3): ダウンストリームKan RT−PCR
F−TTGGGCGTGTCTCAAAATCT (SEQ. ID. NO: 4): アップストリームKan RT−PCR 2
HO−CGCCCCCTCGGAG (SEQ. ID. NO: 5): ルシフェラーゼRT−PCR リバースプライマー
HO−GAAAGGCCCGG (SEQ. ID. NO: 6): フォワードプライマーluc RT−PCR
本発明の典型的なバージョンにおいて、RNAを含有する第一溶液は、バッファー中にRNase阻害剤(例えば、「RNasin−Plus」登録商標のRNase阻害剤(プロメガ))を含有する第二溶液に第一溶液を加えることによって、RNaseによる分解から保護される。一般的に、バッファーは、還元剤を含むかまたは含まない。還元剤がバッファーに存在する場合、DTTが好ましく、濃度は少なくとも約50μM(好ましくは)である。高濃度のDTT、例えば、少なくとも約100μMや少なくとも約1.0mMDTTが使用されてよい。特に好ましい実施態様において、バッファーは、DTTを含んでもまた含まなくとも、プロメガバッファーB又はプロメガ保存バッファーを含む。このように、一つの好ましいバッファーは、6 mM Tris−HCl (pH 7.5), 6 mM MgCl;,及び50 mM NaClを含むが、還元剤は含まない。別の好ましいバッファーは、20 mM HEPES−KOH (pH 7.6), 50 mM KCl,及び50% (v/v) glycerolを含むが、還元剤は含まない。
【0040】
RNase阻害剤及びバッファーを添加した後、溶液は少なくとも約50℃、好ましくは少なくとも約70℃までRNaseを失活するために十分な時間、一般的には約20秒から5分以上加熱される。溶液が高温である時間は、ある程度は、保証されているプロトコールに依存する。RNaseの失活は哺乳類のRNaseにおいて基本的に直ちに起こり、加熱はより丈夫なRNaseを停止させるのに役立つ。RNAが混合液に未だに存在しない場合、少なくとも90℃ほど高い温度で10分間以上加熱されてよい。この処理によって、加熱ステップの前後で、混合液はRNaseを含まない。この方法の明白な利点は、溶液のRNAが可逆的な変性の恐れなしに、長期間においてRNaseから保護されることである。
【0041】
本発明で用いられることができるRNase阻害剤としては、ブタのRNase阻害剤、ラットのRNase阻害剤、ヒトの胎盤のRNase阻害剤及び組換えRNase阻害剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。ここに列記したものは典型的なものである。プロメガコーポレーションを含み、RNase阻害剤の供給元は幾つかある。
【0042】
本発明の別の実施態様は、保存中にRNaseからRNAを保護する方法である。この実施態様において、RNAを含有する溶液は、RNaseによるRNAの分解を気にすることなく、長期間(例えば、90日間以上)にわたって保存できる。RNAを保護するために、「RNasin」ブランドの阻害剤などのRNase阻害剤は、還元剤の存在に関係なく、RNAを含有する溶液に添加される。次いで、溶液は、少なくとも約20秒間にわたって少なくとも約50℃まで加熱される。次いで、混合液は適切な容器に置かれ、冷却される。そのように処理された後、RNA溶液は、未だRNaseから保護されている長期間(つまり、少なくとも1時間、頻繁には長時間、例えば、90日以上)にわたって室温で保存できる。この実施態様の明白な利点は、処理されたRNA溶液がRNaseから保護するために冷却して保存する必要がないことである。冷却温度(例えば、4℃又は−20℃)が温度に依存するRNA分解を軽減するのを支援することを当業者は理解するであろう。
【0043】
本発明はまた、一般的な化学反応かつ酵素反応中、特に、RT−PCRに基づくプロトコールにおいて、RNAを保護する方法を含む。本発明のこの実施態様において、RNAは予め分離されて、開示された本発明によってRNaseからすでに保護されている。しかしながら、当業者は、RNAを含有する溶液にいかなる試薬を添加することが阻害されていないRNaseの導入の危険性を冒すことを認識する。このような例において、第一の反応ステップが実行される以前に、RNase阻害剤が反応混合液に添加できる。RT−PCRに基づく反応の場合、第一のサーマルサイクルのステップに先立って、RNase阻害剤が添加される。それによって、サーマルサイクルステップ中、かつ、すべての後続するサーマルサイクルにおいて、驚くべきことに、RNAはRNaseによる分解から保護される。特に好ましい実施態様において、RNAの添加に先立って、RNase阻害剤とバッファーが反応混合液に添加される。さらに、反応混合液は、RNAの添加に先立って加熱され、逆転写酵素反応における最も高いRNAの保護及び最も高い感度を保証する。
【0044】
本発明はまた、天然の哺乳類又は組換えRNase阻害剤によって通常は阻害されないRNaseを阻害するために効果的である。相乗効果は、RNase阻害タンパク質と熱との組合せにおいて発見され、この組合せが単独で個々のステップの合計より多大な結果を生じる。本発明の実施態様において、一般的に原核生物、特に、E.coliによって生成されるRNaseIが阻害される。この実施態様において、最初に述べた実施態様のように、RNase阻害剤と適切なバッファーは、第二溶液を産生するためにRNaseIを含むと考えられる溶液に加えられる。したがって、原核生物のRNaseは、この処理によって失活され、RNAは分解を心配することなく添加できる。
【0045】
RNaseを失活し、RNAを分解から保護するための上記方法が70℃でRNA溶液または混合液を加熱することによって遂行されることができると共に、RNAが後で添加される溶液または混合液が少なくとも90℃以上(基本的に沸点まで)の温度で長期間において加熱できることが本発明の特徴である。一旦、反応が冷却されると、RNAはRNaseによる分解を心配することなく添加できる。RNase阻害タンパク質のRNA溶液への追加に応じて、RNaseが溶液中のRNAを分解させるのを妨害されることは、本発明のさらなる態様である。さらに、少なくとも約70℃の温度で混合液を加熱した後、RNaseは失活され、RNAは室温で長期間(つまり、少なくとも1時間以上)においてRNaseの分解から安全である。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、単に、本明細書で開示され、請求される本発明のより完全な理解を提供するために含まれる。実施例は、いかなる方法もの本発明を制限しない。
【0047】
実施例1:プロメガの「RNasin−Plus」ブランドのRNase阻害剤によるラットの肝臓のライゼートのRNaseの不活性化
この実施例の目的は、ラットの肝臓のライゼート(RNaseの供給源)が意図的に反応液に添加された、RT−PCR実験で「RNasin−Plus」のRNase阻害剤でmRNAの保護を実証することである。
【0048】
材料:
ラットの肝臓のライゼート:超純水に0.5 mg/ml(Sigma Pt # L−1380 Lt # 108F8185)
ルシフェラーゼmRNA:超純水に0.1 mg/ml(Promega Pt# L456A Lt # 14937403)
ルシフェラーゼmRNA:超純水に0.01 mg/ml(Promega Pt# L456A Lt # 14937403)
「RNasin−Plus」ブランドのRNase阻害剤*:40 units/μl (Promega Pt # N261 Lt # 165682)
AccessQuickTM RT−PCR System (Promega Pt # A1703 Lt # 158304)
*「RNasin−Plus」ブランドのラット由来のRNase阻害剤は、プロメガから市販されており購入できる。
【0049】
実験:
「RNasin−Plus」ブランドのRNase阻害剤とラットの肝臓のライゼートの両者の200μlは、70℃で15分間において個別の試験管で加熱された。
【0050】
下記の反応は、mRNAを添加せずに、複製して調製された。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

反応番号4、5及び6において、RNase阻害剤とラットの肝臓のライゼートは個別に加熱され、次いで共にされる。反応番号7において、RNase阻害剤とラットの肝臓のライゼートは共にされて、加熱される。
【0053】
反応番号7は、非加熱処理されたライゼートと非加熱処理されたRNase阻害剤を用いて調製され、70℃で15分間インキュベーションされた。
【0054】
0.1mg/mlのルシフェラーゼmRNA(100ng)の1μlが反応液の第一セットに添加された。
【0055】
0.01mg/mlのルシフェラーゼmRNA(10ng)の1μlが反応液の第二セットに添加された。すなわち、反応液の第二セットは、反応液の第一セットに比較して、mRNAテンプレート量が10分の1を含む。
【0056】
次いで、反応液は37℃で1時間インキュベーションされた。
【0057】
インキュベーションの間、RT−PCRマスターミックスは、下記のように、プロメガコーポレーションから入手可能な組成物を使用して氷上で調製された。
【0058】
250 ml Access Quick 2x Master Mix
220 ml ヌクレアーゼ−フリーの水
10 ml ルシフェラーゼアップストリームプライマー、 Promega Part No. 20247 (15 mM)
10 ml ルシフェラーゼダウンストリームプライマー、 Promega Part No. 20818 (15 mM)
10 ml AMV−RT (5 units/ml)
37℃で1時間インキュベーションした後(反応に挑戦ように設計された温度;RNase活性に最適の温度である37℃)、反応液は氷上に移した。45μlのRT−PCRマスターミックスが、氷上で「MicroAmp」ブランドのストリップウェル試験管に分配された。次いで、5μlの各反応液がマスターミックスに添加された。反応液は、PE9600サーモサイクラー(パーキンエルマーコーポレーション、シェルトン、米国コネチカット州)に置かれ、下記のようにサイクル反応が行なわれた。
【0059】
48°C 45分 1サイクル
96°C 2分 1サイクル
94°C 15秒
65°C → 55°C 1分 20サイクル
72°C 1.5分
72°C 5分 1サイクル
4°C 浸漬
次いで、15μlの各RT−PCR反応液が、臭化エチジウム染色の1%のTBEアガロースゲルにローディングされて、80Vで1時間のランを行なった。
【0060】
結果は図1に示す。下記がレーンの詳細である。
【0061】
レーン番号1から8は、100ngのmRNAを含む。
【0062】
レーン番号11から18は、10ngのmRNAを含む。
【0063】
レーン番号9及び10は、ブランクである。
【0064】
レーン番号
1.200b.p.のDNAステップラダー
2.RNasin−Plusのみ(−)
3.ライゼートのみ(−)
4.RNasin(−)+ライゼート(−)
5.RNasin(+)+ライゼート(−)
6.RNasin(−)+ライゼート(+)
7.個別に加熱されたRNasin(+)+ライゼート(+)
8.共に加熱されたRNasin(+)+ライゼート(+)
11.200b.p.のDNAステップラダー
12.RNasin−Plusのみ(−)
13.ライゼートのみ(−)
14.RNasin(−)+ライゼート(−)
15.RNasin(+)+ライゼート(−)
16.RNasin(−)+ライゼート(+)
17.個別に加熱されたRNasin(+)+ライゼート(+)
18.共に加熱されたRNasin(+)+ライゼート(+)
(−)=非加熱サンプル
(+)=加熱サンプル
図1に示されるゲルの結果は顕著である。各レーン3、5、7、13、15及び17において、RT−PCR産物は完全に不足している。対照的に、各レーン2、4、6、8、12、14、16及び18において、検出される非常に明確な産物がある。これらの結果は、阻害剤と、RNaseと、加熱との間の明確な相乗を示す。特に、レーン7及び17に示されるように、阻害剤とライゼートが個別に加熱され、次いで、一緒にされる場合、RT−PCRの完全な失敗である。しかし、レーン8及び18によって証明されるように、阻害剤とライゼートが一緒にされ、次いで加熱される場合、RT−PCR実験は成功である。レーン5及び15(阻害剤は加熱されるが、ライゼートは加熱されない)だけでなく、レーン7及び17(阻害剤とライゼートは個別に加熱される)においても、RT−PCR実験は失敗する(ライゼートがなく阻害剤を加熱することは阻害剤を“殺す”ことを示す)。しかしながら、驚くべきことに、阻害剤とライゼートが一緒にされ、次いで加熱される場合、レーン8及び18のように、RT−PCRは成功し、阻害剤と、バッファー溶液と、熱との個別の効果の合計よりも相乗効果の方が多大であることを示す。
【0065】
実施例2:定量PCRでのmRNAの保護
この実施例の目的は、ラット由来の胎盤のRNase阻害剤、ヒト由来の胎盤のRNase阻害剤が定量RT−PCRで使用され、ラットの肝臓のRNaseが反応液に意図的に添加される、本発明がmRNAを保護することを実証することである。
【0066】
材料:
ラットの肝臓のライゼート:超純水に0.5 mg/ml(Sigma Pt # L−1380 Lt # 108F8185)
ルシフェラーゼmRNA:超純水に0.1 mg/ml(Promega Pt# L456A Lt # 14937403)
カナマイシンmRNA:超純水に0.005 mg/ml(Promega Pt# C138A Lt # 15423602)
「RNasin−Plus」ブランドの阻害剤:40 units/μl (Promega Pt # N261 Lt # 165682)
組換え「RNasin」ブランドの阻害剤:40 units/μl (Promega Pt # N251 Lt # 152734)
AccessQuickTM RT−PCR System (Promega Pt # A1703 Lt # 158304)
実験:
下記の反応液がmRNAを添加せずに調製された。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

反応液は室温で5分間インキュベーションされた。
【0069】
次いで、2.5μlの0.1mg/mlのルシフェラーゼmRNA(総量250ng)と2μlの0.005mg/mlのカナマイシンmRNA(10ng)が各反応液に添加された。
【0070】
反応液は、37℃で5分間インキュベーションされた。
【0071】
RT−PCRマスターミックスは、プロメガコーポレーションから入手可能な組成物を用いて、下記のように氷上で調製された。
【0072】
250 ml Access Quick 2x Master Mix
200 ml ヌクレアーゼ−フリーの水
10 ml ルシフェラーゼアップストリームプライマー, Promega Part No. 20247 (15 mM)
10 ml ルシフェラーゼダウンストリームプライマー, Promega Part No. 20818 (15 mM)
10 ml カナマイシンアップストリームプライマー, # 20936 (15 mM)
10 ml カナマイシンダウンストリームプライマー, # 20937 (15 mM)
10 ml AMV−RT (5 units/ml)
45μlのRT−PCRマスターミックスが、氷上で「MicroAmp」ブランドのストリップウェル試験管に分配された。次いで、5μlの各反応液がマスターミックスに添加された。反応液は、PE9600サーモサイクラーに置かれ、下記のようにサイクル反応が行なわれた。
【0073】
48°C 45分 1サイクル
96°C 2分 1サイクル
94°C 15秒
65°C → 55°C 1分 12サイクル
72°C 1.5分
72°C 5分 1サイクル
4°C 浸漬
次いで、20μlの各RT−PCR反応液が、臭化エチジウム染色の1%のTBEアガロースゲルにローディングされて、80Vで1時間のランを行なった。
【0074】
結果:
結果は図2、3及び4に示す。
【0075】
図2(ラット)及び図3(ヒト)のレーン番号:
1.200b.p.のDNAステップラダー
2.コントロール(テンプレートなし)
3.ライゼートなし/RNasinなし−全産物
4.ライゼートなし−全産物
5.ライゼートなし−全産物
6.ライゼートなし−全産物
7.+ライゼート/RNasinなし
8.+ライゼート/RNasinなし
9.+ライゼート/RNasinなし
10.+ライゼート+RNasin
11.+ライゼート+RNasin
12.+ライゼート+RNasin
図2及び3のバンド強度の定量がデンシトメーターを使用して実行された。ルシフェラーゼ産物(上部のバンド1.6Kb)のカナマイシン産物(下部のバンド1.2Kb)に対する比が決定された。比率は、n=3において平均値とした:
【0076】
【表5】

【0077】
【表6】


次いで、2標本t検定(two−tailed t−test)が実行され、等分散でないと仮定する。結果は、以下の通りだった:
【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
【表9】

ライゼート処理及び全産物のコントロールにおいて、p<0.05、有意な差。
【0081】
ライゼート処理及びRNasin保護において、p<0.05、有意な差。
【0082】
コントロールの全産物及びRNasin保護において、p>0.05、有意な差なし。
【0083】
それらの結果は、図4で図式的に表される。
【0084】
この実施例は、ライゼート処理サンプルとコントロールサンプルとの間、及びライゼート処理サンプルとRNasin処理サンプルとの間に有意な差があることを示している。コントロールサンプルとRNasin処理サンプルとの間には有意な差はない。要約すると、阻害剤がライゼートに添加された場合に得られるRT−PCR産物の収量に差はないが、阻害剤がライゼートに添加されない場合の産物の収量は有意な差がある。
【0085】
実施例3:RNase阻害剤の存在におけるRNaseを加熱する効果
本実施例は、RNase阻害剤の存在におけるRNaseを加熱する効果を実証する。実施例は、下記のように行なわれた。寒天は、RNAと、pHインジケータと、Toluidine Blue−Oとで混合された。具体的には、0.2%のイーストRNA(pH 7.0)を有する1.5%のLB寒天は、0.005%のToluidine Blue−Oと混ぜ合わせられた。イーストRNAは、ベーリンガーマンハイム社(カタログ番号109−223)から購入された。Toluidine Blue−Oは、シグマ社(カタログ番号T3260)から購入された。寒天は、ペトリディッシュに注入されて、凝固された。RNAのRNase分解はヌクレオチドを放出し、それによって、局所pHを減少させる。これは、pHインジケータをピンクにする。
【0086】
3溶液は、0.5mlのマイクロフュージチューブで複製されて調製された。下記が組成物である。
【0087】
【表10】


*DTTを有さないRNaseAは、Ribonuclease A (Sigma R4875), 20 mM HEPES−KOH (pH 7.6), 50 mM KCl, and 50% glycerolを含有するバッファーで調製された。
【0088】
複製した溶液の一つは70℃で5分間加熱され、次いで、室温まで冷却される。複製した溶液のもう一方は、最後まで室温で維持された。
【0089】
ディッシュはグリッドされ、ウェルは異なるサンプルをローディングするためのゲルに中心が抜かれた。次いで、それら溶液のサンプルは、寒天プレートに中心が抜かれたウェルに配置された。次いで、プレートは37℃で30分間インキュベーションされた。図5に示されるように、プレートの上半分は、加熱されたサンプルを含み、下半分は非加熱サンプルを含む。加熱されたサンプルは、上から下に向かって、RNase単独、RNaseにヒトのRNase阻害剤を加えたもの、RNaseに組換えRNase阻害剤(ラット由来)を加えたものであった。非加熱サンプルも同様の順番である。左から右に、サンプルがそれぞれ2μl、2μl、5μl、5μl、10μl及び10μl添加されたレーンを示す。
【0090】
実験の結果は、RNase単独を含有する加熱及び非加熱の両列において、RNAの分解を示し暗い光輪があることを示す。RNaseと、ヒトのRNase阻害剤と、ラット由来のRNase阻害剤を含有する列において、暗い光輪はなく、RNAの分解がないことを示している。加熱処理されなかったRNaseと、ヒトのRNase阻害剤、又はラット由来のRNase阻害剤を含有する列において、すべての中心のまわりに弱い暗い光輪があり、これは、非加熱処理されたサンプルにおいても、RNase阻害剤によるRNAの保護が完全ではないことを示す。対照的に、大量にRNaseを添加した加熱処理サンプルにおいては、完全な阻害があった。
【0091】
実施例4:加熱及び非加熱における阻害剤の存在下でのRNaseによるRNA分解
この実施例は、加熱処理に係わらず、RNase阻害剤及びバッファーの存在下でのRNaseによるRNA分解を試験するために行なわれた。この実験は、RNAとpHインジケータとが寒天に混合された、2つの同一の寒天プレートを調製することによって行なわれた。
【0092】
0.5mlのマイクロフュージチューブに5つの溶液が複製されて調製された。組成は、下記の表11であった。
【0093】
【表11】


*RNase A = RNase A (Sigma R4875)はDTTを含有しない保存バッファーで調製された。
** 保存バッファー = 20 mM HEPES−KOH (pH 7.6 at 4°C), 50 mM KCl, 8 mM DTT, 50% (v/v) グリセロール
*** バッファーB = 60 mM Tris−Cl, pH 7.5 (at 37°C), 60 mM MgCl, 500 mM NaCl, 10 mM DTT
複製のうちの一つは、70℃で5分間加熱され、4℃まで冷却されて、室温になるようにした。複製のもう一方は、このまま室温で維持された。それぞれ10μlのそれら溶液のサンプルは、寒天プレートのウェルに置かれた。この実験の結果は、図6に概略して例示される。
【0094】
左上のプレートが室温で、インキュベーションされたサンプルをローディングし、一方で、右上のプレートが70℃まで加熱されたサンプルをローディングされたこと以外は、プレートは同じくローディングされた。プレートはローディングされ、上から下に向かって、RNase単独、プロメガ保存バッファー中のRNase+「RNasin」のRNase阻害剤、RNase+保存バッファー、RNase+プロメガバッファーBであった。次いで、プレートは37℃で30分間インキュベーションされた。図6に示されるこの実験の結果は、非加熱サンプルにおいて、単に阻害剤だけが存在する際に、RNaseの阻害が生じることを示す。加熱処理サンプルにおいて、単に阻害剤と保存バッファーが存在する際にだけ阻害が生じる。それらの結果は、室温及び高温下のRNAの保護において、阻害剤とバッファーが添加されなけらばならず、一方で、混合物は室温で調製される。
【0095】
実施例5:ラットRNasinでの小麦胚RNaseの阻害
この実施例の目的は、予め加熱されたラットRNasinが、小麦胚の抽出物に存在するRNaseの効果的な阻害剤であるかを決定することである。
【0096】
材料:
小麦胚の抽出物 (Promega Pt# L481A, Lt# 12204104)
RNasin Plus: 40 units/ml (Promega Pt# N261, Lt# 165682)
ルシフェラーゼmRNA: 1 mg/ml (Promega Pt# L456A, Lt # 14937403)
AccessQuickTM RT−PCR System (Promega Pt# A1703, Lt# 158304)
実験:
ルシフェラーゼmRNAの添加なしに、下記の反応液が調製された。
【0097】
【表12】


反応番号1乃至4は室温で維持された。反応番号5乃至7は、70℃で15分間加熱され、次いで、室温まで冷却された。
【0098】
次いで、1μl(1μg)のルシフェラーゼmRNAは、表12に示されるように反応液に添加された。
【0099】
次いで、反応液は37℃で60分間インキュベーションされた。
【0100】
RT−PCRマスターミックスは、プロメガコーポレーションから入手可能な組成物を用いて、下記のように氷上で調製された。
【0101】
250 ml Access Quick 2x Master Mix
220 ml ヌクレアーゼ−フリーの水
10 ml ルシフェラーゼアップストリームプライマー, Promega Part No. 20247 (15 mM)
10 ml ルシフェラーゼダウンストリームプライマー, Promega Part No. 20818 (15 mM)
10 ml AMV−RT (5 units/ml)
45μlのRT−PCRマスターミックスが、氷上で「MicroAmp」ブランドのストリップウェル試験管に分配された。次いで、5μlの各反応液がマスターミックスに添加された。反応液は、PE9600サーモサイクラーに置かれ、下記のようにサイクル反応が行なわれた。
【0102】
48°C 45分 1サイクル
96°C 2分 1サイクル
94°C 15秒
65°C → 55°C 1分 20サイクル
72°C 1.5分
72°C 5分 1サイクル
4°C 浸漬
次いで、15μlの各RT−PCR反応液が、臭化エチジウム染色の1%のTBEアガロースゲルにローディングされて、80Vで1時間のランを行なった。
【0103】
結果は図7に示される。(WGEは小麦胚抽出物である。)
レーン番号1−200b.p.のDNAステップラダー
レーン番号2−テンプレートなし
レーン番号3−完全な産物
レーン番号4−RNasinのみ/WGEなし
レーン番号5−室温でWGE+RNasin
レーン番号6−70℃でWGE+RNasin(20μl)
レーン番号7−70℃でWGE+RNasin(10μl)
レーン番号8−70℃でWGE+RNasin(5μl)
この実施例は、加熱処理したラットRNasinが小麦胚抽出物に存在する幾らかのRNaseを阻害するが、その阻害が完全ではないことを実証する。図7のレーン6、7及び8と比較して、レーン5を参照のこと。
【0104】
実施例6:ラットRNasinでの小麦胚RNaseのさらなる阻害
実施例4と同様に、この実施例の目的は、予め加熱されたラットRNasinが、小麦胚の抽出物に存在するRNaseの効果的な阻害剤であるかを決定することである。この実施例では、添加したDTTの有無に関係ないバッファーを含み(反応上のDTTの効果を評価するため)、わずかに異なるバッファーが使用された。
【0105】
材料:
小麦胚の抽出物 (Promega Pt# L481A Lt# 12204104)
RNasin Plus: 40 units/μl (Promega Pt# N261 Lt# 165682)
ルシフェラーゼmRNA: 1 mg/ml (Promega Pt# L456A Lt # 14937403)
AccessQuickTM RT−PCR System (Promega Pt# A1703 Lt# 158304)
RNasin 保存バッファー (Promega Pt # BN251 Lt# 147681)
DTTを含むRNasin保存バッファー;
20 mM HEPES−KOH, pH 7.6
50 mM KCl
8 mM DTT
50%グリセロール
実験:
下記の反応液がルシフェラーゼmRNAの添加なしに調製された。
【0106】
【表13】


反応番号1乃至4、6、10及び12は室温で維持された。反応番号5、7、8、9、11、13及び15は、70℃で15分間加熱され、次いで、室温まで冷却された。
【0107】
次いで、1μl(1μg)のルシフェラーゼmRNAは、表13に示されるように反応液に添加された。
【0108】
次いで、反応液は37℃で60分間インキュベーションされた。
【0109】
RT−PCRマスターミックスは、下記のように氷上で調製された:
250 ml Access Quick 2x Master Mix
220 ml ヌクレアーゼ−フリーの水
10 ml ルシフェラーゼアップストリームプライマー, Promega Part No. 20247 (15 mM)
10 ml ルシフェラーゼダウンストリームプライマー, Promega Part No. 20818 (15 mM)
10 ml AMV−RT (5 units/ml)
45μlのRT−PCRマスターミックスが、氷上で「MicroAmp」ブランドのストリップウェル試験管に分配された。次いで、5μlの各反応液がマスターミックスに添加された。反応液は、PE9600サーモサイクラーに置かれ、下記のようにサイクル反応が行なわれた。
【0110】
48°C 45分 1サイクル
96°C 2分 1サイクル
94°C 15秒
65°C → 55°C 1分 20サイクル
72°C 1.5分
72°C 5分 1サイクル
4°C 浸漬
次いで、15μlの各RT−PCR反応液が、臭化エチジウム染色の1%のTBEアガロースゲルにローディングされて、80Vで1時間のランを行なった。
【0111】
結果は図8に示される。
【0112】
レーン番号1−200b.p.のDNAステップラダー
レーン番号2−テンプレートなし
レーン番号3−完全な産物
レーン番号4−RNasinのみ/WGEなし
レーン番号5−室温でWGEのみ/RNasinなし
レーン番号6−70℃でWGEのみ/RNasinなし
レーン番号7−室温でWGE+室温でRNasin
レーン番号8−70℃でWGE+70℃でRNasin(20μl)
レーン番号9−70℃でWGE+70℃でRNasin(10μl)
レーン番号10−70℃でWGE+70℃でRNasin(5μl)
レーン番号11−室温でWGE+室温でDTTを含む保存バッファー
レーン番号12−70℃でWGE+70℃でDTTを含む保存バッファー
レーン番号13−70℃でWGE+70℃でDTTを含まない保存バッファー
レーン番号14−室温でWGE+室温でDTTを含む保存バッファー
NB:反応番号12及び13は、レーン13及び14において、ゲルをローディングすると、即座に、偶然に逆になった。
【0113】
実施例5にように、この実施例は、本発明が小麦胚抽出物のRNaseを阻害することができるが、しかし、完全ではないことを示す。詳細には、レーン7で得られた産物量と、レーン8乃至10で得られた産物量とを比較すること。さらに、レーン11乃至14からの興味深く観察されることは、DTTの有無に関係ない保存バッファーは、加熱される限り、幾らかの保護を提供できる。あたかも全ての要因が、ラットRNasin、保存バッファー、DTT及び熱の組合せによって見られる相乗作用の阻害効果に何らかの方法で貢献するかのように現れる。
【0114】
実施例7:DTTを含有しないRNase阻害剤
この実施例において、E.coliのRNase(Promega Cat. #M4261)、RNaseIの阻害は、(1)RNasin−PlusブランドのRNase阻害剤(Promega Cat. #N261, 8 mM DTTを含有する保存バッファー);(2)高温度でインキュベーションした後のDTTを含有しない保存バッファーRNasin−PlusブランドのRNase阻害剤によって阻害された。DTTを含有しない保存バッファーRNasin−Plusブランドの阻害剤は精製されて、特にDTTである還元剤を決して含まないバッファーに保存された。この阻害剤は、DTT及び他の還元剤が存在しない状態でRNaseIとインキュベーションされた。驚くべきことに、RNaseIは、DTT及び他の還元剤が存在しない溶液によって阻害された。RNaseIがこのような状況の下でRNasin−PlusブランドのRNase阻害剤によって阻害されることが可能だったという事実は、E.coliのRNaseを阻害するために、RNasinタイプの阻害剤において、DTTが絶対に必要とはしないことを証明する。
【0115】
加えて、RNasin−Plusブランドの阻害剤を含有するRNaseA(Sigma Cat. #R4875)及びRNaseB(ICN Biomedicals, Cat. #101084)の溶液が調製され、様々な温度で加熱されて、RNase活性において試験された。それらの反応液において、RNase活性は、RNase/RNase阻害剤溶液の加熱に応じて見られなかった。要約すると、RNaseの失活は、温度に依存しないことが示された(試験した温度において)。これらの結果は、定まった状況の下で、RNasin−Plusタイプの阻害剤が、DTTの有無に係わらず、これらのRNases(RNaseI、RNaseA、RNaseB)を完全に阻害することができることを証明する。さらに、これらの結果は、阻害剤がDTTの存在に依存しないことを示す。RNaseIの溶液は、プロメガコーポレーション(Cat. #M4261)から得られた。また、RNasin−Plusブランドの阻害剤は、保存バッファーに含んで、プロメガコーポレーション(Cat. #N261、8mmDTT)から得られた。RNaseA(Sigma Cat. #R4875)及びRNaseB(ICN Biomedicals, Cat. #101084)の溶液は購入されて、DTTを含有しない100ng/μlの保存バッファーで調製された。DTTを含有しないRNasin−Plusブランドの阻害剤は、精製処理中に使用される如何なる溶液にDTTを含有しないか、又は他の還元剤を含有しないこと以外に、Blackburn (1979) J. Bio. Chem. 254(24):12484−12487に記載の方法にしたがって、RNaseA親和性樹脂により精製された。
【0116】
表14にしたがって、7つの複製溶液が生成された(水を100μlまで加える)。
【0117】
【表14】


それら試験管の各一セットは、50℃、60℃、65℃、70℃、80℃、90℃及び99.9℃の加熱温度によって1分間加熱された。次いで、溶液は4℃まで冷却されて、各サンプルの8μlが、前述した実施例に記載のようにRNase検出プレートのウェルに移された。次いで、プレートは前述の記載のように37℃でインキュベーションされ、RNase活性を判断した。下記の表15において、RNase活性は、その温度でインキュベーションしたが、RNase阻害剤がない溶液でみられるように0%の阻害値のRNase検出プレートで検出されるRNase活性の領域のサイズから推定された。
【0118】
【表15】


同様の実験において、DTTを含有しないRNasin−Plusブランドの阻害剤の量は、10倍(10X)に高められた。これらの状況下において、RNaseIは58℃において100%阻害された。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施例1のRT−PCRプロトコールにおいてラット由来のRNase阻害タンパク質を使用してウシ膵臓RNaseの阻害を例証するゲルの写真である。
【図2】実施例2において、ラット由来のRNase阻害タンパク質を使用して、定量RT−PCRにおけるmRNAの保護を例証するゲルの写真である。
【図3】実施例2において、ヒト由来のRNase阻害タンパク質を使用して、定量RT−PCRにおけるmRNAの保護を例証するゲルの写真である。
【図4】実施例2に記載されて、図2及び3のゲルに示されるRT−PCR反応の産物におけるバンド密度の統計的な分析の結果を示すヒストグラムである。
【図5】実施例3において、アッセイはRNAとpHインジケータを混合した寒天でローディングした寒天プレートを含み、そのプレートは中心が抜かれ、そのウェルに加熱処理又は非加熱処理を施したRNase及びRNase阻害剤をローディングして、RNAの消化はウェルの周囲の視覚可能な消化領域となる、RNaseによりRNAの消化を示すプレートアッセイの結果を概略して示す図である。
【図6】実施例4において、RNase阻害剤が存在し、異なるタイプのバッファーでRNAの分解におけるRNaseの加熱の効果を検査するプレートアッセイの結果を示す図である。
【図7】実施例5のRT−PCR実験において小麦麦芽に由来するRNaseによる分解からmRNAの保護を例証するゲルの写真である。
【図8】実施例6のRT−PCR実験において小麦麦芽に由来するRNaseによる分解からmRNAの保護を例証するゲルの写真である。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護するための方法であって、該方法は、
(a)RNAを含有するか、又は後にRNAが添加される第一溶液に対して、混合液を生じるように、還元剤を含むか、又は含まないバッファー中に分配されたリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含む第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するように十分な時間において約50℃ほどの温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱し、それによって、前記混合液に存在するか、又は後に該混合液に添加されるRNAをリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護するステップと、
を含み、前記第二溶液中のリボヌクレアーゼ阻害タンパク質の含有量は、リボヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護するために十分であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)で、混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)で、前記混合液はRNAを含まず、さらに前記混合液は約90℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼB、リボヌクレアーゼC及びリボヌクレアーゼIによる酵素分解からRNAを保護するための方法であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
RNAを含有し、リボヌクレアーゼを含有していると疑われる第一溶液でリボヌクレアーゼを失活する方法であって、該方法は、
(a)前記第一溶液に対して、混合液を生じるために、還元剤を含むか、又は含まないバッファー中に含まれるリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するように十分な時間において少なくとも約50℃の温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱し、それによって、前記第一溶液に存在するリボヌクレアーゼが失活されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するように十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)で、混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一溶液に存在するリボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼB、リボヌクレアーゼC及びリボヌクレアーゼIの失活方法であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
リボヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護する状況下でRNAを保存する方法であって、該方法は、
(a)分離したRNAを含有するか、又は分離したRNAを後に添加される第一溶液に対して、混合液を生じるように、還元剤を含むか、又は含まないバッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するために十分な時間において少なくとも約50℃の温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱するステップと、
(c)前記混合液を冷却するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(b)で、前記混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(b)で、前記混合液はRNAを含まず、さらに前記混合液は約90℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
RT−PCR及び定量RT−PCRを実行する方法であって、該方法は、
(a)サーマルサイクル反応を受ける前に、RNAを含有するか、又は後にRNAを添加されるRT−PCR反応液に対して、混合液を生じるように、還元剤を含むか、又は含まないバッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含む溶液量を添加するステップと、
(b)RNAが存在しない場合に前記ステップ(a)の混合液に対してRNAテンプレートを添加するステップと、
を含み、
前記添加される溶液量は、第一のサーマルサイクル反応段階で酵素分解から前記RT−PCR反応液に存在するRNAを保護するために十分量であり、
前記混合液のRNAは、RT−PCR反応液に存在するリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護され、さらにリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護されることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記ステップ(a)で、前記バッファーは、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(a)の後であり、かつステップ(b)に先立って、混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップ(a)で、前記RT−PCR反応液はRNAを含有せず、前記ステップ(a)の後であり、かつステップ(b)に先立って、前記混合液は少なくとも約90℃の温度まで加熱されることを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
RT−PCR及び定量RT−PCRを実行する方法であって、該方法は、
(a)RT−PCR試薬の混合液に対して、第二溶液を生じるように、還元剤を含むか、又は含まないバッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含む第一溶液を添加するステップと、
(b)前記第二溶液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するように十分な時間において少なくとも約55℃の温度まで前記第二溶液混合液を加熱するステップと、
(c)RNAの混合液を生じるように前記第二溶液に対してRNAを添加するステップと、
(d)前記ステップ(c)の前記RNA混合液においてRT−PCR反応を行い、それによって、前記RNA混合液中のRNAは前記第二溶液に存在するリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護され、かつ、さらに前記混合液中のRNAはRT−PCR反応中にリボヌクレアーゼから保護されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記ステップ(a)で、前記バッファーは、少なくとも50μMDTTの前記第二溶液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップ(b)で、前記第二溶液は、約70℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ステップ(b)で、前記第二溶液は、約90℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項26乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項26乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼを失活する方法であって、該方法は、
(a)原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼの含有が疑われる第一溶液に対して、混合液を生じるように、還元剤を含むか、又は含まないバッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在する原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼ活性を阻害するために十分な時間において少なくとも約55℃の温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱し、それによって、前記第一溶液に存在する原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼが失活されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項32又は33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ステップ(a)で、第一溶液はE.coliのリボヌクレアーゼの含有が疑われ、前記ステップ(b)で、前記混合液に存在するE.coliのリボヌクレアーゼ活性を阻害するために十分な時間で加熱されることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護するための方法であって、該方法は、
(a)RNAを含有するか、又は後にRNAが添加される第一溶液に対して、混合液を生じるように、バッファー中に分配されたリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含む第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するように十分な時間において約50℃ほどの温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱し、それによって、前記混合液に存在するか、又は後に該混合液に添加されるRNAをリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護するステップと、
を含み、前記第二溶液中のリボヌクレアーゼ阻害タンパク質の含有量は、リボヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護するために十分であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)で、混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)で、前記混合液はRNAを含まず、さらに前記混合液は約90℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼB、リボヌクレアーゼC及びリボヌクレアーゼIによる酵素分解からRNAを保護するための方法であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
RNAを含有し、リボヌクレアーゼを含有していると疑われる第一溶液でリボヌクレアーゼを失活する方法であって、該方法は、
(a)前記第一溶液に対して、混合液を生じるために、バッファー中に含まれるリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するように十分な時間において少なくとも約50℃の温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱し、それによって、前記第一溶液に存在するリボヌクレアーゼが失活されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するように十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)で、混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一溶液に存在するリボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼB、リボヌクレアーゼC及びリボヌクレアーゼIの失活方法であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
リボヌクレアーゼによる酵素分解からRNAを保護する状況下でRNAを保存する方法であって、該方法は、
(a)分離したRNAを含有するか、又は分離したRNAを後に添加される第一溶液に対して、混合液を生じるように、バッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するために十分な時間において少なくとも約50℃の温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱するステップと、
(c)前記混合液を冷却するステップと、
(d)前記ステップ(a)の第一溶液がRNAを含有しない場合に前記ステップ(c)の前記混合液にRNAを添加し、次いで、前記混合液を密閉した容器に配置するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(b)で、前記混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ステップ(b)で、前記混合液はRNAを含まず、さらに前記混合液は約90℃程度の温度まで加熱され、前記(d)は前記ステップ(c)の前記混合液にDNAを添加することを特徴とする請求項14乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
RT−PCR及び定量RT−PCRを実行する方法であって、該方法は、
(a)サーマルサイクル反応を受ける前に、RNAを含有するか、又は後にRNAを添加されるRT−PCR反応液に対して、混合液を生じるように、バッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含む溶液量を添加するステップと、
(b)RNAが存在しない場合に前記ステップ(a)の混合液に対してRNAテンプレートを添加するステップと、
を含み、
前記添加される溶液量は、第一のサーマルサイクル反応段階で酵素分解から前記RT−PCR反応液に存在するRNAを保護するために十分量であり、
前記混合液のRNAは、RT−PCR反応液に存在するリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護されることを特徴とする方法。
【請求項21】
前記ステップ(a)で、前記バッファーは、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(a)の後であり、かつステップ(b)に先立って、混合液は、約55℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ステップ(a)で、前記RT−PCR反応液はRNAを含有せず、前記ステップ(a)の後であり、かつステップ(b)に先立って、前記混合液は少なくとも約90℃の温度まで加熱されることを特徴とする請求項20乃至22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
RT−PCR及び定量RT−PCRを実行する方法であって、該方法は、
(a)RT−PCR試薬の混合液に対して、第二溶液を生じるように、バッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含む第一溶液を添加するステップと、
(b)前記第二溶液に存在するリボヌクレアーゼ活性を阻害するように十分な時間において少なくとも約55℃の温度まで前記第二溶液混合液を加熱するステップと、
(c)RNAの混合液を生じるように前記第二溶液に対してRNAを添加するステップと、
(d)前記ステップ(c)の前記RNA混合液においてRT−PCR反応を行い、それによって、前記RNA混合液中のRNAは前記第二溶液に存在するリボヌクレアーゼによる酵素分解から保護され、かつ、さらに前記混合液中のRNAはRT−PCR反応中にリボヌクレアーゼから保護されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記ステップ(a)で、前記バッファーは、少なくとも50μMDTTの前記第二溶液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ステップ(b)で、前記第二溶液は、約70℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ステップ(b)で、前記第二溶液は、約90℃程度の温度まで加熱されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項26乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項26乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼを失活する方法であって、該方法は、
(a)原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼの含有が疑われる第一溶液に対して、混合液を生じるように、バッファー中にリボヌクレアーゼ阻害タンパク質を含有する第二溶液を添加するステップと、
(b)前記混合液に存在する原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼ活性を阻害するために十分な時間において少なくとも約55℃の温度まで前記ステップ(a)の混合液を加熱し、それによって、前記第一溶液に存在する原核細胞又は植物のリボヌクレアーゼが失活されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
前記ステップ(a)で、前記第二溶液は、少なくとも50μMDTTの混合液を調製するために十分量のDTTを含有することを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、哺乳類に由来することを特徴とする請求項32又は33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記ステップ(a)で、リボヌクレアーゼ阻害タンパク質は、ブタ、ラット、ヒトの胎盤、又は組換え体のヒトの胎盤に由来することを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ステップ(a)で、第一溶液はE.coliのリボヌクレアーゼの含有が疑われ、前記ステップ(b)で、前記混合液に存在するE.coliのリボヌクレアーゼ活性を阻害するために十分な時間で加熱されることを特徴とする請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−524504(P2006−524504A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507196(P2006−507196)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/007845
【国際公開番号】WO2004/094674
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】