説明

高温使用部材の靱性評価方法

【課題】非破壊により簡便に靱性を評価することができる高温使用部材の靱性評価方法を提供する。
【解決手段】本発明の高温使用部材の靱性評価方法は、前記高温使用部材に含まれる炭化物を採取し、前記炭化物中に含まれる2種類の特定炭化物の含有比率J1を測定する工程と、前記含有比率J1から対照サンプルの含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程と、前記差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程と、前記温度変化量ΔFATTに基づいて前記高温使用部材の靱性を評価する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温使用部材の靱性評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電プラントなどで使用されるタービン装置の構成部品(タービンロータやタービン車室)において、高温高圧の蒸気に曝されることによって靱性の低下が生じることが知られている。
靱性の評価方法としては、シャルピー衝撃試験等の破壊靱性試験が従来から行われていた。しかし従来の方法では、実機から試験片を採取する必要があることから試験可能な範囲や数量が限定されるため、非破壊による靱性評価方法が望まれていた。
一方、タービン部品の非破壊検査法としては、炭化物析出量を用いて破壊エネルギーを評価する方法が知られていた(例えば特許文献1参照)。また本発明者らは、CrMoV鋼材における特定の炭化物含有量の比率に基づいてクリープ損傷の進行度合いを評価するクリープ損傷評価法を提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−195795号公報
【特許文献2】特許第3997178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭化物析出量を観測する特許文献1記載の評価方法では、定性的評価は可能であるが定量的評価は困難であった。また、特許文献2記載の技術は靱性評価とは全く異なるクリープ損傷の評価法であり、靱性の評価に適用可能であるかは不明であった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、非破壊により簡便に靱性を評価することができる高温使用部材の靱性評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高温使用部材の靱性評価方法は、上記課題を解決するために、高温環境で使用される高温使用部材の靱性評価方法であって、前記高温使用部材に含まれる炭化物を採取し、前記炭化物中に含まれる2種類の特定炭化物の含有比率J1を測定する工程と、前記含有比率J1から対照部材の含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程と、前記差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程と、前記温度変化量ΔFATTに基づいて前記高温使用部材の靱性を評価する工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
あるいは、本発明の高温使用部材の靱性評価方法は、高温環境で使用される高温使用部材の靱性評価方法であって、前記高温使用部材に含まれる炭化物を採取し、前記炭化物中に含まれる2種類の特定炭化物の含有比率J1を測定する工程と、前記含有比率J1から、予め測定された対照部材の含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程と、前記差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程と、前記温度変化量ΔFATTからシフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’を算出する工程と、前記シフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’に基づいて前記高温使用部材の靱性を評価する工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
この靱性評価方法では、析出する炭化物の形態変化を反映する差分ΔJ(含有比率J1、J0の差分)をパラメータとして用いており、さらに上記形態変化は、靱性低下の進行度合と良好な相関を有する。したがって本発明の評価方法によれば、上記形態変化に基づいた高精度な靱性の推定が可能である。
また、炭化物の形態変化の度合を反映した差分ΔJを用いて評価していることから、評価対象部材における靱性低下の度合を定量的に推定することができる。したがって本実施形態の靱性評価方法を利用することで、評価対象部材の交換、補修の要否等を精度よく管理することができる。
さらに、差分ΔJに基づいて温度変化量ΔFATTを算出し、あるいはさらにシフト後のFATT’を算出している。いずれの指標を用いる場合でも評価対象部材の靱性を温度のパラメータで表現することができるため、管理基準を設定しやすいという利点も得られる。
【0009】
前記特定炭化物がFeCとM23型炭化物であることが好ましく、前記特定炭化物がM型炭化物とMC型炭化物であってもよい。ここで、Mとは金属のことを表すが、本実施形態では大部分の材質はクロムである。
高温使用部材の使用に伴う損傷の進行とともに、FeC型炭化物はM23型炭化物に形態が変化し、M型炭化物はMC型炭化物に形態が変化する。前者は鍛鋼において生じる変化であり、後者は鋳鋼において生じる変化である。したがって上記炭化物を特定炭化物として選定することで、高温使用部材の靱性低下の程度を精度よく評価することが可能である。特定炭化物としていずれの炭化物を選択するかは、高温使用部材の種類(組成等)に応じて選択すればよい。本願明細書の実施の形態では評価対象部材がCrMoV鍛鋼であるため、FeC型炭化物からM23型炭化物への形態変化を観測する場合について説明している。
【0010】
前記含有比率J1を測定する工程が、X線回折分析により得られるチャートにおける2種類の前記特定炭化物のそれぞれのピーク強度から2種類の前記特定炭化物の含有量の比率を算出する工程であることが好ましい。
これにより、特定炭化物の含有量の比率を簡便にかつ精度よく取得することができる。
【0011】
前記対照部材の含有比率J0が、未使用状態の前記高温使用部材における2種類の前記特定炭化物の含有比率であることが好ましい。このように予め基準となる含有比率J0を算出しておくことで、評価対象部材の含有比率J1を測定するのみで効率良く靱性評価を実施することが可能になる。
【0012】
前記対照部材の含有比率J0が、前記高温使用部材と同一材料により構成された物品の低温使用部位から採取された炭化物における2種類の前記特定炭化物の含有比率であることも好ましい。このような評価方法とすれば、未使用状態での特定炭化物の含有比率J0が存在しない場合であっても靱性評価を実施することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る高温使用部材の靱性評価方法によれば、簡便な手法によって精度よく定量的に靱性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る高温使用部材の靱性評価方法を示すフローチャート。
【図2】高温使用部材の組織変化を示す写真。
【図3】抽出レプリカ法の説明図。
【図4】差分ΔJの算出方法の説明図。
【図5】差分ΔJと温度変化量ΔFATTとの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態である高温使用部材の靱性評価方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態の靱性評価方法は、高温使用部材に含まれる炭化物を採取し、採取した炭化物中に含まれる2種類の特定炭化物の含有比率J1を測定する工程S101と、含有比率J1から、予め測定された対照部材の含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程S102と、差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程S103と、温度変化量ΔFATTからシフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’を算出する工程S104と、シフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’に基づいて高温使用部材の靱性を評価する工程S105と、を含む。
【0016】
本発明において評価対象とされる高温使用部材は、例えば、発電プラントのタービンロータやタービン車室などの500℃以上の高温環境で使用されるCrMoV鋼材などである。かかる高温使用部材では、クリープ、脆化等の経年的な材料劣化が進行することが知られており、プラント停止時に損傷についての調査が行われている。
高温使用部材において靱性が低下する脆化現象は、経年劣化により金属結晶の粒界炭化物が粗大化し、この粗大化した炭化物を起点として亀裂が発生しやすくなることにより生じることが知られている。
【0017】
図2は、高温使用部材の一例としてのCrMoV鋼材(鍛鋼)のSEM写真であり、図2(a)は未使用材、図2(b)は損傷材のものである。図2において黒く表示されている粒状の組織が炭化物であり、図2(a)に示す未使用材では、微細な炭化物(FeC、MoC、Vなど)が均一に分散されているのに対して、図2(b)の損傷材では、亀裂の起点となりうる粗大な炭化物(M23型炭化物;M=Mo,Fe,Cr等)が析出している。このように炭化物の形態変化と靱性の低下との間には密接な関係があり、炭化物の形態変化を観測することで靱性の変化を推定することが可能である。
【0018】
以下、本実施形態の靱性評価方法について具体的に説明する。
まず、含有比率J1を測定する工程S101における高温使用部材から炭化物を採取する方法としては、任意の方法を用いることができる。特に限定されるものではないが、このような析出物の採取方法として、例えば、従来より一般に用いられている抽出レプリカ法を好ましく用いることができる。
【0019】
図3は、抽出レプリカ法の概略を示す図である。図3に示すように、抽出レプリカ法は、薄膜12を評価対象の高温使用部材10の表面に付着させ、その後剥離することにより薄膜12が付着した表面の炭化物11を薄膜12に転写させる工程(図3(a))と、薄膜12から炭化物11を回収する工程(図3(b))とを有する採取方法である。
【0020】
薄膜12としては、図3に示すように予め用意されたもの(レプリカフィルム)を用いてもよいし、プラスティック液を高温使用部材10の表面に塗布し、これを乾燥させることにより溶媒を揮発させて薄膜12を形成してもよい。図3(a)には、レプリカフィルム(例えばアセチルセルロースフィルム)からなる薄膜12を高温使用部材10の表面に貼り付けた後、剥離することで炭化物11を薄膜12に転写する工程が示されている。実際のレプリカ抽出法では、図3(a)に示す工程[1]〜[3]を繰り返して行い、精度よく測定ができる程度の量の炭化物11を回収することが好ましい。
また、薄膜12を高温使用部材10の表面に付着させるに際しては、高温使用部材10の表面にダイヤモンドペースト等を用いた機械的研磨による鏡面処理を施した後、高温使用部材10の材質に応じたエッチング液(例えば硝酸アルコール溶液)を用いて研磨面を部分的に溶解させ、高温使用部材10から炭化物11を脱離させやすくすることが好ましい。
【0021】
薄膜12に炭化物11を転写させた後は、図3(b)に示すように、抽出装置20を用いて炭化物11を薄膜12から回収する。抽出装置20は抽出液(例えばアセトン)を収容した本体21と、フィルタ22を備えた抽出部23とを備えている。抽出装置20によれば、抽出液中に薄膜12を浸漬させることで炭化物11を薄膜12から脱離させ、抽出液中に浮遊する炭化物11をフィルタ22により回収することができる。
なお、図3に示す抽出装置20は一例であり、薄膜12から炭化物11を回収可能であれば任意の構成の装置を用いることができる。また、抽出装置20に超音波印加装置等の振動付与手段を設け、炭化物11を効率良く脱離させられるようにしてもよい。
【0022】
次に、高温使用部材10から採取された炭化物11中の特定炭化物(FeC及びM23型炭化物、あるいは、M型炭化物及びMC型炭化物)の同定及び定量方法としては、X線回折や、電子顕微鏡写真とXMA解析により得られるマッピング画像とを対照させる方法など、種々の方法を用いることができる。これらのうちでも、簡便かつ高精度に同定及び定量を行うことができるという点から、X線回折による分析を行うことが好ましい。
本実施形態の場合、図3(b)に示す抽出装置20において炭化物11を付着させたフィルタ22をX線回折測定に用いることができる。
【0023】
X線回折を用いた特定炭化物の同定及び定量は、以下の方法により行うことができる。X線回折(CuKα)により炭化物を分析すると、図4に概略形状を示すチャートが得られる。図4(a)は未使用材(対照部材)から採取した炭化物を測定した場合のチャートを示し、図4(b)は評価対象部材(所定期間使用後の高温使用部材)から採取した炭化物を測定した場合のチャートを示している。
【0024】
図4(a)(b)に示されるように、所定期間使用後の高温使用部材では、未使用材と比較して、回折角度A(約45°)の位置の回折強度が相対的に低下し、回折角度B(約44.3°)の位置の回折強度が相対的に上昇している。図4(a)における回折角度A,Bのピークは、いずれもFeCに由来するものであるが、図4(b)では、FeCの他にM23型炭化物のピークが確認されており、回折角度Bの位置には、FeCのピークにFeCの一部が変化したM23型炭化物のピークが重畳されている。
【0025】
なお、図4に示すチャートは特定炭化物がFeC及びM23型炭化物である場合のものであり、特定炭化物がM型炭化物及びMC型炭化物である場合には当然異なる形状のチャートとなる。例えば、製造時の熱処理温度が比較的低い鍛造品ではFeCが比較的多く析出し、製造時の熱処理温度が比較的高い鋳造品ではM型炭化物が比較的多く析出する。このように評価対象部材の種類によって析出しやすい炭化物が異なるため、より靱性の変化を反映しやすい形態変化を示す特定炭化物を選択することが好ましい。
【0026】
本実施形態において、評価対象部材における特定炭化物の含有比率J1は、図4(b)に示す評価対象部材におけるピークBの位置の回折強度Iを、ピークAの位置の回折強度Iで除した値(I/I)である。一方、対照部材における特定炭化物の含有比率J0は、図4(a)に示す評価対象部材におけるピークBの位置の回折強度Iを、ピークAの位置の回折強度Iで除した値(I/I)である。
【0027】
上記特定炭化物の含有比率J1、J0を算出したならば、次に、工程S102において、差分ΔJ=J1−J0を算出する。その後、工程S103に移行し、差分ΔJに基づいて評価対象部材のΔFATTを算出する。ここで、ΔFATTは、FATT(50%破面遷移温度)の基準値からの変位幅(℃)であり、部材の脆化の指標として用いることができる。
【0028】
ΔFATTを算出する方法としては、予め実測値に基づいて設定された差分ΔJとΔFATTとの関係式(検量曲線)を用いて演算する方法を例示することができる。検量曲線は例えば以下の方法により作成する。
まず、予め複数のサンプル(未使用材を含む高温使用履歴の異なる複数のサンプル)を用意し、これらについて衝撃試験を実施することによりFATTを測定し、測定結果に基づいて温度変化量ΔFATTを算出する。その一方で、同一のサンプルについて抽出レプリカ法及びX線回折法などを用いて差分ΔJを算出する。そして、得られたΔFATTとΔJとをプロットし、これらを対応づける検量曲線を作成する。図5は、検量曲線の一例を示す図であり、実測値に基づいて算出された差分ΔJと温度変化量ΔFATTから得られた検量曲線を示している。
【0029】
差分ΔJは、高温使用部材に含まれる炭化物の形態変化を反映するパラメータである。先に説明したように、かかる形態変化により生じる粗大化した炭化物が起点となって亀裂が発生することにより高温使用部材の脆化が生じることから、靱性の変化を反映させた温度変化量ΔFATTと上記ΔJとの間には、特に部材のクリープ損傷率が比較的高い(50%程度以上)領域で良好な相関が見られる。
したがって、予め差分ΔJと温度変化量ΔFATTとの関係(検量曲線)を用意しておけば、評価対象部材から採取した炭化物を測定し、その測定結果から差分ΔJを算出するという簡便な作業のみで、評価対象部材の温度変化量ΔFATTを高精度に推定することができる。
【0030】
そして、工程S104において、工程S103で取得された温度変化量ΔFATTから、高温使用により変化した(シフトした)50%破面遷移温度FATT’を算出する。具体的には、未使用材のFATTは鋼材の仕様書や先の関数設定の過程で取得できるため、FATT’=FATT+ΔFATTなる式により算出することができる。
このようにしてFATT’を所得することで、続く工程S105において、シフト後のFATT’から評価対象部材の使用温度における靱性を評価することができ、かかる評価に基づいて評価対象部材の交換、補修の要否等を精度よく管理することができる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、温度変化量ΔFATTからシフト後のFATT’を算出し、このFATT’に基づいて評価対象部材の靱性を評価することとしたが、温度変化量ΔFATTは高温使用部材の靱性低下(脆化)に伴って大きくなるため、予め温度変化量ΔFATTと、靱性低下の進行度合とを関連付ける作業を行い、温度変化量ΔFATTの値により管理基準を作成しておけば、FATT’を算出しなくてもよい。
【0032】
また、上記実施の形態では、特定炭化物の含有比率J1、J0の算出に、回折角度A(約45°)、回折角度B(約44.3°)における回折強度を用いたが、計算に用いる回折強度(ピーク)は特定炭化物の種類に応じて選択すればよい。
また、特定炭化物が上記実施形態と同様にFeC及びM23型炭化物である場合に、他のピークの回折強度を用いることもできる。例えば、回折角度Bにおける回折強度Iに代えて、回折角度C、Dにおける回折強度I、Iを用いてもよい。この場合、J1=(I+I)/I、J0=I/Iとして算出することができる。
【0033】
また、上記実施の形態では、対照部材として未使用材を用いる場合について説明したが、靱性評価時に未使用材が入手できないこともある。その場合には、評価対象部材と同種の鋼材からなる実機の部位のうち、使用時に高温にならない部位(例えば200℃以上に加熱されない部位)を対照部材として用いることもできる。高温使用部材の靱性低下は継続的に高温環境に置かれることにより生じるため、低温に保持された部位の鋼材であれば靱性低下はほとんど生じないと考えられ、対照部材として用いることが可能である。
【0034】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の高温使用部材の靱性評価方法によれば、高温使用部材の靱性の変化と良い層間のある炭化物の形態変化を反映した差分ΔJ(=J1−J0)を用いていることで、使用温度における評価対象部材の靱性を高精度に推定することができる。また、炭化物の形態変化の度合を反映した差分ΔJを用いて評価していることから、評価対象部材における靱性低下の度合を定量的に推定することができる。したがって本実施形態の靱性評価方法を利用することで、評価対象部材の交換、補修の要否等を精度よく管理することができる。
【0035】
また、差分ΔJに基づいて温度変化量ΔFATTを算出し、また必要に応じてシフト後のFATT’を算出している。いずれの指標を用いる場合でも評価対象部材の靱性を温度のパラメータで表現することができるため、管理基準を設定しやすいという利点も得られる。
【符号の説明】
【0036】
10 高温使用部材、11 炭化物、12 薄膜、20 抽出装置、21 本体、22 フィルタ、23 抽出部、S101 特定炭化物の含有比率J1を測定する工程、S102 含有比率J1から、予め測定された対照部材の含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程、S103 差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程、S104 温度変化量ΔFATTからシフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’を算出する工程、S105 シフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’に基づいて高温使用部材の靱性を評価する工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温環境で使用される高温使用部材の靱性評価方法であって、
前記高温使用部材に含まれる炭化物を採取し、前記炭化物中に含まれる2種類の特定炭化物の含有比率J1を測定する工程と、
前記含有比率J1から対照部材の含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程と、
前記差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程と、
前記温度変化量ΔFATTに基づいて前記高温使用部材の靱性を評価する工程と、
を有することを特徴とする高温使用部材の靱性評価方法。
【請求項2】
高温環境で使用される高温使用部材の靱性評価方法であって、
前記高温使用部材に含まれる炭化物を採取し、前記炭化物中に含まれる2種類の特定炭化物の含有比率J1を測定する工程と、
前記含有比率J1から、予め測定された対照部材の含有比率J0を差し引いた差分ΔJを算出する工程と、
前記差分ΔJを用いて破壊エネルギー中央温度の温度変化量ΔFATTを算出する工程と、
前記温度変化量ΔFATTからシフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’を算出する工程と、
前記シフト後の破壊エネルギー中央温度FATT’に基づいて前記高温使用部材の靱性を評価する工程と、
を有することを特徴とする高温使用部材の靱性評価方法。
【請求項3】
前記特定炭化物がFeCとM23型炭化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温使用部材の靱性評価方法。
【請求項4】
前記特定炭化物がM型炭化物とMC型炭化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温使用部材の靱性評価方法。
【請求項5】
前記含有比率J1を測定する工程が、X線回折分析により得られるチャートにおける2種類の前記特定炭化物のそれぞれのピーク強度から2種類の前記特定炭化物の含有量の比率を算出する工程であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の高温使用部材の靱性評価方法。
【請求項6】
前記対照部材の含有比率J0が、未使用状態の前記高温使用部材における2種類の前記特定炭化物の含有比率であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高温使用部材の靱性評価方法。
【請求項7】
前記対照部材の含有比率J0が、前記高温使用部材と同一材料により構成された物品の低温使用部位から採取された炭化物における2種類の前記特定炭化物の含有比率であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高温使用部材の靱性評価方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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