説明

高温摩擦磨耗測定装置

【課題】
800〜1400℃の温度で摩擦測定ができる高温摩擦磨耗測定装置を提供すること。
【解決手段】
高温炉内を加熱する発熱部(5)と、試験試料(1)を保持する試料保持部(7、8)と、当該試験試料の表面に圧子(2)を所定の押圧力で押圧して、当該試験試料の表面の摩擦係数・摩擦力又は磨耗量の少なくとも一つを測定する摩擦磨耗測定部(3)と、前記高温炉の炉壁(9、10)に設けられた熱遮断部(9a、9b)とを備える高温摩擦磨耗測定装置であって、前記発熱部と前記試料保持部及び前記摩擦磨耗測定部との間に遮熱性の隔壁(13)を設けることを特徴とする高温摩擦磨耗測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば800〜1400℃での摩擦・磨耗測定試験に用いて好適な高温摩擦磨耗測定装置に関する。更に詳しくは、ボールオンプレート型摩擦測定装置の測定試料及び測定圧子を高温に保持すると共に、摩擦力検出素子と試料駆動ステージに熱的な影響を最小にする断熱構造を有する高温摩擦磨耗測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
摩擦磨耗試験機は、金属やセラミックス等の表面の摩擦力や摩擦量を評価するもので、例えば特許文献1、2で提案されている。このような摩擦磨耗試験機において、例えば800℃以上の高温を測定することも行われている。このような高温材料試験機は、例えば特許文献3で提案されている。
そして、摩擦磨耗試験機と高温材料試験機を組み合わせたものとして、高温摩擦磨耗試験機が知られている。高温摩擦磨耗試験機には、同一箇所を回転摺動する構造類型として、リングオンディスク型(非特許文献1)や、スラストカラ型(非特許文献2)の試験機がよく用いられている。この構造類型は、耐磨耗性に主眼をおいた試験方法に適しており、また回転軸を炉内に挿入できる構造であれば良いために、比較的容易に高温での測定が可能である。そこで、この構造類型では、800℃以上の高温の測定例もある。
【0003】
一方、高温摩擦磨耗試験機には、往復摺動形式のボールオンプレート型の構造類型があり、摩擦現象をより詳細に考察できる利点がある。しかし、この構造類型の試験機に用いられる試料加熱装置は、最高使用可能温度800℃が限界であった。最高使用可能温度は、次の二点から定まる。
(1)摩擦応力を検出する素子の使用温度範囲が−10〜70℃であるために、応力検出素子を温度上昇から守る必要があること。
(2)試料ステージも加熱可能な構造のステージで、現有最高160℃であり、また熱的影響を防ぐ必要から、ボールオンプレート型試験機に厚い断熱層を設ける必要があること。
【0004】
しかし、ボールオンプレート型試験機に厚い断熱層を設けることは、炉自体の重量増加・大型化を招くと共に、耐荷重の大きい駆動ステージが必要であり、当該試験機の製造や設置に多くの課題を生じていた。また、断熱のために使用される各種断熱材料が、昇温・降温操作に伴って飛散して試料表面を汚染するために、試料表面における摩擦力や摩擦量の正確な測定が困難になるという課題があった。
【0005】
試料の固定についても、従来、ネジ等を用いて試料を固定していたが、800℃以上の高温では、試料とネジの固着、ネジそのものの固着により、再使用に問題が生じるという課題があった。また、ネジ頭部が試料最上面よりも突出するために、試料測定領域が狭くなると共に、正確な位置(駆動範囲)を調整しないと圧子と衝突するなどの、測定作業に付随する課題があった。
更に、ネジを用いないで試料を固定する構造もあるが、多様な試料サイズ(厚さ、大きさ)に対して個別の固定が必要になると共に、固定材として使われるセメントの飛散による試料表面の汚染の問題も生じるなど、克服すべき多くの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4194726号明細書
【特許文献2】特開平7−301589号公報
【特許文献3】特開平8−201252号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】尾崎ら、トライボロジスト、第51巻第2号(2006)p.155-165.
【非特許文献2】志村、トライボロジスト、第37巻第9号(1992)p.772-775.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、小型化、均熱化が困難で、精確な測定ができていなかった摩擦磨耗測定用の試料加熱装置において、装置の断熱構造を改良することにより、更に、小型で、より高温での精確な摩擦摩耗試験ができる摩擦磨耗測定用試料加熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記の課題を解決するため、本発明の第1は、例えば図1、図2に示すように、高温炉内を加熱する発熱部(5)と、試験試料(1)を保持する試料保持部(7、8a、8b、8c)と、当該試験試料の表面に圧子(2)を所定の押圧力で押圧して、当該試験試料の表面の摩擦係数・摩擦力又は磨耗量の少なくとも一つを測定する摩擦磨耗測定部(3)と、前記高温炉の炉壁(9、10)に設けられた熱遮断部(9a、9b、10a、10b)とを備える高温摩擦磨耗測定装置であって、前記発熱部と前記試料保持部及び前記摩擦磨耗測定部との間に遮熱性の隔壁(13)を設けることを特徴とする高温摩擦磨耗測定装置である。
【0010】
このように構成された高温摩擦磨耗測定装置において、発熱部(5)は炉内を所定温度範囲、例えば800℃から1400℃の範囲に加熱する。試料保持部(7、8)は、試験試料(1)を摩擦磨耗測定部での測定が容易に行えるように保持する。摩擦磨耗測定部(3)は、当該試験試料の表面の摩擦係数・摩擦力又は磨耗量の少なくとも一つを測定するもので、炉外に存在する。熱遮断部(9a、9b)は、高温炉の炉壁(9、10)に設けられる。遮熱性の隔壁(13)は、発熱部と試料保持部及び摩擦磨耗測定部との間に設けられているので、発熱部と試料保持・測定部とに上下に分割できると共に、当該隔壁は発熱部に使われる断熱材の飛散物を遮蔽でき、飛散物の測定試料への付着を防止できる。
【0011】
本発明の高温摩擦磨耗測定装置において、好ましくは、熱遮断部が、流水冷却部又は断熱材の少なくとも一方を含んで構成されるとよい。このように構成すると、加熱炉外壁の温度を低くすることができる。好ましくは、炉底部は固体断熱材と液体循環断熱の2層構造とし、液体循環の冷却液を炉底部の断熱層を始めに冷却する構造とすると、試料駆動ステージを熱から保護できる。流水冷却部は、熱伝導率の低い水の層を断熱層として形成する構造なので、加熱炉と加熱炉の周囲を覆う断熱材と炉外皮間に断熱層を介在させることとなり、測定試料の加熱速度が緩慢になる。
【0012】
本発明の高温摩擦磨耗測定装置において、好ましくは、摩擦磨耗測定部において、圧子と摩擦力測定素子間に流水冷却断熱構造を備えるとよい。このように構成すると、流水冷却断熱構造内の水を循環または循環冷却させることにより、従来よりも高い断熱性を確保することができ、従来の装置よりも断熱材を薄くすることができる。また、水の断熱層は、圧子と摩擦力測定素子間にも設置されるので、摩擦力測定素子を熱的影響から遮断できる。
【0013】
本発明の高温摩擦磨耗測定装置において、好ましくは、熱遮断部が、発熱部及び試料保持部の全体の外壁を構成し、流水冷却が成されているとよい。このように構成すると、流水冷却により、従来よりも高い断熱性を確保することができ、従来の装置よりも断熱材を薄くすることができる。
【0014】
本発明の高温摩擦磨耗測定装置において、好ましくは、隔壁上に置いた摩擦磨耗測定装置用試料を固定できる試料固定冶具を備えるとよい。試料固定冶具は、試料保持具固定ロッドと、これに固定された試料固定板で構成される。
【0015】
本発明の高温摩擦磨耗測定装置において、好ましくは、試験試料を800〜1400℃で摩擦・磨耗測定試験が行えるように構成するとよい。試料固定冶具は、例えば耐熱性の高いニッケル基超合金を用いるとよい。
【発明の効果】
【0016】
発熱部と試料保持部及び摩擦磨耗測定部との間に遮熱性の隔壁を設けてあるので、発熱材や断熱材からの飛散物から試料の測定面を清浄に保てて、高温においても高精度かつ再現性のある摩擦・磨耗測定が可能になる。また、高温炉の炉壁に熱遮断部を設けているので、加熱炉外壁の温度を低くすることができ、火傷等に対する完全性が高まり、装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は高温摩擦磨耗測定装置の全体構成断面図である。
【図2】図2は図1のA-A断面における加熱装置の全体構成断面図である。
【図3】図3は試料の固定構造の一例を示す要部拡大図である。
【図4】図4は試料の固定構造の他の一例を示す要部拡大図である。
【図5】図5は試料の固定構造の他の一例を示す要部拡大図である。
【図6】図6は試料固定にアルミナセメント等を用いた場合の、試料の固定構造の一例を示す要部拡大図である。
【図7】図7は従来方式と本発明による炉外の温度上昇の差を示した比較図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は高温摩擦磨耗測定装置の全体構成断面図、図2は図1のA-A断面における加熱装置の全体構成断面図である。図において、試料1は、例えば金属やセラミックス等よりなるもので、試料表面の摩擦力や摩擦量が測定対象となっている。圧子2は、所定の圧力により試料表面に接触するもので、先端形状は高精度な研磨により形成される。圧子2には、ロックウェルCスケール圧子、ロックウェルスーパーフィシャル用圧子、高硬度材の硬さ試験に用いられるビッカース硬さ試験用圧子やヌープ硬度用圧子、酸化物系圧子、窒化物系圧子がある。
【0019】
応力検出器3は、圧子2が試料表面を移動する抵抗力を測定する測定器で、例えばロードセルが用いられる。試料測温熱電対4は、試料1の温度を測定する熱電対で、例えばアルメル・クロメルや白金・白金ロジウム合金が用いられる。発熱体5は、固体断熱層11に支持された2本の中空棒体や中実棒体で、例えばSiC発熱体や電熱線を用いて上部炉壁9と下部炉壁10で囲われた炉内を所定温度、例えば800℃から1400℃の範囲に加熱する。発熱体5は、例えば上部炉壁9と下部炉壁10に対応する部位は円筒体であり、炉内側の先端部には一条の螺旋状の割り溝が設けられていて、SiC発熱体の長さと断面積を定めている。なお、発熱体5の割り溝は二条でもよく三条以上でもよい。発熱体電源導入端子6は、発熱体5に電力を供給する電線で、下部炉壁10の外部壁面から露出している。
【0020】
試料固定板7は、試料1の長手方向の両端をはさむもので、固定側と可動側の二箇所設けられており、隔壁板13の上側に置かれた試料1を固定して、圧子2が試料表面を押すことを確実にしている。試料固定板7は、試料1の幅方向の両端に位置する断面矩形の棒体を有している。試料保持具固定子8は、試料保持具固定ロッド14に装着されるもので、固定側の試料固定板7については、試料保持具固定ロッド14の長手方向の両端に固定側固定子8a、8bが取り付けられており、可動側の試料固定板7については、試料保持具固定ロッド14の長手方向の一端に試料保持具固定子8cが取り付けられている。試料保持具固定ロッド14は、炉壁から炉内に延びた二本の棒体で、固定ロッド調整用ネジ14bで試料固定位置を調整できる構造で、上部炉の高さ中央に設けてある。試料保持具固定ロッド14は、隔壁板13上に試料1を保持するのに用いられる。
【0021】
上部炉壁9と下部炉壁10は、例えば縦200mm、横200mm、高さ150mmの炉内空間を形成するもので、両者を挟んで炉内は上下に2分割できる。炉壁表面は、上部炉壁9と下部炉壁10で形成されるもので、ニッケルめっきを施した真鍮製で作製してある。上部炉壁9は、高温炉の側壁に相当する側壁部9aと、高温炉の天井面に相当する天井部9bと、天井部9bに形成された開口部9cを有している。開口部9cは、アルミナロッド15や試料1が炉内に挿入するのに用いる。下部炉壁10は、高温炉の側壁に相当する側壁部10aと、高温炉の底面に相当する底面部10bと、側壁部10aの発熱体電源導入端子6の装着口となる位置に形成された開口部10cを有している。上部炉壁9と下部炉壁10は、内側壁面に液体断熱層12a、12b、12c、12dと厚さ10mmの固体断熱層を設けることで、試料1が例えば800℃から1400℃の範囲に加熱されている場合でも、上部炉壁9と下部炉壁10を構成する材料が溶融することを防止する。
【0022】
液体断熱層12aは、下部炉壁10の側壁部10aに設けられるもので、液体循環冷却断熱層が用いられる。液体断熱層12bは、下部炉壁10の底面部10bに設けられるもので、液体循環冷却断熱層が用いられる。液体断熱層12aと液体断熱層12bは、共通の液体循環路でもよく、また区分された液体循環路でもよい。液体断熱層12cは、上部炉壁9の側壁部9aに設けられるもので、液体循環冷却断熱層が用いられる。液体断熱層12dは、上部炉壁9の天井部9bに設けられるもので、液体循環冷却断熱層が用いられる。液体断熱層12cと液体断熱層12dは、共通の液体循環路でもよく、また区分された液体循環路でもよい。
【0023】
固体断熱層11は、例えば耐火煉瓦やセラミックスよりなるもので、下部炉壁10の側壁部10aに対向する側壁部11aと、下部炉壁10の底面部10bに対向する底面部11bと、発熱体5を支持する支持凸条部11cと、側壁部11aの発熱体電源導入端子6の装着口となる位置に形成された開口部11dで構成される。隔壁板13は、例えば耐火煉瓦やセラミックスよりなるもので、試料1が上部に置かれる。下部炉壁10と隔壁板13で形成される炉下部は、例えば高さ80mmとして、内部に発熱体5を並列に二本設置してある。
【0024】
アルミナロッド15は、炉内側の端部には圧子2が取り付けられ、炉外側の端部には応力検出器3と押圧力発生部が設けられている。押圧力発生部は、試料表面を押す押圧力を発生するもので、例えば分銅、油圧機構、電動モータが用いられる。液体断熱層16は、アルミナロッド15の炉内側の内部側に設けられるもので、アルミナロッド15の炉外側の端部が高温になることを防止する。
【0025】
このように構成された本発明の高温炉内の温度分布を説明する。図7は、従来の加熱炉(A)と本発明の加熱炉(B)の炉外皮面の温度変化を測定した一例をしめす図で、横軸は炉内温度、縦軸は炉外温度を示している。図7(A)に示すように、従来の加熱炉では、炉内試料温度を650℃に加熱すると、応力検出用素子の限界温度に達してしまう。また、800℃以上では、駆動ステージの限界温度となり、更なる高温の測定に問題があることが判る。一方、図7(B)に示すように、本発明の加熱炉では、1400℃まで試料温度を上げても応力検出素子、駆動ステージ共に限界温度に達しないことがわかる。
【0026】
更に、高精度の摩擦摩耗試験を行えるように以下の構造とした。
[1]摩擦力検出素子を熱から保護するために、圧子2の固定にアルミナ棒を用いると共に、圧子2からの伝熱を抑制するためアルミナ棒またはアルミナ管上部に液体循環冷却部を設ける構造とした。また、アルミナ管を用いた場合には、内部に熱電対を配置し、圧子2等の温度を測定できる。液体循環冷却のための配管は、摩擦力検出用天秤構造の支点近傍を通すことによって、配管重量の変動誤差を最小にできる構造とした。
【0027】
[2]試料駆動ステージを熱から保護するために、炉底部にも固体断熱材および液体循環断熱の2層構造とし、液体循環の冷却液を炉底部の断熱層を始めに冷却する構造とした。
【0028】
[3]炉に使われる発熱材料、断熱材等から試料表面を清浄に保つ必要から、炉自体を上下2分割にできる構造とし、炉下部に発熱部5(SiC発熱体)を設け、炉上部の測定部には、発塵の可能性のある固体断熱層および、試料固定のためのアルミナセメント等を用いない構造とした。また、炉下部と炉上部との間に隔壁(耐熱セラミックガラス)を設けた。
【0029】
[4]試料の固定構造を改善した。当初、図6に示す試料の固定構造(試料の外周をアルミナセメントで固定)を試みたが、アルミナセメントと隔壁との密着が不十分であり、昇降温の繰り返しによって割れが生じ、また、飛散するアルミナセメントが、試料表面に付着してしまう欠点があった。また、試料寸法が異なる場合、その都度、試料を固定する作業に、アルミナセメントの固化に長時間が必要であり、改善する必要があった。このことから、図3に示すように、板状(ステンレス鋼)の試料固定板7の両先端を下向きのコの字状に折り曲げて、この試料固定板7の両先端を炉壁9から延びた試料保持具固定ロッド14に摺動自在に取り付け、異なる寸法の試料でも容易に固定と測定位置を変更できる構造とした。
【0030】
[実施例]
試料1の固定構造について、試料固定板7として、幅15mmのステンレス板(SUS430、SUS302または、チタン、モリブデン等の耐熱材料、セラミック)を図3に示すような形状に加工し、試料固定板7を試料保持具固定ロッド14に固定することで、試料寸法の異なる試料(10mm‐60mm)でも、簡便に固定できる。また、測定位置についても試料保持具固定ロッド14の突き出し量を炉外から調整することで容易に変更することができる。また、試料保持具固定ロッド14を炉外に突き出すことで、加熱状態を維持したまま、試料1の位置を変更することが可能である。
【0031】
[比較例]
図6に従来構造であるアルミナセメント17を用いた固定構造を示す。高温・摺動回数が多くなると、アルミナセメント17が高温による劣化と摺動による振動等により、アルミナセメント17の構成物であるアルミナが飛散し試料表面を汚染し、試料1と圧子2の間に入り測定結果に影響を及ぼす。
【0032】
図4と図5は、試料の固定構造の他の一例を示す要部拡大図である。図2の実施例では、試料固定板7は、試料保持具固定ロッド14を囲うような断面矩形の棒体を、両端に有している。図4の実施例では、試料固定板7の両先端を上向きのコの字状に折り曲げて、この試料固定板7の両先端を試料保持具固定ロッド14に摺動自在に取り付けている。図5の実施例では、試料固定板7の両先端を平坦部となるように折り曲げて、この試料固定板7の両先端を試料保持具固定ロッド14に摺動自在に取り付けている。
【0033】
なお、上記の実施形態は本発明を例示する一例であり、本発明を限定する趣旨に解してはならない。例えば、試料固定板の先端形状は、試料保持具固定ロッドに摺動自在に取り付けられていれば足り、図2〜図5に示した形状の他、各種の形状とすることができる。例えば、試料固定板の両先端が試料保持具固定ロッドと接触する位置は、試料保持具固定ロッドの半径方向の両端でもよく、また上下方向の一方でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
従来測定が極めて困難であったボールオンプレート型の試験機による高温領域における摩擦磨耗現象の解明に有益な情報を提供できるだけでなく、加熱部と測定部が隔壁によって分離できることから、測定部の環境を高温油中、半溶融金属中、加熱硬化過程などの測定に用いることを妨げるものではない。さらに、高温度のホットプレートとして用いることも可能であることから、高温粘性測定などにも使用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 試料
2 圧子
3 応力検出器
4 試料測温熱電対
5 発熱体
6 発熱体電源導入端子
7 試料固定板
8 試料保持具固定子
9 上部炉壁
10 下部炉壁
11 固体断熱層
12 液体断熱層
13 隔壁板
14 試料保持具固定ロッド
15 アルミナロッド
16 アルミナロッド液体断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温炉内を加熱する発熱部と、
当該試験試料を保持する試料保持部と、
当該試験試料の表面に圧子を所定の押圧力で押圧して、当該試験試料の表面の摩擦係数・摩擦力又は磨耗量の少なくとも一つを測定する摩擦磨耗測定部と、
前記高温炉の炉壁に設けられた熱遮断部とを備える高温摩擦磨耗測定装置であって、
前記発熱部と前記試料保持部及び前記摩擦磨耗測定部との間に遮熱性の隔壁を設けることを特徴とする高温摩擦磨耗測定装置。
【請求項2】
前記熱遮断部が、流水冷却部又は断熱材の少なくとも一方を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の高温摩擦磨耗測定装置。
【請求項3】
前記摩擦磨耗測定部において、前記圧子と摩擦力測定素子間に流水冷却断熱構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の高温摩擦磨耗測定装置。
【請求項4】
前記熱遮断部が、前記発熱部と前記試料保持部の全体の外壁を構成し、流水冷却が成されていることを特徴とする請求項1に記載の高温摩擦磨耗測定装置。
【請求項5】
隔壁上に置いた前記試験試料を固定できる試料固定冶具を備えることを特徴とする請求項1に記載の高温摩擦磨耗測定装置。
【請求項6】
前記試験試料を800〜1400℃で摩擦・磨耗測定試験が行えることを特徴とする請求項1に記載の高温摩擦磨耗測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−101105(P2013−101105A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220189(P2012−220189)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)