説明

高温耐性ガラス質無機繊維

【課題】少なくとも1330℃までの温度使用限界を有し且つ肺液のような生理学的流体中で非耐久性であるような断熱または遮音材として有用な無機繊維を得る。
【解決手段】少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性ガラス質無機繊維を、71.25質量%よりも多いシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.55質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニア、および任意構成成分としての、生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤を含む諸成分を有する溶融物を調製し;該溶融物から繊維を製造する方法によって製造する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
絶縁材産業においては、肺液のような生理学的流体において耐久性でない繊維を断熱および遮音用途において使用するのが望ましいと判断されている。候補材料は提案されているものの、これら材料の使用温度限界は、ガラス質繊維およびセラミック繊維のような高温耐性繊維を応用する多くの用途に適応させるほどに十分には高くはない。とりわけ、高温耐性繊維は、予測される暴露温度で最低の線収縮を示して断熱する物品に対して効果的な熱保護を提供しなければならない。
生理学的媒質中で分解性である人造ガラス質繊維群の材料に属する多くの組成物が提案されている。これらの繊維は、一般に、有意のアルカリ金属酸化物含有量を有し、多くの場合低使用温度限界を生ずる。
特許文献1は、必須成分としてのシリカ、カルシアおよびNa2O;好ましい成分としてのマグネシアおよびK2O;および、任意成分としてのボリア(boria)、アルミナ、チタニア、酸化鉄類およびフッ化物を含有するガラスから製造した生理学的溶解性を有するガラス繊維を記載している。
特許文献2は、塩水溶液中で可溶性である無機繊維を記載しており、該繊維は、シリカ、アルミナ、酸化鉄、カルシア、マグネシア、Na2OおよびK2Oを含む組成を有する。
特許文献3は、必須成分としてのシリカ、カルシア、Na2O+K2O、およびボリア;および、任意成分としてのアルミナ、マグネシア、フルオライドおよびP2O5を含有する、生理学的媒質中で分界させ得る繊維を製造するのに有用なガラス組成物を記載している。該米国特許は、リンの存在を、生理学的媒質中での繊維の分解速度を増大させる効果を有すると説明している。
【0002】
無機繊維の生物学的溶解性に有利に作用するリンの効果に触れている他の特許としては、シリカとカルシアを実質的に含有するが任意成分としてマグネシアおよびNa2O+K2Oを含有する無機繊維を記載している特許文献4があり、酸化リンを存在させることにより、ガラスマトリックス上でのアルミニウムと鉄の安定化効果を低減させている。これらの繊維は、耐火性セラミック繊維よりも低い温度で典型的に製造されている。本発明者等は、高温耐性繊維において必要な溶融温度(1700〜2000℃)においては、数%ほどの低量の酸化リンにより、炉構成成分の激しい分解および/または腐蝕が生じ得ることを観察している。
特許文献5は、生理学的媒質の存在下に分解し、シリカ、アルミナ、カルシア、マグネシア、P2O5、任意成分としての酸化鉄、およびNa2O+K2Oを含有する繊維を記載している。特許文献6は、生理学的媒質の存在下に分解し、シリカ、アルミナ、カルシア、マグネシア、P2O5、酸化鉄、およびNa2O+K2O+TiO2を含有する無機繊維を記載している。
特許文献7は、一般にカルシアと五酸化リンとの二成分混合物を含むが、他の成分、例えば、フッ化カルシウム、水、およびマグネシア、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化リチウムまたは酸化アルミニウムのような1種以上の酸化物も含む生体吸収性ガラス繊維を記載している。
特許文献8は、五酸化リンおよび酸化鉄を含む生体吸収性ガラス繊維を記載している。P2O5の1部をシリカで置換え得、酸化鉄の1部をアルミナで置換え得る。必要に応じて、この繊維は、Ca、Znおよび/またはMgから選ばれた2価のカチオン化合物、およびNa、Kおよび/またはLiから選ばれたアルカリ金属カチオン化合物を含有する。
特許文献9は、合成肺溶液中に可溶性であるソーダ石灰アルミノボロ-シリケートガラス繊維組成物を記載している。アルミナ含有量は、ボリアの増加およびシリカ、カルシア、マグネシア、K2Oおよび任意成分のNa2Oの調整によって減少する。他の成分としては、酸化鉄、チタニア、フッ素、酸化バリウムおよび酸化亜鉛を含み得る。
【0003】
特許文献10は、塩水溶液中での溶解性を有し、シリカ、カルシア、マグネシアおよび任意成分としてのアルミナを含む無機繊維を記載している。特許文献10は、該繊維組成物が好ましくは55〜64質量%のシリカを含むことを開示している。さらにまた、特許文献10において開示された繊維組成物の例には、62.7質量%よりも多いシリカを含むものはない。
特許文献11は、生理塩水溶液中で抽出性のケイ素を有し、シリカ、カルシア、任意成分としてのマグネシア、アルカリ金属酸化物、並びに1種以上のアルミナ、ジルコニア、チタニア、ボリアおよび酸化鉄を含む無機繊維を記載している。特許文献11は、該繊維組成物が好ましくは35〜70質量%のシリカを含むことを記載している。特許文献11において開示された繊維組成物の例には、68.01質量%よりも多いシリカを含むものはない。特許文献10および特許文献11双方の全体的目的は、伝統的な無機ウール繊維の代替品として有用な繊維組成物を提供することである。
特許文献12は、1回の使用において1000℃および/または800℃に24時間暴露させた時に透揮石に結晶化してシリカ59〜64質量%、アルミナ0〜3.5質量%、カルシア19〜23質量%およびマグネシア14〜17質量%の組成を有し、もう1回の使用において珪灰石/偽珪灰石に結晶化してシリカ60〜67質量%、アルミナ0〜3.5質量%、カルシア26〜35質量%およびマグネシア4〜6質量%の組成を有する塩水可溶性のガラス質繊維を記載している。特許文献12は、該繊維組成物が貧弱に繊維化された70質量%よりも多いシリカ含有量を有すると開示している。
しかしながら、上記の各特許公報に記載されている繊維は、それら繊維の使用温度において制約を有し、従って、1000℃以上で使用する炉ライニングのような高温断熱用途並びに金属マトリックス複合体および摩擦用途のような補強用途においては適していない。
【0004】
特許文献13は、塩水溶解性と耐火性について試験した、追加成分Al2O3、ZrO2およびTiO2を含むCaO/MgO/SiO2繊維を開示している。該文献は、MgO量を増加させることによって塩水溶解性を増大させているようであるが、ZrO2およびAl2O3は溶解性に対し有害であったと説明している。TiO2(0.71〜0.74モル%)およびAl2O3(0.51〜0.55モル%)の存在は、上記繊維を1260℃での3.5%以下の収縮基準に不合格なものにしている。さらに、該文献は、SiO2が高量過ぎる繊維は形成させるのが困難かあるいは不可能であると説明しているし、70.04%、73.09%、73.28%および78.07%のSiO2を含むサンプルを繊維化できなかった例として挙げている。
特許文献12または特許文献13のいずれにおいても、71.24質量%よりも多いシリカを含む繊維溶融組成物が繊維化可能であるという明白な教示はない。特許文献12または特許文献13の教示に従って製造した貧弱に繊維化された繊維は、適切な収縮および/または溶解性特性を有してなく、従って、高温耐性断熱剤としての使用に適していない。
断熱において使用する繊維類において重要である収縮特性によって説明されるような温度耐性以外に、これら繊維類は、使用または稼動温度への暴露中または暴露後に機械的強度特性を有して、繊維が使用中にその構造一体性と断熱特性を維持するのを可能にすることも必要である。
繊維の機械的一体性の1つの特性は、その稼動後の破砕性である。繊維が破壊性であるほど、即ち、繊維が粉末に破砕または崩壊され易いほど、繊維は低い機械的一体性を有する。本発明者等は、一般に、高温耐性と生理学的流体中での非耐久性の双方を示す無機繊維は高度の稼動後破砕性も示すことを観察している。このことは、繊維の断熱目的を達成するのに必要な構造を与え得る稼動温度への暴露後の強度または機械的一体性を繊維が欠除するという結果となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】カナダ特許出願第2017344号
【特許文献2】国際公報WO 90/02713号
【特許文献3】米国特許第5,108,957号
【特許文献4】国際公報WO 92/09536号
【特許文献5】カナダ特許出願第2043699号
【特許文献6】フランス特許出願第2662687号
【特許文献7】米国特許第4,604,097号
【特許文献8】国際公報WO 92/07801号
【特許文献9】米国特許第5,055,428号
【特許文献10】国際公報WO 87/05007号
【特許文献11】国際公報WO 89/12032号
【特許文献12】国際公報WO 93/15028号
【特許文献13】国際出願WO 94/15883号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、実施した試験に従い、稼動温度暴露後の圧縮強度および圧縮回復性のような良好な機械的一体性を示す高温耐性非耐久性繊維を見出した。
しかしながら、目標の耐久性、温度収縮および強度特性を有し得る無機繊維組成物は、その諸成分の溶融物からの紡糸法または吹付け法のいずれによっても繊維化しやすいものでない可能性がある。
本出願の譲受人であるUnifrax Corporation社の米国特許第5,874,375号は、実質的にシリカとマグネシアの繊維化可能溶融物の生成物を含み、生理学的流体中で可溶性であり且つ高使用温度限界において良好な機械的特性を有する特定の無機繊維を開示している。
非耐久性繊維化学物をベースとする製品は、Unifrax Corporation社(ニューヨーク州ナイアガラフォールズ)から、65%のSiO2、31.1%のCaO、3.2%のMgO、0.3%のAl2O3および0.3%のFe2O3の公称質量パーセント組成を有する商品名INSULFRAXとして市販されている。もう1つの製品は、Thermal Ceramics社(ジョージア州オーガスタ在籍)から商品名SUPERWOOLとして市販されており、58.5質量%のSiO2、35.4質量%のCaO、4.1質量%のMgOおよび0.7質量%のAl2O3からなる。この材料は、上述の高温断熱目的において望ましくあるためには低すぎる1000℃の使用限界およびおよそ1280℃の溶融物を有する。
高シリカ含有量およびカルシアを含む繊維化可能な溶融物から、低収縮、低脆性、圧縮強度によって示されるような優れた機械的強度および1260℃以上の稼動温度への暴露後の圧縮からの回復を示す容易に製造可能な無機ガラス質繊維を製造することが望ましい。
本発明によれば、繊維を吹付けまたは紡糸するのに適する粘度を有する溶融物から容易に製造可能であり、且つ生理学的流体中で非耐久性である高温耐性無機ガラス質繊維を提供するすることが望まれ得る。
さらに、本発明によれば、生理学的流体中で非耐久性であり、且つ高圧縮強度および稼動温度への暴露後の圧縮からの回復を示す高温耐性無機ガラス質繊維を提供することが望まれ得る。
また、本発明によれば、生理学的流体中で非耐久性であり、且つ使用温度で低収縮を示す高温耐性無機ガラス質繊維を提供することが望まれ得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、断熱または遮音材として有用であり、少なくとも1330℃までの使用温度限界を有する高温耐性無機繊維に関する。さらに詳細には、本発明は、容易に製造可能であり、低収縮を示し且つ稼動温度への暴露後に良好な機械的強度を有し、さらにまた生理学的流体中で非耐久性である高温耐性繊維に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】商業的に入手可能な紡糸型アルミノシリケート繊維用の溶融化学物の粘度対温度曲線である。
【図1B】商業的に入手可能な吹付け型アルミノシリケート繊維用の溶融化学物の粘度対温度曲線である。
【図2】73.5質量%のシリカを含むカルシア-マグネシア-シリカ繊維溶融化学物の粘度対温度曲線である。
【図3】75質量%のシリカを含むカルシア-マグネシア-シリカ-ジルコニア繊維溶融化学物の粘度対温度曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
生理学的流体中で非耐久性である高温耐性無機ガラス質繊維が提供される。該繊維は、1330℃までまたはそれ以上の温度使用限界を示す。これらの高温において、本発明の繊維は、後述するように、当該温度に24時間保持した時に約20%未満の線収縮しか受けない。耐収縮性は1260℃までの稼動温度において優れており、これらの繊維は1260℃に24時間保持したときに約5%未満の収縮しか示さない。本発明の繊維は、非脆性であり、1260℃の稼動温度への暴露後の試験によって示されるような機械的強度を保持する。
本発明の非耐久性無機ガラス質繊維は、71.25質量%よりも多いシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニア、および任意成分としての有効量の粘度改良剤の繊維化生成物を含む。粘度改良剤は、アルミナ、ボリアおよびこれらの混合物から選択し得る。溶融物に添加したときに溶融物粘度に影響を与えて、後述するような容易に繊維化可能である溶融物の粘度/温度曲線の輪郭または形状を適切にする他の元素または化合物も粘度改良剤として使用し得る。上記繊維は、好ましくは約3.5質量%よりも多くないアルミナを含有し、好ましくは上記繊維は約2.5質量%までのアルミナを含有し、より好ましくは上記繊維は約1.5質量%までのアルミナを含有する。もう1つの実施態様においては、上記繊維は、好ましくは、約3.5質量%よりも多くないアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。さらなる実施態様においては、上記繊維は、約1.5質量%までのアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。
【0010】
もう1つの実施態様においては、本発明の非耐久性無機ガラス質繊維は、約71.25〜約85質量%のシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニア、および任意構成成分としての有効量の粘度改良剤の繊維化生成物を含む。粘度改良剤は、アルミナ、ボリアおよびこれらの混合物から選択し得る。溶融物に添加したときに溶融物粘度に影響を与えて、繊維特性に悪影響を与えないで後述するような容易に繊維化可能である溶融物の粘度/温度曲線の輪郭または形状を適切にする他の元素または化合物も粘度改良剤として使用し得る。上記繊維は、好ましくは約3.5質量%までのアルミナを含有する。ある実施態様においては、上記繊維は約2.5質量%までのアルミナを含有し、より好ましくは上記繊維は約1.5質量%までのアルミナを含有する。もう1つの実施態様においては、上記繊維は、好ましくは、約3.5質量%よりも多くないアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。さらなる実施態様においては、上記繊維は、好ましくは、約1.5質量%までのアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。
もう1つの実施態様においては、本発明は、約71.25〜約79質量%のシリカ、約0〜約16.5質量%のマグネシア、約9〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物を含む、稼動温度への暴露後に機械的一体性を維持する高温耐性非耐久性無機ガラス質繊維もさらに提供する。上記繊維は、約0.10質量%ないし約3.5質量%より多くないアルミナと0〜約1.15質量%のFe2O3として算出した酸化鉄類を任意成分として含有する。
好ましい実施態様においては、本発明は、約71.5〜約76.1質量%のシリカ、約0〜約16.5質量%のマグネシア、約9.25〜約28質量%のカルシアおよび0〜4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物を含む、稼動温度への暴露後に機械的一体性を維持する高温耐性非耐久性無機ガラス質繊維もさらに提供する。
【0011】
本発明は、71.25質量%よりも多いシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニア、および任意成分としての、生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤;任意成分としての、約3.5%までのアルミナ、好ましくは約2.5質量%までのアルミナ、より好ましくは約1.5質量%のアルミナ、および約1.5質量%までのFe2O3を含む諸成分を有する溶融物を調製し;そして、該溶融物から繊維を製造することを含むことを特徴とする、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性無機繊維の製造方法を提供する。さらなる実施態様においては、上記繊維は、好ましくは、約1.5質量%までのアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。
もう1つの実施態様においては、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性無機繊維を製造する上記方法は、71.25〜約85質量%のシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニアおよび任意成分としての有効量の粘度改良剤を含む諸成分を有する溶融物を調製することを含む。粘度改良剤は、アルミナ、ボリアおよびこれらの混合物から選択し得る。溶融物に添加したときに溶融物粘度に影響を与えて、後述するような容易に繊維化可能である溶融物の粘度/温度曲線の輪郭または形状を適切にする他の元素または化合物も粘度改良剤として使用し得る。上記繊維は、好ましくは約3.5質量%までのアルミナを含有し、好ましくは上記繊維は約2.5質量%までのアルミナを含有し、より好ましくは上記繊維は約1.5質量%までのアルミナを含有する。もう1つの実施態様においては、上記繊維は、好ましくは、約3.5質量%までのアルミナと約1.5質量%までの酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。さらなる実施態様においては、上記繊維は、好ましくは、約1.5質量%までのアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)を含有する。
【0012】
もう1つの実施態様においては、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性無機繊維を製造する上記方法は、約71.5〜約79質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシア、約9〜約27質量%のカルシアおよび任意構成成分としての0〜約4.6質量%のジルコニアを含む諸成分を有する溶融物を調製することを含む。
好ましい実施態様においては、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性無機繊維を製造する上記方法は、約71.5〜約76.1質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシア、約9.25〜約28質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアを含む諸成分を有する溶融物を調製することを含む。
本発明の繊維を製造するのに使用する溶融組成物は、繊維を吹付けまたは紡糸するのに、さらにまた、得られる繊維に稼動温度への暴露後に機械的強度を与えるために適し得る溶融物粘度を提供する。
本発明は、さらに、バラの繊維、ブランケット、ニードルドブランケット、紙、フェルト、注型成形体、真空注型体および組立物からなる群から選ばれた高温耐性繊維含有の物品も提供し、該物品は、本発明の低収縮高温耐性無機繊維を含む。
本発明は、さらに、物品の上、中、近くまたは周りに、少なくとも1330℃までの稼動温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である断熱材を配置させることを含む物品の断熱方法も提供し、該断熱材は、上述の実施態様のいずれかの繊維を含む。
【0013】
本発明によれば、少なくとも1330℃までの温度使用限界を有し且つ肺液のような生理学的流体中で非耐久性であるような断熱または遮音材として有用な無機繊維が提供される。生理学的流体中で非耐久性とは、繊維がそのような流体(模擬肺液のような)中で生体外試験において少なくとも部分的に溶解することを意味する。
無機組成物が満足し得る高温無機繊維製品を製造するための実施可能な候補であるためには、製造する繊維は、製造可能であり、生理学的流体中で十分に可溶性であり、且つ最低の収縮と最低の一体性喪失を伴なって高温に耐え得なければならない。これらの基準を満たす材料を特定するのに、1群のスクリーニング試験を使用して目標特性を示す繊維を同定した。これらの試験としては、(a)粘度/繊維化性、(b)耐久性、(c)温度での収縮性および(d)稼動後の破砕性、強度および復元力がある。
“粘度”とは、ガラス溶融物の流動または剪断応力に対抗し得る能力を称する。粘度-温度関係は、与えられたガラス組成物を繊維化し得るかどうかを決定するのに重要である。最適の粘度曲線は、繊維化温度において低粘度(5〜50ポイズ)を有し、温度が低下するにつれて次第に増大する。溶融物が繊維化温度で十分に粘稠でない(希薄すぎる)場合、結果は、短い薄い繊維であり、未繊維化材料(ショット)の大量の発生を伴なう。溶融物が繊維化温度で粘稠過ぎると、得られる繊維は、極めて粗く(高直径)て短い。
粘度温度プロフィールは、昇温下において操作し得る粘度計によって測定し得る。さらに、適切な粘度プロフィールは、製造した繊維の品質(指数、直径、長さ)を検査する一般的な試験によっても推察し得る。
【0014】
耐久性試験は、ヒトの肺臓中に見出される温度および化学条件を模擬する条件下において、繊維から質量が損失する速度(ng/cm2-hr)を測定する。この試験は、約0.1 gの脱ショット繊維を0.3 ml/分流量の模擬肺液(SLF)に暴露させることからなる。試験系全体を37℃に保持して、人体温度を模倣する。試験は、好ましくは、約2〜4週間継続する。
SLFが繊維中を流れた後、SLFを集め、誘導結合プラズマ分光測定法を使用し、ガラス成分について分析する。“ブランク”SLFサンプルも測定して、SLF中に存在する元素分について補正するのに使用する。このデータが得られると、繊維が試験の時間間隔に亘って質量を損失する速度を算出することが可能である。
収縮については、繊維を湿式成形してパッドとし、パッドの長さと幅寸法(典型的には3×5インチ(7.62〜12.7 cm))をキャリパーにより測定し、パッドを炉中に入れ、温度勾配を設け、一定時間保持することによって繊維を試験する。加熱後、パッドを再測定して、生じたあらゆる寸法の変化を測定する。
1つのそのような試験においては、パッドは、約427グラムの繊維、27.2グラムのフェノール系バインダーおよび約4ガロン(約15.1リットル)の水を混合し、混合物をシート金型に注ぎ入れ、金型底部から排水することによって製造する。パッドを乾燥させ、3インチ×5インチ×1インチ(7.62 cm×12.7 cm×2.54 cm)寸法の片にカットする。この片の長さと幅を注意深く測定し、パッドを炉中に入れ、1150℃、1260℃または1330℃の稼動温度に24時間暴露する。冷却後、横寸法を測定し、線収縮を測定“前”と“後”で比較することによって測定する。繊維をブランケット形で利用し得る場合、測定は、パッドを形成させる必要はなく、ブランケットで直接実施し得る(そのようなブランケット収縮測定値は、同一ではないが、パッド収縮測定値と相関する)。
【0015】
稼動後破砕性は、繊維が高温への暴露後にその機械的一体性を保持する能力を称する。これは、繊維が如何なる用途においても繊維自体の重量を維持しなければならずまた移動性空気またはガスによる磨耗にも耐え得なければならないので、重要な特性である。繊維一体性と機械的強度の指標は、目視および触知観察、並びに稼動温度暴露後繊維のこれら特性の機械的測定によって与えられる。
収縮パッドの稼動後一体性は、2つの試験、即ち、圧縮強度および圧縮回復によって示される。これらの試験は、それぞれ、パッドが如何に容易に変形され得るかどうか、およびパッドが50%の圧縮後にどの程度の復元量(即ち、圧縮回復)を示すかを測定する。
本発明の繊維から製造した収縮パッドを1150℃および1260℃のような試験稼動温度で24時間加熱し、次いで、Instron試験装置を使用して圧縮試験した。2.5インチ(6.35 cm)直径の円筒状ラムを、収縮パッドに、パッドがその元の厚さの半分まで圧縮されるまで押込んだ。この時点で、クロスヘッドを停止させ、圧縮中に発生したピーク荷重(psiでの)を記録した。
その後、圧縮回復を、クロスヘッドの移動方向をゆっくり反転させ、円筒状ラムを収縮パッドから荷重読取値がゼロになるまで戻すことによって測定した。50%圧縮点からゼロ荷重点までの移動距離を記録し、元のパッド厚のパーセントとして表す。この数値が繊維パッドの復元量の指標である。
この試験基準により、貧弱な性能のパッドは、容易に圧縮されることを示唆する圧縮強度の低い値、および一旦変形するとパッドが殆ど回復を示さないことを示唆する圧縮回復の低い値を有するであろう。逆に、これらのパラメーターにおいて高い値を有するパッド/繊維組成物は、高い機械的強度を有し、良好な性能体とみなされる。理想的な繊維は、標準の市販アルミノシリケート繊維に匹敵する目標範囲内の圧縮強度を有し、さらに高圧縮回復、即ち、復元力を有する。
【0016】
本発明は、71.25質量%よりも多いシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニア、および任意構成成分としての、生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤含む諸成分を有する溶融物を調製し;そして、該溶融物から繊維を製造することを含むことを特徴とする、少なくとも1330℃までの使用温度において低収縮を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である高温耐性ガラス質無機繊維の製造方法を提供する。上記繊維は、好ましくは、約3.5質量%までのアルミナを含有する。ある実施態様においては、上記繊維は、約2.5質量%までのアルミナ、より好ましくは約1.5質量%のアルミナを含有する。もう1つの実施態様においては、上記繊維は、約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3として算出)と約3.5質量%よりも多くないアルミナを含有する。さらなる実施態様においては、上記繊維は、必要に応じて、約1.5質量%までのアルミナと約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3して算出)を含有する。
本発明に従う非耐久性無機繊維は、標準の製造方法によって製造する。シリカ、および任意の適切なカルシウムおよびマグネシウム源(例えば、ガンカキ石、苦土かんらん石、マグネシア、マグネサイト、カ焼マグネサイト、ジルコン酸マグネシウム、ペリクレース、ステアタイト、タルク、かんらん石、方解石、石灰、石灰石、カ焼石灰石、珪灰石、ドロマイト、またはドロマイト質生石灰)のような原材料を、貯蔵所から選定した割合で炉に送り、溶融し、繊維化ノズルを使用して吹付ける、あるいはバッチまたは連続方式のいずれかで紡糸する。
本発明に従う非耐久性ガラス質無機繊維は、標準の製造方法によって製造する。71.25質量%よりも多いシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.5質量%のカルシア、任意成分としてのジルコニア、および任意成分としての、生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤を一般に含む原材料を、上述したような溶融物に送り、吹付けまたは紡糸する。
溶融物の粘度は、所望の用途において要求される繊維化を提供するのに十分な粘度改良剤を存在させることにより、必要に応じて調整し得る。粘度改良剤は、溶融物の主成分を供給する原材料中に存在させてもよく、あるいは少なくとも1部を別個に添加してもよい。原材料の所望粒度は、炉サイズ(SEF)、注入速度、溶融物温度、滞留時間等のような炉処理条件によって決定する。
【0017】
本発明の1つの実施態様によれば、上記無機繊維は、約20%未満の線収縮でもって少なくとも1330℃までの使用温度に耐えることができ、低稼働後破砕性を示し、肺液のような生理学的流体において非耐久性である。本発明の非耐久性耐火性無機繊維は、71.25質量%よりも多いシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.5質量%のカルシア、および任意成分としての、生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤の繊維化生成物を含む。上記繊維は、好ましくは約3.5質量%までのアルミナ、より好ましくは約2.5質量%までのアルミナ、最も好ましくは約1.75質量%までのアルミナ;および約1.5質量%よりも多くない酸化鉄類(Fe2O3して算出)、より好ましくは約1.15質量%よりも多くない酸化鉄類を含有する。粘度改良剤は、アルミナ、ボリアおよびこれらの混合物から選択し得る。溶融物に添加したときに溶融物粘度に影響を与えて、繊維特性に悪影響を有しないで容易に繊維化可能である溶融物の粘度/温度曲線の輪郭または形状を適切にする他の元素または化合物も粘度改良剤として使用し得る。
好ましい範囲においては、上記の非耐久性耐火性ガラス繊維は、約71.5〜約79質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシア、約9〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニア;約71.5〜約76.1質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシアおよび約9.25〜約28質量%のカルシア;並びに72〜約75質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシア、約9.25〜約28質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物を含む。ジルコニアは、約5質量%まで、より好ましくは約4.6質量%までの任意成分として存在させ得る。下記の表1には、少なくとも1330℃の稼動温度に対して目標の収縮および機械的強度特性を有し、とりわけ、溶融物から繊維化するのに適している本発明の組成物の例を列挙している。
【0018】
本発明の溶融物および繊維においては、操作可能なシリカ量は、71.24質量%よりも多く、好ましくは71.25質量%よりも多く約85質量%までのシリカ、より好ましくは71.5質量%よりも多く約79質量%までのシリカ、より好ましくは約72〜約79質量%のシリカ、最も好ましくは約72〜約75質量%のシリカであり、シリカの上限量は製造可能性によるだけである。このことは、71.24質量%よりも多いシリカ量を有する繊維は製造できないと説明している当該技術における教示とは相反する。
本発明の繊維は、好ましくは、痕跡量の不純物よりも多いアルカリ金属を実質的に含有しない。これらの繊維のアルカリ金属含有量は、アルカリ金属酸化物として算出して、一般に痕跡量の不純物範囲内、多くても数100分の1パーセントである。
上記繊維組成物のさらなる特定の実施態様は、約72〜約79質量%のシリカ、0〜約1質量%のマグネシア、約18〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物;約72〜約75質量%のシリカ、約8〜約12.5質量%のマグネシアおよび約12.5〜約18質量%のカルシアの繊維化生成物;および約72.5〜約73質量%のシリカ、約3〜約4質量%のマグネシアおよび約22〜約23質量%のカルシアの繊維化生成物を含む。
【実施例】
【0019】
表1に列挙した本発明のガラス質無機繊維組成物は、吹付け法により上述のようにして製造し、1330℃の温度での線収縮と稼動後破砕性について試験した。これらの試験の結果は、下記の表2に示している。これらと同じ試験を市販のマグネシウムシリケート繊維と2つの異なる市販のカルシウムシリケート繊維(これらは、すべて紡糸法を使用して製造された)についても実施した。後者の各組成物は、比較組成物3〜4として記しており、それら組成物も表1に示している。各比較繊維の試験結果も表2に示している。

表1

「実施例1」
【0020】
組成物1は、約72.57質量%のSiO2、約22.4質量%のCaOおよび約3.21質量%のMgOを含む溶融物から吹付け加工した繊維である。この吹付け繊維の直径は1.56μmであった。
「実施例2」
【0021】
組成物2は、約72.64質量%のSiO2、約22.23質量%のCaOおよび約3.18質量%のMgOを含む溶融物から吹付け加工した繊維である。この吹付け繊維の直径は、1.27μmであった。
「実施例3」
【0022】
比較組成物3は、76.46のシリカと20.87質量%のマグネシアを含む溶融物から紡糸し、直径4.5μmを有する市販マグネシアシリケート繊維であった。比較組成物3は、1330℃の温度に暴露後、11%の線収縮を示していた。本発明のカルシウムマグネシアシリケート繊維は、より経済的に製造できるという利点を有しながら、この望ましい性能に近い。
「実施例4」
【0023】
比較組成物4は、65.36質量%のSiO2、14.34質量%のMgOおよび18.82質量%のCaOを含む溶融物から紡糸した市販のカルシウムシリケート組成物であり、直径4.8μmを有していた。この繊維は、1330℃で高めの線収縮率を有し、1260℃の稼動温度に暴露後、本発明のカルシウムシリケート繊維よりも脆かった。
「実施例5」
【0024】
比較組成物5は、66.9質量%のSiO2、3.7質量%のMgOおよび28.2質量%のCaOを含む溶融物からの紡糸によって形成させた市販のカルシウムシリケート組成物であり、直径4.3μmを有していた。この比較組成物も、1260℃の稼動温度での本発明のカルシウムシリケート繊維の収縮率よりも高い線収縮を有し、1260℃の温度に暴露後、本発明の繊維よりも脆かった。
【0025】
表2

* 試験せず

上記のデータから分るように、本発明のガラス質無機繊維は、比較の市販カルシウムシリケート組成物4および5よりも、1260℃の稼動温度への暴露後脆さは小さく、1330℃の温度で低い線収縮を示している。さらに、本発明の繊維は、市販のカルシウムシリケート繊維よりも大きい機械的強度を有している。
【0026】
粘度対温度
ガラス組成物における粘度対温度曲線の形状は、溶融物を繊維化する容易さ、従って、得られる繊維の品質を代表する(例えば、繊維のショット含有量、繊維直径および繊維長に影響を与える)。ガラス類は、一般に、高温では低粘度を有する。温度が低下するにつれて、粘度は上昇する。一定温度での粘度値は、粘度対温度曲線の全体的急勾配と同様に、組成の関数として変動する。
確定した組成の繊維が許容し得る品質レベルで容易に製造できるかどうかを試験する1つの方法は、試験化学物の粘度曲線が容易に繊維化し得る公知の製品の粘度曲線と合致するかどうかを検証することである。そのような目標粘度曲線は、商業的に入手可能な紡糸型アルミノシリケート繊維における粘度曲線である図1A、および商業的に入手可能な吹付け型アルミノシリケート繊維における粘度曲線である図1Bに示している。
図2は、75質量%のシリカ、8質量%のマグネシア、15質量%のカルシアおよび2質量%のジルコニアを含むカルシア-マグネシア-ジルコニア-シリカ繊維溶融化学物の粘度曲線を示す。この曲線は、商業的に入手可能な紡糸型アルミノシリケート繊維における図1Aの目標粘度曲線に近い。図3は、73.5質量%のシリカ、13.5質量%のマグネシアおよび13.5質量%のカルシアを含むカルシア-マグネシア-シリカ繊維溶融化学物の粘度曲線を示す。この曲線は、商業的に入手可能な吹付け型アルミノシリケート繊維における図1Bの目標粘度曲線に近い。本発明に従うこれらの繊維溶融化学物は、通常の吹付けまたは紡糸法による線維化に良好に適している。
【0027】
下記の表3に列挙している本発明のガラス質無機繊維組成物のさらなる例を製造し、種々のサンプルを、1150℃、1260℃および1330℃の温度での線収縮並びに圧縮回復および生理学的流体中での溶解性について試験した。これらの試験の結果を表4に示す。組成物6の繊維は約2.37ミクロンの平均直径を有し、組成物7の繊維は約2.42ミクロンの平均直径を有していた。
表3

【0028】
これらの同じ試験を、2つの異なるカルシウムシリケート繊維および2つの異なるマグネシウムシリケート繊維においても実施した。これらの組成物は、比較組成物C20〜C23として表に示しており、これら組成物の組成も表3に示している。各比較繊維の収縮試験結果も表4に示している。
表4

1 試験を実施せず、収縮データは得られていない。

本発明の繊維は、1150℃、1260℃および1330℃の稼動温度後に、優れた収縮抵抗性と圧縮回復により測定したときの機械的強度を有しており、模擬肺液中で測定したとき、生理学的流体中に可溶性である。
模擬肺液中の上記各繊維の耐久性の分析は、これらの繊維がアルミノシリケート類(約50/50質量%)およびアルミノ-ジルコニア-シリケート類即ちAZS(約30/16/54質量%)のような通常の耐火性セラミック繊維よりも有意に低い耐久性であることを示唆している。
上記本発明の繊維についての各試験は、吹付け法を使用して製造した繊維について実施している。本発明の繊維は、紡糸法を使用しても製造し得る。
【0029】
下記の表5は、本発明の繊維組成物の幾つかの例示としてのさらなる例を挙げている。

表5


従って、71.25質量%よりも多いシリカ、好ましくは約71.5〜約79質量%範囲のシリカ、より好ましくは約72〜約79質量%範囲のシリカ、より好ましくは約72〜約75質量%範囲のシリカの繊維化生成物を含み、さらにカルシア、任意性成分としてのマグネシア、任意成分としてのジルコニアおよび任意成分としての粘度改良剤を含有する繊維組成物が高温耐性断熱繊維として容易に繊維化可能であることが実証されている。このことは、71.24質量%よりも多いシリカを含む溶融物組成物を繊維化して繊維とすることは不可能ではないにしても極めて困難であると教示している従来技術の教示と相反する。
また、71.25質量%よりも多いシリカ、好ましくは約71.5〜約79質量%範囲のシリカ、より好ましくは約72〜約79質量%範囲のシリカ、より好ましくは約72〜約75質量%のシリカの繊維化生成物を含有し、さらにカルシア、任意性成分としてのマグネシア、任意成分としてのジルコニアおよび任意成分としての粘度改良剤を含有する本発明の繊維組成物が、1150℃および1260℃の稼動温度のみならず1330℃の稼動温度においても許容し得る収縮特性を有することも実証されている。この驚くべき予想外の1330℃の稼動温度での低収縮特性は、シリカ、カルシアおよび任意成分としてのマグネシアを含有する繊維組成物に関連する従来技術において開示も示唆もされていない。しかも、上記繊維組成物は、優れた稼動後機械強度を有し、生理学的流体中で可溶性である。
【0030】
本発明は、上述した特定の実施態様に限定されるものではなく、追従する変形、修正および等価の実施態様も包含するものと認識すべきである。個々に開示した上記の各実施態様は、本発明の各種実施態様が組合せることによって所望の特性または結果を提供することから、必ずしも、別個の形ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
71.25質量%よりも多く約85質量%までのシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシアおよび0〜約5質量%のジルコニアの繊維化生成物、および任意成分としての、該生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤を含むことを特徴とする、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中で非耐久性である低収縮高温耐性無機繊維。
【請求項2】
前記繊維が、約71.5〜約79質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシア、約9〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項3】
前記繊維が、約71.5〜約76.1質量%のシリカ、約9.25〜約28質量%のカルシア、約0〜約16.5質量%のマグネシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項4】
前記繊維が、約72〜約75質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシアおよび約9.25〜約28質量%のカルシアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項5】
前記繊維が、約72〜約79質量%のシリカ、0〜約1質量%のマグネシア、約18〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項6】
前記繊維が、約72〜約75質量%のシリカ、約8〜約12.5質量%のマグネシアおよび約12.5〜約18質量%のカルシアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項7】
前記繊維が、約72.5〜約73質量%のシリカ、約3〜約4質量%のマグネシアおよび約22〜約23質量%のカルシアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項8】
前記繊維が、約71.25質量%よりも多いシリカ、約1.75〜約10.75質量%のマグネシアおよび約18〜約27質量%のカルシアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項9】
前記繊維が、約71.5質量%よりも多いシリカ、約7.15〜約10.65質量%のマグネシアおよび約17.85〜約21.35質量%のカルシアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項10】
前記繊維が、約78.5質量%よりも多いシリカ、約5.38〜約8.05質量%のマグネシアおよび約13.45〜約16.12質量%のカルシアの繊維化生成物を含む、請求項1記載の繊維。
【請求項11】
Fe2O3として算出した約1.5質量%までの酸化鉄を含有する、請求項1記載の繊維。
【請求項12】
Fe2O3として算出した約1.15質量%までの酸化鉄を含有する、請求項11記載の繊維。
【請求項13】
約3.5質量%までのアルミナを含有する、請求項1記載の繊維。
【請求項14】
約2.5質量%までのアルミナを含有する、請求項13記載の繊維。
【請求項15】
約1.5質量%までのアルミナを含有する、請求項13記載の繊維。
【請求項16】
前記繊維が1260℃、24時間で約5%未満の線収縮を示す、請求項1記載の繊維。
【請求項17】
前記繊維が1330℃、24時間で約20%以下の線収縮を示す、請求項1記載の繊維。
【請求項18】
前記繊維が、1260℃の稼動温度への暴露後の50%圧縮後に少なくとも約5%の回復を示す、請求項1記載の繊維。
【請求項19】
バラの繊維、ブランケット、ニードルドブランケット、紙、フェルト、注型成形体、真空注型体および組立物からなる群から選ばれた高温耐性繊維含有の物品であって、請求項1〜18のいずれか1項記載の繊維を含むことを特徴とする物品。
【請求項20】
71.25質量%よりも多く約85質量%までのシリカ、0〜約20質量%のマグネシア、約5〜約28.75質量%のカルシア、0〜約5質量%のジルコニア、および任意成分としての、生成物を繊維化可能にするのに有効な量の粘度改良剤を含む諸成分を有する溶融物を調製し;そして、該溶融物から繊維を製造することを含むことを特徴とする、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性繊維の製造方法。
【請求項21】
前記溶融物の諸成分が、約71.5〜約79質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシア、約9〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記溶融物の諸成分が、約71.5〜約76.1質量%のシリカ、約0〜約16.5質量%のマグネシア、約9.25〜約28質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記溶融物の諸成分が、約72〜約75質量%のシリカ、0〜約16.5質量%のマグネシアおよび約9.25〜約28質量%のカルシアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記溶融物の諸成分が、約72〜約79質量%のシリカ、0〜約1質量%のマグネシア、約18〜約27質量%のカルシアおよび0〜約4.6質量%のジルコニアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記溶融物の諸成分が、約72〜約75質量%のシリカ、約8〜約12.5質量%のマグネシアおよび約12.5〜約18質量%のカルシアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項26】
前記溶融物の諸成分が、約72.5〜約73質量%のシリカ、約3〜約4質量%のマグネシアおよび約22〜約23質量%のカルシアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項27】
前記溶融物の諸成分が、約71.25質量%よりも多いシリカ、約1.75〜約10.75質量%のマグネシアおよび約18〜約27質量%のカルシアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項28】
前記溶融物の諸成分が、約71.5質量%よりも多いシリカ、約7.15〜約10.65質量%のマグネシアおよび約17.85〜約21.35質量%のカルシアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項29】
前記溶融物の諸成分が、約78.5質量%よりも多いシリカ、約5.38〜約8.05質量%のマグネシアおよび約13.45〜約16.12質量%のカルシアを含む、請求項20記載の方法。
【請求項30】
前記溶融物の諸成分が、Fe2O3として算出した約1.5質量%までの酸化鉄を含有する、請求項20記載の方法。
【請求項31】
前記溶融物の諸成分が、Fe2O3として算出した約1.15質量%までの酸化鉄を含有する、請求項20記載の方法。
【請求項32】
前記溶融物の諸成分が、約3.5質量%までのアルミナを含有する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記溶融物の諸成分が、約2.5質量%までのアルミナを含有する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記溶融物の諸成分が、約1.5質量%までのアルミナを含有する、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記繊維を前記溶融物から紡糸することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項36】
前記繊維を前記溶融物から吹込成形することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項37】
請求項20〜36のいずれか1項に従って製造した、少なくとも1330℃までの使用温度を有し、該使用温度に暴露後に機械的一体性を維持し且つ生理学的流体中では非耐久性である低収縮高温耐性無機繊維。
【請求項38】
物品の上、中、近くまたは周りに、少なくとも1330℃までの稼動温度を有する断熱材を配置させることを含み、該断熱材が請求項1〜18のいずれか1項記載の繊維を含むことを特徴とする物品の断熱方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−72542(P2012−72542A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278(P2012−278)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【分割の表示】特願2003−560106(P2003−560106)の分割
【原出願日】平成15年1月10日(2003.1.10)
【出願人】(500421462)ユニフラックス ワン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】