説明

高温集塵装置のダスト払い落し制御方法および制御装置

【課題】燃焼ガス温度の低下を抑制しつつ、セラミックフィルタの目詰まりを効果的に防止する。
【解決手段】高温集塵装置3の入口における燃焼ガス温度を温度検出器16にて検出し、この検出される燃焼ガス温度が予め設定される所定温度以上になったときに、圧縮空気供給装置5から高温集塵装置3のセラミックフィルタの内部に所定量および所定圧の圧縮空気を吹き込んでセラミックフィルタの表面に付着したダストを払い落す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物の燃焼等により発生する高温燃焼ガス中のダストを筒状のセラミックフィルタにより除去する高温集塵装置のダスト払い落し制御方法および制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却炉や焼却灰の溶融炉等にて発生する高温の燃焼ガスを集塵する集塵装置として、耐熱性を有する筒状のセラミックフィルタを用いた高温集塵装置が用いられている(特許文献1参照)。セラミックフィルタは、その特性から高温雰囲気においても使用可能であるため、ボイラよりも上流側に設置することができる。こうして、燃焼ガス中のダストをボイラ上流で除去することにより、ボイラへのダストの付着を抑制し、過熱管の腐食を防止し、ボイラ蒸気の温度を高くすることができ、これによって熱回収効率を向上させることができる。
【0003】
ところで、この種の高温集塵装置においては、筒状のセラミックフィルタの外側からダストを含む高温燃焼ガスが供給され、セラミックフィルタの細孔を有するセラミック層にてダストが除去され、精製された燃焼ガスがセラミックフィルタの内側空間を通って排出される。このようなダスト除去機構となっているので、燃焼ガスを連続的に流通させると、セラミックフィルタの外表面にダストが付着、堆積し、細孔が目詰まりを起こすため、定期的にセラミックフィルタの内側空間に圧縮空気を供給する(逆洗浄する)ことで、ダストを払い落すようにされている(特許文献2参照)。
【0004】
図4には、従来のダスト払い落し制御装置のシステム構成図が示されている。図示のように、焼却炉50の燃焼ガス通路51には、ボイラ52の上流側にセラミックフィルタを備えた高温集塵装置53が設置されている。この高温集塵装置53には圧縮空気供給装置54が接続され、制御装置55からの指令信号によりその圧縮空気供給装置54からセラミックフィルタの内側空間に圧縮空気が供給される。また、高温集塵装置53の入口側と出口側との差圧を演算する差圧検出装置56が設けられ、この差圧検出装置56からの信号に基づき、前記制御装置55はその差圧が所定値以上になったときに、セラミックフィルタに目詰まりが発生したと判断され、圧縮空気供給装置54に指令信号が送信されてフィルタ逆洗のための圧縮空気が供給される。
【0005】
しかしながら、前記従来のダスト払い落し制御装置では、高温集塵装置53の入口側と出口側との差圧が上昇した際に、言い換えればフィルタに目詰まりが発生した際に圧縮空気を供給するように構成されているため、フィルタに詰まったダストを効果的に除去できない場合があり、圧縮空気量を多くしたり、圧縮空気圧を大きくしたり、あるいは供給頻度を多くしたりする必要があった。そして、このようにダスト払い落しのための空気量、払い落し回数等を多くすると、燃焼ガス温度が低下し、高温集塵装置53の下流側に配されるボイラ52での熱回収効率が低下してしまうという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開2001−108216号公報
【特許文献2】特開2001−179024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、燃焼ガス温度の低下を抑制しつつ、セラミックフィルタの目詰まりを効果的に防止することのできる高温集塵装置のダスト払い落し制御方法および制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、焼却炉出口のセラミックフィルタの目詰まりは、燃焼ガス中のダストやヒュームに含有されるNa、K、Caなどの成分が作用して生じることを見出した。Na、K、Caといったアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物等は低融点のため、燃焼ガス温度が高いほど融解する。そして、この融解した塩化物等はセラミックフィルタの細孔に侵入、固着し、細孔の目詰まりを引き起こす。このようなことから、本発明者らは、セラミックフィルタの目詰まりは高温集塵装置の入口温度に依存するとの知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0009】
要するに、前記目的を達成するために、第1発明による高温集塵装置のダスト払い落し制御方法は、
筒状のセラミックフィルタにより高温燃焼ガス中のダストを除去する高温集塵装置において、
前記高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度を検出し、この検出される燃焼ガス温度が予め設定される所定温度以上になったときに、前記セラミックフィルタの内部に所定量および所定圧の圧縮空気を吹き込んでセラミックフィルタの表面に付着したダストを払い落すことを特徴とするものである。
【0010】
また、第2発明による高温集塵装置のダスト払い落し制御装置は、
筒状のセラミックフィルタにより高温燃焼ガス中のダストを除去する高温集塵装置において、
(a)前記セラミックフィルタの内部に圧縮空気を吹き込む圧縮空気供給手段と、
(b)前記高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度を検出する温度検出手段と、
(c)前記高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度と、前記圧縮空気供給手段より供給する圧縮空気量、圧縮空気圧および圧縮空気供給回数との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、
(d)前記温度検出手段により検出される燃焼ガス温度が予め設定される所定温度以上になったときに、その燃焼ガス温度に対応する圧縮空気量、圧縮空気圧および圧縮空気供給回数のデータを前記記憶手段より読み出して指令値を演算し、この指令値に基づいて前記圧縮空気供給手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
前記第1発明および第2発明によれば、高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度に応じてセラミックフィルタの表面に付着したダストを払い落すための圧縮空気量、圧縮空気圧および圧縮空気供給回数が制御されるので、圧縮空気量、圧縮空気圧および圧縮空気供給回数が適切に制御され、セラミックフィルタの目詰まりを効果的に抑制し、かつ圧縮空気供給による燃焼ガス温度の低下を抑制することができ、これによって熱回収率の低下を従来のものに比べてより抑制することができる。また、圧縮空気供給手段を効率的に運転することができるので、動力および電気使用量も低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明による高温集塵装置のダスト払い落し制御方法および制御装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には、本発明の一実施形態に係る高温集塵装置のダスト払い落し制御装置のシステム構成図が示され、図2には、本実施形態の高温集塵装置の部分断面図が示されている。
【0014】
図1に示されるように、本実施形態において、焼却炉1の燃焼ガス通路2には、セラミックフィルタを備えた高温集塵装置3が設置され、この高温集塵装置3の下流側にボイラ4が設置されている。そして、高温集塵装置3には圧縮空気供給装置(本発明の「圧縮空気供給手段」に対応)5が接続されて、必要時にその圧縮空気供給装置5から高温集塵装置3内のセラミックフィルタに逆洗空気が供給される。
【0015】
前記高温集塵装置3は、図2に示されるように(全体図を省略する。)、円筒状の胴部を有する外筒6と、この外筒6の内側で同心円状に設けられる内筒7とを有するケーシングを備え、このケーシング内に外筒6と内筒7とに囲まれる内部空間8が画成され、この内部空間8の上方に燃焼ガス(排ガス)を導入するガス導入口が設けられるとともに、内部空間8の下方にダストを溜めて排出するためのホッパが設けられて構成されている。また、内筒7の内部空間9の上方には清浄ガスを導出するガス導出口が設けられている。
【0016】
前記外筒6と内筒7との間には、複数個(図2では1個のみを図示)の筒状のセラミックフィルタ10が懸架されている。これらセラミックフィルタ10は、内筒7の中心軸線を中心として放射状に、かつ上下に多段に配されている。
【0017】
各セラミックフィルタ10は、一端部が、外筒6に穿設された貫通孔11に嵌合されて固定されるとともに、他端部が、内筒7に穿設されたガス通過口12のやや大径にされた外側端部に嵌合固定されて支持されている。なお、ガス通過口12の径はセラミックフィルタ10の内径とほぼ同径にされている。
【0018】
前記セラミックフィルタ10の一端部には逆洗空気吹込み口13が設けられ、この逆洗空気吹込み口13に、パルス管14から分岐された逆洗空気吹込み管15の先端部が挿入されている。
【0019】
こうして、セラミックフィルタ10の逆洗に際しては、パルス管14に圧縮空気が供給されることで、逆洗空気吹込み管15から逆洗空気吹込み口13を経てセラミックフィルタ10内部に圧縮空気(逆洗空気)が噴出され、セラミックフィルタ10の外表面に付着したダストの払い落しが行われる。なお、逆洗空気は、直進してガス通過口12に流れ、その際に流量が絞られて急激な圧力低下を起こさず、セラミックフィルタ10の内部で所要の圧力に保たれる。
【0020】
図1のシステム構成図に戻って、高温集塵装置3の入口側の燃焼ガス通路2には、その燃焼ガス通路2を通過する燃焼ガスの温度を検出する温度検出器(本発明の「温度検出手段」に対応)16が設置され、この温度検出器16にて検出された温度検出信号が制御装置17に送信される。制御装置17は、入力信号等に基づき所要の演算を行って指令信号を出力する演算部(本発明の「制御手段」に対応)17aと、この演算に必要なデータおよび所要のプログラム等を記憶するメモリ(本発明の「記憶手段」に対応)17bとを備えている。この制御装置17の演算部17aでは、後述する所要の演算を行い、その演算結果に基づき圧縮空気供給装置5に指令信号が送信され、この圧縮空気供給装置5が運転される。
【0021】
ところで、本発明者らの研究によれば、焼却炉出口のセラミックフィルタの目詰まりは、燃焼ガス中のダストやヒュームに含有されるNa、K、Caなどの塩化物等が融解してセラミックフィルタの細孔に侵入、固着することにより生じることがわかった。これらNa、K、Caといったアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩化物等は低融点のため、燃焼ガス温度が高いほど融解することから、セラミックフィルタの目詰まりは高温集塵装置の入口温度に依存するものと考えられる。そこで、燃焼ガス温度とダストやヒュームの融点との関係から、ダストによるセラミックフィルタ10の目詰まりを防止するためのデータ(もしくは関係式)を制御装置17のメモリ17b内に予め設定、記憶しておくことで、圧縮空気供給装置5を効果的に運転することが可能になる。
【0022】
本実施形態では、圧縮空気の供給制御のためのデータ(もしくは演算式)として、図3に示されるように、燃焼ガス温度(℃)に対応するセラミックフィルタ1本当たりの圧縮空気量(L/本)、圧縮空気圧(MPa)および供給回数(回/h)のデータをメモリ17bに記憶させておき、温度検出器16にて検出される燃焼ガス温度に基づき、このメモリ17bのデータを参照して演算部17aにて必要な圧縮空気量、圧縮空気圧および供給回数を演算し、圧縮空気供給装置5に指令信号を送信する。
【0023】
ここで、図3に示されるデータ(もしくは演算式)は、焼却炉1に投入されるごみ質(発熱量、水分など)等に応じて変わるため、メモリ17bにはそれらごみ質等に対応する複数のデータが記憶されている。
【0024】
本実施形態の高温集塵装置のダスト払い落し制御装置は以上のように構成されているので、筒状のセラミックフィルタ10内に供給される圧縮空気の空気量、空気圧および供給回数を適切に制御することができ、これによってセラミックフィルタ10の目詰まりを効果的に抑制するとともに、圧縮空気供給による燃焼ガス温度の低下を抑制することができる。したがって、熱回収率の低下を抑制することができるだけでなく、圧縮空気供給装置5を効率的に運転することができるので、動力および電気使用量も低減することができるという優れた効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る高温集塵装置のダスト払い落し制御装置のシステム構成図
【図2】本実施形態の高温集塵装置の部分断面図
【図3】燃焼ガス温度と圧縮空気量、圧縮空気圧および供給回数との関係を示すグラフ
【図4】従来のダスト払い落し制御装置のシステム構成図
【符号の説明】
【0026】
1 焼却炉
2 燃焼ガス通路
3 高温集塵装置
4 ボイラ
5 圧縮空気供給装置
6 外筒
7 内筒
10 セラミックフィルタ
13 逆洗空気吹込み口
14 パルス管
15 逆洗空気吹込み管
16 温度検出器
17 制御装置
17a 演算部
17b メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセラミックフィルタにより高温燃焼ガス中のダストを除去する高温集塵装置において、
前記高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度を検出し、この検出される燃焼ガス温度が予め設定される所定温度以上になったときに、前記セラミックフィルタの内部に所定量および所定圧の圧縮空気を吹き込んでセラミックフィルタの表面に付着したダストを払い落すことを特徴とする高温集塵装置のダスト払い落し制御方法。
【請求項2】
筒状のセラミックフィルタにより高温燃焼ガス中のダストを除去する高温集塵装置において、
(a)前記セラミックフィルタの内部に圧縮空気を吹き込む圧縮空気供給手段と、
(b)前記高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度を検出する温度検出手段と、
(c)前記高温集塵装置の入口における燃焼ガス温度と、前記圧縮空気供給手段より供給する圧縮空気量、圧縮空気圧および圧縮空気供給回数との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、
(d)前記温度検出手段により検出される燃焼ガス温度が予め設定される所定温度以上になったときに、その燃焼ガス温度に対応する圧縮空気量、圧縮空気圧および圧縮空気供給回数のデータを前記記憶手段より読み出して指令値を演算し、この指令値に基づいて前記圧縮空気供給手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする高温集塵装置のダスト払い落し制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−56354(P2009−56354A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223944(P2007−223944)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】