説明

高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法

【課題】保持金物と羽口フレームの間に隙間ができてもガスシール性を維持することが可能な高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法を提供する。
【解決手段】保持金物4と羽口フレーム3との接合部まで注入穴8を外部から連通し、その注入穴8から充填後硬化する充填硬化剤を保持金物4と羽口フレーム3との接合部に注入する。その際、例えば保持金物4と羽口フレーム3との接合部の周方向全周にわたって形成され且つ注入穴8に連通する収納凹部10内にチューブ11を配設し、そのチューブ11の内部を注入穴8に連通しておけば、注入穴8から注入される充填硬化剤でチューブ11が膨張して羽口フレーム3に密着する。チューブ11に代えて、例えばバンド状のシール部材を収納凹部内に収納しておいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法に関し、特に保持金物と羽口フレームの間から高炉内のガスが漏れた場合にガスの漏れを抑制するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高炉の羽口は、高炉本体に羽口フレームをボルトで固定し、その内部に保持金物を差し込み、その保持金物の内部に送風羽口を差し込む構造となっている。保持金物の内部には冷媒通路が形成されており、通路内に冷媒を送通して冷却することから羽口冷却箱とも呼ばれる。このような羽口構造の保持金物と羽口フレームとのシール構造としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。このシール構造は、複数に分割された押さえリングのリング溝にゴムリングを装着し、押さえリングを羽口フレームにボルトで固定した際にゴムリングが保持金物と羽口フレームのメタルタッチ面、即ち接合面に圧着されるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭54−21603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、羽口フレームや保持金物は高炉の鉄皮の内側の炉内壁煉瓦を貫通しており、特に煉瓦壁の熱膨張などによって保持金物が突き上げられる。保持金物は、一般に銅製品であって強度が低く、変形しやすいのに対し、羽口フレームは、一般に鋳鋼製品であって強度が高く、変形しにくい。従って、前述のように煉瓦壁によって保持金物が突き上げられると、保持金物の変形に羽口フレームの変形が追従せず、保持金物と羽口フレームの間に隙間ができ、その隙間から炉内ガスが漏れる。例えば、保持金物と羽口フレームの接合面間にOリングなどを介装しても、Oリングの変形対応量は僅かであるから、保持金物と羽口フレームの間の隙間を埋めることは困難であり、ガスシール性を維持できない。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、保持金物と羽口フレームの間に隙間ができてもガスシール性を維持することが可能な高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造は、高炉の送風羽口を保持し且つ内部に冷媒通路を有する銅製の保持金物と、前記保持金物を保持する鋳鋼製の羽口フレームとの間のガスシール構造であって、前記保持金物と羽口フレームとの接合部まで外部から連通し且つ前記保持金物と羽口フレームとの接合部に充填後硬化する充填硬化剤を注入するための注入穴を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記保持金物と羽口フレームとの接合部の周方向全周にわたって形成され且つ前記注入穴に連通する収納凹部と、前記収納凹部内に配設され且つ前記注入穴に内部が連通し且つ前記注入穴から注入される充填硬化剤で膨張するチューブとを備えたことを特徴とするものである。
また、前記保持金物と羽口フレームとの接合部の周方向全周にわたって形成され且つ前記注入穴に連通する収納凹部と、前記収納凹部内に配設され且つ前記注入穴から注入される充填硬化剤で保持金物又は羽口フレームに密着するシール部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール方法は、前記高炉送風羽口保持金物のガスシール構造を用いた高炉送風羽口保持金物のガスシール方法であって、前記保持金物と羽口フレームとの接合部から高炉内のガスが漏れる場合に、前記注入穴から充填硬化剤を注入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
而して、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造によれば、高炉の送風羽口を保持し且つ内部に冷媒通路を有する銅製の保持金物と、保持金物を保持する鋳鋼製の羽口フレームとの間をガスシールする場合に、保持金物と羽口フレームとの接合部まで注入穴を外部から連通し、その注入穴から充填後硬化する充填硬化剤を保持金物と羽口フレームとの接合部に注入すれば、保持金物と羽口フレームとの間に隙間が生じてもガスシール性を維持することが可能となる。
【0010】
また、保持金物と羽口フレームとの接合部の周方向全周にわたって形成され且つ注入穴に連通する収納凹部内にチューブを配設し、そのチューブの内部を注入穴に連通しておけば、注入穴から注入される充填硬化剤でチューブが膨張して保持金物又は羽口フレームに密着するので、保持金物と羽口フレームとの間に隙間が生じてもガスシール性を維持することができる。
【0011】
また、保持金物と羽口フレームとの接合部の周方向全周にわたって形成され且つ注入穴に連通する収納凹部内にシール部材を配設しておけば、注入穴から注入される充填硬化剤でシール部材が保持金物又は羽口フレームに密着するので、保持金物と羽口フレームとの間に隙間が生じてもガスシール性を維持することができる。
また、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール方法によれば、保持金物と羽口フレームとの接合部から高炉内のガスが漏れる場合に、注入穴から充填硬化剤を注入すれば、充填硬化剤自体が保持金物と羽口フレームとの接合部に密着したり、チューブやシール部材が保持金物又は羽口フレームに密着したりしてガスシール性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】高炉の羽口の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法の第1実施形態を示す保持金物と羽口フレームの接合部の詳細縦断面図である。
【図3】本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法の第2実施形態を示す保持金物と羽口フレームの接合部の詳細縦断面図である。
【図4】本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法の第3実施形態を示す保持金物と羽口フレームの接合部の詳細縦断面図である。
【図5】従来の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造の一例を示す保持金物と羽口フレームの接合部の詳細縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、高炉の羽口の概略構成を示す縦断面図である。高炉の外周を覆う鉄皮1の内側には耐火物である炉内壁煉瓦2が積層され、鉄皮1及び炉内壁煉瓦2を貫通して羽口が形成されている。羽口の外側に相当する鉄皮1には羽口フレーム3がボルトなどによって固定されている。羽口フレーム3は、一般に鋳鋼製品である。羽口フレーム3の内側には保持金物4が取付けられる。保持金物4は、一般に銅製品であり、周知のように内部に図示しない冷媒通路が形成され、外部から保持金物4内の冷媒通路に冷媒が供給され、羽口を冷却することから羽口冷却箱とも呼ばれる。そして、保持金物4の内側に送風羽口5が差し込まれる。
【0014】
炉内壁煉瓦2は、例えば当初は図に二点鎖線で示す位置であっても、操業と共に損耗が進行し、例えば図に実線で示す位置まで後退する。前述したように、炉内壁煉瓦2は熱膨張によって保持金物4を突き上げるが、炉内壁煉瓦2の損耗と共に突き上げ量も大きくなる。銅製品である保持金物4は、強度が低く、変形しやすい。一方、鋳鋼製品である羽口フレーム3は、強度が高く、変形しにくい。保持金物4が炉内壁煉瓦2の熱膨張によって突き上げられると、保持金物4の変形量と羽口フレーム3の変形量が異なり、両者に隙間ができて炉内のガスが漏れる。そこで、本実施形態では、保持金物4と羽口フレーム3の接合部にガスシール構造を設けている。
【0015】
図2は、保持金物4と羽口フレーム3の接合部、図1のA部の詳細図である。保持金物4と羽口フレーム3の接合部は、金属同士が面接触する、所謂メタルタッチとなっており、両者の間には2つのOリング7が介装されており、夫々、Oリング溝6内に収納されている。更に、本実施形態では、保持金物4の送風方向手前側から注入穴8が形成され、注入穴8は2つのOリング7の中間位置で羽口フレーム3との接合面、即ち保持金物4と羽口フレーム3の接合部に開口し、注入穴8の接合部と反対側の端部には閉止プラグ9が埋め込まれている。なお、閉止プラグ9に代えて、開閉バルブなどを用いることもできる。
【0016】
このガスシール構造では、前述のようにして保持金物4と羽口フレーム3の間に隙間が生じ、炉内のガスが漏れるような場合には、閉止プラグ9を注入穴8から抜き、注入穴8の閉止プラグ9を抜いた側から充填硬化剤を注入する。充填硬化剤は、充填後に硬化するものであり、例えば耐熱性樹脂などが挙げられる。本実施形態では、注入穴8は保持金物4と羽口フレーム3のメタルタッチ部分に開口しているので、例えば注入穴8に充填硬化剤を少し注入して硬化を待ち、また少し注入するといった手順を踏むことで、保持金物4と羽口フレーム3の間の隙間に充填硬化剤の層が形成され、この充填硬化剤の層が保持金物4と羽口フレーム3の両者に密着して隙間が閉塞される。これにより、保持金物4と羽口フレーム3の間に隙間ができてガスが漏れた場合でも、ガスシール性を維持することができる。
【0017】
図5は、注入穴のない従来の保持金物4と羽口フレーム3の接合部の詳細図である。この従来の保持金物4と羽口フレーム3の接合部では、両者の間にOリング7が介装されているものの、Oリング7の変形対応量は1〜2mm程度でしかないので、保持金物4と羽口フレーム3の相対変形量がそれより大きければ、保持金物4と羽口フレーム3の間の隙間は閉塞されず、炉内のガスは漏れたままとなる。これを修理するためには、高炉の操業を停止する、所謂休風する必要があった。
【0018】
このように本実施形態の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法では、高炉の送風羽口5を保持し且つ内部に冷媒通路を有する銅製の保持金物4と、保持金物4を保持する鋳鋼製の羽口フレーム3との間をガスシールする場合に、保持金物4と羽口フレーム3との接合部まで注入穴8を外部から連通し、その注入穴8から充填後硬化する充填硬化剤を保持金物4と羽口フレーム3との接合部に注入すれば、保持金物4と羽口フレーム3との間に隙間が生じてもガスシール性を維持することが可能となる。
【0019】
図3は、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法の第2実施形態を示す保持金物4と羽口フレーム3の接合部、即ち図1のA部詳細図である。この実施形態のガスシール構造は前記第1実施形態の図2のガスシール構造に類似しており、同等の構成も多い。そこで、同等の構成部材には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、図3aは、注入穴8から充填硬化剤を注入する以前の状態を、図3bは、注入穴8から充填硬化剤を注入した以後の状態を示している。
【0020】
本実施形態では、注入穴8が形成されている保持金物4の羽口フレーム3との接合面に、羽口の周方向全周にわたる収納凹部10を形成し、この収納凹部10内に一連のチューブ11を配設している。チューブ11は内部が注入穴8に連通しており、注入穴8から充填硬化剤等の流体が注入されると膨張する。このガスシール構造は、保持金物4と羽口フレーム3の間に隙間がないときには図3aに示すように注入穴8の外部開口側に閉止プラグ9を埋め込んでおき、保持金物4と羽口フレーム3の間に隙間が生じたら閉止プラグ9を抜き、注入穴8の閉止プラグ9を抜いた側から充填硬化剤等の流体を注入する。注入された充填硬化剤等はチューブ11内に充填され、チューブ11が膨張して、この場合は羽口フレーム3に密着し、保持金物4と羽口フレーム3の間の隙間が閉塞される。隙間が閉塞された後も、充填硬化剤が硬化し終わるまで注入穴8には閉止プラグ9を埋め込んでおくとよい。
【0021】
このように本実施形態の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法では、保持金物4と羽口フレーム3との接合部の周方向全周にわたって形成され且つ注入穴8に連通する収納凹部10内にチューブ11を配設し、そのチューブ11の内部を注入穴8に連通しておけば、注入穴8から注入される充填硬化剤等の流体でチューブ11が膨張して羽口フレーム3に密着するので、保持金物4と羽口フレーム3との間に隙間が生じてもガスシール性を維持することができる。
【0022】
図4は、本発明の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法の第3実施形態を示す保持金物4と羽口フレーム3の接合部、即ち図1のA部詳細図である。この実施形態のガスシール構造は前記第1実施形態の図2のガスシール構造に類似しており、同等の構成も多い。そこで、同等の構成部材には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。また、図4aは、注入穴8から充填硬化剤を注入する以前の状態を、図4bは、注入穴8から充填硬化剤を注入した以後の状態を示している。
【0023】
本実施形態では、注入穴8が形成されている保持金物4の羽口フレーム3との接合面に、羽口の周方向全周にわたる収納凹部10を形成し、この収納凹部10内に一連のバンド状のシール部材12を配設している。シール部材12は収納凹部10の底部、つまり羽口の径方向内側に収納されており、注入穴8から充填硬化剤等の流体が注入されると充填硬化剤に押されて羽口の径方向外側に膨張する。このガスシール構造は、保持金物4と羽口フレーム3の間に隙間がないときには図4aに示すように注入穴8の外部開口側に閉止プラグ9を埋め込んでおき、保持金物4と羽口フレーム3の間に隙間が生じたら閉止プラグ9を抜き、注入穴8の閉止プラグ9を抜いた側から充填硬化剤を注入する。注入された充填硬化剤はシール部材12を押し開き、シール部材12が膨張して、この場合は羽口フレーム3に密着し、保持金物4と羽口フレーム3の間の隙間が閉塞される。隙間が閉塞された後も、充填硬化剤が硬化し終わるまで注入穴8には閉止プラグ9を埋め込んでおくとよい。
【0024】
このように本実施形態の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造及びガスシール方法では、保持金物4と羽口フレーム3との接合部の周方向全周にわたって形成され且つ注入穴8に連通する収納凹部10内にシール部材12を配設しておけば、注入穴8から注入される充填硬化剤等の流体でシール部材12が羽口フレーム3に密着するので、保持金物4と羽口フレーム3との間に隙間が生じてもガスシール性を維持することができる。
【0025】
なお、前記実施形態では、保持金物4側に注入穴8を形成したが、注入穴8は羽口フレーム3側に形成してもよい。この場合、例えば第2、第3実施形態でチューブ11やシール部材12が充填硬化剤で膨張して密着する対象が保持金物4側になる。
【符号の説明】
【0026】
1は鉄皮
2は炉内壁煉瓦
3は羽口フレーム
4は保持金物
5は送風羽口
6はOリング溝
7はOリング
8は注入穴
9は閉止プラグ
10は収納凹部
11はチューブ
12はシール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の送風羽口を保持し且つ内部に冷媒通路を有する銅製の保持金物と、前記保持金物を保持する鋳鋼製の羽口フレームとの間のガスシール構造であって、前記保持金物と羽口フレームとの接合部まで外部から連通し且つ前記保持金物と羽口フレームとの接合部に充填後硬化する充填硬化剤を注入するための注入穴を備えたことを特徴とする高炉送風羽口保持金物のガスシール構造。
【請求項2】
前記保持金物と羽口フレームとの接合部の周方向全周にわたって形成され且つ前記注入穴に連通する収納凹部と、前記収納凹部内に配設され且つ前記注入穴に内部が連通し且つ前記注入穴から注入される充填硬化剤で膨張するチューブとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造。
【請求項3】
前記保持金物と羽口フレームとの接合部の周方向全周にわたって形成され且つ前記注入穴に連通する収納凹部と、前記収納凹部内に配設され且つ前記注入穴から注入される充填硬化剤で保持金物又は羽口フレームに密着するシール部材とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造。
【請求項4】
前記請求項1乃至3の何れか一項に記載の高炉送風羽口保持金物のガスシール構造を用いた高炉送風羽口保持金物のガスシール方法であって、前記保持金物と羽口フレームとの接合部から高炉内のガスが漏れる場合に、前記注入穴から充填硬化剤を注入することを特徴とする高炉送風羽口保持金物のガスシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91838(P2013−91838A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236030(P2011−236030)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】