説明

高甘味度甘味料の呈味改善剤

【課題】高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を、異味・異臭を付与することなく、効果的に抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することができる呈味改善剤を提供する。
【解決手段】4,7−トリデカジエナールおよび/または2,4,7−トリデカトリエナールからなる高甘味度甘味料の呈味改善剤を、高甘味度甘味料を含有する飲食品に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高甘味度甘味料の呈味改善剤に関する。より詳細には、高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することができる、高甘味度甘味料の呈味改善剤に関し、さらに、その呈味改善剤を含有させた呈味改善剤組成物、その呈味改善剤を含有させた高甘味度甘味料を含有する飲食品、および、その呈味改善剤を、高甘味度甘味料を含有する飲食品に添加することによる高甘味度甘味料の呈味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食品に用いる甘味料として砂糖(ショ糖)、ぶどう糖、果糖などの糖類が広く利用されている。その中でも特にショ糖は極めて良質な甘味を有する他、飲食品にコク味やボディー感などを付与することができるという呈味特性を有する。さらにまた、保湿性、粘度の付与、水分活性の低減などの物性の面でも優れている。しかし、ショ糖は、古くから虫歯の原因の1つとも考えられており、また近年では過剰摂取によって生活習慣病の原因ともなり得るため、最近の健康志向や低カロリー志向から、使用が控えられる傾向がある。特に、飲料や菓子などの嗜好品においてはその傾向が強く、低カロリー化の傾向が進んでいる。
【0003】
こうした一般消費者の需要傾向に応え、ショ糖に代わる甘味料として用いられているのが、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、甘草、ネオテームなどのいわゆる「高甘味度甘味料」である。これらの高甘味度甘味料は、ショ糖と比べはるかに強い甘味を有し、微量の添加で飲食品に甘味を付与することができる「低カロリー甘味料」としての特徴を併せ持っている。
【0004】
しかしながら、高甘味度甘味料の多くは、甘味の質に厚みやこく味が不足しており、また後味に苦味やえぐ味などの嫌味が尾を引くといった、いわゆる「後引き感」を有している。このため、従来より、このような苦味、渋味またはえぐ味みといった後味の嫌味を改良する方法が求められている。
【0005】
このような高甘味度甘味料の呈味改善方法としては、さまざまなものが提案されており、例えば、ソルビトール、マルチトールやその他オリゴ糖アルコールによるアスパルテームの甘味質の改善方法(特許文献1)、高甘味度甘味料にモルトエキスを添加する高甘味度甘味料の味質の改善方法(特許文献2)、高甘味度甘味料1質量部に対し、コハク酸及び/又はその塩を0.002〜5質量部添加することを特徴とする、高甘味度甘味料の味質改善方法(特許文献3)、スピラントール又はスピラントールを含有する植物の抽出物若しくは精油からなることを特徴とする高甘味度甘味料の呈味改善剤(特許文献4)、酵母抽出物を有効成分とする甘味改善剤(特許文献5)、はちみつフレーバーまたはココナッツフレーバーを風味閾値以下添加した甘味質の改善された高甘味度甘味料(特許文献6)、スクラレオライド及び2−アセチルピロールを含む、甘味料に対する呈味改良組成物(特許文献7)、高甘味度甘味料1質量部に対して0.1質量部以上のリキュール系フレーバーを含有する高甘味度甘味料の呈味が改善された飲料(特許文献8)、高甘味度甘味料1質量部に対して0.00001〜1質量部のブランデーアブソリュートまたはワインリースオイルを含有させた、高甘味度甘味料の呈味が改善された飲料(特許文献9)、4−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)ブタ−2−エン酸などの化合物による、人工甘味料のオフノートの遮断方法(特許文献10)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のような甘味成分、特許文献2のような植物エキス、引用文献3のような酸味成分、引用文献4のような旨味成分などはそれ自体の呈味を増加させるため、これらの高甘味度甘味料が添加された飲食品本来の呈味に変化が生ずるという欠点がある。
また、特許文献4〜10で高甘味度甘味料の呈味改善剤として使用されている香料その他の化合物は効果が十分ではなく、また、飲食品本来のにおいを変えてしまう可能性がある。そこで、飲食品本来の呈味やにおいを変えることなく、高甘味度甘味料が有する特有の、後に引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することができる呈味改善剤の開発が望まれていた。
【0007】
一方、2,4,7−トリデカトリエナールは、調理したチキンのフレーバーから見いだされ(非特許文献1)、また、アラキドン酸の熱分解物(非特許文献2)やリン脂質の熱分解物(非特許文献3)などから見出される天然にも存在する、香気を有する揮発性化合物である。香料用途としては、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献11)、4−シスデセナールと2,4,7−トリデカトリエナールを併用することによる、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献12)、魚節香味改善剤としての香料用途(特許文献13)などが提案されている。
【0008】
また、4,7−トリデカジエナールは天然物からはオリビ(Ourebia ourebi)の目の上の分泌線からの外分泌物の成分としての報告があり(非特許文献4)、香料用途としては、鶏を想起させるフレーバーを付与する方法(特許文献11)、香粧品香料としての使用(特許文献14)、魚節香味改善剤としての香料用途(特許文献13)が提案されている。しかしながら、前記非特許文献1〜4および特許文献11〜14には、2,4,7−トリデカトリエナールまたは、4,7−トリデカジエナールを高甘味度甘味料または高甘味度甘味料を含有する飲食品に極微量添加することにより、高甘味度甘味料の呈味を改善できることについては記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−012263号公報
【特許文献2】特開2010−246474号公報
【特許文献3】特開2010−279350号公報
【特許文献4】特開2006−223104号公報
【特許文献5】特開2000−37170号公報
【特許文献6】特開平4−222575号公報
【特許文献7】WO2003/007734国際公開公報
【特許文献8】特開2007−82491号公報
【特許文献9】特開2006−345810号公報
【特許文献10】特表2010−522700号公報
【特許文献11】特公昭41−7822号公報
【特許文献12】特公昭54−12550号公報
【特許文献13】特許第4676572号公報
【特許文献14】特開昭61−65814号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of American Oil Chemists’Society. 51(8),356−9(1974)
【非特許文献2】Frontiers of Flavour Science,[Proceedings of the Weurman Flavour Research Symposium], 9th, Freising, Germany, June 22―25,1999(2000)
【非特許文献3】Journal of Agricultural and Food Chemistry(2004),52(3),581―586
【非特許文献4】Journal of Chemical Ecology(1995),21(8),1191−1215
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、飲食品に使用できる成分であって、飲食品に添加することによって何ら異味・異臭を生じることなく、効果的に高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することができる呈味改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意研究を行ってきた結果、高甘味度甘味料を含有する飲食品に極微量の2,4,7−トリデカトリエナールまたは4,7−トリデカジエナールを飲食品中に添加することにより、これらの飲食品に不必要な香気・香味を付与することなく、高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。かくして本発明は以下のものを提供する。
(a)
下記式(1)
【化1】

[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す]で表される不飽和アルデヒドからなる、高甘味度甘味料の呈味改善剤。
(b)式(1)の不飽和アルデヒドが4,7−トリデカジエナールである(a)に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤。
(c)式(1)の不飽和アルデヒドが2,4,7−トリデカトリエナールである(a)に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤。
(d)(a)〜(c)のいずれかに記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤を0.02ppb〜10ppm含有することを特徴とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物。
(e)(a)〜(c)のいずれかに記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤を、高甘味度甘味料を含有する飲食品に0.02ppt〜10ppb含有させることを特徴とする、高甘味度甘味料の呈味改善方法。
(f)(a)〜(c)のいずれかに記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤を0.02ppt〜10ppb含有させたことを特徴とする、高甘味度甘味料の呈味が改善された飲食品。
【0013】
本発明で使用される2,4,7−トリデカトリエナールおよび4,7−トリデカジエナールは天然物から見いだされた報告があり、また、チキン様フレーバーとしての用途、魚節香味改善剤としての用途が提案されているが、高甘味度甘味料の呈味改善作用を有することは未だ報告されたことはなく、ましてや、高甘味度甘味料を含有する飲食品に極微量添加することにより、高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善するといった内容は全く記載も示唆もされたことがない。
【0014】
本発明において、高甘味度甘味料の呈味改善とは、高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することをいう。
また、高甘味度甘味料とは、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア、甘草、羅漢果、ネオテーム、ソーマチン、マビンリン、ブラゼイン、モネリンなど、ショ糖と比べて非常に強い甘味を有し、微量の添加で飲食品に甘味を付与することができる人工または天然の甘味料を意味する。
なお、甘味は、5つの基本味(酸味、甘味、塩味、苦味、旨味)の1つであり、飲食品中に含まれる甘味物質が舌の味蕾細胞にある甘味受容体を刺激することによって感知される特有の味である。したがって、甘味を感じる場合は、あくまでも舌の味蕾細胞を介して得られる味だけが関係し、辛さや渋味、コクや香り、温度、色などさまざまな要因が影響し合って感じられる、総合的な「味覚」としての甘味とは区別される。
【0015】
本発明において、高甘味度甘味料の呈味改善の有無は、検査員(パネラー)が飲食品を摂食した際の味を実際に舌で吟味する官能試験によって評価されるほか、飲食品の呈味をデジタル化(数値化)する味覚センサー等を使用する機器分析によっても評価することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高甘味度甘味料を含有する飲食品に不必要な香気・香味を付与することなく、高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味を抑制し、キレやすっきり感を付与し、砂糖に近い自然な甘味に改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明で使用される不飽和アルデヒドの1つである2,4,7−トリデカトリエナールとしては、4種類の幾何異性体((E,Z,Z)体、(E,E,Z)体、(E,Z,E)体、(E,E,E)体)が存在するが、高甘味度甘味料の呈味改善効果の点では、前記非特許文献1〜3などにおいて天然から見いだされている(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールが特に好ましい。
【0018】
また、本発明で使用される4,7−トリデカジエナールとしては、4種類の幾何異性体((Z,Z)体、(E,Z)体、(Z,E)体、(E,E)体)が存在するが、高甘味度甘味料の呈味改善効果の点では、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールが特に好ましい。
【0019】
(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールは、公知文献記載の方法で合成することができ、例えば、2−オクチン−1−オールを出発物質としてブロム化した後、(E)−2−ペンテン−4−イン−1−オールのグリニヤール誘導体と銅触媒を用いてカップリングし、リンドラー触媒を用いて部分的に水素添加した後、二酸化マンガンにより酸化して合成することができる(J.Agric.Food Chem.2001,49,2959−2965)。2,4,7−トリデカトリエナールの他の幾何異性体については、2,4,7−トリデカトリエナールの異性体混合物を物理的性質や化学的性質の差を利用して分離したり、適宜適当な触媒を用いて異性化の処理を行うなどにより得ることができ、また、本出願人が先に出願した、特願2011−042255に記載の方法にて合成することもできる。
【0020】
また、本発明で使用される不飽和アルデヒドの1つである(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールも、公知文献による方法で合成することができ、例えば、非特許文献4に記載の以下の方法で合成することができる。一例としては、まず、2−オクチン−1−オールをリンドラー触媒により部分的に水素添加してブロム化しZ体の1−ブロモ−2−オクテンを得る。一方で、1−ブロモ−3−テトラヒドロピラニルオキシプロパンとアセチレン化ナトリウムをアンモニア存在下で反応させて5−テトラヒドロピラニルオキシプロパニル−1−ペンチンを得て、次いでグリニヤール誘導体とし、先に得られた1−ブロモ−2−オクテンと塩化銅存在下でカップリングして1−テトラヒドロピラニルオキシ−7−トリデセン−1−インとする。次いで、リンドラー触媒により部分的に水素添加した後、保護基であるテトラヒドロピラニル基を脱離し、生じた水酸基を酸化することで(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを得ることができる。4,7−トリデカジエナールの他の幾何異性体については、4,7−トリデカジエナールの異性体混合物を物理的性質や化学的性質の差を利用して分離したり、適宜適当な触媒を用いて異性化の処理を行うなどにより得ることができ、また、本出願人が先に出願した、特願2011−042255に記載の方法にて合成することもできる。
【0021】
本発明で使用される呈味改善剤の飲食品への添加量は、一般には、飲食品に含まれる上記呈味改善剤の濃度が0.02ppt〜10ppbとなる量である。より具体的には、2,4,7−トリデカトリエナールおよび4,7−トリデカジエナールの幾何異性体の種類、あるいは、飲食品の種類によっても異なるが、上記呈味改善剤が、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールであれば、高甘味度甘味料を含有する飲食品に対して、それらの合計量が、例えば0.02ppt〜10ppb、好ましくは0.1ppt〜500ppt、より好ましくは0.5ppt〜20pptの範囲内を例示することができる。
また、上記呈味改善剤が、その他の幾何異性体、すなわち(E,E,Z)−、(E,Z,E)−および(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナール、ならびに、(E,Z)−、(Z,E)−および(E,E)−4,7−トリデカジエナールであれば、高甘味度甘味料を含有する飲食品に対して、それらの合計量が、例えば0.2ppt〜10ppb、好ましくは1ppt〜1ppb、より好ましくは5ppt〜100pptの範囲内を例示することができる。
以上の配合割合により、高甘味度甘味料を含有する飲食品は、高甘味度甘味料が有する特有の、後に尾を引く苦味、渋味、えぐ味などの嫌味が抑制され、キレやすっきり感が付与され、砂糖に近い自然な甘味に改善される。
【0022】
飲食品に対するこれらの添加量が10ppbを上回る場合、飲食品にこれらのアルデヒドの香気が付与されてしまうおそれがあるため、これらの香気が不必要な飲食品の場合、添加量を10ppb未満に抑えることが好ましい。なお、これらのアルデヒドの香気が付与されても、問題のない飲食品、あるいは、これらのアルデヒドの香気が付与されることが好ましい影響を与える飲食品では、10ppbを超えて添加しても全く差し支えない。
また、飲食品に対する本発明の呈味改善剤の含有量が0.02pptを下回る場合、高甘味度甘味料の呈味改善効果が十分に発揮されないおそれがある。なお、本発明の呈味改善剤が、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールのいずれも含まない幾何異性体のみで構成される場合は、本発明の呈味改善剤の含有量が0.2pptを下回る場合、高甘味度甘味料の呈味改善効果が十分に発揮されないおそれがある。
【0023】
本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤である前記不飽和アルデヒドはそのまま飲食品に添加して使用することができるが、これらの不飽和アルデヒドは油溶性であり、そのままでは水への分散性が悪く、また、飲食品に微量添加することは計量、希釈の観点から困難であるため、これらの不飽和アルデヒドを極微量配合して高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物を得て、それを飲食品に配合する方法を採用することができる。
【0024】
このような組成物としては、本発明の不飽和アルデヒドを水混和性有機溶媒に溶解した溶液、乳化製剤、粉末製剤などを例示することができる。
本発明の不飽和アルデヒドを溶解するための水混和性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2−メチルエチルケトン、2−プロパノール、メチルエチルケトン、グリセリン、プロピレングリコールなどを例示することができる。これらのうち、飲食品への使用の観点から、エタノールまたはグリセリンが特に好ましい。
【0025】
また、乳化製剤とするためには、本発明の不飽和アルデヒドを乳化剤と共に乳化して得ることができる。本発明の不飽和アルデヒドの乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品などに用いられている各種の乳化剤、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼインなどを使用してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどを用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。これら乳化剤の使用量は厳密に制限されるものではなく、使用する乳化剤の種類などに応じて広い範囲にわたり変えることができるが、通常、本発明の不飽和アルデヒド1質量部に対し、約0.01〜約100重量部、好ましくは約0.1〜約50重量部の範囲内が適当である。また、乳化を安定させるため、かかる水溶性溶液は水の他に、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マルチトール、ショ糖、グルコース、トレハロース、糖液、還元水飴などの多価アルコール類の1種または2種以上の混合物を配合することができる。
【0026】
また、かくして得られた乳化液は、所望ならば乾燥することにより粉末製剤とすることができる。粉末化に際して、さらに必要に応じて、トレハロース、デキストリン、砂糖、乳糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴などの糖類を適宜配合することもできる。これらの使用量は粉末製剤に望まれる特性などに応じて適宜に選択することができる。
【0027】
以上の製剤中への本発明の不飽和アルデヒドの配合量は、これらの製剤が一般的に飲食品に対し0.1%程度(0.01%〜1%程度)添加されること考慮すると、製剤中におおよそ0.02ppb〜10ppm程度、具体的には、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールおよび(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールであれば、製剤中に、例えば、0.02ppb〜10ppm、好ましくは0.1ppb〜500ppb、より好ましくは0.5ppb〜20ppbの範囲内を例示することができる。また、その他の幾何異性体、すなわち(E,E,Z)−、(E,Z,E)−および(E,E,E)2,4,7−トリデカトリエナール、ならびに、(E,Z)−、(Z,E)−および(E,E)−4,7−トリデカジエナールであれば、製剤中に、例えば、0.2ppb〜10ppm、好ましくは1ppb〜1ppm、より好ましくは5ppb〜100ppbの範囲内を例示することができる。
【0028】
本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物の飲食品への添加量は、飲食品の種類によっても異なるが、高甘味度甘味料を含有する飲食品に対して0.01%〜1%程度を例示することができる。しかしながら、該組成物中の本発明の不飽和アルデヒドの配合量に応じて該組成物の添加量を調整し、飲食品中への本発明の不飽和アルデヒドが、前述の配合量となるように調整することが好ましい。
【0029】
本発明の高甘味度甘味料の呈味改善剤、または、高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物が配合される飲食品としては、特に限定はなく、例えば、果実ジュース、果粒入り果実ジュース、果実飲料、果汁飲料、果汁入り飲料、野菜ジュース、野菜入りジュース、果実野菜ミックスジュースなどの果汁または野菜汁飲料;コーラ、ジンジャーエール、サイダー等の炭酸飲料;スポーツドリンク、ニアウォーターなどの清涼飲料;コーヒー、ココア、紅茶、抹茶、緑茶、ウーロン茶等の茶系あるいは嗜好性飲料;乳飲料、乳成分入りコーヒー、カフェオレ、ミルクティー、抹茶ミルク、フルーツ乳飲料、ドリンクヨーグルト、乳酸菌飲料等の乳成分を含有する飲料などの飲料一般;ヨーグルト、ゼリー、ドリンクゼリー、プディング、ババロア、ブラマンジェ及びムース等のデザート類(おやつや食後に食される甘味が付与された食品);アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス等のアイスクリーム類(乳製品に甘味料やその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品)、シャーベット、かち割り氷等の氷菓(糖液にその他各種原料を加えて攪拌凍結させた食品)などの冷菓;ケーキ、クラッカー、ビスケットや饅頭等といった洋菓子及び和菓子を含む焼菓子や蒸菓子等の菓子類;米菓、スナック類;チューインガム、ハードキャンデー、ヌガーキャンデー、ゼリーなどの糖菓一般;果実フレーバーソースやチョコレートソースを含むソース類;バタークリーム、フラワーペーストやホイップクリーム等のクリーム類;イチゴジャムやマーマレード等のジャム;菓子パン等を含むパン;焼き肉、焼き鳥、鰻蒲焼き等に用いられるタレ、トマトケチャップ、ソース、麺つゆなどの調味料一般;蒲鉾などの練り製品、ソーセージ等の食肉加工品、レトルト食品、漬け物、佃煮、珍味、惣菜並びに冷凍食品等を含む農畜水産加工品を広く例示することができる。中でも好ましい食品としては飲料、デザート、冷菓を挙げることができる。特に好ましくは飲料である。特に、本発明の方法によれば、高甘味度甘味料を含有する飲料に対して、該高甘味度甘味料に起因して生じる苦味、渋味、えぐ味、後引き感といった後味等の嫌味を有意に抑制して、飲料の呈味を良好に改良することができる。
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない
【実施例】
【0031】
(実施例1)(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
クエン酸0.15g、クエン酸三ナトリウム0.02g、ステビア甘味料(α−グルコシルレバウディオサイドAを85%含有)0.04g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとした。これに本発明の呈味改善剤(甘味質の改善剤)として(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを下記表1に示す濃度で添加したステビア甘味料含有飲料を得た。
官能評価は、パネラー10名により行い、各飲料に付き、A:甘味が不自然で後味に嫌味を感じる(無添加と大差なし)、B:甘味がやや不自然で後味にやや嫌味を感じる(無添加と比べやや改善されている)、C:若干不自然な甘味、後味を感じる(無添加と比べかなり改善されている)、N:自然な甘味を感じ、後味が良好で、異味異臭がない(砂糖に近い甘味を感じる)、X:甘味は自然だが、アルデヒド的なキーンとするような臭気が気になる、のいずれに該当するかを選択した。なお、アルデヒド的なキーンとするような香気とは、アルデヒド類全般に共通する特有の臭気で、劣化した油脂、石鹸、金属、ドクダミなどをイメージさせるような刺激的な異臭を意味する。また、香味判定は、高甘味度甘味料の呈味改善剤の濃度間で効果の比較を行い、甘味の質が最も良好な濃度を1点選択した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示した通り、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを0.02ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は0.1ppt〜500pptであった。さらにまた、0.5ppt〜20pptの範囲内では、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0034】
(実施例2)(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示した通り、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールを0.02ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(E,Z,Z)−4,7−トリデカトリエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は0.1ppt〜500pptであった。さらにまた、0.5ppt〜20pptの範囲内では、(E,Z,Z)−2,4,7−トリデカトリエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0037】
(実施例3)(E,Z)−4,7−トリデカジエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(E,Z)−4,7−トリデカジエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
表3に示した通り、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(E,Z)−4,7−トリデカジエナールを0.2ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(E,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は1ppt〜1ppbであった。さらにまた、5ppt〜100pptの範囲内では、(E,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0040】
(実施例4)(Z,E)−4,7−トリデカジエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(Z,E)−4,7−トリデカジエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示した通り、(Z,E)−4,7−トリデカジエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(Z,E)−4,7−トリデカジエナールを0.2ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(Z,E)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(Z,E)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は1ppt〜1ppbであった。さらにまた、5ppt〜100pptの範囲内では、(Z,E)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0043】
(実施例5)(E,E)−4,7−トリデカジエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(E,E)−4,7−トリデカジエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】

【0045】
表5に示した通り、(E,E)−4,7−トリデカジエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(E,E)−4,7−トリデカジエナールを0.2ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(E,E)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(E,E)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は1ppt〜1ppbであった。さらにまた、5ppt〜100pptの範囲内では、(E,E)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0046】
(実施例6)(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(E,E,Z)−2,4,7−トリデカトリエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0047】
【表6】

【0048】
表6に示した通り、(E,E,Z)−2,4,7,−トリデカトリエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(E,E,Z)−2,4,7,−トリデカトリエナールを0.2ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(E,E,Z)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(E,E,Z)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は1ppt〜1ppbであった。さらにまた、5ppt〜100pptの範囲内では、(E,E,Z)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0049】
(実施例7)(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(E,Z,E)−2,4,7−トリデカトリエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表7に示す。
【0050】
【表7】

【0051】
表7に示した通り、(E,Z,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(E,Z,E)−2,4,7,−トリデカトリエナールを0.2ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(E,Z,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(E,Z,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は1ppt〜1ppbであった。さらにまた、5ppt〜100pptの範囲内では、(E,Z,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0052】
(実施例8)(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールによるステビア含有飲料の甘味改善
実施例1における(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを(E,E,E)−2,4,7−トリデカトリエナールに置き換える他は、実施例1と全く同様に飲料の調製、官能評価を行った。結果を表8に示す。
【0053】
【表8】

【0054】
表8に示した通り、(E,E,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール無添加のステビア含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(E,E,E)−2,4,7,−トリデカトリエナールを0.2ppt〜10ppb添加したステビア含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(E,E,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(E,E,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は1ppt〜1ppbであった。さらにまた、5ppt〜100pptの範囲内では、(E,E,E)−2,4,7,−トリデカトリエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0055】
(実施例9)(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールによるアスパルテーム含有飲料の甘味改善
クエン酸0.15g、クエン酸三ナトリウム0.02g、アスパルテーム0.025g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとした。これに本発明の呈味改善剤(甘味質の改善剤)として(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを下記表9に示す濃度で添加したアスパルテーム含有飲料を得た。
香味比較
下記表9に、パネラー10名による本発明品添加と無添加のアスパルテーム含有飲料の香味比較評価を示した。
【0056】
【表9】

【0057】
表9に示した通り、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール無添加のアスパルテーム含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを0.02ppt〜10ppb添加したアスパルテーム含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は0.1ppt〜500pptであった。さらにまた、0.5ppt〜20pptの範囲内では、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0058】
(実施例10)(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールによるスクラロース含有飲料の甘味改善
クエン酸0.15g、クエン酸三ナトリウム0.02g、スクラロース0.008g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとした。これに本発明の呈味改善剤(甘味質の改善剤)として(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを下記表10に示す濃度で添加したスクラロース含有飲料を得た。
香味比較
下記表10に、パネラー10名による本発明品添加と無添加のスクラロース含有飲料の香味比較評価を示した。
【0059】
【表10】

【0060】
表10に示した通り、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール無添加のスクラロース含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを0.02ppt〜10ppb添加したスクラロース含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は0.1ppt〜500pptであった。さらにまた、0.5ppt〜20pptの範囲内では、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。
【0061】
(実施例11)(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールによるアセスルファムK含有飲料の甘味改善
クエン酸0.15g、クエン酸三ナトリウム0.02g、アセスルファムKを0.026g、レモンフレーバー(長谷川香料社製)0.1gを混合した後、水を加えて全量を100mLとした。これに本発明の呈味改善剤(甘味質の改善剤)として(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを下記表10に示す濃度で添加したアセスルファムK含有飲料を得た。
香味比較
下記表11に、パネラー10名による本発明品添加と無添加のアセスルファムK含有飲料の香味比較評価を示した。
【0062】
【表11】

【0063】
表11に示した通り、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール無添加のアセスルファムK含有飲料は独特の不自然な甘味を有し、後味に嫌味を感じるが、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナールを0.02ppt〜10ppb添加したアセスルファムK含有飲料は、甘味質の改善効果が認められ、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気はそれほど強く感じられなかった。また、甘味質が比較的良好に改善され、かつ(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気がほとんど感じられない範囲は0.1ppt〜500pptであった。さらにまた、0.5ppt〜20pptの範囲内では、(Z,Z)−4,7−トリデカジエナール特有の臭気は全く感じられず、ほとんどのパネラーが、砂糖的な自然な甘味を感じると評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[式中、・・・・は単結合または二重結合を示し、波線はシスまたはトランス配置の立体配置を示す]で表される不飽和アルデヒドからなる、高甘味度甘味料の呈味改善剤。
【請求項2】
式(1)の不飽和アルデヒドが4,7−トリデカジエナールである請求項1に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤。
【請求項3】
式(1)の不飽和アルデヒドが2,4,7−トリデカトリエナールである請求項1に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤を0.02ppb〜10ppm含有することを特徴とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤を、高甘味度甘味料を含有する飲食品に0.02ppt〜10ppb含有させることを特徴とする、高甘味度甘味料の呈味改善方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の高甘味度甘味料の呈味改善剤を0.02ppt〜10ppb含有させたことを特徴とする、高甘味度甘味料の呈味が改善された飲食品。

【公開番号】特開2013−21927(P2013−21927A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156811(P2011−156811)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【特許番号】特許第4906147号(P4906147)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】