説明

高発光効率蛍光灯

【課題】蛍光灯内で発生した可視光を効率よく管外に導き出すことにより、蛍光灯の実効的な発光効率を向上させること。
【解決手段】既存の技術の方法では、可視光を蛍光物質を中心として、紫外線照射側と反対の側から取り出している。いわば、背面照射方式で可視光を利用している。これを逆にして、紫外線照射側から可視光を取り出すようにした。これにより、大部分の可視光は、蛍光物質を通過しないで外部に導かれ、利用光となる。又、この部分から紫外線が洩れないで、有効活用できるように対策した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光灯の実効発光効率を向上させる手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯は、低圧の水銀蒸気中で放電を起こし、その結果発生する紫外線を蛍光物質に照射し、そのとき発生する可視光を照明として用いている。図1に典型的な蛍光灯の発光部の構造を示す。
この図1において、紫外線1は管の内部で発生し、ガラス外壁4に塗布されている蛍光物質3にあたり、可視光2を発生させる。このプロセスは、紫外線による蛍光物質の励起後その蛍光物質の特性光放出であるので、発生する可視光は元の紫外線の方向と関係なく全方向に一様な確率で放射される。但し、通常は1個の紫外線フォトンから1個の可視光フォトンに変換される。同様に、元の紫外線も方向性が無く、全立体角に一様な確率で発生する。
発生した可視光の半分は外方向に向かい、蛍光物質3及びガラス外壁4を通して管外に出て、人間に利用される。また、他の半部は一旦内方向に向かい、管の中を通過して、反対側の蛍光物質及びガラス壁にぶつかる。このとき透過、反射、吸収等に複数回遭遇し、その一部が外部に出て照明光として人間に利用される。
このようなプロセスのため、せっかく発生した可視光の相当部分が、照明光として利用されないで無駄になっている。
【0003】
従来から 発光効率を向上させるためにいくつか構造的な考案がなされている。
その1つは、元の紫外線の使用効率または変換効率を上げるため、変換されないで蛍光物質を通過してきた紫外線のみを反射させる物質をガラスと蛍光物質との間に設け、紫外線の使用効率をアップさせるものである。(特許文献1)
もう1つは、発生した可視光を目的の方向に集中させるもので、可視光の反射用のミラーまたはカサのようなものを使用する方式である。(特許文献2)
【0004】
しかしながら、発生後の可視光の使用率は、以下に述べる2つの理由によって、大いに改善の余地を残している。
図1に現在市販されている典型的な蛍光管の発光部を示し、この例で説明する。
理由1:外側に向かう可視光は、蛍光物質とガラス外壁によって減衰した後に利用されている。
理由2:図1において、内側に向かった可視光は、反対側の蛍光物質とガラス外壁によって減衰した後に利用されている。
【0005】
各プロセスにおける透過率は以下のように推計される。可視光の透過率は一般透明ガラスで約90%である。又、市販の蛍光灯で、内部の気体を抜いて実測すると、蛍光物質とガラス壁を通すと45%の透過率となる。蛍光物質を薄くすると通過時の減衰は避けられるが、可視光変換効率が落ちてくるため、両者の最適バランスでその厚さが決定されており、減衰ゼロにはできない。せっかく発生した可視光が蛍光物質とガラス外壁を通過するとき減衰され、無駄になっていると推定される。
【0006】
実験的に市販蛍光管からとったガラス片を紫外線ランプで照射して比較すると、紫外線側が2倍以上明るい。(図5)
既存の技術の方法では、可視光を蛍光物質を中心として紫外線照射側と反対の側から主に取り出している。いわば、紫外線背面照射方式で可視光を利用している。
これを逆にして、紫外線照射側の可視光を取り出すようにすれば、可視光の利用効率を向上させることができる。いわば、正面から可視光を取り出すことになる。
この方式は、アパーチャ蛍光管として実用化されている。この方式は、通常の蛍光灯と異なり、入射紫外線と反対の方向の可視光を利用することから反射型と呼ばれている。しかしながら、この方式ではアパーチャ開口部に照射される紫外線が、可視光変換しないため無駄になる。又、一般的に開口部が90度以下程度に制限されるため、内部で発生した可視光が、アパーチャから出るまでにもう一回蛍光物質を通過、又は反射するための光量の無駄が発生する。このため、輝度は上がるが全光束に関しては、必ずしも改善にはならない。
本発明では、この開口部は紫外線反射且つ可視光透過のコーティングをガラス壁内部に塗布することにより、開口部をもっと広げても、紫外線を管内に閉じこめて、有効に使い切り、且つ発生した可視光を殆ど減衰させることなく、外部へ導けるようにした。
なお、紫外線を90%以上反射し、可視光に透明なコーティング材は、例えば特許文献1に記述されており、実現可能である。
図2に本考案の実施した1例を示す。
【特許文献1】USP5602444号公報
【特許文献2】特開2002−63808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
蛍光管内で発生した紫外線を紫外線反射層ですべて管内に閉じこめ、可視光発光に有効利用するとともに、発生した可視光は蛍光体層を通ることなく、外部に導き出すことにより発光効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、紫外線を蛍光物質層に照射することにより発生する可視光のうち、紫外線照射側で発生する可視光を、効率よく利用できるようにすることと、元の紫外線を無駄なく使い切ることをを、最も主要な特徴とする高発光効率蛍光灯である。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、内部で発生した紫外線を反射等の手段により、内部に閉じこめ、有効活用する、又、蛍光物質の紫外線照射側に発生した可視光即ち蛍光蛍光物質を通過しない分が、より高い透過率で外に出られるようにすることにより、実効的発光効率を向上させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
蛍光管内で発生した紫外線を紫外線反射層ですべて管内に閉じこめ、可視光発光に有効利用するとともに、発生した可視光は蛍光体層を通ることなく、外部に導き出すことにより最大の発光効率を得ることができる。
本考案の説明を蛍光管で行ったが、紫外線を発光させ、それを蛍光物質に照射して、可視光を得る一般的な照明機器に適用できる。
【実施例1】
【0011】
図2は、本発明の実施例1の断面図である。
【0012】
3は蛍光物質(薄い層状にガラス管に塗布されている)を示す。
【0013】
5は紫外線は反射するが、可視光は通過させる層である。
【0014】
6は放電領域を示す。この領域で紫外線が発生する。
【0015】
紫外線1が蛍光物質3に照射され、可視光2に変換される部分をしめす。放電用の電極等は省略してある。
【0016】
(外部で利用可能な可視光の光量計算)
市販の蛍光灯の封入ガスを抜いた状態で可視光の透過率を実測した。管内部の封入ガスを抜いた状態であるが、およその推計には十分である。
ガラス壁+蛍光体層 45%(実測)
ガラス板(窓ガラス) 90%(実測)
なお、紫外線反射率は90%以上のものが製作可能である。(特許文献1)
【0017】
従来の方法の場合の可視光利用効率は以下のようになる。
(a)全発生可視光量を、計算を簡単にするために、4Iとすると、この内2Iが下半分で発生し、これが更に内向(I)+外向(I)に分割される。
外向(I)は約45%の率で外側へ通過して、利用光となる。
内向(I)は約45%の率で上部のガラス壁+蛍光体層を通過して、利用光となる。
(b)全体での利用率は上下対称なので2倍して以下のようになる。
((I*0.45+I*0.45)*2)=1.8I
発生した可視光の半分弱が外部に出て利用されていることになる。
【0018】
本考案の実施例1で計算すれば、可視光発生部は上半分のみで、又紫外線の下へ向かった半分は一回反射(90%)して発生部に至るので、上面では内向き及び外向きにそれぞれ(I+0.9I)の可視光が発生する。
この内、内向き分は、下の窓を通過して外に出る。この場合の透過率は90%である。
又、外向き分は、蛍光物質とガラス壁を通過するので45%の透過率を持つ。
従って全体で
(I+0.9I)*0.9+(I+0.9I)*0.45
=1.71I+0.855I=2.565I
従来の計算値で割って、効率は2.565/1.8=1.425倍にアップする。
すなわち、42%程度の実効効率の改善が期待できる。
【0019】
本実施例では、紫外線入射側に発生する可視光を主に利用するため、蛍光物質の層の厚さは、従来の最適値より厚くできる。これにより変換効率や寿命を延ばすプラスの効果が期待できる。
【実施例2】
【0020】
図3の実施例2は、サイズが大きくなるが、特殊な反射ガラスを必要とせず、蛍光面を大きくできるため、蛍光物質の長寿命化が可能である。この場合、ミラー8及び紫外線カットガラス10を合わせて、紫外線反射可視光通過ガラスの役割を果たしている。
【実施例3】
【0021】
図4の実施例3では、放電領域6で発生した紫外線は、直接又は可視光を通過させる紫外線反射層5によって反射され、間接的に蛍光物質3に到達し、ここで可視光に変換される。蛍光物質で可視光に変換せずに通過してしまった紫外線は、ミラー7に反射されて、再び、蛍光物質3にはいる。又、内向きに発生した可視光は、ミラー7によって反射して、外部へ向かい、有効に利用される。ミラー7の効果で、蛍光物質層3の厚さを通常の1/2にすることができるので、発生可視光の吸収が減り、併せて光効率をアップできる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
植物栽培工場等、発光効率が、生産性に直接結びつく応用分野で威力を発揮する。又、照明電力を低減することにより、環境負荷の改善に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】典型的な蛍光灯の発光部
【図2】高発光効率蛍光灯の実施例1
【図3】高発光効率蛍光灯の実施例2
【図4】高発光効率蛍光灯の実施例3
【図5】紫外線照射による可視光の測定図
【符号の説明】
【0024】
1 紫外線
2 可視光
3 蛍光物質
4 ガラス外壁
5 紫外線反射層(可視光を通過)
6 放電領域
7 ミラー(すべての光を反射)
8 ミラー(すべての光を反射)
9 紫外線ランプ
10 紫外線カットガラス
11 市販蛍光管のガラス片
12 表面の可視光照度
13 裏面の可視光照度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を蛍光体に照射することによって発生する可視光を利用する照明機器において、紫外線照射面側に発生する可視光線の利用効率を向上させるため、紫外線を反射し且つ可視光を通過させる隔離壁または窓を設け、ここを通して外部に可視光を導くようにした照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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