説明

高硬度ダイヤモンド多結晶体

【課題】 切削バイトや、ドレッサー、ダイスなどの工具や、掘削ビットとして十分な強度、硬度、耐熱性を有する緻密で均質なダイヤモンド多結晶体を、低価格で提供することを目的とする。また、前記ダイヤモンド多結晶体を刃先に用いた切削用工具を提供することを目的とする。
【解決手段】 非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンドのみからなるダイヤモンド多結晶体であって、1次ラマンスペクトル線が、波数1332.2cm-1以上にある高硬度ダイヤモンド多結晶体とする。また、ダイヤモンド多結晶体を構成する全ダイヤモンド粒子の最大粒径が100nm以下、平均粒径が50nm以下であり、1次ラマンスペクトル線が波数1331.1cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンドに関するもので、特に、切削バイトや、ドレッサー、ダイスなどの工具や、掘削ビットなどに用いられる高硬度高強度で熱的特性に優れるダイヤモンド多結晶体及び前記ダイヤモンド多結晶体を刃先に用いた切削用工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の切削バイトや、ドレッサー、ダイスなどの工具や、掘削ビットなどに使われるダイヤモンド多結晶体には、焼結助剤あるいは結合剤としてCo、Ni、Feなどの鉄族金属や、SiCなどのセラミックスが用いられている。これらは、ダイヤモンドの粉末を焼結助剤や結合剤とともにダイヤモンドが熱力学的に安定な高圧高温条件下(通常、圧力5〜8GPa、温度1300〜2200℃)で焼結することにより得られる。前記焼結助剤あるいは結合材は、ダイヤモンド多結晶体中に少なくとも10体積%程含まれ、これがダイヤモンドの黒鉛化を促す触媒として作用するため、ダイヤモンド多結晶体の硬度や強度などの機械特性や、耐熱性に少なからず影響を及ぼす。このため、焼結助剤や結合材を含まないダイヤモンド単相の焼結体が強く望まれている。
【0003】
一方、黒鉛(グラファイト)やグラッシーカーボン、アモルファスカーボンなどの非ダイヤモンド炭素を超高圧高温下で、触媒や溶媒なしに直接的にダイヤモンドに変換させることが可能である。非ダイヤモンド相からダイヤモンド相へ直接変換すると同時に焼結させることでダイヤモンド単相の多結晶体が得られる。
たとえば、グラファイトを原料として14〜18GPa、3000K以上の超高圧高温下の直接変換によりダイヤモンド多結晶体が得られることが開示されている(非特許文献1〜3参照)。
【0004】
しかし、いずれも非ダイヤモンド炭素として、グラファイトなどの導電性物質炭素を用い、これに直接電流を流すことで加熱する直接通電加熱法を採用しているため、未変換グラファイトが残留することは避けられない。また、ダイヤモンド粒子径が不均一であるという問題、及び、部分的に焼結が不十分となりやすいという問題を有している。
このため、硬度や強度などの機械的特性が不十分で、しかも欠片状の多結晶体しか得られなかった。また、14GPa、3000Kを越える超々高圧高温条件が必要で、製造コストが極めて高く、生産性にも乏しい。このため、切削工具やビットなどに適用できず、実用化にはいたっていない。
【0005】
また、カーボンナノチューブを10GPa以上、1600℃以上に加熱して、微細なダイヤモンドを合成する方法が記載されている(特許文献1参照)。しかし、開示されている方法はカーボンナノチューブをダイアモンドアンビルで加圧し、炭酸ガスレーザーで集光加熱しているため、切削工具等に適用できるサイズの均質なダイヤモンド多結晶体の製造は不可能である。
【0006】
また、高純度グラファイトを原料として、12GPa以上、2200℃以上の超高圧高温下で間接加熱による直接変換焼結により緻密で高純度なダイヤモンド多結晶体を得る方法が開示されている(非特許文献4及び非特許文献5参照)。
しかし、グラファイトを原料として超高圧高温下での直接変換焼結により得られたダイヤモンド単相の多結晶体を用いて切削工具としての性能を評価したところ、従来の結合材を含むダイヤモンド焼結体に比べて格段に優れているが、試料によって性能が異なることが分かった。
すなわち、この方法で得られるダイヤモンドは非常に高い硬度を有する場合があるが、その再現性が十分でなく機械的特性が安定しない、また切削性能が十分でないという問題があった。
【0007】
また、ダイヤモンド結晶の1次ラマンスペクトル線は、通常1332.0cm-1に現れる(欠陥や歪みのほとんどない高品質合成ダイヤモンドの値)が、ダイヤモンドに圧縮の応力を加えると、それが高波数側にシフトすることが知られている。そのシフト量は、応力の掛け方で異なるが、1GPaあたり約2cm-1である。
【0008】
さらに、ダイヤモンド結晶の1次ラマンスペクトル線は、ダイヤモンド粒子の粒径が小さくなると、そのスペクトルは弱化、ブロード化し低波数側にシフトすることも知られている(非特許文献6及び非特許文献7参照)。たとえば、1μm程度に細かくなると、ダイヤモンド粒子の1次ラマンスペクトル線の位置が5cm-1程低波数側にシフトする。すなわち、高純度で結晶欠陥がなく粒子径が10μm以上のダイヤモンドにおける1次ラマンスペクトル線は1332cm-1に現れるが、1μm程度の細かい粒子径になるとその1次ラマンスペクトル線は、1327cm-1にシフトする。
【0009】
【特許文献1】特開2002−66302号公報
【非特許文献1】J. Chem. Phys., 38 (1963) 631-643 [F.P.Bundy]
【非特許文献2】Japan. J. Appl. Phys., 11 (1972) 578-590 [M.Wakatsuki, K.Ichinose, T.Aoki]
【非特許文献3】Nature, 259 (1976) 38 [S.Naka, K.Horii, Y.Takeda, T.Hanawa]
【非特許文献4】New Diamond and Frontier Carbon Technology, 14 (2004) 313 [T. Irifune, H. Sumiya]
【非特許文献5】SEIテクニカルレビュー 165 (2004) 68 [角谷、入舩]
【非特許文献6】J. Appl. Phys., 72 (1992) 1748 [Y. Namba, E. Heidarpour, M. Nakayama]
【非特許文献7】Appl. Phys. Lett., 62 (1993) 3114 [M. Yoshikawa, Y. Mori, M. Maegawa, G. Katagiri, H. Ishida, A. Ishitani]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、グラファイトを原料として超高圧高温下での直接変換焼結により得られたダイヤモンド単相の多結晶体について、種々検討したところ、前記ダイヤモンド多結晶体において、その粒子径が同程度のもの同士であれば、ダイヤモンド多結晶体の1次ラマンスペクトル線の位置が高波数側にシフトしたものほど、良い切削性能を示すという知見を得た。
【0011】
本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するとともに、切削バイトや、ドレッサー、ダイスなどの工具や、掘削ビットとして十分な強度、硬度、耐熱性を有する緻密で均質なダイヤモンド多結晶体を、低価格で提供することを目的とする。また、前記ダイヤモンド多結晶体を刃先に用いた切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、具体的には、以下の構成を有する。
(1)非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体であって、1次ラマンスペクトル線が波数1332.2cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体である。
(2)ダイヤモンド多結晶体は、最大粒径が100nm以下及び平均粒径が50nm以下の微粒ダイヤモンド粒子と、粒径50〜10000nm以下の板状もしくは粒状の粗粒ダイヤモンド粒子とからなる混合組織を有する前記(1)に記載の高硬度ダイヤモンド多結晶体である。
(3)粗粒ダイヤモンド粒子は、最大粒径が200nm以下であり、平均粒径が100nm以下である前記(2)に記載の高硬度ダイヤモンド多結晶体である。
(4)微粒部の存在比率が10〜95体積%である前記(2)又は(3)に記載の高硬度ダイヤモンド多結晶体である。
(5)非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体であって、ダイヤモンド多結晶体を構成する全ダイヤモンド粒子は最大粒径が100nm以下及び平均粒径が50nm以下であり、1次ラマンスペクトル線が波数1331.1cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体である。
(6)非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体であって、ダイヤモンド多結晶体を構成する全ダイヤモンド粒子は最大粒径が50nm以下及び平均粒径が20nm以下であり、1次ラマンスペクトル線が波数1330.0cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記の構成を採用することにより、従来の技術の問題点(焼結助剤が存在することによる硬度及び強度並びに耐熱性の低下、焼結の不十分さ、再現性)を解決するとともに、切削バイトや、ドレッサー、ダイスなどの工具や、掘削ビットとして十分な強度、硬度、耐熱性を有する緻密で均質なダイヤモンド多結晶体を、低価格で提供することができた。また、特定の切削性能を長期間に亘って維持できる切削工具を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<原料>
本発明のダイヤモンド多結晶体は、非ダイヤモンド型炭素物質を原料として用いる。
本発明で使用できる非ダイヤモンド型炭素物質としては、グラファイト型炭素物質でも、非グラファイト型炭素物質でも、グラファイト型炭素化合物と非グラファイト型炭素物質との原料組成物でもよい。
前記グラファイト型炭素物質としては、板状グラファイト型炭素物質、微細グラファイト型炭素物質などが挙げられる。
前記微細グラファイト型炭素物質は、板状グラファイト型炭素物質等のグラファイト型炭素物質を遊星ボールミル等で機械的に粒径50nm以下に粉砕することによって得ることができる。前記グラファイト型炭素物質を粉砕する際には、不活性ガス雰囲気中で行うことにより、最終的に得られる高硬度ダイヤモンド多結晶体中への不純物の混入を抑制することができる。
【0015】
前記板状グラファイトと非グラファイト型炭素物質とを混合して原料とする場合には、非グラファイト型炭素物質の添加量は全原料の10〜95体積%が好ましい。非グラファイト型炭素物質の添加量が10体積%より少ないと、層状もしくは粗粒ダイヤモンドが多量に生成されてしまい、これらのダイヤモンド同士が小さい接触面積で接触し、その接触界面に応力集中するため、ダイヤモンド多結晶体にワレやキレツが発生しやすくなる場合がある。また、非グラファイト型炭素物質の添加量が95体積%を超えると、層状もしくは粗粒ダイヤモンドの生成量が少ないために、層状もしくは粗粒ダイヤモンドが存在することによる塑性変形や微細クラックの進展阻止効果が十分でなく、ダイヤモンド多結晶体が脆くなる場合がある。
【0016】
前記非グラファイト型炭素物質としては、例えば、グラファイトを超微細粉砕したもの、グラッシーカーボン、アモルファスカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
前記非グラファイト型炭素物質の結晶状態としては、特に制限されず、フラーレンもしくはカーボンナノチューブ等の結晶質状炭素物質や、グラッシーカーボンもしくはアモルファスカーボン等の非晶質状炭素物質が挙げられる。
前記非グラファイト型炭素物質の形状としては、特に限定されず、カーボンナノチューブ等の筒状もしくは管状の非グラファイト型炭素物質や、フラーレン等の球状の非グラファイト型炭素物質でもよい。
【0017】
<製造方法>
本発明のダイヤモンド多結晶体は、焼結助剤や触媒の添加なしに、前記原料から直接的にダイヤモンドに変換焼結して得られる。
前記原料は、MoやTaなどの金属カプセルに充填し、超高圧高温発生装置(ダイヤモンドアンビル)を用いて、温度2000℃以上で、かつダイヤモンドが熱力学的に安定な圧力環境下で所定時間保持されることによって、ダイヤモンドに変化され、同時に焼結されて、高硬度ダイヤモンド多結晶となる。前記原料として粒径50nmの板状グラファイトを用いる場合は、完全にダイヤモンドに変換させるために、2200℃以上の高温で処理することが好ましい。
【0018】
また、アモルファスカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブの粉末や、グラファイトを遊星ボールミル等で機械的に粉砕された粒径50nm以下の微細グラファイト粉末のみを原料とする場合には、真空中で200℃以上の温度で表面の吸着水や吸着ガスを除去し、試料カプセルへの充填作業を高純度な不活性ガス中で行うことが好ましい。
前記微細グラファイト粉末のみを原料とする場合には、たとえば、圧力12GPa、1500〜2000℃で、非常に微細な粒子(粒径10nm以下)からなるダイヤモンド多結晶体が得られるが、焼結性が不十分で、この場合は1330cm-1より低波数側に1次ラマンスペクトルが現れる傾向がある。このような多結晶体は、硬度が70〜80GPaと低く、切削性能も優れない。
したがって、前記微細グラファイト粉末のみを原料とする場合には、2000℃以上の温度で焼結することが好ましい。
【0019】
前記原料をダイヤモンドに変換する過程における加熱方法としては、種々の方法を採用することができるが、ReもしくはLaCrO3の高温耐熱ヒーターを用いた間接加熱が好ましい。これは、原料への通電やレーザー照射による加熱方法では、原料を一定時間、一定温度に保つことが難しく、未変換グラファイトが残りやすく、ダイヤモンド多結晶体においても未焼結部分が生じやすいためである。
【0020】
前記原料をダイヤモンドに変換する過程におけるダイヤモンドが熱力学的に安定な圧力は、温度によって異なり、種々の条件を採用することができる。
また、前記原料をダイヤモンドに変換する過程における所定温度及び所定圧力の保持時間としては、特に限定されないが、例えば、10〜10000秒が挙げられる。
【0021】
<ダイヤモンド多結晶体>
本発明のダイヤモンド多結晶体としては、当該ダイヤモンド多結晶体の1次ラマンスペクトル線が1332.2cm-1以上の波数領域に現れるものであれば、その組成や形状等は特に制限されないが、中でも、微粒ダイヤモンド粒子と層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子との混合組成を有するダイヤモンド多結晶体、又は、微粒ダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体が、ダイヤモンド多結晶体の強度及び硬度並びに耐熱性の面で好ましい。
さらに、上述した製造方法により得られる微粒ダイヤモンド粒子によるマトリックスの中に、層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子が分散した混合組織を有するダイヤモンド多結晶体がより好ましい。前記混合組織を有するダイヤモンド多結晶体は、層状もしくは粗粒ダイヤモンドが存在することによるダイヤモンド多結晶体の塑性変形及び微細クラックの進展阻止効果により、多結晶体の硬度は120GPa以上と非常に高く、特性のバラツキも少ない。
【0022】
前記ダイヤモンド多結晶体中において、前記微粒ダイヤモンド粒子と層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子との存在比率としては、ダイヤモンド多結晶体の塑性変形及び微細クラックの進展阻止効果の向上の面で、微粒部の存在比率が10〜95体積%であることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記微粒ダイヤモンド粒子は、最大粒径が100nm以下であり、平均粒径が50nm以下であるダイヤモンド粒子を指す。
【0024】
前記層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子の大きさとしては、前記微粒ダイヤモンド粒子に比べて大きな粒径のダイヤモンド粒子を指し、その粒径として特に制限はないが、粒径が50〜10000nmの粒子が好ましい。中でも、前記層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子の最大粒径が200nm以下(すなわち粒径が50〜200nm)であることが好ましく、前記層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子の最大粒径が100nm以下(すなわち粒径が50〜100nm)であることがより好ましい。
粒径が50nmよりも小さい場合には、前記層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子がほとんど塑性変形できず、微細クラックの進展阻止効果もほとんど見込めない傾向がある。また、粒径が10000nmよりも大きい場合には、前記層状もしくは粗粒ダイヤモンド粒子同士が小さい接触面積で接触する個所が現れる場合があり、応力が集中するため、ダイヤモンド多結晶体が脆くなる傾向がある。
【0025】
本発明において、本発明者らは、1次ラマンスペクトル線が1332.2cm-1以上の高波数に現れるダイヤモンド多結晶体が、強度及び硬度並びに耐熱性に優れていることを見出した。前記1次ラマンスペクトル線としては、当該ダイヤモンド多結晶体の強度及び硬度並びに耐熱性をより向上させることができるため、1333.0cm-1以上に1次ラマンスペクトル線が現れるダイヤモンド多結晶体が好ましく、1333.2cm-1以上に1次ラマンスペクトル線が現れるダイヤモンド多結晶体がより好ましい。
また、前記ダイヤモンド多結晶体における全ダイヤモンド粒子の平均粒径が小さい場合には、焼結体の粒界面積が大きくなり、強度及び硬度が向上する。
【実施例】
【0026】
(実施例)
原料として、粒径が0.05〜10μmで純度が99.95%以上である結晶性の良いグラファイト粉末、前記グラファイト粉末を超微細粉砕した粉末、グラッシーカーボン粉末、フラーレン粉末、カーボンナノチューブ粉末を用いた。これらの混合物をMoカプセルに充填、密封し、ベルト型超高圧発生装置を用いて、種々の圧力、温度条件で30分処理した。
得られた試料の生成相をX線回折により同定し、TEM観察により構成粒子の粒径を調べた。また、得られた試料の表面を鏡面に研磨し、その研磨面での硬さをマイクロヌープ硬度計で測定した。そして、その研磨面上でのラマンスペクトル測定を行い、1次ラマンスペクトル線の位置を求めた。ラマン分光器の励起光源としては、Arイオンレーザーの発振線を用い、測定は後方散乱配置で行った。このとき、歪みや欠陥のない合成IIa型ダイヤモンド結晶を標準試料として用い、リファレンス(1次ラマンスペクトル線の位置は1330.0cm-1)とした。
実験の結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

表1において、Grはグラファイトを示し、1−3μmGrは平均粒径が1〜3μmのグラファイト粒子を示し、1次ラマンスペクトル線の単位はcm-1である。
また、表1において、最大粒径及び平均粒径は、全ダイヤモンド粒子の最大粒径及び平均粒径である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明のダイヤモンド多結晶体は、切削バイトや、ドレッサー、ダイスなどの工具や、掘削ビットなどの切削工具の材料として非常に有用である。
また、本発明の切削工具は、種々の金属の切削加工を行うための切削工具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1、実施例7、実施例9、および標準資料の各一次ラマンスペクトル線のチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体であって、1次ラマンスペクトル線が波数1332.2cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体。
【請求項2】
ダイヤモンド多結晶体は、最大粒径が100nm以下及び平均粒径が50nm以下の微粒ダイヤモンド粒子と、粒径50〜10000nm以下の板状もしくは粒状の粗粒ダイヤモンド粒子とからなる混合組織を有する請求項1に記載の高硬度ダイヤモンド多結晶体。
【請求項3】
粗粒ダイヤモンド粒子は、最大粒径が200nm以下であり、平均粒径が100nm以下である請求項2に記載の高硬度ダイヤモンド多結晶体。
【請求項4】
微粒部の存在比率が10〜95体積%である請求項2又は3に記載の高硬度ダイヤモンド多結晶体。
【請求項5】
非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体であって、ダイヤモンド多結晶体を構成する全ダイヤモンド粒子は最大粒径が100nm以下及び平均粒径が50nm以下であり、1次ラマンスペクトル線が波数1331.1cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体。
【請求項6】
非ダイヤモンド型炭素物質を原料として、超高圧高温下で焼結助剤や触媒の添加なしに直接的にダイヤモンドに変換焼結された、実質的にダイヤモンド粒子のみからなるダイヤモンド多結晶体であって、ダイヤモンド多結晶体を構成する全ダイヤモンド粒子は最大粒径が50nm以下及び平均粒径が20nm以下であり、1次ラマンスペクトル線が波数1330.0cm-1以上にあることを特徴とする高硬度ダイヤモンド多結晶体。


【図1】
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