説明

高粘度基油及び高粘度基油の製造方法

【課題】安全でゴムポリマーに対する浸透性が高い、DMSO抽出分3%未満のゴムプロセス油の製造法を提供すること、併せて、該製造工程でプロセス油として有用なエキストラクトと高粘度基油として有用なラフィネートを得て、該ラフィネートから高粘度基油を製造する方法及び該高粘度基油を提供すること。
【解決手段】プロセス油として有用なエキストラクトと高粘度基油として有用なラフィネートを溶剤精製で得る工程において、減圧蒸留を留出油の終点が常圧換算580℃以上となる条件にておこない、得られた残渣油を脱瀝油の残留炭素分が1.6%以下になる条件で脱瀝し、脱瀝油の精製を、エキストラクト収率が35〜60%になる条件で行うことにより得たラフィネートの脱鑞後に得られる40℃の動粘度400〜700mm2/s以下である高粘度基油の流動点−5℃以下、粘度指数95以上であることを特徴とする高粘度基油の製造方法、及び該高粘度基油。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴム又は合成ゴムに添加するプロセス油並びに高粘度基油及びこれらの製造方法に関し、特に、多環芳香族化合物の含有量が少ないことにより毒性及び発ガン性がなく、取り扱いが容易なゴムプロセス油及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴムプロセス油は、ゴムポリマー組織に対する浸透性を用いて、混練、押出し、成形などのゴム製造操作を容易にするために用いられる。又、ゴム製品の物理的性質を改善するためにも用いられる。このようなゴムプロセス油には、ゴムに対する好適な親和性を有することが必要である。一方、加工するゴムには天然ゴム及び合成ゴムがあり、合成ゴムには様々な種類のものがある。このようなもののうち、特に天然ゴム及びスチレン−ブタジエンゴム(SBR)が多量に用いられており、これらには芳香族炭化水素を多量に含みゴムに高い親和性を有するゴムプロセス油が一般的に用いられる。
【0003】
このようなゴムプロセス油を得るために、原油の減圧蒸留によって得られる潤滑油留分や、または減圧蒸留残油を脱瀝した後、必要に応じて脱ろう処理や水素化精製処理することによって得られる油を芳香族炭化水素に親和性を有する溶剤で油を抽出処理することによって得られる油が用いられる。この様にして得られるゴムプロセス油は、カラムクロマトグラフィによれば70〜99%の芳香族化合物を含有し、環分析(ASTM D2140)によれば%CA値は20〜50%であり、イギリス石油協会の規定による多環芳香族化合物(PCA)の含量に相当するジメチルスルホキシド(DMSO)抽出分を5〜25質量%含有する。
【0004】
しかし、近年、PCAの発ガン性が重要視され、ヨーロッパでは、3%以上のDMSO抽出分を含有する油などには有毒表示が義務づけられ、使用を規制する動きがある。従って、ゴムプロセス油のDMSO抽出分を3%未満に減量することが急務となっている。
【0005】
DMSO抽出分が3%未満のゴムプロセス油については、特表平6−505524号公報は、減圧蒸留残留分を脱瀝処理し、得られた油を脱ろう処理してDMSO抽出分を3%未満に減少させたゴムプロセス油を製造するプロセスを開示する。上述の油のDMSO抽出分はより低くなっているが、アニリン点が高い。アニリン点は芳香族炭化水素の含量の指標となり、アニリン点が高いことは芳香族炭化水素含量が低いことを意味する。しかし、油中の芳香族炭化水素含量が減少すると、油のゴムに対する親和性が減少する。故に、上記公報に開示されるものでは、ゴムプロセス油に必要な性質、つまり、ゴムポリマーに対するゴムプロセス油の浸透性が低下する。又、最終ゴム製品の物理的状態を満足なものとするのが困難になる。
【0006】
又、特表平7−501346号公報は、非発ガン性ブライトストック抽出物及び/又は脱瀝油並びにその精製プロセスを開示し、変異原性指数(MI)を1以下にするために、MIと相関のある特性を精製の指標とすることを提案している。これにおいては真空蒸留カラム中の残渣の脱瀝によって得られる油又は脱瀝油の抽出処理によって芳香族化合物が減少した油あるいはその脱ろう処理によって得られる油が使用されている。ただし、DMSO抽出分は3%以上と推定される。このような脱瀝油のMIとDMSO抽出分の関係については該特許では発表されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平6−505524号公報
【特許文献2】特表平7−501346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な従来技術の問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、安全性が高く、ゴムポリマーに対する浸透性が高い、DMSO抽出分3%未満のゴムプロセス油を製造するための新規でしかも経済性に優れたプロセスを提供することである。
併せて、前記プロセス油の製造工程でプロセス油として有用なエキストラクトと高粘度基油として有用なラフィネートを得て、後者のラフィネートから高粘度基油を製造する方法及び該高粘度基油を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の蒸留・溶剤精製条件下でDMSO抽出分が3%未満になることを見いだし、本発明に至った。
上記知見に基づく本発明は、
.プロセス油として有用なエキストラクトと高粘度基油として有用なラフィネートを溶剤精製で製造する工程において、減圧蒸留を留出油の終点が常圧換算580℃以上となる条件にておこない、得られた残渣油を脱瀝油の残留炭素分が1.6%以下になる条件で脱瀝し、脱瀝油を溶剤精製に供して、溶剤としてフルフラール、フェノール及びN−メチル−2−ピロリドンから1つあるいはそれ以上を選択し用い、エキストラクト収率が35〜60%になる条件で行うことにより得たラフィネートの脱鑞後に得られる40℃の動粘度400mm2/s以上700mm2/s以下である高粘度基油の流動点が−5℃以下、粘度指数が95以上であることを特徴とする高粘度基油の製造方法、
.減圧蒸留を留出油の終点が常圧換算580℃以上となる条件にておこない、得られた残渣油を脱瀝油の残留炭素分が1.6%以下になる条件で脱瀝し、脱瀝油を溶剤精製に供して、溶剤としてフルフラール、フェノール及びN−メチル−2−ピロリドンから1つあるいはそれ以上を選択し用い、エキストラクト収率が35〜60%になる条件で行うことにより得られたラフィネートの脱鑞後に得られる40℃の動粘度400mm2/s以上700mm2/s以下であり、流動点が−5℃以下、粘度指数が95以上である高粘度基油、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によって、安全性が高くゴムポリマーに対する浸透性が高いプロセス油と、高粘度基油とを同時にしかも経済的に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。プロセス油は、一般に、原油から得られる潤滑油留分を原料として調製することができる。潤滑油留分は、原油を常圧蒸留した後の残留油を減圧蒸留した留分として、あるいは、原油を減圧蒸留した残留油を脱瀝した脱瀝油として得ることができる。潤滑油留分から各構成成分を分離する方法として溶剤抽出があり、油の溶剤抽出において、芳香族炭化水素化合物に選択的親和性を有する溶剤を用いれば、芳香族炭化水素を潤滑油留分から分離することができる。しかし、芳香族炭化水素化合物に選択的親和性を有する溶剤は、多環芳香族化合物(PCA)に対する親和性がより高いので、一般的な抽出操作によって芳香族炭化水素化合物を抽出すると、多量のPCAが含まれることになる。この抽出油からPCAを除去することができれば、好適なプロセス油が得られるが、一般には困難で、経済的でない。本願発明者らは、PCAの量が少ない油の製造プロセスについて研究した結果、特定の減圧蒸留条件及び溶剤精製条件を組み合わせることによって効果的に製造できることを見出した。
【0012】
本発明のゴムプロセス油の製造方法は、減圧蒸留によって原油から得られる蒸留残油の脱瀝によって得られる脱瀝油留分を、芳香族炭化水素に対して親和性を有する溶剤で処理し、溶剤と抽出物(エキストラクト)とを分離回収するものである。なお、この場合の溶剤抽出の際に分離されるラフィネートについては、必要に応じて水素化処理・脱ろう処理を行い高粘度基油として利用できる。
【0013】
本発明の特定の製造方法によって得られるプロセス油は、多環芳香族化合物の含量は少なく芳香族炭化水素は豊富なゴムプロセス油として最も好適なものである。本願において用いられるDMSO抽出分は、イギリス石油協会の規定によるIP346法に従ってDMSO(ジメチルスルホキシド)により抽出される芳香族化合物の含量を言う。従来のPCAの規定には3つ以上の環を有する芳香族化合物を言うものもあるが、IP346法は油材のPCA含量の決定法として認められた一般的且つ標準的な方法である。
【0014】
本発明で得られるゴムプロセス油は、多環芳香族化合物の含量は極めて低いが、クロマトで測定される芳香族炭化水素含量は従来のゴムプロセス油とくらべてもほとんど低下していないので、SBRゴム、天然ゴムなどのゴムに対する浸透性が高くゴムの加工性が低下しない。加えて、本発明のゴムプロセス油は、多量のPCAを含んだ従来のプロセス油で処理して得られるゴム製品とほぼ同レベルの物理的特性を発揮可能なゴムを得るに十分な材料である。
【0015】
以下に、本発明の製造方法の実施形態を詳細に説明する。本発明のゴムプロセス油を生成するために、原油の常圧蒸留残渣を所定の条件の下に減圧蒸留した減圧蒸留残渣の脱瀝によって得られる脱瀝油留分を、芳香族炭化水素に対して選択的親和性を有する溶剤で処理し、ラフィネートを除去することによって、エキストラクトを溶剤との混合物の形態で得る。この溶剤を除くことによりゴムプロセス油が得られる。
【0016】
原油としては、パラフィン原油、ナフテン原油などのような種々の原油を用いることができ、あらゆる種類の原油の常圧蒸留残渣を減圧蒸留した減圧蒸留残渣の脱瀝によって得られる脱瀝油を用いることができる。
【0017】
減圧蒸留は、留出油の終点が常圧換算580℃以上となる条件あるいは残渣の初留が450℃以上となる条件にて行う。終点がこの温度より低いと、得られたエキストラクトのDMSO抽出分が高くなるため好ましくない。
【0018】
次に、減圧蒸留で得られた残渣油を脱瀝油の残留炭素分が1.6%以下になる条件で脱瀝する。残留炭素分が1.6%を超えるとエキストラクト中のPCAが増加する他、得られる高粘度基油の酸化安定性に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0019】
上記の方法で得られた脱瀝油を芳香族炭化水素に親和性を有する溶剤で抽出する溶剤精製処理を行う。芳香族炭化水素に選択的親和性を有する溶剤としては、フルフラール、フェノール及びN−メチル−2−ピロリドンから1つあるいはそれ以上を選択して用いることができる。
【0020】
この溶剤精製工程においてはエキストラクトの収率が35〜60%となる条件で行う。エキストラクト収率が35%未満となる条件では、DMSO抽出分が3%未満にならず、一方、エキストラクト収率が60%を超えると、エキストラクト中の芳香族分が減少する他、ラフィネートとして得られる高粘度基油の収率が低くなり経済性が悪くなるため好ましくない。
【0021】
エキストラクト収率を上記の範囲とするための具体的な抽出条件は、脱瀝油組成にもよるため一義的に決めることはできないが、溶剤比、圧力、温度等によって調整することが可能である。一般的には、温度60℃以上、好ましくは60〜155℃、溶剤/油比(容積比)=2/1〜7/1程度で溶剤と接触させ、ラフィネートを除去する。このラフィネートは、さらに必要に応じて水素化処理・脱ろう工程を行うことによって高粘度潤滑基油として使用することができる。
【0022】
本発明においてプロセス油として有用なエキストラクトは、100℃の動粘度50〜100mm2/s、%CA(ASTM D2140)15〜35%、DMSO抽出分(IP346)3%未満、アニリン点90℃以下、クロマトによる芳香族分60重量%〜95重量%、Mw(重量平均分子量)が650以上のものである。また変異原性指数MIが1.0未満のものである。
【0023】
100℃の動粘度が100mm2/sを超えるとプロセス油として使用する場合の作業性が低下するとともにプロセス油としてのゴムに対する粘度低下効果が十分でなくなる。一方、100℃の動粘度が50mm2/s未満では、DMSO抽出分を3%未満にすることが著しく困難になり、精製工程の経済性が悪くなるため好ましくない。
【0024】
また、%CA(ASTM D2140)が15%未満の場合、ゴムプロセス油を用いてゴムを製造することが困難になったりゴム製品の物理特性が低下する恐れがある。他方、%CA(ASTM D2140)が35%を超える場合、やはりゴム製品の物理特性が低下する恐れがあり、また、DMSO抽出分を3%未満にすることが著しく困難になり、精製工程の経済性が悪くなるため好ましくない。
【0025】
DMSO抽出分(IP346)については、既に説明したように3%以上となると発ガン性の危険があるとしてEUの規制対象になることから、3%未満になるようにする。
【0026】
アニリン点が90℃を超えると、ゴムとの相溶性が低下するため好ましくない。
【0027】
また、クロマトによる芳香族分が60%未満の場合、ゴムプロセス油を用いてゴムを製造することが困難になったりゴム製品の物理特性が低下する恐れがある。他方、クロマトによる芳香族分が95%を超える場合、やはりゴム製品の物理特性が低下する恐れがあり、また、DMSO抽出分を3%未満にすることが著しく困難になり、精製工程の経済性が悪くなるため好ましくない。
【0028】
Mw(重量平均分子量)が650未満であるとやはりDMSO抽出分を3%未満にすることが著しく困難になり、精製工程の経済性が悪くなるため好ましくない。変異原性指数MIが1.0以上と発ガン性の可能性が生じるので好ましくない。
【0029】
また、DSCで測定したガラス転移点はゴム製品への低ロス付与性能が向上することから、−70℃以上が好ましい。また、低温性能の点から−20℃以下が好ましい。
【0030】
また、溶剤精製工程によって得られるラフィネートはさらに必要に応じて水添・脱ろう工程を行うことにより、流動点−5℃以下、粘度指数95以上、動粘度(40℃)400mm2/s以上700mm2/s以下である高粘度基油を得ることができる。
【0031】
本発明の製造方法を用いた場合、1段の溶剤抽出によって得られるエキストラクトを直接製品として用いることができるので、2段溶剤抽出、または水素化処理などの2次処理を行う方法に比べて製造コストが削減される。また、非発ガン性のプロセス油と粘度指数が通常より高い高粘度基油を同時に得ることができるため、経済性にも優れている。
【実施例】
【0032】
以下、実施例・比較例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明における測定項目は、以下の方法によって定めた。
[多環芳香族化合物(PCA)濃度(DMSO抽出分)の測定]DMSO抽出分は、IP346(1992年版)試験法によって決定した。
[環分析]環分析値%CAは、ASTM D 2140−97に従って算出した。
[動粘度]JIS K2283−1993の規定に従って測定した。
[アニリン点]JIS K2256−1998の規定に従って測定した。
[Mw(重量平均分子量)]MwはMw=ΣMi2Ni/ΣMiNi(Mi:分子量、Ni:分子数)で定義され、一般的にはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)などで測定される。
【0033】
今回は以下の条件でGPCによりMw(ポリスチレン換算)を測定した。
溶剤:テトラヒドロフラン
カラム温度:50℃
流速:1.0ml/Min
カラム:Shodex GPC KF−805L
検出器:Shimadzu RID−6A
[流動点]JIS C2101−1999の規定に従って測定した。
[粘度指数]JIS K2283−1993の規定に従って算出した。
[窒素分]JIS K2609−1998の規定に従って算出した。
[硫黄分]JIS K2541−1996の規定に従って測定した。
[クロマトによる芳香族分]ASTM D2007−98の規定に従って測定した。
[変異原性指数(MI)]ASTM E1687−98の規定に従って測定した。
[ガスクロ蒸留]ASTM D2887−97aの規定に従って測定した。
[残留炭素分]JIS K2270−1998の規定に従って測定した。
(実施例1)
アラビアンライト原油を終点が(ガスクロ蒸留FBP)600℃となるように減圧蒸留して残った残渣を残留炭素分が1.3%となるように、プロパン脱瀝し(溶剤比は700%、圧力は3.3MPaG、反応塔72℃)、溶剤にフルフラールを使用して溶剤比を400%とし、エキストラクト収率42%となるように溶剤抽出を行った。ラフィネートは、さらにニッケル3重量%、モリブデン12重量%担持したアルミナ系触媒を使用して水素化精製(水素圧力:6.5MPaG、液空間速度(LHSV):2.5h-1、温度:315℃、脱硫率48%)を行い、軽質分を除去した後、溶剤脱蝋(メチルエチルケトン:トルエン=1:1、溶剤比330%、−20℃まで冷却、収率84%)を行い、動粘度(40℃)508.4mm2/s、流動点−10℃、粘度指数101の高粘度基油を得た。IP346法により測定されたエキストラクトのDMSO抽出分は2.7質量%、%CAは25.3%、動粘度(100℃)は65.26mm2/s、アニリン点は72℃、クロマトによる芳香族分は84重量%、Mwは785であった。
(比較例1)
アラビアンライト原油を終点が(ガスクロ蒸留FBP)600℃となるように減圧蒸留して残った残渣を残留炭素分が1.3%となるように、プロパン脱瀝し(溶剤比は700%、圧力は3.3MPaG、反応塔温度72℃)、溶剤にフルフラールを使用して溶剤比を350%とし、エキストラクト収率30%となるように溶剤抽出を行った。IP346法により測定されたエキストラクトのDMSO抽出分は4.0質量%、%CAは28.6%、動粘度(100℃)は80.24mm2/s、アニリン点は63℃、クロマトによる芳香族分は86重量%、Mwは730であった。
(比較例2)
アラビアンライト原油を終点が(ガスクロ蒸留FBP)600℃となるように減圧蒸留して残った残渣を残留炭素分が1.3%となるように、プロパン脱瀝し(溶剤比は700%、圧力は3.3MPaG、反応塔72℃)、溶剤にフルフラールを使用して溶剤比を280%とし、エキストラクト収率20%となるように溶剤抽出を行った。IP346法により測定されたエキストラクトのDMSO抽出分は5.3質量%、%CAは33.5%、動粘度(100℃)は110.6mm2/s、アニリン点は51℃、クロマトによる芳香族分は86重量%、Mwは645であった。
(比較例3)
アラビアンライト原油を留出点が(ガスクロ蒸留FBP)560℃となるように減圧蒸留して残った残渣を残留炭素分が1.3%となるように、プロパン脱瀝し(溶剤比は700%、圧力は3.3MPaG、反応塔72℃)、溶剤にフルフラールを使用して溶剤比を280%とし、エキストラクト収率25%となるように溶剤抽出を行った。IP346法により測定されたエキストラクトのDMSO抽出分は9.9質量%、%CAは33.6%、動粘度(100℃)は58.33mm2/s、アニリン点は55℃、クロマトによる芳香族分は86重量%、Mwは601であった。
【0034】
実施例及び比較例の溶剤精製条件、得られたエキストラクト及びラフィネートを溶剤脱蝋して得られた高粘度基油の性状を併せて表1に示す。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス油として有用なエキストラクトと高粘度基油として有用なラフィネートを溶剤精製で製造する工程において、減圧蒸留を留出油の終点が常圧換算580℃以上となる条件にておこない、得られた残渣油を脱瀝油の残留炭素分が1.6%以下になる条件で脱瀝し、脱瀝油を溶剤精製に供して、溶剤としてフルフラール、フェノール及びN−メチル−2−ピロリドンから1つあるいはそれ以上を選択し用い、エキストラクト収率が35〜60%になる条件で行うことにより得たラフィネートの脱鑞後に得られる40℃の動粘度400mm2/s以上700mm2/s以下である高粘度基油の流動点が−5℃以下、粘度指数が95以上であることを特徴とする高粘度基油の製造方法。
【請求項2】
減圧蒸留を留出油の終点が常圧換算580℃以上となる条件にておこない、得られた残渣油を脱瀝油の残留炭素分が1.6%以下になる条件で脱瀝し、脱瀝油を溶剤精製に供して、溶剤としてフルフラール、フェノール及びN−メチル−2−ピロリドンから1つあるいはそれ以上を選択し用い、エキストラクト収率が35〜60%になる条件で行うことにより得たラフィネートの脱鑞後に得られる40℃の動粘度400mm2/s以上700mm2/s以下であり、流動点が−5℃以下、粘度指数が95以上である高粘度基油。

【公開番号】特開2010−111882(P2010−111882A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27273(P2010−27273)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【分割の表示】特願2001−108354(P2001−108354)の分割
【原出願日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】