説明

高精度ドット配置のための改良型電子ビーム書き込み

【課題】磁気記憶媒体に書き込みする際に磁気記憶装置に使用される装置及び方法を提供する。
【解決手段】磁気記憶装置のための記録システムにおいて、ビームを発生するためのビームカラムと、ビームに対して磁気記憶媒体を移動するためのプラットホームと、ビームを順次に又は連続的に交番する仕方で偏向するための信号ジェネレータと、を備えた記録システム。従って、ビームは、磁気記憶媒体のある広がりにおけるドットの変位に基づいて向けられ、その広がりの上でのビームカラムの単一パス中にその広がりに複数のドットグループのドットを書き込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶媒体に書き込みする際に磁気記憶装置に使用される装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記憶媒体に磁気データを各々書き込み及び読み取りする書き込み及び読み取り要素を使用することにより磁気記憶装置を使用して磁気記憶媒体にデータが記憶される。例えば、ディスク記憶装置は、一般的に、高速回転するために装置のスピンドルモータに同軸的に取り付けられた1つ以上の磁気記録ディスクと共に機能するようにされる。ディスクが回転するときに、1つ以上のトランスジューサ、即ち読み取り及び/又は書き込みヘッドがアクチュエータ組立体によりディスクの表面を横切って移動され、ディスク上のデジタル情報を読み取ったりそこに書き込んだりする。
【0003】
絶えず増加する量のデジタル情報を記憶するための一般的な要望があるとすれば、磁気記憶装置の設計者及び製造者は、磁気記憶媒体のビット密度を高めることを試み続ける。磁気記録ディスクでは、これは、面積密度、即ちディスク上のトラックの数、及び/又は所与のトラックに沿ったビットの直線密度を高めることを意味する。新たな材料及び新たな記録方法は、面積密度を高める上で助けとなっている。例えば、コンピュータハードディスクドライブに使用するための垂直型磁気記録システムが開発された。磁束は、垂直型記録媒体の磁気記録層を垂直方向に磁化することが分かっているので、長手方向型磁気記録システムに比して、より高い面積密度を得ることができる。
【0004】
又、1つのデータビットにおける磁気粒子の数を減少すると同時に磁気粒子のサイズを減少することでも、面積密度が増加される。しかしながら、このプロセスにおいて、より小さな磁気粒子の熱的安定性を維持するには、磁気媒体の非等方性を高める必要があるので、媒体の書き込み能力が問題となる。更に、粒子のランダムな配置のために単一の記録ビットにおいて信号対雑音比を得るには、依然、多数の粒子(例えば、約40−60個の粒子)が必要とされる。このような問題に対する1つの解決策は、ビットパターン化媒体(BPM)の使用を伴う。
【0005】
BPMにおいては、多数の個別の単一ドメインの磁気アイランド(通常はビット当たり1つのアイランド)を互いに分離して所定の位置に設けるように磁気記録表面がパターン化される。各アイランド位置は、所定の位置であるので、各記録ビットは、1つのアイランドを含むだけでよく、従って、面積密度を大幅に向上させる。サーボ制御システム用の位置情報を与えるために、サーボ情報がBPMにしばしば含まれる。この目的のために、BPMへの書き込み動作中に、所与のデータアレー、例えば、データトラック上に書き込み又は記録ヘッドを正確に位置させて、そこのビットを磁化することができ、このようなビットは、しばしばドットと称される。従って、例えば、磁気記録ディスクの回転中に、書き込みプロセスを、ヘッドのそばを通り過ぎるドットと入念に同期させて、ドットへの及びドットからのデータの正確な記録及び最終的なリードバックを容易にすることができる。
【0006】
BPMが今や与える面積密度を高めるために磁気記憶装置に関して更なる努力がなされている。磁気記録の1つの問題は、ライターの寸法が収縮したときに、出力フィールドが弱く且つカーブしたものになることである。これを克服するために、広いライター及びリーダーを維持するように特殊なドット配列を設計することができる。例えば、磁気記録ディスクに、各同心的トラックを設けて、2つ以上のドットグループ(例えば、行)を保持し、広いライター及びリーダーが個々のドットを依然見分けられるようにすることができる。従って、磁気記憶装置は、BPMの周りの単一のパス中に2つ以上のドットグループを書き込み及び読み取りする書き込みヘッド及び読み取りヘッドと共に動作するよう構成されている。このようにドットグループを読み取る際には、読み取りヘッドは、対応するトラックがそのヘッドの下を移動する間に2つ以上のグループから読み取りを行うように制御される。従って、このようなグループのドットは、一般的に、ヘッドがトラック上の単一パスにおいて各ドットを読み取れるように、食い違い(ジグザグ配列、スタガー)状態にされる。
【0007】
上述した書き込みプロセスは、適切な書き込み同期を確保するため、グループ内に非常に高い精度で隣接ドットを配置することを要求する。これは、回転するe−ビームシステムでマスターパターンを生成することに関して若干課題があると分かった。従って、例えば、2行の食い違いドット配列では、e−ビーム書き込みは、典型的に、最初に第1行を書き込み、その後、第2行を書き込むことにより行われる。各行の書き込みと書き込みとの間の機械的な動き及びタイムデルタのために、隣接ドットの相対的な配置を制御することは困難である。
【0008】
図1は、上述した従来の書き込み技術を例示する。磁気記録ディスク2の一部分が示されており、ドット4の4つの部分的な行が、2つの部分的なデータトラック6及び8へと細分化されている。上述した書き込み技術を使用する際に、記録ヘッド(図示せず)が、データトラックの1つ、例えば、データトラック6の上に位置され、そしてディスク2がヘッドの下で回転されるとき、それに対応するドット4の第1行、例えば、行7aに書き込みを行う。従って、ディスク2が一般的に方向Aに回転される間に、第1行のドット4は、方向B(ドット4間の矢印の方向)に順次に書き込まれる。第1行が書き込まれるのに続いて、ディスク2が回転されるときに、このようなデータトラックの第2行、例えば、行7bが同様に書き込まれる。その後、記録ヘッドは、隣接データトラック、例えば、データトラック8の上に位置されて、このようなトラックの対応する行、9a及び9bに同様に書き込みを行うことができる。
【0009】
上述したように、データアレーの単一ドットグループに書き込みすることは、書き込みプロセスを正確に同期させるという課題を提起する。しかしながら、データアレーの2つ以上のドットグループを、記録ヘッドにより単一パスでそれらグループを後で読み取れるように書き込みするときは、更なる困難に遭遇する。例えば、2つの隣接するドット行に関して、この更なる課題は、第2に書き込まれる行を同期させて、その行の各ドットが、第1に書き込まれたドット行に対して正確に書き込まれるようにすることを伴う。第2のドット行に対するデータのこのような正確な配置は、とりわけ、ドットグループのその後のリードバックにおけるエラーを最小にする。良く知られているように、隣接行の配置精度は、一般的に、スピンドルエンコーダに対するパターンクロックの高精度位相ロックに依存する。しかしながら、以下に述べるように、この位置精度を維持することが不充分であることからエラーが発生することが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
磁気記録ディスクにデータを記録するときには、磁気記憶装置は、一般的に、正確なモータ制御を与えるためにスピンドルの底部端(ターンテーブルが装着されるスピンドルの端とは反対の端)にエンコーダが設けられる。換言すれば、エンコーダは、スピンドルの回転軸に対して実質的に偏心を生じないような位置に装着される。これは、エンコーダの信号に基づいてモータを非常に正確に制御できるようにする。しかしながら、エンコーダのこのような位置付けは、記録中にフォーマット信号発生プロセスに対してクロック、位置又は速度ソースを与えるように使用されるときに問題となる。これは、僅かではあるが機械的な振動が記録システムの回転部分中に生じるためである。特に、(ターンテーブルが配置される)スピンドルの上部、及び(エンコーダが配置される)スピンドルの底部における振動は、同期されない。データトラックに使用される距離は、非常に小さい(一般的にナノメータレンジ(範囲)である)ので、僅かな擾乱でも、例えば、対をなすドットグループ間に位相エラーの問題を引き起こすことになる。これらの形式のエラーを最小にすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、磁気記憶媒体に書き込みする際に磁気記憶装置に使用される装置及び方法に係る。幾つかの実施形態において、磁気記憶装置のための記録システムが提供され、この記録システムは、ビームを発生するためのビームカラムを備えている。このシステムは、ビームに対して磁気記憶媒体を移動するためのプラットホームを備えている。一群の実施形態において、磁気記憶媒体のある広がり(extent)の上でビームカラムの単一パス中にその広がりにおける複数のドットグループの中のドットにビームが当てられる。別の一群の実施形態では、磁気記憶媒体のある広がりにおけるドットにビームが連続的に交番する仕方で当てられる。幾つかの実施形態では、このシステムは、磁気記憶媒体のその広がりにおけるドットの変位に基づいてビームを偏向するように、ビームカラムの偏向プレートに一連の偏向信号を順次に供給するための信号ジェネレータを備えている。
【0012】
幾つかの実施形態において、磁気記憶媒体に複数のドットグループを記録するための方法が提供される。この方法は、ビームカラムからビームを発生し、そしてビームに対して磁気記憶媒体を移動し、これにより、磁気記憶媒体が移動されるときに磁気記憶媒体のある広がりに沿ってビームが当てられるようにすることを含む。この方法は、更に、磁気記憶媒体が移動されるときにその広がりにおける複数のドットグループの中のドットの変位に基づいてビームを向けるように、磁気記憶媒体のその広がりにビームが当てられるときにビームを偏向することを含む。
【0013】
これら及び種々の他の特徴及び効果は、以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ドットパターンのための従来の書き込み技術を示す磁気記憶媒体の上面図である。
【図2】本発明の幾つかの実施形態に基づく磁気記憶装置の上面図である。
【図3】本発明の幾つかの実施形態に基づく磁気記憶媒体のデータビットパターンを示す上面図である。
【図4】本発明の幾つかの実施形態に基づくサーボ制御システムのブロック図である。
【図5】図3の磁気記憶媒体の一部分の上面図であって、本発明の幾つかの実施形態に基づき図2の磁気記憶装置の記録ヘッドに沿ったドットパターンを示す図である。
【図6】図3の磁気記憶媒体の一部分の上面図であって、本発明の幾つかの実施形態に基づき図2の磁気記憶装置の記録ヘッドでドットパターンを書き込むための技術を示す図である。
【図7】本発明の幾つかの実施形態に基づき、図2の磁気記憶装置に使用される電子ビームディスクレコーダシステムを示す側面図であって、電子ビームの要素が断面で示された図である。
【図8】本発明の幾つかの実施形態に基づき、図7の電子ビームディスクレコーダシステムにおける電子ビームカラム及びターンテーブルの制御を説明するのに有用な信号フローチャートである。
【図9】本発明の幾つかの実施形態に基づき、ターンテーブルインデックス、等に応答してトリガーされるパルス列波形を例示する信号図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、異なる図面における同様の要素が同じ番号で示された添付図面を参照して読まれたい。図示された実施形態は、特に指示のない限り、必ずしも正しいスケールで示されていない。図示されてここに説明される実施形態は、例示のためのものに過ぎず、本発明をそれに限定するものではないことを理解されたい。逆に、特許請求の範囲に規定された本発明の範囲内に含まれる代替物、変更及び等効物は、本発明に包含されるものとする。
【0016】
図2は、本発明の幾つかの実施形態に基づく磁気記憶装置10の上面図である。図示された実施形態において、装置10は、ユーザデータを磁気的に記憶し検索するためにホストコンピュータとインターフェイスするのに使用される形式のディスクドライブの形態をとる。ディスクドライブは、ベース12に装着される種々のコンポーネントを含む。トップカバー14(部分的な破断形態で示された)は、ベース12と協働して、ディスクドライブのためのシールされた内部環境を形成する。
【0017】
磁気記憶装置10は、データを記録するための磁気記憶媒体を含む。図2に示す実施形態では、媒体は、回転方向22にある速度で回転するためにスピンドルモータ(一般的に20で示された)に装着された複数の軸方向に整列された磁気記録ディスク16の形態をとる。ディスク16の付近に位置付けられたベアリングシャフト組立体24の周りを回転するアクチュエータ23を使用して、ディスク16のトラック(示されず)へデータを書き込み及びそこからデータを読み取る。
【0018】
アクチュエータ23は、複数の堅牢なアクチュエータアーム26を含む。このアクチュエータアーム26の遠方端には、柔軟なサスペンション組立体28が取り付けられて、トランスジューサ30(例えば、読み取り及び/又は書き込みヘッド)の対応アレーをサポートし、各ディスク表面の付近に1つのトランスジューサが配置される。各トランスジューサ30は、関連付けられたディスク16の対応表面の至近へ飛ぶように設計されたスライダー組立体(個別に示されていない)を含む。ディスクドライブ10がデアクチベートされると、トランスジューサ30は、外側ストッパー32に休止する状態となり、磁気ラッチ34がアクチュエータ23を固定する。
【0019】
アクチュエータ23を移動するためにボイスコイルモータ(VCM)36が使用され、これは、アクチュエータコイル38及び永久磁石40を含む。コイル38に電流を付与すると、ピボット組立体24の周りでのアクチュエータ23の回転が誘起される。フレックス回路組立体42は、アクチュエータ23と、ベース12の下面に装着されたディスクドライブプリント回路板組立体(PCBA)との間に電気通信経路を与える。フレックス回路組立体42は、前置増幅器/ドライバ回路44を含み、これは、データを読み取り及び書き込みするためにトランスジューサ30に電流を付与する。
【0020】
図3は、本発明のある実施形態に基づく1つの磁気記憶ディスク16を、データビットパターン50を示す拡大エリアと共に示す上面図である。この磁気記憶ディスク16は、ビットパターン化媒体(BPM)として示され、そのデータビットパターンは、食い違った(ジグザグ配列、スタガー)ビットパターンで編成された複数の別々の個々の記録ビット又はドット52を含む。このBPMは、一般的に、幾つかの実施形態によれば、垂直非等方性の磁気記録層が上に横たわる非磁性基板を含み、基板と磁気層との間には1つ以上の中間層がある。磁気層は、個別の別々のドット52を形成するようにパターン化される。
【0021】
ドット52は、ディスク16の周りに延び、複数のデータアレーへ分割される。ある実施形態では、図示されたように、データアレーは、同心的に離間されたデータトラック、例えば、データトラック54、54’及び54”の形態をとることができ、その各々は、境界破線56により、ディスクの半径に対して一般的に垂直に区分される。データアレーは、この実施形態では磁気記憶媒体における同心的データトラックを含むが、データアレーは、他のデータ記憶媒体に設けられるときには、別の構成及び幾何学形状も取り得ることが明らかであろう。図3に戻ると、この実施形態の各データアレーは、ディスクの周りに延びる複数の食い違ったドット52を含む。データアレーは、食い違った2ビット幅のドットパターンを含み、各データアレーは、少なくとも、ドット52の第1グループ58及びドット52の第2グループ59を有する。例えば、図3を参照すると、第1グループ58は、外径ドット52の行を含み、そして第2グループ59は、内径ドット52の行を含む。図3のデータアレーは、2ビット幅であるとして示されているが、幾つかの実施形態では、2ビットを越える幅でもよいことが意図される。
【0022】
図3のデータアレーは、更に、データを記録するためにトランスジューサ30によって磁化される複数の記録ビットを有する1つ以上のデータセクターへと編成される。「記録ビット」という語は、ここでは、例えば、コンピュータオペレーティングシステムから記憶装置へルーティングされるデータのようなデータ(時々、ここでは、「ユーザデータ」とも称される)をトランスジューサ、例えば、読み取り/書き込みヘッドが繰り返し記録及び/又はオーバーライトできるようなドットを表すために使用される。対照的に、位置情報は、最初は、「サーボセクター」又はサーボビットに記録されてもよいが、通常は、データが記録ビットに記録されるのと同じ仕方でサーボビットに繰り返し記録及び/又はオーバーライトされない。サーボセクターは、セクター及びトラック識別コードと、データトラックの中心上にヘッドの位置を維持するのに使用されるサーボバーストパターンとを含むことができる。
【0023】
良く知られたように、磁気記憶装置は、一般的に、データを正確且つ確実に記録し読み取るための制御システムを備えている。例えば、図2に例示された装置10のようなディスク記憶装置は、通常、関連付けられた磁気記録ディスク16の表面を横切るトランスジューサ30の移動を制御するために閉ループサーボ制御システム(見えるように示されていない)を備えている。例えば、図2及び3を参照すると、磁気記録ディスク16の1つにおける指定のデータアレー(例えば、データトラック54)へ確実にデータを書き込み且つそこからデータを読み取るために、関連付けられたトランスジューサ30は、データアレーがそのトランスジューサ30の下に移動するときに、データアレーの中心上に一般的に位置付けられる。1つのオペレーション中にトランスジューサ30を位置付けるために、サーボ制御システムは、先ず、典型的に、トランスジューサ30をその現在位置から指定のデータアレーへ移動するシークファンクションを遂行する。行先データアレーに到達すると、サーボ制御システムは、次いで、トランスジューサ30の位置を監視してデータアレーを確実にたどるように調整するトラッキングファンクションを遂行する。
【0024】
前記例で続けると、サーボ制御システムは、一般的に、トランスジューサがそれに対応するディスク16の1つ以上のサーボセクターの上を通過するときにトランスジューサの位置を指示するサーボ情報信号をトランスジューサ30から受け取る。サーボ制御システムは、次いで、サーボ情報信号を処理して、トランスジューサ30の現在位置と、必要に応じてトランスジューサ30の位置を調整するための移動とを決定する。図2に例示された装置10のようなディスク記憶装置は、一般的に、サーボ情報を記憶するために個別のディスクを専用とする専用サーボシステム、又は単一のディスク上のデータセクター間にサーボセクターが位置付けられる埋込みサーボシステムのいずれかを使用する。サーボセクターは、セクター及びアレー識別コードと、データアレーの中心上にトランスジューサの位置を維持するのに使用されるサーボバーストパターンとを含むことができる。
【0025】
図4は、本発明の幾つかの実施形態に基づくサーボ制御システム60の機能的ブロック図である。図3を参照して述べたように、システム60は、各々読み取り及び/又は書き込みヘッド61である1つ以上のトランスジューサ30のための位置制御を与えるようにディスク記憶装置10と動作することができる。サーボ制御システム60は、一般的に、本発明の幾つかの実施形態によれば、ホストシステム(例えば、パーソナルコンピュータ)からコマンド信号を、そしてサーボ位置検出器64から1つ以上の位置信号63を受け取るコントローラ62(例えば、デジタル信号プロセッサ)を備えている。位置検出器64は、幾つかの実施形態では、ヘッド61からリードバック信号65を受け取り、そこから、1つ以上の位置信号63を抽出し又は発生する。次いで、コントローラ62は、1つ以上の位置信号63及びホストシステムからのコマンド信号を処理し、そしてアクチュエータ23及びトランスジューサ30又はヘッド61を移動するための対応制御信号66をVCM36に送信する。
【0026】
図5は、本発明の幾つかの実施形態に基づく磁気記憶媒体の一部分上のユーザデータセクターにおいて1つのデータアレー付近に位置付けられた読み取り/書き込みヘッド70(例えば、図2に示す装置10の)の上面図である。この読み取り/書き込みヘッド70は、ある実施形態では、サーボ制御システムを伴わずに使用できるので(以下に述べるように)、図4の読み取り/書き込みヘッド61とは個別に言及される。磁気記憶媒体は、ある実施形態では、図3の磁気記録ディスク16であり、1つのデータアレーは、対応データトラック(例えば、データトラック54)である。このような実施形態では、ヘッド70は、ディスク16及びトラック54がヘッド70の下を移動するときに、ダウントラック方向72にデータトラック54のドット52から読み取りを行い及び/又はそこに書き込みを行う。図示されたように、ヘッド70は、この実施形態ではドット52の2個分の幅であるトラック54の幅にわたりユーザデータを読み取り及び/又は書き込むために充分な幅Wを有している。又、ヘッド70は、アクチュエータ23(図2に示す)によりディスク16の内径と外径との間でトラック交差経路74に沿ってディスク16のデータトラックにわたり移動する。ヘッド70は、トラック54へ飛んで下るときにトラック54の上に位置され、ドット52から発生する磁界を効果的に感知し、及び/又はトラック54の特定ドット52に磁界を充分に誘起する。理想的には、ヘッド68の位置は、それがヘッド54へ飛んで下るときにトラック54の中心線76の上に維持されるが、このようにする必要はない。
【0027】
上述したように、磁気記憶装置は、それらの記録ヘッドを制御して、そのヘッドを磁気記憶媒体の希望のデータアレー、例えば、磁気記録ディスクのデータトラックの上に正確に位置付けできるように構成される。種々の方法のいずれの1つを使用して、記録ヘッドの位置付けをこのように制御することもできる。1つの例示的方法は、上述したように、媒体上のサーボセクター及びサーボ制御システムを使用することを含む。更に別の方法は、記録ヘッドを希望のデータアレーの上に位置させた状態に保つことであるが、媒体上に専用サーボセクターを必ずしも必要とせずに、ヘッドをアレー上にセンタリングした状態に保つには、トランスジューサのリードバック信号の使用を伴う。このような方法は、リードバック信号がそれに対応するデータアレー上の複数のドットに依存することを伴う。前記方法又は種々の他の方法の1つを使用して、記憶媒体が回転するときに希望のデータアレーの上に存在するように記録ヘッドを効果的に位置させて、アレーからの読み取り又はアレーへの書き込みを行うことができる。
【0028】
ある磁気記憶媒体では、その上の各データアレーに、1つのグループ、例えば、記録ヘッドが書き込んだり読み取ったりできるドットの1つの行、が設けられる。しかしながら、上述したように、BPMの使用は、連続磁気媒体を使用して従来許されたものより著しく接近してドットを位置させることができる。その結果、図3を参照して例示したように、BPMは、複数のドットグループを各々有するデータアレーを含むように構成することができる。次いで、図5を参照すると、磁気記憶装置のヘッドは、記憶媒体の単一のパスにおいて複数のドットグループを読み取るように設計される。続けて図5を参照すると、このようなドットグループは、データアレーにおけるドット52の隣接行、例えば、データトラック54における行58及び59として設けることができる。ある実施形態では、各行58、59のドット52は、互いに食い違わせることができる。従って、ヘッド68がデータアレー54の上を通過するときに、一般的に、両方の行58、59をカバーし、そしてそのリードバックをそれらの間で対応的に交番させ、ドット52を読み取ることができる。
【0029】
しかしながら、BPMを使用して磁気記憶媒体の面積密度を高める能力と、それに対応して、媒体上を通過する間にBPMからより多くのデータを読み取るように磁気記憶装置を構成する機会と共に、データの配置精度が、より重要なものとなっている。良く知られたように、記録ヘッドを経てドットグループに対してデータを正確に配置できない場合には、そのようなデータのその後のリードバックがおそらく不完全なものとなり、一般的には、役に立たないものとなる。更に、データの不正確な配置は、ドットとドットとの間に交換結合を生じさせ、記録ヘッドの機能を危うくさせる。
【0030】
従って、磁気記憶装置の設計者は、配置精度と書き込み戦略とのバランスに関してジレンマに直面している。ある領域での進歩が他の領域での衰退を促進することが極めて頻繁である。例えば、ある設定時間周期にわたって書き込まれるドットの量を増加すると、そのようなドットに書き込まれるデータの配置精度にしばしば悪影響を及ぼす。従って、今日まで、磁気記憶装置は、一般的に、磁気記憶媒体上のドットにグループごとに書き込みを行うように設計されている。例えば、ドットのグループが、ドットの個別行を伴う場合には、全てのドットが媒体の単一パス中に書き込まれるのではなく、ドットの行が、行ごとに書き込まれる(図1に関して上述したように)。従って、このような従来の書き込み技術は、媒体上での記録ヘッドの複数のパスを必要とする。
【0031】
しかしながら、この書き込み技術を使用するとき、特に、後で単一パスで読み取られるドットグループを書き込むときでも、エラーが発生することが分かった。例えば、上述したように、磁気記録ディスクのデータトラックにおけるドットグループの隣接行に別々に書き込みするときには、磁気記憶装置は、ドットグループに対して位相エラーの問題に遭遇する。これらのエラーは、位置精度を維持するためにスピンドルエンコーダへのパターンクロックの正確な位相固定に依存することから起こり、リードバックエラーを招く。ここに述べるように、本発明の幾つかの実施形態は、BPM上のドットを書き込むことのできるシステム及び技術であって、書き込みプロセスがあまり悪影響を受けないようなシステム及び技術を伴う。このような書き込み技術は、更に、記録ヘッドの1つのパスで複数のドットグループを書き込むことができるので、従来技術からの著しい進歩を表す。
【0032】
図6は、磁気記憶媒体の一部分上のユーザデータセクターにおいて1つのデータアレー付近に位置された記録ヘッド80(図2に示す装置10の)の上面図で、本発明の幾つかの実施形態に基づくドットパターンのための書き込み技術を示す。図5を参照して上述したものと同様に、幾つかの実施形態において、磁気記憶媒体は、図3に示す磁気記録ディスク16であり、例示的なデータトラック54及び54’が部分的に示されている。このような実施形態では、ドット52の4つのグループが、ディスク16の2つの部分的に示されたデータトラック54及び54’に細分化される。幾つかの実施形態では、ドット52のグループは、ドット52の行であり、各データトラック54及び54’が2つ以上の行を保持する。
【0033】
図3を参照して上述したように、図6のデータトラック54、54’は、2ビット幅として示されているが、幾つかの実施形態によりアレーは2ビットより広くてもよいことが意図される。更に、上述した実施形態は、磁気記録ディスクを参照したものであったが、本発明は、これに限定されず、種々様々な媒体を使用することができる。更に、種々様々なドットグループを使用することもできる。従って、図6を参照して述べる実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎないと解釈されたい。
【0034】
図6に例示されたように、各データトラック54及び54’のドット52が、2つの行、各々、行58、59及び行58’、59’に設けられる。本発明の実施形態によれば、いずれかのトラック上に記録ヘッド80を位置させた後に、トラック上の対応ドット52に書き込みするようにヘッド80を制御することができる。しかしながら、装置10は、図1を参照して上述した書き込み技術とは逆の書き込み技術を使用する。より詳細には、2つの行58、59のドット52は、ディスク16上での記録ヘッド80の単一パス中に書き込むことができる。図示されたように、このような形態でヘッド80が書き込みできるようにするために、ある実施形態では、2つの行58、59のドット52が食い違わされる。次いで、ヘッド80がトラック54上を通過するときに、行58、59のドット52へ交互に書き込みを行うようにヘッド80を制御することができる。例えば、図示されたように、データトラック54の上に記録ヘッド80を位置させるときに、行の1つ、例えば、行58のドット52に最初に書き込むようにヘッド80を制御することができる。ディスク16が方向Cにヘッド80の下を回転するときには、ヘッド80がその逆方向Dにディスク16上を通過する。従って、ヘッド80の下を通過する次のドット52は、行59のドット52である。従って、まだデータトラック54の上に位置されている間に、ヘッド80は、行59のこのようなドット52に書き込みするように制御される。このような書き込みシーケンスは、トラック54のドット52間に示された矢印により描かれている。従って、ヘッド80は、トラック54の上を通過するときに、2つの行58、59のドット52に対するこのような交互の書き込み技術を続けるように制御される。第1のデータトラック54のドット52が書き込まれるのに続いて、記録ヘッド80を隣接データトラック54’の上に位置させ、それに対応する行58’及び59’に同様に書き込みすることができる。
【0035】
従って、データトラック54及び54’の各々に対して、上述した書き込み技術を使用して、ディスク16上での記録ヘッド80の単一パスで各ドットグループ58、59及び58’、59’に書き込みすることができる。書き込みプロセス中に、ヘッド80の書き込みオペレーションは、データトラック54及び54’のドットグループ58、59及び58’,59’のドット52間のオフセット距離に各々対応するように維持される。例えば、図6に示すように、ある実施形態では、グループのドット52間にドットオフセット距離L1及びL2が設けられる。以下に詳細に述べるように、記録ヘッド80から発生する書き込みビームの偏向を、これらのオフセット距離L1及びL2に対応するように調整することができる。その結果、この書き込み技術は、配置の不正確さを招く低周波数ノイズの影響を制限する。更に、以下に述べるように、この書き込み技術は、媒体上での単一のパスにおいて複数のドットグループへ書き込みすることができるので、従来から今日まで行われていたディスク16上での別々のパス中にドットグループが各々書き込まれたときに生じる位相エラーの形式に遭遇するおそれが遥かに少なくなる。
【0036】
ある実施形態では、図示されたように、オフセット距離L1及びL2が異なる値であり、L1は、一般的に、L2よりも長さが短い。従って、オフセット距離L1及びL2は、スキュー記録を受け容れるように指定することができ、これは、一般的に、距離L1及びL2を互いに等しくした場合とは対照的に好ましいものである。ドットグループのスキューは、一般的に、シークプロセスの開始からデータを転送できるまでの待ち時間を生み出すのに適している。例えば、図6を参照すると、データトラック54のドットグループ58及び59の各々からの単一ドット52の書き込みプロセスに続いて、グループ58及び59の次の2つのドット52に対するデータのこのシーク及びその後の転送を考慮するための時間周期が書き込みプロセスに組み込まれる。
【0037】
上述したように、磁気記憶媒体上の複数のドットグループへ書き込みするために記録ヘッド80を制御する際に、ヘッド80がそれらドットグループ上を通過するときにヘッド80の書き込みビームを連続的に偏向することができる。例えば、図6を参照すると、ヘッド80がディスク16のデータトラック54に沿って通過し、それに対応するドットグループ58及び59のいずれかのドット52の上を順次に通過するときに、ヘッド80の書き込みビームが、そのようなドット52に向けられるように適宜に偏向されて、そこに書き込まれる。記録ヘッド80は、他の形式の偏向可能な露出ビームを使用できるが、以下の例では、電子ビーム記録装置が使用される。従って、このように交互に書き込みする実施形態を具現化する例示的装置は、以下に述べるように、記録ヘッド80に使用される電子ビームカラムを備えている。
【0038】
図7は、本発明の幾つかの実施形態に基づき使用される例示的電子ビーム記録システム90である。このシステム90は、磁気記憶媒体を移動するのに使用されるプラットホーム92を備えている。幾つかの実施形態では、図示されたように、プラットホーム92はターンテーブルであり、磁気記憶媒体は、磁気記録ディスク、例えば、図2、3、5及び6に示されたディスク16である。又、システム90には、ビームカラムも含まれる。幾つかの実施形態では、図示されたように、このようなビームカラムは、電子ビームカラム94である。幾つかの実施形態では、記録システム90は、図2の装置10と共に構成され、より詳細には、電子ビームカラム94は、記録ヘッド80(図6に破線で例示的に示された)と共に適応される。電子ビームカラム94は、変調された電子ビーム96を発生する。
【0039】
ここに述べる幾つかの実施形態は、偏向プレート(以下に述べる)を使用して電子ビームカラム94のビーム96を直接偏向することを含むが、本発明は、これに限定されるものではない。むしろ、ビーム96の偏向は、この技術で知られた他の形態で偏向することもできる。更に、ビーム96の偏向は、多数の間接的な仕方でも、本発明の範囲内に依然入るようにして行うことができる。例えば、電子ビームカラム94の適切な偏向により、ビーム96を、結果的に、保証された状態で向けることができる。
【0040】
幾つかの実施形態において、図7に示すように、電子ビームカラム94は、変調ビーム96の偏向を制御するための偏向プレート98を備えている。ターンテーブル92は、カラム94によって放射されるビームのもとでその垂直軸の周りを方向Eに回転するようにディスク16を支持する。当業者であれば、一般的に、入手可能な電子ビームカラム装置の構造及び動作に精通していると仮定されるが、説明を完全なものにするため、その簡単な概要を以下に述べる。
【0041】
例えば、電子ビームカラム94は、熱電界放出(TFE)電子ソース100、及び抑制組立体102を備えている。又、カラム94は、電子抽出器104も備えている。TFEソース100、抑制組立体102及び抽出器104に適切な電圧が印加されると、これらの要素は、カラム94における更なる処理のための電子流を発生するように協働する。電子流は、第1の三素子レンズ106を通り、ブランキングプレート108を通り、そしてブランキングアパーチャー110を通る。次いで、電子流は、例えば、図7の第2の三素子レンズ112で表された1つ以上の付加的なレンズを通る。
【0042】
これらのカラム要素の形状及びそこに印加される電圧は、電子流を、特定の使用目的、例えば、ディスク16上のドット52にデータを書き込むための希望のエネルギーレベル及び希望の形状の電子ビームへと収束し整形するように働く。図7は、説明の便宜上、カラム94を通して進行するビームを直線として示している。実際のオペレーションでは、ビームは、望ましい仕方でディスク16に収束するためにカラム94の種々の要素を通過するときに収斂及び発散する。
【0043】
本発明の要旨のために、偏向プレート98に電圧を印加することでビーム位置が制御されることに注意されたい。偏向を行わないと、例えば、ビームは、114で示す垂直形態において、電子ビームカラム94からディスク表面へと進行する。プレート98に偏向電圧を印加すると、それに対応してビーム96が偏向される。電圧の極性は、偏向の方向を決定する。電圧の振幅は、ビーム96の偏向角の大きさを制御し、従って、カラム96からの所与の距離におけるビーム96の直線変位を制御する。偏向されたビーム出力が、図7の破線116で表されている。典型的に、角度、ひいては、直線変位は、プレート98にまたがって印加される電圧に比例する。DC電圧は、一定の偏向を発生し、そして可変電圧は、比例的に変化するビーム偏向角を発生する。
【0044】
従って、偏向を行うと、ビームは、116で示す角度で進行し、この角度(ひいては、ディスク16の表面上の直線オフセット)は、2つのプレート98間の電圧に応答する。ここに示すディスク処理用途では、偏向の方向がディスク16の半径に沿ったものであり、これは、ディスク21上のドットグループに関してトラック交差方向である。従って、図6に示すドットパターンを参照すると、ビームカラム94がデータトラック、例えば、トラック54の上を通過するときに、ビーム96をそれに応じて偏向して、それに対応するドットグループ、例えば、行58及び59のドット52をそれに応じて書き込むことができる。
【0045】
例えば、続けて図6及び7を参照すると、記録ヘッド80が、データトラックの1つ、例えば、トラック54の上に位置され、これにより、ビームカラム94をトラック54の上に更に位置付ける。次いで、書き込みプロセスを開始することができる。ディスクが回転するときに記録ヘッドの位置をトラックの中心線上に維持するよう確保するための技術が開発され、進歩を続けている。ある実施形態では、このような技術を書き込みプロセスと適応させることができる。
【0046】
ビームカラム94が、データトラックの1つ、例えば、トラック54の上に位置されるのに続いて、ディスク16が回転するときにカラム94がトラック54の上を通過する。例えば、データトラック54上のドットグループ(行58及び59)を参照すると、ビーム96は、一般的に、それらグループ間を通過する。このような通過中に、上述したように、ビーム96は、一連の偏向信号により偏向されて、ドット52がビームカラム94の下を通過するときに、対応する行58、59のドット52に対応的に向けられる。各特定の偏向信号は、ビーム96の偏向に対応し、書き込まれるデータアレーの特定ドット52に書き込みを行えるようにする。従って、データトラック54のドット52に書き込みする際に、一連の偏向信号の各々は、ビームカラム94に対するドット52の接近度に対応する選択極性及び選択振幅を含む。
【0047】
トラック54のドット52への書き込みに関して前記例を続けると、ある実施形態において、偏向信号の選択極性は、ドットグループ(例えば、行58及び59)の内側ドット(ID)に対して第1極性(例えば、正極性)であり、そしてドットグループの外側ドット(OD)に対して第2極性(例えば、負極性)である。例えば、図6を参照すると、トラック54のドット52への書き込みに関して、内側ドットIDは、データトラック54上でのビームカラム94の単一パス中に(図3に示す)ディスク16の空間的中心点51とビームカラム94との間に配置され、一方、外側ドットODは、データトラック54上でのビームカラム94の単一パス中にビームカラム94と(図3に示す)ディスク16の外縁53との間に配置される。更に、幾つかの実施形態では、偏向信号の選択振幅は、データトラック54上でのビームカラム94の単一パス中にビームカラム94の位置に対するドットグループ(例えば、行58及び59)のドット52の位置に基づくものとなる。
【0048】
明らかなように、このような選択極性及び選択振幅により一連の偏向信号を定義することで、ビームカラムがドットグループを横切って飛行するときに複数のドットグループに有効に書き込むよう保証されたものとしてビーム96を偏向することができる。ここに述べる実施形態は、磁気記憶媒体上での単一パス中に2つのドットグループへ書き込みすることを例示するが、本発明は、これに限定されるものではない。むしろ、ここでの教示は、このような単一パス中の所与の複数のドットグループへの書き込みに適用することができる。更に、ここに述べる実施形態は、このような書き込み技術を使用して磁気記録ディスクへ書き込むことを例示するが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、幾つかの実施形態では、この書き込み技術をいかなる磁気記憶媒体への書き込みにも適用でき、従って、記録システムを使用して、媒体のある広がりの上でのビームカラムの単一パス中に媒体のその広がりに沿って複数のドットグループへ書き込みすることができる。又、図3のディスク16に示したように、BPMのドットグループのドット52は、一般に、ディスクのトラックのその広がりに沿って交互に食い違わされるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0049】
電子ビーム記録システム90は、更に、ビーム96を変調し、ひいては、ディスク16に露出されるパターンをフォーマットするために電子ビームカラム94により使用される種々の信号を発生するフォーマット信号ジェネレータ120も備えている。このジェネレータ120は、一般的に、望ましいビームを発生するためにカラム94のコンポーネントへ印加される種々の信号を発生する1つ以上の信号ジェネレータを形成する回路を備えている。図8は、本発明の幾つかの実施形態に基づくフォーマット信号ジェネレータ120のファンクションの幾つかの態様を示す信号フローチャートである。
【0050】
図7及び8に示すように、ジェネレータ120により発生される信号の一例は、ブランキングプレート108に印加するためのフォーマット変調信号(又はビーム「フォーマット」信号)であり、これは、電子ビーム96のエネルギーレベル、ひいては、ドット52における記録パターンの露出を制御する。幾つかの実施形態では、制御器122が使用されて、プラットホーム92(例えば、この実施形態では、ターンテーブル)の速度、及びおそらく、その並進移動を制御する。フォーマット信号ジェネレータ120は、ターンテーブルの回転動作を調整するためにエンコーダ信号を制御器122に与え、そして制御器122は、ターンテーブルの位置及び/又は速度を示す1つ以上のフィードバック信号をジェネレータ120に与えることができる。例えば、制御器122は、ターンテーブル又はディスク16上のマーク又は特徴部が基準点を通過するたびにインデックス信号を発生することができる。回転出発点(例えば、12時)と基準点との間の角度は、既知の定数である。従って、インデックスを使用して、次々の回転(例えば、各々、磁気記憶媒体のデータアレー上の複数のドットグループへの書き込み動作を伴う)の出発点及び終了点を決定することができる。
【0051】
又、フォーマット信号ジェネレータ120は、偏向プレート98へ電圧も与える。幾つかの実施形態では、フォーマット信号ジェネレータ120は、ターンテーブルの回転と同期して繰り返しパルス列波形信号を発生するようにプログラムされる。図9は、以下で述べるように、本発明の幾つかの実施形態に基づき、ターンテーブルのインデックス、等に応答してトリガーされる例示的パルス列波形130の信号図である。パルス列波形のフライバックのタイミングは、ディスク16のある広がり(例えば、データトラック54)の上でのビームカラム94の単一パス中にその広がりにおける複数のドットグループ(例えば、行58及び59)へデータを書き込むためにビーム96が必要とされるときである。
【0052】
図8の信号フロー図は、インデックス信号(上述した)を与えるために、例えば、エンコーダ信号を使用しているが、このような信号は、ディスクのデータトラック上の複数のドットグループに対する書き込みプロセスのたびに一度取り出されるだけである。対照的に、従来の書き込み技術を使用してこのようなドットグループへ書き込みするときには、エンコーダ信号が複数回取り出される。上述したように、書き込まれる各ドットグループに対して、このような従来の技術は、ディスク上でのビームカラムの個別のパスを要求する。従って、個別のパスごとに、ディスクの回転を、書き込まれるドットグループと同期させるために、更なるエンコーダ信号が必要となる。不都合なことに、磁気記憶装置のディスク回転装置からの機械的な振動は、これらエンコーダ信号とエンコーダ信号との間に僅かな擾乱を生じさせることが分かった。次いで、これは、例えば、対となるドットグループ間に位相エラーの問題を招く。このような問題は、ここに述べる書き込み技術で効果的に克服される。というのは、書き込みプロセス中にこのようなエンコーダ信号が1つしか要求されず、これにより、書き込まれるドットグループとドットグループとの間に位相エラーが生じるおそれを防止するからである。更に、このような技術は、ドットグループ上での所与の1つのパスで複数のドットグループへ書き込みを行い、これにより、ディスクへデータを書き込むのに必要な時間長さを短縮する、という方法を提供する。
【0053】
前記実施形態で示されたように、一連の偏向信号(パルス列波形によって与えられる)は、ディスク16の回転と同期されねばならない。当業者であれば、この同期を達成する方法は多数あることが明らかであり、理解されよう。偏向のための傾斜信号をトリガーすることによりこのような同期を達成する幾つかの実施例は、上記で述べ且つ図9を参照して以下で更に述べるように、回転インデックス信号に応答するもの、並びにフォーマット変調信号における所定の特徴又はパルスに応答するものがある。
【0054】
上述したように、図9は、ターンテーブルインデックス、等に応答してトリガーされる例示的パルス列波形130の信号図である。図示されたように、幾つかの実施形態では、パルス列波形130は、その時間幅にわたり正極性から負極性へ交互に循環する方形波の電圧信号であるが、本発明は、これに限定されず、他の同様の波形も使用することができる。明らかなように、クロック信号と同様に、(正極性又は負極性の)波形の各外側限界132は、ビームカラム94によりドット52が書き込まれるところの時間周期を表す。例えば、図6を参照する幾つかの実施形態では、記録ヘッド80が1つのデータトラック(例えば、データトラック54)のドット52に書き込みするときに、正極性の波形130の外側限界132が行58の内側ドット(ID)への書き込みに対応し、一方、負極性の波形130の外側限界132が行59の外側ドット(OD)への書き込みに対応する。外側限界132間の時間幅134及び136は、各ドットグループにおける隣接ドット52間のオフセット距離に対応する正確な時間間隔を表す。例えば、図6を参照すると、時間幅134は、ドットオフセット距離L1に対応し、一方、時間幅136は、ドットオフセット距離L2に対応する。
【0055】
図9には更に示されていないが、(フォーマット信号ジェネレータ120からの)フォーマット変調信号は、電子ビームを変調し、ひいては、ディスク16のドットグループのドット52へのデータをフォーマットするように適用される。示されていない更に別の信号は、ターンテーブル上のディスクの回転当たり1つのパルスを与えるディスク回転インデックス信号を含む。このインデックスは、フォーマット信号ジェネレータ120により発生されてもよいし、又はディスク16及びターンテーブルが回転するときにセンサにより検出されるターンテーブル(又はディスク16)上のインデックスマーク又は他の特徴部に応答して発生されてもよい。例えば、制御器122は、センサを含み、そしてインデックス信号をフィードバックの一形式としてフォーマット信号ジェネレータ120に与える(図8に示すように)。パルス列波形は、各インデックスパルスに応答して開始し、そして次のインデックスパルスの直前に終了する(ゼロに戻る)。図示されたように、検出信号のサイクルは、ディスク及びターンテーブルの1回転に厳密に対応する。
【0056】
書き込み技術の精密な精度を更に維持するために、電子ビーム記録装置を使用することに関する実施形態がここに説明される。上述したように、磁気記憶装置の機能に(例えば、その中の磁気記憶媒体の移動に関して)僅かな擾乱があっても、データトラックに使用される距離が極めて小さい(一般的に、ナノメータのレンジである)ために、位相エラーの問題を招くことになる。従って、これに限定されないが、本発明の実施形態は、ここに述べる電子ビーム装置を使用することができる。というのは、対応する電子ビームカラムを使用するビーム配置がサブナノメータレンジであることが分っているからである。従って、このような電子ビーム装置を使用することで、記録システムは、磁気記憶装置の使用における他の原因から生じる位相エラーを更に制限することができる。
【0057】
BPMを磁気記憶媒体として使用する幾つかの実施形態がここに示された。上述したように、ドットグループのドットは、連続的磁気媒体を使用するのに比して、BPMを使用することで、より接近して設けることができる。BPMを使用し、このようなドットグループの隣接ドットをしばしば食い違わせて、BPMのデータアレーに沿ってドットの最大直線密度を与えることが説明された。従って、このような用途では、このようなグループの食い違ったドットに書き込みするためにビームを交番形態で偏向し続けることが必要である。従って、幾つかの実施形態では、磁気記憶媒体のある広がり(例えば、データトラック)上のドットへ連続的な交番形態でビームが当てられる。
【0058】
以上、本発明の実施形態が開示された。本発明は、ここに開示された幾つかの実施形態を参照して詳細に説明されたが、ここに開示された実施形態は、例示のためのものに過ぎず、これに限定されるものではない。上述した実施形態及び他の実施形態も、特許請求の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0059】
2:磁気記録ディスク
4:ドット
6、8:データトラック
7a、7b、9a、9b:行
10:本発明の実施形態による磁気記憶装置
12:ベース
14:トップカバー
16:磁気記録ディスク
20:スピンドルモータ
23:アクチュエータ
24:ベアリングシャフト組立体
26:アクチュエータアーム
30:トランスジューサ
32:外側ストッパー
34:磁気ラッチ
36:ボイスコイルモータ(VCM)
38:アクチュエータコイル
40:永久磁石
42:フレックス回路組立体
50:データビットパターン
52:ビット又はドット
54、54’、54”:データトラック
58:第1グループ
59:第2グループ
60:サーボ制御システム
61:読み取り及び/又は書き込みヘッド
62:コントローラ
63:位置信号
64:サーボ位置検出器
65:リードバック信号
66:制御信号
70:読み取り/書き込みヘッド
74:トラック交差経路
80:記録ヘッド
L1、L2:ドットオフセット距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記憶装置のための記録システムにおいて、
ビームを発生するビームカラムであって、一連の偏向信号に応答してビームの偏向を制御するための偏向プレートを含むビームカラムと、
磁気記憶媒体のある広がりの上での前記ビームカラムの単一のパス中に磁気記憶媒体の前記広がりにおける複数のドットグループにビームが当てられる間にビームに対して磁気記憶媒体を移動するためのプラットホームと、
前記ビームカラムの前記偏向プレートへ一連の偏向信号を順次に供給する信号ジェネレータであって、この信号ジェネレータからの一連の偏向信号は、前記ビームカラムの単一パス中に前記磁気記憶媒体上の前記ドットグループ間のドットの変位に基づいてビームを偏向するように選択極性及び選択振幅を各々もつ複数の信号を含むものである信号ジェネレータと、
を備えた記録システム。
【請求項2】
前記プラットホームは、ターンテーブルを含み、前記磁気記憶媒体は、前記ターンテーブルによるディスクの移動がビームに対するディスクの回転を含むような磁気記録ディスクを含み、そして前記ディスクの広がりは、同心的データトラックを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記偏向信号の前記選択極性は、前記ドットグループの内側ドットに対して第1極性を含み、そして前記ドットグループの外側ドットに対して第2極性を含み、前記内側ドットは、前記データトラック上での前記ビームカラムの単一パス中にディスクの中心と前記ビームカラムとの間に配置され、前記外側ドットは、前記データトラック上での前記ビームカラムの単一パス中に前記ビームカラムとディスクの外縁との間に配置される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記偏向信号の前記選択振幅は、データトラック上での前記ビームカラムの単一パス中に前記ビームカラムの位置に対する前記ドットグループのドットの位置に基づくものである、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記ドットグループのドットは、前記磁気記憶媒体の前記広がりに沿って互いに分離され、前記広がりに沿った前記ビームカラムの単一パス中に、ビームが所与の時間に1つのドットにしか遭遇しないようにする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ドットグループは、ドットの行を含み、それら行は、前記広がりに沿って並置形態で配置され、それらドットは、それら行の間で食い違うようにされて、1つ以上のオフセット距離で行の隣接ドットを分離し、この1つ以上のオフセット距離は、前記信号ジェネレータからの偏向信号間の1つ以上の時間間隔に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上のオフセット距離は、ナノメータ台であり、前記ビームカラムは、電子ビームより成るビームを伴う電子ビームカラムを含み、そして前記偏向信号による前記電子ビームの偏向精度は、サブナノメータレンジである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記行のドットは、互いにスキューされて、いかなる所与のドット行のいかなる所与のドットも、更に別のドット行の隣接ドットから、移動時の前記磁気記憶媒体の方向に第1距離だけオフセットされ、且つ前記所与のドットが、前記更に別のドット行又は別のドット行の更に別の隣接ドットから、移動時の前記磁気記憶媒体とは逆の方向に第2距離だけオフセットされるようにする、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1距離は、前記第2距離より短い、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
磁気記憶装置のための記録システムにおいて、
ビームを発生するビームカラムであって、一連の偏向信号に応答してビームの偏向を制御するための偏向プレートを含むビームカラムと、
磁気記憶媒体のある広がり上にあるドットにビームが連続的に交番する仕方で当てられる間にビームに対して磁気記憶媒体を移動するためのプラットホームと、
前記ビームカラムの前記偏向プレートへ一連の偏向信号を順次に供給する信号ジェネレータであって、この信号ジェネレータからの一連の偏向信号は、前記磁気記憶媒体の前記広がり上にあるドットの変位に基づきビームの偏向を連続的に交番させるように選択極性及び選択振幅を各々もつ複数の信号を含むものである信号ジェネレータと、
を備えた記録システム。
【請求項11】
前記プラットホームは、ターンテーブルを含み、前記磁気記憶媒体は、前記ターンテーブルによるディスクの移動がビームに対するディスクの回転を含むような磁気記録ディスクを含み、そして前記ディスクの広がりは、同心的データトラックを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ドットは、2つ以上のドットグループを含み、それらドットグループのドットは、前記磁気記憶媒体の前記広がりに沿って互いに食い違わされていて、ビームが前記広がりに沿って連続的に交番する仕方で当てられるときに、ビームが前記食い違わされたドットに順次に遭遇するようにした、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記ドットグループは、ドットの行を含み、それら行は、前記広がりに沿って並置形態で配置され、それらドットは、それら行の間で食い違うようにされて、1つ以上のオフセット距離で行の隣接ドットを分離し、この1つ以上のオフセット距離は、前記信号ジェネレータからの偏向信号間の1つ以上の時間間隔に対応する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つ以上のオフセット距離は、ナノメータ台であり、前記ビームカラムは、電子ビームより成るビームを伴う電子ビームカラムを含み、そして前記偏向信号による前記電子ビームの偏向精度は、サブナノメータレンジである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記行のドットは、互いにスキューされて、いかなる所与のドット行のいかなる所与のドットも、更に別のドット行の隣接ドットから、移動時の前記磁気記憶媒体の方向に第1距離だけオフセットされ、且つ前記所与のドットが、前記更に別のドット行又は別のドット行の更に別の隣接ドットから、移動時の前記磁気記憶媒体とは逆の方向に第2距離だけオフセットされるようにする、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1距離は、前記第2距離より短い、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
磁気記憶媒体上の複数のドットグループに記録を行う方法において、
ビームカラムからビームを発生するステップと、
ビームに対して磁気記憶媒体を移動し、その磁気記憶媒体が移動されるときに磁気記憶媒体の広がりに沿ってビームを当てるようにするステップと、
前記磁気記憶媒体の前記広がりにビームを当てるときにビームを偏向して、前記磁気記憶媒体が移動されるときに前記広がりに沿った複数のドットグループのドットにビームを順次に向けるようにするステップと、
を備えた方法。
【請求項18】
前記磁気記憶媒体は、磁気記録ディスクを含み、その磁気記録ディスクを移動することはディスクを回転することを含み、そしてディスクの広がりは、同心的データトラックを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ビームを偏向することで、磁気記憶装置の広がりに沿って連続的に交番する仕方でビームが当てられる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記ドットグループは、ドットの行を含み、それら行は、前記広がりに沿って並置形態で配置され、それらドットは、それら行の間で食い違うようにされて、1つ以上のオフセット距離でそれら行の隣接ドットを分離し、第1ドット行の隣接ドットは、第1オフセット距離だけ分離され、そして第2ドット行の隣接ドットは、第2オフセット距離だけ分離され、前記第1オフセット距離は、前記第2オフセット距離より短い、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−44851(P2010−44851A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187743(P2009−187743)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(501445900)シーゲイト テクノロジー リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】