説明

高純度アルブミンの製造

【課題】色素、金属イオン、ヒトタンパク質、宿主タンパク質、アルブミンの断片、アルブミンの重合体または凝集物とウイルスを極端に低レベルで含むかまたは本質的に含まず、本質的にグリケート化されていなくて、遊離チオールについて比較的高く、完全なC末端を有した、アルブミンの製造方法の提供。
【解決手段】ポジティブモード陽イオン交換と、その後でポジティブモード陰イオン交換クロマトグラフィーにアルブミンを通す。他のステップ、例えば限外ロ過、ゲル浸透クロマトグラフィー、アルブミンを結合させるアフィニティクロマトグラフィーと混入物質を結合させるアフィニティクロマトグラフィーも用いてよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、血清から抽出されたタンパク質ヒト血清アルブミン(HSA)、またはヒト血清アルブミンのアミノ酸配列をコードするヌクレオチドコード配列で微生物を形質転換することにより製造される組換えヒトアルブミン(rHA)を精製することに関する。この明細書において、“アルブミン”という用語は一般的にHSAおよび/またはrHAのことを指す。
【0002】
アルブミンは重篤な熱傷、ショックまたは失血のある患者を治療するために用いられる。しかも、それは高等真核細胞を増殖させるために用いられる培地を補うためと、治療用タンパク質の処方で賦形剤として用いられる。現在、製品としての要求は、ヒト血液から抽出されたアルブミンで満たされている。抽出および分離技術の例には:陽イオン交換剤の使用に関するJP03/258728;陰イオン交換に続いて陽イオン交換の適用に関するEP428758;加熱、塩分添加およびダイアフィルトレーションの適用に関するEP452753で開示されたものがある。
【0003】
微生物によるrHAの生産はEP330451およびEP361991に開示されている。rHAの精製技術は、マトリックス由来色素の除去に関するWO92/04367;酵母由来着色の除去に関するEP464590;アルカリ沈降の後で、アルブミンに特異的親和性を有する親油相へのrHAの適用に関するEP319067に開示されている。
【0004】
本発明は高度に精製されたアルブミンを提供する。
【0005】
本発明の一面では、アルブミンを精製するための方法であって、アルブミンが特異的親和性を有していないクロマトグラフィー材料に比較的不純なアルブミン溶液を適用してアルブミンがその材料に結合し、アルブミンに特異的親和性を有する化合物の溶液を適用することによりその材料から結合アルブミンを溶出させるステップを含む方法を提供する。好ましくは、クロマトグラフィー物質は、後で例2に示されるようなSP‐Sepharose FF、SP‐Spherosilなどのような陽イオン交換体である。アルブミンに特異的親和性を有する化合物は、オクタノエート(例えば、オクタン酸ナトリウム)、他の長鎖(C〜C22)脂肪酸、サリチレート、オクチルスクシネート、N‐アセチルトリプトファンまたはこれらのうち2種以上の混合物がある。
【0006】
本発明の第二面では、アルブミンを精製するための方法であって、アルブミンが陽イオン交換物質に結合される陽イオン交換クロマトグラフィーと、アルブミンが陰イオン交換物質に結合されるその後の陰イオン交換クロマトグラフィーにアルブミン溶液を付すステップを含む方法を提供する。
【0007】
陽イオン交換物質から溶出されたアルブミンは、その後で、上記陰イオン交換クロマトグラフィーに付される前に、1回以上のアフィニティクロマトグラフィー、限外ロ過およびゲル浸透により処理してもよい。このため、好ましい態様において、その方法は:
(a)アルブミンがマトリックスと結合するような条件下で、アルブミン溶液を陽イオン交換マトリックスに通す;
(b)アルブミン含有陽イオン交換溶出液を上記マトリックスから溶離させる;
(c)アルブミン結合性化合物を含んでなるアフィニティマトリックスに上記溶出液を通す;
(d)上記マトリックスからアルブミン含有アフィニティマトリックス溶出液を溶離させる;
(e)場合により限外ロ過後に、上記溶出液をゲル浸透マトリックスに通してアルブミンに富むフラクションを得る;
(f)アルブミンがマトリックスと結合するような条件下で、上記のアルブミンに富むフラクションを陰イオン交換マトリックスに通す;および
(g)上記陰イオン交換マトリックスから、精製されたアルブミン含有産物を溶離させる、
ステップを含む。
【0008】
一方、陽イオン交換物質から溶出されたアルブミンは、(希釈以外の)いかなる中間処理もなしに、上記陰イオン交換物質に適用してもよい。このため、第二の好ましい態様では:
(a)アルブミンがマトリックスと結合するような条件下で、アルブミン溶液を陽イオン交換マトリックスに通す;
(b)アルブミン含有陽イオン交換溶出液をそのマトリックスから溶離させる;
(c)アルブミンがマトリックスと結合するような条件下で、陽イオン交換溶出液を陰イオン交換マトリックスに通す;
(d)陰イオン交換マトリックスからアルブミン含有陰イオン交換溶出液を溶離させる;
(e)アルブミン結合性化合物を含んでなるアフィニティマトリックスに陰イオン交換溶出液を通す;
(f)そのアフィニティマトリックスからアルブミン含有アフィニティマトリックス溶出液を溶離させる;
(g)そのアフィニティマトリックス溶出液をゲル浸透マトリックスに通してアルブミンに富むフラクションを得る、
ステップを含む、アルブミンを精製するための方法を提供する。
【0009】
好ましくは、陽イオン交換ステップ前に、アルブミン溶液は、オクタノエートおよび/または他のアルブミン安定剤(例えば、ナトリウムアセチルトリプトファネート)をそれに約1〜10mMの最終濃度まで加えて、pHを約4.0〜5.0に調整することにより調節される(conditioned)。
【0010】
有利には、陽イオン交換ステップに留められたアルブミンは、溶離される前に、高塩溶液(例えば、10〜100mM、好ましくは20〜40mM、例えば27mM酢酸ナトリウムでpH4.0に緩衝化された0.5〜2.0M NaCl)で洗浄される。
【0011】
好ましくは、陽イオン交換溶出液が陰イオン交換体に直接通されるプロセスにおいて、アルブミンは、アルブミンに特異的親和性を有した化合物、特に酸またはその塩、例えばオクタノエートまたはいずれか他の長鎖(C‐C22)脂肪酸、サリチレート、オクチルスクシネートまたはN‐アセチルトリプトファンを含有した緩衝液を用いて、陽イオン交換ステップで溶離される。
【0012】
適切には、アルブミンは、高レベル(例えば、少くとも50mM、好ましくは50〜200mM、例えば80〜150mM)のホウ酸塩、例えばテトラホウ酸ナトリウムまたはカリウムを含有した緩衝液で陰イオン交換体から溶離される。
次いで、本発明により精製されたアルブミンは、中間プロセスステップと共にまたはそれなしで、複合糖質および糖類、例えばアミノフェニルボロン酸(aminophenylboronic acid)(PBA)と選択的に結合する固定された化合物を含有する樹脂でクロマトグラフィーに付される。
【0013】
アフィニティクロマトグラフィーを伴う本発明のいかなるプロセスにおいても、アフィニティクロマトグラフィーでは、好ましくはα,ω‐ジアミノ置換を有したスペーサー、例えば1,4‐ジアミノブタン、またはC1‐8、好ましくはC1‐6、例えばC1‐5、最も好ましくはC長の別なスペーサーを介して、好ましくは樹脂に固定化された、Cibacron Blueタイプの色素のような、固定されたアルブミン特異性色素を含んでなる樹脂を用いることが好ましい。意外にも、本発明者らは、このような色素が全長アルブミン分子よりも、実際にはHA分泌微生物の培養で生産することができる45kDアルブミン断片の方に大きな親和性を有していることを見出した。45kD断片は典型的には1‐403〜1‐409領域からなり、Sleep et al (1990) Bio/Technology 8,42-46 およびWO95/23857に開示されている。
【0014】
本発明の方法により調製された精製アルブミン溶液は、その意図した用途に従い更に加工処理してもよい。例えば、それは少くとも約80gアルブミン/lのアルブミン濃度を有する限外ロ過保留液(retentate)を得るために限外ロ過膜で限外ロ過し、限外ロ過保留液は保留液の少くとも5倍相当の水に対してダイアフィルトレーションしてもよい。あるクロマトグラフィーステップ、例えば固定化されたアミノフェニルボロネートを使うステップには、アンモニウムイオンを含有させておくことが有利である。意外にも、本発明者らはこのようなアンモニウムイオンが比較的強くアルブミンに結合されることを発見した。このようなアンモニウムイオンはアルブミンから除去されることが好ましく、本発明者らはこれがカウンターイオン(counter-ion)の使用により果たせることを発見した。アルブミンをカウンターイオンに暴露させたいという望みは、従来のプロセスではアンモニウムイオンが関与していないことから当業者に生じるはずがなく、アンモニウムイオンがアルブミンにより結合されると思いつく理由はなかった。
【0015】
したがって、本発明の別な面では、アンモニウムイオンがアルブミンから離されて、溶液から除去されるように、カウンターイオンの溶液にアルブミン溶液を暴露させることを含む、アルブミン溶液を精製するための方法を提供する。
【0016】
カウンターイオン(好ましくは、ナトリウムイオンのような金属イオン)がアルブミン溶液に加えられて、アンモニウムイオンは透析により除去されるか、またはアンモニウムイオンはカウンターイオンの溶液からアルブミンを分離させる半透膜でダイアフィルトレーションされるか、またはそれらはゲル浸透クロマトグラフィーにより除去することができる。保留液の少くとも5倍容量の50mM塩化ナトリウムに対するダイアフィルトレーションが通常適切である。
【0017】
得られたアルブミンは、着色料(colorant)、乳酸(lactate)、クエン酸(citrate)、金属、ヒトタンパク質、例えば免疫グロブリン、プレカリクレインアクチベーター、トランスフェリン、α‐酸糖タンパク質、ヘモグロビンおよび血液凝固因子、原核性タンパク質、アルブミンの断片、アルブミン凝集物またはポリマー、内毒素、ビリルビン、ヘム、酵母タンパク質およびウイルスが極端に低レベルであるか、または本質的に含まないことがわかった。“本質的に含まない”とは、検出可能レベル未満を意味する。本明細書で用いられる“着色料”という用語は、アルブミンを着色する任意の化合物を意味する。例えば、色素(pigment)は組換えアルブミンを製造するために用いられる生物、特に酵母から生じる着色料であるが、染料(dye)はアルブミンを精製するクロマトグラフィーステップから生じる着色料である。本発明のプロセスにより精製されたアルブミン調製物中において、少くとも99重量%、好ましくは少くとも99.9重量%のタンパク質はアルブミンである。このような高純度アルブミンが有害な副作用を引き起こす見込みは少ない。
【0018】
本発明のプロセスにより生産された本発明アルブミンは、還元SDS‐PAGEによると少くとも99.5%モノマー、好ましくは実質的に100%モノマーであることがわかり、下記特徴のうち1または2以上で特徴付けられる。それは、150ng未満、好ましくは100ng未満のアルミニウムイオン含量;3,000ng未満、好ましくは1,000ng未満の鉄イオン含量;10,000ng未満、好ましくは5,000ng未満の銅イオンレベル;3,000ng未満、好ましくは1,500ng未満のマグネシウムイオンレベル;5,000ng未満、好ましくは3,000ng未満の亜鉛イオンレベル;50ng未満のマンガンイオンレベル(すべてアルブミン1gに対して);ヘキソース0.6未満、好ましくは0.15未満(更に好ましくは0.05未満)モル/モルタンパク質のグリケーション(glycation)レベル;後記例9のように測定すると、20V.sec未満、好ましくは10V.sec未満の低分子量混入物質(contaminants)レベル;キャピラリーゾーン電気泳動図で単一ピーク;完全な(intact)、即ち同質の(homogeneous)C末端およびN末端;少くとも0.85モルSH/モルタンパク質の遊離チオール含量;および0.3mol/mol以下のC10〜C20脂肪酸を有していて、実質的にC18またはC20脂肪酸を有しない。
【0019】
出発材料はアルブミン含有発酵培地でもよいし、または不純アルブミン溶液はこの50年間かけて開発されてきた多数の抽出および精製技術、例えばStoltz et al (1991) Pharmaceut.Tech.Int.,June 1991, 60-65 および More & Harvey (1991) "Blood Separation and Plasma Fractionation" , Ed. Harris, Wiley- Liss,261-306に開示された任意のものにより血清から得られた溶液であってもよい。
【0020】
特にアルブミンがプロテアーゼ欠損酵母または他の生物で生産されたrHAである場合、そのプロセスには(EP428758およびEP658569とは異なり)精製プロセスの一部として熱処理ステップを通常含んでいない。同様に、それが(ヒトよりむしろ)微生物から製造されるならば、最終低温殺菌ステップ(典型的には60℃で1時間)を通常要しない。
【0021】
最終生成物は、それに安定性を付加するように処方してもよい。好ましくは、本発明の高純粋アルブミン製品は少くとも100g、更に好ましくは1kgまたは10kgのアルブミンを含有しており、これは多数のバイアルに分けてもよい。本発明の方法は血清のようないくつかの供給源による不純アルブミン溶液からもっと精製されたアルブミンを得るために利用することもできるが、組換えヒトアルブミン(rHA)を精製する上で特に適用しうる。本発明により生産されるアルブミンはラット、ウシまたはヒツジアルブミンのようないかなる哺乳動物アルブミンであってもよいが、好ましくはヒトアルブミンである。アルブミンをコードするDNAはアルブミンを生産するために適切な宿主で発現される。従って、DNAが発現ベクターを作るために公知の技術に従い用いられ、その後でそれがアルブミンの発現および生産向けに適した宿主細胞を形質転換させるために用いられる。このような技術には、EP‐A‐73646、EP‐A‐88632、EP‐A‐201239およびEP‐A‐387319に開示されたものがある。
細菌(例えば、E.coliおよびBacillus subtilis)、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris およびKluyveromyces lactis)、糸状菌(例えば、Aspergillus)、植物細胞、動物細胞および昆虫細胞を含めた多くの発現系が知られている。好ましい微生物は酵母Saccharomyces cerevisiaeである。
【0022】
本発明の実施にとり有用とする酵母について例示される属は、Pichia(Hansenula)、Saccharomyces、Kluyveromyces、Candida、Torulopsis、Torulaspora、Schizosaccharomyces、Citeromyces、Pachysolen、Debaromyces、Metschunikowia、Rhodosporidium、Leucosporidium、Botryoascus、Sporidiobolus、Endomycopsisなどである。好ましい属は、Pichia(Hansenula)、Saccharomyces、Kluyveromyces、YarrowiaおよびHansenulaからなる群より選択されるものである。Saccharomyces spp.の例はS.cerevisiae、S.italicusおよびS.rouxiiである。Kluyveromyces spp.の例はK.fragilisおよびK.lactisである。Pichia(Hansenula)の例はP.angusta(以前はH.polymorpha)、P.anomala、P.pastorisおよびP.capsulataである。Y.lipolyticaは適切なYarrowia種の例である。
【0023】
1または2種以上のプロテアーゼに欠く酵母株を用いることが有利である。このような株には、Woolford et al (1993) J.Biol.Chem.268,8990-8998;Cabezon et al (1984) P.N.A.S.81,6594-6598;EP‐A‐327797およびJones et al (1982)Genetics 102,665-677のように、周知のpep4‐3変異体と、PRA1および/またはPRB1遺伝子に変異を有する株等がある。一方、発酵培地中にあるプロテアーゼは加熱により不活化してもよい。プロテアーゼの存在は全プロセスにわたってアルブミンの収率を減少させる。
【0024】
好ましくは、酵母はWO95/23857およびWO95/33833として各々発行された本発明者らの特許出願で示されているように、例えば各遺伝子を分断させた結果として、低(またはゼロ)レベルのYap3pプロテアーゼおよび/またはhsp150熱ショックタンパク質を有している。Yap3pは下記の45kDアルブミン断片を形成させ、hsp150は一部の分離ステップでアルブミンと同時精製されうる。
【0025】
酵母はSaccharomyces cerevisiae2μmプラスミドをベースにした発現プラスミドで形質転換させてもよい。酵母を形質転換させるときに、そのプラスミドは細菌複製および選択配列を含んでいて、これはEP286424の開示に従い内部組換え現象により形質転換後に切り出してもよい。そのプラスミドはEP431880で示されたような酵母プロモーター(例えば、Saccharomyces cerevisiae PRB1プロモーター);分泌リーダーをコードする配列、例えばWO90/01063で示されたような天然HSA分泌リーダーのほとんどとS.cerevisiae α‐接合因子分泌リーダーの小さな部分とを含んだもの;ヒト遺伝子に対応するcDNAを単離するための公知方法により得ることができ、例えばEP73646およびEP286424にも開示されたHSAコード配列;および転写ターミネーター、例えばEP60057に示されたようなSaccharomyces ADH1からのターミネーターを含む発現カセットも含んでいてよい。
【0026】
上記プラスミドの様々な要素の選択は、得られるアルブミン製品の純度に直接関連するとは考えられず、それらの要素は生成物の改善された収率に寄与するのであろう。
【0027】
本発明の好ましい面は、例と添付図面により記載されており、その場合において:
図1はrHAを生産するために用いられる発酵槽を概略図で示している;
図2はC18PTH逆相HPLCカラム(Applied Biosystems Inc.)によるUVトレースであり、本発明のアルブミン中で低レベルの低分子量混入物質を示している;
図3は図2と同様であるが、従来技術のアルブミン中の低分子量混入物質を示している;
図4は市販アルブミンの脂肪酸含量を示したガスクロマトグラムである;
図5は図4に相当するが、本発明のアルブミンを示している;および
図6aおよび6bは、本発明のアルブミンと従来のアルブミンの各々に関するエレクトロスプレー質量スペクトル分析を示している。
【0028】
例1:不純アルブミン溶液の調製
アルブミン生産微生物の構築に関するクローニング戦略は、EP431880に開示されたとおりであった。プラスミドpAYE316をHinnen et al (1978) P.N.A.S.75,1929に記載された方法で(MATa、leu2、pep4‐3、〔cir゜〕)Saccharomyces cerevisiae株中に導入した。形質転換体はロイシンを欠く最小培地(酵母窒素ベース、Difco)上で選択した。形質転換体を複合(YEP、1%(w/v)酵母エキス、2%(w/v)バクトペプトンおよび2%(w/v)スクロース)または規定(アミノ酸および硫酸アンモニウムのない0.15%(w/v)酵母窒素ベース、0.5%(w/v)硫酸アンモニウム、0.1Mクエン酸/NaHPO・12HO pH6.5、2%(w/v)スクロース)液体培地の10mlを含有した50mlフラスコ中において30℃、200rpmで72時間増殖させたとき、rHAはSDS‐ポリアクリルアミドゲル電気泳動および/またはロケットゲル免疫電気泳動により無細胞培養上澄において検出することができた。
【0029】
規定液体培地〔Buffered Minimal Medium (BMM)塩培地:酵母窒素ベース(アミノ酸および(NHSOなし、Difco)1.7g/l;クエン酸一水和物6.09g/l;無水NaHPO,20.16g/l、pH6.5±0.2;スクロースは20g/lまで加える〕中のストックマスター細胞培養物は、20%(w/v)トレハロースの存在下で培養物のアリクウオットを凍結することによる振盪フラスコ培養物の調製に適したプロセス酵母のランニングストック(製造業者のワーキングセルバンク)を作るために用いる。
【0030】
発酵
このセクションはストック培養物から最終発酵に至るまでのrHAの生産に関するもので、特定の具体的装置または規模に限定されないrHA発酵プロセスの一般的規定である。
【0031】
振盪フラスコ培養.酵母〔cir゜、pAYE316〕を種容器(seed vessel)の接種に生理学上適した純培養物として増殖させる。種容器のタイミングが再現性があるならば、増殖期(主要炭水化物過剰)および接種物バイオマス(培地10リットル当たり接種物100mlを要する12±2mg/l)を規定することが必要である。1つのストックバイアルをBMM+2%(w/v)スクロース100mlを含有した振盪フラスコ中に接種し、(600nmの光学密度により調べて)0.6〜1.2g/lの細胞乾燥重量(cdw)が得られるまで、フラスコをオービタルシェーカー(200rpm回転/分)にて30℃でインキュベートする。次いでこの培養物は12±2mg/lのレベルまで種発酵容器(seed fermentation vessel)に接種するために用いる。
【0032】
種発酵.主生産発酵槽用の接種物は、種発酵槽(seed fermenter)(この例では、20L作業容量)で、約100g/lの高細胞乾燥重量(cdw)まで生産生物、好ましくはS.cerevisiae〔cir゜、pAYE316〕を増殖させることにより得る。フェッドバッチ(fed-batch)様式は、エタノールおよび酢酸(acetate)の蓄積を最少にして、細胞収率を最大にさせるようなものにする。各発酵の全体は、B.Braun(Germany)から入手できるMulti-Fermenter Computer System(MFCS)ソフトウェアのようなコンピューターコントロールシステムでモニターおよびコントロールする。
【0033】
B.Braunにより供給されるソフトウェアはSupervisory Control and Data Acquisition Packageである;同様のパッケージは他の会社からも入手できる。供給コントロールアルゴリズムはスクロースの添加をコントロールするためのものであり、こうしてCrabtree効果を避けて、それによりエタノールおよび/または酢酸の生産を最少にすることにより、最大バイオマスが達成される。発酵容器に加温NaOH洗浄液および無発熱物質水(PFW)すすぎ液(rinse)を入れる。加熱滅菌容器は約10Lの無菌MW10培地(表1)バッチ塩+微量元素を含有する。rHA生産用培地は、内毒素を除去するために限外ロ過(10,000Mol.Wt.カットオフ)することができる。
【0034】
表1
MW10培地
成分 バッチ培地 供給培地

KHPO 2.74g/l 10.9g/l
MgSO・7HO 0.58g/l 2.3g/l
CaCl・2HO 0.06g/l 0.24g/l
PO(85%w/w) 0.88ml/l 1.76ml/l
ビタミン
パントテン酸Ca 20mg/l 180mg/l
ニコチン酸 33.3mg/l 300mg/l
m‐イノシトール 20mg/l 180mg/l
d‐ビオチン 0.133mg/l 0.8mg/l
チアミン・HCl 16mg/l 32mg/l
微量元素ストック 10ml/l 20ml/l
スクロース 0 500g/l
微量元素ストック成分
ZnSO・7HO 3g/l
FeSO・7HO 10g/l
MnSO・4HO 3.2g/l
CuSO・5HO 0.079g/l
BO 1.5g/l
KI 0.2g/l
NaMoO・2HO 0.5g/l
CoCl・6HO 0.56g/l
微量元素は、35ml/lの98%HSOで酸性化された脱塩水に加える。
【0035】
スクロース20g/Lを20L種発酵槽(seed fermenter)段階でバッチ培地に加える。滅菌のいかなる便法も、脱発熱物質法、例えば限外ロ過のように用いてよい。ビタミンは常にフィルター滅菌する。
【0036】
培地を容器に加えた後、30℃の操作温度と、最小スターラー速度、典型的には400〜500rpmにセットする。初期pHは5.7±0.2にセットされたpHコントローラーを用いてアンモニア溶液(比重0.901)で調整する。2M HSOもpH補正剤として用いる。20g/lまでスクロース、MW10バッチビタミン、および0.04g/lまでBreox FMT30消泡剤を容器に加える。
【0037】
無菌ロ過空気を0.5v/v/m(即ち、非圧縮空気0.5L/培地l/分)で容器中に導入し、培地を無菌振盪フラスコ培養物から12±2mg細胞乾燥重量/lまで接種して、MFCSコンピューターシステムを始動させる。(30分で>15%の溶解酸素圧(tention)増加によりシグナルが発せられる)バッチ増殖期(batch phase of growth)の完了後、供給培地の添加をMFCSシステムのコントロール下で始める。コントロール戦略は、生産発酵に関して以下で記載されるのと同様であることが有効である。発酵中に、空気流は約1v/v/mの流量を維持するために2ステップで増加させる。溶解酸素分圧(DOT)は、スターラー速度を変えることにより、20%空気飽和度でコントロールする。スターラー速度がもう増加しえなくなり、空気流速度がその最大値に達したら、供給コントロールアルゴリズムは発酵産物の形成を最少にするように供給割合をコントロールする。供給の最後に、培養物は生産容器に移す。
【0038】
生産発酵.酵母〔cir゜、pAYE316〕の純培養物を細胞外rHAの生産のため高cdw(>80g/l)までフェッドバッチ発酵により生産させる。生産発酵槽、この例では作業容量8000Lの発酵槽に種発酵槽で増殖させた培養物を接種するが、その細胞乾燥重量は好ましくは>80g/lである。種発酵槽培養物の移送に際する生産発酵槽内の初期細胞乾燥重量濃度は、好ましくは0.25〜1.00g/lである。1時間以内に供給を始めることが好ましいが、必要であれば遅らせてもよい。供給期の初期におけるOURおよびCERの非常に低い値と、それらの測定における必然的な誤差のせいで、RQを用いた供給速度の自動コントロールは最初は不能である。供給様式は、エタノールおよび酢酸の蓄積を最少にして、細胞および産物収率を最大にさせるようにする。
【0039】
発酵は、最適のガス溶解および容積混合(bulk mixing)を得るように考えられた、図1に示されたような発酵槽で行う。加温NaOH洗浄液およびPFWすすぎ液に付される容器は、約4000Lの無菌MW10(表1)、バッチ塩および微量元素を含有する。この培地は、加熱またはフィルター滅菌により、容器とは別に滅菌させてよい。MW10のような発酵培地はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩または他の強い金属キレート化剤を含んでいないことが有利であり、それらの存在は生産されたアルブミン中に有意に高度の着色混入物質を生じさせるからである、と本発明によりわかった。
【0040】
操作温度は30℃にセットし、スターラー速度は均一溶液を維持する上で十分な、典型的には約50rpmとなるように調節する。初期pHはアンモニア溶液(SG0.901)で調整する(コントローラーは5.7±0.2にセットする)。2M HSOを第二のpH補正剤として用いてよい。MW10バッチビタミンは、適切な消泡剤の場合のように必要なだけ加える(例えば、Breox FMT30を0.125g/lまで)。
【0041】
無菌ロ過空気は、排出ガス分析の感度を最大にするために、最初は0.5v/v/mで容器に加え、MFCSコンピューターシステムを始動させる。排出ガスは、例えば連続質量スペクトロメーター(例えば、 Fisons VGガス分析器)の使用により分析する。容器にシードベッセル培養物の全体を接種する(最少0.4%v/v)。MW10はバッチ容量に等しい容量で供給する。供給を開始すると、OURおよびCER値がコントロールを有効にする上で十分高くなるまで、RQオーバーライド(override)コントロールは不能である。供給速度は、RQが一貫して>1.2となるならば、RQコントロールなしにその期間中手動で調整する。供給速度は、下記アルゴリズムに従い、コンピューターコントロールを介して増加させる:
供給速度(FR)=keμt
上記において、kは初期供給速度であり、μは指数増殖速度であり、tは時間である。k値は、エタノールおよび酢酸(acetate)の蓄積を最少にする増殖速度を達成させる上で必要な初期供給速度として経験的に決定される。この例では、kはMW10供給培地0.08ml/分/L培地の値を有するものとして決定された。μ値は、十分に呼吸性の生物の最大増殖速度、この例だと0.1/hである。
【0042】
tは0(ゼロ)で始まるカウンター変数(counter variable)であり、RQ>1.2またはDOT<15%でないかぎり毎分1ずつ増加する。これらの場合だと、tの値は減少する。
【0043】
容器はOTRを高めるために必要に応じて過圧してもよい。培養物は供給の最後に下流プロセッシングのために保持しておく。
【0044】
この保持時間は最小に保つべきだが、48時間以内で、必要ならばそれを超えて延長することができる。その保持期に、培養物の温度はできるだけ最低に、典型的には4〜15℃、好ましくは4℃に下げて、DOTを0%に落とさせる。供給を停止し、通気を止め、過圧を減らす。しかしながら、pHコントロールは維持する。十分な撹拌を、細胞を懸濁させておき、冷却およびpH均一性を促進するために、好ましくは約50ppmで維持する。
【0045】
上記操作による予想収率は:バイオマス>80g細胞乾燥重量/L培養物;rHA>1.5gモノマー/l培養物(全培養物についてSDS‐PAGEで調べた)である。
【0046】
アルブミンがrHAであるときに、本発明による精製処理用の不純アルブミン溶液を調製するためには、微生物細胞は発酵培地から除去する。細胞は記載されたように精製プロセスの開始前に除去されることが好ましいが、例えば第一の精製ステップが流動層(bed)で行われる場合には、それはある一定の条件下で第一ステップと同時に行うことができる。保持期中に通気なしで15℃未満に発酵槽で冷却された発酵培養物はタンクに移して、そこで180〜210g/kgのバイオマス濃度を示すようにそれを希釈して、必要ならば更に冷却させる。希釈された培養物は、酵母細胞沈降を防ぐために十分撹拌しながら、低減した温度で通気せずにできるだけ短時間保つべきである。
【0047】
細胞および上澄は、一次分離ステップ、例えば5700rpmで運動されるAlfa Laval BTUX510連続放出ノズルのような任意の適切な遠心機でミクロフィルトレーションまたは遠心に付す。こうして得られた遠心物(centrate)は、残留した全体および破壊酵母細胞と他の粒子を除去するために、例えばCunoにより供給の深層フィルター(1μm孔径)を用いて、ライン中でロ過してもよい。希釈培養物中に存在するrHAの少くとも75%は、単一通過遠心操作で回収する。場合により、この操作からの細胞スラリーは、水または緩衝液に再懸濁して、第二遠心物を得るために再遠心してもよく、こうして産物回収率を高めさせることができる。次いで、得られた溶液は、例2で示されたように、そこに含有されたアルブミンを精製するために本発明のプロセスにより処理する。
【0048】
例2:本発明によるアルブミンの精製
(例1に記載されたような)発酵からの遠心物または(血漿のような)いずれか他の供給源からの不純アルブミン溶液は、(オクタノエートを含有させることにより)重合化と、(ダメージを与えるレベルのプロテアーゼがないように酵母を選択するかまたは加熱することにより)プロテアーゼ活性からアルブミンをを保護しながら、陽イオン交換マトリックスでのクロマトグラフィー用に調製または条件設定する。好ましくは、オクタン酸ナトリウムを1〜10mM、例えば約5mMの最終濃度まで加えて(クロマトグラフィー溶液13(CS13)‐表2)、アルブミンを安定化させる。pHを酢酸(CS09)で4.3〜4.8、好ましくは4.50±0.1(最も好ましくは±0.05)に調整し、導電率は<5.5mS/cm となるようにチェックする。
【0049】
一部の宿主株または種からの培養上澄は、後のプロセス中にrHAを分解できるプロテアーゼを含有している。このような場合に、このプロテアーゼ活性はrHAを含有した培養上澄の熱処理により壊すことができる。典型的には、1〜10mMオクタン酸ナトリウムであれば熱変性からrHAを保護する上で十分であり、60〜80℃の温度で30秒間から10分間までであればプロテアーゼを不活化する上で十分である。その後、上澄は前記のように更にコンディショニングすることができる。プロテアーゼによる分解に会わないならば、熱処理は好ましくは省略する。
【0050】
クロマトグラフィー
すべての操作は環境温度(20±5℃)で行える。クロマトグラフィーカラム用のアルブミン担持量(load)(gアルブミン/Lマトリックス)は、SDS‐PAGE(SP‐FFカラムの場合)またはGP‐HPLC(他のすべてのカラムの場合)により、アルブミンの力価(g/l)から決める。各ステップの進行は、オンラインで、例えば254または280nmでUV吸光度を測定することによりモニターする。
【0051】
ここで記載されたようなクロマトグラフィーステップの順序には、いくつかの面で新規かつ進歩性がある。第一精製ステップで陽イオンマトリックスを用いると、酵母発酵から得られた低分子量着色種の大部分はカラムを直接通過するが、マトリックスに結合するものは弱く結合しており、1M NaClのような高イオン強度塩浄化により除去できる。このため陽イオンマトリックスは、これらのタイプの分子を不可逆的に吸着させる陰イオンマトリックスとは異なり、再生して、精製の第一ステップとしてクロマトグラフィーのマルチサイクルに使うことができる。こうして、このステップでは確固たる商業的クロマトグラフィープロセス用の基礎を形成する。
【0052】
この例で第二ステップとしてCibacron Blueタイプのカラムの使用は、その物理化学的性質、例えばサイズおよびpIがもとの分子と類似しているためにアルブミンから除去することが非常に困難な、アルブミンの45kDa断片を除去するために特に用いられるという点で新規である。意外にも、その断片は全長アルブミンの場合よりも色素と強く結合するので、それらの分離を行えるのである。アルブミンの精製中に用いられるクロマトグラフィー溶液は表2に示されている。アルブミンの非常に大規模な製造と、比較的低コストの製品のために、工業規模で高純度形態で利用できて、Tris、HEPESまたはMOPSのような他の通常用いられる緩衝液と比較して低コストであることから、これらの緩衝塩はそのプロセスに最も適している。別の緩衝液、例えば類似pKの緩衝液(例えば、酢酸(acetate)の代わりにリンゴ酸(malate))も表2で用いられたものの代わりに使用できるが、ほとんどの場合にコストと入手性が大規模だとそれらの使用を妨げる。別な塩形態も、それらが可溶性で、工業規模で入手できて、低コストであるとするならば、用いることができる。しかしながら、CS06およびCS10中におけるテトラホウ酸(borate)イオンの含有は、それらが高分子で炭水化物部分と複合体形成して、それらをマトリックス上の陰イオン基と強く結合させる上で特別な役割を果たすことから、特に有利である。これは溶出液中におけるアルブミンの純度を高める。
【0053】
クロマトグラフィーは、Pharmaciaから入手できるような軸流(axial flow)カラムを用いるか、またはSepragenから入手できるような半径流カラムを用いて行うことができる。この例では、カラムはすべて軸性である。
【0054】
緩衝溶液は下記の濃度で調製してもよいし、あるいは濃縮ストック溶液を調製して、すぐの使用のためにオンラインで混合または希釈してもよい。
【0055】
【表1】


陽イオン交換クロマトグラフィー.陽イオン交換クロマトグラフィーにより少くとも酵母タンパク質(アルブミンが酵母発酵からのrHAであるとき)および他の抗原、低分子量混入物質と着色化合物についてアルブミンを濃縮および精製する。その方法ではSP‐Sepharose FF、SP‐Spherosil、CM‐SepharoseFF、CM‐Cellulose、SE‐CelluloseまたはS‐Spherodexのような市販陽イオン交換マトリックスを用いる。好ましくは、マトリックスは5〜25cm、好ましくは10〜15cm、この例では12.5cmの層高で、アルブミン10〜50g/l、好ましくはアルブミン40±10g/lマトリックスのカラム担持量(loading)にあるSP‐Sepharose FF(Pharmacia)である。そのマトリックスはアルカリ貯蔵溶液を除去するために緩衝液で平衡化する;好ましくは、緩衝液はpHを約pH6.0に下げる上で十分な強度とすべきである。CS01のような緩衝液はカラムから貯蔵溶液CS07を除去するために用いる;しかしながら、pH<6.0の任意の緩衝液を用いることができる。平衡化は、カラム流出液のpHが約pH6.0であるときに完了と判断される。
【0056】
次いで、コンディショニングされた遠心物は例えば1.0〜8.0cm/min、好ましくは4.0〜7.0cm/min、この例では6.36cm/minの流速でカラム上に担持させ、その後カラムは残留混入物質を除去するために溶液で洗浄する。この洗浄溶液は、アルブミンの溶出を防ぐために、pH<6.0および5mS/cm未満、好ましくは3mS/cm未満の導電率を有しているべきである。適切な溶液はCS01である。先行のステップはすべて6.36cm/minで行う;溶出とその後すべてのステップでは、溶出液の容量を減少させるために、流速を0.5〜5.0cm/min、好ましくは2.0〜4.0cm/min、この例では3.18cm/minまで減少させる。アルブミンの溶出はイオン強度を増加させることにより行う;導電率範囲5〜10mS/cm、好ましくは6〜8mS/cmの溶液、例えばCS02を用いる。アルブミンの収集はUVシグナルが1.0A280/cmを超えて上昇したときに始めて、収集はUVシグナルが0.6A280/cm未満に下降するまで、または最大容量で6.5倍のカラム容量が集められるまで続ける。次いで、カラムはCS03および04を用いて浄化させ、その後CS07中に貯蔵する。
【0057】
アフィニティクロマトグラフィー.このステップでは、45kDa N末端アルブミン断片、酵母抗原(アルブミンが酵母発酵からのrHAであるとき)および色素についてアルブミンを更に精製する。アフィニティマトリックスは、アルブミンと結合するCibacron Blueタイプの色素、例えばReactive Blue 2、Procion Blue HB、Blue Sepharose、Blue Trisacrylおよび他のアントラキノンタイプ化合物を含んでいてよい。好ましくは、マトリックスは下記の“Delta Blue Agarose”マトリックスである。これはそのマトリックスにより生じるBlue浸出液のレベルを減少させ、しかもマトリックスのアルカリ安定性を高めて浄化と脱発熱物質を促進することがわかった。市販マトリックスと比較したそのマトリックスの更なる改良点は、色素(Reactive Blue 2)とマトリックス間に、スペーサー、1,4‐ジアミノブタンの組み込みである。これは溶出液アルブミン純度の面で最適長のスペーサーであることがわかった。
【0058】
Reactive Blue 2は以下で表される化学構造を有している。
【0059】
【化1】

オルト、メタまたはパラ異性体か、あるいはそれらの任意の混合物が使用できる。好ましい異性体はオルト‐SO-形態であるが、望ましい純度にすることは困難であるため、メタ異性体を用いる。アミノブチル‐Reactive Blue 2は、分析HPLCにより調べて98%全ピーク面積の最少純度まで調製する。これは、アミノブチル誘導体色素の精製を要する粗製市販色素を用いるか、または純粋な合成色素を用いることにより行える。後者の方法だと、出発色素物質は280nmの分析HPLCによると最低で純度98%であるべきだ。このような物質はACL.Isle of Manから入手できる。Reactive Blue 2は混合物を60℃まで加熱することにより水中で1,4‐ジアミノブタンと反応させ、その後誘導色素を例えば沈降により混合物から精製する。次いで、アミノブチル‐Reactive Blue 2はマトリックス、例えばエピクロルヒドリン活性化Sepharose CL‐6B(Pharmacia,Sweden)と結合させる。Porath et al (1971) J.Chromatog.60,167-177参照。このようなDelta Blue Agarose(DBA)マトリックスの色素分は、好ましくは50±5mmole/g乾燥重量であるべきだ。
【0060】
Blueマトリックスの使用.この方法では10〜30cm、好ましくは20〜30cm(この例では25cm)の層(bed)高で、rHA7〜14g/lマトリックス、好ましくは8〜12g/l(この例ではアルブミン10±1g/lマトリックス)のカラム担持量にあるDBAを用いる;すべてのステップは0.3〜2.0cm/min、好ましくは1.0〜2.0cm/min、この例では1.53cm/minの流速で行う。DBAはCS07からCS01中で平衡化させる;平衡化はカラム流出液のpHが約pH9.5となるときに完了である。クロマトグラフィー前に、SP‐FF溶出液はアンモニアで約pH8.5〜9.5、好ましくはpH9.0に調整し、その後カラム上に担持させる。担持が完了したら、カラムは1〜5倍容量、好ましくは5倍カラム容量の10〜30mS/cm、好ましくは15〜25mS/cmの緩衝液、例えばCS12で混入物質を除去するために洗浄する。アルブミンは>100mS/cm、好ましくは125〜165mS/cmの高イオン強度緩衝液、例えばCS03を用いて溶出させる。溶出液収集はUVシグナル(A280/cm)が0.4を超えて上がったとき開始して、シグナルが再び0.4未満に下がったとき止める。次いでカラムはCS04を用いて浄化させ、CS07中に貯蔵する。
【0061】
中間限外ロ過.このステップではゲル浸透クロマトグラフィー用にアルブミンを濃縮する。限外ロ過装置でセルロースタイプ膜(30,000以下、例えば10,000の公称分子量カットオフ)を用いて、DBA溶出液をアルブミン20〜120g/l、好ましくは80〜110g/lの保留液濃度まで濃縮させる。膜は、使用後に水か表3のCS03またはCS05で残留タンパク質を洗い出して、0.1M水酸化ナトリウムで浄化することにより処理する。次いで、膜は20mM水酸化ナトリウム中に貯蔵してもよい。
【0062】
ゲル浸透クロマトグラフィー.このステップでは酵母抗原(アルブミンが酵母発酵からのrHAであるとき)、色素および二量体化アルブミンについてアルブミンを精製して、緩衝液交換ステップを行う。その方法ではSephadex G100、G150、G250、Sephacryl S‐100、S‐200またはS‐300、Toyopearl HW50Sまたは Superose 6または12のような市販ゲル浸透マトリックスを用いる。好ましくは、マトリックスは60cmを超える、好ましくは90±cm(3×30cm)の層高にあるSephacryl S‐200HR(Pharmacia)である。カラムはCS05で平衡化させて、0.1〜1.5cm/min、好ましくは0.5〜1.0cm/min、この例では0.75cm/minで行う;次いでカラムにはpH9.5に達したとき中間UFステップからのアルブミンを担持させる。担持容量はカラム容量の約2〜9%、好ましくは5〜8%、例えばカラム容量の7.5%に相当する。アルブミンフラクションは3部分で集める:最初の少量のアルブミンダイマーはA280/cmが立ち上がり時に10%フルスケールデフレクション(FSD)に達するまで廃棄する;この時点でリサイクルフラクションの収集を開始して90%FSDまで継続させ、その後アルブミンを一次産物フラクションとして集める。これはA280が5%FSDに落ちるまで続け、その後流出流は再び廃棄する。リサイクルおよび一次産物フラクションは別々に集める。このステップは、すべての物質がカラム上に担持されるまで繰り返す。
【0063】
S‐200HRリサイクル限外ロ過.30,000以下、またはこの例では
10,000で用いられる公称分子量カットオフのセルロースタイプ膜を限外ロ過装置に用いて、プールされたリサイクルフラクションをアルブミン20〜120g/l、好ましくは80〜110g/lの保留液濃度まで濃縮させる。膜は中間限外ロ過下で上記のように使用後処理する。
【0064】
一方、このプロセスのいかなる限外ロ過ステップの場合にも、カットオフ≦30,000のポリエーテルスルホンまたはPVDF膜をセルロースタイプ膜の代わりに用いてよい。このような膜はAmiconおよびMilliporeから入手できる。膜の貯蔵と浄化に用いられるNaOHと適合する膜を用いることが好ましい。
【0065】
S‐200HRリサイクル限外ロ過保留液の精製.リサイクル限外ロ過からの保留液は、各ピークから集められた一次S‐200精製および産物フラクションに用いられたのと同様のカラム上に担持して、それから先に集められた一次産物フラクションと混合させる。このステップは、すべての物質がカラム上に担持されるまで繰り返す。
【0066】
陰イオン交換クロマトグラフィー.このステップの目的は、少くとも酵母抗原(アルブミンが酵母発酵からのrHAであるとき)および着色アルブミンについてアルブミンを精製することである。その方法ではQMA‐Spherosil、DEAE‐Spherodex、Q‐Hyper D、DEAE‐セルロース、QAE‐セルロース、あるいはTMAE、DMAEまたはDEAE Fractogelのような陰イオン交換マトリックスを用いる。好ましくは、マトリックスは5〜25cm、好ましくは10〜15cm、例えば12.5cmの範囲のいずれか好都合な層高で、アルブミン10〜60g/lマトリックス、好ましくは35±15g/lマトリックスのカラム担持量にある市販陰イオン交換マトリックスDEAE Sepharose‐FF(Pharmacia)である。カラムは最初に、pHを作業範囲まで速やかに下降させる強緩衝液、例えばpH4.5〜6.0、好ましくは約pH5.5の酢酸ナトリウム、例えばCS11で平衡化させる。濃縮緩衝液の後に、低導電率、即ち1〜4mS/cm、好ましくは2.5〜3.5mS/cmの範囲の溶液、例えばCS08を、カラムにS200溶出液を担持させる前に、カラムを平衡化するために用いる。1.0〜8.0cm/min、好ましくは3.0〜7.0cm/min、この例では4.4cm/minの直線的流速を用いることができる。担持が完了したら、カラムを5〜30mM、好ましくは15〜25mMの範囲のテトラホウ酸ナトリウム溶液、例えばCS10で洗浄する。こうすると、アルブミンフラクションの溶出前に、炭水化物含有混入物質をカラムにより強く付着させられる。溶出は10〜20mS/cmの範囲の高イオン強度溶液、好ましくはCS06で行うことができる。溶出液はA280/cmが0.4に達したときに集め、ピークが0.8に落ちるまで続ける。
【0067】
このため、この例だと、精製ステップの順序は陽イオン交換、アフィニティクロマトグラフィー、限外ロ過、ゲル浸透(リサイクルフラクションの限外ロ過を含む)および陰イオン交換である。
【0068】
DE‐FFカラムからの溶出液は、10.0mg/mlのアルブミンを含有した溶出液25.0μlを担持させてTSK SW3000XLカラムを用いるGP HPLCにより分析すると、0.1%(w/w)未満のアルブミン二量体(dimer)と、検出不能レベルのアルブミン多量体(polymer)または凝集物であることがわかった。
【0069】
例3:最終製品への精製アルブミンの処方
この例では、適切な生成物、この場合には25%(w/v)アルブミンへの高度精製アルブミンの濃縮、ダイアフィルトレーションおよび処方(formulation)について説明している。この操作は2段階で、即ち最終限外ロ過(UF)および処方で行う。最終UFは最終UF供給容器への(リン酸でpH7.0±0.3に調整された)DEAE溶出液の移送から始めて、保留液と洗液がもしあれば処方容器に移された後で終える。アルブミン含有プロセス流は、セルロース膜または、更に好ましくは公称分子量カットオフ限界10,000のポリエーテルスルホン膜を装備した限外ロ過系で、一次濃縮、ダイアフィルトレーションおよび二次濃縮に連続的に付す。最初の濃縮ステップではアルブミン濃度を約100g/lまで増加させ、直ちに連続的なダイアフィルトレーション段階を続けて、アルブミンを保留液容量の少くとも5倍、好ましくは少なくとも7倍相当の注入用水に対してダイアフィルトレーションする。
【0070】
本発明の一部の精製プロセス、例えば固定化アミノフェニルボロネートを用いた例7で記載されたステップにおいて、アンモニウムイオンはこの段階に存在していてもよい。意外にも、本発明者らは、これらのアンモニウムイオンがアルブミンによりかなり強く結合されて、水に対するダイアフィルトレーションでは完全には除去できないことを発見した。本発明者らは、塩溶液に対するダイアフィルトレーションが有効であることを発見した。0.5対10%w/w、例えば1.0対5.0%または約3%の塩化ナトリウム対アルブミン比が用いられ得る。その塩はアルブミン保留液に加えてもよいし、あるいは更に一般的にはダイアフィルトレーション水に加えてもよい。最終5%(w/v)処方の場合には、約100g/lの溶液をダイアフィルトレーションステップから直接回収できる。最終25%(w/v)処方の場合には、約275〜325g/lの溶液を追加の濃縮ステップ(UF)後に得る。最後に、溶液をバルク(bulk)製品処方容器に移す。
【0071】
処方ステップでは、適切な化学的環境下において、バルク生成物無菌ロ過(0.22μm親水性ポリビニリデンジフルオリド)と充填に適した適切な濃度で、アルブミンを製造する。移した溶液は、アルブミン、ナトリウムおよびオクタノエートの濃度を調べるために分析する。これらの量を考慮して、更に必要量のストック塩化ナトリウムおよびオクタン酸ナトリウム賦形剤溶液と適切なグレードの水がバルク処方仕様を満たすために加えられる。最終アルブミン濃度は235〜265g/l(即ち、約25%)であり、ナトリウム濃度は130〜160mMである。しかしながら、いかなる他の可能なアルブミン濃度にも、例えば少くとも4%(w/v)、好ましくは4〜25%(w/v)の最少濃度で作ってよい。処方は、ヒトアルブミンに関してUSまたは欧州薬局方に記されたような適切で慣用的な薬学上許容される賦形剤の添加と水希釈後に完了する。
【0072】
アルブミン1g当たり0.08mmoleオクタン酸ナトリウムの最終濃度が望ましい。製品は無菌かつ無発熱物質である。約1%(w/w)二量体アルブミンはあってもよいが、より大きなポリマーまたは凝集物はTSK SW3000XLカラムを用いてGP HPLCにより分析すると検出しえない。
【0073】
例4:陽イオン交換の後の直接陰イオン交換
例2のプロセスの変法として、ステップの順序を変えて、一部の変更をプロセス条件において行なった。このため、クロマトグラフィー溶液の別表を表3として示した。加えて、ゲル浸透ステップ以外のすべてのクロマトグラフィーカラムは半径流式である。
【0074】
【表2】

最初の陽イオン交換ステップは本質的に例2の場合と同様であったが、但し以下の変更を加えた。層流路長は11.0±1.0cmであった。次いでクロマトグラフィーを下記のように行った。
【0075】
SP‐FF(Pharmacia)カラムをCS20中で4倍容量の10〜100mM、好ましくは20〜40mM、例えば30mMの酢酸(acetate)で平衡化させ、アルブミン溶液を0.07〜0.75倍層(bed)容量/min、好ましくは0.3〜0.6、この例では0.5倍層容量/minの流速で担持させた。カラムを8倍容量の10〜100mM、好ましくは30〜70mM、例えば50mM酢酸(CS21)、その後10倍容量のCS20で洗浄し、アルブミンは、収集の開始と最後をマークするために0.6および0.36のA254/cmを用いて、酢酸(acetate)/オクタン酸(octanoate)緩衝液(例えば、CS23中で40〜120、好ましくは60〜100、例えば85mM酢酸と、2〜50、好ましくは2〜20、例えば5mMオクタン酸)で溶出および収集させる。カラムを0.25〜3.0M塩および0.05〜2%界面活性剤(CS24)と、その後で0.1〜1.0M苛性アルカリ(caustic)(CS25)で浄化し、希(10〜50mM)苛性アルカリ(CS26)中に貯蔵する。この例において、平衡化、担持および洗浄ステップの流速は0.5倍層容量/minである。アルブミンの溶出では、0.04〜0.6倍層容量/min、好ましくは0.15〜0.35倍層容量/min、この例では0.25倍層容量/minの流速を用いる。rHAモノマーの予想回収率は46〜66%である。
【0076】
したがって、アルブミンはオクタノエートの溶液で陽イオン交換カラムから溶出させて、陽イオン交換体からrHAの新規なバイオ特異的溶出を行わせた。pHはアルブミンのpIに近いため、オクタノエートの結合は有意の全体的荷電差を生じさせ、例えばpHは少くとも4.5、好ましくは約pH5.5である。
【0077】
次いで、陽イオン交換体からの溶出液は、pH4.5〜6.5、好ましくは約5.5で、1.5〜5.0mS/cm、例えば2.5±0.5mS/cm(mS.cm-1)の範囲の導電率の陰イオン交換樹脂上に直接(即ち、例2のようなアフィニティおよびゲル浸透クロマトグラフィー後、好ましくは希釈後の代わりに)担持させる。これにより、陽イオン交換クロマトグラフィー中に形成された任意の二量体アルブミンが陰イオン交換クロマトグラフィーの条件下でモノマーアルブミンに逆変換されることがわかった。アルブミンモノマーについて約110%の収率がこのステップで達成された。
【0078】
更に詳しくは、DEAE‐Sepharose Fast Flow (Pharmacia)の11.0±1.0cm層流路長カラムを陽イオン交換溶出緩衝液(CS23)で前平衡化させ、その後酢酸緩衝液(例えば、CS20)で平衡化させてから、モノマーアルブミン30.0±10.0g/Lマトリックスで担持させる。
【0079】
次いで、カラムを例2の場合(CS27)のようにホウ酸溶液で洗浄し、例2の場合(CS06)のように溶出させて、すべて陽イオン交換カラムの場合のように塩/界面活性剤(CS24)、苛性(CS25)で浄化し、希苛性アルカリ(CS26)中で貯蔵する。全ステップの流速は0.07〜0.75倍層容量/min、好ましくは0.3〜0.6、この例では0.5倍層容量/minである。
【0080】
陰イオン交換樹脂(例えば、DE‐FF)からの溶出液は、不純物をなお含有しているため、その後でアフィニティマトリックス(例えば、例2に記載されたようなDelta Blue Agarose)に直接適用する。層高を例2の25cmから11.0±1.0cmに下げて、標準操作圧力内で高い流速にさせた。したがって、11.0cmの層高が好ましく、アルブミンの回収率またはアルブミン純度に悪影響を与えない。カラムを酢酸アンモニウム(CS29中でのように100〜300mM、好ましくは200〜275、例えば250mM)で平衡化させ、アルブミンを7.0〜14.0g/l、好ましくは8.0〜12.0g/l、この例では10.0±〜1.0g/lマトリックスで適用した。平衡化、担持および洗浄ステップは、0.05〜0.30倍層容量/min、好ましくは0.15〜0.27、この例では0.25倍層容量/minの流速で行った。他のすべてのステップは、0.04〜0.30、好ましくは0.1〜0.25、この例では0.20倍層容量/minで行った。層高の減少で促進される流速の増加は大規模プラントデザインにとり有利な4倍まで処理量を改善して、DBAの最大操作能力に近かった。この増加した流速はアルブミンの回収率またはアルブミン純度に悪影響を与えないようであったため、このようにより高い流速を利用することが好ましい。
【0081】
カラムを5倍カラム容量の酢酸アンモニウム緩衝液(CS29)で洗浄し、アルブミンを強塩およびリン酸溶液(CS30中でのように1.0〜3.0M NaCl、例えば1.5〜2.5Mまたは2.0M NaClと、5〜100mM、例えば50mMリン酸(phosphate))で溶出させた。
【0082】
プロセスのこの変法における溶離液のpHは、pH9.2からpH7.0に変化させた。そのため、緩衝液を50mM酢酸アンモニウムから50mMリン酸ナトリウムに変えたが、これはpH7.0でのその緩衝化とその相対的コストのために好ましかった。低pH溶離液は、DBA溶出液アルブミンモノマー回収率の増加に寄与していた。7.0未満のpHは断片のレベルを増加させ、pH7.0を超えるとアルブミンモノマー回収率は減少した。したがって、pHは5.5〜9.0範囲で可能だが、好ましくはpH7.0である。カラムを浄化し、上記のように苛性アルカリ(CS25、CS26)中で貯蔵した。
【0083】
次いで、(80〜110g/lのアルブミンを得るために、場合によりセルロースタイプ膜(公称カットオフMW30,000)で限外ロ過後の)DBA溶出液をゲル浸透樹脂、例えばS‐200(HR)に適用した。S‐200ランニング緩衝液は40mMリン酸ナトリウムpH7.0に変えた。オクタン酸ナトリウムはコストの理由でこの緩衝液から省略し、その代わりダイアフィルトレーション前に溶液に加えた(1〜20mM、好ましくは5mMの濃度まで加えた)。リン酸は純度を改善するランニング緩衝液に高い導電率を付与した。高塩濃度は導電率を増加させるために用い得るが、溶液を緩衝化させておくことがなお好ましい。pH7.0が処方上望ましいpHであることから好ましかった。
【0084】
このため、この例だと、精製ステップの順序は陽イオン交換(アルブミンにより特異的に結合された分子と共に溶出する)、陰イオン交換、アフィニティクロマトグラフィーおよびゲル浸透である。
【0085】
処方前のダイアフィルトレーションステップは、pH7.0でアルブミンから出発することにより助けてもよい。アルブミンは例2のプロセスでよりも最終溶出液でもっと濃縮させて、処方(例3)前に最終限外ロ過ステップを助けた。
【0086】
例5:陽イオン交換体での高塩洗浄
プロセスの別な変法において、例2または4のプロセスを下記のように変更して行う。陽イオン交換カラム(例えば、SP‐Sepharose FF、Pharmacia)へのアルブミンの担持後に、カラムをCS21(50mM酢酸ナトリウム、pH
3.9〜4.1、0.6〜0.8mS/cm)で洗浄してから、CS20での最終洗浄前に、酢酸ナトリウム緩衝液(例えば、10〜50mM酢酸ナトリウム、好ましくは約27mM、pH3.5〜4.5、好ましくはpH4.0)中に1〜3M NaCl、好ましくは2M NaClを含有した高塩緩衝液で更に洗浄した。この一層厳密な洗浄操作が低レベルの非アルブミンタンパク質を含有した溶出液にしており、アルブミンが酵母発酵からのrHAであるならば特に有用と思われる。アルブミンは例4に記載されたように溶出させた。高塩洗浄前にpHを低下させるとその洗浄中にカラムにアルブミンを留める上で役立ち、最終洗浄もアルブミン回収率を最大にする。どのステップも、回収されたアルブミンの純度に大きな影響を有しないと思われる。
【0087】
例6:陰イオン交換体からの濃ホウ酸(borate)溶出
この例では、例2または4のプロセス(例5の変更と共にまたはなしに)を下記のように変更した。陽イオン交換カラムからの溶出液を10mS/cm未満、好ましくは5mS/cm未満に希釈し、その後陰イオン交換マトリックス(例えば、DEAE Sepharose FF、Pharmacia )に担持させた。次いで陰イオン交換マトリックスは約9.2までpHを上げる効果を有する希テトラホウ酸緩衝液(例えば、15〜25mMテトラホウ酸カリウムまたはテトラホウ酸ナトリウム)で洗浄し、その後アルブミンを更に濃縮テトラホウ酸緩衝液(例えば、80〜150mMテトラホウ酸カリウム、好ましくは110mMテトラホウ酸カリウム)で溶出させた。例2および4では、アルブミンを20mMテトラホウ酸(borate)、100mM NaClで溶出させた;80〜150mMテトラホウ酸(例えば、33.6g/l)での溶出は、これらの条件下で陰イオン交換マトリックスに対するこれら種の親和性増加のために、炭水化物含有混入物質、例えば酵母糖タンパク質の含有率がより低い溶出液を生じる。テトラホウ酸カリウムは、室温でその高い溶解度のために、テトラホウ酸ナトリウムよりも優先して用いられる。陰イオン交換マトリックスからの溶出液は例2または4のように処理した。例えば、例4プロセスにおいて、それはアフィニティマトリックス、例えばDelta Blue Agarose(DBA)に直接担持させて、例4に記載されたように行った。
【0088】
次いで、ゲル浸透ステップを例2または4のように行う。
【0089】
例7:固定化アミノフェニルボロネート
DBAマトリックスからの溶出液は、塩化ナトリウム(20〜2000mM、好ましくは約100mM)およびオクタノエート(1〜20mM、好ましくは約5mMオクタノエート、pH9.0〜9.5、好ましくは9.2)を含有した酢酸アンモニウム緩衝液(例えば10〜100mM、好ましくは約30mM)で平衡化されたゲル浸透媒体、例えばSephacryl S‐200(HR)(Pharmacia)に適用してもよい。この緩衝液は、以下で更に詳細に記された、最終クロマトグラフィーステップに適した溶液中にアルブミンを効果的に交換する。
【0090】
S‐200ステップは次のように行なう。S‐200は90.0±3cm(例えば、直列で3×30cm)の最小層高で行なう。(a)中間限外ロ過からの保留液をカラム上に担持させる。リサイクルおよび産物フラクションを集める。このステップはすべての物質がカラム上に担持されるまで繰り返す。(b)プールされたリサイクルフラクションを上記のように限外ロ過でrHA80〜110g/lまで濃縮させる。(c)リサイクル限外ロ過からの保留液を同様のカラム上に担持させ、産物フラクションを各ピークから集める。このステップはすべての物質がカラム上に担持されるまで繰り返す。(d)一次および二次ゲル浸透クロマトグラフィーステップ((a)および(c))からの産物フラクションはS‐200溶出液としてプールする。
【0091】
最終ステップは、糖タンパク質および糖脂質と多、オリゴおよび単糖のような複合糖質を除去するアフィニティステップからなる。このステップでは、リガンドとして固定されたアミノフェニルボロン酸(boronic acid)(PBA)を用いる。US特許第4,562,251号(引用により本明細書に包含される)ではジボロトリアジンアガロースまたはモノボロトリアジンアガロースを作る上で適した方法について記載している:(1)トリアジンは最初にアガロースにO結合させ、その後第二反応で3‐アミノフェニルボロン酸(APBA)と結合させる。トリアジン上のXが塩素に代えられると、二置換樹脂が得られる。(2)トリアジンは、モノまたはジボロトリアジンを作るために、まずAPBAと反応させる。次いでこれらは、一または二置換アガロースを作るために、トリアジン上の遊離塩素を介して‐ONa活性化アガロースにO結合させる。この特許におけるすべての例および記載では、O‐結合を生じる‐ONa活性化アガロースを用いる。
それより先のUS特許第4,269,605号では、本発明で好ましい、アガロースのエピクロロヒドリン活性化を含めた様々なマトリックス活性化法について考えられている。市販マトリックスには、Amicon's PBA30およびSigma'sアクリルビーズ化アミノフェニルボロネートなどがある。
【0092】
S‐200カラムから集められたアルブミンは、S‐200ランニング緩衝液(前記参照)で前平衡化されたPBAマトリックスでクロマトグラフィーに付した;これらの条件下で、アルブミンはマトリックスにあまり結合しないが、炭水化物ベースの混入物質はカラムを通過するときにアルブミンから分離させうるように十分に遅れてくる。このため、クロマトグラフィーはアルブミンに関してネガティブモードにある。それ以上の詳細は下記のとおりであった。
フェニルボロネートマトリックスは11.0±1.0cmの流路長を有しており、アンモニウムイオン(10〜50mM)、酢酸(10〜50mM)および1.0〜10.0mMオクタン酸(例えば、CS36‐後記表参照)を含有した緩衝液で平衡化させた。次いで、カラムを35±15g/LマトリックスのrHAで担持させた。PBAはネガティブステップとして行ない、したがって集められた産物は、担持とその後の平衡緩衝液での洗浄中におけるフロースルー(flow through)である。すべてのクロマトグラフィーステップは0.005〜0.3倍層容量/min範囲の流速で行える。好ましくは、カラムの平衡化および浄化はアルブミン溶液の担持および収集よりも高い流速、例えば0.19倍層容量/minで行い、好ましくは0.01〜0.05、好ましくは0.025倍層容量/minで行う。次いで、カラムはホウ酸緩衝液(CS37でのように)、塩(CS38)および苛性アルカリ(CS25)で浄化し、その後ホウ酸緩衝液(CS37)に貯蔵する。
【0093】
集められたフロースルーおよび洗液のpHは、リン酸溶液(CS35)で7.0±0.1に調整する。
【0094】
用いられる緩衝液は下記のとおりである。
【0095】
表4:例7のクロマトグラフィー溶液
溶 液 成 分 濃度(g/l) pH 導電率(mS/cm)
No. 名称
CS36 PBA CH3COONH4 2.31
平衡/洗液 NaOH(27%(w/w)) 2.55 9.0‐9.4 12.0‐15.0
NaCl 5.84
オクタン酸 0.721
CS37 ホウ酸浄化 K2B4O7・4H2O 33.6 9.2‐9.5 15.0‐18.0
CS38 塩浄化 CH3COOH 1.62
NaOH(27%(w/w)) 1.19 3.9‐4.1 125.0‐165.0
NaCl 117.0
PBA緩衝液中におけるアンモニウムイオンの使用のために、上記例3に記されたような最終限外ロ過ステップでは塩を用いることが有利である。
【0096】
特に好ましいプロセスにおいて、ステップの順序は下記のとおりである:
(1)例1のような酵母発酵
(2)例2のような遠心物コンディショニング
(3)例5のような高塩洗浄での陽イオン交換(SP‐FF)と、例4のようなアルブミン特異性化合物での溶出
(4)例6のような、希釈と濃テトラホウ酸(tetraborate)溶出での陰イオン交換
(5)例4のようなアフィニティクロマトグラフィー(DBA)
(6)例7のような、中間限外ロ過、その後ゲル浸透(S‐200)、およびリサイクル限外ロ過
(7)例7のような固定ホウ酸(immobilised borate)上でのクロマトグラフィー
(8)例3のような最終限外ロ過および処方
例8:固定化フェニルボロネートの早期使用
固定フェニルボロネートを使うステップは、そのプロセスで、例えばステップの順序が陽イオン交換体‐陰イオン交換体‐アフィニティ物質‐限外ロ過/ダイアフィルトレーション‐固定フェニルボロネート‐ゲル浸透であるプロセスで早期に用いることができる。
【0097】
各ステップの条件は例4〜7のとおりであるが、但し下記のようにする。DBA溶出液をアルブミン80〜110g/lに濃縮し、pHを例7で用いられた種類の酢酸アンモニウムに対してダイアフィルトレーション(5倍容量)することにより9.2に調整する。次いで濃縮DBA溶出液をPBAでクロマトグラフィーに付し、フロースルーを集めて、ゲル浸透(例えば、S200)カラムに直接適用する。ゲル浸透ステップがここでは最後のステップであるため、処方ステップに適した緩衝液、例えば20〜130mM(好ましくは、50〜100mM)NaCl、pH7.0で行なってもよい。
【0098】
例9:本発明により生産されたアルブミンの特徴
この例では、本発明に従い精製されたアルブミンの純度を確認するために行われる分析について示している。他で指摘されないかぎり、すべてのアッセイは、最終産物を得るために例3に記載されたように処方されたアルブミンで行う。
【0099】
rHAのグリケーション(glycation)
グリケートされたタンパク質のマイクロアッセイでは、本発明により精製された(rHA)が非酵素グリコシル化(グリケーション)により修飾されていないことを示した。マイクロアッセイでは、過ヨウ素酸(periodate)によるAPのC‐1ヒドロキシル基の酸化により、安定なアマドリ産物(AP)形のグリケート化タンパク質を測定する。過ヨウ素酸酸化により放出されたホルムアルデヒドは、アンモニア中でアセチルアセトンとの反応による、発色団ジアセチルジヒドロルチジン(DDL)への変換により定量する。次いで、DDLは405nmで比色分析により検出する。
【0100】
アルブミンバッチ モルヘキソース/モルタンパク質
A 0.092
B 0.116
C 0.090
D 0.132
E 0.060
G 0.04
H 0.01
I 0.07
J 0.07
K 0.05
L 0.740
M 0.70
N 0.96
O 0.78

バッチA〜Kは例2により精製されたrHAであった。バッチL〜Oは異なる供給元からの市販ヒト血清アルブミンのサンプルであった。例7により精製されたrHAの8バッチは、HSA(0.387±0.012)と比較して、無視しうるグリケーションレベル(0.042±0.018モル/モル)であった。
【0101】
低分子量混入物質アッセイ
原理‐このアッセイの目的は、酸性有機溶媒を用いてrHAおよびHSAから非共有結合低分子量混入物質(LMC)を除去することである。その後HPLC“指紋”クロマトグラムが、サンプルの比較のために生成されうる。
【0102】
方法‐100μlの最終産物(20mg;rHAまたはHSA)にギ酸(98%v/v)50μl、クロロホルム100μlおよびエタノール50μlを順次加えて、各添加後に撹拌する。サンプルを規則的に混合しながら室温で5分間保つ。次いでタンパク質をアセトン1mlの添加により沈降させる(30分間、−20℃)。タンパク質サンプルを遠心によりペレット化し、上澄をデカントし、真空下でロータリーエバポレーションにより乾燥させる。乾燥サンプルを25%アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸に再懸濁する。次いで、LMCは0.1%トリフルオロ酢酸中直線10%〜90%アセトニトリル勾配を用いてABI PTH C18逆相カラム(220×2.1mm)で分離させる(流速=300μl/min)。サンプルは ShimadzuUVモニターを用いて214nmでモニターした。
【0103】
結果‐ヒト血清アルブミンの市販バッチと本発明に従い精製されたrHAのバッチとの比較を行った。2つの主な有意のA214nmピークが本発明のサンプルでみられる(R=各々31.1および42.8min‐図2および表9参照)。2.15minのピークはカラムを通過する不溶性または部分可溶性物質のためであると思われ、56.5minの大きなピークは水ブランクのトレース中にも存在しているため、人工産物と思われる。
【0104】
表5:ピーク結果

# 保持時間 面 積 高 さ
(min) (uV.sec) (uV)
1 0.800 3459686 219122
2 1.667 418606 33569
3 2.150 77883335 1963630
4 3.000 6293258 122295
5 20.433 297608 14424
6 22.900 205822 14601
7 27.567 150851 10835
8 31.117 2213883 170938
9 37.983 164710 15088
10 39.267 347946 29879
11 41.750 107515 8402
12 42.783 2303024 192911
13 43.217 139744 14141
14 43.457 254521 23979
15 50.467 152805 13226
16 50.950 162364 12577
17 56.533 5753796 83674

他方、市販HSAは更に多くのピークを有している(図3および表6参照)。
【0105】
表6:ピーク結果

# 保持時間 面積 高さ
(min) (uV.sec) (uV)
1 0.350 244385 23957
2 0.633 607880 45310
3 0.783 3239730 243477
4 0.983 1072033 158146
5 2.233 76773569 2038028
6 2.933 6634089 182363
7 3.733 2812688 95459
8 12.483 818540 20185
9 12.650 218748 22750
10 14.150 5423715 98336
11 16.333 423403 17460
12 16.633 688525 24538
13 17.550 2301309 84781
14 18.033 1145045 47806
15 19.750 672721 21562
16 20.233 87799 9760
17 20.700 272171 13003
18 21.100 862146 55792
19 21.967 166471 8928
20 22.883 1381445 97660
21 23.583 1112632 89851
22 24.000 4740347 419780
23 24.417 352486 26374
24 24.917 171279 14625
25 25.133 99734 11473
26 25.267 133911 10515
27 25.667 223556 11854
28 25.967 257295 17351
29 26.600 93906 7657
30 26.817 223113 18326
31 27.250 303831 29461
32 27.533 124218 12710
33 27.783 5747091 561629
34 28.550 1383761 119772
35 29.033 390986 33455
36 29.417 182131 12713
37 29.833 181333 12584
38 30.183 478320 30155
39 30.583 1048945 58465
40 31.067 3454425 214489
41 31.983 168275 8663
42 32.717 651406 43161
43 33.150 1142221 102588
44 34.017 420756 23883
45 35.100 115704 10008
46 37.033 166588 9468
47 38.267 145731 8078
48 38.983 781209 54029
49 41.800 86967 8868
50 48.883 95416 8522
51 50.267 174159 16737
52 50.483 176115 15573
53 51.267 158727 13701
54 52.183 297278 25795
55 56.533 5846645 85710

非共有結合LMCに関する本発明のアルブミンの品質は、臨床用HSAの場合よりも明らかに優れている。数値で表すと、本発明のアルブミンについて10分と55分の間の全ピーク面積は約6.4V.secであり、市販物質について同じ2つの時間の間における全ピーク面積は約39.7V.secであった。
【0106】
同様の分析は280nmでの検出により行い、そこでは本発明に従い精製されたアルブミンのピーク面積は0.56V.secであり、HSAの場合は14.9V.secであった。
【0107】
蛍光低分子量混入物質の分析(280nmで励起、350nmで検出)でも、本発明の方法により精製されたアルブミンについて、HSAの場合の10%未満の全ピーク面積を表す。
【0108】
rHAおよびHSAのキャピラリーゾーン電気泳動
キャピラリー電気泳動(CE)は、本発明の精製rHAと市販HSAを定性的に比較するために、標準SDS‐PAGEの代わりとして用いる。CEは高分解能電気泳動技術であり、ほんの小さな差異がみられると、同様のタンパク質のサブ集団(sub-populations)を分離することができる。
【0109】
方法‐HSA(Armour)および本発明に従い精製されたrHAのサンプルを
20KeVおよび30℃で20mM PO/B緩衝液、pH=7.4により分離し、ABI270CEで電気泳動に付した。本発明のrHAは電気泳動図で単一ピークを与え、その均一性を示した。逆に、他のピークが市販HSAサンプルで観察された。これらのピークは、例えば遊離チオール基がブロックされたかまたはアミノ末端が分解したアルブミン分子の存在を示すと考えられる。
【0110】
C末端の分析
組換えタンパク質の質的コントロールの重要な面は、予備決定される一次構造の確立と安定性である。
【0111】
材料および方法
トリプシン消化:HSA(市販源から‐1つのサンプルは−20℃で貯蔵し、1つは30℃で12週間貯蔵する)、本発明に従い精製されたrHA(4℃および30℃で6月間貯蔵する)およびDes‐Leu rHA(C末端ロイシンのないrHAの切欠形)(各1mg)を37℃で120分間かけて5mMジチオトレイトール(Calbiochem)により還元させ、その後0.5M Tris HCl pH8.0中6MグアニジンHCl中37℃で90分間かけて10mMヨードアセトアミド(Sigma)でアルキル化した。
【0112】
次いで、サンプルをHOで1対3希釈し、37℃で48時間かけてトリプシンで消化した(SigmaのTPCK処理トリプシン、1mg/ml溶液の3×10μlアリコットを48時間にわたって加える)。
【0113】
ペプチドマッピング:トリプシン消化物は、25cm Pharmacia SuperPac Pep-Sカラム(5μm C/C18)を用いて、Gilson HPLC系による逆相(RP)HPLCでマッピングした。用いられた溶離剤は、A.水中0.1%(v/v)TFA(ABI);B.70%(v/v)アセトニトリル(Fisons Scientific)中0.09%(v/v)TFA‐60分間、0.5ml/minの直線勾配であった。214nmおよび280nmでのUV検出。
【0114】
N末端配列決定:ABI477Aタンパク質シーケンサーで行う
高速原子衝突‐質量スペクトル分析:FAB‐MSをM‐Scan Limited,Ascot,UKによりVG Autospecで行った。
【0115】
ペプチド合成:全長C末端トリプシン処理ペプチドLVAASQAALGL (質量1012)をABI,Warrington,UKにより合成した;切欠き体LVAASQAALG(質量899)をDepartment of Biochemistry,University of Nottingham,Nottingham,UKにより合成した。
【0116】
結果
全長C末端トリプシン処理ペプチド(質量1012)は、合成マーカーペプチドを用いると、RP‐HPLCで37.5minで溶出することが示された。このピークを集め、HSAおよびrHAからN末端配列決定およびFAB‐MSにより同定した。
【0117】
C末端ロイシンの除去は切欠きC末端ペプチド(質量899)を生じ、これは28.5分で溶出することが示され、合成マーカーペプチドを用いて確認した。このピークはDes‐Leu rHAのトリプシン消化物から単離して、N末端配列決定およびFAB‐MSにより同定した。他の2つのペプチドは28.5分ピーク、AWAVAR(質量673)およびDLGEENFK(質量950)に存在することが示された。
【0118】
28.5分ピークをHSAのトリプシン消化物、30℃で12週間貯蔵されたHSA、Des‐Leu rHA、4℃で6月間貯蔵された本発明のrHAおよび30℃で6月間貯蔵された本発明のrHAからRP‐HPLCで集めた。
【0119】
各消化物からのピークは、その後で合成マーカーペプチドと一緒に、N末端配列決定およびFAB‐MSにより分析した。
【0120】
表7.N末端配列決定により28.5min ピークに存在するペプチド

サンプル 配列
Des‐Leu rHA LVAASQAALG
AWAVAR
DLGEENFK
HSA標準 AWAVAR
DLGEENFK
+約5%LVAASQAALG
30℃で12週間のHSA AWAVAR
DLGEENFK
4℃で6月間のrHA AWAVAR
DLGEENFK
30℃で6月間のrHA AWAVAR
DLGEENFK
FAB‐MSによると、28.5分ピークに存在する主シグナル((M+H)分子イオン)は表8に示されたとおりであった。
【0121】
表8. 28.5min ピーク中の(M+H)イオン

合成全長および切欠C末端 1013‐LVAASQAALGL
ペプチドの混合物 900‐LVAASQAALG
Des‐Leu rHA 673‐AWAVAR
900‐LVAASQAALG
951‐DLGEENFK
1028‐ ?
1140‐ ?
HSA標準 673‐AWAVAR
900‐LVAASQAALG
951‐DLGEENFK
1028‐ ?
1140‐ ?
30℃で6月間のrHA 673‐AWAVAR
900‐LVAASQAALG
1028‐ ?
1140‐ ?
951‐シグナルなし
1028および1140でのシグナルは断片イオンと思われる;それらは配列分析により検出できるペプチドではなかった。
【0122】
結論
Des‐Leu C末端トリプシン処理ペプチドは約5〜10%(定量ではない)で市販HSAに検出されたが、本発明のrHAでは30℃で6月間後であっても検出できなかった。Des‐Leuペプチドは30℃で12週目にHSAで検出できず、全長C末端ペプチドで37.5分のピーク(単離されないが)は他のサンプルと比較して非常に減少しており、おそらくこれがC末端分解を更に受けたことを示している。
【0123】
これらの結果は、本発明に従い精製されたrHAが安定な完全長カルボキシ末端を有しているが、市販源から既に入手できるHSAは比較してみると不均質(heterogeneous)と思われることを示している。
【0124】
精製ヒトアルブミン中の遊離チオールに関する比色分析アッセイ
序文‐エルマン試薬、5,5′‐ジチオビス(2‐ニトロベンゾエート)(DTNB)はCys‐SHのような遊離チオール基を検出する特異的な高感度手段である。その反応の後で412nmの吸光度をモニターでき、その値を用いてrHAの分子当たり1残基未満のレベルまで遊離Cys‐SHを計算することができる。下記の溶液、試薬をアッセイで利用する:
5,5′‐ジチオビス(2‐ニトロ安息香酸)DTNB,Sigma Product No D8130
TRIS PRE-SET pH結晶pH8.0,Sigma Product No T4753
EDTA・二ナトリウム,Sigma Product No ED2SS
リン酸二水素ナトリウム・二水和物,Analarグレード
リン酸水素二ナトリウム・二水和物,Analarグレード
緩衝液1:0.1M(12.1g)Tris‐HCl:0.01M(3.72g)EDTA Na・2HO,pH8.0。PRE-SET pH結晶。水500mlに溶解して、正確に1リットル容量に調整する。室温で1月間安定。
【0125】
緩衝液2:0.05Mリン酸ナトリウムpH7.0、NaHPO・2HO(5.45g)、3.04g、NaHPO・2HO。水500mlに溶解して、正確に1リットル容量に調整する。室温で1月間安定。
【0126】
試薬:リン酸緩衝液中0.01M(39.4mg)DTNB。緩衝液2の10mlに溶解する。各々の日に新たに調製する。
【0127】
サンプル:アルブミンを緩衝液1で約10.3μM(0.66mg/ml)まで希釈する。
【0128】
操作
1)分光光度計セルホルダーサーモスタットを25℃にセットする。2)1つのキュベット中のサンプル1.25mlと、他の10mm減容量キュベット中の緩衝液の1.25mlとをサンプルおよびレファレンス位置に各々入れる。3)412nmで計器をゼロ調整する。吸光度を0.1AUフルスケールにセットする。4)DTNB試薬50μlをレファレンスキュベットに加え、きれいなプラスチックスターラーを用いてしばらく混合する。5)DTNB試薬50μlをサンプルキュベットに加え、上記のように混合する。6)直ちにデータ捕捉を始める (またはチャートレコーダーを始動させて、10分まで反応を追跡する)。7)値を同じく3回にわたり得るために、各サンプルについて繰り返す。8)安定した吸光度減衰からゼロ時間に逆外挿して、412nmで吸光度(δA412)を読み取る(図1)。9)モル吸光係数ε412=13.9cm2/mMを用いてスルフヒドリル含有量を計算する。
【0129】
結果
いくつかの市販HSAサンプルを遊離チオール含有量についてアッセイし、結果は以下にまとめた:
HSA 遊離チオール(モルSH/モルHSA)
1 0.29
2 0.22
3 0.35
4 0.05
5 0.08
6 0.46
7 0.36
これらの値は、0.85〜0.9モルSH/モルrHAでルーチンに分析された、上記例に従い作られたアルブミンの値よりも有意に低い。
【0130】
グラファイトファーネス(furnace)スペクトル分析によるヒトアルブミン中の金属イオン混入の測定
標準およびサンプルをパイロコート(pyrocoat)されたグラファイト管から原子化する。サンプルの原子吸光は下記条件を用いて検出する:

金属イオン 波長nm 原子化温度℃
Zn 213.9 1800
Cu 327.4 2300
Fe 248.8 2400
Al 309.8 2500
Mn 279.8 2200

アルミニウムはPerkin Elmer M2100原子吸収スペクトル分析器、Perkin Elmer HGA‐700グラファイトファーネス、サンプルカップ付きPerkin Elmer AS‐70オートサンプラーおよびアルミニウム中空カソードランプを用いて測定した。試薬はARグレード硝酸マグネシウム、アルミニウム標準溶液(1000ppm)およびARグレード濃硝酸であった。1.00%w/v硝酸マグネシウム溶液はMilli-Q水で調製した。アルミニウム標準溶液15μlをピペットでオートサンプラーに入れ、0.20%硝酸溶液で1500μlまで希釈した。操作は、得られた溶液15μlと、その後に得られた溶液150μlで繰返して、10ppb(μg/l)アルミニウム溶液を得る。
【0131】
アルブミンサンプルを0.20%硝酸溶液で希釈して、検量線図の限界内でアルミニウム濃度を得る。1:2希釈で通常十分である。
【0132】
マグネシウムも同様にPerkin Elmer AS‐51フレームオートサンプラーおよびマグネシウム中空カソードランプを用いて測定する。1000ppmのマグネシウム標準溶液をMilli-Q水で希釈して、0.1、0.2、0.5および1.0ppm標準溶液を得る。サンプルの原子吸光は285.2nmで検出する。
【0133】
銅、鉄、マンガンおよび亜鉛もアルミニウムと同様に測定するが、亜鉛の場合は1.0ppb(μg/l)標準溶液を10ppb溶液の代わりに用いる。金属イオンの濃度はng/Lで測定し、その後アルブミンの濃度に関連させる(金属イオンng/gアルブミン)。これらのデータは表9に掲載している。
【0134】
【表3】

すべての結果は全金属イオン濃度として表示してある。
【0135】
表10は市販HSA中における金属イオンの対応レベルを示している。
【0136】
【表4】

本発明の製品中におけるアルミニウムの平均レベルは約60ng/gであり、市販品は155〜3190ng/gであることがわかる。同様に、本発明の製品は平均約948ng/gの鉄(比較従来物質では1850〜41,200ng/g)、平均2990ng/gの銅(従来物質では580〜23,840ng/g)、平均1120ng/gのマグネシウム(従来物質では500〜54,000ng/g)、平均2390ng/gの亜鉛(従来物質では930〜7230ng/g)および平均48ng/gのマンガン(従来物質では65〜940ng/g)を有していた。
【0137】
中および長鎖脂肪酸の分析
本発明によるアルブミンと市販HSAの脂肪酸プロフィールは、C17:0内部標準を用いて、遊離脂肪酸の酸性溶媒抽出とガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0138】
装置:フレームイオン化検出器装備のガスクロマトグラフ(例えば、Shimadzu GC9A);オートインジェクター(例えば、Shimadzu AOC14);インテグレーター/プリンター(例えば、Shimadzu CR4A);HP‐FFA30×0.53mm、1.0μm相カラム(Hewlett Packard Ltd.);直接注入ライナー装備Megabore Installationキット(GC9A用のJ&W Scientific 220‐1150)
試薬:水(Milli-Q);ジクロロメタン超純粋溶媒(Romil Chemicals,Loughborough,Leics.);酢酸ナトリウム・三水和物Analar(BDH Ltd.Poole);氷酢酸Analar(BDH Ltd.Poole);ヒト血清アルブミン溶液(ZenalbTM20,Bio Products Laboratory ,Elstree,Herts.);無水硫酸ナトリウム(分析試薬);Sigmaからの標準脂肪酸
溶液
0.5M酢酸ナトリウム緩衝液pH4.5;酢酸ナトリウム6.13gおよび酢酸3.30g/100ml
遊離脂肪酸標準混合物.各脂肪酸5mgを別々のガラスバイアル中に秤量する。各脂肪酸をジクロロメタン1mlに溶解し、短鎖(C6‐C14)、中鎖(C16‐C18)および長鎖(C20‐C22:1)脂肪酸について3つの12ml Pyrex培養管に各々移す。窒素流下で混合物を乾燥させ、ジクロロメタン1mlに溶解する。混合物を50μlずつ、ラベルしたガラスバイアルに移し、窒素下で乾燥させ、キャップを付して、−20℃で貯蔵する。
【0139】
内部標準溶液1mg/mlヘプタデカン酸(ヘプタデカン酸25.0mg/ジクロロメタン25ml)
操作
1. 6つのラベルした40ml Pyrex管に内部標準溶液50μlを加える。
2. 5%rHAの場合にはサンプル5mlを加える。25%rHAの場合にはサンプル1mlおよび水4mlを用いる。ブランク(水5ml)および血清アルブミンサンプル(ZenalbTM20の1.25mlおよび水3.75ml)を含める。すべてのサンプルを二重に調製する。
3. 酢酸ナトリウム緩衝液2.5ml、その後ジクロロメタン10mlをすべての管に加える。
4. 室温で2時間にわたり機械ローラー上にキャップ付きの管をおく。
5. Sorvall RT6000B遠心機中、20℃、3000rpmで5分間にわたりすべての管を遠心する。
6. 上方の水相を除去し、その後管の底から作業して、ラベルした12ml Pyrex管中に下方のジクロロメタン相を慎重に移す。球状タンパク質はすべてのジクロロメタン相の除去を妨げることがある。これが生じるならば、1スパチュラ分の無水硫酸ナトリウムを加え、キャップを付して、振盪する。
7. 窒素流下でジクロロメタン相を乾燥させ、分析するまで窒素下−20℃で貯蔵する。
8. キャピラリーカラムを取り付けて、製造業者の説明に従いガスクロマトグラフを下記条件にセットする。
検出器:フレームイオン化;キャリアガス:窒素30ml/min;注入容量:0.5μl;カラム初期温度:70℃;保持:1.5min;勾配1:150℃まで20℃/min;勾配2:240℃まで4℃/min;保持:7min;検出器温度:280℃;Shimadzu GC9Aに特有のセッティングは:検出器レンジ(range):10゜;水素圧:0.5kg/cm2;空気圧:0.5kg/cm2;停止時間:50minである。
9. 製造業者の説明に従いガスクロマトグラフからデータを集めるために、インテグレーターを調整する。
10. オーブン温度を245℃に上げ、定常ベースラインに達するまでそのままにしておく。
11. オーブン温度を70℃に下げて、平衡化させる。
12. 長、中および短鎖脂肪酸標準のアリクウオットを解凍させる。長鎖脂肪酸をジクロロメタン1mlに溶解する。その溶液を中鎖脂肪酸に移して、溶解させる。短脂肪酸についても繰り返す。
13. 脂肪酸保持時間を調べるために標準混合物を注入する。得られたクロマトグラムは非常に小さなピークテーリングを有し、平坦でゆっくり立ち上がるベースラインを有して、正確な数のよく分割されたピークを持っているべきである。カプロン酸(C6:0)は約6minの保持時間で、エルカ酸(C22:1)は約33minの保持時間で溶出するはずだ。例の標準クロマトグラムと比較してすべてのピークを同定する。
14. サンプルを注入して、データを集める。
【0140】
計算
1. ブランクサンプルから内部標準ピークを同定する。これは保持時間約23.5minの主ピークである。
2. 下記式を用いて、すべてのサンプルで、すべての積分ピークについてピーク面積比を計算する。
ピーク面積比 = ピーク面積
内部標準ピーク面積
3. 標準との比較により、保持時間に基づきrHAおよびHSAサンプルで脂肪酸ピークを同定する。
4. 下記ファクターを用いて、rHAおよびHSA双方のサンプルについて、すべてのピーク面積比を大体の濃度(μg/gアルブミン)に変換する:
濃度(μg/g)=ピーク面積比×200
5. 脂肪酸として同定されたピークの場合には、脂肪酸の分子量と下記式を用いて、濃度をμg/gアルブミンからモル/モルアルブミンに変換する:
濃度(モル/モル) = 濃度(μg/g)×0.0665
脂肪酸分子量
【0141】
例の結果は、例2に従い得られたアルブミンのバッチ(図4)と市販HSA(図5)について示している。異常な脂肪酸はこの方法により前者で検出されなかったが、2つのタンパク質のプロフィールは有意差を示した。予想されたように、双方とも多量の添加安定剤オクタノエート(C8:0)を示した。これとは別に、市販HSAは主にC16:0、C16:1、C18:0、C18:1およびC18:2で特徴付けられ、本発明のアルブミンは主にC10:0、C12:0、C16:1で、時々C14:0を含有していた。更なる実験では、rHA最終製品中におけるC10:0およびC12:0のレベルが、精製プロセスで後の方の段階に用いられるオクタノエート中におけるこれら混入物質のレベルと相関していることを示した。
【0142】
例7に従い製造されたrHAに関するデータは下記のとおりである:
表11.本発明の製造法に従い精製されたrHAと市販HSAとの脂肪酸組成の比較

脂肪酸含量( mol/mol タンパク質)
脂肪酸 rHA HSA
C10:0 0.100 0.005
C12:0 0.020 0.011
C14:0 0.005 0.017
C16:0 0.013 0.152
C16:1 0.064 0.023
C18:0 0.002 0.024
C18:1 0.012 0.145
C18:2 ND 0.089
C18:3 ND 0.006
C20:0 ND 0.001
C20:1 ND 0.001
C20:2 ND ND
C20:4 ND 0.006
合計 0.216 0.480
ND=検出されず
好ましくは、C18脂肪酸の全レベルはオクタノエートのレベルの1.0%(モル/モル)を超えず、好ましくはそのレベルの0.5%を超えない。更に、本発明のアルブミンにおいて、C18:2、C18:3およびC20脂肪酸のレベルは通常検出不能である。市販HSAの場合だと、典型的にはアルブミン1モル当たりC10〜C20脂肪酸約0.4モルである。本発明の生成物では、典型的にはC20脂肪酸について検出不能であり、アルブミン1モル当たりC18脂肪酸約0.01〜0.02モルにすぎない。
【0143】
色の分析‐1cmキュベット中にある最終産物の5%(w/v)溶液の吸光度を350nm、403nmおよび500nmで測定し、路長cm当りアルブミンg/l当りの吸光度(即ち、AL.g-1.cm-1)で計算した。本発明のアルブミンは下記値を有している:
波長 平均吸光度(n=10バッチ)
(nm) (L・g-1・cm-1
350 4.74×10−3
403 2.12×10−3
500 0.58×10−3
通常、本発明のアルブミンは上記3つの波長で6.0×10−3
2.5×10−3および0.75×10−3の各吸光度を超えない。
【0144】
いくつかの市販HSA製剤のアッセイでは、これらの波長でもっと高い吸光度を示した(表12参照)。
【0145】
表12:従来のHSA製剤の吸光度(L.g-1.cm-1

サンプル A350403500
1 9.95 4.10 0.8
2 9.25 5.36 1.1
3 7.40 3.26 0.6
4 7.20 3.60 0.6
5 8.68 4.08 0.8
6 11.45 6.26 1.2
7 7.20 3.70 0.8
8 6.82 4.78 1.8

SDS還元ポリアクリルアミドゲル電気泳動‐このアッセイは、rHAが、還元剤(β‐メルカプトエタノール)で処理されたときに、SDS還元ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)で単一バンド(モノマー)として移動する単一ポリペプチド鎖からなることを示すために行う。
【0146】
アルブミンのサンプルをSDS還元緩衝液(アルブミン1mg/mlと共に2mM EDTA、5%(w/v)SDSおよび10%(v/v)β‐メルカプトエタノールを含有した20mM Tris-HCl pH8.0)中で煮沸し、その後溶液1μlの担持量を用いて、SDS均質(homogeneous)(12.5%)Phastgels(Pharmacia)で分離させた。タンパク質バンドをCoomassie Blue R250染色により検出し、Shimadzu CS9000デンシトメーターで走査した。アルブミンの分離ではCoomassie染色の単一バンドを示して、モノマーとして存在するアルブミンの割合が少くとも99.9%であることを示した。
【0147】
ゲル浸透高圧液体クロマトグラフィー
本発明のプロセスの主態様(即ち、陰イオン交換ステップが限外ロ過および処方前の最終ステップである)における陰イオン交換マトリックスからの溶出液中でアルブミンの10mg/ml溶液25μlをShimadzu LC6A HPLCでTSK3000SWXLカラムに注入する。製品は少くとも99.9%モノマーであることがわかった。
【0148】
25%w/vに処方された、本発明に従い精製されたアルブミンの第二の10mg/ml溶液25μlを同様に分析したところ、0.1%未満のポリマーアルブミンの含有であることがわかった。この結果は、ここに記載されたような処方が精製アルブミンのポリマー/凝集物含有率に影響を与えないことを示している。
【0149】
二次元ゲル電気泳動
本発明のプロセスにより得られたアルブミンのrHA2μgを、Millipore Investigatorシステムを用いて二次元電気泳動に付した。第一の次元での分離はpH3〜10等電点電気泳動ゲルであり、その後第二の次元で10%ポリアクリルアミド/SDSゲルを行った。Coomassie Blueによるゲルの染色では1つだけのスポットが見え、1つだけのタンパク質種の存在を示した。
【0150】
電気スプレー質量スペクトル分析
電気スプレー質量スペクトル分析(ESMS)はVG Quattro電気スプレー質量スペクトル分析器を用いて行い、m/z範囲950〜1750Da/eでウマ心臓ミオグロビン(16951Da、Sigmaから入手)で較正した。市販HSAのサンプルおよび本発明に従い精製されたrHAのサンプルは、トリフルオロ酢酸を含有したアセトニトリル勾配を用いて、逆相HPLCによる分析前に脱塩させた。図6aおよびbは、本発明のアルブミンおよび従来技術のHSAに関するスペクトルを各々示している。後者はブロックされた遊離チオールおよびN末端分解を表したピークを示す。
【0151】
本発明のアルブミンはこのアッセイで実質的に均質であることがわかり、換言すればそれは約66441Daの質量で生じる単一の明確なピークを示す。
【0152】
長期安定性
2年以上、アルブミンの分解は電気泳動法で検出できず、このことはプロテアーゼ活性が存在しないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】rHAを生産するために用いられる発酵槽を概略図で示している。
【図2】C18PTH逆相HPLCカラム(Applied Biosystems Inc.)によるUVトレースであり、本発明のアルブミン中で低レベルの低分子量混入物質を示している。
【図3】図2と同様であるが、従来技術のアルブミン中の低分子量混入物質を示している。
【図4】市販アルブミンの脂肪酸含量を示したガスクロマトグラムである。
【図5】図4に相当するが、本発明のアルブミンを示している。
【図6a】本発明のアルブミンに関するエレクトロスプレー質量スペクトル分析を示している。
【図6b】従来のアルブミンに関するエレクトロスプレー質量スペクトル分析を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニウムイオンがアルブミンから離されて、溶液から除去されうるように、溶液をカウンターイオンの溶液に暴露させることを含む、アルブミン溶液を精製する方法。
【請求項2】
カウンターイオン溶液がアルブミン溶液に加えられて、アンモニウムイオンが透析により除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カウンターイオン溶液が半透膜によりアルブミン溶液から分離されて、アンモニウムイオンがダイアフィルトレーションにより除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アンモニウムイオンがゲル浸透クロマトグラフィーにより溶液から除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カウンターイオン溶液がナトリウムイオンを含む溶液である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
アルブミン溶液を精製する方法であって、アンモニウムイオンを含有した緩衝液中でクロマトグラフィー材料に該溶液を暴露させ、その後で、場合により更に精製または処方ステップ後に、請求項1〜5のいずれか一項に記載された方法によりアンモニウムイオンを除去して、精製したアルブミン生成物を得ることを特徴とする方法。
【請求項7】
クロマトグラフィー材料が固定化されたホウ酸イオンを含んでいる、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2006−342169(P2006−342169A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184756(P2006−184756)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【分割の表示】特願平8−535457の分割
【原出願日】平成8年2月29日(1996.2.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(506230116)デルタ、バイオテクノロジー、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DELTA BIOTECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】