説明

高純度シリコンを包装及び選別する際に使用するための通気性手袋

【課題】ポリシリコン破片及びシリコンウェーハのような高純度シリコンを包装するために、耐切創性及び耐突刺性でかつ毛羽立ちのない下に着ける手袋の上に、上に着ける手袋としてのポリエチレン製通気性手袋。
【解決手段】PE製の掌部と、通気性でクリーンルーム適合性の繊維材料製の甲部とを組み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシリコン破片(Polysiliciumbruch)及びシリコンウェーハのような高純度シリコンを包装及び選別するために、耐切創性及び耐突刺性でかつ毛羽立ちのない(schnitt- und stichfesten und fusselfreien)下に着ける手袋(Unterziehhandschuh)の上に、上に着ける手袋(Ueberziehhandschuh)としての通気性手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
手で包装する際及び選別する際の高純度シリコンの汚染を回避するために、原則として手袋が装着されなければならない。また、前記手袋により引き起こされる汚染も排除できるように、前記手袋は、シリコン表面との接触の際にできる限り粒子を放出してはならない。例えばKNF Clean Room Corp.及びIcarus West Inc.社のような製造業者の多様な測定により、超高純度(hoechstreinem)ポリエチレン(PE)製の手袋が、これらの面積あたりの粒子放出に関して最良の値になることが示されている。これらは、それゆえ、例えばナイロン、ポリエステル、PVC、ラテックス、ポリウレタンのような他の材料よりも又はニトリル製の手袋よりも、はるかに優れている。
【0003】
しかし残念ながら、超高純度のPE、好ましくはLDPE製の手袋は、通気性ではなく、かつそのために手がわずか数分(wenigen Minuten)後に既に汗をかき始めるという欠点を有する。また、PE製の手袋は、全く耐切創性を有しない。故に、安全上の理由から、極度に鋭利なシリコン断片(Siliciumbruchstuecken)を手で触る際に、PE製の手袋の下に別の耐切創手袋が装着されなければならない。
【0004】
経験上、わずか数キログラム(wenigen Kilogramm)のシリコン断片を手で触った後に既に、前記PE手袋は裂け、故に交換されなければならないことがわかっている。PE製のオーバー手袋(Ueberhandschuh)により引き起こされる手の極めて激しい汗かきに基づいて、耐切創アンダー手袋(Unterhandschuh)は、同様に約30分後に取り換えなければならない。
【0005】
故に、作業する際に、共同作業者に、1分毎にPE手袋の損傷を調べることが強いられる。損傷が見落とされると、塩化ナトリウムを含有するヒトの汗が、前記高純度シリコンへ到達し、かつそのためにこのシリコンを使用できなくなるという危険が存在する。続けざまの運転での測定は再三再四、シリコン断片の、包装者及び/又は選別者の汗かきに起因されうる痕跡量のナトリウムを示している。
【0006】
PE製の手袋を使用する際のさらなる欠点は、長時間使用する場合に前記手袋の下での汗かきにより、持続的で非可逆的な皮膚刺激となりうることにある。
【0007】
技術水準からは、通気性又は耐切創性の手袋のための多様な解決手段が知られている。そして、例えば独国特許出願公開(DE)第102005044839号明細書には、より良好なグリップ性のためのシリコーン製の掌部(Handinnenflaeche)及び空気透過性織物製の甲部(Handruecken)を有する通気性手袋が記載されている。米国特許出願公開(US)第2007028356号明細書には、内層が通気性であり、かつできるだけ安全なグリップ性を可能にするように外層が高い摩擦係数を有する、多層でかつ通気性の手袋が記載されている。しかしながら、技術水準から知られた手袋のいずれも、良好な通気性と、グリップすべき片(Stueck)上への前記手袋内面の最小限の粒子放出とを組み合わせることを目指していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開(DE)第102005044839号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開(US)第2007028356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、一方では、単位面積あたりのPEの粒子放出に関して最良の値を有し、かつ同時に通気性である、高純度シリコンを包装及び選別するための手袋を提供するという課題が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
意外なことに、PE製の掌部と、通気性でクリーンルーム適合性の(reinraumgerechten)繊維材料(Textilstoff)製の甲部とを組み合わせる(Zusammenfuegen)ことにより、技術水準の欠点を有しない、高純度シリコンを包装及び選別するための手袋を製造できることが目下見出された。
【0011】
本発明の対象は、高純度シリコンを包装及び選別する際に使用するための手袋であって、前記手袋の掌部がポリエチレンからなり、かつ前記手袋の甲部面が通気性でクリーンルーム適合性の繊維材料からなり、ここで両部は互いに堅牢に(dauerhaft)結合されていることにより特徴付けられる。
【0012】
本発明による手袋の場合に、超高純度PE、好ましくはLDPE製の掌部を製造し、かつ前記手袋の上面に通気性を持たせる。これを前記PE手袋の上面に孔を開けることにより達成するという試みではうまくいかない、それというのも、前記PE手袋は、それにより不安定になり、かつシリコン片(Siliciumstuecke)を取り扱う際にごく短時間のうちに既に破れうるからである。
【0013】
甲部用の材料として、通気性でクリーンルーム適合性の多様な繊維材料が使用されることができる。その場合に、DuPont社のタイベック(Tyvek)(登録商標)、高い密度を有するポリエチレン(HDPE)製の熱溶着された(thermisch verschweissten)繊維からなるシート状繊維機能織物(papiervliesartiges Faserfunktionstextil)が好ましい。
【0014】
タイベック(Tyvek)(登録商標)は、その変形能のためにほぼ紙のように振る舞うが、しかしその場合により丈夫である。故に防護服用材料としてタイベック(Tyvek)(登録商標)は適している、それというのも、タイベック(Tyvek)(登録商標)は、一方では自体の繊維をごくわずかにのみ失うに過ぎず、他方では不織布によって、身体から離脱する細胞(Zellen)が前記材料を経て出てくることはほぼできないからである。こうして、前記の作業範囲内で必要とされるような、無菌の作業条件が維持されることができる。前記材料の水密性と同時に、蒸気拡散性(Dampfdiffusionsoffenheit)に基づいて、気体状の汗は、前記繊維を経て容易に外へ出ることができる。
【0015】
タイベック(Tyvek)(登録商標)は、超高純度PEフィルムと、ポリシリコン片(Polysiliciumstuecke)を手で触る際に純PE手袋と同じ安定性を有する手袋が得られるように良好に溶着されることができる。前記手袋の上面(甲部)の織物原料と内面の高純度LDPEとの間の溶着継目(Schweissnaht)は、その場合に、PE製の内面及び上面を有する手袋の場合の2枚のPEフィルム間の溶着継目と同じ溶着継目強度を有する。
【0016】
溶着継目強度はその場合にDIN55543/第3部に従って調べた。上面及び下面のLDPEフィルム間のPE手袋の場合の平均溶着継目強度は、本発明によるタイベック(Tyvek)(登録商標)製の上面及びLDPE製の下面の間の手袋と同様に、50N/15 mmであった。
【0017】
下に着ける手袋として、安全上の理由から、本発明による手袋の場合にも、耐切創性及び耐突刺性のアンダー手袋を装着しなければならない。適した下に着ける手袋についての技術水準は、3つの異なる手袋タイプの組合せである。一番目の手袋として、汗を吸い込むために、純綿手袋を装着する。前記綿手袋の上に、耐切創手袋、好ましくはアラミド繊維製、特に好ましくは材料ケブラー(Kevlar)(登録商標)(デュポン(DuPont))製の耐切創手袋をつける。ケブラー(Kevlar)(登録商標)は残念ながら毛羽立つので、さらに、毛羽立ちのない手袋、好ましくはビニール手袋を、その上につけなければならない。ついではじめてPE手袋を使用する。
【0018】
しかしながら、4枚の異なる手袋を重ねて装着することは、複数の欠点を有する。一方では、これらの防護手袋を適正に(fachgerechten)はめるために数分(mehrere Minuten)が必要とされ、かつ多くの層に基づいて、手先の器用さ(Fingerfertigkeit)は明らかに損なわれる。さらなる欠点は、規則的に交換されなければならない、両手の4枚の手袋の高いコストである。
【0019】
意外なことに、追加的にポリウレタン(PU)でコーティングされており、極めて高い引張強さを有する高強度ポリエチレン繊維製の下に着ける手袋の使用により、本発明によるPE−ケブラー(Kevlar)(登録商標)手袋の使用の場合に、防護作用を低下させることなく、かつ汗の発生を高めることなく、前記の下に着ける手袋の数を3枚から1枚の手袋に減らすことができた。
【0020】
本発明のさらなる対象は、高純度シリコンを包装及び選別する際に使用するための多層手袋(mehrlagiger Handschuh)であって、前記手袋の外層が、ポリエチレン製の掌部からなり、かつ前記手袋の甲部面が通気性でクリーンルーム適合性の繊維材料からなり、ここで両部は互いに堅牢に結合されており、かつ前記手袋の内側にある層の少なくとも1つが、ポリウレタンでコーティングされており、極めて高い引張強さを有する高強度ポリエチレン繊維からなることにより特徴付けられる。
【0021】
好ましくは、高強度ポリエチレン繊維としてダイニーマ(Dyneema)(登録商標) (DSM)が使用され、これは追加的にPUでコーティングされている(PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標))。シームレスのダイニーマ(Dyneema)(登録商標)基布(Traegergewebe)のPU−コーティングが特に好ましい。
【0022】
前記手袋の本発明による双方の層は、個々の手袋として、別々に重ねて装着することができるか、又は互いに堅固に結合されていてもよい。本発明による双方の層に加えて、前記手袋は、必要に応じて、さらに別の内層を、ポリエチレン繊維製の高強度層の上及び/又は下に有することができる。
【0023】
インナー手袋又は下に着ける手袋(Innen- oder Unterziehhandschuh)としての材料PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)の使用は、毛羽放出のわずかな傾向と同時に、耐切創性及び耐突刺性を通気性と併せて有する。薄い繊維に基づいて、手先の器用さは同様に極めて良好である。それにより、異なる4枚の手袋を使用する技術水準に比べて、かなりの生産性の増大となる。前記手袋の取り換えは、わずか数秒で行われることができ、かつ調達コストは低下されることができる。
【0024】
材料PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)並びにタイベック(Tyvek)(登録商標)について、工業的に常用の全ての繊維厚さ及び不織布厚さが前記手袋のために使用されることができる。前記材料厚さはその際に、例えば特殊用途に又は前記手袋のサイズにも適合されることができる。
【0025】
次の例に基づいて、本発明はより詳細に説明される。
【実施例】
【0026】
例1:
長時間試験において、サイズ5(約600gの平均質量、120mmの平均エッジ長さを有する)のポリシリコン破片100トンを、PEバッグ中へ手で個々に包装した。手袋として、本発明によるPE−タイベック(Tyvek)(登録商標)手袋を、PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)からなるアンダー手袋と組み合わせて使用した。PE−タイベック(Tyvek)(登録商標)手袋の消費量は4466双であり、かつPU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)アンダー手袋の消費量は208双であった。
【0027】
比較例1:
例1に類似して、別の長時間試験において、同様に、サイズ5(約600gの平均質量、120mmの平均エッジ長さを有する)のポリシリコン破片100トンを、PEバッグ中へ手で個々に包装した。しかし手袋として、純PE手袋を、PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)製のアンダー手袋と組み合わせて使用した。PE手袋の消費量は5067双であり、かつPU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)アンダー手袋の消費量は1123双であった。
【0028】
比較例は、本発明によるPE−タイベック(Tyvek)(登録商標)製の通気性手袋の使用により、PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)製の耐切創性及び耐突刺性の下に着ける手袋の消費量が約80%減少されることができたことを示している。
【0029】
例2:
クラス100のクリーンルーム中で、片(Stueck)あたり100gの質量を有する酸エッチングされたポリシリコン断片(Polysiliciumbruchstuecke)15個を、本発明によるPE−タイベック(Tyvek)(登録商標)からなる手袋を用いて、30秒間手で触った。下に着ける手袋として、PU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)を装着した。前記ポリ断片(Polybruchstuecke)を、引き続き、金属表面含量に関して調査した。結果は、第1表中で比較例2と対比されている。
【0030】
比較例2:
クラス100のクリーンルーム中で、片あたり100gの質量を有する酸エッチングされたポリシリコン断片15個を、純PE手袋を用いて、30秒間手で触った。下に着ける手袋として、同様にPU−ダイニーマ(Dyneema)(登録商標)を装着した。前記ポリ断片を、引き続き、金属表面含量に関して調査した。結果は、第1表中で例2と対比されている。
【0031】
第1表:
データ[単位:pptw](手で触った100gの重さのポリシリコン片の金属含量)
【表1】

【0032】
期待されたように、測定されたナトリウム値は、PE−タイベック(Tyvek)(登録商標)手袋の場合に、純PE手袋と比較して、平均値及びメディアンに関してわずかに低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度シリコン片を包装及び選別する際に使用するための手袋であって、
前記手袋の掌部がポリエチレンからなり、かつ前記手袋の甲部面が通気性でクリーンルーム適合性の繊維材料からなり、ここで両部は互いに堅牢に結合されている
ことを特徴とする、手袋。
【請求項2】
高純度シリコン片を包装及び選別する際に使用するための、上に着ける手袋と下に着ける手袋との組合せであって、
前記の上に着ける手袋の掌部がポリエチレンからなり、かつ前記の上に着ける手袋の甲部面が通気性でクリーンルーム適合性の繊維材料からなり、ここで両部は互いに堅牢に結合されており、かつ下に着ける手袋として、ポリウレタンでコーティングされており、極めて高い引張強さを有する高強度ポリエチレン繊維製の手袋が使用される
ことを特徴とする、組合せ。
【請求項3】
高純度シリコンを包装及び選別する際に使用するための多層手袋であって、
前記手袋の外層がポリエチレン製の掌部からなり、かつ前記手袋の甲部面が通気性でクリーンルーム適合性の繊維材料からなり、ここで両部は互いに堅牢に結合されており、かつ前記手袋の内側にある層の少なくとも1つが、ポリウレタンでコーティングされており、極めて高い引張強さを有する高強度ポリエチレン繊維からなる
ことを特徴とする、多層手袋。
【請求項4】
繊維材料が、高い密度を有するポリエチレン(HDPE)製の熱溶着された繊維からなる、請求項1から3までに記載の手袋。
【請求項5】
上に着ける手袋が専らポリエチレンからなることを特徴とする、請求項2記載の上に着ける手袋と下に着ける手袋との組合せ。

【公開番号】特開2011−80190(P2011−80190A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229621(P2010−229621)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】