説明

高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末並びにそれらの製造方法

【課題】医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス材料等の用途に用いることのできる、高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末並びにその製造方法を得る。
【解決手段】純度が99.9質量%以上、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、及び特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である、高純度水酸化カルシウム粉末である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸化カルシウム[消石灰、Ca(OH)]、炭酸カルシウム(CaCO)及び酸化カルシウム(生石灰、CaO)は、一般に石灰石を原料として製造され、建築材料や土壌改良剤など、様々な用途に用いられている。これらのカルシウム化合物は、医療用、食品添加物、電子デバイス材料等への用途への応用も期待されるが、それらの用途に用いるためには高純度のものを製造することが必要である。
【0003】
水酸化カルシウムは、一般に、コークスを使用して石灰石を焼成して生石灰とし、この生石灰を水で消火することにより製造されている。原料として石灰石という鉱物を使用するため、石灰石に由来する不純物が多く、また、燃料であるコークスに由来する不純物も加わるため、純度が低いのが現状である。そのため、一般的な製造方法により製造された水酸化カルシウムは、高純度であることを必要としない分野に限られ、医療用、食品添加物及び電子デバイス等に使用することができない。
【0004】
高純度水酸化カルシウムの製造方法として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、塩化カルシウムと水酸化カルシウム及び/又は酸化カルシウムから水溶液中でオキシ塩化カルシウムを晶出させ、該オキシ塩化カルシウムを分級して粗粒部のオキシ塩化カルシウムを得、次いで該粗粒部のオキシ塩化カルシウムを分解して水酸化カルシウムを得ることを特徴とする高純度水酸化カルシウムの製造方法が記載されている。
【0005】
炭酸カルシウムは、一般に、次のように製造される。すなわち、まず、コークスを使用して石灰石を焼成することにより生石灰を製造し、この生石灰を水で消化することにより消石灰を製造する。次に、この消石灰に炭酸ガスを吹き込むことにより、炭酸カルシウムを製造することができる。製造された炭酸カルシウムには、原料(石灰石)由来、燃料(コークス)由来の不純物が少なからず存在するので、炭酸カルシウムの純度は一般的に低い。
【0006】
特許文献3〜7には、不純物の少ない炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、ストロンチウムを不純物として含む生石灰を水と接触させて消石灰スラリーを生成させ、次いで該消石灰を水相と分離することにより、ストロンチウムの少なくとも一部を水相に溶出除去する工程等を含む、ストロンチウムの含有量の少ない炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、カルシウム塩と炭酸塩又は炭酸ガスとの反応において、CO/Caモル比を0.2〜0.9の範囲で反応を行うことを特徴とする高純度炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0009】
特許文献5には、金属汚染物質を含む炭酸カルシウム物質を溶解して水性溶液を形成すること、及び、溶解された金属汚染物質を含む水性溶液中に電流を通すことにより金属汚染物質を除去することによって炭酸カルシウム物質中の金属汚染物質を低減するための電気化学的方法が記載されている。
【0010】
特許文献6には、硝酸カルシウムの水溶液を炭酸アンモニウムの水溶液と反応させ母液に硝酸塩を含有する生成混合物から炭酸カルシウムを沈澱させる沈澱炭酸カルシウムの製造法において、〔i〕この方法に用いる硝酸カルシウム溶液として、硝酸アンモニウムの存在下に石灰を消化して溶液状の硝酸カルシウム及び水酸化アンモニウムを製造し、該溶液をろ過して固形分を除き、次いでろ液を加熱して水酸化アンモニウムを解離させかつ該溶液からアンモニアガスを発生させることによって製造したものを用い、〔ii〕用いる炭酸アンモニウムとして、アンモニアガス及び二酸化炭素ガスを水に吸収させると共に、該アンモニアガスとして好ましくは上記工程〔i〕で硝酸カルシウム溶液を加熱して発生させたものを用い、かつ〔iii〕用いる硝酸アンモニウムとして、硝酸アンモニウムを含有する母液から炭酸カルシウムを沈澱させる沈澱相から得られたものを用いることを特徴とする沈澱炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0011】
特許文献7には、水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応により、炭酸カルシウムを製造する方法において、水溶液又は懸濁液中の水酸化カルシウム濃度が0.5質量%以下であることを特徴とする高純度炭酸カルシウムの製造方法が記載されている。
【0012】
酸化カルシウムは、一般に、コークスを使用して石灰石を焼成して生石灰とし、この生石灰を粉砕、分級することにより製造されている。炭酸カルシウムと同様に、酸化カルシウムには原材料及び燃料由来の不純物が多く、純度が低いのが現状である。
【0013】
高純度の酸化カルシウムの製造方法として、特許文献8には、生石灰を湿式消化して消石灰乳とした後、その消石灰乳中の租粒子部分を分級又はフルイ分けにより除去する等により、極微細粒子で高純度の粉末生石灰(酸化カルシウム)の製造方法が記載されている。
【0014】
また、高純度の酸化カルシウムの製造方法として、特許文献9には、採掘した顕晶質石灰原石を破砕工程では加熱することなく結晶粒子付近まで破砕した後、該破砕物を粗粒、中粒、細粒に分別し、該中粒を原料として焼成することを特徴とする高純度低リン生石灰の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭58−156532号公報
【特許文献2】特公平2−5685号公報
【特許文献3】特開昭62−36021号公報
【特許文献4】特開昭63−156012号公報
【特許文献5】特表2003−535002号公報
【特許文献6】特表平11−500998号公報
【特許文献7】特開2005−206456号公報
【特許文献8】特開昭55−167126号公報
【特許文献9】特公平5−66890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
水酸化カルシウムは、食品添加物、電子デバイス材料、樹脂の充填剤等に使用することができるが、そのためには含有不純物元素濃度が極めて低い、高純度の水酸化カルシウムであることが必要である。特に、食品添加物として用いる場合には、所定の重金属(具体的には、Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCuであり、本明細書ではこれらの重金属を「特定重金属」という)が少ないことが必要である。具体的には、食品添加物として用いる場合には、特定重金属の合計量が1質量ppm以下であることが必要である。また、電子デバイス材料として用いる場合には、特定の元素(具体的には、Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びPであり、本明細書ではこれらの元素を「特定元素A」という)の含有量が低く、高純度であることが必要である。具体的には、電子デバイス材料として用いる場合には、特定元素Aの合計量が0.1質量ppm以下であることが必要である。なお、特定元素Aのそれぞれが0.01質量ppm以下であることが好ましい。また、医療用を含むさらに広い用途として用いるためには、上述の特定重金属及び特定元素Aの含有量が低いことに加え、Cu、Mn及びZn(本明細書ではこれらの元素を「特定元素B」という)の含有量が低く、高純度であることが必要であり、具体的には、それらの合計量が1質量ppm以下であることが必要である。
【0017】
炭酸カルシウムは、食品添加物、電子デバイス材料、樹脂の充填剤等に使用することができるが、そのためには含有不純物元素濃度が極めて低い、高純度の炭酸カルシウムであることが必要である。特に、食品添加物として用いる場合には、特定重金属が少ないことが必要である。具体的には、食品添加物として用いる場合には、特定重金属の合計量が1質量ppm以下であることが必要である。また、電子デバイス材料として用いる場合には、特定元素Aの含有量が低く、高純度であることが必要である。具体的には、電子デバイス材料として用いる場合には、特定元素Aの合計量が0.1質量ppm以下であることが必要である。なお、特定元素Aのそれぞれが0.01質量ppm以下であることが好ましい。また、医療用を含むさらに広い用途として用いるためには、上述の特定重金属及び特定元素Aの含有量が低いことに加え、特定元素Bの含有量が低く、高純度であることが必要であり、具体的には、それらの合計量が1質量ppm以下であることが必要である。
【0018】
酸化カルシウムは、食品添加物、電子デバイス材料、樹脂の充填剤等に使用することができるが、そのためには含有不純物元素濃度が極めて低い、高純度の酸化カルシウムであることが必要である。特に、食品添加物として用いる場合には、特定重金属が少ないことが必要である。具体的には、食品添加物として用いる場合には、特定重金属の合計量が1質量ppm以下であることが必要である。また、電子デバイス材料として用いる場合には、特定元素Aの含有量が低く、高純度であることが必要である。具体的には、電子デバイス材料として用いる場合には、特定元素Aの合計量が0.1質量ppm以下であることが必要である。なお、特定元素Aのそれぞれが0.01質量ppm以下であることが好ましい。また、医療用を含むさらに広い用途として用いるためには、上述の特定重金属及び特定元素Aの含有量が低いことに加え、不純物である特定元素Bの含有量が低く、高純度であることが必要であり、具体的には、それらの合計量が1質量ppm以下であることが必要である。
【0019】
そこで、本発明では、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス材料等の用途に用いることのできる、高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末並びにそれらの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、塩化マグネシウムと生石灰を反応率95モル%以上で反応させ、多量の水酸化マグネシウムを生成する際に、特定重金属とマグネシウムは共通イオン効果により、共に水酸化物として沈殿すること、さらに特定元素AのP等は多価のアニオンを形成し、親和性が強いマグネシウムとの化合物として沈殿し、水酸化マグネシウムに不純物を担持させ、副産物であるろ液(塩化カルシウム)を回収し、原料とすることで高純度水酸化カルシウム原料を得ることができることを見出した。本発明の製造方法を用いると、特定重金属並びに特定元素A及びB等の不純物が極めて少なく、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイスの原料等に利用できる、高純度水酸化カルシウム粉末を製造することができる。また、この高純度水酸化カルシウム粉末を原料として用いることにより、特定重金属並びに特定元素A及びBが極めて少なく、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイスの原料等に利用できる、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末を製造することができる。
【0021】
すなわち、本発明は、純度が99.9質量%以上、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下、及び特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である高純度水酸化カルシウム粉末である。好ましくは、特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下である高純度水酸化カルシウム粉末である。また、好ましくは、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である高純度水酸化カルシウム粉末である。
【0022】
本発明の水酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が、4m/g以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、純度が99.9質量%以上、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下、及び特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である、高純度炭酸カルシウム粉末である。好ましくは、特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下である、高純度炭酸カルシウム粉末である。また、好ましくは、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である、高純度炭酸カルシウム粉末である。
【0024】
また、本発明は、純度が99.9質量%以上、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下、及び特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である、高純度酸化カルシウム粉末である。好ましくは、特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下である、高純度酸化カルシウム粉末である。また、好ましくは、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である、高純度酸化カルシウム粉末である。
【0025】
また、本発明は、(1)生石灰と水とを用いて水酸化カルシウムスラリーを得る工程と、(2)水酸化カルシウムスラリーと塩化マグネシウム含有水溶液とを反応率95モル%以上で反応させて、水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーを得る工程と、(3)水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーから水酸化マグネシウム及びその他の不純物をろ過又は凝集沈殿することによって除去し、ろ液又は上澄液として塩化カルシウム水溶液を得る工程と、(4)水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が5〜20モル%となるように、塩化カルシウム水溶液に対して水酸化ナトリウム水溶液を添加し反応させ、水酸化カルシウム及びその他の不純物を含むスラリーを得る工程と、(5)水酸化カルシウム及びその他の不純物を含むスラリー中の水酸化カルシウムをろ過又は凝集沈殿させ、ろ液又は上澄液として精製塩化カルシウム水溶液を得る工程と、(6)水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が80〜95モル%となるように、精製塩化カルシウム水溶液に対して水酸化ナトリウム水溶液を添加し反応させ高純度水酸化カルシウムスラリーを得る工程と、(7)高純度水酸化カルシウムスラリーから高純度水酸化カルシウムを回収する工程とを含む、高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法である。
【0026】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法において、好ましくは、(6’)高純度水酸化カルシウムスラリーを得る工程の後に、昇温降温サイクルを2〜10サイクル繰り返す工程をさらに含む。この昇温降温サイクルとは、高純度水酸化カルシウムスラリーを60〜95℃まで昇温し、60〜180分間保持し、0〜40℃まで降温する昇温降温サイクルである。
【0027】
また、本発明は、上述の製造方法によって得られた高純度水酸化カルシウム粉末を、水を用いてスラリー化して、高純度水酸化カルシウムスラリーを調製する工程と、高純度水酸化カルシウムスラリーを昇温し、スラリーに対して硝酸の添加及びCOガスの供給を行うことによって、高純度炭酸カルシウムスラリーを得る工程と、高純度炭酸カルシウムスラリーから、高純度炭酸カルシウムを回収する工程とを含む、高純度炭酸カルシウム粉末の製造方法である。
【0028】
また、本発明は、上述の製造方法によって得られた高純度水酸化カルシウム粉末又は高純度炭酸カルシウム粉末を焼成する工程を含む、高純度酸化カルシウム粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス材料等の用途に用いることのできる、高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末並びにそれらの製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末並びにその製造方法である。具体的には、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末は、特定重金属並びに特定元素A及びB等の不純物の含有量が所定の値以下である高純度水酸化カルシウム粉末並びにその製造方法である。
【0031】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末は、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下である。そのため、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末を、食品添加物の用途に用いることができる。
【0032】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末は、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が、0.1質量ppm以下、好ましくは0.05質量ppm以下である。そのため、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末を、電子デバイス材料として用いることができる。この用途のために、さらに好ましくは、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末は、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である。
【0033】
また、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末は、特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下であることが好ましい。そのため、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末を、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス等の原料として用いることができる。
【0034】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末は、粉末表面への不純物の吸着を低減する点から、BET比表面積が4m/g以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の高純度炭酸カルシウム粉末は、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下である。そのため、本発明の高純度炭酸カルシウム粉末を、食品添加物の用途に用いることができる。
【0036】
本発明の高純度炭酸カルシウム粉末は、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が、0.1質量ppm以下、好ましくは0.05質量ppm以下である。そのため、本発明の高純度炭酸カルシウム粉末を、電子デバイス材料として用いることができる。この用途のために、さらに好ましくは、本発明の高純度炭酸カルシウム粉末は、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である。
【0037】
また、本発明の高純度炭酸カルシウム粉末は、特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下であることが好ましい。そのため、本発明の高純度炭酸カルシウム粉末を、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス等の原料として用いることができる。
【0038】
本発明の高純度酸化カルシウム粉末は、特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm以下である。そのため、本発明の高純度酸化カルシウム粉末を、食品添加物の用途に用いることができる。
【0039】
本発明の高純度酸化カルシウム粉末は、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が、0.1質量ppm以下、好ましくは0.05質量ppm以下である。そのため、本発明の高純度酸化カルシウム粉末を、電子デバイス材料として用いることができる。この用途のために、さらに好ましくは、本発明の高純度酸化カルシウム粉末は、特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である。
【0040】
また、本発明の高純度酸化カルシウム粉末は、特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下であることが好ましい。そのため、本発明の高純度酸化カルシウム粉末を、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス等の原料として用いることができる。
【0041】
次に本発明の製造方法について説明する。上述の本発明の高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末は、以下に述べる本発明の製造方法を用いることによって、はじめて製造可能となったのである。
【0042】
まず、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法について説明する。
【0043】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の原料は、生石灰である。本発明の生石灰は、鉱物を通常の方法で焼成して製造したものを用いることができる。また、本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造工程において、塩化マグネシウムを用いる。塩化マグネシウムの原料としては、海水、苦汁、潅水等を原料として用いることができる。
【0044】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(1)生石灰と水とを用いて水酸化カルシウムスラリーを得る工程を含む。具体的には、生石灰を水と反応させてスラリー化することにより、水酸化カルシウムスラリーを調製する。スラリー中の水酸化カルシウム濃度は、適宜選択することができるが、その濃度の具体例は、20重量%である。水は、純水、例えばイオン交換水を用いることが好ましい。以下の工程において用いられる水についても同様に、純水、例えばイオン交換水を用いることが好ましい。
【0045】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(2)水酸化カルシウムスラリーと、塩化マグネシウム含有水溶液とを反応させて、水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーを得る工程を含む。
【0046】
塩化マグネシウム含有水溶液は、水で希釈することにより、所定の濃度の塩化マグネシウム含有水溶液を調製することができる。塩化マグネシウム含有水溶液としては、塩化マグネシウムのみを含有する水溶液を用いることができる。しかしながら、後述するように、本発明の製造方法によると、特定重金属及び特定元素A及びB等の不純物を製造工程中に除去することができるので、塩化マグネシウム含有水溶液としては、塩化マグネシウム以外のその他の成分を含有する水溶液を用いることができる。具体的には、塩化マグネシウム含有水溶液としては、苦汁及びそれを所定濃度に希釈した水溶液を用いることが好ましい。塩化マグネシウム含有水溶液の濃度は、例えば、塩化マグネシウム濃度を10重量%程度とすることができる。
【0047】
水酸化カルシウムスラリーと、塩化マグネシウム含有水溶液との反応は、具体的には、次のように行うことができる。すなわち、塩化マグネシウム含有水溶液及び水酸化カルシウムスラリーをそれぞれ定量ポンプを用いて95モル%以上の反応率になるようにリアクターに送液する。リアクター内で塩化マグネシウム及び水酸化カルシウムの連続反応を行うことにより、水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーを作製することができる。この反応中に、特定重金属とマグネシウムは共通イオン効果により、共に水酸化物として沈殿する。また、特定元素Aであるリン(P)等は、多価のアニオンを形成し、親和性が強いマグネシウムとの化合物として沈殿する。特定元素Bについても同様である。したがって、この反応により得られるスラリーは、特定重金属の水酸化物並びに特定元素A及びBのマグネシウム化合物等の不純物を、水酸化マグネシウムと共に沈殿物として含むこととなる。
【0048】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(3)上述のように作製した水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーから、水酸化マグネシウム及びその他の不純物をろ過又は凝集沈殿することによって除去し、ろ液又は上澄液として塩化カルシウム水溶液を得る工程を含む。なお、この工程において、スラリーに含まれる特定重金属の水酸化物並びに特定元素A及びBのマグネシウム化合物等の不純物の大部分は、水酸化マグネシウムに担持され、除去される。したがって、ろ液又は上澄液として得られた塩化カルシウム水溶液中の不純物は極微量である。この結果、最終的に高純度の水酸化カルシウム粉末を得ることができる。
【0049】
上記塩化カルシウム水溶液を水を用いて希釈することにより、塩化カルシウム水溶液の濃度を調製することができる。塩化カルシウム濃度は適宜選択することができるが、例えば、約1.5モル/L(mol/リットル)とすることができる。
【0050】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(4)水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が5〜20モル%、具体例としては10モル%となるような量の水酸化ナトリウム(NaOH)を、水酸化ナトリウム水溶液として塩化カルシウム水溶液に添加し、反応させ、水酸化カルシウム及びその他の不純物を含むスラリーを得る工程を含む。
【0051】
具体的には、塩化カルシウムの反応率が10モル%となるように、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を調製する。例えば、塩化カルシウム濃度が約1.5モル/Lの場合には、水酸化ナトリウム濃度18.16モル/Lのものを用いることができる。次に、塩化カルシウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ定量ポンプを用いてリアクターに送液する。リアクター内で、塩化カルシウム及び水酸化ナトリウムの連続反応を行うことができる。
【0052】
リアクター内の反応スラリー(水酸化カルシウムスラリー)は、所定の滞留時間でリアクターよりオーバーフローさせることができる。滞留時間は、例えば30分間とすることができる。
【0053】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(5)水酸化カルシウム及びその他の不純物を含むスラリー中の水酸化カルシウムをろ過又は凝集沈殿させ、ろ液又は上澄液として精製塩化カルシウム水溶液を得る工程を含む。
【0054】
凝集沈殿の具体的方法は、上述のようにオーバーフローした反応スラリーを回収し、攪拌しながら、反応スラリー(水酸化カルシウムスラリー)に対し、凝集剤を添加して、スラリー中の水酸化カルシウムを凝集させ、沈降させる。凝集剤は、アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ共重合物、ポリアクリルアミド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物、アルクルアミノアクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物及び/又はポリアミジン塩酸塩等を主成分とした凝集剤を適宜選択することができ、添加量はスラリーの量に対して500質量ppmとなるように添加することができる。
【0055】
沈降後、上澄液を回収する。この上澄液は、精製塩化カルシウム水溶液である。
【0056】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(6)水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が80〜95モル%となるように、精製塩化カルシウム水溶液に対して水酸化ナトリウム水溶液を添加し反応させ、高純度水酸化カルシウムスラリーを得る工程を含む。
【0057】
具体的には、ろ液又は上澄液として回収した精製塩化カルシウム水溶液を攪拌しながら、水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が80〜95モル%、具体例としては90モル%となるような量の水酸化ナトリウムを精製塩化カルシウム水溶液に添加し、その後30分間水溶液を攪拌する。水酸化ナトリウム水溶液としては、例えば、18.16モル/Lの濃度のものを用いることができる。このとき、必要であれば、塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸及び/又は酪酸など他の無機酸及び/又は有機酸等の酸、メタノール、エタノール、エチレングルコール及び/又はグリセリン等のアルコール類、グルコース、マルトース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、シクロデキストリン、グリコーゲン、アミロペクチン、アミロース、デンプン及び/又はセルトース等の糖、その他界面活性剤を添加することで、得られる水酸化カルシウムの結晶形状及び粒子径を0.1μ〜10μの幅でコントロールすることができる。
【0058】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(6’)このようにして高純度水酸化カルシウムスラリーを得た後に、高純度水酸化カルシウムスラリーの昇温降温サイクルを2〜10サイクル繰り返す工程をさらに含むことが好ましい。昇温降温サイクルとしては、具体的には、高純度水酸化カルシウムスラリーを0.1〜5℃/分で60〜95℃、具体例としては1℃/分で85℃まで昇温し、60〜180分間、具体例としては120分間保持し、0.1〜5℃/分、具体例としては1℃/分で0〜40℃まで降温する昇温降温サイクルを用いることができる。水酸化カルシウムの溶解度は低温のほうが高く、結晶成長速度が高く、結晶粒子径が大きくなり、(昇温降温サイクル回数により結晶粒子径は約0.5μm〜10μmに変化する)高純度の結晶を得やすい。さらに、昇温降温サイクルを行うことにより、さらに結晶成長速度が向上し、昇温降温サイクルを行わないものに比べ、より純度の高い水酸化カルシウムを得ることができる。
【0059】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、(7)高純度水酸化カルシウムスラリーから、高純度水酸化カルシウムを回収する工程を含む。すなわち、高純度水酸化カルシウムスラリーを、ろ過し、水洗し、乾燥し、及び破砕することによって、本発明の高純度の水酸化カルシウム粉末を得ることができる。
【0060】
次に、本発明の高純度炭酸カルシウム粉末の製造方法について説明する。本発明の高純度炭酸カルシウム粉末は、上述の本発明の高純度水酸化カルシウム粉末を原料とすることにより、製造することができる。
【0061】
本発明の高純度炭酸カルシウム粉末の製造方法は、上述の高純度水酸化カルシウム粉末を、水を用いてスラリー化して、高純度水酸化カルシウムスラリーを調製する工程を含む。調製する水酸化カルシウムスラリーの濃度は適宜選択することができるが、例えば、7重量%とすることができる。
【0062】
本発明の高純度炭酸カルシウム粉末の製造方法は、高純度水酸化カルシウムスラリーを昇温し、スラリーに対して硝酸の添加及びCOガスの供給を行うことによって、高純度炭酸カルシウムスラリーを得る工程を含む。具体的には、上記高純度水酸化カルシウムスラリーを、ホモディスパーを用いて攪拌速度4000〜8000rpmで攪拌しながら、60℃〜90℃に昇温する。昇温後、水酸化カルシウム100gに対して0.05モル以下になるように、高純度水酸化カルシウムスラリーに対して硝酸を添加する。ここで、硝酸添加は、反応液のpHを下げ、カルサイト化しやすくするために行い、硝酸の代わりに、塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸及び/又は酪酸など他の無機酸及び/又は有機酸を用いることができる。不純物の混入を避けるため、高純度の硝酸等の無機酸及び/又は有機酸を用いることが好ましい。
【0063】
また、水酸化カルシウムとCOガスとの反応率が100モル%となるようにCOガスをスラリーに対して供給する。このときのCOの供給量(ガス流量)は、例えば、100〜200mL/分とすることができる。不純物の混入を避けるため、COガスは、高純度のものを用いることが好ましい。このとき、COガスの流量、反応時の温度、pHを調整することにより得られる炭酸カルシウムの結晶形状及び粒子径を0.1μ〜5μの幅でコントロールすることができる。
【0064】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法は、高純度炭酸カルシウムスラリーから、高純度炭酸カルシウムを回収する工程を含む。具体的には、高純度炭酸カルシウムスラリーを、ろ過し、水洗し、乾燥し、及び破砕することによって、本発明の高純度の炭酸カルシウム粉末を得ることができる。
【0065】
次に、本発明の高純度酸化カルシウム粉末の製造方法について説明する。
【0066】
上述の製造方法により得られた本発明の高純度水酸化カルシウム粉末又は高純度炭酸カルシウム粉末を、電気炉等を用いて、大気雰囲気中で焼成することによって、高純度酸化カルシウム粉末を得ることができる。焼成条件は、例えば、焼成温度1200℃及び焼成時間60分とすることができる。
【0067】
本発明の高純度水酸化カルシウム粉末、高純度炭酸カルシウム粉末及び高純度酸化カルシウム粉末は、医療用、食品添加物、樹脂充填剤及び電子デバイス材料として使用することができる。
【実施例】
【0068】
下記実施例1〜3及び比較例1〜4として得られた試料中のBET比表面積(m/g)、純度及び不純物元素濃度(質量ppm)を測定した。
【0069】
<不純物量の測定>
測定した微量不純物は、表1に記載の元素である。これらの元素の含有量は、ICP発光分光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、試料を酸溶解したのち測定した。純度は、100.0000質量%から、測定した表1に記載の不純物量の合計値を差し引いた値として算出した。
【0070】
<BET比表面積の測定>
比表面積測定装置(商品名:Macsorb1210、(株)マウンテック製)を使用して、ガス吸着法により比表面積を測定した。
【0071】
<実施例1>
原料となる生石灰は、純度90%以上の宇部マテリアルズ製のものを使用した。
【0072】
苦汁をイオン交換水で希釈し、塩化マグネシウム濃度10重量%の塩化マグネシウム含有水溶液を調製した。次に、生石灰をイオン交換水と反応させてスラリー化することにより、20重量%の水酸化カルシウムスラリーを調製した。
【0073】
上述のように調製した塩化マグネシウム含有水溶液及び水酸化カルシウムスラリーを、それぞれ定量ポンプを用いてリアクターに送液した。リアクター内で塩化マグネシウム及び水酸化カルシウムの連続反応を行うことにより、水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーを作製した。作製した水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーから、水酸化マグネシウム及びその他の不純物をろ過することによって除去し、ろ液として塩化カルシウム水溶液を回収した。
【0074】
次に、上記塩化カルシウム水溶液をイオン交換水を用いて希釈することにより、約1.4モル/Lの塩化カルシウム水溶液を作製した。次に、塩化カルシウムの反応率が10モル%となるように、18.16モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。このようにして得られた塩化カルシウム水溶液及び水酸化ナトリウム水溶液を、それぞれ定量ポンプを用いてリアクターに送液し、リアクター内で、塩化カルシウム及び水酸化ナトリウムの連続反応を行い、水酸化カルシウムを生成した。リアクター内の反応スラリー(水酸化カルシウムスラリー)は、30分間の滞留時間でリアクターよりオーバーフローさせた。オーバーフローした反応スラリーを回収し、攪拌しながら、反応スラリー(水酸化カルシウムスラリー)に対し、凝集剤をスラリーの量に対して500質量ppmとなるように添加して、スラリー中の水酸化カルシウムを凝集させ、沈降後、上澄液を回収した。
【0075】
回収した精製塩化カルシウム水溶液を攪拌しながら、18.16モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を、塩化カルシウムの反応率が90モル%となるように投入し、その後30分間攪拌した。
【0076】
得られた水酸化カルシウムスラリーを約1℃/分で85℃まで昇温し、120分保持、その後、約1℃/分で40℃まで降温した。この昇温降温サイクルを2サイクル繰り返した。
【0077】
昇温降温サイクルを2サイクル繰り返した後、水酸化カルシウムスラリーを、ろ過し、水洗し、乾燥し、及び破砕することによって、本発明の高純度の水酸化カルシウム粉末(実施例1)を得た。
【0078】
<実施例2>
実施例1により得られた水酸化カルシウム粉末37.5gを、イオン交換水500gを用いてスラリー化し、7重量%の水酸化カルシウムスラリーを調製した。
【0079】
上記水酸化カルシウムスラリーを、ホモディスパーを用いて攪拌速度5000〜7500rpmで攪拌しながら、60℃〜90℃に昇温した。昇温後、水酸化カルシウム100gに対して0.05モル以下になるように硝酸を添加した。
【0080】
その後、純度95%以上のCOガスを、水酸化カルシウムとCOガスとの反応率が100モル%となるように供給した。このときのCOの供給量(ガス流量)は、具体的には、100〜200mL/分だった。この反応により、炭酸カルシウムスラリーを得た。
【0081】
上記のようにして得られた炭酸カルシウムスラリーを、ろ過し、水洗し、乾燥し、及び破砕することによって、本発明の高純度の炭酸カルシウム粉末(実施例2)を得た。
【0082】
<実施例3>
実施例1で得られた水酸化カルシウム粉末を、電気炉を用いて大気雰囲気中で1300℃、60分焼成することによって、本発明の高純度酸化カルシウム粉末(実施例3)を得た。
【0083】
<比較例1>
関東化学株式会社製試薬(3N)の水酸化カルシウムを用いた。
【0084】
<比較例2>
宇部マテリアルズ株式会社製(商品名:3N−A)の炭酸カルシウムを用いた。
【0085】
<比較例3>
備北粉化工業株式会社製(商品名:ソフトン♯3200)の炭酸カルシウムを用いた。
【0086】
<比較例4>
関東化学株式会社製試薬(3N)の酸化カルシウムを用いた。
【0087】
表1に、上記実施例及び比較例の試料の不純物測定及びBET比表面積の測定結果を示す。表中、「<0.01」とは、測定対象不純物元素濃度が測定限界0.01質量ppm以下であったことを示す。また、「純度」欄の「>99.9」とは、測定対象不純物元素濃度の合計が、0.01質量%未満であったことを示す。
【0088】
表1に示すように、比較例1〜4のカルシウム化合物と比較し、実施例1〜3のカルシウム化合物中の不純物元素濃度は非常に低いことが明らかとなった。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度が99.9質量%以上、
特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、及び
特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である、高純度水酸化カルシウム粉末。
【請求項2】
特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下である請求項1記載の高純度水酸化カルシウム粉末。
【請求項3】
特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である、請求項1又は2記載の高純度水酸化カルシウム粉末。
【請求項4】
BET比表面積が、4m/g以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の高純度水酸化カルシウム粉末。
【請求項5】
純度が99.9質量%以上、
特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、
特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である、高純度炭酸カルシウム粉末。
【請求項6】
特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下である、請求項5記載の高純度炭酸カルシウム粉末。
【請求項7】
特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である、請求項5又は6記載の高純度炭酸カルシウム粉末。
【請求項8】
純度が99.9質量%以上、
特定重金属(Pb、Hg、Bi、Cd、Sn及びCu)の合計含有量が、1質量ppm以下、
特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の合計含有量が0.1質量ppm以下である、高純度酸化カルシウム粉末。
【請求項9】
特定元素B(Cu、Mn及びZn)の合計含有量が、1質量ppm以下である、請求項8記載の高純度酸化カルシウム粉末。
【請求項10】
特定元素A(Ba、Bi、Cd、Pb、Tl、Zr及びP)の含有量が、各々0.01質量ppm以下である、請求項8又は9記載の高純度酸化カルシウム粉末。
【請求項11】
(1)生石灰と水とを用いて水酸化カルシウムスラリーを得る工程と、
(2)水酸化カルシウムスラリーと塩化マグネシウム含有水溶液とを反応率95モル%以上で反応させて水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーを得る工程と、
(3)水酸化マグネシウム及びその他の不純物を含むスラリーから水酸化マグネシウム及びその他の不純物をろ過又は凝集沈殿することによって除去し、ろ液又は上澄液として塩化カルシウム水溶液を得る工程と、
(4)水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が5〜20モル%となるように、塩化カルシウム水溶液に対して水酸化ナトリウム水溶液を添加し反応させ、水酸化カルシウム及びその他の不純物を含むスラリーを得る工程と、
(5)水酸化カルシウム及びその他の不純物を含むスラリー中の水酸化カルシウムをろ過又は凝集沈殿させ、ろ液又は上澄液として精製塩化カルシウム水溶液を得る工程と、
(6)水酸化ナトリウムと塩化カルシウムとの反応率が80〜95モル%となるように、精製塩化カルシウム水溶液に対して水酸化ナトリウム水溶液を添加し反応させ高純度水酸化カルシウムスラリーを得る工程と、
(7)高純度水酸化カルシウムスラリーから高純度水酸化カルシウムを回収する工程と
を含む、高純度水酸化カルシウム粉末の製造方法。
【請求項12】
(6’)高純度水酸化カルシウムスラリーを得る工程の後に、昇温降温サイクルを2〜10サイクル繰り返す工程をさらに含み、
昇温降温サイクルが、高純度水酸化カルシウムスラリーを60〜95℃まで昇温し、60〜180分間保持し、40℃まで降温する昇温降温サイクルである、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12記載の高純度水酸化カルシウム粉末を、水を用いてスラリー化して、高純度水酸化カルシウムスラリーを調製する工程と、
高純度水酸化カルシウムスラリーを昇温し、スラリーに対して硝酸の添加及びCOガスの供給を行うことによって、高純度炭酸カルシウムスラリーを得る工程と、
高純度炭酸カルシウムスラリーから、高純度炭酸カルシウムを回収する工程と、
を含む、高純度炭酸カルシウム粉末の製造方法。
【請求項14】
請求項11若しくは12記載の高純度水酸化カルシウム粉末又は請求項13記載の高純度炭酸カルシウムを焼成する工程を含む、高純度酸化カルシウム粉末の製造方法。

【公開番号】特開2010−184841(P2010−184841A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30846(P2009−30846)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000108764)タテホ化学工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】