説明

高級エタノールアミンの製造方法

本発明は、触媒の存在下でグリコールアルデヒドとモノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンを反応させることによる、エタノールアミンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、エタノールアミンの製造に関する。
【0002】
エタノールアミンの製造は先行技術から知られている。
【0003】
Ullmann's Enzyklopaedie der technischen Chemie("Ethanolamine und Propa-nolamine"の章、Wiley-VCH、2005)には、エタノールアミンが商業ベースではエチレンオキシドと過剰のアンモニアとの反応によってのみ製造され、その際、この製造は通常は触媒としての水の存在下で行うことができることが記載される。反応生成物として、まず、モノエタノールアミン(MEOA)が発生し、これは後続反応において更なるエチレンオキシドと反応してジエタノールアミン(DEOA)及びトリエタノールアミン(TEOA)になる。この反応は、キネティック制御されて進行し、すなわち、この生成物混合物の組成は、実質的に、使用されるアンモニア対エチレンオキシドのモル比に依存する。
【0004】
そして、高級エタノールアミン、例えばDEOA及びTEOAは、好ましくは、アンモニア対エチレンオキシドのモル比が、5:1を下回る場合に得られる。しかし、この場合に、アンモニア対エチレンオキシドの比は、DE−A−10143424に記載される通り、使用されるエチレンオキシドが安全技術的理由から完全に反応し尽くすことを保証するために、1.01:1の値を下回ってはならず、というのも、エチレンオキシドはアンモニア及びアミンの存在下では爆発性に重合し得るからである。1.01:1〜5:1のモル比ですら、高級エタノールアミン、例えばDEOA及びTEOAの製造の際には、常にMEOAが関連生成物として発生し、というのも、全ての反応工程は実質的に同じ活性化エネルギーを有し、水の反応速度の同じ二次従属性(quadratische Abhaengigkeit)を示すからである。
【0005】
したがって、この製造の際に得られる反応混合物は、純粋な形で所望のエタノールアミンを獲得するために、通常は蒸留により分離される。
【0006】
このようにして得られるエタノールアミンの比は常に市場で要求される割合に相当するわけでないため、したがって、先行技術においては、エタノールアミンの変換を可能にする種々の方法が記載される。
【0007】
そして、US−A−4,264,776は、活性炭触媒の存在下で酸素を用いてトリエタノールアミンをジエタノールアミンへ触媒により酸化することを記載する。
【0008】
US−A−4,328,370には、高められた温度での水素化触媒の存在下でのアンモニアを用いた反応により、低級トリアルカノールアミンをモノアルカノールアミン及びジアルカノールアミンへ変換することが開示される。
【0009】
より高級なエタノールアミンへのMEOAの変換は、しかし、記載されない。
【0010】
DE−A−10059629には、所定の組成を有するエタノールアミン混合物の、当初組成物とは異なる組成を有するエタノールアミン混合物への変換が記載される。そして、例えばDEOAが、強力塩基の存在下での、MEOA及びTEOAの又はTEOA及びアンモニアの反応により得られる。この方法を用いて得られるDEOA収率は、通常は20質量%未満である。
【0011】
しかし、MEOAからのDEOAの製造は、常に少なくとも当量の量のTEOAを必要とし、この結果、高級エタノールアミンの割合を全体として高めることに成功しない。
【0012】
本発明の課題は、高級エタノールアミン、例えばDEOA及びTEOAを、高い収率及び選択率で合成することを可能にする、エタノールアミンの製造方法の提供にある。とりわけ、この方法は、エチレンオキシドの使用の場合に必要な安全性出費(Sicherheitsaufwand)を回避すべく、エチレンオキシドなしに実施できることが望ましい。
【0013】
本発明の課題は、触媒の存在下でグリコールアルデヒドとモノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンを反応させることによるエタノールアミンの製造方法により解決された。
【0014】
本発明の方法は、触媒の存在下で行われる。
【0015】
触媒として、原則的に全ての触媒が使用でき、これは、ニッケル、コバルト、鉄、銅、ルテニウム、クロム、マンガン、銅、モリブデン、タングステン、レニウム及び/又は元素の周期表の第8族及び/又は第9族及び/又は第10族及び/又は第11族の他の金属(2007年6月22日のIUPAC版における周期表)を含む。
【0016】
好ましくは、銅、コバルト及び/又はニッケルを含む触媒を使用する。
【0017】
前述の触媒は、通常は、助触媒で、例えばクロム、鉄、コバルト、マンガン、モリブデン、チタン、スズ、アルカリ群の金属、アルカリ土類群の金属及び/又はリンで、ドープされていることができる。
【0018】
好ましい一実施態様において、触媒は、触媒中の金属原子の総数に対して、25モルパーセント未満、好ましくは10モルパーセント未満、特に好ましくは1モルパーセント未満、とりわけ好ましくは0.4モルパーセント未満、特にとりわけ好ましくは0.1モルパーセントの貴金属原子を含有する。貴金属との概念は、本発明の範囲では、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金及び水銀からなる群から選択される金属を指す。
【0019】
触媒中に存在する金属原子数は、元素分析の既知の方法により、例えば原子吸収分光(AAS)、原子放出分光(AES)、レントゲン蛍光分析(RFA)又はICP−OES(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectrometry)により測定されることができる。
【0020】
触媒活性金属は、完全固体触媒(Vollkontakt)として、又は担体上で使用できる。このような担体として、例えば、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、キー又はこれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルモシリカート又はその混合物が考慮される。
【0021】
触媒活性金属は、例えばスポンジ触媒(Schwammkatalysator)、いわゆるラネー触媒の形で使用されることができる。ラネー触媒として、好ましくはラネーコバルト触媒、ラネーニッケル触媒及び/又はラネー銅触媒が使用される。
【0022】
ラネーによる触媒の製造は、例えば、アルミニウム−金属−合金を濃縮した苛性ソーダ液で処理することにより行われ、その際、このアルミニウムは溶出され、金属性スポンジが発生する。ラネーによる触媒の製造は、例えば、Handbook of Heterogeneous Catalysisに記載される(M. S. Wainright、G. Ertl, H. Knoezinger, J. Weitkamp (eds.), Handbook of Heterogeneous Catalysis, Vol. 1 , Wiley-VCH, Weinheim, Germany 1997, 64頁〜)。このような触媒は、例えばRaney(R)触媒としてGrace社から又はJohnson MattheyのSponge Metal(R)触媒として入手される。
【0023】
好ましい一実施態様において、いわゆる触媒前駆体の還元により製造される触媒が本発明の方法へ使用される。
【0024】
触媒前駆体は、1又は複数の触媒活性成分及び任意に担体材料を含む活性材料を含む。
【0025】
触媒活性成分は、前述の金属の酸素含有化合物、例えば、金属酸化物又は水酸化物、例えばCoO、NiO、CuO及び/又はその混合酸化物である。
【0026】
本願の範囲では、触媒活性成分との概念は、前述の酸素含有金属化合物のために使用されるが、しかし、この酸素含有化合物が自体で既に触媒活性であることを含意するものでない。触媒活性成分は、通常は、行われた還元の後初めて本発明の反応における触媒活性を示す。
【0027】
触媒前駆体は既知の方法に従って、例えば沈殿、沈降又は含浸によって製造することができる。
【0028】
好ましい一実施態様において、担体材料の含浸(注入)により製造される触媒前駆体(含浸された触媒前駆体)が、本発明の方法へ使用される。
【0029】
含浸の際に使用される担体材料は、例えば、粉末又は成形体、例えばストランド、タブレット、球又はリングの形で使用されることができる。流動床反応器に適した担体材料は、好ましくは噴霧乾燥により得られる。
【0030】
担体材料として、例えば、炭素、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、キー又はこれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルモシリカート又はその混合物が考慮される。
【0031】
前述の担体材料の含浸は、通常法(A. B. Stiles, Catalyst Manufacture- Laboratory and Commercial Preperations, Marcel Dekker, New York, 1983)に応じて行われることができ、例えば1又は複数の含浸工程において金属塩溶液を設けることにより行われることができる。金属塩として、通常は、相応する触媒活性成分又はドープ元素の水溶性金属塩、例えば硝酸塩、酢酸塩又は塩化物が考慮され、例えば硝酸Co又は塩化Coである。続いて、この含浸された担体材料は、通常は乾燥され、場合によりか焼される。
【0032】
含浸は、いわゆる「incipient wetness方法」により行われることもでき、その際、担体材料は、その水吸収能力に相応して、最大で、含浸溶液での飽和まで湿潤される。しかし、含浸は、上清溶液中で行うこともできる。
【0033】
多工程の含浸法では、個々の含浸工程の間に乾燥させ、かつ場合によりか焼させることが目的に適う。多工程の含浸は、担体材料に大量に金属塩を加えることが望ましい場合に好ましく適用されることができる。
【0034】
複数の金属成分を担体材料に設けるには、含浸は、全ての金属塩で同時に又は個々の金属塩の任意の順序で相次いで行われることができる。
【0035】
更なる好ましい一実施態様において、触媒前駆体は、その全成分の一緒の沈殿(混合沈殿)を介して製造される。このためには、通常は、相応する活性成分、ドープ元素の溶解性化合物及び場合によって担体材料の溶解性化合物が液体中で加熱及び撹拌下で、沈殿が完全になるまで、沈殿剤と混合される。
【0036】
液体として通常は水が使用される。
【0037】
活性成分の溶解性化合物として、通常は、相応する金属塩、例えば前述の金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物が考慮される。
【0038】
担体材料の溶解性化合物として、通常は、Ti、Al、Zr、Siその他の水溶性化合物、例えば、前記元素の水溶性硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物が使用される。
【0039】
ドープ元素の溶解性化合物として、通常は、ドープ元素の水溶性化合物、例えば、前記元素の水溶性硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩又は塩化物が使用される。
【0040】
触媒前駆体は、さらに、沈殿により製造できる。
【0041】
沈殿とは、難溶性又は不溶性担体材料を液体中に懸濁し、この後に、溶解性化合物、例えば相応する金属酸化物の溶解性金属塩を添加し、次いで、これを沈殿剤の添加により懸濁された担体へと沈殿させる製法が理解される(例えば、EP−A2−1106600、4頁及びA. B. Stiles, Catalyst Manufacture, Marcel Dekker, Inc., 1983, 15頁に記載)。
【0042】
難溶性又は不溶性担体材料として、例えば、炭素化合物、例えばグラファイト、カーボンブラック及び/又は活性炭、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、キー又はこれらの混合物)、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、ゼオライト、アルモシリカート又はその混合物が考慮される。
【0043】
担体材料は、通常は粉末として又は破砕物として存在する。
【0044】
担体材料が懸濁される液体として、通常は、水が使用される。
【0045】
溶解性化合物として、活性成分又はドープ元素の前述の溶解性化合物が考慮される。
【0046】
通常は、沈殿反応の際に溶解性化合物は、沈殿剤の添加によって難溶性又は不溶性の塩基性塩として沈殿する。
【0047】
沈殿剤として、好ましくはアルカリ液、特に鉱物塩基が、例えばアルカリ金属塩基が使用される。沈殿剤の例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム又は水酸化カリウムである。
【0048】
沈殿剤として、アンモニウム塩、例えばアンモニウムハロゲン化物、アンモニウム炭酸塩、アンモニウム水酸化物又はアンモニウムカルボン酸塩が使用できる。
【0049】
この沈殿反応は、例えば温度20〜100℃、特に30〜90℃、とりわけ50〜70℃で実施されることができる。
【0050】
沈殿反応の際に得られる沈殿物は、一般には化学的に不均一であり、かつ通常は、使用される金属の酸化物、酸化物水和物、水酸化物、カーボナート及び/又はヒドロゲンカーボナートの混合物を含む。沈殿物の濾過性については、沈殿物をエージングすれば、つまり沈殿後さらにしばらくの時間、場合により加熱又は空気の導通下で放置すれば、好ましいと実証されている。
【0051】
この沈殿方法により得られる沈殿物は、通常は、洗浄、乾燥、か焼及びコンディショニングにより、加工される。
【0052】
洗浄後に、沈殿物は一般に80〜200℃、好ましくは100〜150℃で乾燥され、引き続きか焼される。
【0053】
か焼は一般に、温度300〜800℃で、好ましくは350〜600℃、特に450℃〜550℃で行う。
【0054】
か焼後に、沈殿反応により得られる粉末状触媒前駆体は通常はコンディショニングされる。
【0055】
コンディショニングは、例えば、沈殿触媒を所定の粒径への粉砕により調節することで、行われることができる。
【0056】
粉砕後に、沈殿反応により得られる触媒前駆体は、成形助剤、例えばグラファイト又はステアリン酸と混合され、そして成形体へと更に加工されることができる。
【0057】
成形の慣用の方法は、例えば、Ullmann [Ullmann's Encyclopedia Electronic Release 2000, "Catalysis and Catalysts"章, 28-32頁]に、そしてErtl et al.[Ertl, Knoezinger, Weitkamp, Handbook of Heterogenoeous Catalysis, VCH Weinheim, 1997, 98頁〜]により記載される。
【0058】
前述の文献箇所に記載されるように、この成形プロセスにより成形体は全ての空間形態で、例えば丸い、角がある、縦長等で、例えばストランド、タブレット、顆粒、球、シリンダー又は粒の形で得られることができる。成形の慣用の方法は、例えば押出、タブレット化、すなわち、機械的プレス処理又はペレット化、すなわち、環状の及び/又は回転する運動によるコンパクト化である。
【0059】
コンディショニング又は成形後に、通常は温度処理が行われる。温度処理の際の温度は、通常は、か焼の際の温度に相応する。
【0060】
沈殿反応により得られる触媒前駆体は、触媒活性成分を、その酸素含有化合物の混合物の形で、すなわち、特に酸化物、混合酸化物及び/又は水酸化物として含有する。このようにして製造された触媒前駆体は、それ自体で貯蔵できる。
【0061】
特に好ましくは、例えば次の触媒前駆体である:
EP−A−0636409に開示される酸化物混合物、これは水素を用いた還元前にCo55〜98質量%(CoOとして計算して)、リン0.2〜15質量%(H3PO4として計算して)、マンガン0.2〜15質量%(MnO2として計算して)及びアルカリ金属0.2〜5.0質量%(M2O(M=アルカリ金属)として計算して)を含有する、又は
EP−A−0742045に開示される酸化物混合物、これは水素を用いた還元前にCo55〜98質量%(CoOとして計算して)、リン0.2〜15質量%(H3PO4として計算して)、マンガン0.2〜15質量%(MnO2として計算して)及びアルカリ金属0.05〜5質量%(M2O(M=アルカリ金属)として計算して)を含有する、又は
EP−A−696572に開示される酸化物混合物、これは水素を用いた還元前にZrO220〜85質量%、銅の酸素含有化合物1〜30質量%(CuOとして計算して)、ニッケルの酸素含有化合物30〜70質量%(NiOとして計算して)、モリブデンの酸素含有化合物0.1〜5質量%(MoO3として計算して)及び0〜10質量%のアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物(Al23又はMnO2として計算して)を含有する、例えば、引用される文献の8頁に開示される触媒であって組成ZrO231.5質量%、NiO50質量%、CuO17質量%及びMoO31.5質量%を含有するもの、又は
EP−A−963975に開示されている酸化物混合物、これは水素を用いた還元前にZrO22〜40質量%、銅の酸素含有化合物1〜30質量%(CuOとして計算して)、ニッケルの酸素含有化合物15〜50質量%(NiOとして計算して)(この際、Ni:Cuのモル比は1より大きい)、コバルトの酸素含有化合物15〜50質量%(CoOとして計算して)、アルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%(Al又はMnOとして計算して)を含有し、かつモリブデンの酸素含有化合物を含まない、例えば、引用される文献の17頁に開示される、組成Zr33質量%(ZrOとして計算して)、Ni28質量%(NiOとして計算して)、Cu11質量%(CuOとして計算して)及びCo28質量%(CoOとして計算して)を有する触媒Aである。
【0062】
このようにして得られる触媒前駆体は、通常還元される。
【0063】
乾燥した、通常は粉末状の触媒前駆体の還元は、高められた温度で、運動するか又は運動しない還元炉中で実施されることができる。
【0064】
還元剤として、通常は、水素又は水素含有ガスが使用される。
【0065】
水素は、一般に技術的に純粋な状態で使用される。水素は、水素含有ガスの形でも、すなわち、他の不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン又は二酸化炭素とのミックスでも使用されることができる。水素流は、循環ガスとして還元へと返送されてもよく、これは場合によっては新鮮水素と混合され、場合によっては凝縮による水の除去後である。
【0066】
触媒前駆体の還元は、好ましくは反応器中で行われ、この中では触媒成形体が固定床として配置されている。特に好ましくは、触媒前駆体の還元は、グリコールアルデヒドとジエタノールアミン及び/又はトリエタノールアミンとの後続の反応が行われる反応器と同一の反応器中で行われる。さらに、触媒前駆体の還元は流動層反応器中で流動層中で行われることができる。
【0067】
触媒前駆体の還元は、通常は、還元温度50〜600℃、特に100〜500℃、特に好ましくは150〜400℃で行われる。
【0068】
水素分圧は、通常は、1〜300bar、特に1〜200bar、特に好ましくは1〜100barであり、その際、ここでの及び以下の圧力の記載はabsolutで測定した圧力に関する。
【0069】
還元期間は、好ましくは1〜20時間、特に好ましくは5〜15時間である。
【0070】
還元の間に、溶媒が供給されることができ、これは発生した反応水を排出するため及び/又は例えば反応器をより迅速に加熱することができようにするため及び/又は還元の間に熱をより良好に排出することができるようにするためである。溶媒は、ここでは超臨界でも供給されることができる。
【0071】
適した溶媒は、前記した溶媒が使用できる。好ましい溶媒は、水;エーテル、例えばメチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル又はテトラヒドロフラン;又はアミド、例えばジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド又はラクタム、例えばN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム又はN−エチルカプロラクタムである。特に好ましくは、水又はテトラヒドロフランである。適した溶媒として、同様に適した混合物が考慮される。
【0072】
触媒前駆体の還元は、懸濁物中で、例えば撹拌オートクレーブ中で行われることもできる。この温度は一般に、50〜300℃、特に100〜250℃、より好ましくは120〜200℃の範囲にある。
【0073】
懸濁物中の還元は、通常は、水素分圧1〜300bar、好ましくは10〜250bar、特に好ましくは30〜200barで実施される。溶媒として、前述の溶媒が考慮される。
【0074】
懸濁物中の還元期間は、好ましくは5〜20時間、特に好ましくは8〜15時間である。
【0075】
触媒は、還元後に不活性条件下で取り扱われることができる。好ましくは、触媒は不活性ガス、例えば窒素下で、又は不活性液体、例えばアルコール、水、又は触媒が使用されるそのつどの反応の生成物下で、取り扱われかつ貯蔵されることができる。場合によって、触媒からは本来の反応の開始前に不活性液体が取り除かれなくてはならない。
【0076】
不活性物質下の触媒の貯蔵は、触媒の複雑でなくかつ危険でない取り扱い及び貯蔵を可能にする。
【0077】
しかし、触媒は還元後に、酸素含有ガス流、例えば空気又は空気と窒素の混合物と接触されることもできる。これによって、不動態化した触媒が得られる。不動態化した触媒は、一般に保護性酸化物層を有する。この保護性酸化物層によって、触媒の取り扱い及び貯蔵は簡易になり、このため、例えば反応器への不動態化した触媒の組込が簡易になる。
【0078】
好ましい一実施態様において、グリコールアルデヒドと活性化した触媒が接触させられる。
【0079】
活性化した触媒は、触媒前駆体の還元により又は不動態化した触媒の還元により製造されることができる。
【0080】
本発明の範囲では、活性化した触媒は、触媒前駆体の還元により製造され、かつ、還元の間及び後グリコールアルデヒドとの接触まで不活性条件下で取り扱われた触媒である。
【0081】
本発明の範囲では、活性化した触媒は、不動態化した触媒の還元により製造され、かつ、還元の間及び後グリコールアルデヒドとの接触まで不活性条件下で取り扱われた触媒でもある。
【0082】
このような触媒内では、金属は一部還元した形で存在し、このような触媒は一般に保護性酸化物層を有しない。触媒の活性化の尺度は、還元度である。
【0083】
好ましい一実施態様において、活性化した触媒の還元度は30%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは75%以上、とりわけ90%以上である。
【0084】
好ましい一実施態様において、不動態化した触媒の還元により製造された活性化した触媒は、活性化後に、少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、特に好ましくは少なくとも4%、不動態化した触媒の還元度を超える還元度を有する。
【0085】
この還元度の測定は一般に、「温度プログラム化還元」(TPR)により行われる。
【0086】
温度プログラム化還元は、時間単位辺り一定の温度向上を伴う、水素/不活性ガス流中の触媒前駆体の試料の加熱により行われる。好ましくは、その構成がMonti 及びBaikerによる提案[D. A. M. Monti, A. Baiker, "Temperatur-Programmed Reduction. Parametric Sensitivity and Estimation of Kinetic Parameters", J. Catal. 83 (1983) 323-335]を基礎とする配置が使用される。
【0087】
この測定配置では、粉末状試料がゆるいばら材(Schuettung)として2つのガラスウールプラグの間のU状ガラス管へと充填される。このU管は、セラミック製の管型炉中にある。この試料は、アルゴン流中で200℃まで加熱され、ここで30分間維持されることにより、TPR装置中への組込後にまず乾燥される。引き続き50℃に冷却される。この試料は、5K/分の加熱勾配で50℃から終温度650℃に加熱される。試料温度をこのばら材付近で熱電対シースにおいて測定し、2sの間隔で記録する。U管を通じて10%の水素を有する水素/アルゴン流を導通する。排ガス中の水素含有量は、伝熱検出器を用いて測定される。水素消費を温度の依存性において記録する。統合することにより、全H2消費が検査された温度間隔において算出される。
【0088】
このH2消費から還元度RGが以下の式に応じて計算されることができる:
RG=100%−100%*[(触媒試料の測定した水素消費(TPR測定から))/(完全酸化物性触媒の理論水素消費、これは試料の金属含有量及び反応化学量論に基づいて計算される)]。
【0089】
理論水素消費の計算では、Ni、Cu及びCoがNiO、CuO及びCoOとして存在し、前述の助触媒は還元しないで存在するという仮定がなされる。還元度の計算の際には、つまり、通常は、TPR測定の条件下で相応する金属へと還元される金属酸化物のみが考慮される。例えば、ZrO2は、TPR測定の条件下では還元されず、このため、Zr含有量は還元度の測定の際に考慮されない。
【0090】
触媒の活性化は、好ましくは触媒前駆体の還元により行われる。触媒前駆体の還元は、既に前記してある。
【0091】
触媒の活性化は、不動態化した触媒の還元によっても行われることができる。不動態化した触媒の還元は、前記したように、水素又は水素含有ガスを用いた不動態化した触媒の処理により行われることができる。この還元条件は、一般に、触媒前駆体の還元の際に適用される還元条件に相応する。活性化により、通常は、保護性不動態化層が帳消しにされる。
【0092】
活性化した触媒は、その活性化的還元の間及び後に不活性条件下で取り扱われなくてはならない。
【0093】
好ましくは、活性化した触媒は不活性ガス、例えば窒素下で、又は不活性液体、例えばアルコール、水、又は触媒が使用されるそのつどの反応の生成物下で、取り扱われ、かつ貯蔵されることができる。場合によって、活性化した触媒からは本来の反応の開始前に不活性液体が取り除かれなくてはならない。
【0094】
前記したように、グリコールアルデヒドは好ましい一実施態様において活性化した触媒と接触される。
【0095】
好ましくは、活性化した触媒は接触まで活性化の間及び後に不活性条件下で取り扱われる。好ましくは、グリコールアルデヒドと活性化した触媒の接触もまた、不活性条件、特に好ましくは水素又は水素含有ガスの存在下で行われる。
【0096】
好ましい一実施態様において、活性化した触媒はグリコールアルデヒドと反応器中で接触させられ、この中では前もって既に触媒の活性化が行われている。本発明により、活性化した触媒は接触まで活性化の間及び後に不活性条件下で、好ましくは水素又は水素含有ガスの存在下で取り扱われる。代わりに、活性化した触媒はその活性化後に窒素又は他の適した不活性ガスの存在下で貯蔵されることができる。このために、通常は、水素流中の不活性ガスの割合が活性化後に漸次高められる。好ましくは、グリコールアルデヒドの計量供給もまた不活性条件、好ましくは水素又は不活性ガスの存在下で行われる。
【0097】
更なる好ましい一実施態様において、活性化した触媒は活性化後に不活性液体と接触させられる。
【0098】
好ましくは、活性化した触媒と不活性液体との接触は、不活性液体が活性化した触媒へと計量供給されることにより行われる。好ましくは、本発明によるグリコールアルデヒドの反応は、触媒の活性化も実施された反応器と同一の反応器中で行われる。
【0099】
この触媒は、しかし、不活性液体と一緒に反応器へと移送されることもでき、この中でグリコールアルデヒドとの接触が行われる。グリコールアルデヒドは既に装入物として反応器中に存在してよく、しかし、これは反応器へ触媒の移送後に計量供給されることもできる。好ましくは、活性化した触媒とグリコールアルデヒドとの接触は不活性条件下で、特に好ましくは水素又は不活性ガスの存在下で行われる。
【0100】
本発明の方法においては、グリコールアルデヒドは、モノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンと反応させられる。
【0101】
グリコールアルデヒドは市販されており、例えばエチレングリコールの酸化により製造されることができる(例えばJP3246248及びJP3279342を参照のこと)。グリコールアルデヒドは好ましくはホルムアルデヒドと一酸化炭素及び水素との反応により合成され、これは例えばUS2009012333、US2008081931、US2007249871、EP1697291、US4503260及びUS4322568に記載されている通りである。
【0102】
さらに、本発明の方法においてモノエタノールアミン(MOEA)及び/又はジエタノールアミン(DEOA)が使用される。
【0103】
MOEA及びDEOAは、エチレンオキシドとアンモニアの反応により得られることができる。この製造方法に関する詳細な概要は、UIImann's (Ullmann's Enzyklopaedie der technischen Chemie, "Ethanolamine und Propanolamine"の章, Wiley-VCH, 2005)に見出される。
【0104】
好ましい一実施態様においてMEOAが使用され、エチレンオキシドの使用なしにグリコールアルデヒドとアンモニアとの反応により得られたものである。
【0105】
グリコールアルデヒドとアンモニアの反応は、好ましくは水素及び触媒の存在下で行われ、その際、触媒を触媒前駆体の還元により又は不動態化した触媒の還元により活性化し、このことは、この反応が溶媒の存在下で行われること、そして、グリコールアルデヒドが活性化した触媒と接触されることにより特徴付けられる。
【0106】
触媒として好ましくは、前記したように触媒前駆体の又は不動態化した触媒の還元により活性化された触媒が使用できる。
【0107】
グリコールアルデヒドとアンモニアの反応は水素の存在下で、好ましくは溶媒中で行われる。
【0108】
溶媒として、反応条件下で不活性に振る舞い、かつ、反応出発材料及び反応生成物にとって十分な溶解性を示す全ての溶媒が使用できる。
【0109】
好ましい溶媒は、水;エーテル、例えばメチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフラン(THF)である。
【0110】
溶媒として、前もって列記した溶媒の適した混合物も考慮される。
【0111】
特に好ましい溶媒はTHF及び水である。
【0112】
特に好ましい溶媒として、グリコールアルデヒドとアミン化剤との本発明の反応の反応生成物も考慮される。
【0113】
溶媒は、それぞれ反応混合物の全質量に対して5〜95質量%、好ましくは20〜70%、特に好ましくは30〜60%の割合で使用でき、その際、反応混合物の全質量は、本方法において使用される出発物質(グリコールアルデヒド及びアミン化剤)及び溶媒の質量の合計からである。
【0114】
アンモニア対使用されるグリコールアルデヒドの比は、通常は、1:100〜100:1、好ましくは1:1〜50:1、特に好ましくは1:1〜45:1の範囲にある。
【0115】
この反応は通常は圧力1〜500bar、好ましくは10〜350barで、特に好ましくは50〜300bar、とりわけ特に好ましくは圧力80〜220barで実施される。この圧力維持又は圧力制御は、通常は、水素の計量供給を介して行われる。
【0116】
グリコールアルデヒドとアンモニアの反応は一般に温度15〜350℃、好ましくは50〜250℃、特に好ましくは80〜220℃で行われる。特に好ましい一実施態様においては、アンモニア対使用されるグリコールアルデヒドの比は好ましくは1:100〜100:1、特に好ましくは1:1〜50:1、特にとりわけ好ましくは1:1〜45:1である。この特に好ましい一実施態様において圧力は好ましくは1〜200bar、特に好ましくは10〜150bar、特にとりわけ好ましくは50〜120barであり、この温度は好ましくは20〜300℃、特に好ましくは50〜250℃、特にとりわけ好ましくは80〜120℃である。この特別な一実施態様において、グリコールアルデヒドの反応の際に一般にMEOAが高い選択率及び収率で形成される。
【0117】
モノエタノールアミンの製造のためのアンモニア及びグリコールアルデヒドの反応は、連続的に、不連続的に又は半連続的に実施されることができる。典型的な反応器は、例えば高圧−撹拌槽−反応器、オートクレーブ、固定相反応器、流動層反応器、移動床、循環流動層、塩浴反応器、プレート熱交換器を反応器として、複数の段を有する/又は段の間の熱交換又は部分流の排出/供給なしの棚段反応器、可能性のある態様においてラジアル流−又はアキシアル流反応器、連続的に撹拌される槽、ブロー反応器等としてであり、その際、そのつど所望される反応条件(例えば、温度、圧力及び滞留時間)に適した反応器が使用される。
【0118】
好ましくは、本発明の方法は高圧−撹拌槽−反応器、固定床反応器又は流動層反応器において実施される。
【0119】
特に好ましい一実施態様において、本発明の方法は1又は複数の固定床反応器中で実施される。
【0120】
更なる特別に好ましい一実施態様において、グリコールアルデヒドの反応は高圧−撹拌槽−反応器中で行われる。
【0121】
グリコールアルデヒド及びアンモニアは一緒になって反応器の反応区域へと添加されることができ、例えば、予備混合した反応物流として、又は別個に添加されることができる。別個の添加では、グリコールアルデヒド及びアミン化剤は、同時に、時間をずらしてして又は相次いで、反応器の反応区域へ添加されることができる。
【0122】
この滞留時間は不連続方法における実施の際に一般に15分〜72時間、好ましくは60分〜24時間、特に好ましくは2時間〜10時間である。
【0123】
連続方法における実施の際には、この触媒負荷は一般に0.01kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h〜3.0kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h、好ましくは0.05kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h〜2.0kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h、特に好ましくは0.1kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h〜1.5kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/hの範囲である。
【0124】
本発明の、グリコールアルデヒドとアンモニアの、モノエタノールアミンへの反応に続き、このようにして製造したモノエタノールアミンの単離が当業者に知られた方法に応じて、例えば蒸留により行われることができる。
【0125】
更なる好ましい一実施態様において、当該本発明の方法を用いてグリコールアルデヒドとMEOAとの反応により得られたDEOAが本発明の方法へと使用される。
【0126】
更なる使用材料として、水素が本発明の方法へと使用される。
【0127】
水素は、一般に技術的に純粋な状態で使用される。水素は、水素含有ガスの形でも、すなわち、他の不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン又は二酸化炭素とのミックスでも使用されることができる。ガスが、使用される触媒のための接触毒、例えばCOを含有しない場合及び含有しない限り、水素含有ガスとして、例えばリホーミング排ガス、ラフィネートガスその他が使用されることができる。しかし、好ましくは、純粋な水素又は本質的に純粋な水素が本方法へと使用され、例えば、99質量%超の水素、好ましくは99.9質量%超の水素、特に好ましくは99.99質量%超の水素、とりわけ99.999質量%超の水素の含有量を有する水素が使用される。
【0128】
グリコールアルデヒドとMEOA及び/又はDEOAの反応は水素の存在下で、好ましくは溶媒中で行われる。
【0129】
溶媒として、反応条件下で不活性に振る舞い、かつ、反応出発材料及び反応生成物にとって十分な溶解性を示す全ての溶媒が使用できる。
【0130】
好ましい溶媒は、水;エーテル、例えばメチルt−ブチルエーテル、エチルt−ブチルエーテル、ジオキサン又はテトラヒドロフラン(THF)である。溶媒として、前もって列記した溶媒の適した混合物も考慮される。
【0131】
溶媒は、それぞれ反応混合物の全質量に対して5〜95質量%、好ましくは20〜70%、特に好ましくは30〜60%の割合で使用でき、その際、反応混合物の全質量は、本方法において使用される出発物質(グリコールアルデヒド及びMEOA及び/又はDEOA)及び溶媒の質量の合計からである。
【0132】
MEOA及びDEOA対使用されるグリコールアルデヒドの比は、通常は、1:100〜100:1、好ましくは1:1〜50:1、特に好ましくは5:1〜45:1の範囲である。
【0133】
この反応は通常は圧力1〜500bar、好ましくは10〜350barで、特に好ましくは圧力50〜300bar、とりわけ特に好ましくは80〜220barで実施される。この圧力維持又は圧力制御は、通常は、水素の計量供給を介して行われる。
【0134】
グリコールアルデヒドとMEOA及び/又はDEOAの反応は一般に温度15〜350℃、好ましくは50〜250℃、特に好ましくは80〜220℃で行われる。
【0135】
本発明による方法は、連続的に、不連続に又は半連続的に実施されることができる。
【0136】
典型的な反応器は例えば高圧−撹拌槽−反応器、オートクレーブ、固定相反応器、流動層反応器、移動床、循環流動層、塩浴反応器、プレート熱交換器を反応器として、複数の段を有する/又は段の間の熱交換なしの又は部分流の排出/供給なしの棚段反応器、可能性のある態様においてラジアル流−又はアキシアル流反応器、連続的に撹拌される槽、ブロー反応器等としてであり、その際、そのつど所望される反応条件(例えば、温度、圧力及び滞留時間)に適した反応器が使用される。
【0137】
好ましくは、本発明の方法は、高圧−撹拌槽−反応器、固定床反応器又は流動層反応器において実施される。
【0138】
特に好ましい一実施態様において、本発明の方法は1又は複数の固定床反応器中で実施される。
【0139】
更なる特別に好ましい一実施態様において、グリコールアルデヒドの反応は高圧−撹拌槽−反応器中で行われる。
【0140】
グリコールアルデヒド及びMEOA及び/又はDEOAは一緒になって反応器の反応区域へと添加されることができ、例えば、予備混合した反応物流として、又は別個に添加されることができる。別個の添加では、グリコールアルデヒド及びMEOA及び/又はDEOAは、同時に、時間をずらしてして又は相次いで、反応器の反応区域へと添加されることができる。
【0141】
この滞留時間は本発明の方法において不連続な方法における実施の際に一般に15分〜72時間、好ましくは60分〜24時間、特に好ましくは2時間〜10時間である。
【0142】
好ましい連続方法における実施の際には、この触媒負荷は一般に0.01kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h〜3.0kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h、好ましくは0.05kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h〜2.0kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h、特に好ましくは0.1kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/h〜1.5kg グリコールアルデヒド/kg 触媒/hの範囲である。
【0143】
本発明の反応に続き、所望の生成物の単離が、当業者に知られている方法に応じて、例えば蒸留により行われることができる。
【0144】
本発明の利点は、グリコールアルデヒドの高変換及び生成物、特にDEOA及び/又はTEOAの形成を高い収率及び選択率で可能にする、高級エタノールアミンの製造のための方法が開発できたことにある。加えて、反応生成物は高純度で発生する。これら目的は、本発明の方法において、十分に貴金属不含である触媒が使用できるというという前提条件で達成された。したがって、本方法の物質コストは低下できる。貴金属含有触媒の使用は、すなわち、触媒使用コストの激しい増加を生じ、これは方法の経済性に影響を及ぼす。将来には、原料の劇的な欠乏を覚悟しなくてはならず、このため、貴金属の価格が更に高まることが予期できる。
【0145】
本発明の方法は、以下に挙げる実施例に基づきより詳細に説明される。
【0146】
比較試験:
触媒前駆体の製造:
触媒前駆体a)
Ni4.48質量%(NiOとして計算して)、Cu1.52質量%(CuOとして計算して)及びZr2.82質量%(ZrO2として計算して)を含有する、硝酸ニッケル、硝酸銅及び酢酸ジルコニウム(Zirconacetat)からの水溶液を、同時に撹拌容器中に一定の流れで20%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、温度70℃で、ガラス電極で測定したpH値7.0が維持されるように沈殿させた。この得られた懸濁液を濾過し、このフィルターケークを約20μSの濾過物導電性になるまで脱塩水を用いて洗浄する。次いで、なお湿潤するフィルターケーク中に、以下に挙げる酸化物混合物が得られるまでヘプタモリブデン酸アンモニウムを混入させる。この後に、このフィルターケークを温度150℃で乾燥棚又は噴霧乾燥器中で乾燥させる。このようにして得られる水酸化物−カーボナート−混合物を、今度は温度430〜460℃で4時間の期間にわたり温度処理する。このように製造した触媒前駆体は以下の組成を有する:NiO50質量%、CuO17質量%、MoO31.5質量%及びZrO231.5質量%。触媒を3質量%のグラファイトと混合し、タブレットに成形した。
【0147】
触媒前駆体(b)の製造:
NiO2.39質量%、CoO2.39質量%、CuO0.94質量%及びZrO22.82質量%を含有する、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸銅及び酢酸ジルコニウムからの水溶液を、同時に撹拌容器中に一定の流れで20%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、温度70℃で、ガラス電極で測定したpH値7.0に維持されるように沈殿させた。この得られた懸濁液を濾過し、このフィルターケークを約20μSの濾過物導電性になるまで脱塩水を用いて洗浄した。この後に、このフィルターケークを温度150℃で乾燥棚又は噴霧乾燥器中で乾燥させた。このようにして得られる水酸化物−カーボナート−混合物を、今度は温度450〜500℃で4時間の期間にわたり温度処理した。このように製造した触媒前駆体は以下の組成を有した:NiO28質量%、CoO28質量%、CuO11質量%及びZrO233質量%。この触媒前駆体を3質量%のグラファイトと混合し、タブレットに成形した。
【0148】
触媒前駆体(c)の製造:
水中に硝酸コバルト、硝酸マンガン及びリン酸を溶解することにより、コバルト10質量%、マンガン0.55質量%及びH3PO40.45質量%を含有する溶液を製造した。20%の炭酸ナトリウム溶液の添加により、温度50℃で沈殿させた。発生した沈殿物を、洗浄水中でナトリウム又はニトラートがもはや検出可能でなくなるまで洗浄した。このように得た固形物質を水と混合し、噴霧塔中で噴霧した(導入温度=550℃)。噴霧物を500℃で乾燥させ、回転処理し、押出機中で直径4mmのストランドに成形した。このストランドを100〜120℃で乾燥させ、引き続き1時間650℃で、その後3時間850℃でか焼した。
【0149】
このようにして製造した触媒前駆体は、コバルト90.4質量%、マンガン5.1質量%、ナトリウム0.3質量%及びリン3.1質量%を含有した。
【0150】
触媒前駆体(d)の製造:
触媒前駆体(d)の製造を、EP−A−1317959の実施例1Aに応じて行ったが、塩化鉄(III)を使用しなかった。
【0151】
触媒前駆体の還元及び不動態化
酸化物タブレット(触媒前駆体(a)及び(b))又はストランド(触媒前駆体(c))又は粉末(触媒前駆体(d))を還元した。この還元を280℃で実施し、その際、加熱速度は3℃/分であった。まず50分間N2中10%のH2を用いて、引き続き20分間N2中25%のH2を用いて、次に10分間N2中50%のH2を用いて、次いで10分間N2中75%のH2を用いて、最後に3時間100%のH2を用いて還元した。%の記載は、それぞれ体積%である。還元した触媒の不動態化を室温で希釈した空気(N2中の空気、最大5Vol%のO2含有量を有する)中で実施した。
【0152】
グリコールアルデヒドとMEOAの反応:
実施例1〜10:
機械的マグネット連結撹拌機を備えた電気加熱した160mlのオートクレーブ(ハステロイ)中に、市販のダイマーのグリコールアルデヒド3g(モノマーとして計算して、50mmol)がそれぞれの溶媒中に存在した(20ml)。引き続き、不活性ガス雰囲気下で第1表に挙げる量の、10mlのTHF中に懸濁した、活性化した触媒を添加した。
【0153】
不動態化した触媒をオートクレーブ中への導入前に次のように活性化した:
実施例1、2及び4では、不動態化した触媒を10時間280℃で水素分圧1barで還元した。この還元度は全ての場合に30%超であった。
【0154】
実施例3及び6〜10では、不動態化した触媒を10時間280℃で水素分圧1barで還元した。この還元度は全ての場合に30%超であった。
【0155】
実施例5では不動態化した触媒を活性化しなかった。
【0156】
引き続き、MEOAを、第1表に挙げたモル比(MEOA:モノマーグリコールアルデヒド(GA))に応じて、計量供給し、この混合物を100℃に加熱した。この温度に達すると、記載の反応圧力に達するまで、水素で加圧した。この反応の間に、この圧力を更なる水素供給によって保持し、この消費を測定した。全ての場合に8時間100℃でかつそれぞれの圧力で撹拌した。この変換率を水素消費を用いて近似的に測定した。8時間後に反応搬出物から触媒を濾別し、メタノールと混合し、GC(面積パーセント)により分析した。
【0157】
100%に対する差は、同定してない副成分である。
【0158】
グリコールアルデヒドとDEOAの反応:
実施例11〜13:
機械的マグネット連結撹拌機を備えた電気加熱した160mlのオートクレーブ(ハステロイ)中に、市販のダイマーのグリコールアルデヒド3g(モノマーとして計算して、50mmol)がそれぞれの溶媒中に存在した(20ml)。引き続き、不活性ガス雰囲気下で第1表に挙げる量の、10mlのTHF中に懸濁した、活性化した触媒を添加した。
【0159】
不動態化した触媒をオートクレーブ中への導入前に次のように活性化した:
実施例11で、不動態化した触媒を10時間280℃で水素分圧1barで還元した。この還元度は全ての場合に30%超であった。
【0160】
実施例12で、不動態化した触媒を10時間280℃で水素分圧1barで還元した。この還元度は全ての場合に30%超であった。
【0161】
実施例13では、不動態化した触媒を活性化しなかった(比較例)。
【0162】
引き続き、DEOAを、第1表に挙げたモル比(DEOA:モノマーグリコールアルデヒド(GA))に相応して計量供給し、この混合物を100℃に加熱した。この温度に達すると、記載の反応圧力が達成されるまで、水素で加圧した。この反応の間に、この圧力を更なる水素供給によって保持し、この消費を測定した。全ての場合に8時間100℃でかつそれぞれの圧力で撹拌した。この変換率を水素消費を用いて近似的に測定した。8時間後に反応搬出物から触媒を濾別し、メタノールと混合し、GC(面積パーセント)により分析した。
【0163】
100%に対する差は、同定してない副成分である。
【0164】
還元度の決定:
この決定を、装置Micromeritics RS 232, Autochem II Chemisorption analyserで記録した。評価ソフトウェアとしてプログラムAutochem II 2920を使用した。
【0165】
温度プログラム化還元は、時間単位辺り一定の温度向上を伴う、水素/不活性ガス流中の触媒前駆体の試料の加熱により行われた。その構成がMonti及びBaikerによる提案[D. A. M. Monti, A. Baiker, "Temperatur-Programmed Reduction. Parametric Sensitivity and Estimation of Kinetic Parameters", J. Catal. 83 (1983) 323-335]を基礎とする配置が使用された。粉末状試料がゆるいばら材として2つのガラスウールプラグの間のU状ガラス管へと充填されていた。このU管は、セラミック製の管型炉中にある。この試料は、アルゴン流中で200℃まで加熱され、ここで30分間維持されることにより、TPR装置中への組込後にまず乾燥された。引き続き50℃へ冷却した。この試料を、5K/分の加熱勾配で50℃から終温度650℃に加熱した。試料温度をこのばら材付近で熱電対シースにおいて測定し、2sの間隔で記録した。U管を通じて10%の水素を有する水素/アルゴン流を導通した。排ガス中の水素含有量を、伝熱検出器を用いて測定した。水素消費を温度の依存性において記録した。統合することにより、全H2消費が検査された温度間隔において算出された。このH2消費から還元度RGが以下の式に応じて計算された:
RG=100%−100%*[(触媒試料の測定した水素消費(TPR測定から))/(完全酸化物性触媒の理論水素消費、これは試料の金属含有量及び反応化学量論に基づいて計算される)]。
【0166】
第1表 グリコールアルデヒドとMEOA又はDEOAの反応
【表1】

【0167】
第2表 グリコールアルデヒドとMEOA又はDEOAの反応
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下でグリコールアルデヒドとモノエタノールアミン及び/又はジエタノールアミンを反応させることによる、エタノールアミンの製造方法。
【請求項2】
前記触媒が、触媒前駆体の還元により製造されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
触媒活性成分が、Ni、Co及び/又はCuの酸素含有化合物であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
使用される触媒が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金及び水銀からなる群から選択される貴金属原子0.4モルパーセント未満を含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
反応を、15〜350℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応を、10〜350barの圧力で実施することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応を、溶媒の存在下で行うことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
グリコールアルデヒドを、活性化した触媒と接触させることを特徴とする、請求項2から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
活性化した触媒が、30%以上の還元度を有することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
不動態化された触媒の還元により製造された活性化した触媒が、活性化後に、不動態化された触媒の還元度を少なくとも2%上回る還元度を有することを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
活性化した触媒が、還元の間及び後グリコールアルデヒドとの接触まで、不活性条件下で取り扱われることを特徴とする、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
製造されるエタノールアミンがジエタノールアミン及び/又はトリエタノールであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
使用されるモノエタノールアミン及び/又は使用されるジエタノールアミンが、グリコールアルデヒドとアンモニア及び/又はモノエタノールアミンとの反応により製造されたことを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2013−514296(P2013−514296A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543645(P2012−543645)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069467
【国際公開番号】WO2011/082967
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】