説明

高耐薬品性を有するガラス質顔料保護層又はガラスセラミック顔料保護層を備える金属物品

ガラス質顔料保護層又はガラスセラミック顔料保護層を備える金属支持体は、アルカリ金属ケイ酸塩を含有するコーティングゾルを、支持体又はその表面に塗布し、このようにして得られる層を熱により高密度化することによって得ることができ、アルカリ金属ケイ酸塩を含有するコーティングゾルは、化学元素の周期表の第3族及び第4族の主族又は遷移族並びに遷移金属Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb及びTaから選択される少なくとも1つの元素に由来の酸化物顔料を含有する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ガラス質保護層又はガラスセラミック保護層は一般にほうろう引き作業と称されるものによって金属表面に塗布される。ほうろうは、比較的高温で比較的容易に融解し、その後金属表面上に密着性のコーティングを形成するガラスである。例えば、水、弱酸若しくは弱アルカリを沸騰させ、食品をゆでる又は調理するため等に、十分な耐薬品性を有するほうろうを実現しようとする場合、その融解温度は一般に750℃〜800℃である。食品をゆでる又は調理することはとりわけ食品分野における用途で要求とされる。
【0002】
ほうろうは、一般にガラス微粉末(フリット)の水性スラリー又は懸濁液(化粧土)を金属表面に(例えば浸漬塗工又は噴霧塗工により)塗布し、乾燥させた後、上述の温度で融解する湿式法で塗布される。凝集性で不透過性の無孔性コーティングを実現するために、50μm〜100μmの層厚が必要とされる。ガラスの高い粘度、及びとりわけケイ酸塩ガラスの場合に存在する高い軟化温度のために、既に述べたように、700℃をはるかに上回る融解温度が必要とされる。軟化温度は、ガラスのシリカ含有率にとりわけ大いに依存する。高シリカ含有率は高軟化温度を導き、ガラスの高耐薬品性をもたらす。対照的に、高アルカリ金属含有率は低軟化温度をもたらし、低耐薬品性を導く(低加水分解性種)。それ故、ひときわ、攻撃性媒体(例えば酸性媒体)の場又は食品分野におけるこのような層の使用については、なかでも、例えば、食器洗浄機に対する安定性が要求される場合、上述の低融点層は不適切である。これはまた、例えば、アルミニウムが600℃を少し上回る温度で既に融解することから、家庭電化製品分野、なかでも調理器具においてアルミニウム上にほうろうを使用しない理由の1つである。この状況は、マグネシウムの場合又はマグネシウム−アルミニウム合金の場合にも類似する。構成要素の1つが上述の軽金属の範囲のものである場合、同じことがこれらの種々の構成要素から構成される金属アセンブリにも当てはまる。
【0003】
さらに、魅力的なデザインの問題が、とりわけ消費財分野における多くの物品に関して高い重要性を有することから、着色は多くの用途にとって極めて重要なものである。食品分野では、特に食品適合性及び毒性の問題が主要な要素である。この理由から、なかでも、着色顔料からの成分、例えば金属イオンの浸出を防止することが必要である場合、ガラス質コーティングの耐薬品性が別段の重要性を有する。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の目的は、耐薬品性が改善され、なかでも食器洗浄機に対する安定性の範囲まで拡張するアルカリ安定性が改善された着色ガラス質コーティングを備える金属支持体を提供することである。
【0005】
耐食層の実現のための重要な前提条件は、なかでもアルカリに対するコーティングの基剤(matrix)材料の高い安定性、亀裂及びピンホールのない圧密化であり、そのために、支持体に対するコーティング材料の適切に適合する膨張係数も必要とされる。しかしながら、コーティング基剤の収縮が避けられない顔料系の場合、無収縮顔料、例えば酸化物顔料が、焼結の過程で応力及び亀裂をもたらすことが知られている。関連のガラス文献から、ケイ酸塩ガラスのアルカリ安定性が、特定のイオン(網状組織を安定化させる成分)を添加することによって大幅に改善され得ることが知られている。したがって、本問題に対する見込まれる解決策は、かかる成分(例えば、酸化アルミニウム又は二酸化チタン)を含むガラス組成物である。ゾル−ゲルの文献からも同様に知られているように、かかる多成分系を有するゾル−ゲルコーティングは、製造しにくく、意外に短いポットライフを有し、一般に強酸性溶液中でのみ安定であるため、産業においてほとんど実用可能でない。金属の膨張係数(TCE≒8×10−6/K以上)に対応させるために、高膨張係数を有するかかる系を製造しようとする場合、従来のガラスのレベル(10重量%〜15重量%)をはるかに上回るように、アルカリ金属含有率を増大しなければならず、これは結果として化学安定性の深刻な損失に関連する。
【0006】
米国特許第6162498号及び米国特許出願公開第2008/0118745号は、酸化腐食(例えばステンレス鋼の変色)に耐性を示すガラス質の比較的耐摩耗性層を得る方法を記載している。該方法は、
コロイドシリカゾル、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物の群からの少なくとも1つの成分の存在下における1つ又は複数のシランの加水分解及び重縮合を介する、コーティング溶液の生成、
層を形成するような、金属表面へのコーティング溶液の塗布、
ガラス質膜を形成するような熱による高密度化、
米国特許第6162498号では、350℃〜500℃の高密度化温度の使用、
米国特許出願公開第2008/0118745号では、加えて、
500℃の好ましい温度を用いた二段階操作における高密度化によるアルカリ金属ケイ酸塩含有層の使用、
5μm〜10μmの範囲の層を有する、浸漬及び噴霧を介した層系の作製、
金属表面及び金属成分、なかでもステンレス鋼であるが、またアルミニウム及びアルミニウム合金へのコーティングの塗布、
を介する、成形可能なガラス質層の形成、
を含む。
【0007】
記載されている系は、高SiO含有率を有するため、酸に対してのみ安定であり、アルカリ性媒体に対しては安定でない。故に、これらの層は、高温の比較的薄い水酸化ナトリウム溶液を用いた場合であっても量的に除去されることがあり、いずれの場合にも食器洗浄機に対して安定でなく、これは、それらが通常、食品分野に、又は比較的高いpH値における用途で保護層として適さないことを意味する。
【0008】
しかしながら、またこれらの層は、それらの高密度化温度が600℃をはるかに下回ることから、アルミニウム及びアルミニウム合金に対する塗布に適する。しかしながら、これは、耐アルカリ性に関する化学安定性を改善するものではない。層はまた、金属シート又はプレートからなる積層体の形態、挟持体の形態のいずれかで、アルミニウム又はアルミニウム合金及び他の金属から構成される構成要素及びアセンブリ、又は他の何らかの方法(例えば、ねじ留め、プレス加工又はリベット留め)で互いに結合又は連結される、種々の金属からなる構成要素を含むアセンブリのコーティングに好適である。
【0009】
ここで、驚くべきことに、かかるコーティング材料を顔料、好ましくは小板状顔料と併せて使用する場合、特にそれらを多層として塗布する場合に、上記で概説した欠点、なかでもかかるコーティング材料の不十分な化学安定性が、軽減又は回避されることが見出された。故に、それらは加水分解安定性の特異な増大を有し、食器洗浄機試験では、損傷を受けることなく数百サイクルに耐える。
【0010】
加えて、また驚くべきことに、酸化添加剤(即ち、それらの性質からそれ以上収縮し得ない既に不透過に焼結された添加剤)を有する基剤材料の熱による高密度化が必然的に収縮をもたらす焼結作業が、内部亀裂形成を一般に生じさせる場合であっても、顔料コーティング溶液によって、焼結して不透過性層を作製する層が実現された。内部亀裂形成が生じることにより、腐食液が亀裂を介して層に侵入して金属表面で腐食プロセスを引き起こす結果、剥離現象が起こるため、とりわけ想定外の範囲まで化学安定性を悪くする。加えて、また驚くべきことに、基剤の膨張係数の推定値がそれらの組成に起因してα=1.0×10−6/K〜4.0×10−6/Kの値を示す層系は、被覆金属(α>10)との差異にもかかわらず、層の不透過性の如何なる低下も生じさせなかった。対応する熱特性を有する通例のソーダ石灰ガラスに相当する組成物を含むコーティング溶液は、本発明の状況で生成されたものの、上記の問題のために好ましくない。その上、薄層内に生じる構造が固体ガラスの構造と全く異なり、それ故特性も異なることから、固体ガラスにおいて測定した膨張係数は薄層とわずかな関連性しか有しない。
【0011】
本発明は、とりわけ、低融点金属、例えばアルミニウム、マグネシウム若しくはそれらの合金からなる金属アセンブリ及び構成要素、又はステンレス鋼等の高融点金属と合わせたこれらの金属のアセンブリに適する、高化学安定性を有する低焼結性の薄いガラス質顔料保護層又はガラスセラミック顔料保護層を備える金属物品を製造する方法を提供する。
【0012】
本発明に従ってコーティングされる好適な金属表面としては、半製品及び完成品上の金属又は金属合金からなるか又はそれを含む全ての表面が挙げられる。金属表面の例としては、亜鉛めっき面、クロムめっき面又はほうろう面を含む、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、銅、クロム又はニッケルから構成されるものが挙げられる。金属合金の例は、なかでも鋼又はステンレス鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、並びに黄銅及び青銅等の銅合金である。アルミニウム及びアルミニウム合金、鋼、ステンレス鋼、並びに亜鉛めっき鋼又はクロムめっき鋼から構成される金属表面を使用することが好ましい。熱伝導又は熱分布を改善するという理由から、アルミニウム又はアルミニウム合金のコアを含むが、表面が機械応力を受け得るという目的から、又は装飾の理由から、ステンレス鋼の上部及び下部を有する挟持体構造と称されるものが特に好ましい。この3つの材料複合体が、とりわけ調理分野、例えばグリルパン並びに他の調理用器具及び容器に有用であることが見出された。
【0013】
好ましくは、金属表面をコーティング組成物の塗布前に十分に清浄し、特にグリース及び塵埃を除去する。またコーティング前に、例えばコロナ放電による表面処理を実施してもよい。
【0014】
金属表面又は金属支持体は、平面又は構造面を有していてもよい。金属表面は構造面を有することが好ましい。それは、ミクロ構造面又はより大きな寸法の構造であってもよい。構造は、例えばエンボス加工によって得られるような規則形状であっても、例えばブラシ研摩又はサンドブラストが最も一般的な方法の1つである粗面化処理(roughening)によって得られるような不規則形状であってもよい。
【0015】
また、本発明はさらに、凝集塊を含むことなく分散された顔料を含有するアルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルを支持体に塗布すること、及びこのようにして得られる層を熱により高密度化することによって得られる、変形可能なガラス質コーティングを有する金属支持体を提供し、とりわけ好ましい実施の形態は、顔料基層の基剤組成物として同じ組成を有する非顔料層による、熱により高密度化されるか又は最大120℃の温度で乾燥された顔料層のオーバーコーティング、及び層(複数可)のその後の熱処理を伴う。顔料のタイプに応じて、高密度化は多段階熱処理プロセスで行い、第1段階での熱処理は、(A)酸素雰囲気中又は(B)例えば≦15mbarの残圧における減圧下で、第2段階での熱処理は、完全に高密度化してガラス質層が形成されるまで低酸素雰囲気中で実施する。高密度化プロセスを促進させるために、炉内雰囲気に種々の濃度で付加的に蒸気を加えることも可能である。
【0016】
コーティングプロセスは以下の工程を含む:
【0017】
a)アルカリ金属、なかでもリチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウムの可溶性酸化物、水酸化物又は可溶性及び熱により容易に分解可能な化合物の存在下、必要に応じて、コロイドシリカゾル、並びに、化学元素の周期表の第3族又は第4族の主族又は亜族からの元素、例えば、元素B、Al、Ge、Sn、Ti、Zr、及びP又はNb等のさらなる元素のアルコキシドの存在下における、1つ又は複数のオルガノアルコキシシラン、オルトケイ酸エステルの加水分解及び縮合による、複合コーティング溶液の生成。
【0018】
b)好ましくは、第3族及び第4族の主族又は亜族からの元素の酸化物、なかでも元素B、Al、Si、Ge、Sn、Y、Ce、Ti又はZr、又は遷移金属Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb又はTaの酸化物を含む小板状又は他の顔料の分散。分散液に凝集塊が混入しないことにより高化学安定性の実現が容易になるため、これらの顔料には必要に応じてあらかじめ適切な表面改質を施して、分散性を改善させる。これらの酸化物(例えばFeAlスピネル等のスピネル)、若しくは干渉層でコーティングされる、好ましくはSiO又はAlからなる酸化物粒子、又は他の酸化物組成物、例えばマイカ小板を含み得る酸化物小板状粒子の混合物又は化合物を使用することも可能である。エフェクト顔料又は干渉顔料の名称で市販もされているかかる顔料は、例えば、TiO、Al、ZrO又はFeの酸化物干渉層でコーティングされ、それらの干渉効果を通じて、広いスペクトルの種々の色を可能にし、分散形態で、いわゆるメタリック効果を可能にする。これらの酸化物は当然ながら単に例示的なものと考えられ、当然ながら他の顔料を使用することも可能である。使用されるこれらの顔料の粒径は重要でない。国際公開第2008/099008号は、約25μmの開始サイズを有するかかる顔料の湿式粉砕によって、5μmの大きさの顔料を与え、とりわけ平滑層をもたらす方法を記載している。しかしながら、本発明による食器洗浄機に耐性を示すか又は耐アルカリ性の着色層の作製のために、粒子の形状及びサイズは重大でないが、但し、それらはマイクロメートル範囲を超えるものではない。
【0019】
c)好ましくは5μm〜20μm、より好ましくは8μm〜11μmの未乾燥(wet)膜厚を有するような、好ましくは噴霧作業を用いた金属支持体へのコーティング懸濁液の塗布。
【0020】
d)塵埃が乾燥するまでの未乾燥膜の乾燥。
【0021】
e)350℃〜600℃、好ましくは450℃〜500℃の温度での、好適な雰囲気下、例えば、カーボンブラックを顔料として使用する場合には還元雰囲気中、又は有色の鉄(III)化合物を使用する場合には酸化雰囲気中における、コーティングの焼成であって、有色の鉄(III)化合物を使用した場合のコーティングの色は、焼成作業中の鉄(III)の維持に応じて決まる。
【0022】
f)使用されるアルカリ金属成分が、Na/K、Na/Cs又はNa/Liの群からの2つの成分の組合せである以外はa)に記載の組成物を用いた、冷却させた支持体のオーバーコーティング。本明細書では、Na/Kの組合せが特に好ましい。
【0023】
g)350℃〜600℃、好ましくは450℃〜500℃の範囲の温度における、オーバーコートの焼成。好ましい層厚は3μm〜8μm、より好ましくは4μm〜6μmである。
【0024】
h)e)の代わりに、f)に記載のオーバーコーティングを、c)に記載のコーティングの乾燥に続いて行うことができる。焼成作業はe)又はg)に従って行う。
【0025】
添加剤として記載される顔料を含まないa)に記載のコーティング系は、食器洗浄機において使用するのに十分なアルカリ安定性を有しないのに対し、顔料を含む形態の又はオーバーコートとしての同じ層組成物は食器洗浄機に対する高い安定性を示す。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、これは、特定の網状組織を安定化させるイオンをガラス構造中に組み込むことによりガラス質ケイ酸塩の系のアルカリ安定性が大幅に改善され得るという事実によって説明されると考えられる。これらは、第3族及び第4族の主族及び亜族の上記に挙げた元素、並びに鉄族の遷移金属のイオンを含む。網状組織を安定化させる効果は、構造が熱により高密度化される前に、顔料/添加剤の表面からかかるイオンがa)に記載のコーティング材料のミクロポア構造又はナノポア構造中に拡散することによって説明することができる。
【0026】
効果を発揮するためには、a)に記載の基剤系と安定化顔料との間の十分な接触領域が、このような均質化によってのみ実現可能であることから、極めて実質的に凝集塊を含まない顔料の分散液が必要とされる。それ故、分散液に関しては、顔料の物理化学的な表面特性に応じて、個々の顔料粒子間の相互作用を最小限に抑えるような表面改質が必要とされる。このため、極めて短い拡散経路を実現するために、第2の層の層厚を最小限に保つことが好ましい。
【0027】
本発明の重要な目的は、消費財、アセンブリ、リアクタ、車両用部品、台所用品、調理器具、カトラリー、アクセサリー、電気設備及び多くの他の支持体をコーティングし得るコーティング系を開発することである。この場合、高レベルの装飾効果だけでなく、十分な化学安定性も必要とされ、またこの場合には低融点を有する金属の単独使用、又は、より高い融点を有する金属(例えば、銅、鋼、ステンレス鋼、黄銅)と組み合わせたこれらの金属の使用の場合には商用ほうろうの使用が、不可能であった。化学安定性の要求に特有の事例は、上記の食器洗浄機に対する安定性である。さらなる要求の例は、手の発汗、酸及びアルカリ、食品中の種々の成分(有機酸、錯化剤、タンパク質、界面活性剤等)、又は塩ストレス(例えば自動車分野における)に対する安定性である。
【0028】
かかるコーティング組成物が、例えば
a)アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物の群からの少なくとも1つの化合物、
b)必要に応じて添加されるナノスケールのSiO粒子、
c)必要に応じて金属B、Al、Si、Ge、Sn、Y、Ce、Ti又はZrのアルコキシド又は可溶性化合物、
d)凝集塊を含まない分散液中にある、着色基層用の着色顔料又は白色顔料、
の存在下における、一般式(I)
SiX4−n (I)
(式中、
前記X基は、同一であるか又は異なり、それぞれ、加水分解性基又はヒドロキシル基であり、R基は、同一であるか又は異なり、それぞれ、水素、最大4個の炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、並びに6個〜10個の炭素原子を有する、アリール基、アラルキル基及びアルカリール基であり、nは0、1又は2であるが、但し、n=1又は2である少なくとも1つのシランを使用するものとする)、
の1つ又は複数のシラン、又はそれらに由来のオリゴマーの加水分解及び重縮合によって得られる。
【0029】
故に、金属表面上にガラス質の着色層又は白色層を得ることが可能であり、その厚みは、例えば、乾燥の過程及び高密度化の過程において如何なる亀裂の発生も伴うことなく、最大10μmであり得る。塗布されるコーティング組成物は、比較的低い温度(包括的に400℃)であっても例えばステンレス鋼表面又は鋼表面上で、不透過性のケイ酸塩ガラス質膜に変換することができる。本発明により作製される層は概して、2μm〜8μm、好ましくは2.5μm〜7μm、特に3μm〜6μmの厚みを有する。それらは、比較的高い温度であっても、金属表面への酸素の侵入を防止する気密層を形成する。特に好ましい実施の形態では、同一組成の第2の顔料を含まないコーティングを、着色基層に塗布し、この場合、必要に応じて塗布の前に、最大120℃、好ましくは100℃、特に好ましい実施の形態では80℃の温度で着色基層の乾燥を行う。本発明により作製される上層は概して、1μm〜7μm、好ましくは2μm〜6μm、特に3μm〜5μmの層厚を有する。それらは、耐アルカリ性、耐候性、手の発汗に対する耐性及び食器洗浄機に対する耐性を示す。
【0030】
本発明は、建築構造物及びそれらの部材、例えば、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム及びアルミニウム合金から構成される表被材パネル;移動及び輸送の手段及びそれらの部材;商業又は産業の目的及び調査のための設備、装置及び機械、並びにそれらの部材;家庭用品及び家庭用設備、並びにそれらの部材;電気設備及び調理設備、調理器具、容器、カトラリー、並びにそれらの部材、ゲーム、スポーツ及びレジャー用の設備及び補助器具、並びにそれらの部材、並びに医療目的及び病弱者のための設備、補助器具及び装置のための金属アセンブリのガラス質表面層の作製に特に好適である。
【0031】
加えて、コーティングはセラミック表面又はガラス表面への塗布に同様に好適である。支持体としてコーティング可能なかかる材料又は商品の具体例を以下に明記する。コーティングする表面は、鋼又はステンレス鋼の表面であることが好ましい。
【0032】
建築構造物(なかでも建造物)及びそれらの部材:
【0033】
建造物の内装及び外装、床及び階段、エスカレータ、エレベータ、例えばそれらの壁、手すり、家具、パネル、取付金具、ドア、ハンドル(なかでも指紋防止仕上げを有する、例えば、ドアハンドル)、表被材用のシート金属、床材、窓(なかでも窓枠、窓敷居及び窓のハンドル)、ブラインド、台所、浴室及びトイレ、シャワー室、サニタリー室、洗面室内の取付金具、一般にサニタリーセクターにおける物(例えば、トイレ、洗面器、取付金具、アクセサリー)、パイプ(及びなかでも配水管)、ラジエータ、光スイッチ、ランプ、照明、郵便受、キャッシュディスペンサ、情報ターミナル、築港の仕上げ用の耐海水性コーティング、庇、雨どい、アンテナ、サテライトディッシュ、手すり及びエスカレータの手すり金物、オーブン、風車、なかでも回転翼、モニュメント、彫刻品、及び包括的に金属表面を有する美術加工品、なかでも戸外に展示されるもの。
【0034】
家庭用品及び家庭用設備、並びにそれらの部材:
【0035】
ごみ箱、食器及び調理器具(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金及び挟持金属、なかでもアルミニウム又はアルミニウム合金のコアと外側に他の金属、例えばステンレス鋼とを有する3層形態のもの)、カトラリー(例えばナイフ)、トレー、平鍋、ポット、焼き型、調理具(例えば、おろし金、ガーリックプレス及びホルダー)、吊り下げ具、冷蔵庫、調理領域フレーム、調理ホブ、ホットプレート、加熱面、ベーキングオーブン(内部及び外部)、卵ゆで器、マイクロ波ユニット、やかん、グリル網、蒸し器、オーブン、作業面、台所セクターにおける取付金具、換気扇フード、花瓶、TV設備及びステレオユニットの筐体、家庭用(電気)設備の筐体、花瓶、クリスマスツリーの玉飾り、家具、ステンレス鋼からなる家具の前面、流し台、ランプ及び照明。
【0036】
移動及び輸送の方法(例えば、乗用車、重量物運搬車、乗合バス、モーターバイク、原動機付き自転車、自転車、鉄道、路面電車、船舶及び飛行機)、並びにそれらの部材:
【0037】
自転車及びモーターバイク用の泥除け、モーターバイク上の計器、ドアハンドル、ステアリングホイール、タイヤリム、排気装置及び排気管、熱応力を受ける部材(エンジン部品、裏打材、バルブ及びバルブ裏打材)、取付金具、潜熱交換器、クーラー、金属表面を有する内装品の部材(例えば耐引っ掻き性コーティング)、燃料ノズル、荷台、乗用車用ルーフコンテナ、ディスプレイ計器、例えば牛乳、油又は酸用のタンカー、包括的に全シャーシ部材、及び船舶及びボートの仕上げ用の耐海水性コーティング。
【0038】
商業又は産業の目的及び調査のための設備、装置及び機械(例えば、プラント建設(化学産業、食品産業、発電所)及びエネルギー技術)、並びにそれらの部材:
【0039】
熱交換器、圧縮機ホイール、ギャップへリックスエクスチェンジャー(gap helical exchangers)、産業加熱用の銅素子、モールド(例えば、なかでも金属の鋳型)、ダストシュート、充填プラント、押出機、水車、ローラー、コンベヤベルト、印刷機、スクリーン印刷テンプレート、計量分配機、(機械)筐体、ドリルヘッド、タービン、パイプ(なかでも液体及び気体輸送用の内管及び外管)、撹拌機、撹拌タンク、超音波浴、清浄浴、コンテナ、オーブン内の輸送装置、高温での酸化、腐食及び酸からの保護のためのオーブンの内面塗装、ガス容器、ポンプ、リアクタ、バイオリアクタ、タンク(例えば燃料タンク)、熱交換器(例えば、食品加工技術における又は(バイオマス)固体燃料タンク用)、廃ガスユニット、のこ刃、カバー(例えば天秤(balances)用)、キーボード、スイッチ、ノブ、ボールベアリング、シャフト、スクリュー、太陽電池、ソーラーユニット、ツール、ツールハンドル、液体コンテナ、絶縁体、細管、実験装置(例えばクロマトグラフィカラム及び換気フード)、並びに蓄電池及び電池の部材。
【0040】
ゲーム、スポーツ及びレジャー用の補助器具:
【0041】
庭園家具、ガーデン設備、ツール、遊び場設備(例えば滑り台)、スノーボード、スクーター、ゴルフクラブ、ダンベル、ウェイト、トレーニング設備、取付金具、公園、遊び場内の腰掛、固定具、及びスイミングプール内の設備等。
【0042】
医療目的及び病弱者のための設備、補助器具及び装置:
【0043】
外科用器械、カニューレ、医療用コンテナ、歯科用設備、眼鏡の枠、医療用ツール(手術及び歯の治療用)、包括的に、医療技術分野に由来する商品(例えば、パイプ、装置、コンテナ)及び車椅子、並びにまた包括的に病院設備。
【0044】
上記商品に加えて、当然ながら、上記表面層を有利に有する他の商品及びそれらの部材、例えば玩具、宝石、硬貨を提供することも可能である。
【0045】
コーティング組成物及びそれらの成分を以下に記載する。
【0046】
上記の中でも一般式(I)のシランは、一般式中、nが1又は2の値である少なくとも1つのシランである。概して、一般式(I)の少なくとも2つのシランを組み合わせて使用する。この場合、これらのシランは、nの平均値(モル基準)が0.2〜1.5、好ましくは0.5〜1.0であるような比率で使用することが好ましい。nの平均値が0.6〜0.8の範囲であることが特に好ましい。
【0047】
一般式(I)中、X基は、互いに同一であるか又は異なり、加水分解性基又はヒドロキシル基である。加水分解性X基の具体例は、ハロゲン原子(なかでも塩素及び臭素)、最大6個の炭素原子を有する、アルコキシ基及びアシルオキシ基である。アルコキシ基、なかでもメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びi−プロポキシ等のC1−4アルコキシ基が特に好ましい。1つのシラン中のX基が好ましくは同一であり、メトキシ基又はエトキシ基を使用することが特に好ましい。
【0048】
一般式(I)中のR基は、n=2である場合に同じであっても異なっていてもよく、水素、最大4個の炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、並びに6個〜10個の炭素原子を有する、アリール基、アラルキル基及びアルカリール基である。かかる基の具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びtert−ブチル、ビニル、アリル及びプロパルギル、フェニル、トリル及びベンジルである。該基は、通例の置換基を有し得るが、かかる基は如何なる置換基も有しない。好ましいR基は、1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基、なかでもメチル及びエチル、またフェニルである。
【0049】
本発明によれば、或る事例ではn=0であり、別の事例ではn=1である一般式(I)の少なくとも2つのシランを使用することが好ましい。かかるシラン混合物は、例えば、少なくとも1つのアルキルトリアルコキシシラン(例えば、(メ)エチルトリ(メ)エトキシシラン((m)ethyltri(m)ethoxysilane))及び1つのテトラアルコキシシラン(例えば、テトラ(メ)エトキシシラン(tetra(m)ethoxysilane))を含み、nの平均値が上記で規定される好ましい範囲内であるような比率で使用されることが好ましい。式(I)の出発シランの特に好ましい組合せは、メチルトリ(メ)エトキシシラン(methyltri(m)ethoxysilane)及びテトラ(メ)エトキシシラン(tetra(m)ethoxysilane)であり、nの平均値が上記で規定される好ましい範囲内であるような比率で使用されることが好ましい。
【0050】
一般式(I)のシラン(複数可)の加水分解及び重縮合は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の最大400℃で熱分解可能なアルコキシド、酸化物、水酸化物及び可溶性化合物の群からの少なくとも1つの化合物の存在下で実行する。これらの化合物は好ましくは、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca及び/又はBaの化合物である。アルカリ金属、なかでもNa及び/又はKを使用することが好ましい。B、Al、Si、Ge、Sn、Y、Ce、Ti若しくはZr等、又は遷移金属Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb若しくはTa、又はCaの、アルカリ土類金属酸化物又は網状組織を安定化させる酸化物を必要に応じて使用することなく、アルカリ金属化合物を使用する場合、アルカリ金属化合物は、Si:アルカリ金属の原子比率が、20:1〜7:1、特に15:1〜10:1の範囲であるような量で使用されることが好ましい。いずれの場合でも、アルカリ金属/アルカリ土類金属に対するケイ素の原子比率は、得られるコーティングが水溶性でないよう十分に高いレベルで選択される。対照的に、アルカリ土類金属酸化物又は上述の網状組織を安定化させる元素を合わせて使用する場合には、アルカリ金属:ケイ素のモル比を2:1の値まで増大させることができる(最大12重量%のアルカリ金属含有率に相当する)。
【0051】
一般式(I)の加水分解性シランに加えて使用される任意のナノスケールのSiO粒子は、一般式(I)のシラン中の全ケイ素原子と、ナノスケールのSiO粒子中の全ケイ素原子との比率が、5:1〜1:2、特に3:1〜1:1の範囲であるような量で使用されることが好ましい。
【0052】
ナノスケールのSiO粒子は、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、特に30nm以下の平均粒径(または平均粒子直径)を有するSiO粒子を意味すると解釈される。本目的のために、例えば、商用シリカ製品、例えばLevasils(登録商標)等のシリカゾル、Bayer AGからのシリカゾル、又はヒュームドシリカ、例えば、DegussaからのAerosil製品、DuPontからのLudox(登録商標)も使用することが可能である。同様に、例えば、Nishin Chemicalsにより供給される、アルコール溶媒中のシリカゾルも使用することが可能である。粒状材料を粉末及びゾル形態で添加してもよい。しかしながら、それらは、シランの加水分解及び重縮合の過程においてin situで形成することも可能である。
【0053】
シランの加水分解及び重縮合は、有機溶媒の不存在又は存在下で実行することができる。有機溶媒が存在しないことが好ましい。有機溶媒を使用する場合、出発成分が反応媒体(一般に水を含む)に可溶性であることが好ましい。好適な有機溶媒は、なかでも水混和性溶媒、例えば一価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール)、エーテル(例えばジエーテル)、エステル(例えば酢酸エチル)、ケトン、アミド、スルホキシド及びスルホンである。他に、加水分解及び重縮合は、当業者に精通する様式により実行することができる。
【0054】
熱により反応して酸化物成分をもたらす、B、Al、Si、Ge、Sn、Y、Ce、Ti若しくはZr、又は遷移金属Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb若しくはTa、又はCaの任意の添加化合物は、最大400℃の温度で分解する可溶性アルコキシド又は可溶性化合物、例えば有機酸の塩の形態で使用することができる。それらの例は、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩又はシュウ酸塩であるが、反応媒体に可溶性の他の全ての有機酸でもある。加えて、文献から既知の容易に分解可能な硝酸塩の例が有用である。
【0055】
有用な酸化物顔料としては、商用着色顔料、例えば、スピネル、なかでもアルミニウムスピネル、鉄、コバルト又はニッケル等の遷移金属の酸化物が挙げられるが、それらの混合物も挙げられる。加えて、色を濃くするためにカーボンブラックを使用することも可能である。
【0056】
有用なエフェクト顔料としては、酸化物組成物を有する干渉顔料と称されるものが挙げられる。これらとしては、全ての商用エフェクト顔料、例えば、MerckからのIriodin顔料が挙げられる。
【0057】
凝集塊を含まない分散液を生成するために、商用表面改質剤、例えば、好適な官能基を有する機能性シラン又はキレート形成錯化剤を必要に応じて使用する。シランの例は、親水性表面の作製のためのエポキシシラン、又は疎水性表面の作製のためのアルキルアルコキシシランである。キレート形成錯化剤の例は、例えばβ−ジケトンである。
【0058】
顔料コーティング溶液は、凝集塊を含まない分散液中のアルカリ金属化合物及び顔料の存在下で、酸化物成分に関する出発化合物の加水分解によって生成される。
【0059】
本発明により使用されるコーティング組成物は、コーティング産業において一般的な添加剤、例えば、レオロジー特性及び乾燥特性を制御する添加剤、湿潤助剤及びレベリング助剤、消泡剤、溶媒、染料、並びに顔料を含み得る。好適な溶媒は、例えば、アルコール及び/又はグリコール、例えばエタノール、イソプロパノール及びブチルグリコールの混合物である。指紋防止特性を有する艶消し層を実現するために、商用艶消し剤、例えばマイクロスケールのSiO又はセラミック粉末を添加することも可能である。それらを使用する場合、艶消し剤、例えばマイクロスケールのSiO又はセラミック粉末の存在下でシランを加水分解及び重縮合することができる。しかしながら、後の段階でそれらをコーティング組成物に添加してもよい。
【0060】
本発明により使用される顔料コーティング組成物は、通例のコーティング方法によって金属表面に塗布することができる。有効な技法は、例えば、浸漬、鋳造、フローコーティング、スピンコーティング、噴霧、散布又はスクリーン印刷である。自動化コーティングプロセス、例えば、フラット噴霧、スプレーロボットの使用、及び回転支持体又は旋回支持体が機械により誘導される自動噴霧が特に好ましい。希釈のためには、コーティング産業において一般的に使用されるような通例の溶媒を使用することができる。
【0061】
金属表面に塗布されるコーティング組成物は通常、ガラス質層へと熱により高密度化させる前に、室温又はわずかに高い温度(例えば、最大100℃、なかでも最大80℃の温度)で乾燥させる。熱による高密度化はまたIR又はレーザーの放射により必要に応じて行うことができる。
【0062】
第2の工程において、本発明の好ましい実施の形態では、この層が顔料を含まずに作製される以外は包括的に顔料層と同じベース組成を有する少なくとも1つのさらなる(ガラス質)層を、このようにして作製される(顔料)層に塗布することができる。それらの熱による高密度化前(かつ好ましくは室温又は高い温度におけるそれらの乾燥後)に本発明による金属表面上に設けられるコーティングに、ガラス質層のためのコーティング組成物を施すことによって、このようなガラス質層を本発明により作製されるガラス質顔料層上に設け、その後2つのコーティングを一緒に熱により高密度化してもよい。
【0063】
本発明によれば、金属表面は、なかでも例えば指紋、水、油、グリース、界面活性剤及び塵埃による汚れを防止するのにも役立つ、耐候性、防食性、耐引っ掻き性、耐アルカリ性及び食器洗浄機に対する耐性を示すコーティングを受ける。
【0064】
続く実施例は、本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0065】
実施例1
NaKSi−B基剤系の生成
750mlのメチルトリエトキシシラン、210mlのテトラエトキシシラン、12gのNaOH及び16.8gのKOHを、撹拌機を備える密閉可能なガラス容器に添加し、激しく撹拌する。2時間〜3時間後、NaOH及びKOHは完全に溶解した。合計時間は15時間に達するまで撹拌を続ける。その後、激しく撹拌しながら、2時間かけて蒸留した96mlの水を滴下する。この時間中、温度を40℃に上げる。続いて、撹拌を続けながら反応混合物を1時間かけて室温まで冷却する。
【0066】
NaKSi−B基剤系は、−15℃の冷凍庫内で数ヶ月間貯蔵することができる。
【0067】
実施例2
赤色干渉顔料を含むコーティング溶液の生成
Merck AGからの5gの赤色干渉顔料Lava Red(登録商標)を、相溶化剤/表面改質剤及びレベリング剤としての10gのブチルグリコールの存在下で激しく撹拌しながら100gのNaKSi−B基剤系に分散させる。これは、自動噴霧コーティング技術に使用されるのに好適な約15mPa・sの粘度を有する凝集塊を含まない分散液を実現する。
【0068】
実施例3
赤色干渉顔料を含むコーティング溶液の生成
Merck AGからの5gの赤色干渉顔料Lava Red(登録商標)を、相溶化剤/表面改質剤及びレベリング剤としてブチルグリコールの他に2gのγ−アミノプロピル−トリエトキシシランが存在する10gのブチルグリコールの存在下で激しく撹拌しながら100gのNaKSi−B基剤系に分散させる。これは、自動噴霧コーティング技術に使用されるのに好適な約15mPa・sの粘度を有する凝集塊を含まない分散液を実現する。
【0069】
実施例4
白色コーティング溶液の生成
66.66gのNaKSi−B基剤系を、撹拌機を備える密閉可能な容器内で、相溶化剤としての33.33gのイソプロパノールと混合し、激しく撹拌しながら10gのTiO(Tronox(登録商標)CR−826)を添加し、撹拌を約1時間続ける。続いて、撹拌を続けながら、0.33gの「Alusion」タイプの酸化アルミニウム小板を分散し、撹拌を5時間続ける。懸濁液は、密閉容器内で貯蔵し、−15℃に冷却する場合、特性を何ら変化させることなく数週間貯蔵することができる。
【0070】
実施例5
赤色干渉顔料でコーティングされる金属支持体の作製
実施例2及び実施例3のうちの1つに従って生成される顔料Lava Red(登録商標)コーティング溶液を、スプレーガン又はスプレーロボットのリザーバ容器に導入し、推進剤として圧縮空気を用いて工業規格の試験方法に従い、コーティング対象の商品上に噴霧する。ロボット制御に適切なコンピュータプログラムは、支持体の幾何学形状に応じてコンパイルする。ロボット制御は、10μmの未乾燥膜厚を実現するように設計する。
【0071】
コーティングした支持体を風乾した後、約6μmの未乾燥膜厚を実現するように実施例1による基剤系を塗布する。
【0072】
例えば周囲空気からの酸素の侵入を伴う2層系を、工業窯炉内において500℃で6時間高密度化する。
【0073】
実施例6
赤色干渉顔料でコーティングされる金属支持体の作製
実施例2及び実施例3のうちの1つに従って生成される顔料Lava Red(登録商標)コーティング溶液を、スプレーガン又はスプレーロボットのリザーバ容器に導入し、推進剤として圧縮空気を用いて工業規格の試験方法に従い、コーティング対象の商品上に噴霧する。ロボット制御に適切なコンピュータプログラムは、支持体の幾何学形状に応じてコンパイルする。ロボット制御は、10μmの未乾燥膜厚を実現するように設計する。
【0074】
例えば周囲空気からの酸素の侵入を伴うコーティングした支持体を、工業窯炉内において500℃で6時間高密度化する。続いて、約6μmの未乾燥膜厚を実現するように実施例1による基剤系を塗布する。
【0075】
2層系を続いて工業窯炉内において500℃で6時間かけて焼く。
【0076】
実施例7
白色にコーティングした挟持金属支持体の作製
実施例4によるプロセスによって生成されるTiO顔料コーティング溶液を、スプレーガン又はスプレーロボットのリザーバ容器に導入し、推進剤として圧縮空気を用いて工業規格の試験方法に従い、Alのコアと、上下のステンレス鋼層とからなるコーティング対象の挟持部材上に噴霧する。ロボット制御に適切なコンピュータプログラムは、支持体の幾何学形状に応じてコンパイルする。ロボット制御は、11μmの未乾燥膜厚を実現するように設計する。
【0077】
例えば周囲空気からの酸素の侵入を伴うコーティングした支持体を、工業窯炉内において500℃で11時間高密度化する。続いて、約6μmの未乾燥膜厚を実現するように実施例1による基剤系を塗布する。
【0078】
2層系を続いて工業窯炉内において500℃で6時間かけて焼く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス質顔料保護層又はガラスセラミック顔料保護層を備える金属支持体であって、アルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルを該支持体又はその表面に塗布すること、及びこのようにして得られる該層を熱により高密度化することによって得ることができ、前記アルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルが、化学元素の周期表の第3族及び第4族の主族又は亜族並びに遷移金属Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb及びTaから選択される少なくとも1つの元素の酸化物顔料を含む、ガラス質顔料保護層又はガラスセラミック顔料保護層を備える金属支持体。
【請求項2】
周期表の第3族又は第4族の主族又は亜族からの前記元素が、B、Al、Si、Ge、Sn、Y、Ce、Ti及びZrから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の金属支持体。
【請求項3】
前記酸化物顔料が小板状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属支持体。
【請求項4】
前記アルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルが、
a)前記アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物の群からの少なくとも1つの化合物、
b)必要に応じて添加されるナノスケールのSiO粒子、及び/又は
c)元素B、Al、Si、Ge、Sn、Y、Ce、Ti又はZrの必要に応じて添加されるアルコキシド又は可溶性化合物、
の存在下における、一般式(I)
SiX4−n (I)
(式中、
前記X基は、同一であるか又は異なり、それぞれ、加水分解性基又はヒドロキシル基であり、R基は、同一であるか又は異なり、それぞれ、水素、最大4個の炭素原子を有する、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基、並びに6個〜10個の炭素原子を有する、アリール基、アラルキル基及びアルカリール基であり、nは0、1又は2であるが、但し、n=1又は2である少なくとも1つのシランを使用するものとする)、
の1つ又は複数のシラン、又はそれらに由来のオリゴマーの加水分解及び重縮合を含むプロセスによって得ることができることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属支持体。
【請求項5】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物が、Si:アルカリ金属又はアルカリ土類金属の原子比率が20:1〜7:1、特に15:1〜10:1の範囲であるような量で使用されることを特徴とする、請求項4に記載の金属支持体。
【請求項6】
一般式(I)の出発シランにおけるnの平均値が、0.2〜1.5、特に0.5〜1.0であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の金属支持体。
【請求項7】
前記コーティングゾルが、0.5重量%〜30重量%、好ましくは5重量%〜25重量%、より好ましくは10重量%〜20重量%の酸化物顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属支持体。
【請求項8】
塗布される層が、必要に応じて乾燥され、その後、350℃〜600℃、好ましくは450℃〜500℃で熱により高密度化されたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属支持体。
【請求項9】
塗布される顔料層の前記熱による高密度化の前又は後に、顔料を含まないアルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルによるオーバーコーティングを行い、前記顔料層と共に又は前記顔料層の後に熱により高密度化することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の金属支持体。
【請求項10】
前記顔料を含まないアルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルのアルカリ金属成分が、Na/K、Na/Cs及びNa/Liの組合せから選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の金属支持体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属支持体を製造する方法であって、アルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルを、前記支持体又はその表面に塗布し、このようにして得られる層を熱により高密度化し、前記アルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルが、化学元素の周期表の第3族及び第4族の主族又は亜族並びに遷移金属Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb及びTaから選択される少なくとも1つの元素の酸化物顔料を含むことを特徴とする、金属支持体を製造する方法。
【請求項12】
塗布される前記層を必要に応じて乾燥させ、その後、350℃〜600℃、好ましくは450℃〜500℃で熱により高密度化することを特徴とする、請求項11に記載の金属支持体を製造する方法。
【請求項13】
塗布される前記顔料層の前記熱による高密度化の前又は後に、顔料を含まないアルカリ金属ケイ酸塩含有コーティングゾルによるオーバーコーティングを行い、前記顔料層と共に又は前記顔料層の後に熱により高密度化することを特徴とする、請求項11又は12に記載の金属支持体を製造する方法。
【請求項14】
前記熱による高密度化を二段階で実施し、完全に高密度化してガラス質層が形成されるまで、該熱処理を第1段階では酸素雰囲気中において、第2段階では低酸素雰囲気中において行うことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の金属支持体を製造する方法。
【請求項15】
高いアルカリ安定性又は食器洗浄機に対する安定性を要求するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の金属支持体、及び請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法によって製造される金属支持体の使用。

【公表番号】特表2012−514127(P2012−514127A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542828(P2011−542828)
【出願日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067860
【国際公開番号】WO2010/072815
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(507202600)イーピージー (エンジニアード ナノプロダクツ ジャーマニー) アーゲー (9)
【Fターム(参考)】