説明

高血圧改善剤

【課題】安全性が高く、優れた血圧低下作用を有する高血圧改善剤の提供。
【解決手段】炭素数16以上の長鎖炭化水素を有効成分とする高血圧改善剤。炭素数16以上の長鎖炭化水素は1種又2種以上を組み合わせて用いることができる。当該長鎖炭化水素は、これを含む植物の蝋(ワックス)、石油などから公知の方法により得てもよく、前記蝋、石油などからの抽出物、抽出濃縮物、若しくは精製物などを用いることができる。また、市販品、化学合成品を用いてもよく、他の原料由来のものを用いてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高血圧症等の予防あるいは改善に有用な高血圧改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症の治療薬としては、神経因子による調節系に作用する各種神経遮断薬、液性因子に関わる調節系に作用するACE阻害薬、AT受容体拮抗薬、血管内皮由来物質による調節系に関わるCa拮抗薬、腎臓での体液調節系に関わる降圧利尿薬などの医薬品が挙げられ、これらは高血圧診断基準を満たす患者もしくは高血圧症の発症が予想される対象者に治療および予防を目的に投与される医薬品である。
それに対して、食事、運動、飲酒・喫煙の制限など生活習慣の改善を総括する非薬物療法は、疾病とみなされる以前の血圧が高めの健常者や、将来血圧が高くなる可能性が考えられる、家族歴のある健常者にも広く適用できる重要な対応策であり、予防法でもある。近年、その重要性が認識され、なかでも食習慣の改善の重要性が提唱されている。
天然物由来の血圧降下素材の探索は従来から盛んに行われ、血圧降下作用を有する有効成分の分離・同定が数多くなされている。
【0003】
しかしながら、現状において高血圧症治療の目的で使用される医薬品は、有効性に関しては満足できるものが多い反面、少なからず存在する頻脈・徐脈等の副作用のため患者にかかる負担が大きい。また、血圧降下作用を有するといわれる天然素材あるいはその有効成分に関しては、その有効性が必ずしも満足できるものではなく、また血圧降下効果の発現までに長期間を要するものが多く、より有用な有効成分およびそれらを用いた製品が求められている。
【0004】
一方、長鎖炭化水素は、植物の蝋などに存在し、その利用には、例えば食品添加物としてパンの離型剤(特許文献1)、化粧品用として艶出剤(特許文献2)などがある。
しかしながら、長鎖炭化水素に血圧を低下させる作用があることは全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−179478号公報
【特許文献2】特開2006−248997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、安全性が高く、優れた血圧低下作用を有する高血圧改善剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、天然物由来の長期間持続摂取可能な血圧低下素材を種々探索した結果、炭素数16以上の長鎖炭化水素に優れた血圧低下作用があることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、炭素数16以上の長鎖炭化水素を有効成分とする高血圧改善剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高血圧改善剤は、優れた血圧低下作用を有するため、高血圧症等を予防、改善又は治療するための飲食品、医薬部外品、医薬品等として有用である。また、継続的な摂取もできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】SHRラットにおけるノナコサン及びトリアコンタン投与後の収縮期血圧変化率(初期値に対する相対値)を示す図である。
【図2】SHRラットにおけるヘプタデカン投与後及びペンタトリアコンタン投与後の収縮期血圧変化率(初期値に対する相対値)をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、炭素数16以上の長鎖炭化水素としては、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の長鎖炭化水素が挙げられる。なかでも、血圧低下作用の点から、炭素数16〜40のものが好ましく、特に17〜35のものが好ましく、さらに23〜35のものが好ましい。
【0012】
具体的には、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタンなどのアルカン;ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、イコセン、ヘンイコセン、ドコセン、トリコセン、テトラコセン、ペンタコセン、ヘキサコセン、ヘプタコセン、オクタコセン、ノナコセン、トリアコンテン、ヘントリアコンテン、ドトリアコンテン、トリトリアコンテン、テトラトリアコンテン、ペンタトリアコンテンなどのアルケン;ヘキサデカジエン、ヘプタデカジエン、オクタデカジエン、ノナデカジエン、イコサジエン、ヘンイコサジエン、ドコサジエン、トリコサジエン、テトラコサジエン、ペンタコサジエン、ヘキサコサジエン、ヘプタコサジエン、オクタコサジエン、ノナコサジエン、トリアコンタジエン、ヘントリアコンタジエン、ドトリアコンタジエン、トリトリアコンタジエン、テトラトリアコンタジエン、ペンタトリアコンタジエンなどのアルカジエン;ヘキサデシン、ヘプタデシン、オクタデシン、ノナデシン、イコシン、ヘンイコシン、ドコシン、トリコシン、テトラコシン、ペンタコシン、ヘキサコシン、ヘプタコシン、オクタコシン、ノナコシン、トリアコンチン、ヘントリアコンチン、ドトリアコンチン、トリトリアコンチン、テトラトリアコンチン、ペンタトリアコンチンなどのアルキンなどが挙げられる。なかでも、血圧低下作用の点から、アルカンが好ましく、特に直鎖のアルカンが好ましい。
【0013】
本発明において、炭素数16以上の長鎖炭化水素は1種又2種以上を組み合わせて用いることができる。当該長鎖炭化水素は、これを含む植物の蝋(ワックス)、石油などから公知の方法により得てもよく、前記蝋、石油などからの抽出物、抽出濃縮物、若しくは精製物などを用いることができる。また、市販品、化学合成品を用いてもよく、他の原料由来のものを用いてもよい。前記抽出物などにおける炭素数16以上の長鎖炭化水素の純度は、全量中30質量%以上であることが望ましいが、更には50質量%以上、特に70〜100質量%が好ましい。また、炭素数16以上の長鎖炭化水素の他に、炭素数16未満の炭化水素も含む流動パラフィンや石油ワックスなどの炭化水素類を用いてもよい。
【0014】
後記実施例で示すとおり、本発明の炭素数16以上の長鎖炭化水素は、高血圧自然発症モデルラットにおいて血圧を有意に低下させる作用を示した。従って、当該長鎖炭化水素は、これを有効成分とする高血圧改善剤として使用することができる。また、高血圧改善剤を製造するために使用することができる。
当該高血圧改善剤は、高血圧症を予防、改善又は治療するための飲食品、医薬部外品、医薬品等として使用可能である。そして、本発明の炭素数16以上の長鎖炭化水素は、高血圧症やそれと密接に関係する各種生活習慣病の予防、治療や改善を促進する生理機能をコンセプトとして、必要に応じてその旨の表示を付した食品、例えば機能性食品、病者用食品、特定保健用食品等として利用することができる。
【0015】
本発明の高血圧改善剤を医薬品として用いる場合の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与又は注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等による非経口投与が挙げられる。また、このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、本発明の長鎖炭化水素を単独で、又は他の薬学的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等を適宜組み合わせて用いることができる。これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口投与用製剤として用いる場合の該製剤中の本発明の炭素数16以上の長鎖炭化水素の含有量は、一般的に0.01〜5質量%とするのが好ましく、0.1〜1質量%とするのがより好ましい。
【0016】
本発明の高血圧改善剤を食品として用いる場合の形態としては、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料などの各種食品の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)が挙げられる。
種々の形態の食品を調製するには、本発明の長鎖炭化水素を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて用いることができる。当該食品中の本発明の炭素数16以上の長鎖炭化水素の含有量は、一般的に0.01〜5質量%とするのが好ましく、0.1〜1質量%とするのがより好ましい。
【0017】
本発明の高血圧改善剤を医薬品又は食品として使用する場合、成人1人当たりの1日の投与又は摂取量は、本発明の炭素数16以上の長鎖炭化水素として、例えば60〜1800mgとすることが好ましく、特に600〜1000mgであることが好ましい。また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【実施例】
【0018】
実施例1 長鎖炭化水素単回投与による血圧低下作用
SHRラット(16週齢、雄:N=6)に対して、ノナコサン(C2960、東京化成工業(株))、トリアコンタン(C3062、MP Biochemicals.LLC)を等量で混合し、0.5%(重量/容量)メチルセルロース400cP水溶液(和光純薬工業(株))に1mg/mlで懸濁して10mg/kg体重の用量で、ゾンデにより経口投与した。コントロール群には0.5%(重量/容量)メチルセルロース400cP水溶液のみを投与した。投与前、投与後1時間、3時間、6時間目に、ラット用非観式血圧測定装置(ソフトロン社製)にて血圧を測定した。SHRラットは、高血圧自然発症モデルラットである。
【0019】
図1に示すように、ノナコサン及びトリアコンタンを投与したラットの収縮期血圧は、コントロールに比べ、投与1時間後に有意に低下した。また、3時間後にも投与群に血圧低下傾向がみられた。
【0020】
実施例2 長鎖炭化水素単回投与による血圧低下作用
実施例1と同様の実験をヘプタデカン(C1736、シグマアルドリッチ)、ペンタトリアコンタン(C3572、Fluka)について行った。それぞれ0.5%(重量/容量)メチルセルロース400cP水溶液(和光純薬工業(株)に1mg/mlで懸濁して10mg/kg体重の用量で、ゾンデにより経口投与した。
【0021】
図2に示すように、ペンタトリアコンタンを投与したラットの収縮期血圧は、コントロールに比べ投与1時間後に有意に低下し、ヘプタデカンを投与したラットの血圧も、血圧低下傾向がみられた。また、3時間後にもペンタトリアコンタン投与群に有意な血圧低下がみられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数16以上の長鎖炭化水素を有効成分とする高血圧改善剤。
【請求項2】
長鎖炭化水素がアルカンである請求項1記載の高血圧改善剤。

【図1】
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【図2】
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