説明

高負荷伝動ベルト

【課題】センターベルトを装着した状態でブロックとセンターベルトとの間の動きを規制し摩耗や発熱といった問題を防止した高負荷伝動ベルトを提供する。
【解決手段】センターベルトと3、上ビーム11と下ビーム12をピラー13によって連結し、センターベルト3を装着するための溝部8、9を有するブロック2とからなるとともに、前記溝部内の溝上面および溝下面にはベルト幅方向の凸条部17、18が形成されるとともに一方センターベルトにも所定ピッチでベルト幅方向の凹条部15、16が形成され、該凸条部17、18と該凹条部15、16が噛み合うことによりブロックのセンターベルトに対するベルト進行方向への動きを規制した高負荷伝動ベルトにおいて、センターベルト3とブロック2を接着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトの長手方向に沿って多数のブロックを固定した高負荷伝動ベルトに係り、詳しくはセンターベルトとブロックとの摩擦によって発生する摩耗を低減しセンターベルトの切断といった原因によるベルトの故障を防止した長寿命な高負荷伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置に使用するベルトは、プーリのV溝幅を変えることによってプーリに巻きかかる有効径を変化させ変速比を調節する様な変速プーリに巻き掛けて使用するものであり、プーリからの側圧が大きくなるのでベルトは大きな側圧に耐えるものでなくてはならない。また、無段変速の用途以外にも通常のゴムベルトでは寿命が短くなりすぎるような高負荷伝動の用途には特別に高負荷に耐えうるようなベルトを用いる必要がある。
【0003】
そのようなベルトとして使用されるものの中に、センターベルトにブロックを固定してベルト幅方向の強度を高めた高負荷伝動ベルトがあり、具体的な構成としては、心体をゴムなどのエラストマー中に埋設したセンターベルトにボルトやリベットなどの止着材を用いてセンターベルトに使用しているエラストマーよりも比較的硬質のエラストマーからなるブロックを止着固定したものや、特許文献1に示すようにブロックの両側面に溝を有しており、一対のセンターベルトを前記側面に設けた溝に嵌合したようなベルトがある。
【0004】
このような引張伝動式の高負荷伝動ベルトはベルトの走行中にブロックとセンターベルトとの間で常に摩擦を生じ、応力の集中や発熱によりセンターベルトやブロックが劣化するという問題がある。また、このようなベルトの場合、上記のように無段変速の用途として使われるために、ベルトを巻きかけるプーリの有効径を変化させることによって変速するような仕組みとなっており、ベルトは小プーリ径で用いられることになる。
【0005】
特に小プーリ径にベルトが巻きかかる際に、センターベルトの内周面側がブロックに挟まれた状態になって応力が集中するとともに大きな摩擦力が発生し、センターベルトを構成するゴムが劣化してクラックが生じたり、ベルト切断の原因となったりしていた。
【0006】
そこでそのようなセンターベルトにかかる応力の集中を緩和するために特許文献2には、センターベルトの内周面に設けた凸部上端がブロックの凸部下端位置よりも上に位置するように設定して、ベルトがプーリに巻きかかって屈曲した際にセンターベルトの凸部がブロックによって挟まれることがないようにしたベルトが提案されている。
【0007】
また、特許文献3にはブロックとセンターベルトの嵌合する部分においてセンターベルト内周面に形成する凹部の曲率半径よりブロックの形成する凸部の曲率半径を小さく設定することによって両者の間に隙間を設けるようにしたベルトが開示されている。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−34342号公報
【特許文献2】特開昭62−151646号公報
【特許文献3】特開平9−25999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献2や特許文献3のような構成を採ることによって、ベルトの屈曲によってブロックとセンターベルトとの間で摩擦が発生するとともにの内周面に応力が集中して、センターベルトに亀裂を生じることや、発熱を来たしてゴムなどの材料が劣化するといった問題が発生することは緩和することができる。
【0010】
しかし、基本的にブロックによって拘束されたセンターベルトが屈曲する、特に小プーリ径にて屈曲することによってより強くブロックとセンターベルトとの間の摩擦が発生して発熱すること、また内周面が大きく圧縮されてどうしても内部発熱が発生し、センターベルトの摩耗につながるといった問題が解消されない。
【0011】
そこで本発明ではベルト走行時においてブロックとセンターベルトとの間で摩擦が発生したとしてもセンターベルトが摩耗することがないとともに発熱も少なく、センターベルトの切断によるベルトの寿命を防止できるとともに、熱によるブロックやセンターベルトの劣化を緩和した高負荷伝動ベルトの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1ではエラストマー中に心線を埋設したセンターベルトと、上ビームと下ビームをピラーによって連結し、センターベルトを装着するための上下ビームとピラーによって囲まれた溝部を有するブロックとからなるとともに、前記溝部内の溝上面および溝下面にはベルト幅方向の凸条部が形成されるとともに一方センターベルトにも所定ピッチでベルト幅方向の凹条部が形成され、該凸条部と該凹条部が噛み合うことによりブロックのセンターベルトに対するベルト進行方向への動きを規制した高負荷伝動ベルトにおいて、センターベルトとブロックを接着固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高負荷伝動ベルトでは、センターベルトとブロックとを接着固定していることからベルト走行時にブロックとの間で摩擦が生じることがないので、センターベルトの摩耗を防止することができると共にベルトの切断といった故障を低減することができる。また、摩擦による発熱を少なくすることもでき、ブロックを構成する樹脂材料の劣化の防止にもなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す要部斜視図であり、図2は同じく要部側面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内に心線5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3(3a、3b)と、このセンターベルト3(3a、3b)に係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の両側面2a、2bは、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3(3a、3b)を引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
【0016】
ブロック2は、上ビーム11および下ビーム12と、上下ビーム11、12の中央部同士を連結したピラー13からなっており、ブロック2の両側面2a、2bの間と2c、2dの間には一対のセンターベルト3(3a、3b)を嵌めこむ溝部14、15が形成されている。また、溝部15内の溝上面16および溝下面17にはセンターベルト3(3a、3b)の溝上面に設けた凹条部18と下面に設けた凹条部19に係合する第1凸条部20、21に係合するようになっている。本発明においてはブロック2とセンターベルト3とを接着剤により接着固定している。従来、ベルト走行中にブロック2とセンターベルト3とが擦れあうことによってセンターベルト3やブロック2が摩耗したり、熱が発生したりしてそれぞれを構成する素材が劣化しベルトの切断に至るなどの問題があった。しかし、ブロック2とセンターベルト3を接着固定することでそのような問題を解消することができる。
【0017】
図3は別のベルトの例であり、ビーム部21の両端から上方に向かって一対のサイドピラー22、23が延びており、このサイドピラー22、23の上端からそれぞれブロック2の中心に向かって延びるロック部24、25が対向するように設けられている。そして、これらビーム部21、サイドピラー22、23及びロック部24、25によってセンターベルト3が嵌合する嵌合溝20が形成されている。この嵌合溝20に、センターベルト3が、ロック部24、25間の開口部より挿入され装着される。また、ロック部24、25の嵌合溝20側には、凸部27がそれぞれ設けられており、この凸部27が、センターベルト3に所定ピッチで設けられている凹条部26に嵌合する。これによって、センターベルト3は、装着後はブロック2から抜けにくい状態となる。このような形態においても本発明ではブロック2とセンターベルト3を接着固定している。
【0018】
また、本発明におけるブロック2は樹脂材のみからなっているもの、また樹脂材にアルミニウム合金などの金属などからなるインサート材を埋設したもののいずれでもよい。インサート材を埋設していないブロック2を用いた場合、インサート材を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があり、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いているが、インサート材を有していないので剛性が低いといった面があり、上下ビーム11、12に撓みが生じやすく、ブロックとセンターベルトとの嵌合におけるゆるみが発生しやすく両者の間で摩耗や発熱などの問題が発生するという欠点がある。
【0019】
本発明ではブロック2とセンターベルト3とを例えばセンターベルト3の表面に接着剤10を付着させることによって接着固定しているが、ブロック2およびセンターベルト3は後述するような素材からなるものであり、その素材によって適する接着剤10の種類は異なってくるが、用いられる接着剤10の例としてはイソシアネート樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。接着の形態としても様々なものを適用でき、プライマーの状態の接着剤10をセンターベルト3に付着させて乾燥し、ブロック2を装着してから加熱処理して接着するといった方法を採ることも可能である。また接着剤10を付着させる方法もセンターベルト3におけるブロック2と接触する箇所に接着剤を塗布する方法、センターベルト3全体を接着剤の溶液に塗布して乾燥させるといった方法、ブロック側に接着剤を塗布する方法等を採ることができる。
【0020】
本発明におけるブロック2は樹脂を上記で説明したような所定形状に成形したものであり、インサート材の表面に樹脂材を被覆したブロックやブロック全部が樹脂材からなっているものを挙げることができる。
【0021】
インサート材の表面に樹脂材を被覆したブロック2は、図示はしないがブロックと略同じエ字形状のインサート材を用い、少なくともブロック同士が接触する箇所やプーリとの接触箇所を樹脂材で被覆したものである。インサート材は、ブロック2の耐側圧性や曲げ剛性を持たせる部分となるインサート材であり、素材としてはアルミ合金、セラミックス、セラミックスとアルミニウムとの複合材料、炭素繊維強化樹脂や鉄などの素材が挙げられる。
【0022】
耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が好ましく、金属材料の中ではアルミ合金の弾性率が7000kgf/mmで比重が2.8であるのに対し、鉄は弾性率が22000kgf/mmで比重が7.8であり、強度的には鉄を用いるほうが高いといえるが、高速で回転するベルトにとって、ベルト重量は寿命に大きく影響を与えるため軽量化の面で有利なアルミ合金を用いることが好ましい。
【0023】
樹脂材を所定の箇所に被覆配置する場合、ブロック2の大きさよりもひと回り小さい金属材料からなるインサート材を用いてそのほぼ全面を樹脂材で被覆したものでもよく、部分的に樹脂材を被覆配置したものに比べて、樹脂材の剥離などの問題が発生しにくいので好ましい形態ということができる。一方、ブロック2の軽量化という面からは部分的に樹脂材を被覆したものが有利である。
【0024】
ブロック2としては樹脂材のみからなるインサート材を有していないブロック2を用いた場合、インサート材を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があるが、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いている。
【0025】
樹脂材としては、比較的摩擦係数の大きく耐摩耗性に優れ、センターベルト3a、3bを構成するエラストマー4と比べると剛性の高い、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。
【0026】
これらの中でもブロック2を効率よく製造するために射出成形法にて製造するには、ポリアミド樹脂のような熱可塑性樹脂を用いることになる。また低摩擦係数で耐摩耗性に優れ、剛性があるとともに曲げに対しても弾力性を有しており、簡単に破損してしまうことのない樹脂がよいということからすると、ポリアミド樹脂なかでも4,6−ナイロンが好ましいといえる。
【0027】
また、これらの樹脂中に、綿糸、ポリアミド繊維やアラミド繊維等の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等からなる織布、フィラー、ウィスカ、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料等を混入した強化樹脂からなる。
【0028】
本発明では前述のようにブロックを形成する樹脂材中に繊維状の補強材やウィスカ状の補強材を配合することは可能であり、繊維状の補強材は15〜40重量%の範囲で配合する。15重量%未満であると補強効果が少なくブロックの耐摩耗性が十分でないなどの問題があり、40重量%を超えると樹脂への配合が困難になったり射出成形が困難になったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0029】
合成樹脂に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。その中でも前記のブロックを構成する樹脂で好ましい例である4,6−ナイロンと炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維が4,6−ナイロンの吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、且つ4,6−ナイロンの有する耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができるものである。前記繊維状補強材として上記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。
【0030】
また、他にも二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂から選ばれてなる少なくとも一つを混入することによってもブロック2の潤滑性を向上させることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、ポリフッ化アルコキシエチレン(PFA)等が挙げられる。
【0031】
また、ブロック2の下ビームは屈曲を許容しベルトがプーリに巻きかかることができるようにしなければならず、ベルト走行方向の前後面の少なくともいずれか一方に傾斜面を設けている。傾斜面を設けることによってブロック同士が緩衝することなくベルトが屈曲することができる。
【0032】
センターベルト3a、3bのエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心体5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心体5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維の織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
【0033】
センターベルト3の表面にはカバー帆布(図示しない)がセンターベルト3と一体的に積層配置されていてもよい。カバー帆布として用いられるのは、平織物、綾織物、朱子織物などを挙げることができ、素材もポリアミド繊維、ポリエステル繊維、綿、アラミド繊維等を挙げることができるが、摩耗や切断といった問題を防止するためにはアラミド繊維を用いることが好ましい。例えばベルト長手方向の緯糸にアラミド繊維を用いるものでもよい。アラミド繊維としてはパラ系アラミド繊維でもメタ系アラミド繊維でもいずれでもよいが、0.3〜1.2デニールの原糸を収束したマルチフィラメント糸を用いることが好ましい。また、アラミド繊維以外にポリアミド繊維やウレタン弾性糸を混撚りした糸も用いることができるが、アラミド繊維の占める割合が緯糸の全重量の20〜80%であることが好ましい。原糸の太さが0.3デニール未満であるとベルト長手方向のカバー帆布の引張強さが低下し、耐摩耗性にも劣ることになるので好ましくない。逆に1.2デニールを超えるような太さであると製織後にカバー帆布としての剛性が高くなりすぎて経糸と緯糸とのバランスが取れなくなったり帆布にしわを発生させたりする原因となるので好ましくない。
【0034】
パラ系アラミド繊維としては、例えば商品名をケブラー、テクノーラ、トワロンを挙げることができ、メタ系アラミド繊維としたは、商品名でノーメックス、コーネックスを挙げることができる。
【0035】
また、ベルト幅方向の経糸についても緯糸と同様にパラ系アラミド繊維やメタ系アラミド繊維などのアラミド繊維からなるフィラメント糸としてもよく、その他6ナイロン、6,6−ナイロン、12ナイロン等のポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維などのフィラメント糸を用いることができる。
【0036】
このような構成のカバー帆布をセンターベルトの表面に積層接着するために接着処理がなされる。接着処理としては例えばRFL液、イソシアネート溶液あるいはエポキシ溶液による処理が挙げられる。RFL液はレゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ここで使用するラテックスとしてはスチレン・ブタジエン・ピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンなどのラテックスである。また、ゴムを溶剤に溶かしてゴム糊状にしたものをカバー帆布の表面に付着させる糊引き処理も接着処理として挙げることができる。
【0037】
ベルトの形状は図1に示したものに限られず、ブロックの側面に開口部を有しセンターベルトのベルト幅方向に動きが発生しやすいタイプのベルトであれば本発明を適用することができる。図示はしないが、例えば略コ字形状のブロックを用い、片側の側面に開口した溝部にセンターベルトを嵌め込んだ構成となったようなベルトにであっても構わない。
【0038】
本発明の実施例である高負荷伝動ベルトと本発明から外れる比較例となる高負荷伝動ベルトをそれぞれ作製し表1に示すような条件で走行させて耐久テストを行った。
【実施例】
【0039】
(実施例1)
実施例1の高負荷伝動ベルトは、図1に示すようなベルトを用いたものであり、ブロックに用いる樹脂としては、4,6−ナイロンに対して炭素繊維を30質量%配合したものを用いた。センターベルトとしては心線にアラミド繊維、エラストマーにクロロプレンゴムを用いたものとした。そしてセンターベルトをPAPI135(三菱化学ダウ社製イソシアネート樹脂)の50wt%の溶液に10秒間漬けて3分間自然乾燥させる工程を3回繰り返したものを用い、ブロックを装着した後に150℃のオーブンで30分間加熱することでブロックとセンターベルトを接着固定した。得られたベルトを走行させて走行後のカバー帆布の摩耗状況を確認した。ベルトの走行条件は表1に示すような条件とした。試験結果を表2に示す。
【0040】
(比較例1)
比較例1はブロックとセンターベルトを接着固定しなかった以外は実施例1と同様な高負荷伝動ベルトを用いた。実施例1と同様に走行試験を行った。その結果を表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果からブロックとセンターベルトを接着固定しなかった以外は同じ条件で走行させた比較例にてカバー帆布に摩耗が発生しているのに対して実施例では摩耗が発生しておらず、ブロックとセンターベルトを接着剤で接着固定することによって、摩耗を防止することができ、しかも他の問題も特に発生しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
ベルトに装着したブロックの複数方向の撓みをを抑えて割れを防止することができ、自動車や自動二輪車、農業機械の無段変速装置など、プーリの有効径が変化し大きなトルクを伝達するようなベルトとして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の高負荷伝動ベルトの要部斜視図である。
【図2】本発明の高負荷伝動ベルトの側面図である。
【図3】本発明の別の例を示す高負荷伝動ベルトの斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
3 センターベルト
4 エラストマー
5 心線
6 側面
7 側面
8 嵌合溝
9 嵌合溝
10 接着剤
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
15 凹条部
16 凹条部
17 凸条部
18 凸条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー中に心線を埋設したセンターベルトと、上ビームと下ビームをピラーによって連結し、センターベルトを装着するための上下ビームとピラーによって囲まれた溝部を有するブロックとからなるとともに、前記溝部内の溝上面および溝下面にはベルト幅方向の凸条部が形成されるとともに一方センターベルトにも所定ピッチでベルト幅方向の凹条部が形成され、該凸条部と該凹条部が噛み合うことによりブロックのセンターベルトに対するベルト進行方向への動きを規制した高負荷伝動ベルトにおいて、センターベルトとブロックを接着固定したことを特徴とする高負荷伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−153134(P2006−153134A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−344120(P2004−344120)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)