説明

高負荷伝動ベルト

【課題】センターベルトを装着した状態でブロックとセンターベルトとの間の動きを規制し摩耗や発熱といった問題を防止した高負荷伝動ベルトを提供する。
【解決手段】センターベルト3a、3bと、上ビーム11と下ビーム12をピラー13によって連結し、上下ビーム11、12とピラー13によってセンターベルトを装着する溝部14、15を有するブロック2とからなり、前記溝部14、15内の溝上面および溝下面にはベルト幅方向の第1凸条部20、21が形成されるとともに一方センターベルト3a、3bにも所定ピッチでベルト幅方向の凹条部18、19が形成され、それぞれが嵌合しており、溝上面に形成された第1凸条部20の根元にベルト幅方向に伸びる第2凸条部22を形成した高負荷伝動ベルトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターベルトの長手方向に沿って所定ピッチでブロックを固定した高負荷伝動ベルトに関し、詳しくは軽量であり曲げ弾性率、耐衝撃性、耐摩耗性、寸法精度に優れ、またセンターベルトとブロックとの間の動きを防止した高負荷伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速装置に使用するベルトは、プーリのV溝幅を変えることによってプーリに巻きかかる有効径を変化させ変速比を調節する様な変速プーリに巻き掛けて使用するものであり、プーリからの側圧が大きくなるのでベルトは大きな側圧に耐えるものでなくてはならない。また、無段変速の用途以外にも通常のゴムベルトでは寿命が短くなりすぎるような高負荷伝動の用途には特別に高負荷に耐えうるようなベルトを用いる必要がある。
【0003】
そのようなベルトとして使用されるものの中に、センターベルトにブロックを固定してベルト幅方向の強度を高めた引張伝動式の高負荷伝動ベルトがあり、具体的な構成としては、心線をゴムなどのエラストマー中に埋設したセンターベルトにボルトやリベットなどの止着材を用いてセンターベルトに使用しているエラストマーよりも比較的硬質のエラストマーからなるブロックを止着固定したものがある。
【0004】
このような引張伝動式の高負荷伝動ベルトに用いるブロックの要求品質としては、上記のように摩擦伝動において高負荷の伝動を目的としているために、曲げ疲労性、耐摩耗性、耐熱性、剛性、耐衝撃性等の性質をバランス良く保有する必要がある。さらにプーリを摩耗させないようにすることも大切な要素である。
【0005】
これらの要求を満たす高負荷伝動ベルトとして、例えば、特許文献1に開示されているようなものがある。このベルトは、ブロックとプーリの接触する部分が、フェノール系樹脂成分にゴム成分が添加された樹脂成形材料によって、金属等によって形成されているインサート材を被覆した2重構造のブロックを用いたものである。
【0006】
また、特許文献2には金属製のインサートを埋設していないブロックを用いたベルトであり、金属製のインサートを有していないことから多少ブロックの強度面では劣るところがあるものの、ベルトを大幅に軽量化することが可能となっている。インサートを埋設したブロックを用いたベルトが比較的重量があり、ベルトを高速で回転させると遠心力によるセンターベルトの劣化が早いという問題があるのであまり高回転の用途に向いていないということがあった。それに対して特許文献2に開示されているような金属製のインサートを埋設していないベルトでは遠心力の問題が少なく高回転にも適用できる。
【0007】
また、特許文献3にはブロックの溝の幅よりもセンターベルトの厚みを大きく設定することによってセンターベルトとブロックとのがたつきをなくしてブロックの揺動を抑えることによって、両者の間で生じる摩耗や発熱を防止するといった技術が開示されている。
【0008】
特許文献4には上ブロックに凹凸面を設けるとともにセンターベルト上面に設けた高度の低いエラストマーを配置して前記凹凸面をエラストマーに食い込ませることによってブロックとセンターベルトを強固に固定したベルトが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−34342号公報
【特許文献2】特開2001−311453号
【特許文献3】実開平1−55344号公報
【特許文献4】特開平7−197997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、最近はニーズの多様化により、高負荷ではあるが、従来のものより負荷が少し低く、高速で回転させることができる高負荷伝動ベルトが要求されるようになってきている。
【0011】
このため、例えば特許文献1に開示されているベルトは、アルミニウム合金等をインサート材として使用しているため、高速で回転すると、その重量のため、大きな遠心力がかかり、ベルトに大きな張力が作用して、ベルトが早期破損するという問題が生じるようになった。
【0012】
特許文献2のベルトはブロックにインサート材を有していない。アルミニウム合金等金属製のインサート材を用いなければブロックが軽量化されてひいてはベルト全体の重量も大幅に軽量することができる。よって高速回転に有利なベルトとすることができる。
【0013】
しかし、ベルトの軽量化と引き換えにブロックの強度の面では低下を避けることができず、比較的撓みなどが発生しやすいブロックとなってしまう。このようなベルトではブロックに設けた溝部にエラストマー製のセンターベルトを装着する構造となっているが、センターベルトを装着する際にもブロックの上下ビームに撓みが発生することから、センターベルトとブロックの間で緩みを生じる。
【0014】
一方で特許文献3に記載されているようなブロックの揺動による摩耗や発熱といった問題を解決するためにはブロックの溝の幅よりもセンターベルトの厚みを大きく取るといった方策があるが、インサート材を埋設していないブロックにおいては、上下ビームの撓みが更に大きくなってしまうという問題がある。センターベルトとブロックとの間におけるベルト幅方向の動きは、ベルトの伝達性能が低下したり騒音発生の原因になったりする問題があった。がたつきを防止するためにブロックに設けた溝部の幅をセンターベルトの厚みに対して小さく設定することで圧縮比を大きくすることが考えられるが、大きくしすぎるとベルトの組立て時においてセンターベルトの装着作業が困難になるという問題やベルト屈曲時の発熱が大きくなるといった問題にもつながる。
【0015】
特許文献4ではセンターベルトに対するブロックのベルト長手方向に対する動きを防止するためにブロックの凹凸面をセンターベルトのエラストマーに食い込ませている。
【0016】
そこで本発明はこのような問題を解消し、しかもブロックとセンターベルトとの間のベルト幅方向の動きが強く規制されることでブロックの揺動やブロックがベルト幅方向に対して傾きを生じたまま走行する斜行になることがなく、摩耗や発熱といった問題を防止することができる高負荷伝動ベルトの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1ではエラストマー中に心線を埋設したセンターベルトと、上ビームと下ビームをピラーによって連結し、センターベルトを装着するための上下ビームとピラーによって囲まれた溝部を有するブロックとからなるとともに上下ビームの側面がプーリV溝と当接するV側面を形成した高負荷伝動ベルトにおいて、前記溝部内の溝上面および溝下面にはベルト幅方向の第1凸条部が形成されるとともに一方センターベルトにも所定ピッチでベルト幅方向の凹条部が形成され、その第1凸条部と凹条部が互いに嵌合しており、前記第1凸条部の内少なくとも溝上面に形成された凸条部の根元にベルト幅方向に伸びる第2凸条部を形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項2では、第2凸条部の高さが第1凸条部高さの10〜50%の範囲である高負荷伝動ベルトとしている。
【0019】
請求項3では、ブロックにはインサート材を埋設してない高負荷伝動ベルトとしている。
【0020】
請求項4では、第2凸条部の表面が円筒面である高負荷伝動ベルトとしている。
【0021】
請求項5では、第1凸条部及び/又は第2凸条部にはブロックに対するセンターベルトのベルト幅方向の動きを規制する突起を設けてなる高負荷伝動ベルトとしている。
【発明の効果】
【0022】
本発明の高負荷伝動ベルトでは、ブロックとセンターベルトとの間の固定・保持はブロックの溝部の幅をセンターベルトの厚みよりも小さくとるのではなく、溝部内の溝上面に設けた第1凸条部の根元にベルト幅方向に第2凸条部を設けることによってブロックに対するセンターベルトのベルト幅方向の動きを規制するものであり、センターベルトやブロックの摩耗や発熱といった問題を防止することができる。
【0023】
第2凸条部の高さを第1凸条部高さの10〜50%の範囲に設定することで、ブロックとセンターベルトとの組立て時にブロック溝部へのセンターベルトの挿入を妨げることなく、しかもベルト走行時におけるブロックとセンターベルトとの間の緩みを効果的に防止することができる。
【0024】
また、アルミニウム合金など金属製のインサート材を埋設していないブロックにおいてはブロックの撓みによるブロックとセンターベルトの緩みが発生しやすく、本発明を適用することによる効果が顕著に得られるものである。
【0025】
第2凸条部の表面を円筒面とすることによって、センターベルトに亀裂を発生させるといった問題が発生しにくい。
【0026】
第1凸条部または第2凸条部にはブロックに対するセンターベルトのベルト幅方向の動きを規制する突起を設けてなることから、センターベルトのベルト幅方向の動きを規制する凹凸を設けることによってセンターベルトを構成するエラストマー素材に食いつき、ブロックとセンターベルトとの間の動きが強く規制されるものである。ゆえにセンターベルトやブロックの摩耗や発熱といった問題を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る高負荷伝動ベルト1の一例を示す要部斜視図であり、図2は同じく要部側面図、図3はブロックの正面図、図4はブロックの溝上面の平面図である。本発明の高負荷伝動ベルト1は、エラストマー4内に心線5をスパイラル状に埋設してなる同じ幅の二本のセンターベルト3a、3bと、このセンターベルト3a、3bに係止固定されている複数のブロック2とから構成されている。このブロック2の両側面2a、2bは、プーリのV溝と係合する傾斜のついた面となっており、駆動されたプーリから動力を受け取って、係止固定されているセンターベルト3a、3bを引張り、駆動側プーリの動力を従動側プーリに伝動している。
【0029】
ブロック2は、上ビーム11および下ビーム12と、上下ビーム11、12の中央部同士を連結したピラー13からなっており、ブロック2の両側面2a、2bの間と2c、2dの間には一対のセンターベルト3a、3bを嵌めこむ溝部14、15が形成されている。また、溝部15内の溝上面16および溝下面17にはセンターベルト3a、3bの溝上面に設けた凹条部18と下面に設けた凹条部19に係合する第1凸条部20、21に係合するようになっている。
【0030】
また、本発明におけるブロック2は樹脂材のみからなっているもの、また樹脂材にアルミニウム合金などの金属などからなるインサート材を埋設したもののいずれでもよい。インサート材を埋設していないブロック2を用いた場合、インサート材を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があり、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いているが、インサート材を有していないので剛性が低いといった面があり、上下ビーム11、12に撓みが生じやすく、ブロックとセンターベルトとの嵌合におけるゆるみが発生しやすく両者の間で摩耗や発熱などの問題が発生するという欠点がある。
【0031】
本発明においては図に示すようにブロックの溝上面16に形成した第1凸条部20の根元にベルト幅方向に延びる第2凸条部22を設けている。この第2凸条部22はブロックにセンターベルトを装着した状態でセンターベルト側の凸条部23と緩衝してブロックとセンターベルトとの間の動きを強く規制することができるようになり、ベルトの走行中にブロックがプーリからの力を受けた際にもブロックの揺動を抑制してブロックとセンターベルトにおける摩耗や発熱を防止することができるものである。
【0032】
第2凸条部22は、従来であれば第1凸条部20の根元で凹の曲面で形成されていた箇所であり、そこにベルト幅方向に延びる凸条部を設けたものである。図面では円筒面を形成しているがその形状に限られるものではなく角を持つ面を有する凸条部22であってもよい。ただし、ブロックにセンターベルトを挿入する際の作業性も考慮すると、角を持つ面であると挿入が困難になることから円筒面であることが好ましい形態であるといえる。
【0033】
また、図5に示す第2凸条部22の高さhは第1凸条部20の高さHに対して10〜50%の割合で設定することが好ましい。第1凸条部20の高さHの10%未満であると嵌合をきつくしてブロックとセンターベルトとの動きを規制する効果が乏しく、50%を超えると第2凸条部22を円筒面にしたとしてもブロックへセンターベルトを挿入する作業が困難になることと、ブロックとセンターベルトの嵌合がきつくなりすぎて、ベルト走行中に繰返し受けるセンターベルトが受ける応力が大きくなってセンターベルトの早期劣化を招いてしまうので好ましくない。
【0034】
また、ブロックの溝上面16と溝下面17の少なくともいずれか一方に形成した第1凸条部20及び/又は第2凸条部22の上にセンターベルトとブロックとのベルト幅方向の動きを規制する突起24を設けてもよい。具体的には図6および図7に示すように第1凸条部から第2凸条部にかけて突起24を設けている。この突起を設けることによってブロックの溝部15にセンターベルトを装着すると、突起24がセンターベルトを構成しているエラストマー素材に食い込んだ状態になり、ブロックとセンターベルトとの間で強く動きを規制することができるようになり、ベルトの走行中にブロックがプーリからの力を受けた際にもブロックの揺動を抑制してブロックとセンターベルトにおける摩耗や発熱を防止することができるものである。突起24は図8や図9に示すように第1凸条部もしくは第2凸条部のいずれか一方だけに設けても構わない。
【0035】
本発明におけるブロック2は樹脂を上記で説明したような所定形状に成形したものであり、インサート材の表面に樹脂材を被覆したブロックやブロック全部が樹脂材からなっているものを挙げることができる。
【0036】
インサート材の表面に樹脂材を被覆したブロック2は、図示はしないがブロックと略同じエ字形状のインサート材を用い、少なくともブロック同士が接触する箇所やプーリとの接触箇所を樹脂材で被覆したものである。インサート材は、ブロック2の耐側圧性や曲げ剛性を持たせる部分となるインサート材であり、素材としてはアルミ合金、セラミックス、セラミックスとアルミニウムとの複合材料、炭素繊維強化樹脂や鉄などの素材が挙げられる。
【0037】
耐側圧性や曲げ剛性を持たせるという面では金属材料が好ましく、金属材料の中ではアルミ合金の弾性率が7000kgf/mmで比重が2.8であるのに対し、鉄は弾性率が22000kgf/mmで比重が7.8であり、強度的には鉄を用いるほうが高いといえるが、高速で回転するベルトにとって、ベルト重量は寿命に大きく影響を与えるため軽量化の面で有利なアルミ合金を用いることが好ましい。
【0038】
樹脂材を所定の箇所に被覆配置する場合、ブロック2の大きさよりもひと回り小さい金属材料からなるインサート材を用いてそのほぼ全面を樹脂材で被覆したものでもよく、部分的に樹脂材を被覆配置したものに比べて、樹脂材の剥離などの問題が発生しにくいので好ましい形態ということができる。一方、ブロック2の軽量化という面からは部分的に樹脂材を被覆したものが有利である。
【0039】
ブロック2としては樹脂材のみからなるインサート材を有していないブロック2を用いた場合、インサート材を埋設したブロックを用いたベルトよりも、軽量化が可能なので高回転で使用してもベルトに発生する遠心力が小さいという優位点があるが、自動二輪などの比較的軽負荷で高回転の用途に向いている。
【0040】
樹脂材としては、比較的摩擦係数の大きく耐摩耗性に優れ、センターベルト3a、3bを構成するエラストマー4と比べると剛性の高い、具体的には硬度90°JIS A以上の硬質ゴム、硬質ポリウレタン樹脂、液晶樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等のゴムや合成樹脂が用いられる。
【0041】
これらの中でもブロック2を効率よく製造するために射出成形法にて製造するには、ポリアミド樹脂のような熱可塑性樹脂を用いることになる。また低摩擦係数で耐摩耗性に優れ、剛性があるとともに曲げに対しても弾力性を有しており、簡単に破損してしまうことのない樹脂がよいということからすると、ポリアミド樹脂なかでも4,6−ナイロンが好ましいといえる。
【0042】
また、これらの樹脂中に、綿糸、ポリアミド繊維やアラミド繊維等の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等からなる織布、フィラー、ウィスカ、シリカ、炭酸カルシウムなどの無機材料等を混入した強化樹脂からなる。
【0043】
本発明では前述のようにブロックを形成する樹脂材中に繊維状の補強材やウィスカ状の補強材を配合することは可能であり、繊維状の補強材は15〜40重量%の範囲で配合する。15重量%未満であると補強効果が少なくブロックの耐摩耗性が十分でないなどの問題があり、40重量%を超えると樹脂への配合が困難になったり射出成形が困難になったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0044】
合成樹脂に配合する繊維状補強材としては、アラミド繊維、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などを挙げることができる。その中でも前記のブロックを構成する樹脂で好ましい例である4,6−ナイロンと炭素繊維を組み合わせて用いることによって炭素繊維が4,6−ナイロンの吸水性の欠点を改善し、剛性を大幅に向上させることができて、且つ4,6−ナイロンの有する耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性を生かすことができるものである。前記繊維状補強材として上記の有機繊維のほかにも酸化亜鉛ウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、ホウ酸アルミニウムウィスカなどの無機繊維を配合してもよい。
【0045】
また、他にも二硫化モリブデン、グラファイト、フッ素系樹脂から選ばれてなる少なくとも一つを混入することによってもブロック2の潤滑性を向上させることができる。フッ素系樹脂としては、ポリ4フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化エチレンプロピレンエーテル(PFPE)、4フッ化エチレン6フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、ポリフッ化アルコキシエチレン(PFA)等が挙げられる。
【0046】
また、ブロック2の下ビームは屈曲を許容しベルトがプーリに巻きかかることができるようにしなければならず、ベルト走行方向の前後面の少なくともいずれか一方に傾斜面を設けている。傾斜面を設けることによってブロック同士が緩衝することなくベルトが屈曲することができる。
【0047】
センターベルト3a、3bのエラストマー4として使用されるものは、クロロプレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴムなどの単一材またはこれらを適宜ブレンドしたゴムあるいはポリウレタンゴム等が挙げられる。そして、心体5としてはポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、スチールワイヤ等から選ばれたロープが用いられる。また、心体5はロープをスパイラル状に埋設したもの以外にも、上記の繊維の織布、編布や金属薄板等を使用することもできる。
【0048】
ベルトの形状は図1に示したものに限られず、ブロックの側面に開口部を有しセンターベルトのベルト幅方向に動きが発生しやすいタイプのベルトであれば本発明を適用することができる。図示はしないが、例えば略コ字形状のブロックを用い、片側の側面に開口した溝部にセンターベルトを嵌め込んだ構成となったようなベルトにであっても、溝部の溝上面、溝下面に設けた凸条部20、21のいずれか少なくとも一方にブロックとセンターベルトの間でベルト幅方向の動きを規制する第2凸条部22を設けることによって、同様にブロックの揺動や斜行を抑制してブロックやセンターベルトにおける摩耗や発熱を防止することができる。
【0049】
本発明の実施例である高負荷伝動ベルトと本発明から外れる比較例となる高負荷伝動ベルトをそれぞれ作製し表1に示すような条件で走行させて耐久テストを行った。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
実施例1の高負荷伝動ベルトは、図1に示すようなベルトを用いたものであり、ブロック両側面に開口した溝内の上側にある第1凸条部の根元には高さが0.3mmで表面が円筒面である第2凸条部を設けている。ブロックに用いる樹脂としては、4,6−ナイロンに対して炭素繊維を30質量%配合したものを用いた。センターベルトとしては心線にアラミド繊維、エラストマーにクロロプレンゴムを用いたものとした。ブロックとセンターベルトの仕様を表1に示す。また、耐久テストの走行条件は表2に示すような条件とした。耐久テストの結果を表3に示す。
【0051】
(実施例2)
実施例2は第2凸条部の高さを0.4mmとした以外は実施例1と同様な高負荷伝動ベルトを用いた。ブロックとセンターベルトの仕様を表1に示す。実施例1と同様に耐久テストを行った。その結果を表3に示す。
【0052】
(実施例3)
実施例3は第1凸条部の先端を形成する円弧のrを0.6mmとしセンターベルトの凹条部の底を形成する円弧のrを0.3mmとした以外は実施例1と同様な高負荷伝動ベルトを用いた。ブロックとセンターベルトの仕様を表1に示す。実施例1と同様に耐久テストを行った。その結果を表3に示す。
【0053】
(比較例1)
比較例1は第2凸条部を設けなかった以外は実施例1と同様な高負荷伝動ベルトを用いた。ブロックとセンターベルトの仕様を表1に示す。実施例1と同様に耐久テストを行った。その結果を表3に示す。
【0054】
(比較例2)
比較例2は第2凸条部の高さを0.6mmとした以外は実施例1と同様な高負荷伝動ベルトを用いた。ブロックとセンターベルトの仕様を表1に示す。実施例1と同様に耐久テストを行った。その結果を表3に示す。
【0055】
(比較例3)
比較例3は第2凸条部を設けなかった以外は実施例3と同様な高負荷伝動ベルトを用いた。ブロックとセンターベルトの仕様を表1に示す。実施例1〜3と同様に耐久テストを行った。その結果を表3に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表3の結果からブロックの溝内で第1凸条部の根元に第2凸条部を設けることによって負荷をかけた状態でベルトを走行させてもブロックとセンターベルトとの嵌合が緩みにくく、センターベルトの摩耗による切断を防止することができることがわかる。また、第2凸条部の高さを大きく取りすぎると第2凸条部とセンターベルトとの緩衝の度合いが大きくなりすぎてセンターベルトの切断につながってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0060】
ベルトに装着したブロックの複数方向の撓みをを抑えて割れを防止することができ、自動車や自動二輪車、農業機械の無段変速装置など、プーリの有効径が変化し大きなトルクを伝達するようなベルトとして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の高負荷伝動ベルトの要部斜視図である。
【図2】本発明の高負荷伝動ベルトの側面図である。
【図3】本発明に用いられるブロックの正面図である。
【図4】ブロックの溝内における溝上面の平面図である。
【図5】上ビーム部分を拡大した側面図である。
【図6】凸条部上に突起を設けたブロックの正面図である。
【図7】図6における上ビーム部分を拡大した側面図である。
【図8】突起の別の例を示す図7に相当する上ビーム部分を拡大した側面図である。
【図9】突起の別の例を示す図7に相当する上ビーム部分を拡大した側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 高負荷伝動ベルト
2 ブロック
2a 側面
2b 側面
3a センターベルト
3b センターベルト
4 エラストマー
5 心体
6 上面
7 下面
11 上ビーム部
12 下ビーム部
13 センターピラー
14 嵌合溝
15 嵌合溝
16 溝上面
17 溝下面
18 凹条部
19 凹条部
20 第1凸条部
21 第1凸条部
22 第2凸条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー中に心線を埋設したセンターベルトと、上ビームと下ビームをピラーによって連結し、センターベルトを装着するための上下ビームとピラーによって囲まれた溝部を有するブロックとからなるとともに上下ビームの側面がプーリV溝と当接するV側面を形成した高負荷伝動ベルトにおいて、前記溝部内の溝上面および溝下面にはベルト幅方向の第1凸条部が形成されるとともに一方センターベルトにも所定ピッチでベルト幅方向の凹条部が形成され、その第1凸条部と凹条部が互いに嵌合しており、前記第1凸条部の内少なくとも溝上面に形成された第1凸条部の根元にベルト幅方向に伸びる第2凸条部を形成したことを特徴とする高負荷伝動ベルト。
【請求項2】
第2凸条部の高さが第1凸条部高さの10〜50%の範囲である請求項1記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項3】
ブロックにはインサート材を埋設してない請求項1〜2記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項4】
第2凸条部の表面が円筒面である請求項1〜3記載の高負荷伝動ベルト。
【請求項5】
第1凸条部または第2凸条部にはブロックに対するセンターベルトのベルト幅方向の動きを規制する突起を設けてなる請求項1〜4記載の高負荷伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−170434(P2006−170434A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336450(P2005−336450)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)