説明

高輝度放電ランプ用の始動補助機構

【課題】従来技術の問題を解消することであり、改良された始動補助機構を提供することであり、始動補助機構の価値や可能性を向上させることである。
【解決手段】アーク放電光源10が中空センター部14と、相対して配置した端部16及び18とを有し、水晶から好ましく形成した透明胴部12を含む。中空センター部14内の陰極電極24及び陽極電極34間にアークギャップを画定する空間42があり、始動補助機構41が、陽極電極34を実質的に包囲する補助電極44を含み、この補助電極が、透明胴部12の外側表面46上にのみ位置決めされると共に、陰極引き込み線20に電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク放電光源に関し、詳しくは、アーク放電光源用の始動補助機構に関する。更に詳しくは、本発明は、誘電体バリヤ放電(以下、DBD)及び真空紫外線光子(以下、VUV)依存型の始動補助機構に関する。
【背景技術】
【0002】
光源として用いられる高強度アーク放電容器は、照明を効果的に生じさせるための実行可能なオプションであり、長年そのように使用されてきている。高強度アーク放電容器は通常、低圧又は高圧の2つの基本的形態を有する構成とされる。一般に、低圧型光源ではアーク発生及び維持用の媒体の一部としてアルゴンを用いる。こうした低圧型光源では電極の間部分にアークギャップを画定させるため、装置が2つの極限状況、つまり、開放回路に似た装置状況を呈する始動前及び短絡に等しい装置状況を呈する始動後の各状況にある間の電流制御用にある種の又はその他の電流安定装置を使用する必要がある。
【0003】
その独特の始動条件故に、低圧型光源ではアークの始動開始を支援するある種の又はその他の始動補助機構が使用されてきている。DBD開始に関しては、始動補助機構には2つの基本タイプ、即ち、アークチャンバ内でDBDを生成させるタイプのものとアークチャンバ外でDBDを生成させるタイプのものとがある。前者の一例は米国特許第3,715,622号に、後者の一例は同第6,222,320号に夫々示される。また、後者の特定構成のものでは“プレス内気泡(bubble in the press)”と称するものを使用する。そうした補助機構の例は米国特許第5,323,091号及び同第5,959,404号に記載される。前記米国特許第5,323,091号及び同第5,959,404号の各方法では気泡中にDBDが生成されるが、光子が放電容器内の主電極に達するまでに水晶製容器を通過する必要があり、殆どのUV放射が水晶に吸収されてしまうので始動補助効果が著しく低下する。またこの特定の始動補助機構には、DBDが陰極の背後で気泡中に生じるために見にくいことでその効果が制約されるという問題がある。しかも、始動補助機構の一部として鋭い縁部を持つモリブデン箔が使用され、この鋭い縁部が電子放出を促進するので、モリブデン箔は陰極としてよりは陽極としての作用が強くなる。更には、気泡容積が小さいので、気泡壁にはモリブデン箔を陽極として作用させる自由電子が殆ど存在しない。他方、気泡内で箔を陰極として利用する場合、箔は着火相中に強いイオン衝撃に晒されて劣化する。
【0004】
米国特許第6,201,348号には、ランプの底部位置でコイルを形成する帰線を含み、アウタージャケット内のバッファガス中に低圧DBDを生成させるまた別の始動補助機構が示される。第1に、この機構では生成されるDBDは放散され、陰極からは遠い位置で生成し、第2には、DBDにより生じた光子は放電容器(水晶製の)の壁を貫いて移動しなければならず、従って吸収され、かくしてその実用性は低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,715,622号明細書
【特許文献2】米国特許第6,222,320号明細書
【特許文献3】米国特許第5,323,091号明細書
【特許文献4】米国特許第5,959,404号明細書
【特許文献5】米国特許第6,201,348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の問題を解消することであり、改良された始動補助機構を提供することであり、始動補助機構の価値や可能性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1様相に従えば、アーク放電光源であって、中空センター部及び対向する各端部を有する透明胴部と、前記各端部の一方に位置決めされた陰極引き込み線にして、中空センター部内の陰極電極に於てその第1端部位置で終端し、その第2端部を電源用のコネクタに配置した陰極引き込み線と、を含むアーク放電光源が提供される。陽極引き込み線は前記各端部の他方に位置決めされ、中空センター部内の陽極電極においてその第1端部位置で終端し、その第2端部を電源用のコネクタに配置した陽極引き込み線と、を含んでいる。中空センター部内の陰極電極と陽極電極との間の空間が放電ギャップを画定する。アーク発生及び維持溶媒対が中空センター部内に設けられ、補助電極が陽極を実質的に包囲すると共に、中空センター部の外側表面上のみに位置決めされ、且つ陰極引き込み線に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0008】
従来技術の問題を解消し、改良され、その価値や可能性を向上させた始動補助機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例における側面図である。
【図2】図2は、本発明の他の実施例における側面図である。
【図3】図3は、従来装置に対する本発明の優位性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して以下に本発明を詳しく説明するに、図1にはアーク放電光源10が示され、中空センター部14と、相対して配置した端部16及び18とを有し、水晶から好ましく形成した透明胴部12を含んでいる。
【0011】
陰極引き込み線20が端部16内に位置決めされ、その第1端部22が中空センター部14内の陰極電極24内で終端し、その第2端部26が電源用のコネクタ28内に配置される。陽極引き込み線30が他方の端部18内に位置決めされ、その第1端部32が中空センター部14内の陽極電極34内で終端し、その第2端部が電極用のコネクタ40内に配置される。陰極電極及び陽極電極は代表的にはタングステン製であり、水晶製の端部内にシールしたモリブデン箔20a及び30aに夫々固定される。中空センター部14内の陰極電極24及び陽極電極34間にはアークギャップを画定する空間42が存在する。
【0012】
中空センター部14内には既知の如くアーク発生用及び維持用の媒体43を設ける。
始動補助機構41が、陽極電極34を実質的に包囲する補助電極44を含み、この補助電極が、透明胴部12の外側表面46上にのみ位置決めされると共に、陰極引き込み線20に電気的に接続される。
図1に示すように、補助電極44は、図2に示すように少なくとも2回巻きした巻き線部44aと、鞘状の導電体44bとを含んでいる。光源を投射光源として使用する場合、導電体44bは不透明化され得、金属製又は導電性コーティングであり得る。
【0013】
図3には、幾つかの従来例に対して明らかとなった本発明の有用性が示される。本図ではX軸が絶縁破壊電圧kVを、Y軸が、使用する始動補助機構の関数としての異なる電圧における着火性PDC(無限長さでの着火待機能力を持つ着火性)を表す。各“四角形”を結ぶ実線は本発明の始動補助機構を表し、各“三角形”、“白丸”、“黒丸”を繋ぐ残余の3本の線は、夫々異なる“気泡”法を表す。本発明の始動補助機構を使用した場合の着火性の向上度は100%であったが、従来法では最大でも80%であった。全ての場合において、DBDがUV及びVUV光子を生成し、かくして主電極間に絶縁破壊が生じたが、DBDが陽極の背後ではなく、陰極の完全に見える側で生成されたことから、始動補助効果は本発明の方がずっと高かった。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0014】
10 アーク放電光源
12 透明胴部
14 中空センター部
16、18 端部
20 陰極引き込み線
20a、30a モリブデン箔
22、32 第1端部
24 陰極電極
26 第2端部
30 陽極引き込み線
34 陽極電極
41 始動補助機構
42 空間
43 媒体
44 補助電極
44a 巻き線部
44b 鞘状の導電体
46 外側表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電光源であって、
中空センター部及び相対して配置した各端部を有する透明胴部と、
前記端部の一方に位置決めされ、前記中空センター部内の陰極電極内でその第1端部位置において終端し、第2端部を電源用のコネクタ内に配置した陰極引き込み線と、
前記端部の他方に位置決めされ、前記中空センター部内の陽極電極内でその第1端部位置において終端し、第2端部を電源用のコネクタ内に配置した陽極引き込み線と、
中空センター部内の陰極電極と陽極電極との間に位置付けられ、アークギャップを画定する空間と、
中空センター部内のアーク発生及び維持用媒体と、
始動補助機構にして、陽極を実質的に包囲し且つ透明胴部の外側表面上にのみ位置決めされると共に、陰極引き込み線に電気的に接続した補助電極を含む始動補助機構と、
を含むアーク放電光源。
【請求項2】
補助電極が、少なくとも2回巻きした巻き線を含む請求項1のアーク放電光源。
【請求項3】
補助電極が鞘状の導電体を含む請求項1のアーク放電光源。
【請求項4】
鞘状の導電体が、導電性コーティングを含む請求項3のアーク放電光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−10135(P2010−10135A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−151209(P2009−151209)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(394001685)オスラム・シルバニア・インコーポレイテッド (68)
【Fターム(参考)】