説明

高速信号用プリント配線板

【目的】 部品面パターンとはんだ面パターンとを上下面に配置し、これら部品面パターンとはんだ面パターンとをそれぞれ低誘電率樹脂絶縁層に接着して高速信号を流す伝送線路を形成し、この両低誘電率樹脂絶縁層間に配置してあるグランド層と電源層の間を低誘電率樹脂絶縁層とした高速信号用プリント配線板によると、低誘電率樹脂絶縁層の素材であるふっ素系樹脂またはその複合体は、軟質であるためにプリント配線板の機械的強度が小さく、また、その伸縮性のために寸法安定性が被接着物に左右される問題があり、さらに熱的、経時的寸法変化も大きいという問題があり、さらに、低誘電率であるために、電源層とグラウンド層間もキャパシティが低くなり、電源側インピーダンスの低減効果も少なくなってしまいノイズ対策上不利となる問題等を解決することを目的とする。
【構成】本発明は、グラウンド層4と電源層5の間を高誘電率樹脂絶縁層6としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、回路に高速信号を通すプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の高速信号用プリント配線板の層構成の例を以下に図面を用いて説明する。図2は部分断面斜視図であり、図は6層の多層プリント配線板であり、部品面パターン1とはんだ面パターン2とが上下対称に配置されており、これら部品面パターン1とはんだ面パターン2とはそれぞれ信号伝搬遅延時間、ストレーキャパシティ、クロストークの低減効果のある低誘電率樹脂絶縁層3に接着され、高速信号を流す伝送線路が形成されている。この低誘電率樹脂絶縁層3の材料は一般にふっ素系樹脂またはその複合体が用いられており、比誘電率は、ε=1.6〜2.4程度である。
【0003】これら部品面パターン1とはんだ面パターン2は伝送線路として特性インピーダンスを一定にするためにマイクロ・ストリップ・ライン構造となっており、マイクロ・ストリップ・ラインの接地導体として電源供給用のグラウンド層4を共用している。上記グラウンド層4の他面には電源層5が配置されている。
【0004】なお、上記の構成において、スルーホール、クリアランス、部品ランド等の説明は省略してある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の従来技術によると、低誘電率樹脂絶縁層に用いるふっ素系樹脂またはその複合体は、一般的に軟質であるためにプリント配線板の機械的強度が小さく、また、その伸縮性のため寸法安定性が被接着物に左右される問題があり、さらに熱的寸法変化や経時的寸法変化も大きいという問題がある。
【0006】また、低誘電率であるために、電源層とグラウンド層間もキャパシティが低くなり、電源側インピーダンスの低減効果も少なくなってしまいノイズ対策上不利となる問題がある。さらに、一般的なふっ素系樹脂またはその複合体は、単位価格が非常に高く、プリント配線板自体の単価上昇の原因となっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、部品面パターンとはんだ面パターンとを上下面に配置し、これら部品面パターンとはんだ面パターンとをそれぞれ低誘電率樹脂絶縁層に接着して高速信号を流す伝送線路を形成し、この両低誘電率樹脂絶縁層間にグラウンド層と電源層を配置してある積層した高速信号用プリント配線板において、グラウンド層と電源層の間を高誘電率樹脂絶縁層としたことを特徴とする。
【0008】
【作用】以上の構成によると、高速信号の電磁界は、実用上低誘電率樹脂絶縁層内にあると考えることができるため、グラウンド層と電源層の間を高誘電率樹脂絶縁層としたことにより、比誘電率の増加に比例して2〜3倍のキャパシティの増加が見込まれ、通常のプリント配線板と同等の電源側インピーダンスの低減効果が得られる。
【0009】
【実施例】以下に本発明の一実施例を図面を用いて説明する。なお、以下の説明において上記従来技術と同様な部位は同一符号を用いて説明する。図1は部分断面斜視図であり、図は6層の多層プリント配線板であり、部品面パターン1とはんだ面パターン2とが上下対称に配置されており、これら部品面パターン1とはんだ面パターン2とはそれぞれ信号伝搬遅延時間、ストレーキャパシティ、クロストークの低減効果のある低誘電率樹脂絶縁層3に接着され、高速信号を流す伝送線路が形成されている。
【0010】これら部品面パターン1とはんだ面パターン2は伝送線路として特性インピーダンスを一定にするためにマイクロ・ストリップ・ライン構造となっており、マイクロ・ストリップ・ラインの接地導体として電源供給用のグラウンド層4を共用している。上記低誘電率樹脂絶縁層3はグラウンド層4に接着されている。このグラウンド層4は、高誘電率樹脂絶縁層6、電源層5、さらに中心に高誘電率樹脂絶縁層6と順に積層されている。
【0011】上記各部材の材質の一例を述べると、部品面パターン1とはんだ面パターン2は銅箔35μm 、グラウンド層4および電源層5の材質は銅箔70μm 、低誘電率樹脂絶縁層3は多孔質ふっ素樹脂ε=約1.8、高誘電率樹脂絶縁層6はガラス布基材エポキシ樹脂ε=約5.0であり、低誘電率樹脂絶縁層3、高誘電率樹脂絶縁層6の厚さは、全板厚および伝送線路特性により適宜割り振る。
【0012】なお、上記の構成において、スルーホール、クリアランス、部品ランド等の説明は省略してある。
【0013】
【発明の効果】以上の構成によると、高速信号の電磁界は、外部空間を除くと実用上低誘電率樹脂絶縁層内にあると考えることができるため、グラウンド層と電源層の間を高誘電率樹脂絶縁層としたことにより、比誘電率の増加に比例して2〜3倍のキャパシティの増加が見込まれ、通常のプリント配線板と同等の電源側インピーダンスの低減効果が得られる。
【0014】また、高誘電率樹脂絶縁層は比較的安価なものを選択することが可能であり、実用上十分な機械的強度と熱的、経時的な寸法安定性を重視した材料を選ぶことができるために安定した高速信号用プリント配線板とすることができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例を示す部分断面斜視図である。
【図2】従来例を示す部分断面斜視図である。
【符号の説明】
1 部品面パターン
2 はんだ面パターン
3 低誘電率樹脂絶縁層
4 グラウンド層
5 電源層
6 高誘電率樹脂絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 部品面パターンとはんだ面パターンとを上下面に配置し、これら部品面パターンとはんだ面パターンとをそれぞれ低誘電率樹脂絶縁層に接着して高速信号を流す伝送線路を形成し、この両低誘電率樹脂絶縁層間にグラウンド層と電源層を配置してある積層した高速信号用プリント配線板において、グラウンド層と電源層の間を高誘電率樹脂絶縁層としたことを特徴とする高速信号用プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−167265
【公開日】平成5年(1993)7月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−327865
【出願日】平成3年(1991)12月11日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)