説明

高速型ブレードマシン

【課題】キャリヤのボビンから送り出された線材を芯材の外周に編組するブレードマシンであって、キャリヤの走行を案内する軌道に沿ってキャリヤが円滑に走行することにより走行速度を上げることができ、しかも低騒音である高速型ブレードマシンを提供する。
【解決手段】各キャリヤ8の前後のガイドローラ28a、28a間に金属部材29が固定され、該金属部材29が各ガイドローラ28aの直径とほぼ同様の幅を有し、該金属部材29の両端部に夫々のガイドローラの外周に沿う円弧形状29b、29bが形成されたことにより、両ガイドローラ28a、28a間に金属部材29が補充されてなる舟型部28を構成し、該舟型部28が駆動用ガイド盤5の上面に形成された環状溝31に沿って案内されながら走行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速走行を可能とした複数のキャリヤのボビンから繰り出される線材によって芯材の外周を編み上げる高速型ブレードマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チューブ等の可撓性芯材の外周に鋼製ワイヤ等の線材を編組するブレードマシンが知られている。その構造は、芯材を通過させる中心穴を備えた面盤を有し、該面盤の上面には中心穴を囲繞するように2条の溝が互いに交錯する環状軌道を備え、この環状軌道に沿って一対のキャリヤが案内されながら走行する。そして、各キャリヤのボビンから繰り出される線材が面盤の中心穴を通過する芯材の外周を編組するようにしている。
【0003】
上記の構造を有するブレードマシンの従来例として特許文献1を参照する。このブレードマシンは、円盤形状のデッキ板(上記の「面盤」に相当する)に、該デッキ板の周方向に環状を成す第一軌道溝と第二軌道溝が板厚方向に貫通する状態で形成されている。夫々の軌道溝は波打形状を成し、互いに8字形状に交差しつつデッキ板の周方向に形成され、このような第一軌道溝と第二軌道溝の夫々に一対の各キャリヤの下部に設けられた舟形状を成す誘導部が案内されて走行する。また、各キャリヤにはボビン軸と線材の引出孔が設けられ、ボビン軸に設けられたボビンから引出孔を経て線材を引き出し、この線材をデッキ板の中心穴を通過させると共に、デッキ板の軸線方向に移動する可撓性長尺体の外周に互いに螺旋状に交差させることによって巻付編組するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−247057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の構成、即ち、デッキ板にキャリヤの走行を案内する8字形状の軌道溝が形成された構造においては、キャリヤに設けられた舟形状の誘導部が8字形状の軌道溝に挟まれた状態で走行し、軌道溝の両側に接触することによって摩擦抵抗が生じるという不都合があった。特に、軌道溝における8字形状の交差部においては、その角部にキャリヤの誘導部が接触し、或は衝突することによって、キャリヤの走行速度が低下し、キャリヤにガタつきが生じ、さらには騒音が生じるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような不都合を解消するためになされたもので、キャリヤのボビンから送り出された線材を芯材の外周に編組するブレードマシンであって、キャリヤの走行を案内する軌道に沿ってキャリヤが円滑に走行することにより走行速度を上げることができ、しかも低騒音である高速型ブレードマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1の高速型ブレードマシンは、可撓性芯材を上方に向けて通過させる中心穴が形成された駆動用ガイド盤の周部の面上に2条の溝が連続的に環状を成して交差することによって複数の環状溝が形成され、複数のホーンギヤの夫々が各環状溝の中央にて回転可能に設けられると共に、夫々のホーンギヤの周部に形成された複数の案内爪が駆動用ガイド盤の上側に設けられ、各ホーンギヤの案内爪に係合される各キャリヤは、ホーンギヤの案内爪に係合する主軸ボスと、該主軸ボスの上下に設けられたキャリヤ上部ベースと、キャリヤ下部ベースと、該キャリヤ下部ベースの下部の離間位置に回動自在に設けられたガイドローラとを有し、各キャリヤの主軸ボスが回転するホーンギヤの案内爪に係合されると共に、各キャリヤの前後のガイドローラが駆動用ガイド盤の環状溝に沿って案内されることにより、各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが互いに逆方向に走行し、各キャリヤに設けられたボビンから線材を送り出すことによって可撓性芯材の外周を編組するようにした高速型ブレードマシンにおいて、各キャリヤの前後のガイドローラ間に変形H型部材が固定され、該変形H型部材が各ガイドローラの直径とほぼ同様の幅を有し、該変形H型部材の両端部に夫々のガイドローラの外周に沿う円弧形状が形成されたことにより、両ガイドローラ間に変形H型部材が補充されてなる舟型部を構成し、該舟型部が駆動用ガイド盤の上面に形成された環状溝に沿って案内されながら走行するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2の高速型ブレードマシンは、請求項1において、駆動用ガイド盤の上面に形成された隣設する環状溝の交差部の四方に環状溝の溝底面から上方へ突出したガイド塀を設けることによって該交差部における一方の環状溝の入口部位と出口部位に一対のガイド塀が設けられ、該交差部における他方の環状溝の入口部位と出口部位に一対のガイド塀が設けられ、さらに各入口部位の手前側と各出口部位の先側と各入口部位と各出口部位との中間に夫々の環状溝の溝底面から上方へ突出したガイドビスがコイルバネによって復帰可能に設けられ、夫々のガイドビスは、各環状溝における一対のガイド塀に連動して上下動可能であり、走行するキャリヤの前後のガイドローラが夫々のガイドビスの頭部を押下げることにより、該ガイドビスに連結された一対のガイド塀を下降することによってキャリヤを走行可能とする一方、キャリヤが走行可能とされた環状溝に交差した他の環状溝を上昇状態のガイド塀で閉塞することによってキャリヤの前後のガイドローラの走行案内を行なうようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高速型ブレードマシンは、上記のように構成されているため、駆動用ガイド盤の上側に設けられた各ホーンギヤが回転するに従って、各キャリヤの主軸ボスがホーンギヤの案内爪に係合された状態で回転されると共に、キャリヤの下部の2個のガイドローラが駆動用ガイド盤の上面に形成された環状溝に沿って案内されながら走行することにより、各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが互いに逆方向に走行し、各キャリヤに設けられたボビンから線材を送り出すことによって可撓性芯材の外周を編組することが可能となる。
【0010】
このような構成において、キャリヤの下部に設けられた舟型部が駆動用ガイド盤に形成された環状溝に沿って案内されながら軌道に従って走行し、この走行の際には、舟型部の前後に設けられたガイドローラが環状溝の溝側部に回転しながら接触することにより衝撃を緩和することが可能となる。また、舟型部が環状溝の交差部等の角部に接触しつつ走行する際でも、ガイドローラ間に設けられた変形H型部材の両側部が環状溝の角部に接触して擦り抜けることができるため、大きな制動力が作用することもなく走行することができる。従って、キャリヤが高速で走行する際にもキャリヤが円滑に走行することが可能となり、これによって走行速度を上げることができ、しかも異常な騒音を発生することがなく、本発明のような高速型のブレードマシンのキャリヤの構造にふさわしいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のブレードマシンの全体側面図である。
【図2】本発明のブレードマシンの駆動用ガイド盤を示す平面図である。
【図3】(a)は本発明のブレードマシンにおける隣設されたホーンギヤの案内爪にキャリヤの主軸ボスが係合された状況を示す平面図であり、(b)は要部拡大側面図である。
【図4】(a)は本発明のブレードマシンに使用するキャリヤの側面図(要部を断面で示す)であり、(b)はキャリヤの下面図である。
【図5】(a)は本発明のブレードマシンに使用するキャリヤ下部ベースと舟型部に関する部分断面図であり、(b)はキャリヤ下部ベースと舟型部に関する側面図であり、(c)はキャリヤ下部ベースの底面図であり、(d)は舟型部の底面図である。
【図6】本発明のブレードマシンにおける隣設された環状溝と隣設されたホーンギヤと各ホーンギヤの案内爪に係合されながら走行するキャリヤの走行状況を説明するための要部拡大平面図である。
【図7】(a)は本発明のブレードマシンにおける隣設された環状溝の交差部を示す部分図であり、(b)は(a)の交差部及びその近傍に設けられたガイド塀とガイドビス等の連結構成を示す要部側面図である。
【図8】(a)〜(c)は本発明のブレードマシンにおける隣設された環状溝の交差部のガイド塀とガイドビス等の連結構成と、環状溝を走行するキャリヤのガイドローラとの関係を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本発明のブレードマシン1の架台2は鉄骨を組み合わせた矩形箱体から構成されている。この架台2の上部には台板3が固定され、台板3の上側には隙間4をあけて駆動用ガイド盤5が設置され、互いに平行な台板3と駆動用ガイド盤5との隙間4には後述する複数の駆動ギヤ6、6…が回転自在に設けられている。
【0014】
図2は図1の駆動用ガイド盤5を上側から見た平面図であり、中央に描いた一点鎖線CLの左側に複数の駆動ギヤ6、6…が連結された状態を示し、一点鎖線CLの右側に後述するホーンギヤ7の配置状態を示している。また、台板3には中心穴3aが形成され、駆動用ガイド盤5には中心穴5aが形成され、これらの中心穴3a、5aを通過して、図1に示すように、ドラム(不図示)から供給されるホース等の可撓性芯材Cの外周に複数のキャリヤ8、8…の各ボビン9から送り出される線材Wを編組し、架台2に設けられた支柱2aの上部に回動自在に支持されたキャプスタン13の外周に架けて不図示のドラムで巻き取るようにしている。
【0015】
また、図1に示すように、架台2の内部にはモータMが設置され、モータMの駆動力はベルトB、駆動用メインプーリー12、ギヤ類を介してピニオン10aに伝達される。また、ピニオン10aに歯合されたベベルギヤ10bは、台板3と駆動用ガイド盤5との間に設けられた連結ギヤ11に同軸に結合されている。この連結ギヤ11は、図2に示すように、駆動用ガイド盤5の中心穴5aの左右に設けられ、各連結ギヤ11、11に歯合された複数の駆動ギヤ6、6…が駆動用ガイド盤5の周部にて回転可能に順次結合されている。
【0016】
さらに、図2に示すように、駆動用ガイド盤5の上側には、上記の各駆動ギヤ6に同軸に結合されたホーンギヤ7が回転可能に設けられ、左右の連結ギヤ11、11の駆動によって回転する夫々の駆動ギヤ6は隣設するもの同士が互いに逆方向に回転し、各駆動ギヤ6の回転に伴って各ホーンギヤ7もまた隣設するもの同士が互いに逆方向に回転する。
【0017】
また、図3(a)、(b)に示すように、各ホーンギヤ7の外周には等間隔で4箇所にU字溝形状の案内爪19、19…が形成され、夫々のホーンギヤ7の各案内爪19、19…が隣接するホーンギヤ7ごとに互いに連接状態で回転駆動する。そして、いずれかの案内爪19に後述するキャリヤ8の主軸ボス18が係合されると共に、キャリヤ8の前後に設けられたガイドローラ28a、28aが駆動用ガイド盤5の上面周部に形成された環状溝31に沿って案内されながら、その軌道に従って走行するものとされている。
【0018】
ここで、上記のキャリヤ8について説明する。図4(a)、(b)に示すように、キャリヤ8は、キャリヤ上部ベース16とキャリヤ下部ベース17との間に、各ホーンギヤ7の案内爪19に係合する主軸ボス18が縦方向に結合された構成とされている。従って、キャリヤ上部ベース16とキャリヤ下部ベース17との間隔は各ホーンギヤ7を挿入し得る幅とされている。
【0019】
さらに、図5(a)〜(d)に示すように、キャリヤ下部ベース17は、厚手のプレートからなる外形が舟形状の上部ハカマ17aと下部ハカマ17bとを積層して両端をセットボルト17c、17cで固定してなる構成とされ、下部ハカマ17bの中央には内部に空室17eを有して下方に突出形成されたベース部17dが設けられている。このベース部17dの前後に離間してローラ軸ボルト28b、28bがナット28dで固定され、ローラ軸ボルト28b、28bの周部にはニードルベアリング28cを介して回転自在にガイドローラ28a、28aが設けられている。
【0020】
また、ガイドローラ28a、28a間の隙間は変形H型部材29で補充された構成とされている。即ち、ガイドローラ28a、28aは離間して設けられ、このガイドローラ28a、28a間の隙間を補充する部材として変形H型部材29が固定されている。
【0021】
この変形H型部材29は、ガイドローラ28aの直径とほぼ同様の幅を有し、両端部に各ガイドローラ28a、28aの外周に沿う円弧形状29b、29bが形成されてなる金属部材によって構成されている。この変形H型部材29の中央位置にてセットボルト29aがベース部17dのボルト孔に装着され、ナット28dで締結されたことにより、両ガイドローラ28a、28a間が変形H型部材29で補充された構成となる。
【0022】
本実施例においては、主構成部材として前後のガイドローラ28a、28aと変形H型部材29とを合わせてその全体が舟型部28と称せられる構成とされている。このような構成によって、舟型部28の前後には回動自在のガイドローラ28a、28aが設けられ、また、各ガイドローラ28a、28aの外周に沿うようにガイドローラ28a、28a間には変形H型部材29の両側面が存在して、前後のガイドローラ28a、28a間を補充した構成となる。
【0023】
なお、上記の構成において、前後のガイドローラ28a、28a間を補充する変形H型部材29をセットボルト29aで固定するための余地をつくるため、夫々のガイドローラ28aを小型化してあり、そのため、前後のガイドローラ28a、28aはローラ軸28b、28bにニードルベアリング28c、28cで回動自在に支持された構成とされている。
【0024】
上記の構成により、キャリヤ8はキャリヤ上部ベース16とキャリヤ下部ベース17との間に設けられた主軸ボス18によって各ホーンギヤ7の案内爪19に係合すると同時に、キャリヤ8の下部に設けられた舟型部28が駆動用ガイド盤5に形成された環状溝31に沿って案内されながら該環状溝31の軌道に従って走行する。この走行の際には、舟型部28の前後のガイドローラ28a、28aが環状溝31の溝側部に回転しながら接触又は衝突するため、その衝撃を緩和することが可能となる。
【0025】
また、舟型部28が環状溝31の交差部等の角部に接触しつつ走行する際でも、ガイドローラ28a、28aの変形H型部材29の側部が環状溝31の角部に接触して擦り抜けることができるため、大きな制動力が作用することもなく走行することができる。従って、キャリヤ8が低速で走行する際はもちろん円滑な走行が可能であり、キャリヤ8が高速で走行する際には、舟型部28が環状溝31の交差部等の角部に衝突する頻度及び衝撃の度合いが高まるが、前後の回転するガイドローラ28a、28aとガイドローラ28a、28a間の隙間を補充した変形H型部材29によって円滑な走行が可能となり、騒音の発生を抑えた状態でキャリヤ8の走行速度を上げることが可能となる。
【0026】
なお、本発明において、ガイドローラ28a、28a間に変形H型部材29を設けず、隙間が生じた状態にしておくと、キャリヤ8が環状溝31に沿って走行する際、ガイドローラ28a、28a間が環状溝31の角部等にぶつかって制動されるため、キャリヤの速度をあげる際の支障となり、また異常な騒音を発生することにもなる。
【0027】
上記のように構成されたキャリヤ8は、図5に示すように、夫々のキャリヤ8の主軸ボス18がホーンギヤ7の案内爪19に係合されると共に、各キャリヤ8の前後のガイドローラ28a、28aが駆動用ガイド盤5に形成された環状溝31に沿って摺動自在に嵌合し、各キャリヤ8を互いに逆方法の矢印方向に交錯走行する。
【0028】
図4(a)、(b)に示すように、キャリヤ8におけるキャリヤ上部ベース16の上面には支持部材20が固設され、支持部材20と上記のブラケット15との間には、ボビン9を保持するボビン軸21が設けられている。さらに、ボビン9のフランジ9aの下側には所定方向に傾斜した複数の係合歯22aを有する回転板22が設けられ、支持部材20の側部に回動自在に軸支されると共に不図示の弾性部材によって弾性付勢されたラチェット23のツメ部材23aが回転板22の係合歯22aに係止されることにより、ボビン9の逆回転を防止し、ボビン9に巻回された線材Wを一方向に引き出すことが可能とされている。
【0029】
また、図4(a)に示すように、テンションロッド14に沿って摺動するオモリ部材24の側部には可動プーリ25が設けられ、オモリ部材24の上方にはテンションロッド14に外装された上下方向に弾発力を有するコイルバネ26が設けられ、このコイルバネ26によってオモリ部材24は下方へ付勢されている。なお、テンションロッド14の他にもう1本のテンションロッド14(不図示)が並設され、これら2本のテンションロッド14の間には傾斜状に軸支された固定プーリ27が設けられ、さらにテンションロッド14の上部にはワイヤ案内係口金33が設けられている。
【0030】
このような構成により、ボビン9から送り出された線材Wは固定プーリ27を介して可動プーリ25に掛けられた状態で上方へ導かれ、キャリヤ8の移動位置に従って変化する線材Wの張力に応じてテンションロッド14のコイルバネ26の弾性力が変動することにより、線材Wの張力を均等に調整することが可能とされ、図1に示す芯材Cの外周に複数のキャリヤ8、8…の各ボビン9から送り出される線材Wを編組することが可能となる。
【0031】
さらに、本実施例において、駆動用ガイド盤5の面上周部に形成された環状溝31は、図6に示すように、2条の溝が連続的に環状を成して交差することによって複数の環状溝31、31…が駆動用ガイド盤5の周部に連続的に形成されてなり、夫々の環状溝31の中央にホーンギヤ7が上記のように回転駆動される構成とされている。
【0032】
このような構成において、隣設する環状溝31、31の交差部32の四方に環状溝31の溝底面31aから上方へ突出したガイド塀G(G1、G2、G3、G4)が設けられ、各一対のガイド塀G1、G2又はG3、G4は夫々の環状溝31の溝底面31aから上方に突出したガイドビスP(P1、P2、P3又はP4、P5、P6)に連結され、走行するキャリヤ8の前後のガイドローラ28a、28aが環状溝31の溝底面31aから上方へ突出したガイドビスPの頭部37に当接して押下げることにより、該ガイドビスP(P1、P2、P3又はP4、P5、P6)に連結された一対のガイド塀G1、G2又はG3、G4を下降することによってキャリヤ8を走行可能としている。
【0033】
このような構成について詳細に述べると、図7(a)に示すように、隣設する環状溝31、31の交差部32においては、キャリヤ8(図6参照)の走行方向である矢示のAからBへ通過する環状溝31ABとCからDへ通過する環状溝31CDが夫々の軌道幅を広げるように互いにずらした状態で交差している。このような隣設する環状溝31、31の交差部32において、例えば、図7(a)の環状溝31ABにおいては交差部32への入口部位と出口部位に環状溝31の溝幅を有する切開穴C1とC2とが成形され、夫々の切開穴C1、C2にガイド塀G1、G2が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。
【0034】
また、図7(a)の軌道溝31ABの溝底面31aには、キャリヤ8(図6参照)が交差部32へ進入する入口部位のガイド塀G1の手前側に形成されたビス穴H1にガイドビスP1が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。また、キャリヤ8(図6参照)が交差部32から出る出口部位のガイド塀G2の先側に形成されたビス穴H3にガイドビスP3が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入され、さらにこれらの入口部位のガイド塀G1と出口部位のガイド塀G2との略中間位置に形成されたビス穴H2にガイドビスP2が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。
【0035】
なお、これらのガイドビスP1、P3、及びガイドビスP4、P6は、各軌道溝31の溝底面31aの幅方向における略中心位置に設けられているが、ガイドビスP1、P3の中間に設けられたガイドビスP2、及びガイドビスP4、P6の中間に設けられたガイドビスP5は、各軌道溝31の溝底面31aの幅方向において外側に偏心した位置に設けられている。
【0036】
図7(b)は図7(a)を左側から右方向に見た図であり、環状溝31CDに設けられたガイドビスP6、P4は、図示のように位置を多少ずらして描いている。この図7(b)に示すように、ガイド塀G1、G2と、ガイドビスP1、P2、P3は、図7(a)に示すような相対位置関係で上部連結板34に結合されている。即ち、ガイド塀G1、G2は、その下端部を上部連結板34に対して溶接固定し、上記のように環状溝31の溝底面31aの所定位置に形成された切開穴C1、C2に下方から上方へ向けて突出するように挿入され、溝底面31aから例えば環状溝31の溝深さの略半分の高さだけ突出している。
【0037】
なお、上部連結板34は、両端部に設けられたガイド部34aを駆動用ガイド盤5の下部にネジ35bで固定された吊下板35の案内溝35aに挿通することによって、案内溝35aの範囲内で左右にぶれないように上下動することが可能とされている。
【0038】
また、ガイドビスP1、P2、P3は、上部連結板34の所定位置に対してネジ部36aを螺入すると共にナット36bで締結し、各ガイドビスP1、P2、P3のビス頭部37をビス穴H1、H2、H3に下方から上方へ突出するように挿入して上下動自在にすると共に、各ビス穴H1、H2、H3の内部にコイルバネ38の上部を固定して、各コイルバネ38の張引力で上部連結板34及びこれに固定されたガイド塀G1、G2を定位置に吊り下げた状態に保持するようにしてあり、自然状態において各ガイドビスP1、P2、P3のビス頭部37が溝底面31aから突出する高さはガイド塀G1、G2の高さと略同様に調整されている。
【0039】
一方、図7(a)においてCからDへ通過する環状溝31CDにおいても、上記の環状溝31ABの場合と同様に、交差部32への入口部位と出口部位に環状溝31の溝幅を有する切開穴C3とC4とが成形され、夫々の切開穴C3、C4にガイド塀G3、G4が下方から上方へ突出するように上下動自在に挿入されている。
【0040】
また、入口部位のガイド塀G3の手前側に形成されたビス穴H4にガイドビスP4が下方から上方へ上下動自在に挿入され、また出口部位のガイド塀G4の先側に形成されたビス穴H6にガイドビスP6が下方から上方へ上下動自在に挿入され、さらに入口部位のガイド塀G3と出口部位のガイド塀G4との略中間位置に形成されたビス穴H5にガイドビスP5が下方から上方へ上下動自在に挿入されている。
【0041】
これらのガイド塀G3、G4と、ガイドビスP4、P5、P6は、図7(b)に示すように、下部連結板39に対して上記のガイド塀G1、G2と、ガイドビスP1、P2、P3と同様に取り付けられているが、この下部連結板39は上部連結板34とは離間した下方に設けられたことによって、上部連結板34と下部連結板39とが互いの動作に干渉しないようにしている。
【0042】
上記の構成による動作を、図7(a)の隣設する環状溝31、31の交差部32において環状溝31ABに特定して述べる。図8(a)に示すように、キャリヤ8の下部に設けられた2個のガイドローラ28a、28aの先頭が環状溝31の交差部32の入り口側のガイドビスP1のビス頭部37に当たってガイドビスP1を押し下げると、これに従動して上部連結板34が下降するのに従い、他のガイドビスP2、P3及びガイド塀G1、G2が下降し、これによってキャリヤ8の2個のガイドローラ28a、28aが進行する環状溝31の軌道を開き、キャリヤ8はその軌道に従って走行することが可能となる。
【0043】
このとき、他の環状溝31CDのガイド塀G3、G4は溝底面31aから上方へ突出した状態を保つため、環状溝31ABの溝形状の両側を左右のガイド塀G3、G4で閉塞して、あたかも一本の曲線状の溝軌道を形成しているかのように形成することができる。このため、従来のように8字形を成す軌道溝の交差部に角部が生じることがなく、キャリヤ8の2個のガイドローラ28を円滑に走行案内することができ、上記の効果と相俟って、キャリヤ8の走行速度の向上と騒音の低下に有益となる。
【0044】
なお、図8(a)〜(c)に示すように、キャリヤ8の下部に設けられたガイドローラ28a、28aは進行方向の前後に設けられ、キャリヤ8が反対方向に後退する場合にも、ガイドローラ28a、28aは同様に作用して、上記のように環状溝31の溝底面31aから突出したガイドビスPの頭部37に接触して押下げることができる。
【0045】
また、各ガイドビスPは、コイルバネ38で元の高さに復帰可能であるため、キャリヤ8の前後のガイドローラ28a、28aのいずれかの押圧が解除された場合、ガイド塀G(G1、G2)が元の高さに復帰してキャリヤ8のガイドローラ28a、28aの進行を妨げることとなるが、図8(a)〜(c)に示すように、キャリヤ8の進行に伴って何れかのガイドローラ28a、28aが何れかのガイドビスP(P1、P2、P3)又はガイド塀G(G1、G2)を押圧して下降状態を保つことができる離間幅を有するため、キャリヤ8のガイドローラ28a、28aは進行を妨げられることなく、円滑に前進又は後退することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の高速型ブレードマシンは、キャリヤのボビンから送り出された線材を芯材の外周に編組するブレードマシンであって、キャリヤの走行を案内する軌道に沿ってキャリヤが円滑に走行することにより走行速度を上げることができ、しかも低騒音である高速型ブレードマシンとして利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 ブレードマシン
2 架台
2a 支柱
3 台板
3a 中心穴
4 隙間
5 駆動用ガイド盤
5a 中心穴
6 駆動ギヤ
7 ホーンギヤ
8 キャリヤ
9 ボビン
9a フランジ
10a ピニオン
10b ベベルギヤ
11 連結ギヤ
12 駆動用メインプーリー
13 キャプスタン
14 テンションロッド
15 ブラケット
16 キャリヤ上部ベース
17 キャリヤ下部ベース
17a 上部ハカマ
17b 下部ハカマ
17c 結合ボルト
17d ベース部
17e 空室
18 主軸ボス
19 案内爪
20 支持部材
21 ボビン軸
22 回転板
22a 係合歯
23 ラチェット
23a ツメ部材
24 オモリ部材
25 可動プーリ
26 コイルバネ
27 固定プーリ
28 舟型部
28a ガイドローラ
28b ローラ軸ボルト
28c ニードルベアリング
28d ナット
29 変形H型部材
29a 固定用ボルト
29b 円弧形状
30 軸穴
31 環状溝
31AB 環状溝
31CD 軌道溝
31a 溝底面
32 交差部
33 ワイヤ案内係口金
34 上部連結板
34a ガイド部
35 吊下板
35a 案内溝
36a ネジ部
36b ナット
37 ビス頭部
38 コイルバネ
39 下部連結板
B ベルト
C1、C2 切開穴
CL 一点鎖線
G、G1、G2、G3、G4 ガイド塀
H1、H2、H3、H4、H5、H6 ビス穴
M モータ
P、P1、P2、P3、P4、P5、P6 ガイドビス
W 線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性芯材を上方に向けて通過させる中心穴が形成された駆動用ガイド盤の周部の面上に2条の溝が連続的に環状を成して交差することによって複数の環状溝が形成され、
複数のホーンギヤの夫々が各環状溝の中央にて回転可能に設けられると共に、夫々のホーンギヤの周部に形成された複数の案内爪が駆動用ガイド盤の上側に設けられ、
各ホーンギヤの案内爪に係合される各キャリヤは、ホーンギヤの案内爪に係合する主軸ボスと、該主軸ボスの上下に設けられたキャリヤ上部ベースと、キャリヤ下部ベースと、該キャリヤ下部ベースの下部の離間位置に回動自在に設けられたガイドローラとを有し、
各キャリヤの主軸ボスが回転するホーンギヤの案内爪に係合されると共に、各キャリヤの前後のガイドローラが駆動用ガイド盤の環状溝に沿って案内されることにより、各ホーンギヤごとに一対のキャリヤが互いに逆方向に走行し、各キャリヤに設けられたボビンから線材を送り出すことによって可撓性芯材の外周を編組するようにした高速型ブレードマシンにおいて、
各キャリヤの前後のガイドローラ間に変形H型部材が固定され、該変形H型部材が各ガイドローラの直径とほぼ同様の幅を有し、該変形H型部材の両端部に夫々のガイドローラの外周に沿う円弧形状が形成されたことにより、両ガイドローラ間に変形H型部材が補充されてなる舟型部を構成し、該舟型部が駆動用ガイド盤の上面に形成された環状溝に沿って案内されながら走行するようにしたことを特徴とする高速型ブレードマシン。
【請求項2】
駆動用ガイド盤の上面に形成された隣設する環状溝の交差部の四方に環状溝の溝底面から上方へ突出したガイド塀を設けることによって該交差部における一方の環状溝の入口部位と出口部位に一対のガイド塀が設けられ、
該交差部における他方の環状溝の入口部位と出口部位に一対のガイド塀が設けられ、
さらに各入口部位の手前側と各出口部位の先側と各入口部位と各出口部位との中間に夫々の環状溝の溝底面から上方へ突出したガイドビスがコイルバネによって復帰可能に設けられ、
夫々のガイドビスは、各環状溝における一対のガイド塀に連動して上下動可能であり、走行するキャリヤの前後のガイドローラが夫々のガイドビスの頭部を押下げることにより、該ガイドビスに連結された一対のガイド塀を下降することによってキャリヤを走行可能とする一方、
キャリヤが走行可能とされた環状溝に交差した他の環状溝を上昇状態のガイド塀で閉塞することによってキャリヤの前後のガイドローラの走行案内を行なうようにしたことを特徴とする請求項1記載の高速型ブレードマシン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−280999(P2010−280999A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133421(P2009−133421)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【特許番号】特許第4392625号(P4392625)
【特許公報発行日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(504289495)株式会社葛生鉄工所 (9)
【Fターム(参考)】